民訴ゼロから民訴#23

誰が代わりに戦うのか——訴訟上の代理

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第1章 訴訟の開始 ㉓/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

法定代理人——28条・35条・37条

法定代理人の位置づけ板(実体法上の法定代理人が、そのまま訴訟法上の法定代理人になる) 図:法定代理人の位置づけ板

法定代理人は、28条が入口です。前回、当事者能力と訴訟能力の入口として見た条文ですね。

条文民事訴訟法28条

民事訴訟法第28条(原則) 第二十八条 当事者能力、訴訟能力及び訴訟無能力者の法定代理は、この法律に特別の定めがある場合を除き、民法(明治二十九年法律第八十九号)その他の法令に従う。訴訟行為をするのに必要な授権についても、同様とする。

未成年者なら、親権者か未成年後見人。成年被後見人なら、その成年後見人です。民法で法定代理人とされている人が——そのまま訴訟法上の法定代理人になります。訴訟法だけの資格試験があるわけではありません。もう1つ、裁判所が選ぶ臨時の法定代理人もありましたね。法定代理人がいない、あるいは動けないとき——裁判所が選任する臨時の代理人でした。

当事者本人と同様に扱われる板(法定代理人は本人ではないが、送達の名宛人など、本人と同様に扱われることが多い) 図:当事者本人と同様に扱われる板

法定代理人は、当事者本人そのものではありません。ですが、訴訟能力を欠く者を全面的に——代理する以上、当事者本人と同様に扱われることが——多いんです。たとえば、送達です。訴状や判決書は、本人ではなく法定代理人宛てに——送られます。訴訟能力を欠く本人が受け取っても——有効な送達にはなりません。

37条の位置づけ板(法人・法人格なき団体の代表者は、法定代理人に準じて扱う) 図:37条の位置づけ板(法人・法人格なき団体の代表者は、法定代理人に準じて扱う)

29条で、法人でない社団や財団にも——代表者や管理人が定められていれば——当事者能力が認められるんでした。あのとき、宿題として残しておいたことがあります。団体そのものは、法廷で話すわけにいきません。実際に訴訟を進めるのは、代表者や管理人です。

条文民事訴訟法37条

民事訴訟法第37条(法人の代表者等への準用) 第三十七条 この法律中法定代理及び法定代理人に関する規定は、法人の代表者及び法人でない社団又は財団でその名において訴え、又は訴えられることができるものの代表者又は管理人について準用する。

法人の代表者や、団体の代表者・管理人は——法定代理人に準じて扱われます。法定代理人に関する規定が、そのまま当てはまることです。たとえば、マンションの管理組合を考えてみましょう。管理組合の理事長は、法人の代表者ではありませんが——管理組合を当事者とする訴訟では——法定代理人と同じ立場で訴訟を追行します。次は、訴訟代理人を見ていきましょう。

訴訟代理人①——法令による訴訟代理人

訴訟代理人の2類型板(法令による訴訟代理人/訴訟委任による訴訟代理人) 図:訴訟代理人の2類型板(法令による訴訟代理人/訴訟委任による訴訟代理人)

訴訟代理人には、2つの種類があります。法令による訴訟代理人と、訴訟委任による訴訟代理人です。法令による訴訟代理人は、本人の意思である地位に就き——その業務について、法令上——一切の裁判上の行為をする権限を、もともと持つタイプです。たとえば、会社の支配人がこれにあたります。

条文会社法11条1項

会社法第11条1項(支配人の代理権) 第十一条 支配人は、会社に代わってその事業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。

食品商社に勤める柏木さんが、支配人に就任したとします。支配人は、会社に代わって、事業に関する裁判上・裁判外の——行為が一切できる権限を持つ人です。柏木さんは、支配人になった瞬間から——会社の名前で、仕入先を相手に訴訟を起こせます。就任すれば、法令が権限を与えてくれます。

条文商法708条1項

商法第708条1項(船長の代理権) 第七百八条 船長は、船籍港外においては、次に掲げる行為を除き、船舶所有者に代わって航海のために必要な一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。 一 船舶について抵当権を設定すること。 二 借財をすること。

もう1つの例が、船長です。船籍港の外にいる船長は、抵当権の設定と借財を除いて——船舶所有者に代わって、航海に必要な一切の行為を——する権限を持っています。遠く離れた海の上では、船主にいちいち連絡を取って——指示を仰ぐことができません。船長という地位そのものに、法令が広い権限を——与えているんです。支配人も船長も、就任するのは本人の意思です。でも、代理権の範囲を決めているのは——本人ではなく法令です。だから「法令による訴訟代理人」と呼ばれます。この他にも、国の指定代理人や行政庁の指定職員など——同じ考え方の代理人がいます。

