刑法ゼロから刑法 論文

承継的共同正犯(後編)の書き方

甲が70代のVに未納の料金が80万円あるという嘘の電話をかけたあと、事情をすべて聞いて加わった乙が、Vに嘘を告げずに玄関で現金入りの封筒を受け取った事例で、乙の罪責を答案に書き切る回。共同正犯の処罰根拠から、加わる前の分は原則として負わないこと、続いていたVの錯誤を手段として使ったから詐欺罪の共同正犯になることを確かめる。Vが嘘に気づいて警察に協力していた場合(だまされたふり作戦)は詐欺未遂罪の共同正犯になることを、最決平29・12・11 で確かめる。

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ゼロから刑法 論文/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

事例

Vの自宅での経過 図:Vの自宅での経過

平日の午後2時10分頃です。住宅街にある一戸建ての玄関先に、若い男が立っています。玄関の戸が開いて、70代の女性が出てきました。女性は、この男を、電話で言われていた係員が来たものと思い込んでいて、現金80万円の入った封筒を差し出します。男は、何も言いません。黙って封筒を受け取り、そのまま立ち去ります。この場面に至るまでを、順に見ます。舞台は、女性が一人で暮らす一戸建ての自宅です。登場するのは3人。無職で30代の甲。甲の知人で、アルバイトをしている20代の乙。そして、この家に住む、70代の女性のVです。

午後0時頃、甲は、Vの自宅に電話をかけて、未納の料金が80万円あるという嘘を告げました。Vは、本当だと信じ込みます。そして、現金80万円を封筒に入れて用意し、集金に来る係員を自宅で待つことにしました。午後1時30分頃、甲は乙に電話をかけます。Vに嘘を告げたこと、Vが信じ込んで現金80万円を用意していることを、すべて伝えました。そのうえで、「Vの自宅へ行って、封筒を受け取ってくれ。受け取ったら5万円を渡す」と頼みます。乙は、「騙されているなら、受け取るだけで済むな。分かった」と答えて、引き受けました。

乙は、甲がVを騙したことも、Vが騙されて現金を用意していることも、聞いて知っていました。午後2時10分頃、乙は、Vの自宅の玄関を訪ねます。Vは、乙を係員だと思い込み、現金80万円入りの封筒を差し出しました。乙は、何も言わずに受け取って、立ち去ります。乙は、Vに嘘を告げていません。Vは、受け取りの時点でも、その後も、嘘に気づいていません。

甲と乙とVの関係 図:甲と乙とVの関係

関係を、図で整理します。甲は、Vに嘘を告げました。そして、乙に電話で、受け取りを頼みます。乙は、Vから封筒を受け取りました。嘘を告げたのは、乙が加わる前です。事実は以上です。問いは次の1つです。乙の罪責を論じなさい。ただし、住居侵入の点と、甲の罪責は除きます。

罪名と条文の特定

答案は、乙が何をしたかから書き出します。乙がしたのは、Vから封筒を受け取ることだけです。Vに嘘は告げていません。この受け取りで、どの罪が問題になるのか。現金を、人を騙して渡させる罪、詐欺です。条文を見ます。

条文刑法246条1項

刑法246条1項(詐欺)
人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。

246条1項は、人を欺いて財物を交付させた者を、詐欺として処罰する規定です。欺くとは、嘘を告げて、相手に事実と違うことを信じ込ませること。交付とは、相手が自分の意思で、財物を渡すことです。詐欺は、人を欺く行為と、それによる財物の交付という、2つの段階でできています。間にあるのが錯誤、つまり、騙されて信じ込んでいる状態です。欺く行為で錯誤が生じ、その錯誤に基づいて交付がされる、という流れになります。成立要件は、条文どおりです。人を欺くこと、そして、財物を交付させること。この2つです。乙自身に欺く行為がないところを埋めるのが、共同正犯の規定です。

