民法ゼロから民法 論文

94条2項類推適用③(共同相続と無権利者からの譲受人)

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ゼロから民法 論文/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

事例

事例——亡父の土地を相続した姉弟のAとD、単独名義の登記を見て買ったC 図:事例——亡父の土地を相続した姉弟のAとD、単独名義の登記を見て買ったC

第三者に求めるものは、善意か、善意かつ無過失か、でした。今日は、その書き分けを、きょうだいで土地を相続した場面で使います。先に、今日の見どころを言います。登記簿でD単独名義を確かめて買ったCがいます。ところが、設問1では、Cが手に入れられるのは、土地の半分だけです。残りの半分は、94条2項を持ち出す前に、答えが出てしまいます。今日の主題は、答案の順序です。先に決まる部分を確定してから、残った争点にだけ、94条2項の類推を載せます。事例を言います。共通の事案です。Aと、Aの姉のDは、亡くなった父の子で、2人きょうだいです。母は、父より先に亡くなっています。父は2月10日に亡くなり、丙土地を残しました。時価は約3,000万円です。遺産分割は、まだしていません。5月12日、Dは、遺産分割協議書を偽造して、丙土地をD単独名義にする相続登記をしました。Aは、Dと遺産分割の話をしたことも、協議書に署名したことも、ありません。翌年の9月8日、DはCに、丙土地を代金3,000万円で売りました。Cは代金を支払い、同日に所有権移転登記を受けました。Cは、登記簿でD単独名義になっているのを確認して、Dが単独の所有者だと信じて買いました。Aへの確認など、登記簿以外の調査はしていません。

共通の事案の時系列——2月10日に父が死亡、5月12日にD単独名義の登記、翌年9月8日にCへ売却して移転登記

時系列の板です。父の死亡、Dの単独名義の登記、Cへの売却。この3つの点を、おさえてください。Aは、何もしていませんよね。登記簿を見て買ったCは、Aの持分まで手に入れられるんですか。それが、今日の入口の問いです。ここで、いきなり94条2項に飛ばないでください。Dは、自分の持分なら売れます。問題は、Aの持分です。先に決まる部分があります。

設問1

設問1の問い——Aは、登記も売却も知らなかった 図:設問1の問い——Aは、登記も売却も知らなかった

設問1です。問題文の続きを読みます。Aは、丙土地がD単独名義になっていることも、CがDから買ったことも、知りませんでした。Aは遠方に住み、丙土地の登記を見たことがありませんでした。また、Dに書類や印鑑を預けたことも、ありませんでした。AはCに対し、自分の持分についての登記の抹消を求めました。問いは、AはCに何を請求できるか。また、Aが自分の名義への登記をしていない点は、結論に影響するか、です。答案は、請求の根拠から始めます。Aの請求は、共有持分に基づく妨害排除です。認められるのは、Aの持分がCに移っていない場合です。そこで、まず、丙土地を誰がどれだけ持っているかを確かめます。解説の動画で見た、共同相続と登記の話です。898条を、全文で読みます。

条文民法898条

共同相続の効力 第八百九十八条 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。 2 相続財産について共有に関する規定を適用するときは、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分をもって各相続人の共有持分とする。

相続人が数人なら、相続財産は共有になります。共有持分は、法定相続分で決まります。法定相続分は、法律が決めている各相続人の取り分です。母は先に亡くなっているので、相続人は、子のAとDだけです。子が数人いるときの相続分は、等しいと、900条が決めています。持分は、Aが2分の1、Dが2分の1です。Dが偽造した遺産分割協議書で、持分は動かないんですか。動きません。偽造した協議書は、遺産分割ではないからです。持分は、法定相続分のままです。

