強盗罪の成否(居直り強盗・反抗抑圧)の書き方
閉店後の文具店に忍び込んで万年筆を盗んだ甲が、戻ってきた店主Bにバールを振り上げて脅し、現金約12万円を受け取った事例で、強盗罪の成否を答案に書き切る回。Bは通報ボタンを押していて怖がっておらず、時間稼ぎのために現金を渡した。窃盗の後の脅しは、まだ取っていない現金を奪う手段として用いられたので、事後強盗(238条)ではなく強盗(236条1項)を検討する。「脅迫」は社会通念上一般に被害者の反抗を抑圧するに足りる程度かを客観的に判断する(最判昭24・2・8)。判例は現実に反抗が抑圧されなくても強盗罪にあたるとするが、答案では反抗抑圧を要する通説で書き、本問は強盗未遂(243条・236条1項)。先の窃盗は、被害法益の同一・時間的場所的近接・犯意の継続から強盗未遂に包括され、建造物侵入罪とは牽連犯(54条1項後段)。変形として、Bが通報ボタンを押しておらず足がすくんで動けなかったなら、反抗が抑圧されて強盗既遂となる。
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事例
図:出来事の時系列
閉店後の小さな文具店で起きた事件です。商店街の一角にある平屋の店を、70代の女性Bが一人で営んでいます。Bは、身長約150センチの細身です。店は午後7時に閉めます。閉店後は誰も店に入れない決まりで、戸締まりもBがしています。ところがこの日、Bは裏口の鍵をかけ忘れていました。午後9時ごろです。40代の男性、甲が店の前を通りかかり、裏口が施錠されていないことに気づきました。甲は内装工で、身長約180センチ、体重約90キロです。仕事用の鉄のバールをいつも腰のベルトに差しています。長さは約60センチです。甲は、中の物を盗もうと思い、裏口から店に入りました。店には誰もおらず、明かりがついていました。午後9時5分ごろ、甲は、ショーケースの上に出ていた万年筆3本を、作業着の腰袋に入れました。1本約3万円で、合わせて約9万円です。その5分後です。翌日の仕入れの帳簿を取りに、Bが、表のガラス戸の鍵を開けて店に戻ってきました。Bは、店の奥に見知らぬ男がいるのに気づきます。そして、レジのあるカウンターの内側に回り、下にある警備会社直結の非常通報ボタンを押しました。警備会社の係員は、通報を受けてから約5分で駆けつけます。Bはそれを知っていました。甲は、ボタンが押されたことに気づいていません。また、Bは、甲が万年筆を腰袋に入れたことには気づいておらず、まだ声も出していません。
図:甲とBの関係
甲は、Bと顔を合わせました。そして、「見つかったのなら、ついでにレジの金も取ってやろう」と思いました。腰のバールを右手で抜き、頭の上に振り上げます。表のガラス戸を背にして、レジの前に立つBから約2メートルのところで、「痛い目に遭いたくなければ、レジの金を全部出せ。」と言いました。店内には二人だけで、通りに人影はありませんでした。Bは、怖いとは感じませんでした。「ボタンを押したから、すぐ係員が来る。逆らって怒らせるより、言われたとおり渡して時間を稼ごう」と考えたのです。体が動かなくなったわけでも、声が出なくなったわけでもありません。断ろうと思えば断れる状態でした。Bは、レジの引き出しから、現金約12万円を取り出し、カウンター越しに甲へ差し出しました。午後9時13分ごろ、甲は、現金を受け取り、万年筆を腰袋に入れたまま、表のガラス戸から逃げました。誰も追ってきません。係員は、約2分後に店に着きました。
問いは次の1つです。甲の罪責について論じなさい。甲は、先に万年筆を盗んでいます。そのあと、怖がっていない相手から、現金を受け取りました。この甲に、強盗罪は成立するのでしょうか。
検討の順番
図:出来事の時系列
甲の行為は、3つに分かれます。店に入ったこと。万年筆を取ったこと。Bを脅して現金を出させたことです。時間の流れに沿って、入る、取る、脅す、の順に見ます。最初の2つは、条文どおりに当てはめて済みます。問題は3つ目です。窃盗のあとの脅しですから、まず、強盗罪の236条か、事後強盗罪の238条か、どちらの条文で見るのかを決めます。そのうえで、入った条文の要件を順に当てます。脅迫、強取、そして既遂か未遂かです。最後に、先の窃盗との関係、つまり罪数を決めます。
