民訴ゼロから民事訴訟法 論文

補助参加の書き方(後編)

ビルのオーナーXが、借主Yから空調機の故障による60万円の賠償を求められた前訴に、工事をした設備会社SがXの側で補助参加して一緒に争い、Xが負けて確定したあと、XがSに賠償を求めた後訴の事例を素材に、46条の効力(参加的効力)の性質と、誰と誰の間のどの判断に及ぶかを確かめ、Sの4つの主張を争えるものと争えないものに振り分けます。Sが訴訟告知を受けたのに参加しなかった場合に同じ効力が及ぶかも、答案の順に確かめます。

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ゼロから民事訴訟法 論文/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

事例

X・Y・Sと前訴 図:X・Y・Sと前訴

Xは、ビルのオーナーです。ビルの2階事務所の空調機の取替え工事を、設備会社Sに、代金120万円で請け負わせ、Sは、令和6年3月25日に工事を終えて引き渡しました。Xは、代金のうち80万円を払い、残りの40万円は、まだ支払っていません。令和6年4月1日、Xは、この2階事務所を、デザイン会社Yに貸しています。令和6年12月9日に空調機が止まり、修理が終わったのは令和7年1月14日で、止まっていた期間は36日間です。Yは、その間、近所の貸し事務所を借りて仕事をして、利用料は合わせて60万円になりました。令和7年3月、Yは、Xを被告として、60万円の損害賠償を求めて訴えました。これが、前訴です。争点は、故障の原因と、損害額の2つで、Xは、「原因はYが置いた什器だ」「利用料は、相当な額なら30万円だ」と争いました。これに対して、Yは、「故障の原因は、空調機の取替え工事のときの、配管の施工の不備だ」と反論しています。

この前訴に、Sは、次のように関わりました。令和7年5月、Sは、「Xを勝たせたい」として補助参加を申し出て、許されました。Sは、Xが負ければ、Xから賠償を求められる立場で、前訴の判決が、自分の法的な地位に影響を及ぼすおそれがあり、法律上の利害関係があるからです。この点は、前編で確かめました。Sは、Xの側で、技術者の証人尋問の申出をするなどして、「Yの置いた什器が原因だ」「損害は30万円が相当だ」と、Xと一緒に争いました。このとき、Xを被参加人、Sを補助参加人と呼びます。ここまでが前提で、ここからが後編の本題です。

前訴の判決と確定 図:前訴の判決と確定

口頭弁論の終結は、令和7年9月12日で、判決は、令和7年10月3日に言い渡されました。判決は、Yの請求を認容して、Xは、Yに、60万円を支払え、と命じています。判決の理由は、4つです。一つめ、故障の原因は、取替え工事のときの配管の接続の施工不良で、Yの什器の置き方とは関係がない。二つめ、修理に36日かかり、修繕義務の履行が遅れた。三つめ、損害は、Xらの30万円の主張を採らず、証拠から60万円と認める。四つめ、なお、Sは、引渡しのとき、試運転の記録をXに渡していなかったことが認められる。この四つめは、請求を認容する結論には、影響しない記載です。

条文民法606条1項

民法第606条(賃貸人による修繕等)第1項
賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。

一つめの理由は、この606条1項に関わります。賃貸人は、必要な修繕をする義務を負いますが、賃借人の責めに帰すべき事由で修繕が必要になったときは、負いません。Xは、原因はYの置いた什器だと争って、このただし書を持ち出していました。判決は、その主張を退けています。判決書は、X、Y、Sのいずれにも、令和7年10月6日に送達されました。控訴期間は2週間で、令和7年10月20日に満了し、控訴はなく、判決は、令和7年10月21日に確定します。Xは、その十日後の令和7年10月31日に、Yに60万円を支払いました。