持分の分け方——丙土地を半分に割る。Dの持分2分の1はCへ、Aの持分2分の1はDが無権利でCへ移らない 図:持分の分け方——丙土地を半分に割る

ここが、今日の核心です。Dの持分と、Aの持分を、分けて考えます。畑にたとえます。姉弟が、1枚の畑を半分ずつ持っています。弟が、畑全体の売買契約書に判を押しました。売れるのは、弟の側の半分だけです。姉の側の半分は、弟のものではないので、売れません。Dの持分、2分の1から見ます。共有者は、自分の持分を自由に処分できます。DがCに売った丙土地のうち、Dの持分2分の1は、Cが有効に取得します。移転登記も受けているので、この部分は、Cのものです。次に、Aの持分、2分の1です。ここでは、Dは何の権利も持たない、無権利者です。他人の持分を売っても、Cに移りません。

日本の登記には、公信力がありません。登記簿に載っている名前を信じても、それだけでは、持ち主になれません。前の2回で、何度も確かめた原則です。D単独名義の登記は、Aの持分に関しては、無権利の登記です。だから、Cがどれだけ信じても、Aの持分は取得できません。ここで、問いです。Dは、丙土地を丸ごとCに売りました。Cが手に入れたのは、どの部分ですか?考えてみてください。答え合わせです。Dの持分、2分の1だけです。金額にして、1,500万円分の土地です。残りの2分の1は、Aのものとして、Aに残っています。もう1つ、確かめます。Aは、自分の名義に登記をしていません。それでも、Cに持分を主張できるのでしょうか。登記が必要かどうかは、2つの条文で確かめます。1つめは、177条です。全文で読みます。

条文民法177条

不動産に関する物権の変動の対抗要件 第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

登記をしなければ、第三者に対抗できない、という条文です。ただ、ここでいう第三者は、同じ土地を二重に買った人のように、登記がないことを主張する、正当な利益を持つ人です。Cは、Aの持分については、何も取得していません。取り合う関係に、立っていないのです。ですから、Aの持分との関係で、Cは177条の第三者にあたりません。2つめは、899条の2第1項です。全文で読みます。

条文民法899条の2第1項

共同相続における権利の承継の対抗要件 第八百九十九条の二 相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。

ポイントは、相続分を超える部分については、というところです。対抗要件が要るのは、法定相続分を超える部分だけです。Aの持分2分の1は、Aの法定相続分そのものです。超える部分ではありません。ですから、Aは、自分の名義に登記をしていなくても、自分の持分をCに対抗できます。影響しません。ここで、問いです。Aは、自分の名義の登記をしていません。それでもCに持分を主張できるのは、なぜですか?考えてみてください。答え合わせです。対抗要件を要求するのは、899条の2第1項が、法定相続分を超える部分だけだからです。Aの持分は、その範囲内です。

判例——共同相続人の一人が単独名義にして譲渡したとき、他の共同相続人は持分を登記なくして対抗できる

判例があります。事案から言います。共同相続人の1人が、単独名義の登記をして、第三者に売買予約の仮登記を与えました。他の共同相続人が、その仮登記の全部の抹消を求めました。最高裁は、その共同相続人の持分についてだけ、更正、つまり一部抹消を命じた原審を、是認しました。本問は、売買と移転登記です。ただ、判旨は、単独の移転登記を受けた第三取得者についても、同じ理屈で述べています。判旨を読みます。

判例最判昭和38年2月22日

共同相続と登記——無権利の登記と一部抹消 相続財産に属する不動産につき単独所有権移転の登記をした共同相続人中の乙ならびに乙から単独所有権移転の登記をうけた第三取得者丙に対し、他の共同相続人甲は自己の持分を登記なくして対抗しうるものと解すべきである。けだし乙の登記は甲の持分に関する限り無権利の登記であり、登記に公信力なき結果丙も甲の持分に関する限りその権利を取得するに由ないからである(略)。そして、この場合に甲がその共有権に対する妨害排除として登記を実体的権利に合致させるため乙、丙に対し請求できるのは、各所有権取得登記の全部抹消登記手続ではなくして、甲の持分についてのみの一部抹消(更正)登記手続でなければならない(略)。けだし右各移転登記は乙の持分に関する限り実体関係に符合しており、また甲は自己の持分についてのみ妨害排除の請求権を有するに過ぎないからである。