建造物侵入と窃盗
図:出来事の時系列
最初の2つは、認定だけです。条文を確認します。
条文刑法130条
刑法130条(住居侵入等) 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金に処する。
文具店は、Bが閉店後の戸締まりをして管理している建造物です。甲は、閉店後に、管理者であるBの意思に反して、裏口から立ち入りました。「侵入」にあたります。建造物侵入罪が成立します。
条文刑法235条
刑法235条(窃盗) 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
万年筆は、Bの店の商品で、他人の財物です。甲は、占有しているBの意思に反して、これを腰袋に入れ、自分の占有に移しました。自分の物にする意思もあります。「窃取」にあたります。窃盗罪が成立します。この窃盗が先に成立している、というところが、次の振り分けの前提になります。
脅した行為は236条か238条か
図:出来事の時系列
本題に入ります。甲がBに現金を出せと迫った行為です。甲は、すでに万年筆を盗んでいます。窃盗犯人が、その後に脅迫をした形です。この脅しを、強盗罪、236条1項で見るのか。それとも、事後強盗罪、238条で見るのか。2つの条文を並べます。
条文刑法236条1項
刑法236条1項(強盗) 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期拘禁刑に処する。
条文刑法238条
刑法238条(事後強盗) 窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。
236条1項は、脅迫を用いて他人の財物を強取した者を、強盗とします。238条は、窃盗が、取り返されるのを防ぐため、逮捕を免れるため、罪跡を隠滅するために脅したとき、強盗として扱います。窃盗のあとの脅しは、どちらの条文になるのか。これを先に決めないと、その後の要件を、違う条文に当ててしまいます。規範は、こうです。
⭐ 論文で書く規範:強盗罪と事後強盗罪の区別 この点、両罪の区別は、当該暴行・脅迫が新たな財物奪取の手段として用いられたか否かによるべきであると解する。 (規範(通説で立てる))
図:規範カード|強盗罪と事後強盗罪の区別
カードは1文です。基準は、その脅しが何のために使われたか、です。まだ取っていない物を手に入れる手段として使ったのなら、236条です。この、まだ取っていない物が、新たな財物です。すでに取った物を取り返されないため、逃げるため、罪跡を隠すために使ったのなら、238条です。同じ脅しの言葉でも、狙いで条文が変わります。見る観点を、表にして示します。
図:脅しの狙いを拾う観点
左は、脅しの目的。真ん中は、その物を、すでに取ったのか、これから取るのか。右は、どちらの条文か、です。
図:脅しの狙いを事実で拾う
見るのは、脅しの狙いです。甲が脅した目的は、「ついでにレジの金も取ってやろう」でした。狙った物は、レジの現金です。まだ取っていない、新たな財物です。事実を当てます。Bは、万年筆に気づいておらず、声も出していません。ですから、甲には、万年筆を取り返されるのを防ぐ理由がありません。逮捕を免れる理由も、罪跡を隠す理由もありません。甲が脅した理由は、レジの現金を得ること、それだけです。脅しは、新たな財物を奪う手段として使われています。よって、236条1項で検討します。事後強盗罪の回で見た、居直り強盗の形です。逆側も見ておきます。もし甲が、腰袋の万年筆を取り返されないように、Bを脅したのなら、238条の話になります。目的で、入る条文が変わります。もう1点です。脅したあとで、奪う気になった場合には、強盗罪の回で見たとおり、別の考え方が要ります。本問の甲は、脅した時点で、すでにレジの現金を得るつもりでした。ここは、その前提で進みます。