後訴の関係図 図:後訴の関係図

令和7年12月、Xは、Sを被告として、請負契約の契約不適合を理由に、Yに支払った60万円の賠償を求めて訴えました。これが、後訴です。Sは、後訴で、次の4つを主張しました。一つめ、故障の原因は、Yの什器の置き方だ。二つめ、XがYに払う賠償は、60万円ではなく、30万円が相当だ。三つめ、自分は、試運転をして、記録も渡した。四つめ、Xは、請負代金の残り40万円を払っていない。だから、同時履行の抗弁や、相殺を主張する。残りの代金を払ってもらうまでは払わない、あるいは、残りの代金の分を差し引く、という主張です。以下、この4つを、原因の主張、損害額の主張、試運転の主張、残代金の主張と呼びます。後訴の本案、つまり請負の契約不適合責任が成立するかどうかは、ここでは扱いません。見るのは、Sが、この4つを、後訴で出せるかどうかです。問いは2つです。一つめ、Sが参加して、Xが負けたとき、後訴で、Sは、前訴の判断のうち、何を争えて、何を争えないか。二つめ、Sが、訴訟告知、つまり、訴訟が起きていることの知らせを、Xから受けたのに、参加しなかった場合は、どうか。二つの問いは、同時には起きません。別々の「もしも」として考えます。

検討の順番

負けたあとに何が残るか、参加しなかった人にも及ぶか 図:負けたあとに何が残るか、参加しなかった人にも及ぶか

順番を決めます。一つめは、Sが参加して、Xが負けたあと、何が残るかです。46条の効力の性質を決め、誰と誰の間の、どの判断に生じるのかを特定し、46条の各号に当たらないことを確かめて、Sの4つの主張に当てはめます。二つめは、参加しなかった人にまで、効力が及ぶかです。53条4項を読んだうえで、及ぶ前提と、及ぶ判断の範囲を決めます。参加した場合と、参加しなかった場合は、ばらばらの論点ではなく、つながっています。53条4項は、参加しなかった人を、参加したものとみなして、46条の効力を及ぼす条文です。ですから、参加した場合の結論が、そのまま、参加しなかった場合の土台になります。

第2 参加的効力の性質と範囲

参加的効力を決める順 図:参加的効力を決める順

ここで復習です。既判力は、判決のどの部分に、誰と誰の間で生じるのでしたか?主文に包含するもの、つまり訴訟物についての判断に、当事者の間で生じる、でした。理由中の判断には、生じません。既判力は、確定した判断の中身を、当事者も裁判所も、もう争い直せなくする力でした。補助参加人が、負けたあとに受ける効力は、これと比べると、違いがはっきりします。

条文民事訴訟法46条

民事訴訟法第46条(補助参加人に対する裁判の効力)
補助参加に係る訴訟の裁判は、次に掲げる場合を除き、補助参加人に対してもその効力を有する。
一 前条第一項ただし書の規定により補助参加人が訴訟行為をすることができなかったとき。
二 前条第二項の規定により補助参加人の訴訟行為が効力を有しなかったとき。
三 被参加人が補助参加人の訴訟行為を妨げたとき。
四 被参加人が補助参加人のすることができない訴訟行為を故意又は過失によってしなかったとき。

46条です。補助参加に係る訴訟の裁判は、次に掲げる場合を除き、補助参加人に対してもその効力を有する。この、効力を有する、が、ここでの本題です。各号は、あとで1つずつ確かめます。ここまでは、条文を音読すれば出てくる話で、成立要件です。問題はここです。46条は、効力を有する、と書くだけで、効力の中身を書いていません。一つめ、この効力は、既判力なのか。二つめ、誰と誰の間に、判決のどの判断に、生じるのか。

規範と答案の型|参加的効力 図:規範と答案の型|参加的効力

規範は、こうです。46条の効力は、いわゆる既判力ではなく、それとは異なる特殊な効力で、判決の確定後に、補助参加人が、被参加人に対して、その判決が不当だと主張することを禁ずる効力です。判決の主文に包含された、訴訟物たる権利関係の存否についての判断だけでなく、その前提として判決の理由の中でされた、事実の認定や、先決的権利関係の存否についての判断などにも及びます。理由の中の判断とは、判決の主文を導き出すために必要な主要事実に係る認定及び法律判断などをいい、これに当たらない事実や論点について示された認定や法律判断は、含みません。つまり、結論に影響しない傍論には、及びません。根拠は、補助参加人が、被参加人の訴訟の追行に協力した、あるいは協力できたのに、被参加人が負けたとき、その敗訴の責任は、あらゆる点で補助参加人にも分担させるのが、衡平にかなう、ということです。効くのは、被参加人と、参加人の間で、相手方との間には、生じないと考えられています。46条各号の場合は、生じません。