条文刑法60条

刑法60条(共同正犯)
二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。

二人以上で共同して犯罪を実行すると、全員が正犯、つまり、犯罪を実行した本人として扱われます。自分では直接やっていない部分についても、共同した全体について責任を負います。乙が、甲と共同して詐欺を実行したと言えれば、甲の欺く行為は乙のものとして扱われて、乙は詐欺になりえます。ただ、ここに問題があります。欺く行為は、乙が加わる前の午後0時頃に、甲がしました。乙は、加わる前の甲の行為についてまで、60条の共同正犯として責任を負うのか。途中から加わった者が、加わる前の分まで引き受けるかという問題で、承継的共同正犯の成否といいます。先に始めた甲を先行者、あとから加わった乙を後行者と呼びます。条文には、後行者が加わる前の分まで負うかどうかは、書かれていません。そこで、基準を立てて判断します。検討の順は、まず、この事例での詐欺罪の共同正犯です。そのあとで、事実を1か所変えた場合を見ます。

規範

規範に入る前に、前提を1つ確かめます。共犯は、自分の行為が結果に結びついているから、処罰されます。自分で直接やっていない部分まで責任を負うのも、そのためです。これを、答案では、決まった言葉で書きます。硬い言葉ですが、意味は、このあと1つずつ確かめます。共犯が処罰される根拠から出発して、基準を立てます。これは、条文に書かれていない基準で、解釈で立てる規範です。条文から読み取る成立要件とは違います。

⭐ 論文で書く規範:承継的共同正犯の成否
共同正犯の処罰根拠は、相互利用補充関係のもと、結果に対して物理的・心理的因果性を及ぼす点にある。
そうだとすれば、後行者は、加担前の先行者の行為による結果には因果性を及ぼしえないから、原則として、これについて共同正犯の責任を負わない。
もっとも、先行者の行為および結果を、自己の犯罪遂行手段として利用する意思のもと、現にこれを利用した場合には、相互利用補充関係が認められ共同正犯が成立すると解する。
(規範(通説で立てる))

規範カード|承継的共同正犯の成否 図:規範カード|承継的共同正犯の成否

1つ目の文から見ます。相互利用補充関係とは、お互いの行為を自分の計画に組み込んで、補い合う関係です。物理的な因果性とは、実際に力を貸して、結果に結びつけること。心理的な因果性とは、励ましたり安心させたりして、犯行を後押しすることです。共同正犯が、自分で直接やっていない部分まで責任を負うのは、こうして結果に因果性を及ぼしているからです。2つ目の文は、その裏返しです。因果性は、時間をさかのぼりません。乙が電話を受ける前に起きたことには、力の貸しようがありません。ですから、加わる前の結果については、原則として責任を負いません。

3つ目の文が例外です。先行者の行為や結果を、自分が犯罪をやり遂げるための手段として使う意思があり、現に使った場合です。過去の行為そのものに、あとから力を貸すことはできません。けれども、先行者が作ったものが今も残っていて、それを自分の手段として使えば、そこから先の結果には、自分の行為が結びつきます。甲から見ても、後行者の行為で、目的が遂げられます。お互いの行為を計画に組み込んで補い合う関係が、ここで成り立ちます。だから、共同正犯が成立します。なんでも使えるわけではありません。使えるのは、今も残っていて、これからの結果に結びつけられるものだけです。そこで、先行者が作ったものを、2種類に分けます。今も続いている状態と、既に起きて終わった結果です。続いている状態は、あとから来た人も使えます。終わって固定された結果は、手を加える余地がなく、ふつうは使えません。たとえば、流れている川には、途中から舟を浮かべて乗れます。けれども、舟を浮かべる前に流れ去った水は、あとから舟を浮かべた人が流したことにはなりません。

詐欺罪の共同正犯——乙が使ったもの

ここからが、答案の山場です。乙は、加わる前の甲の欺く行為を含めて、詐欺罪の共同正犯の責任を負うか。原則は負いません。例外にあたるかを、事実で確かめます。まず、甲が作ったものを特定します。甲は、午後0時頃、Vに未納の料金が80万円あるという嘘を告げて、Vを信じ込ませました。これが欺く行為で、Vは錯誤に陥ります。Vは、そのまま、現金80万円を封筒に入れて用意しました。この錯誤は、乙が午後1時30分頃意思を通じた時点でも、午後2時10分頃の受け取りの時点でも、続いていました。乙が加わった時点は、午後1時30分頃の電話です。乙は、甲がVを騙したことと、Vが騙されて現金を用意していることを知ったうえで、受け取りを引き受けました。ここで、甲と意思を通じたことになります。加わる前とは、この電話より前の、午後0時頃の嘘の電話と、それで生じたVの錯誤を指します。では、乙は、甲の欺く行為のうち、どの部分を使ったのか。観点だけを、表にして示します。