「脅迫」
図:甲とBの関係
236条1項に入りました。次は「脅迫」です。この脅しは、強盗罪の脅迫にあたるほど強いのか。その前に、強盗罪の回で確認したことを思い出してください。脅して相手を怖がらせ、財物を渡させる罪が、恐喝罪です。強盗罪と恐喝罪を分ける物差しは、被害者本人の気持ちでしたか。それとも、一般の人を基準にした力の強さでしたか?一般の人を基準にした、力の強さです。社会通念上、一般に、反抗を抑圧するに足りる程度かどうか、で見ました。反抗を抑圧する、とは、相手がもはや抵抗できなくなることです。この物差しを、そのまま使います。最高裁は、次のように述べています。
判例最判昭24・2・8 刑集3巻2号75頁
強盗罪の脅迫の程度を述べた判決 他人に暴行又は脅迫を加えて財物を奪取した場合に、それが恐喝罪となるか強盗罪となるかは、その暴行又は脅迫が、社会通念上一般に被害者の反抗を抑圧するに足る程度のものであるかどうかと云う客観的基準によつて決せられるのであつて、具体的事案の被害者の主観を基準としてその被害者の反抗を抑圧する程度であつたかどうかと云うことによつて決せられるものではない。
決め手は、客観的基準です。被害者本人の気持ちで決めると、同じ脅しでも、相手が臆病なら強盗、肝が据わっていれば恐喝になってしまいます。脅しそのものの強さを、一般の人を基準に見ます。拾う事実は3つです。体格と年齢。場所と状況。脅しのやり方です。境界で考えます。同じ「金を出せ」でも、相手が大柄な若者で、人通りの多い昼の道で、見せられたのが小さな物だけなら、一般の人は抵抗できます。足りません。本問は、その反対側です。表にします。
図:脅しの強さを事実で拾う
体格と年齢です。甲は40代で、身長約180センチ、体重約90キロ。Bは70代で、身長約150センチの細身です。体力で劣るのは明らかです。場所と状況です。閉店後の店内に、二人だけです。通りに人影はありません。出入口の戸は、甲の背後にあります。Bは、助けを求めにくく、逃げにくい状況でした。脅しのやり方です。長さ約60センチの鉄のバールを頭の上に振り上げ、約2メートルの距離で、「痛い目に遭いたくなければ、レジの金を全部出せ」と告げています。バールで殴られる、という害悪の告知です。この3つが重なれば、一般の人なら、反抗を抑圧されます。よって、強盗罪の「脅迫」にあたります。ここで見たのは、脅しそのものの強さだけです。Bが現実にどう感じ、どう動いたかは、まだ見ていません。それは、次の「強取」で見ます。
「強取」
図:甲とBの関係
甲の脅しは、客観的には、反抗を抑圧するに足りる強さでした。現金も、現に渡されています。ところが、Bは怖がっておらず、断ろうと思えば断れる状態で、時間を稼ぐために渡しました。Bは、現実には反抗を抑圧されていません。この場合も、236条1項の「強取」といえるのか。これが、この事案でいちばん大きな問題です。先に、言葉を分けておきます。怖いと感じることを、畏怖といいます。反抗を抑圧される、とは、もはや抵抗できなくなることです。反抗はできるが、怖い。これは畏怖です。抵抗できなくなったら、反抗の抑圧です。本件のBは、怖いとさえ感じていません。
最高裁は、次のように述べています。
判例最判昭24・2・8 刑集3巻2号75頁
現実に反抗が抑圧されなくても強盗罪にあたるとした判決 …… 従つて右認定事実は強盗罪に該当するものであつて、仮りに所論の如く被害者Aに対しては偶々同人の反抗を抑圧する程度に至らなかつたとしても恐喝罪となるものではない。
脅しが客観的に足りる程度なら、被害者が現実には反抗を抑圧される程度に至らなかったとしても、恐喝罪となるものではない、と述べています。この立場に立てば、本問も強盗にあたる方向です。判例は、客観的な強さの物差しを、ここでも貫いています。ただし、答案では、次の規範で書きます。判例と違う立場でも、条文から理由を示せば、答案はその立場で書けます。その理由が、カードの第1文です。