この効力の性質と範囲は、条文には書かれていません。条文ではなく、判例が示した規範です。この効力は、参加的効力と呼ばれます。答案では、規範として書き、出どころは判例だと添えます。ただし、相手方との間には生じない、という点は、判例に直接の判断がなく、そう考えられている、という位置づけです。

判例最判昭和45・10・22 民集24巻11号1583頁

最高裁判所判決(貸主が借り主側に補助参加した別件の訴訟で、借り主の敗訴が確定したあと、貸主が同じ主張をできるかが争われた事件・効力の性質と範囲)
この効力は、いわゆる既判力ではなく、それとは異なる特殊な効力、すなわち、判決の確定後補助参加人が被参加人に対してその判決が不当であると主張することを禁ずる効力であつて、判決の主文に包含された訴訟物たる権利関係の存否についての判断だけではなく、その前提として判決の理由中でなされた事実の認定や先決的権利関係の存否についての判断などにも及ぶものと解するのが相当である。

判決の原文です。設例とは別の場面で、借り主の側に補助参加した貸主が、借り主の敗訴が確定したあと、後の裁判で、前と同じ主張をすることを許されない、とされた事件です。規範の前半は、この判決の言葉を、そのまま使っています。先決的権利関係とは、結論を出す前提として、先に判断しておく必要がある権利関係のことです。

判例最判昭和45・10・22 民集24巻11号1583頁

最高裁判所判決(同じ事件・効力の根拠と、既判力と区別する理由)
補助参加人が被参加人の訴訟の追行に現実に協力し、または、これに協力しえたにもかかわらず、被参加人が敗訴の確定判決を受けるに至つたときには、その敗訴の責任はあらゆる点で補助参加人にも分担させるのが衡平にかなうというべきである
……民訴法七〇条が判決の補助参加人に対する効力につき種々の制約を付しており、同法七八条が単に訴訟告知を受けたにすぎない者についても右と同一の効力の発生を認めていることからすれば、民訴法七〇条は補助参加人につき既判力とは異なる特殊な効力の生じることを定めたものと解するのが合理的である

前半は、規範の根拠の、もとの言葉です。後半が、効力が既判力と別のものだという、理由づけです。判決の中の旧民訴法70条は、現在の46条で、78条は、現在の53条4項にあたります。46条は、効力に、各号の、種々の制約を付けています。そして、53条4項は、告知を受けただけの者にも、同じ効力を認めています。だから、46条は、既判力とは別の、特殊な効力を定めたものと読むのが合理的だ、というのです。

判例最判平成14・1・22 集民205号93頁

最高裁判所判決(訴訟告知を受けて参加しなかった者に、前訴判決の効力が及ぶかが争われた事件・及ぶ判断の範囲)
この判決の理由中でされた事実の認定や先決的権利関係の存否についての判断とは,判決の主文を導き出すために必要な主要事実に係る認定及び法律判断などをいうものであって,これに当たらない事実又は論点について示された認定や法律判断を含むものではないと解される。
……そして,その他,旧民訴法70条所定の効力が,判決の結論に影響のない傍論において示された事実の認定や法律判断に及ぶものと解すべき理由はない。

こちらは、及ぶ判断の範囲を述べた判決です。これも、設例とは別の場面で、売主が、買主は業者だとして、業者に残代金を求めた前訴で、業者が「買ったのは施主だ」と争ったので、売主が、施主に訴訟告知をしました。施主は、参加しませんでした。前訴は、売主の請求を棄却して確定し、その理由の中に、施主が買い受けたことが認められる、と書かれていました。売主が施主に代金を請求した後訴で、最高裁は、効力を認めた原審を破棄しています。この事件では、理由の中の、施主が買い受けた、という記載は、請求を棄却する主文を導くのに必要な判断ではなく、傍論での認定にすぎない、とされました。この判決は、効力が及ぶ前提についても述べています。そちらは、第3で使います。

