民訴 ゼロから民訴#1【後編】

民事訴訟の全体像——提起→審理→判決→確定の9ステップ

訴えの提起から確定まで、民事訴訟の手続を9ステップで通し読みする。訴状の記載事項(134条)、訴訟係属、必要的口頭弁論(87条1項)、判決3種、上訴期間、確定判決の3効力(既判力・執行力・形成力)までを時系列の地図で押さえる。

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第1編 概要 ②/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

「ゼロから民訴」#1の後編。前編(民訴とは何か・存在根拠・2大特徴)を受けて、民事訴訟の手続を訴え提起→審理→判決→確定の時系列で、9つのステップとして一気に歩く。個別制度は次章以降で深掘りするので、まずは全体像の地図を頭に入れる。

ステップ1:訴えの提起(134条) 〔短答知識〕

手続の入口は訴状の提出。134条2項の記載事項が短答で問われる(2号立て)。「当事者及び法定代理人(1号)」「請求の趣旨及び原因(2号)」。「当事者だけ」と覚えると法定代理人が漏れる——未成年者なら親権者、成年被後見人なら成年後見人も訴状に記載する。

  • 請求の趣旨=「何を求めるか」の結論(例:被告は原告に100万円を支払え)。
  • 請求の原因=「なぜ求めるか」=権利を特定する事実(例:令和6年4月1日に100万円を貸し付け、返済期日が到来した)。

趣旨(何を)と原因(なぜ)をセットで書かないと、裁判所は争いを特定できない。

改正注意:令和4年改正で条文が繰り下がり、旧133条が現行134条になった。しかも現行133条は全く別内容(住所・氏名等の秘匿)。古い教材の「133条」は改正前表記なので注意。

ステップ1(続き):三面構造・訴訟係属 〔短答知識〕

甲(原告)が訴状を裁判所へ提出 → 裁判所が乙(被告)へ送達 → 乙が答弁書を提出。この「原告→裁判所←被告」の三角形が訴訟の三面構造(当事者同士が直接向き合わず、裁判所を頂点に置く)。

訴訟係属=その訴訟が裁判所に繋がっている状態。発生時点は訴状提出時ではなく被告に送達された時点(短答頻出の誤り=「訴状提出時に係属」)。係属中は同じ紛争を別の裁判所で重ねて訴えられない=二重起訴の禁止(142条)。また訴訟の入口と出口は当事者が握る=処分権主義(246条)——申し立てた範囲(例:60万円)を超えて裁判所が判断することはできず、取下げで手続を終わらせるのも当事者。

ステップ2:訴状審査・送達 〔短答知識〕

裁判所が訴状を審査し、不備があれば補正命令(137条)。応じなければ訴状却下。審査を通ると被告へ送達し、その到達時点で訴訟係属が発生する。

ステップ3:第1回口頭弁論 〔短答知識〕

指定期日に両当事者が出頭し言い分を戦わせる=口頭弁論

【条文】民事訴訟法87条1項(口頭弁論の必要性) 当事者は、訴訟について、裁判所において口頭弁論をしなければならない。ただし、決定で完結すべき事件については、裁判所が、口頭弁論をすべきか否かを定める。

原則「しなければならない」=必要的口頭弁論の原則ただし書の正文は「すべきか否かを定める」(「するかどうか」は旧文・誤り)。口頭弁論の4原則も頻出——公開主義(憲法82条)・双方審尋主義(必ず両者を聴く)・口頭主義直接主義(判決する裁判官が自ら審理に関与)。

ステップ4:弁論手続 〔短答知識〕

審理は弁論手続証拠調べ手続の2本柱。弁論手続は双方の主張を出し合う工程。原告の主張に対し被告が認否する——「否認(そんな事実はない)」「不知(知らない)」「自白(認める)」「沈黙」。沈黙は明らかに争わない場合、自白したものと扱う=擬制自白

ここで弁論主義が登場——事実と証拠の収集は当事者の役割で、裁判所は当事者が出したものだけで判断する。処分権主義が手続の「外枠」なら、弁論主義は審理の「内側」。3テーゼ=主張責任(主張しない事実は使えない)・自白の拘束力(自白した事実は証明不要)・職権証拠調べの禁止。裁判官が私的に「弁済があった」と知っていても、当事者が主張しない限り判決で考慮できない。

ステップ5:証拠調べ手続 〔短答知識〕

当事者が申し出た証拠を裁判所が採否し実施する。種類は証人尋問・書証・鑑定・検証など。裁判所はこれらから心証を形成する。証明責任=事実が真偽不明(ノンリケット)のとき、どちらが不利益を受けるかのリスク分配ルール。立証できなかった側が負ける(法律要件分類説・自由心証主義)。

