民訴ゼロから民事訴訟法 論文

補助参加の書き方(前編)

ビルの空調機の故障をめぐるテナントYとオーナーXの訴訟に、工事を請け負った設備会社Sと、別の階のテナントRが、X側への補助参加を申し出た事例を素材に、42条の「訴訟の結果について利害関係を有する」の意味を判例の規範で決め、同じ「Xが負けると困る」でもSの参加は認められRの参加は認められない理由を、答案の順に確かめます。

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ゼロから民事訴訟法 論文/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

事例

X・Y・S・Rと前訴 図:X・Y・S・Rと前訴

Xは、ビルのオーナーです。令和6年3月、Xは、ビルの2階事務所の空調機の取替え工事を、設備会社Sに、代金120万円で請け負わせました。Sは、令和6年3月25日に工事を終えて、空調機を引き渡しています。令和6年4月1日、Xは、この2階事務所を、デザイン会社Yに貸して、鍵を引き渡しました。賃料は月額30万円で、毎月末日払いです。令和6年12月9日、2階の空調機が止まりました。Yは、同じ日に、オーナーのXへ連絡し、Xも、同じ日に、Sへ連絡しています。部品の手配などで、修理が終わったのは令和7年1月14日で、止まっていた期間は36日間です。その間、Yは、近所の貸し事務所を借りて仕事をして、その利用料は合わせて60万円になりました。

36日間も止まったら、Yは仕事に困ります。その損害を、YがXに求めた訴訟を、以下、前訴と呼びます。令和7年3月、Yは、Xを被告として、60万円の損害賠償を求めて訴えました。賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負うのに、36日間直さなかった、という債務不履行の主張です。Xは、「故障の原因は、Yが、吸気口の前に棚や什器を置き続けたことだ」と争い、さらに「貸し事務所の利用料は、相当な額なら30万円だ」とも争いました。これに対して、Yは、「故障の原因は、空調機の取替え工事のときの、配管の施工の不備だ」と反論しています。争点は2つで、故障の原因と、損害額です。

令和7年5月、Sは、「Xを勝たせたい」として、X側への補助参加を申し出ました。補助参加とは、訴訟の当事者ではない第三者が、当事者の一方を補助するために、その訴訟に参加することです。同じ月に、3階の事務所を借りているテナントのRも、X側への補助参加を申し出ています。Sは、Rの3階にも、同じ型の空調機を取り付けていました。Rの理由は、「前訴で施工不良と認められると、自分の部屋の空調も疑われて、Xとの賃料の話し合いが不利になる」というものです。Yは、Sにも、Rにも、異議を述べました。

Sも、Rも、Xが負けると困る、という点では、同じに見えます。問いは、その二人の補助参加の申出が、認められるか、です。認められたあとに、何が残るかは、また別の問いとして、後編で扱います。

検討の順番

条文から結論まで、順に 図:条文から結論まで、順に

順番を決めます。まず、Sと、Rが、そもそも参加人、つまり補助参加をする人になれるかを決めます。参加人になれなければ、参加したあとの効力は、問題になりません。順番は、条文の文言を確かめて、利害関係の意味を解釈で決め、Sと、Rに当てはめて、結論を言い切る、の4つです。このうち解釈が要るのは、利害関係の中身です。補助参加を定める民事訴訟法42条は、利害関係としか書いていませんから、条文を読むだけでは決まりません。この利害関係があることを、補助参加の利益と呼びます。ここが、この回の本題です。

第1 SとRの補助参加の申出は認められるか

補助参加の利益を決める順 図:補助参加の利益を決める順

はじめに、裁判所が補助参加の利益を調べるのは、どんなときかを確かめます。補助参加の申出に、当事者が異議を述べなかったとき、裁判所は、補助参加の利益があるかを調べません。当事者が異議を述べたときだけ、裁判所が審査します。補助参加の利益は、望まない人に入り込まれないという、当事者の利益を守るための絞りです。ですから、当事者が異議を述べて、初めて審査の対象になります。この事例では、Yが、Sにも、Rにも異議を述べましたので、審査されます。

