被補助人は、中身が空っぽから始まる——本人の同意は、三か所にある
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第1章 民法総則 ⑰/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
今日の地図——同じ十個のリストを、逆から使う人

- 四人の比較板の四人目の列を初めて埋める地図
- 制度の中身を誰が決めるかという第三の軸
前回の最後を、振り返っておきましょう。「同じ十個のリストを、逆から使う人がいます」。そう言って、終わりましたね。ここで一つ、聞いてみます。逆から使うとは、どういうことでしょうか?大丈夫です。今日、順番に確かめていきましょう。十個のリストは、前回見た、大きなお金や生活の土台が動く行為です。まずは、四人の地図からです。以前、四人の札を並べましたね。今日で、四人目が埋まります。名前は、被補助人です。そして、この人には——前の三人には無かった、もう一つの軸があります。「制度の中身を、誰が決めるか」という軸です。未成年者は、法律が中身を決めました。成年被後見人も、被保佐人も、審判が中身を決めました。
補助だけは——本人の同意なしには、中身が入りません。今日は、その「中身が空っぽから始まる」制度を見ていきます。
要件——「不十分」と、四人で唯一の第四の要件
図:要件の四段板
- ①事理を弁識する能力が不十分
- ②請求8者・本人と検察官を強調
- ③補助開始の審判
- ④本人以外の請求なら本人の同意
- 一字違い注記(被補助人=本人のほう/補助人=守る側)
この人は、被補助人と呼ばれます。名前がつくには、条件がそろわないといけません。前回と同じパターンです。まずこの条文を見てください。
条文民法15条1項・2項・3項
民法 第十五条(補助開始の審判) 精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。ただし、第七条又は第十一条本文に規定する原因がある者については、この限りでない。 2 本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。 3 補助開始の審判は、第十七条第一項の審判又は第八百七十六条の九第一項の審判とともにしなければならない。
「不十分」と「著しく不十分」——そこが、今日最初に押さえてほしい違いです。被保佐人は、判断する力が「著しく」不十分でした。この人は「著しく」が付きません。ただの「不十分」です。四人の中で、いちばん軽い段階です。だから、判断する力そのものは——かなりの部分、残っています。二つ目は請求です。この条文にも、たくさんの人が並んでいますね。今日も注目してほしいのは「本人」と「検察官」です。判断する力が不十分であっても——本人が自分から、審判を請求できます。検察官は、前回までと同じ理由です。三つ目は、家庭裁判所の補助開始の審判です。そして四つ目。ここが、今日いちばんの独特な要件です。二項を見てください。本人以外の者の請求で始めるには、本人の同意が要る。
冒頭の、おばあさんの場面です。家族が申し立てただけでは、まだ足りません。おばあさん自身の同意が無ければ、始まらないんです。これが、四人の中で唯一の要件です。未成年者にも、成年被後見人にも、被保佐人にも——この「本人の同意」という要件はありません。もう一つ、押さえておきましょう。本人が自分から申し立てるときは、この同意は要りません。申立てそのものが、本人の意思ですから。考えてみましょう。判断する力が不十分なだけで——判断する力そのものは、まだ残っています。その人に対して、本人の意思を無視して——札を立てるのは、筋が通りません。
この考え方が、今日ずっと効いてきます。もう一つ、条文の最後に、ただし書があります。「第七条又は第十一条本文に規定する原因がある者については、この限りでない」。十一条は、保佐です。すでに後見や保佐が必要なほど重い人には——補助は、できません。もう一つ、確認しておきます。「被補助人」は本人のほう。「補助人」は守る側です。迷ったら、「本人のほう」「守る側」と、言い換えて聞いてください。
原則——行為能力は制限されない
図:3分岐の効果板
- 自ら行為→原則:確定的に有効
- 同意を要する旨の審判があった行為→同意・許可が必要
- 代理権付与の審判があった行為→補助人が代理も可
- 前回の13条1項10号括弧書きの回収