「乙」が単独名義にした共同相続人、本問のDにあたります。「丙」が第三取得者、Cです。「甲」が他の共同相続人、Aです。「けだし」は、なぜなら、という意味です。判旨は、2つの部分に分かれます。1つめは、登記なくして対抗できる、という結論です。理由は、乙の登記は甲の持分に関しては無権利の登記で、登記に公信力がないから、丙も甲の持分を取得できない、です。今日ここまで組み立てた理屈と、同じです。2つめは、請求の中身です。請求できるのは、全部抹消ではなく、甲の持分についてだけの、一部抹消の登記手続です。更正と書いてありますが、実質は、一部の抹消です。

請求の範囲——C名義の登記のうち、Aの持分に当たる半分だけを一部抹消する 図:請求の範囲——C名義の登記のうち、Aの持分に当たる半分だけを一部抹消する

無権利なのは、Aの持分についてだけだからです。C名義の移転登記は、Dの持分2分の1に関しては、実体に合っています。Cが、有効に取得した部分だからです。Aが持っているのは、自分の持分を守るための、妨害排除の請求権です。Dの持分の分まで、取り戻す権利はありません。ですから、Aが消せるのは、C名義の登記のうち、Aの持分に当たる半分だけです。結論を整理します。丙土地は、AとCの共有になります。

残る問い——177条で決まったのは、Aの持分がAのまま、というところまで 図:残る問い——177条で決まったのは、Aの持分がAのまま、というところまで

ここまでで、決まったことと、決まっていないことを分けます。決まったのは、Aの持分は、まだAのものだ、というところまでです。ただし、これは原則です。Cを守る道が、1つだけ残っています。94条2項の類推です。ここで初めて、この条文を出します。全文で読みます。

条文民法94条1項・2項

虚偽表示 第九十四条 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。 2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

前の2回と同じ条文です。AとDの間に、通謀はありません。虚偽の意思表示も、ありません。Dが、Aに無断で、単独名義にしただけです。94条2項は、直接適用できません。そこで、類推できるかを考えます。類推の枠組みは、前回までに立てたとおりです。趣旨は、本人の帰責性のもとに作られた虚偽の外観を、信頼した人を守ることです。条件は、①虚偽の外観、② 本人の帰責性、③外観への信頼でした。

設問1のあてはめ——虚偽の外観はあるが、Aに帰責性がない 図:設問1のあてはめ——虚偽の外観はあるが、Aに帰責性がない

あてはめます。1つめ、虚偽の外観です。D単独名義の相続登記は、Aの持分に関しては、実体に合わない不実の登記です。虚偽の外観があります。2つめ、本人の帰責性です。拾う事実は、3つです。Dが協議書を偽造して単独名義にしたことに、Aは何も関わっていないこと。Aは、登記がされたことも、Cへの売却も知らなかったこと。Aが書類を預けるなど、Dが名義を移せる状況を作った事実も無いこと。評価します。Aは、外観を自分で作ってもいませんし、知りながら存続させてもいません。通謀して作った場合と並べられる責任は、ありません。本人の帰責性を欠きます。②を欠くので、③の外観への信頼は、検討するまでもありません。94条2項は、類推されません。

もし、Aが実印を預けていたら、結論は変わりますか。そこが、境界のすぐ外です。書類を預けて、名義を移せる状況を作っていれば、不注意で作らせた型の検討に入ります。そこでは、Cに、善意かつ無過失まで求めます。本問のAは、何も預けていません。だから、類推しない、と言い切れます。設問1の結論です。Aは、自分の持分2分の1を、登記なくして、Cに対抗できます。ただし、請求できるのは、C名義の登記のうち、Aの持分についての、一部抹消の登記手続です。全部抹消では、ありません。