条文民事訴訟法42条

民事訴訟法第42条(補助参加)
訴訟の結果について利害関係を有する第三者は、当事者の一方を補助するため、その訴訟に参加することができる。

42条です。訴訟の結果について利害関係を有する第三者は、当事者の一方を補助するため、その訴訟に参加することができる。Sも、Rも、前訴の当事者ではない第三者で、Xの側を補助するための申出ですから、第三者であることと、当事者の一方を補助するため、という点は満たしています。ここまでは、条文を音読すれば出てくる話で、成立要件です。問題は、訴訟の結果について利害関係を有する、という部分の中身です。

条文民事訴訟法44条1項

民事訴訟法第44条(補助参加についての異議等)第1項
当事者が補助参加について異議を述べたときは、裁判所は、補助参加の許否について、決定で、裁判をする。この場合においては、補助参加人は、参加の理由を疎明しなければならない。

手続も、確認します。44条1項です。当事者が異議を述べたときは、裁判所は、補助参加の許否について、決定で裁判をします。この場合、補助参加人は、参加の理由を疎明しなければなりません。疎明とは、確からしいと思わせる程度の立証です。参加を申し出る人を補助参加人、助けられる側の当事者を被参加人と呼びます。この事例では、SとRが補助参加人、Xが被参加人に当たります。ここも、条文どおりの成立要件です。

Sも、Rも、Xが負けると困るのは同じです。それなら、どちらにも利害関係はある、とも言えそうです。しかし、「利害関係がある」と書いて終わると、Sと、Rを分けられません。どんな利害関係があれば足りるのかを、規範として立てる必要があります。

規範と答案の型|補助参加の利益 図:規範と答案の型|補助参加の利益

規範は、こうです。補助参加が認められるのは、専ら訴訟の結果について法律上の利害関係を有する場合に限られ、単に事実上の利害関係を有するにとどまる場合は、許されません。そして、法律上の利害関係を有する場合とは、その訴訟の判決が、参加人の、私法上または公法上の法的地位や法的利益に、影響を及ぼすおそれがある場合をいいます。これは、条文には書かれていません。42条の利害関係の中身を、判例が示した規範です。答案では、規範として書いて、出どころは判例だと添えます。

判例最決平成13・1・30 民集55巻1号30頁

最高裁判所決定(株主代表訴訟で、会社が取締役側に補助参加できるかが争われた事件)
民訴法42条所定の補助参加が認められるのは,専ら訴訟の結果につき法律上の利害関係を有する場合に限られ,単に事実上の利害関係を有するにとどまる場合は補助参加は許されない
……そして,法律上の利害関係を有する場合とは,当該訴訟の判決が参加人の私法上又は公法上の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすおそれがある場合をいうものと解される。

最高裁の決定は、このように言っています。この判断が出た事件は、設例とは別で、株主代表訴訟で、会社が、取締役の側に補助参加できるかが争われました。ここでは、事案ではなく、基準を述べた部分だけを使います。

基準は「おそれ」で足りるとしています。判決で、実際に法的な地位が変わると決まっていなくても、影響するおそれがあれば足ります。ただし、そのおそれは、法的な地位や法的な利益についてのものでなければなりません。当てはめでは、その訴訟の判決が、実体法の上で、参加を申し出る人と、一方の当事者との間の権利関係の、前提になっているかを見ます。

もう1点、訴訟の結果の範囲です。訴訟の結果を、主文の判断、つまり訴訟物である権利関係の存否に限る見方と、主文を導くのに欠かせない理由の中の判断まで含める、有力な考え方とが、分かれています。判例は、この点を明言していません。ただ、Sの当てはめでは、どちらの見方でも利害関係が認められますので、この論争には立ち入りません。

Sに、補助参加の利益を当てる 図:Sに、補助参加の利益を当てる

あてはめます。まず、Sです。事実を拾います。一つめ、前訴の訴訟物は、XのYに対する、60万円の賠償義務です。二つめ、前訴の争点は、故障の原因と、損害額で、原因は、Yの什器の置き方か、Sの配管の施工か、というものでした。三つめ、Sは、Xから、この空調機の取替え工事を請け負った会社です。工事に不備があれば、請け負ったSは、注文したXに対して、契約上の責任を負います。ですから、Xが勝てば、Sへの請求は起きませんが、Xが負ければ、Xは、Yに支払う賠償の分を、Sに、施工不良の賠償として求める立場にあります。