では、実際に、この人が一人で契約をしたら、どうなるのでしょうか。まず、全体の地図から見ておきましょう。被補助人が一人で行為をする場合は——大きく分けて、三つの道筋があります。一つ目。何も審判が無ければ——原則どおり、確定的に有効です。二つ目。同意を要する旨の審判があった行為なら——補助人の同意か、それに代わる許可が要ります。三つ目。補助人が代理する道です。こちらは、代理権を付与する旨の審判があった行為だけです。ここで、大事な原則を確認しておきましょう。被補助人は、原則として——行為能力を持ったままです。
それどころか——制限行為能力者にすら、当たらないことがあります。制限行為能力者というのは、前に出てきた——一人で結んだ契約を、あとから取り消せる立場のことです。実は、前回、答えはもう画面に出ていました。覚えていますか。十三条一項十号の、括弧の中身です。もう一度、思い出してみましょう。「未成年者、成年被後見人、被保佐人及び——第十七条第一項の審判を受けた被補助人」。この「十七条一項の審判を受けた」が、今日の答えです。被補助人という名前がついても——十七条一項の審判を受けていなければ——そもそも、制限行為能力者の定義に入らないんです。たとえば、冒頭のおばあさんについて——補助人が代理してよい、という審判だけが出たとします。この人は、被補助人ですが、制限行為能力者ではありません。
前に見た括弧の中に、もう答えが書いてあったんです。
「同意」が、今日は三つの意味を持つ
図:三種類の同意を分ける板
- ①審判を出すことへの本人の同意=15条2項
- ②特定の行為をしてよいという補助人の同意=17条1項
- ③同意に代わる家庭裁判所の許可=17条3項
ここで、一度、整理しておきましょう。今日、「同意」という言葉が、何度も出てきます。実は、三つの違う意味があります。一つ目。審判を出すこと自体への、本人の同意。さっき見た、始めるときの同意です。二つ目。特定の行為をしてよいという、補助人の同意。これから見る、審判の中身そのものです。三つ目。同意に代わる、家庭裁判所の許可。迷ったら、誰の同意かを、思い出してください。一つ目は本人、二つ目は補助人、三つ目は裁判所です。
山場——同意を要する旨の審判は、十個の”中から選ぶ”

- 十個の一覧を薄く再掲し審判で選ばれた二つだけ色を付ける板
- 17条1項ただし書「一部に限る」と13条2項「以外の行為」の向きの対比
では、十七条一項の審判とは、具体的にどんなものでしょうか。さっきの、おばあさんの場面に戻りましょう。今度は、本人も同意して、補助が始まりました。そのうえで、家族がこう申し立てます。「不動産の売買と、お金の貸し借りだけは、補助人の同意を要する審判にしてください」。この条文を見てください。
条文民法17条1項・2項・3項・4項
民法 第十七条(補助人の同意を要する旨の審判等) 家庭裁判所は、第十五条第一項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、その審判によりその同意を得なければならないものとすることができる行為は、第十三条第一項に規定する行為の一部に限る。 2 本人以外の者の請求により前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。 3 補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる。 4 補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。
この「一部に限る」が、今日いちばんの注意点です。じっくり考えてみましょう。「一部」——つまり、十個のリストの内側です。覚えていますか。十三条二項には、こう書いてありました。「前項各号に掲げる行為以外の行為をする場合であっても」。「以外」と「一部」。この二つの言葉が、今日の核心です。前回、十個の外側に、足すことができました。今日は、十個の内側から、選ぶことしかできません。同じ考え方が、ここにも出ています。判断する力が大部分残っている人だから——前回の人より、軽い状態ですよね。その人に、前回より広い制限をかけるのは、筋が通りません。制限は、保佐がもともと制限されている十個の内側を超えないんです。
前回、「逆から使う人がいる」と言った——その答えが、これです。おばあさんの場合、指定できるのは——この十個のうちの、どれかです。十個に無い行為は、いくら家族が頼んでも——補助では、対象に入れられません。もう一つ、確認しておきましょう。二項です。本人以外の請求で中身を入れるにも——本人の同意が要ります。始めるときも、中身を入れるときも——本人の同意が要る。二か所目です。
選ばれなかった八つは、自由なまま

- 同じ自宅の売却が保佐と補助で結論が逆転する対比