設問2

設問2の時系列——8月3日にAが電話で知る、約1年1か月の放置、翌年9月8日にCへ売却して移転登記

設問2に進む前に、前回までの要点を、1つ確かめます。不実の登記を、本人が知りながら放置したとき、どんな要件で94条2項は類推されましたか?本人が、不実の登記のされていることを知りながら、存続を明示または黙示に承認していたときです。第三者は、善意であれば足りて、登記も要りませんでした。今日は、その規範を、共同相続の事案に載せます。設問2です。設問1と同じ事案で、Aが知っていたら、どうなるかです。その年の8月3日、Aは、Dから電話で、「父の土地は私の名義にしておいた」と告げられました。それで、丙土地がD単独名義になっていることを知りました。しかしAは、姉との間でもめたくないと考えました。Dに抗議することも、法務局に相談することもせず、そのまま約1年1か月、何も言いませんでした。その間、Dは丙土地を駐車場として貸し、賃料を単独で受け取っていました。Aは、それを知りながら、賃料の分配を求めることもしませんでした。翌年の9月8日に、DがCに売り、Cが移転登記を受けたのは、共通の事案のとおりです。Cは、Aが気づいていたことを知りませんでした。AはCに、自分の持分についての登記の抹消を求めました。問いは、設問1と結論は変わるか、です。先に、変わらないものを確かめます。177条で決まる、Aの持分は原則としてAのもの、という部分は、設問1と同じです。Aが知っていたかどうかで、変わらないからです。変わりうるのは、例外の、94条2項の類推の、② 本人の帰責性です。

94条2項は、直接適用できません。AとDの間に、通謀も虚偽の意思表示もなく、D単独名義は、Dが無断で作ったものです。そこで、Aが外観を知りながら放置した場合に、類推できるかを考えます。

問題提起と規範——Aの持分についてD単独名義が不実と知りながら放置したとき、Cは保護されるか

問いを立てます。Aは、自分の持分2分の1についてD単独名義の登記が不実だと知りながら、放置していました。94条2項を直接適用できない中、Cは、第三者として保護されるでしょうか。

⭐ 論文で書く規範:不実登記の承認と94条2項の類推適用 ある不動産につき不実の所有権移転登記がされたとしても、所有者の意思表示がない限り、その不動産の所有権は移転しない。 また、虚偽の意思表示も事前の通謀もない以上、94条2項を直接適用することはできない。 しかし、不実の登記に対する真の権利者の承認が、登記経由の前に与えられたか後に与えられたかによって、虚偽の外観を信頼した第三者の保護に差をつける理由はない。 そこで、所有者に無断で不実の所有権移転登記がされた場合でも、所有者が不実の登記のされていることを知りながら、これを存続せしめることを明示又は黙示に承認していたときは、94条2項を類推適用し、所有者は、登記名義人が所有権を取得していないことをもって善意の第三者に対抗することができないと解する。 (規範(最判昭45・9・22))

⭐ 論文で書く規範:承認があった場合の第三者の要件 ここで「第三者」とは、不実の登記の当事者又はその包括承継人以外の者であって、不実の登記のされた不動産について利害関係を有するに至った者をいい、「善意」とは、利害関係を有するに至った時点で登記が不実であることを知らなかったことをいう。 そして、所有者は事後的にせよ虚偽の外観全体に承認を与えており、直接適用の場面と比べて所有者を保護する必要性に違いはないから、第三者は善意であれば足りる。 また、虚偽の外観を事後的に承認した所有者と第三者とは対抗関係に立たず、所有者の帰責性は非常に大きいから、第三者が登記を備える必要はない。 (規範(参考:最判昭45・9・22))

前の回で立てた規範を、そのまま映しています。3文目の、登記経由の前か後か、とは、登記がされる前に承認したか、されたあとで承認したか、です。前なら、通謀して作らせたのと変わりません。後が、今日の、知りながら放置です。どちらでも第三者の守り方に差をつけない、というのが、類推する理由です。使うのは、4文目の要件と、善意で足りる、登記は要らない、という結論です。