既判力と参加的効力の違い 図:既判力と参加的効力の違い

既判力との違いを、3点で並べます。一つめは、いつ生じるかです。既判力は、勝っても負けても、判決が確定すれば生じます。参加的効力は、被参加人が負けたときに問題になります。二つめは、誰と誰の間かです。既判力は、当事者の間で、参加的効力は、参加人と、被参加人の間です。相手方との間には、生じないと考えられています。三つめは、どの判断かです。既判力は、主文に包含するものに生じ、理由中の判断には生じません。参加的効力は、主文を導くのに必要な理由中の判断にも及びます。既判力は理由中の判断には生じなかったのに、どうして、参加的効力は理由中の判断まで及ぶのでしょうか。既判力と参加的効力とでは、守りたいものが違うからです。既判力は、紛争を蒸し返させない制度ですが、参加的効力は、一緒に戦って負けた、その責任を分けるものです。敗訴の責任を、あらゆる点で分担させるという趣旨からは、主文の結論だけでなく、結論を導いた理由にも及ぶのが筋になります。責任を分けるのは、一緒に戦った参加人と被参加人ですから、戦った相手との間には生じないと考えられているのも、同じ理由です。答案では、「参加的効力は既判力だから、主文の判断にだけ及ぶ」とは書けません。この効力は既判力ではない、と先に言い切ってから、範囲を書きます。

あてはめ、誰と誰の間か 図:あてはめ、誰と誰の間か

あてはめます。最初は、誰と誰の間か、です。前訴の被参加人はXで、補助参加人はSです。前訴は、Xの敗訴で確定しました。したがって、参加的効力は、XとSの間に生じます。相手方のYとの間には、生じないと考えられていますが、後訴の当事者は、XとSですので、この点は結論に影響しません。

Sの4つの主張を振り分ける 図:Sの4つの主張を振り分ける

次が、一番の山場です。Sは、参加して、一緒に争って負けました。後訴で出す4つの主張のうち、どれが争えなくなるのでしょうか?全部でも、ゼロでもありません。判決のどの判断とぶつかるかを、1つずつ見て、振り分けます。一つめは、原因の主張です。「故障の原因は、Yの什器の置き方だ」という主張でした。前訴の判決は、原因は配管の施工不良で、Yの什器の置き方とは関係がない、と判断して、Xの、606条1項ただし書の主張を退けました。ただし書の主張、つまり、Yの責めに帰すべき事由があったという主張を退けたこの判断は、請求を認容する主文を導くのに必要な、主要事実に係る認定です。Sの主張は、これと正面から衝突します。したがって、争えません。二つめは、損害額の主張です。前訴では、XとSが、損害額は30万円だと争い、判決は、それを採らず、60万円と認めました。この認定は、Xは、Yに、60万円を支払え、という主文を導くのに必要です。ですから、これも、前訴の判断と衝突して、争えません。三つめは、試運転の主張です。前訴の判決は、Sは、引渡しのとき、試運転の記録をXに渡していなかった、と述べていました。しかし、これは、請求を認容する結論には影響しない、ついでの記載で、傍論です。傍論には、46条の効力は及びません。ですから、Sは、後訴で、争えます。最後は、残代金の主張です。前訴では、この点は、判断されていません。参加的効力は、前訴判決の判断にだけ及びますから、判断のない事項には及びません。争えます。

同じ前訴の判決の中の記載でも、一つめと三つめで、扱いが分かれました。主文を導くのに必要な判断か、傍論かの見分けが、答案で、一番差がつくところです。決め手は、その判断を取り除いても、同じ主文が出てくるかどうかです。ただし書の主張を退けた判断を取り除くと、請求を認容する主文は導けません。試運転の記録の記載を取り除いても、主文は変わりません。押さえる点は、参加的効力が禁ずるのは、前訴の判決が不当だ、という主張だということです。前訴の判断を前提にした主張や、前訴で判断されていない主張は、禁じられません。答案の失敗は、2つあります。1つは、Sは前訴に全部縛られる、と一括りに書くこと。もう1つは、残代金の主張のように、前訴で判断されていない主張まで、効力で止めてしまうことです。