- 十個の外側には補助では手を伸ばせないという注記
では、今の審判で、二つが選ばれたとしましょう。不動産の売買と、お金の貸し借りです。残りの八つは、どうなるでしょうか。選ばれなかった八つは、自由なままです。具体例で確かめておきましょう。同じおばあさんが、自宅を売る契約をしました。取り消せるでしょうか。不動産の売買は選ばれているので、取り消せます。では、もし審判で選ばれていたのが——「相続の承認・放棄」と「訴訟行為」の二つだったら、どうでしょうか。この場合、自宅の売却は取り消せません。これが、前回との最大の違いです。前回、同じ自宅の契約を見ましたね。あのときは、十個が最初から全部効いていました。今日は、審判で選ばれた分しか、効きません。
もう一つ、注意点があります。十個の外側、たとえば五万円を超える買い物には——補助では、同意を要する審判を出せません。前回は、外側にも広げられました。今日は、内側の十個からしか選べません。ここが、逆向きの、いちばんはっきりした形です。
同意してくれないとき、本人が家庭裁判所に行ける
図:補助人が正当な理由なく同意しない場合のフロー
- 補助人が同意しない→本人が家裁に請求→同意に代わる許可
- 前回の同じ仕掛けの呼び戻し
さて、同意が要る行為が決まったところで——もし補助人が同意してくれなかったら、どうなるでしょうか。実は、まだ手立てがあります。おばあさんが、施設に入るための資金にしようと——自宅を売りたいと考えたとします。でも、補助人がなかなか同意してくれません。実は、ここでおばあさん自身が——家庭裁判所に行くことができます。三項です。補助人が、利益を害するおそれもないのに同意しないとき——本人の請求で、同意に代わる許可を出してもらえます。実は、これは——前回の十三条三項と、そっくり同じ仕組みです。主語を、保佐人から——補助人に、置き換えただけの並行構造です。
補助人の同意が絶対条件なだけの仕組みだったら——補助人が理由なく渋るだけで——おばあさんの生活が止まってしまいます。前回、まったく同じ言葉で確認しましたね。この逃げ道が、ここにも用意されているんです。
取消権は、ここで生まれる
図:帰結板
- 同意を要する旨の審判の対象行為→同意・許可を得ずにした→取り消すことができる
- 120条1項の呼び戻し
- この4項に代理権の話が出てこないという伏線
では、同意も許可も無いまま、その行為をしてしまったら——どうなるでしょうか。四項を見てください。補助人の同意を得なければならない行為で——同意も許可も得ずにしたものは、取り消すことができる。だから、さきほど見た自宅の売却は——同意も許可も無かったので、取り消せます。誰が取り消せるかは、未成年者のところで見た条文が、そのまま使えます。今日の場合、同意権を持つ補助人が、そこに当たります。ここで、一つ確認しておきたいことがあります。この四項が対象にしているのは——「補助人の同意を得なければならない行為」だけです。
この先で見る、代理権の話は——この四項には、一言も出てきません。この一言が、次の山場に、そのままつながります。
山場——代理権を付与する旨の審判は、本人から何も取らない
図:関係図
- 本人が入院手続と入院費の支払いについて補助人に代理権を付与する旨の審判を受けている場面
- 本人自身が入院費を払った場合の問い
さて、ここで守る側——補助人の権限に、目を向けましょう。まず、補助人は誰が選ぶのか、確認しておきます。家庭裁判所が、職権で選任します。十六条と、八百七十六条の七です。選び方の仕組みは似ていますが、条文番号は違います。成年後見人は八百四十三条——前回の保護者は八百七十六条の二——今日の補助人は八百七十六条の七です。混同しないでくださいね。では、本題に入りましょう。さっきのおばあさんについて、こんな審判が出ているとします。「入院手続と、入院費の支払いは、補助人が代理してよい」。この状態で、おばあさん自身が——自分の手で、入院費を払いました。
実は、この入院費の支払いは、取り消せません。ここが、今日、最大の山場です。じっくり考えてみましょう。この審判の根拠条文を、見てください。
条文民法876条の9第1項・第2項
民法 第八百七十六条の九(補助人に代理権を付与する旨の審判) 家庭裁判所は、第十五条第一項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求によって、被補助人のために特定の法律行為について補助人に代理権を付与する旨の審判をすることができる。 2 第八百七十六条の四第二項及び第三項の規定は、前項の審判について準用する。