黙示の承認——知りながら、何もせず、単独の利用を黙認した事実を拾う 図:黙示の承認——知りながら、何もせず、単独の利用を黙認した事実を拾う

あてはめます。1つめの要件、知っていたことから、拾う事実は、8月3日に、Dから電話で、「私の名義にした」と告げられて、知ったことです。Aは、Dと遺産分割をしておらず、協議書にも署名していません。D単独名義が、自分の持分に関して実体に合わないことも、分かっていました。Aは、遅くとも8月3日には、不実の登記を知っていました。2つめ、存続の黙示の承認です。ここが、この設問の山場です。拾う事実は、5つあります。もめたくないと考えて、Dに抗議しなかったこと。法務局にも相談しなかったこと。約1年1か月、何も言わなかったこと。Dが丙土地を駐車場として貸して、賃料を単独で受け取っているのを、知っていたこと。そして、賃料の分配を求めなかったことです。評価します。登記の訂正を求める機会は、十分にありました。それなのに、Aは、Dが丙土地の単独の所有者として扱われるのを、約1年1か月にわたって、受け入れていました。

「もめたくない」は、消極的な理由です。何も言わずに受け入れていたことを、否定する事情には、なりません。それに、期間の長さだけで決めているのでもありません。Dが単独で賃料を受け取るのを黙認していた、という単独の利用の黙認が、受け入れていた事実を、はっきり示しています。ですから、Aは、不実の登記が存続することを、黙示に承認していました。境界のすぐ外も見ます。もしAが、8月3日の電話のあと、すぐにDに抗議し、法務局に相談していたら、どうでしょう。その間にDがCに売ったとしても、Aは存続を受け入れていません。承認とは言えなくなります。同じ、知っていた、でも、受け入れたのか、拒んだのかで分かれます。

Cは善意の第三者——登記簿しか見ていなくても善意で足り、登記を備える必要もない 図:Cは善意の第三者——登記簿しか見ていなくても善意で足り、登記を備える必要もない

3つめ、Cが善意の第三者であることです。Cは、売買で、丙土地について利害関係を持つに至った人です。第三者にあたります。177条の第三者とは、別の基準です。Cは、登記簿でD単独名義を確認して、Dが単独の所有者だと信じて買いました。Aが気づいていたことも、知りませんでした。善意です。善意で足ります。Aは、あとからとはいえ、不実の登記の全体を受け入れています。通謀して外観を作った本人と比べて、守る必要に違いはありません。だから、無過失までは要りません。調査が足りなくても、結論は変わりません。登記も要りません。理由は、設問1とは違います。Aは、Cに土地を売ったのではなく、Dが持ち主でないことを、Cに言えない立場にあるだけです。同じ土地を二重に買った人どうしのように、取り合う関係には立ちません。しかも、知りながら受け入れたAの責任は、とても重いのです。ですから、Cが移転登記を受けているかどうかは、問題になりません。結論です。94条2項が類推されます。Aは、Dが自分の持分2分の1を取得していないことを、善意の第三者のCに対抗できません。Cは、丙土地の全部を取得します。Aの持分2分の1も、失います。Aの一部抹消の請求は、認められません。

設問1と設問2の対比——同じ事案、同じ請求で、Aが知っていたかどうかが結論を分ける

設問1と、設問2を、並べます。177条で決まる部分は、同じです。Dの持分はCへ、Aの持分は、原則としてAのままです。違うのは、94条2項の類推です。設問1のAは、知りませんでした。外観に何も関わっておらず、帰責性を欠きます。類推されず、Aの持分は戻ります。設問2のAは、知りながら、約1年1か月、受け入れていました。黙示の承認があり、類推されます。Aの持分もCに移ります。ここで、問いです。同じ事案で、同じ請求なのに、設問1ではAの持分が戻り、設問2では戻りませんでした。分けたのは、何ですか?考えてみてください。答え合わせです。Aが、不実の登記を知っていたかどうかです。知っていて受け入れていたなら、帰責性があります。知らなかったなら、ありません。