ステップ6:口頭弁論の終結 〔短答知識〕

裁判所が「審理は尽きた」と判断し口頭弁論の終結を宣言。以降は新たな主張・証拠を出せない。混同注意——「口頭弁論の終結(審理の終わり・ステップ6)」と「終局判決(最終判決・ステップ7)」は別物。さらに終結時は既判力の基準時でもある(終結後に新証拠が出ても、それだけでは後訴で蒸し返せない)。

ステップ7:終局判決(243条・250条・3種) 〔短答知識〕

【条文】民事訴訟法243条1項(終局判決) 裁判所は、訴訟が裁判をするのに熟したときは、終局判決をする。

「裁判をするのに熟した」=主張と証拠調べが出そろい判断できる状態。

【条文】民事訴訟法250条(判決の発効) 判決は、言渡しによってその効力を生ずる。

判決書を書いただけでは効力は生じず、法廷での言渡しが効力発生の起点。判決の3種類(頻出)——

  • 認容判決——請求を認める(原告勝ち)。
  • 棄却判決——本案で理由なし(原告負け・中身を審理した)。
  • 却下判決——訴訟要件(当事者適格・管轄・訴えの利益等)を欠き、本案に入れず門前払い。

整理すると、本案判決=認容・棄却(中身を審理した)、訴訟判決=却下(中身を審理しなかった)。判決以外の終了として、取下げ・請求の放棄・請求の認諾・和解(処分権主義の出口機能)もある。

ステップ8:上訴期間(2週間)→確定 〔短答知識〕

判決書の送達後2週間以内に上訴しなければ確定する。不服申立ては3種——第一審に対する控訴(第二審=高裁)、控訴審に対する上告(最高裁)、確定後の例外的手続=再審

ステップ9:確定→3効力(114条1項) 〔短答知識〕

確定判決には既判力・執行力・形成力が生じる。核心は既判力

【条文】民事訴訟法114条1項(既判力の客観的範囲) 確定判決は、主文に包含するものに限り、既判力を有する。

主文に包含するものに限り」=判決の結論(主文)だけに既判力が生じ、理由中の判断には及ばない。紛争の蒸し返しを防ぐには結論を確定させれば足り、理由まで縛ると予測できない範囲まで及ぶから。既判力の3範囲=客観的範囲(何に=主文のみ・114条1項)・時的範囲(いつまで=口頭弁論終結時)・主観的範囲(誰に=原則当事者間のみ・115条1項)。

残る2効力——執行力(確定判決を根拠に強制執行できる。ただし手続は民事執行法の守備範囲)、形成力(判決で法律関係そのものを変動させる。離婚判決・会社解散判決が典型で、対世効あり。形成判決に限って生じる)。

短答ひっかけ

  • 訴え提起の方式=現行134条(旧133条)。現行133条は秘匿の規定で別内容。記載事項は2号立て(当事者及び法定代理人/請求の趣旨及び原因)。
  • 訴訟係属は被告への送達時に発生(訴状提出時ではない)。
  • 必要的口頭弁論=87条1項。ただし書の正文は「すべきか否かを定める」。
  • 終局判決は243条1項(熟したとき)、発効は250条(言渡しによって)。
  • 却下=訴訟判決(門前払い・訴訟要件欠缺)、棄却=本案判決(中身を審理して理由なし)。ここを入れ替える引っかけに注意。
  • 既判力は114条1項・主文に包含するものに限り。基準時=口頭弁論終結時、主観的範囲=原則当事者間(115条1項)。
  • 上訴期間=判決書送達後2週間。強制執行の手続は民事執行法へ。

📝 論文の型

該当なし(全体像の概観回)。ここで名前だけ出した既判力・弁論主義・処分権主義・訴訟要件は、いずれも後の各論回で「規範+あてはめ」の答案の型として展開する。本回は各制度が手続のどこに位置するかを掴む地図として使う。

今日の地図(保存版)

  • 9ステップ:①訴え提起(134条)→②訴状審査・送達(137条・係属発生)→③第1回口頭弁論(87条1項・4原則)→④弁論手続(弁論主義・認否・擬制自白)→⑤証拠調べ(心証・証明責任)→⑥口頭弁論の終結(既判力の基準時)→⑦終局判決(243Ⅰ・250・3種)→⑧上訴期間(2週間)→⑨確定(3効力)。
  • 係属:被告への送達時に発生/二重起訴禁止(142条)。
  • 判決3種:認容・棄却(本案判決)/却下(訴訟判決・門前払い)。
  • 確定判決の3効力:既判力(114Ⅰ・主文のみ)・執行力(→民事執行法)・形成力(対世効・形成判決)。

次回は #2「訴訟と非訟・民訴の目的——『誰が主役か』で手続が分かれる」。

参照条文

  • 民訴134条(訴え提起の方式)
  • 民訴87条1項(必要的口頭弁論)
  • 民訴243条1項(終局判決)
  • 民訴250条(判決の発効)
  • 民訴114条1項(既判力の客観的範囲)

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