訴訟代理人②——訴訟委任による訴訟代理人

弁護士代理の原則の板(事件ごとに委任される代理人。原則として弁護士でなければならない) 図:弁護士代理の原則の板

もう1つの種類が、訴訟委任による訴訟代理人です。事件ごとに、訴訟追行を委任される代理人です。佐伯さんが、取引先とのトラブルで——弁護士に事件を依頼した、あの場面です。

条文民事訴訟法54条

民事訴訟法第54条(訴訟代理人の資格) 第五十四条 法令により裁判上の行為をすることができる代理人のほか、弁護士でなければ訴訟代理人となることができない。ただし、簡易裁判所においては、その許可を得て、弁護士でない者を訴訟代理人とすることができる。 2 前項の許可は、いつでも取り消すことができる。

訴訟委任による訴訟代理人は、原則として——弁護士でなければなりません。弁護士代理の原則と呼ばれます。自分で訴訟をやること自体は、できます。日本は、弁護士強制主義を採っていません。佐伯さんが1人で訴訟を進める、本人訴訟は許されます。自分でやるのは自由でも、他人に代理を頼むなら——資格のある専門家に限る、という配分なんです。素人に毛が生えた程度の人に頼んでしまうと——かえって権利を守れませんし、手続も進みません。

例外の板(簡裁の許可代理/認定を受けた司法書士/弁理士=法律が個別に認めた場合) 図:例外の板(簡裁の許可代理/認定を受けた司法書士/弁理士=法律が個別に認めた場合)

法律が個別に認めた場合だけ、例外になります。代表的なのが、簡易裁判所の許可代理です。裁判所の許可を得れば、弁護士でない人を——訴訟代理人にできます。個別の許可制で、裁判所はいつでも取り消せます。もう1つは、研修を受けて法務大臣の認定を受けた——司法書士です。簡易裁判所で代理ができます。弁理士も、特許庁の審決を争う訴訟のような——決められた事件では、訴訟代理人になれます。個別の法律が認めた場合です。簡易裁判所の手続を扱う回で、あらためて見ましょう。今日は、原則が弁護士だとだけ押さえてください。さて、佐伯さんの訴訟代理人になった弁護士は——どこまでのことができるんでしょうか。

訴訟代理権の範囲——55条

55条全文の板(委任を受けた事件について一切の行為ができる。個別的な制限は許されない) 図:55条全文の板

訴訟代理人の権限の広さを決めているのが、55条です。

条文民事訴訟法55条(2項は次の板)

民事訴訟法第55条1項・3項・4項(訴訟代理権の範囲) 第五十五条 訴訟代理人は、委任を受けた事件について、反訴、参加、強制執行、仮差押え及び仮処分に関する訴訟行為をし、かつ、弁済を受領することができる。 3 訴訟代理権は、制限することができない。ただし、弁護士でない訴訟代理人については、この限りでない。 4 前三項の規定は、法令により裁判上の行為をすることができる代理人の権限を妨げない。

順番に見ていきましょう。まず1項です。委任を受けた事件について、反訴や参加——強制執行、仮差押え、仮処分に関する行為ができて——弁済を受け取ることもできます。この幅広さの正体が、3項です。訴訟代理権は、制限することができません。本人が「ここまで」と個別に制限することはできません。理由は2つあります。1つは、手続の安定です。個別の制限を許すと——相手方も裁判所も、行為のたびに——権限の範囲を確認しなければなりません。もう1つは、法律の専門家である弁護士への信頼です。

背骨の回収板(前回=本人を守るために単独行為を封じた/今日=手続を守るために代理権の切り刻みを封じる) 図:背骨の回収板

  • 前回=本人を守るために単独行為を封じた
  • 今日=手続を守るために代理権の切り刻みを封じる

この理由、前回どこかで聞いた覚えはありませんか。本人を守るために単独ではやらせない、という話に近いですが——向きが逆です。前回は、本人を守るために、単独行為を封じました。今日は、手続を守るために——代理権の切り刻みを封じています。手続は積み重ねだから、途中でルールを変えられると崩れる。この1点から、両方が説明できるんです。弁護士でない訴訟代理人——さっきの簡易裁判所の許可代理や司法書士なら、制限できます。制限を許さない理由の1つが、弁護士への信頼だからです。