46条各号の確認 図:46条各号の確認

最後に、46条の各号を確かめます。ここは、条文どおりの確認で、規範を立てる場面ではありません。除外される場合に当たらないことを、事実で示します。1号は、参加した時の訴訟の程度では、できなかった行為があるとき、です。Sは、第1審の途中で参加していて、攻撃防御の提出に、制約を受けていません。該当しません。2号は、Sの訴訟行為が、Xの訴訟行為と抵触して、効力を有しなかったとき、です。原因も損害額も、XとSは同じ主張で、Xが認めたこともなく、抵触していません。該当しません。3号は、被参加人が、補助参加人の訴訟行為を妨げたとき、です。Xは、Sの証人尋問の申出を、妨げていません。該当しません。4号は、被参加人が、補助参加人のすることができない訴訟行為を、故意または過失でしなかったとき、です。Xは控訴しませんでしたが、控訴権を放棄したわけではありません。控訴は、Sも、45条1項により、自分で提起できました。判決書は、Sにも同じ日に送達され、期間も同じです。Sにできない行為では、ありません。該当しません。

では、各号に当たるのは、どんな場合でしょうか。たとえば、Xが、Sのした証人尋問の申出を、自分で取り下げていた場合です。この場合、参加的効力は、生じないと考えられます。Sは、思うように戦えなかったことになり、敗訴の責任を分けるわけにはいかないからです。号でいえば、Sの申出が、Xの取下げと抵触して効力を失ったと見て、2号にあたると考えられます。Xの行為が、Sの訴訟行為を妨げたと評価できれば、3号にもあたりえます。どちらで書いても、結論は同じです。

設例の結論です。46条の効力、つまり参加的効力が、XとSの間に生じます。Sは、後訴で、原因の主張と損害額の主張は争えず、試運転の主張と残代金の主張は争えます。Sは前訴の判断に全部縛られる、とも、何も縛られない、とも書きません。

第3 告知を受けて参加しなかったSにも及ぶか

別の「もしも」 Sは、告知を受けて参加しなかった 図:別の「もしも」 Sは、告知を受けて参加しなかった

ここからは、もう一つの「もしも」です。前訴も、判決も、確定も、後訴も、同じです。違うのは、Sが、補助参加を申し出なかったことです。Sは、令和7年4月に、Xから訴訟告知を受けていました。それでも、参加しませんでした。後訴で、Sは、同じ4つの主張をします。参加しなかったSに、前訴の判断を持ち出すのは、納得しにくいところです。まず、条文を確認します。

条文民事訴訟法53条

民事訴訟法第53条(訴訟告知)
1 当事者は、訴訟の係属中、参加することができる第三者にその訴訟の告知をすることができる。
2 訴訟告知を受けた者は、更に訴訟告知をすることができる。
3 訴訟告知は、その理由及び訴訟の程度を記載した書面を裁判所に提出してしなければならない。
4 訴訟告知を受けた者が参加しなかった場合においても、第四十六条の規定の適用については、参加することができた時に参加したものとみなす。

53条です。1項で、当事者は、訴訟の係属中、参加することができる第三者に、訴訟の告知をすることができます。告知をするのは当事者のXで、告知を受けるのが、第三者のSです。そして4項です。訴訟告知を受けた者が参加しなかった場合でも、46条の規定の適用については、参加することができた時に参加したものとみなす。ここまでは、条文どおりの成立要件です。みなしてよい理由は、参加的効力の根拠にあります。協力できたのに、被参加人が負けたときは、敗訴の責任を分ける、のでした。告知を受けた人は、訴訟を知らされて、参加して争う機会があったのに、使わなかったのですから、同じ責任を負わせてよいと考えられています。問題はここです。4項は、告知を受けた者なら、誰にでも、46条の効力が及ぶように読めます。告知を受ければ、必ず及ぶのか。及ぶとして、どの範囲か。