答案の順序と対応表

答案の順序——177条と899条の2で決まる部分を確定、94条2項の類推、請求の範囲

今日の答案の順序を、1枚にします。1番目。先に確定するのは、177条と899条の2で決まる部分です。Dの持分はCへ、Aの持分はAのままです。2番目。Cを守る道として、94条2項の類推を載せます。Aの帰責性があるかどうかで、枝が分かれます。3番目。請求の範囲を、言い切ります。類推しないなら、Aの持分についての一部抹消です。94条2項から書き始めると、一部抹消の請求が、答案から落ちます。それに、Dの持分は、そもそもCのものです。持分を分けずに、丸ごと類推を論じると、論点が混ざります。

対応表への位置づけ——知りながら放置の行に、共同相続の場面が入る 図:対応表への位置づけ——知りながら放置の行に、共同相続の場面が入る

前回までの対応表に、位置づけます。設問2は、知りながら放置した行に入ります。根拠は94条2項、第三者に求めるものは善意で、登記は要りません。新しい分類は、足していません。

完成答案

完成答案① 第1 設問1——AのCに対する登記抹消請求 図:完成答案① 第1 設問1——AのCに対する登記抹消請求

ここまでを、答案の形にしました。動画を止めて、見てみてください。まず設問1です。持分を分けて考えている点を、確かめてください。

完成答案①(続き) 第1 設問1——AのCに対する登記抹消請求 図:完成答案①(続き) 第1 設問1——AのCに対する登記抹消請求

続きです。Dの持分とAの持分で、結論が分かれている点を、確かめてください。

完成答案①(続き) 第1 設問1——AのCに対する登記抹消請求 図:完成答案①(続き) 第1 設問1——AのCに対する登記抹消請求

次は、94条2項の類推です。規範を立ててから、要件を1つずつ当てはめている点を、見てください。

完成答案①(続き) 第1 設問1——AのCに対する登記抹消請求 図:完成答案①(続き) 第1 設問1——AのCに対する登記抹消請求

設問1の最後です。帰責性を欠くから、第三者の信頼を問わずに結論へ進んでいる点と、請求が一部抹消である点を、確かめてください。

完成答案② 第2 設問2——AのCに対する登記抹消請求 図:完成答案② 第2 設問2——AのCに対する登記抹消請求

設問2です。止めて見てください。

完成答案②(続き) 第2 設問2——AのCに対する登記抹消請求 図:完成答案②(続き) 第2 設問2——AのCに対する登記抹消請求

続きです。規範が、どの順で組み立てられているかを、見てください。

完成答案②(続き) 第2 設問2——AのCに対する登記抹消請求 図:完成答案②(続き) 第2 設問2——AのCに対する登記抹消請求

次は、あてはめです。知りながら、黙示の承認、善意の第三者の順に、事実と評価が書かれているかを、確かめてください。

完成答案②(続き) 第2 設問2——AのCに対する登記抹消請求 図:完成答案②(続き) 第2 設問2——AのCに対する登記抹消請求

設問2の最後です。小括から結論まで、Aの請求がどうなるかを、確かめてください。

今日の地図(保存版)

答案の順序——177条と899条の2で決まる部分を確定、94条2項の類推、請求の範囲

まとめます。登記簿を見て買ったCが、手に入れるものが分かれたのは、ばらばらではありませんでした。設問1は、Aは何も知りませんでした。決め手は、Dが売れるのはDの持分だけで、Aの持分は法定相続分の範囲だから、登記なくして対抗できる、ということです。94条2項は、Aに帰責性がないので、類推されません。請求は、Aの持分についての一部抹消で、全部抹消ではありません。設問2は、Aは気づいて、約1年1か月放置し、賃料の単独受領も黙認しました。決め手は、知りながら存続を黙示に承認していたことです。Cは善意で足り、登記も要りません。Aの持分も、Cに移ります。

参照条文

  • 民法898条
  • 民法177条
  • 民法899条の2第1項
  • 民法94条1項・2項

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