4項と2項の例外への板(4項=法令による代理人の権限には55条の制限が及ばない/2項=一切の行為の例外) 図:4項と2項の例外への板

  • 4項=法令による代理人の権限には55条の制限が及ばない
  • 2項=一切の行為の例外

支配人や船長の権限を守っているのが——55条の4項です。55条の1項から3項は、法令によって裁判上の行為が——できる支配人や船長のような代理人の権限を、妨げません。彼らの権限は、もともと会社法や商法という——別の法令が、一切の行為として認めているからです。さて、ここまでは「一切の行為ができる」という話でした。ですが、この「一切」には、例外があります。それが、2項です。

条文民事訴訟法55条2項

民事訴訟法第55条2項(訴訟代理権の範囲) 2 訴訟代理人は、次に掲げる事項については、特別の委任を受けなければならない。 一 反訴の提起 二 訴えの取下げ、和解、請求の放棄若しくは認諾又は第四十八条(第五十条第三項及び第五十一条において準用する場合を含む。)の規定による脱退 三 控訴、上告若しくは第三百十八条第一項の申立て又はこれらの取下げ 四 第三百六十条(第三百六十七条第二項、第三百七十八条第二項及び第三百八十一条の七第二項において準用する場合を含む。)の規定による異議の取下げ又はその取下げについての同意 五 代理人の選任

中身を整理すると、5つになります。

論文で書く規範:55条2項——特別の委任が要る5つの事項 ①反訴の提起 ②訴えの取下げ・和解・請求の放棄や認諾・脱退 ③控訴・上告の申立て又はこれらの取下げ ④異議の取下げ又はその同意 ⑤代理人の選任 いずれも、訴訟の帰すうを大きく左右する行為である。委任を受けた事件についての一切の行為には含まれず、本人からあらためて特別の委任を受けなければならない。 (民訴法55条2項の5類型)

55条2項は、5つの事項を挙げています。反訴の提起。訴えの取下げや和解、請求の放棄や認諾、脱退。控訴・上告の申立てや、その取下げ。異議の取下げやその同意。そして、代理人の選任です。ここで、1項をもう一度思い出してください。反訴は、1項にも出てきましたよね。その「一切」から、提起だけを2項が切り出しています。たとえば、和解や訴えの取下げは——訴訟の帰すうを大きく左右する行為ですね。この5つには、特別の委任が要ります。

特別の委任と冒頭の和解板(和解には特別の委任が要る。すでに与えられていたかどうかで結論が変わる) 図:特別の委任と冒頭の和解板

弁護士は、佐伯さんから和解について——特別の委任を受けていなければ——勝手に和解することはできません。そこは、まだ結論を急がないでください。特別の委任を受けていたかどうかで、答えが変わります。もし佐伯さんが、委任のときに和解についての——特別の委任を、すでに与えていたなら話は別です。

授権が無かった場合の板(特別の委任が無ければ、必要な授権を欠く訴訟行為として34条に戻る) 図:授権が無かった場合の板

逆に、その特別の委任が無かったなら——この和解は、必要な授権を欠いた訴訟行為にあたります。34条は、訴訟能力だけでなく——訴訟行為に必要な授権を欠く場合も、扱っていましたね。佐伯さんが、あとから「その和解でよい」と——追認すれば、行為の時にさかのぼって有効になります。鍵は、特別の委任があったか——なければ、あとで追認したかどうかです。

論文で書く規範:“終わらせる行為だけは本人に返す”という型 32条2項(訴訟能力の制限を受ける者の側)——①訴えの取下げ・和解等 ②控訴・上告等の取下げ ③異議の取下げ等。控訴・上告の提起は含まない。 55条2項(訴訟代理人の側)——①反訴の提起 ②訴えの取下げ・和解等 ③控訴・上告の提起又はその取下げ ④異議の取下げ等 ⑤代理人の選任。控訴・上告の提起も含む。 同じ「終わらせる行為だけ本人に返す」という型だが、対象になる行為の幅が違う。 (32条2項と55条2項の異同)

ここで、前回見た32条2項を思い出してください。被保佐人と被補助人——保佐や補助を受けている人たちの話です。今日の55条2項と、驚くほど似た型です。ただ、対象になる行為の幅が——少し違います。32条2項の控訴・上告は、「取下げ」だけが対象でした。「提起」は入っていません。55条2項では、控訴・上告の「提起」自体も——対象に入っています。