規範と答案の型|訴訟告知の効力 図:規範と答案の型|訴訟告知の効力

規範は、こうです。53条4項により、告知を受けて参加しなかった者についても、46条の適用では、参加することができた時に参加したものとみなされます。もっとも、効力が及ぶのは、被告知者が、補助参加の利益、つまり、42条の、訴訟の結果についての法律上の利害関係を有する場合に限られます。及ぶ判断の範囲は、参加的効力と同じです。つまり、判決の結論に影響のない傍論において示された事実の認定や法律判断にまで及ぶものと解すべき理由はありません。補助参加の利益が要るというこの限定は、53条4項の文言には、書かれていません。4項は、参加することができた時に参加したものとみなす、と書きます。もともと参加できない人、つまり補助参加の利益がない人には、みなす土台がありません。この限定は、判例が示した規範で、答案では、規範として書きます。

判例最判平成14・1・22 集民205号93頁

最高裁判所判決(訴訟告知を受けて参加しなかった者に、前訴判決の効力が及ぶかが争われた事件・及ぶ前提)
旧民訴法78条,70条の規定により裁判が訴訟告知を受けたが参加しなかった者に対しても効力を有するのは,訴訟告知を受けた者が同法64条にいう訴訟の結果につき法律上の利害関係を有する場合に限られる
……前訴の判決は上告人の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすものではないから,上告人は,前訴の訴訟の結果につき法律上の利害関係を有していたとはいえない。したがって,上告人が前訴の訴訟告知を受けたからといって上告人に前訴の判決の効力が及ぶものではない。

第2で及ぶ判断の範囲を読んだ、売主と施主の事件の判決の、もう一つの部分です。旧民訴法78条と70条は、現在の53条4項と46条、64条は、42条にあたります。判決は、告知を受けて参加しなかった者に効力が及ぶのは、その人が、訴訟の結果について法律上の利害関係を有する場合に限られる、と言いました。そして、この事件では、前訴の結果で、施主の支払義務の有無が決まる関係にはありませんでした。そこで、前訴の判決は施主の法的な地位に影響を及ぼさないから、法律上の利害関係はなく、告知を受けても効力は及ばない、と結論しました。ここで、学説の考え方を1つ付け加えます。効力が及ぶ前提として、補助参加の利益よりさらに狭く、告知者の敗訴を直接の原因とする、立て替えた分の返還を求める求償や、賠償の関係まで要る、という考え方があります。設例のSは、Xが負ければ、XからSへ賠償請求がされる関係ですから、どちらの立場でも、当てはまります。

告知の効力、判断の順序 図:告知の効力、判断の順序

判断の順序は、4つです。一つめに、被告知者に補助参加の利益があるか。二つめに、告知者が負けたか。三つめに、被告知者が、告知者の側に加わる立場か。最後の四つめに、傍論ではなく、主文を導くのに必要な判断か。三つめに、一言だけ触れます。告知を受けた人が、告知した当事者の相手方の側に加わる立場だった場合は、利害が対立して、協力を期待できないので、効力は生じないと考えられています。これは、判例が示した規範ではなく、そう考えられている、という位置づけです。設例のSは、Xの側の請負人ですから、この場合は出番がありません。

Sに、告知の効力を当てる 図:Sに、告知の効力を当てる

あてはめます。Sは、Xの請負人で、Xが負ければ、Xから賠償を求められる立場です。ですから、前訴の判決が、自分の法的な地位に影響を及ぼすおそれがあり、法律上の利害関係があって、補助参加の利益を有します。Xは、令和7年4月に、Sに訴訟告知をしていて、Sは、前訴が係属していることを知らされ、第1審の途中から、参加できました。前訴は、Xの敗訴で確定しています。Sは、告知を受けて、参加できたのに、参加しませんでした。ですから、参加することができた時に、参加したものとみなされて、46条の効力が及びます。46条各号に当たる事情も、参加した場合と同じで、ありません。及ぶ判断の範囲は、参加した場合と同じで、主文を導くのに必要な、主要事実の認定と法律判断までです。したがって、Sは、後訴で、原因の主張と損害額の主張は争えません。試運転の主張は、傍論なので争えます。残代金の主張は、前訴で判断されていないので、争えます。