全部を渡すのではなく、範囲を絞って渡す点は——前回見た代理権と、同じ仕組みです。でも、今日、注目してほしいのは——この条文の中に、行為能力を制限する言葉が——一言も無い、ということです。代理権を付与する旨の審判は——補助人に「できること」を、足しただけです。おばあさんから「できること」は——一つも取っていません。もう一つ、思い出してください。さっき見た、十七条四項です。取消しを認めていたのは——「補助人の同意を得なければならない行為」だけでした。二つの条文事実を、合わせてみましょう。一つ。八百七十六条の九には、制限する言葉が無い。二つ。十七条四項が取消しを認めるのは——同意を要する旨の審判の場合だけ。この二つから、代理権を付与する旨の審判は——行為能力を制限しない、と言えるんです。
条文の構造から導かれる結論です。だから、おばあさんが自分で払った入院費は——そのまま、確定的に有効です。最後に、この条文の二項も、見ておきましょう。「準用する」——別の条文の中身を、そのまま持ってくる、という意味です。今日に効くのは、本人以外の請求で代理権を入れるときも——本人の同意が要る、という中身です。中身を入れるときは、どちらの審判でも——本人の同意が要ります。これで、二か所目がそろいました。
図:四つの道具の板・四枚目(最初は一枚も無い形/審判で入れた分だけ持つ)
ここで、守る側の道具を、もう一度確認しておきましょう。代理権と同意権、取消権と追認権の四つです。前々回は、同意権が最初から無い形でした。前回は、代理権が最初から無い形でした。今日は、最初は一枚も無い形です。審判で入れた分だけ、補助人は道具を持ちます。四人の中で、いちばん自由な形です。
山場——だから、代理権だけの補助人には、取消権が無い

- 本人が自分で入院契約を結び補助人が代理する範囲だと言って取り消せるかという問い
- 120条1項の代理人にあたるかの検討
では、逆の場面を、考えてみましょう。同じおばあさんが、自分で入院の契約を結びました。補助人が、こう言ったとします。「それは、私が代理する範囲だ。取り消させてもらう」。ここで、一度、考えてみてください。補助人に代理権があるなら——その補助人は、百二十条一項の「代理人」に当たって——取消権を持つのでしょうか?実は、この入院契約は、取り消せません。理由を、順番にたどってみましょう。さっき確認したとおり——代理権を付与する旨の審判は、行為能力を制限しません。制限されないということは、おばあさんは——入院契約について、今も一人で——確定的に有効な形で、契約する力を持ったままです。
そもそも、この入院契約は——取り消すことのできる行為には、当たらないんです。百二十条一項を、もう一度、思い出してください。取消権が発生するのは——「取り消すことができる行為」があるときだけです。補助人が代理人かどうかを問う前に——そもそも、取り消せる行為が無いんです。ここが、この山場の核心です。代理権があっても、補助人に取消権は生まれません。
山場——空っぽの札は、立てられない

- 補助開始の審判だけを単独で出すことはできないという15条3項の帰結
- 補助人は同意権か代理権のどちらか一つは必ず持つという結論
さて、ここまで見てきた二種類の審判——同意を要する旨の審判と、代理権を付与する旨の審判。この二つは、必ず両方そろうものなのでしょうか。片方だけのこともあります。では、聞いてみます。補助を始めるだけ始めて——中身は追って決める、ということはできるのでしょうか。実は、できません。覚えていますか。最初に見た、十五条三項です。補助開始の審判は、十七条一項の審判か——八百七十六条の九第一項の審判と、必ずともにする。補助開始の審判だけを——単独で出すことは、できません。考えてみてください。中身が一つも無い補助人は——何もできない人になってしまいます。同意権も無い、代理権も無い——それでは、札だけが立って、意味がありません。
だから——補助人は、少なくとも同意権か代理権の——どちらか一つは、必ず持ちます。片方だけのこともあれば——両方のこともあります。ただし——どちらも無い、ということだけはありません。
三つの審判を、一枚に
図:補助の中にある三つの審判の整理板
- 補助開始の審判
- 同意を要する旨の審判
- 代理権を付与する旨の審判=別個だが開始はどちらかと必ずセット
ここで、今日出てきた審判を、一度整理しておきましょう。補助の中には、三つの審判があります。一つ目、補助開始の審判。二つ目、同意を要する旨の審判。三つ目、代理権を付与する旨の審判。別個の審判ですが——一つ目は、必ず二つ目か三つ目と、セットで出ます。同意を要する旨の審判だけが出ている補助人もいれば——代理権を付与する旨の審判だけが出ている補助人もいます。両方そろっている補助人も、もちろんいます。同意権をまったく持たない補助人がいる——ここが前回と大きく違います。前回は、必ず十個ぜんぶに、同意権が及びました。今日は、同意権が、まったく無いこともあり得るんです。