提起と取下げがズレる理由の板(32条2項の控訴提起は不利益ではない/55条2項は争いを続けるかどうかという本人の決定) 図:提起と取下げがズレる理由の板

  • 32条2項の控訴提起は不利益ではない
  • 55条2項は争いを続けるかどうかという本人の決定

32条2項の場面を思い出してください。控訴を起こすこと自体は、本人にとって不利益な——行為ではありません。一審判決への不服申立てです。だから、被保佐人などが自分で控訴すること自体は——32条2項の特別の授権までは要らないんです。55条2項が問うているのは、不利益かどうかだけでは——ありません。さらに争いを続けるかどうかという——本人の重要な決定です。費用も時間もかけて、上の審級で争い続けるかどうかは——代理人の判断だけに任せず、本人が決めるべきことです。手続を守るために、代理権の切り刻みは封じる。それでも、争いを終わらせるかどうかだけは、本人に返す。

深掘り——和解の委任は、どこまで及ぶのか

判例への導入板(和解の特別の委任を得た訴訟代理人が、その和解の一条項として担保設定までできるか) 図:判例への導入板

ここで、代表的な判例を見ておきましょう。貸金を請求する訴訟で、被告の訴訟代理人が——和解についての特別の委任を、すでに得ていました。弁済期を延ばして分割払いに変更する——内容の和解を、訴訟代理人が成立させました。ただ、その和解の一部として——被告の不動産に、原告のため抵当権を設定する約束も——あわせて結ばれていました。あとになって被告は——「和解の授権はあっても、抵当権設定の権限までは——含まれていなかった」と主張しました。

判例最判昭和三八・二・二一 民集17巻1号182頁〈民訴百選〔第6版〕17事件〉

最高裁判所判決(和解で担保を設定した訴訟代理人の権限が争われた事件) 貸金請求事件における被告の訴訟代理人の和解の権限には、和解の一条項として、当該貸金債権の担保のため被告所有の不動産について原告に対し抵当権設定契約をなす権限も包含されるものと解するのが相当である。

最高裁は、この主張を退けました。和解についての代理権限のうちに——抵当権の設定契約をする権限も——含まれていたと判断したんです。ここは、注意して読んでほしいところです。この判例が判断したのは——「55条2項に何が挙がっているか」ではありません。すでに得た「和解」の特別の委任が——どこまでの範囲に及ぶか、という射程の問題です。ただ、判決が挙げた理由は限定的です。この事件の抵当権は、支払期限を延ばして分割払いにする——その見返りとして設定されたものでした。つまり、譲り合いそのものの一部だったんです。最高裁は「訴訟物に関する互譲の一方法」と述べています。

そのうえで「このような事実関係のもとでは」——権限に含まれる、と結論しています。譲り合いの一部かどうかが、物差しです。

冒頭の問いへ戻る板(和解の有効性は、特別の委任の有無と、その射程で決まる) 図:冒頭の問いへ戻る板(和解の有効性は、特別の委任の有無と、その射程で決まる)

さて、冒頭の問いに戻りましょう。弁護士が、佐伯さんに断りなく結んだ和解です。委任があれば、その和解は有効です。そして、この判例からもう1つ分かることがあります。譲り合いの一部といえる条項なら——和解の委任の中に入っている、ということです。逆に、特別の委任そのものが無かったなら——必要な授権を欠く訴訟行為として、34条の枠組みに戻ります。「本人が何も聞いていない」という一言だけでは——答えが出ない問いだったんです。

代理権はいつまで続くか——58条・59条

58条の板(当事者の死亡や訴訟能力の喪失があっても、訴訟代理権は消滅しない) 図:58条の板(当事者の死亡や訴訟能力の喪失があっても、訴訟代理権は消滅しない)

最後に、代理権はいつまで続くのかを見ましょう。

条文民事訴訟法58条

民事訴訟法第58条(訴訟代理権の不消滅) 第五十八条 訴訟代理権は、次に掲げる事由によっては、消滅しない。 一 当事者の死亡又は訴訟能力の喪失 二 当事者である法人の合併による消滅 三 当事者である受託者の信託に関する任務の終了 四 法定代理人の死亡、訴訟能力の喪失又は代理権の消滅若しくは変更 2 一定の資格を有する者で自己の名で他人のために訴訟の当事者となるものの訴訟代理人の代理権は、当事者の死亡その他の事由による資格の喪失によっては、消滅しない。 3 前項の規定は、選定当事者が死亡その他の事由により資格を喪失した場合について準用する。