⭐ 論文で書く規範:「強取」と反抗抑圧 236条1項は、暴行・脅迫を「用いて」強取することを要求し、その法定刑も恐喝罪より重いから、強盗罪は、被害者の反抗を抑圧して財物を奪取する犯罪類型であるといえる。そこで、「強取」といえるには、暴行・脅迫によって被害者の反抗を抑圧し、それに基づいて財物を奪取したという因果経過を要し、現実に反抗が抑圧されなかった場合には「強取」にあたらず、強盗罪は未遂にとどまると解する。 (規範(判例は、現実に反抗が抑圧されなくても強盗罪にあたるとする〔最判昭24・2・8〕。答案では通説で立てる))
図:規範カード|「強取」と反抗抑圧
カードは2文です。第1文は理由です。条文は、脅迫を「用いて」強取する、と書いています。しかも、刑は恐喝罪より重い。重いのは、被害者の抵抗を押さえ込んで奪うからです。だから、強盗罪は、被害者の反抗を抑圧して財物を奪う類型だ、といえます。第2文が結論です。「強取」といえるには、順番が3つつながらなければなりません。脅迫。それによる反抗の抑圧。それに基づく財物の奪取。この因果経過です。現実に反抗が抑圧されなかったなら、つながりが切れていますから、「強取」にあたらず、未遂にとどまります。土俵で考えます。押す力が十分に強くても、相手が土俵際で押し出されたのではなく、自分から一歩ひいただけなら、押し出しにはなりません。力の強さと、相手が実際に押し出されたかは、別に見ます。観点を、表にします。
図:「強取」について拾う観点
左から、脅しの強さ。Bは現実に抑圧されたか。現金が渡された理由。強盗は既遂か未遂か、です。
図:「強取」について事実で拾う
見るのは、脅しがBを現実に抑え込んだか、です。脅しの強さは、すでに見たとおり、客観的に足りています。ですから、ここで拾うのは、Bの現実の状態です。Bは、ボタンを押したので、係員がすぐ来ると分かっていました。怖さを感じず、断ろうと思えば断れる状態でした。現金を出したのは、脅しに抑え込まれたからではありません。時間を稼ぐためです。ですから、脅迫によって反抗が抑圧され、それに基づいて奪取した、という因果経過がありません。甲は、現金を「強取」したとはいえません。強盗は、未遂にとどまります。未遂を罰する条文は、243条です。
条文刑法243条
刑法243条(未遂罪) 第二百三十五条から第二百三十六条まで、第二百三十八条から第二百四十条まで及び第二百四十一条第三項の罪の未遂は、罰する。
236条の未遂は罰せられます。よって、強盗未遂罪、243条、236条1項が成立します。現金が甲の手に渡ったのに、未遂です。強盗罪が求める結果は、物が渡ることではなく、抑え込んで取る「強取」です。ですから、脅しがBを抑え込んだかを見る、ということです。
先の窃盗との関係
図:出来事の時系列
最後に罪数です。甲は、同じBの店で万年筆を盗み、続けて現金を得ようとして、強盗未遂に及びました。窃盗罪と強盗未遂罪が、別々に成立して併合罪になるのか。それとも、1つの罪にまとまるのか。規範は、こうです。
⭐ 論文で書く規範:窃盗と強盗の包括一罪 窃盗と強盗のように異なる構成要件に該当する数個の行為であっても、①被害法益が同一で、②時間的・場所的に近接した行為が、③同一または継続の犯意に基づくものである場合には、全体を一体として評価し、重い強盗罪の包括一罪になると解する。 (規範(通説で立てる))
図:規範カード|窃盗と強盗の包括一罪
カードは1文です。包括一罪とは、種類の違う罪が1つにまとまって、重いほうの罪として処罰されることです。条件は3つ。被害の中身が同じ。時間と場所が近い。財物を得る意思が続いている。この3つがそろえば、全体を1つの流れとして評価します。事後強盗罪の回で見た、混合包括一罪です。答案では、あの回の2つに、意思の継続を加えて書きます。事実を当てます。
図:包括一罪の3つの事実