乙が使ったものを拾う観点 図:乙が使ったものを拾う観点

左は、乙が加わったときの、Vの状態です。真ん中は、乙がしたこと。右は、それぞれの評価です。

乙が使ったものを事実で拾う 図:乙が使ったものを事実で拾う

加わったときのVの状態から拾います。Vは、甲の嘘を信じ込んでいます。現金80万円を封筒に入れて、係員を待っています。この錯誤は、受け取りの時点でも、続いていました。次に、乙がしたことです。電話で、「騙されているなら、受け取るだけで済む」と考えて、引き受けました。そして、Vに嘘を告げずに、封筒を受け取りました。評価します。甲の欺く行為で生じた錯誤は、乙が加わったとき、まだ続いていました。乙は、この錯誤を、現金を受け取る手段として使っています。短い一言でも、使う意思は認められます。使う意思とは、先行者が作ったものを、自分が犯罪をやり遂げるために使おう、という意思です。乙は、Vが信じ込んで現金を用意していることを分かったうえで、だから受け取るだけで済む、と考えて引き受けました。騙されている状態に目をつけて、それを手段にしようとしています。ただし、考えただけでは足りません。現に使ったかどうかも、別に確かめます。Vは、錯誤が続いていたために、乙を係員だと思い込んで、封筒を差し出しました。続いていた錯誤を、実際に使ったといえます。

嘘を告げていないからといって、乙は何もしていないわけではありません。信じ込んでいるVを前にして、その錯誤をそのまま使って、現金を受け取りました。乙の受け取りは、その錯誤を通じて、現金が渡されるという結果に結びついています。結びついた分について責任を負うのは、処罰根拠のとおりです。反対に、乙が受け取りに行った時点で、Vがもう嘘を見抜いていたなら、続いている錯誤は残っていません。その場合は、このあと、事実を変えて確かめます。今回は、錯誤が続いていたから、使えたのです。甲から見ても、乙が受け取ることで、Vに現金を渡させるという目的が遂げられています。以上から、乙と甲の間には、相互利用補充関係が認められます。ですから乙は、加わる前の甲の欺く行為を含めて、詐欺罪の共同正犯としての責任を負います。

詐欺罪の結び 図:詐欺罪の結び

結びです。嘘を告げていない乙を詐欺にする根拠は、今も続いていたVの錯誤を使った、この1点です。

その他の要件と結論

乙の罪責の結論 図:乙の罪責の結論

詐欺の他の要件も、確かめます。Vは、甲の嘘による錯誤に基づいて、現金80万円入りの封筒を乙に交付しました。ですから、「人を欺いて財物を交付させた」といえます。また、乙は、甲から、Vを騙したことと、Vが騙されて現金を用意していることを聞いて知ったうえで、受け取っています。詐欺の故意があります。ここは争いがなく、答案では短く通す場所です。結論です。乙には、詐欺罪の共同正犯、刑法60条と246条1項が成立します。刑は、10年以下の拘禁刑です。

事実を1か所変える——だまされたふり作戦

変形の事実 図:変形の事実

事実を1か所変えて、結論が動く場面を見ます。出発点は同じです。共犯は、自分の行為が結びついた分について責任を負い、加わる前の分は、原則として負いません。同じ自宅、同じ3人です。ただし、Vが、嘘に気づいていた場合です。午後0時頃、甲がVに嘘の電話をかけるところまでは、同じです。電話を切ったあと、午後0時30分頃、Vは、嘘ではないかと考えて、警察に相談しました。そして、嘘だと分かります。午後1時頃、Vは、警察官の求めに応じて、だまされたふりを続けることにしました。現金の代わりに、白紙の束を封筒に入れて用意し、係員を自宅で待ちます。午後1時30分頃、甲は乙に電話をかけて、基本の事例と同じことを伝え、受け取りを頼み、報酬を約束します。乙は引き受けました。乙は、Vが嘘に気づいていることも、警察に相談したことも、知りません。乙が甲と意思を通じたのは、Vが嘘に気づいたあとです。午後2時10分頃、乙は、玄関で封筒を受け取りました。中身は白紙の束です。Vは、嘘だと分かったうえで、だまされたふりをして、封筒を差し出しています。問いは同じです。乙の罪責を論じなさい。ただし、住居侵入の点と、甲の罪責は除きます。観点を、表にして示します。