1号を見てください。当事者の死亡や、訴訟能力の喪失があっても——消滅しません。佐伯さんが訴訟の途中で亡くなっても——弁護士の代理権は、そのまま続きます。訴訟能力を失うと手続が中断する、124条1項3号でした。

条文民事訴訟法124条2項

民事訴訟法第124条2項(訴訟手続の中断及び受継) 2 前項の規定は、訴訟代理人がある間は、適用しない。

ここで効いてくるのが、124条2項です。訴訟代理人がいる間は、中断の規定は適用されません。58条と124条2項は、同じ理由の——表と裏の関係にあります。弁護士が付いている以上、本人側の手続保障は——現に確保されているからです。わざわざ手続を止めてまで、代理関係を——リセットする必要が無いんです。2項と3項は、自分の名前で他人のために当事者となる——選定当事者などが、資格を失った場合の規定です。名前だけ押さえてください。

消滅する場合の板(代理人の死亡・委任関係の終了・委任者の破産など) 図:消滅する場合の板(代理人の死亡・委任関係の終了・委任者の破産など)

絶対に消えない、というわけではありません。消える場合もあります。代理人自身の死亡や、後見開始の審判。委任関係の解除や、委任者・受任者の破産などです。58条が守っているのは——佐伯さん側の事情で、代理関係が途切れないことです。弁護士自身がいなくなれば、当然、代理は終わります。この消滅事由の細かい中身は、民法のシリーズで扱います。

条文民事訴訟法59条

民事訴訟法第59条(法定代理の規定の準用) 第五十九条 第三十四条第一項及び第二項並びに第三十六条第一項の規定は、訴訟代理について準用する。

まだ、大事な仕組みが1つ残っています。59条です。この条文は、36条1項の規定を訴訟代理に準用します。36条1項は、本人または代理人から相手方に——通知しなければ、代理権消滅の効果は生じない——というルールでした。理由を考えてみましょう。もし通知が無くても消滅の効果が生じるなら——相手方は、知らないうちに代理権が消えている——代理人に対して、訴訟行為をしてしまうかもしれません。相手方を守るためのルールなんです。これで、代理権の始まりから終わりまでを見てきました。

「当事者」の章を閉じる——1つの問いが5つに分かれる理由

当事者の章の地図板(当事者の確定→当事者能力→当事者適格→訴訟能力→訴訟上の代理。1つの問いが5つに分かれる) 図:当事者の章の地図板

今日はここまでです。少し引いて、全体を眺めましょう。「当事者」という入口は、5つの問いに分かれます。今日で、そのうち4つを通り終えました。訴状の名前は誰を指すのか、という当事者の確定。そもそも当事者になれる資格は誰にあるか、という当事者能力。この事件で当事者としてふさわしいか、という当事者適格——ここだけは、これからです。自分で戦えるか、という訴訟能力。そして今日見た、代われるのは誰か、という訴訟上の代理です。全部「当事者」がらみなのに分かれる理由は——それぞれが違う問いを立てているからです。誰かという問い、なれるかという問い——ふさわしいかという問い、自分でやれるかという問い——代われるのは誰かという問いです。

丸暗記ではなく、問いの違いとして——持ち帰ってください。

送り先一覧板(弁論能力・中断受継・当事者適格と任意的訴訟担当・取下げと和解の要件・反訴・上訴・再審・簡裁の特則) 図:送り先一覧板

最後に、今日の話がつながる先をまとめます。弁論能力の要件や運用は、口頭弁論を扱う回で。中断・受継の細かい手続は、期日や期間を扱う回で。訴訟担当と代理人の違い、任意的訴訟担当、当事者適格は——まとめて、当事者適格を扱う回で。訴えの取下げや訴訟上の和解の要件と効果は、それぞれの回で。反訴は反訴を扱う回、上訴の提起は上訴を扱う回で。代理権の欠缺と再審の関係は、再審を扱う回で。簡易裁判所の許可代理や、司法書士の代理は——簡易裁判所の回で扱います。たくさんの送り先が出ましたが、軸は1本でした。前回は、本人を守るために単独行為を封じる。今日は、手続を守るために代理権の切り刻みを封じる。向きは逆でも、根っこは同じでした。

これで「当事者」という章を、閉じます。

参照条文

  • 民事訴訟法28条
  • 民事訴訟法37条
  • 会社法11条1項
  • 商法708条1項
  • 民事訴訟法54条
  • 民事訴訟法55条(2項は次の板)
  • 民事訴訟法55条2項
  • 民事訴訟法58条
  • 民事訴訟法124条2項
  • 民事訴訟法59条

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