1つ目は、被害の中身です。万年筆も現金も、Bが営む文具店の財物で、被害者はどちらもBです。同じです。2つ目は、時間と場所です。万年筆を腰袋に入れてから約5分後に、同じ店内で脅しています。時間も場所も近いです。3つ目は、犯意です。甲は、店の財物を得ようとして店にいます。万年筆を取ったあと、Bに見つかったのに乗じて、現金も得ようとしました。財物を得る意思が、続いています。3つともそろいました。先の窃盗罪は、重い強盗未遂罪に包括されます。強盗未遂罪の一罪です。別々に数えると、同じ店の1つの財産侵害の流れを、二重に評価することになります。
事実を1か所変える
図:変形の事実
事実を1か所だけ変えて、結論が動く場面を見ます。変えるのは、Bが通報ボタンを押していたかどうかです。Bは、通報ボタンを押していませんでした。バールを振り上げた甲を見て、足がすくみ、声も出せなくなります。そして、震える手で、レジから現金約12万円を取り出し、甲に差し出しました。脅し方も、体格も、場所も、金額も、甲の意思も、基本事例と同じです。観点を、表にして示します。
図:変形で拾う観点
上の段が基本事例、下の段が変形です。左から、Bの状態。現実の反抗抑圧。強盗は既遂か未遂か。窃盗の扱い、です。
図:変形で事実を拾う
見るのは、これまでと同じです。脅しがBを現実に抑え込んだか。脅しの強さは、基本事例と変わりません。客観的に足りています。違うのは、Bの状態です。変形のBは、足がすくみ、声も出ません。もはや抵抗できない状態です。反抗が抑圧されています。そうなると、脅迫、反抗の抑圧、財物の奪取という流れが、つながります。現金は「強取」されたといえます。強盗既遂、236条1項です。先の窃盗は、変形でも、同じ3つの事実で強盗に包括されます。今度は、既遂の強盗にまとまります。2つの場面を、1枚の表に並べて整理します。
図:2つの場面の整理
決め手は、脅しが、現実にBの反抗を抑圧したか、です。基本事例は抑圧していないので、強盗未遂です。変形は抑圧しているので、強盗既遂です。
結論・罪数
図:甲の罪責の検討結果
結論です。甲には、建造物侵入罪と、強盗未遂罪が成立します。先の窃盗罪は、強盗未遂罪に包括されます。
条文刑法54条1項
刑法54条1項(一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合等の処理) 一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。
建造物侵入罪と強盗未遂罪は、手段と結果の関係にあります。2つの罪が、一方を手段として他方が行われる関係にあるとき、これを牽連犯といいます。刑法54条1項後段です。この関係は、その事件でたまたまつながったかではなく、罪の性質上、ふつうそうつながるかで見ます。建物への侵入は、中での盗みや強盗の手段になるのが、ふつうの形です。本問でも、甲は店の物を取るために入り、その流れで脅しに及んでいます。罪は2つ成立したままですが、ふつうセットで行われる罪どうしは、ひと続きの犯行として、刑は重いほうの罪の刑1つで決めます。つながりの無い2つの罪なら、併合罪として、刑の上限が重くなります。建造物侵入罪の刑は、3年以下の拘禁刑か罰金、強盗罪の刑は、5年以上の有期拘禁刑です。重いのは強盗の側ですから、甲の刑は、強盗未遂罪の刑で決めます。なお、もし財物を得たあとで人を死傷させていたなら、その点は、強盗致死傷罪、240条の検討になります。本問は、人の死傷がありませんから、ここまでです。
完成答案
図:完成答案:侵入、窃盗、強盗罪と事後強盗罪の区別
こちらが完成答案です。1枚目は、建造物侵入と窃盗、そして、強盗罪と事後強盗罪の区別です。
図:完成答案:脅迫
2枚目は、「脅迫」です。基準と、あてはめです。
図:完成答案:強取
3枚目は、「強取」です。ここが、いちばん厚い部分です。
図:完成答案:罪数と結論
最後の板は、先の窃盗との関係と、結論です。罪数まで書いて締めくくります。
参照条文
- 刑法130条
- 刑法235条
- 刑法236条1項
- 刑法238条
- 刑法243条
- 刑法54条1項