乙の罪責を拾う観点 図:乙の罪責を拾う観点

左は、受け取りの時点のVの状態です。真ん中は、詐欺が既遂になるか。右は、乙の罪責です。

乙の罪責を事実で拾う 図:乙の罪責を事実で拾う

まず、詐欺が既遂になるかです。Vは、受け取りの時点で、嘘に気づいています。錯誤は、もう無いのです。詐欺の既遂には、欺く行為による錯誤に基づいて、財物が交付される必要があります。Vが封筒を差し出したのは、警察官の求めに応じて、だまされたふりを続けていたからで、騙されて渡したのではありません。錯誤に基づく交付が無いので、既遂にはなりません。そのうえで、乙の罪責は、加わる前の欺く行為の点も含めて、詐欺未遂罪の共同正犯です。理由は、このあと、最高裁の決定で確かめます。先に、未遂の条文を見ます。

条文刑法250条

刑法250条(未遂罪)
この章の罪の未遂は、罰する。

詐欺は、既遂にならなくても、未遂が罰せられます。未遂とは、犯罪の実行に着手して、遂げなかったことで、その定めは43条本文にあります。この場面では、甲がVに嘘を告げた時点で、詐欺の実行に着手しています。そして、錯誤に基づく交付に至らなかったので、遂げなかった、つまり未遂です。未遂の刑は、減軽されることがあります。

続いて、最高裁の決定(最決平29・12・11)の事案を確かめます。共犯者が被害者に嘘を告げたあと、被害者は、嘘を見破りました。そして、警察に相談して、だまされたふり作戦を始め、現金の入っていない荷物を送ります。被告人は、作戦が始まったことを知らないまま、報酬の約束で荷物の受け取りを頼まれました。被害金を受け取る役割である可能性を認識しながら引き受けて、現金の入っていない荷物を受け取った、という事案です。第1審は無罪でした。加わる前の欺く行為の責任は負わせられず、加わったあとは、作戦が始まっていて実行行為が無い、という判断です。原判決は、詐欺未遂罪の共同正犯を認めました。最高裁は、原判決の判断を正当として、上告を棄却しています。

判例最決平29・12・11 刑集71巻10号535頁

だまされたふり作戦と詐欺未遂罪の共同正犯を認めた決定
被告人は、本件詐欺につき、共犯者による本件欺罔行為がされた後、だまされたふり作戦が開始されたことを認識せずに、共犯者らと共謀の上、本件詐欺を完遂する上で本件欺罔行為と一体のものとして予定されていた本件受領行為に関与している。そうすると、だまされたふり作戦の開始いかんにかかわらず、被告人は、その加功前の本件欺罔行為の点も含めた本件詐欺につき、詐欺未遂罪の共同正犯としての責任を負うと解するのが相当である。

決定の言葉を、言い換えておきます。欺罔行為とは、欺く行為のこと。加功とは、加わること。完遂とは、やり遂げることです。決定が理由にしたのは、欺く行為と一体のものとして予定されていた受領行為に、共謀のうえ関与したことです。

決定が挙げた事情 図:決定が挙げた事情

決定が挙げた事情は、2つです。1つ目は、共犯者の欺く行為のあとで作戦が始まり、被告人は、それを知らないまま、共犯者らと共謀したこと。2つ目は、被告人が関与した受領行為が、詐欺をやり遂げるうえで、欺く行為と一体のものとして予定されていたことです。この2つのもとで、加わる前の欺く行為の点も含めて、詐欺未遂罪の共同正犯の責任を負う、としました。設例の乙に当てはめます。乙は、甲の欺く行為のあと、しかも作戦が始まったあとに、作戦のことを知らずに、甲と意思を通じて、封筒の受け取りに関与しました。この受け取りは、甲が詐欺をやり遂げるうえで、嘘の電話と一体のものとして頼んだ行為です。ですから乙は、加わる前の欺く行為の点も含めて、詐欺未遂罪の共同正犯、刑法60条、250条、246条1項です。

