法律行為の解釈——合理的な真意・例文解釈・慣習92条・任意規定・信義則
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第1章 民法総則 ⑩/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
これまでの想起——91条の反対解釈

本題の前に、1問だけ復習です。91条は、強行規定違反が無効になる、とは直接書いていませんでした。では、どうやってその結論を導いたか、思い出せますか?声には出さず、考えてみてください……。では、答え合わせです。91条を裏返す——反対解釈でした。「公の秩序に関しない規定と異なる意思表示は、その意思に従う」を裏返して、「公の秩序に関する規定——強行規定——と異なる意思表示は、従わない」という結論を導きました。当事者の合意でも動かせない、公の秩序に関する規定です。大事な場面でもう一度使います。
法律行為の解釈——意味がはっきりしないときどうするか

この、意味を明らかにする作業を、法律行為の解釈と呼びます。

基準が4つあります。優先順位の高い順に、見ていきましょう。1つ目は、当事者の合理的な真意です。契約書に書いてあっても、当事者の真意とは食い違う——単なる例文にすぎない、と解釈されることもあります。こう呼ばれる解釈を、例文解釈と言います。例えば、ある賃貸借契約の条項に、「賃料の支払いを1回でも遅れたら、無催告で解除できる」と書いてあったとします。ある裁判例では、こうした条項について、当事者を実際に拘束する取り決めではなく、単なる例文——注意書き程度のもの——と解釈して、その効力を認めなかった例があります。もう1つ、身近な例で確かめましょう。友人にキャンプ用品を貸すとき、貸出票に「破損した場合は、買い替え相当額を弁償する」と書いたとします。でも、貸した側の本当の気持ちは、多少の擦り傷まで請求するつもりはなく、あくまで大きな破損を防ぐための注意書きだった、ということがあります。契約書の文言よりも、当事者が本当は何を望んでいたか——合理的な真意を、まず優先します。当事者が現に交渉して決めた金額や期間の条項は、例文にはなりません。気づきましたね。前々回、確定性のところで、「重要部分さえ決まっていれば足りる、細部は補充的解釈で埋められる」と言いました。そのとおりです。あの補充的解釈は、今の基準①——当事者の合理的な真意を使って、決まっていない細部を埋める作業だったんです。慣習です。ここで、今日1枚目の条文カードを見てください。
条文
民法 第92条(任意規定と異なる慣習)
ある業界や地域に、独自の商慣習がある場合——例えば、代金を月末にまとめて精算する昔からのやり方など——、当事者がその慣習に従うつもりだったと認められれば、契約の内容を埋めます。慣習を知りながら、特に反対しなかったときは、その慣習による意思があると考えてよい——そう扱われています。知りながら反対しなかったのなら、その慣習でよいと考えていたと見るのが自然だからです。逆に、はっきり反対していれば、92条は使えません。そのとおりです。任意規定です。当事者が別段の定めをしなかった場合に備えて、法が用意した規定のことです。さっきの引渡し場所が決まっていない契約も、慣習も無ければ、最終的にはこの任意規定で埋まります。信義則です。1条2項、覚えていますか?そのとおりです。あのとき、「もう読まないからあげる」と言った直後に「やっぱり返して」と言えない、という禁反言の話をしましたね。同じ発想が使えます。例えば、これまでにない新しい種類の契約で、適用できる慣習も、ぴったりの任意規定も見当たらないとします。最後は、当事者の一方に都合よすぎる解釈をしない、相手の正当な信頼を裏切らない——信義則に照らして、意味を決めます。そのとおりです。並び順は、当事者が実際に決めた・考えたことに近い順です。信義則は抽象的で何にでも使えてしまうので、他に頼れるものが無いときの最後の手段にしています。
強行規定>慣習>任意規定——91条と92条は同じ軸の表と裏

最後に、今日一番大事なつながりです。92条をもう一度見てください。慣習が使えるのは、「公の秩序に関しない規定と異なる慣習」でした。ということは、慣習は、強行規定には逆らえません。強行規定に反する慣習は、そもそも使えないんです。なぜかというと、強行規定は、当事者が合意しても動かせない、と法が決めた規定だからです。そのとおりです。慣習も結局は当事者の実際のやり方にすぎないので、強行規定という国の縛りには勝てません。では、慣習と任意規定は、なぜ慣習の方が優先するんでしょうか。理由は、任意規定の性格にあります。任意規定はもともと「当事者が別段の定めをしなかった場合に備えた、補充のための規定」です。だから、その業界や当事者の実際のやり方——慣習——の方が、当事者の本当の意思に近い、と考えられているんです。そのとおりです。ここで、具体例で確かめましょう。ある業界に、「代金を全額前払いさせ、引渡しは後日」という慣習があったとします。この慣習が、前払いの受領を禁じる強行規定にぶつかる場合——たとえ当事者双方がこの慣習によるつもりでも、慣習は通りません。ですが、同じ業界でも、「代金は商品到着から1か月後にまとめて支払う」という慣習が、単に民法の任意規定——支払い時期の定め——と異なるだけなら、話は別です。この場合は、業界慣習の方が優先して通ります。そのとおりです。だから、慣習は、任意規定には優先しますが、強行規定には優先しません。そして、この優先順位の理由から、慣習は任意規定より先に使われます。まとめると、強行規定が一番強く、次に慣習、そして任意規定という順番——この序列になります。まさに、そこです。91条を裏返したとき、出てきた結論は——強行規定は当事者の意思より強い、でしたね。当事者が任意規定と違うことを決めるのは自由。でも強行規定はそれを許さない。つまり——強行規定が任意規定より上、という順番になっています。そのとおりです。適法性の91条と、解釈の92条は、実は同じ1本の軸の、表と裏なんです。91条を裏返して強行規定優先を導いたのと、同じ発想が、92条の序列の中にも埋め込まれていたんです。
今日の地図(保存版)

まとめます。法律行為の解釈とは、意味がはっきりしない部分を埋める作業でした。当事者の合理的な真意、慣習、任意規定、信義則の順でした。契約書に書いてあっても、当事者の本当の意図とは食い違う、単なる例文と解釈されることがある——でしたね。そのとおりです。強行規定は慣習に優先し、慣習は任意規定に優先する——強行規定>慣習>任意規定という序列でした。

確定性、適法性、社会的妥当性、そして有効に効くための関門を、全部やり切りました。そのとおりです。

声には出さず、自分の力で思い出してみてください……。では、答え合わせです。強行規定が一番強く、次に慣習、その次が任意規定でした。こちらも、声には出さず考えてみてください……。では、答え合わせです。当事者が、その慣習による意思を有していると認められることでした。慣習を知りながら反対の意思を示さなければ、その意思が推定される、というものでしたね。もう一度、考えてみてください……。では、答え合わせです。契約書の文言よりも、当事者の合理的な真意が優先されるからです。文言が、当事者の本当の意図とは食い違う単なる例文にすぎない、と解釈されることがあるからでした。欠けたら無効になると言い続けてきた、その「無効」の中身——誰が主張できるか、取り消しとどう違うか——を、正面から見ていきます。そのとおりです。では、しましょう。