評価です。具体的に見ると、前訴の判決の主文、つまりXの賠償義務の存否は、XがSに賠償を求めるときの、損害の前提になります。判決の理由、つまり故障の原因が施工不良か、という判断は、Sの責任の有無を判断するときの、前提になる判断です。前訴の判決は、Sの法的な地位に、影響を及ぼすおそれがあります。主文の判断だけを見る見方でも、理由中の判断を含める見方でも、同じです。したがって、Sは、法律上の利害関係を有します。

Rに、補助参加の利益を当てる 図:Rに、補助参加の利益を当てる

次に、Rです。事実を拾います。一つめ、Rの空調機は、3階の別の機器で、同じ設備会社のSが取り付けたものです。二つめ、Rは、前訴の判決の結果、自分の部屋の空調も疑われて、Xとの賃料の話し合いが不利になる、と考えています。三つめ、前訴の判決は、RとXの間の契約や権利を、何も決めません。

Rにとって、賃料の話し合いが不利になるのは、大きな不利益だとも思えます。しかし、見るのは、不利益の大きさではなく、種類です。困る人をみな入れたのでは、当事者を守る絞りになりません。Rが恐れているのは、判決が前例のように働いて、自分の交渉に、事実上の影響が出ることです。判決がRの権利義務を変えるわけではありません。Rの賃料は、RとXの契約で決まっていて、前訴でどちらが勝っても、その契約の中身は変わりません。Sと違って、判決を前提に、誰かから請求を受けることも、ありません。変わるのは、話し合いでの、相手の出方だけです。前訴の主文の判断も、理由の中の、2階の空調機の配管は施工不良だった、という判断も、RとXの間の権利関係の前提には、なりません。したがって、Rは、事実上の利害関係にとどまり、補助参加の利益を欠きます。

Sは認められ、Rは認められない 図:Sは認められ、Rは認められない

結論です。Yの異議を受けて、裁判所は、それぞれ決定で裁判します。Sの参加は認められ、Rの参加は認められません。押さえる線は、1本です。同じ、Xが負けると困る、でも、Sは、判決が自分の地位を左右する者で、Rは、判決が参考になるだけの者です。答案では、利害関係がある、とだけ書かず、判決のどの判断が、参加人の法的な地位に、どう響くかを、事実から書きます。

まとめ

完成答案:第1 補助参加の申出(1・2) 図:完成答案:第1 補助参加の申出(1・2)

こちらが、完成答案です。第1の、問題の所在と規範です。図と同じ文面を、本文でも置きます。

第1 Sらの補助参加の申出は認められるか

1 問題の所在

 Yが異議を述べたので、裁判所は、補助参加の許否を決定で裁判する(民事訴訟法44条1項)。補助参加が許されるには、訴訟の結果について利害関係を有することを要する(同法42条)ところ、この利害関係の意味が問題となる。

2 規範

 補助参加が認められるのは、専ら訴訟の結果につき法律上の利害関係を有する場合に限られ、単に事実上の利害関係を有するにとどまる場合は許されない。法律上の利害関係を有する場合とは、当該訴訟の判決が参加人の私法上又は公法上の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすおそれがある場合をいう。なお、訴訟の結果を主文の判断に限る立場でも、理由中の判断を含める立場でも、以下のとおり結論は同じである。

完成答案:第1 補助参加の申出(3・4) 図:完成答案:第1 補助参加の申出(3・4)

第1の続きで、あてはめと結論です。図と同じ文面を、本文でも置きます。

3 あてはめ

 (1) Sは、前訴の判決の主文(Xの賠償義務)も理由(故障の原因が施工不良か)も、XのSに対する請求の前提となる。判決はSの法的地位に影響を及ぼすおそれがある。よって、Sは法律上の利害関係を有する。

 (2) Rは、3階の別の機器の空調について、判決が前例として事実上働くにとどまり、RとXの権利関係の前提とはならない。よって、Rは事実上の利害関係を有するにとどまる。

4 結論

 よって、Sの補助参加は認められ、Rの補助参加は認められない。

Sが参加して、一緒に争ったのにXが負けたとき、あとの訴訟(後訴)で、Sが何を争えなくなるのかは、後編で扱います。

参照条文

  • 民事訴訟法42条
  • 民事訴訟法44条1項

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