だまされたふり作戦の場面は、規範の3つ目の文の言葉では、書きにくいところです。Vの錯誤という続いている状態は、もう無くなっています。ですから、基本の事例のように、続いている錯誤を現に使った、とは言えません。最高裁の決定も、利用する意思や、現に利用したという言葉では、理由を示していません。理由にしたのは、受け取りが、詐欺をやり遂げるうえで、欺く行為と一体のものとして予定されていたことと、被告人が、共謀のうえ、それに関与したことです。詐欺は、欺く行為と、それによる財物の交付がそろって、はじめて完成する、1つの犯罪です。嘘の電話が終わっても、受け取りが済むまでは、詐欺はまだ途中です。そこで、学説からは、こう読めます。乙が加わった時点で残っていたのは、錯誤ではなく、詐欺という犯罪の、まだ終わっていなかった部分、つまり受け取りだった。乙は、終わった他人の行為に、あとから乗ったのではなく、途中の犯罪の残りの部分を、甲と共同して行った。だから、加わる前の欺く行為の点も含めた、1つの詐欺について責任を負う、という読み方です。だまされたふり作戦の場面の答案では、続いている錯誤を使った、とは書きません。先ほど乙に当てはめたときの2つの事実、つまり、甲の欺く行為のあとに意思を通じたことと、嘘の電話と一体のものとして頼まれた受け取りに関与したことを拾って、結論を導きます。これに対して、先行者の暴行で負わせたけがのように、加わる前に既に終わって固定された結果は、ここでは使えません。残っていたのが、まだ終わっていない部分か、固定された結果か。ここが、結論の分かれ目です。

決定の被告人と乙には、違いがあります。決定の被告人は、被害金を受け取る役割である可能性を認識しながら、引き受けていました。乙は、甲から経緯をすべて聞いて知っています。認識の程度は同じではありません。けれども、決定の理由、つまり、欺く行為のあとに共謀して、一体のものとして予定された受領に関与した、という点は、乙にも当てはまります。なお、だまされたふり作戦の場面で未遂が成り立つかは、不能犯という別の論点にも関わります。この回は、決定の結論までにとどめます。

結論が分かれる境目

加わった時点で残っていたものの違い 図:加わった時点で残っていたものの違い

同じ規範を、ほかの型に当てた場合と並べます。1枚の表にします。1つ目は、傷害だけの型です。先行者が暴行して相手にけがをさせたあと、途中から加わった者が、自分でも暴行してけがを重くした場合です。加わる前に生じたけがには、あとからの暴行は結びつきません。既に固定された結果なので負わず、加わったあとの暴行で生じた分についてだけ、傷害罪の共同正犯の責任を負います。傷害の承継を否定した最高裁の決定(最決平24・11・6)の結論です。2つ目は、強盗の型です。先行者が財物を奪う目的で暴行して、相手を動けなくし、けがもさせたあと、途中から加わった者が、動けない相手から財物を運び出した場合です。強盗とは、暴行や脅迫で相手を抵抗できなくして、財物を奪う罪です。強盗が人を負傷させると、強盗致傷という、もっと重い罪になります。抵抗できない状態は今も続いているので使え、強盗罪の共同正犯になります。けがは既に固定された結果なので、ここでは使えず、強盗致傷罪の共同正犯にはなりません。3つ目が、詐欺の受け子です。設例のように、騙された状態が続いているところで受け取れば、詐欺罪の共同正犯です。だまされたふり作戦で錯誤が無くなっていても、受領が欺く行為と一体のものとして予定されていたので、詐欺未遂罪の共同正犯になります。こちらは、だまされたふり作戦について先ほど確かめた、最高裁の決定(最決平29・12・11)の結論です。分かれ目は、加わった時点で、なお続いているものがあったかどうかです。続いている状態、あるいは犯罪のまだ終わっていない残りの部分があれば、それを使った範囲で、加わる前の分も含めて負います。既に固定された結果については、負いません。

完成答案

完成答案:問題の所在、規範 図:完成答案:問題の所在、規範

こちらが完成答案です。1枚目は、問題の所在と、規範です。

完成答案:あてはめ、その他の要件、結論 図:完成答案:あてはめ、その他の要件、結論

2枚目は、あてはめと、その他の要件、そして結論です。

参照条文

  • 刑法60条
  • 刑法246条
  • 刑法250条

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