三つの札は、重ならない
図:後見・保佐・補助の三つの札は重ならないという板
- 19条
- 未成年者は射程に入らないという注記
- 登記と18条1項の呼び戻し
さて、もう一つの「三つ」を、確認しておきましょう。今、見てきたのは、補助の中にある三つの審判でした。ここからは、話が変わります。三つの制度、それぞれの開始の審判です。後見と——保佐と——補助です。同じ「三つ」ですが、しっかり区別しましょう。さっきまでの三つは「三つの審判」と呼びました。これからの三つは「三つの札」と呼びます。おばあさんの症状が進んだとします。補助では足りず、後見が必要になりました。このとき、補助はどうなるでしょうか。実は、補助は残りません。この条文です。
条文民法19条1項・2項
民法 第十九条(審判相互の関係) 後見開始の審判をする場合において、本人が被保佐人又は被補助人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る保佐開始又は補助開始の審判を取り消さなければならない。 2 前項の規定は、保佐開始の審判をする場合において本人が成年被後見人若しくは被補助人であるとき、又は補助開始の審判をする場合において本人が成年被後見人若しくは被保佐人であるときについて準用する。
後見開始の審判をするときに——補助開始の審判は、取り消されます。三つの札は、いつでも一枚だけです。重ねて持つことは、できません。一人の人に、三種類の保護者がいたら——誰の判断が優先するのか、分からなくなってしまいます。だから、新しい審判をするときは——前の審判を取り消してから、切り替えるんです。未成年者は、この条文には入りません。条文の言葉を、もう一度見てください。出てくるのは、「後見開始」と「保佐開始」——そして「補助開始」の三つだけです。四類型ぜんぶが重ならないわけではありません。重ならないのは、この三つの札だけです。
未成年者に後見開始の審判が出ることもありますが、それは別の話です。最後に、二つだけ確認しておきましょう。一つ目は、登記です。今日出てきた三つの審判も——前回と同じように、法務局の後見登記等ファイルに記録されます。登記のされ方も、前回と同じ型です。もう一つ確認します。おばあさんの判断する力が、戻ったとします。補助は、自然に終わるのでしょうか。自然には終わらなかったはずです。前回もそうでした。家庭裁判所が取り消して初めて、終わるはずです。この条文に、その仕組みが書いてあります。
条文民法18条1項
民法 第十八条第一項(補助開始の審判等の取消し) 第十五条第一項本文に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判を取り消さなければならない。
原因が消滅しただけでは、終わりません。請求があって初めて、補助開始の審判が取り消されます。
今日の地図(保存版)
図:まとめ板
- 本人の同意が三か所:始めるとき
- 中身を入れるとき
- その結果として制限が効くかどうか
- 四人の二軸板の完成形
では、今日見てきたことを、一つにまとめましょう。「本人の同意」という言葉が——今日、三つの場所に出てきました。本人以外が申し立てるなら——本人の同意が無ければ、始まりません。同意を要する旨の審判にも——代理権を付与する旨の審判にも——本人以外の請求なら、本人の同意が要りました。三つ目は、本人が同意して入れた分が、どこまで効くかです。同意を要する旨の審判が入った行為だけ——行為能力が制限されます。代理権を付与する旨の審判は——本人から、何も取りません。だから被補助人は——保護の必要な範囲だけ——本人が選んで、そこにだけ手を借りる人なんです。そして、これで——四人の地図が、完成しました。
四人とも、原則の向きも——制度の中身を決める場所も、それぞれ違いました。外へ広げるか、内から選ぶか——そこも、いちばんはっきりした違いでした。さて、これで、四人それぞれの中身がそろいました。次は、少し、視点を変えます。取り消される側——契約の相手方は——どうやって、自分を守ればいいのでしょうか。気になりますよね。それは、次の話です。
参照条文
- 民法15条1項・2項・3項
- 民法17条1項・2項・3項・4項
- 民法876条の9第1項・第2項
- 民法19条1項・2項
- 民法18条1項