では、告知を受けた人が、補助参加の利益のない人だったら、どうなるでしょうか。補助参加の利益のない人には、告知書を受け取っても、46条の効力は及びません。たとえば、前編の事例に出てきた、同じビルの3階の事務所を借りているテナントのように、判決が前例として事実上働くだけの人には、補助参加の利益がありません。告知書を出したかどうかではなく、後の裁判で、被告知者に補助参加の利益があったかが、審査されます。

告知を受けて参加しなかった場合の結論です。Sにも、46条の効力が及び、4つの主張の振り分けは、参加した場合と同じになります。告知は、告知者を守る手段ですが、効力は、告知しただけでは生じません。被告知者に補助参加の利益があって、初めて生じます。

まとめ

二つの場合の結論 図:二つの場合の結論

結論を、振り返ります。Sが参加して、Xが負けたあとは、原因の主張と損害額の主張は争えず、試運転の主張と残代金の主張は争えます。参加しなかった場合でも、補助参加の利益があるSには、同じ効力が及び、結論は同じです。

完成答案:第2 参加的効力(1・2) 図:完成答案:第2 参加的効力(1・2)

こちらが、完成答案です。第2は、参加的効力です(第1は、前編の補助参加の申出の部分です)。図と同じ文面を、本文でも置きます。

第2 Sは、後訴で、前訴の判断を争えるか

1 問題の所在

 前訴でXが敗訴して確定した。補助参加人Sに、補助参加に係る訴訟の裁判の効力が及ぶ(民事訴訟法46条)が、この効力の性質と、及ぶ判断の範囲が問題となる。

2 規範

 同条の効力は、既判力ではなく、判決の確定後補助参加人が被参加人に対してその判決が不当であると主張することを禁ずる特殊な効力である。この効力は、主文の判断のほか、主文を導き出すために必要な主要事実に係る認定及び法律判断にも及ぶが、結論に影響のない傍論には及ばない。根拠は、協力したのに敗訴したとき、その責任を補助参加人にも分担させるのが衡平にかなうことにある。効力は被参加人と参加人の間に生じ、相手方との間には生じないと考えられている。

完成答案:第2 参加的効力(3 あてはめ) 図:完成答案:第2 参加的効力(3 あてはめ)

第2の、あてはめです。図と同じ文面を、本文でも置きます。

3 あてはめ

 (1)前訴の被参加人はX、補助参加人はSであり、前訴はXの敗訴で確定した(令和7年10月21日)。したがって、効力はXとSの間に生じる。

 (2)前訴判決の判断の特定

 ア 原因の主張=故障の原因はYの什器の置き方ではなく、Xの民法606条1項ただし書の主張は理由がないとの判断は、Xの抗弁を排斥した主要事実に係る認定であり、主文を導くのに必要である。

 損害額の主張=損害を60万円と認めた判断も、主文を導くのに必要な認定である。よって、Sは、故障の原因はYの什器の置き方である、損害は30万円が相当である、との主張を争えない。

 イ 試運転の主張=試運転の記録を渡していなかったとの判断は、結論に影響のない傍論であり、効力は及ばない。

 残代金の主張=前訴で判断されていない事項であり、効力は及ばない。よって、Sは、試運転の事実と、残代金40万円の未払いを前提とする同時履行の抗弁や相殺を争える。

完成答案:第2 参加的効力(各号・結論) 図:完成答案:第2 参加的効力(各号・結論)

第2の続きで、46条各号の確認と結論です。図と同じ文面を、本文でも置きます。

3 あてはめ(続き)

 (3)46条各号=Sは第1審の途中で参加しており、同条1号に当たらない。XとSは同じ主張をしており、2号に当たらない。XはSの訴訟行為を妨げておらず、3号に当たらない。控訴はSも自ら提起できたから、4号に当たらない。

4 結論

 よって、46条の効力がXとSの間に生じる。

 ⇒Sは、故障の原因と損害額について、前訴の判断を争えない。

 ⇒Sは、試運転の事実と、残代金に関する主張は争える。

完成答案:第3 訴訟告知 図:完成答案:第3 訴訟告知

第3は、訴訟告知を受けて参加しなかった場合です。図と同じ文面を、本文でも置きます。

第3 Sが訴訟告知を受けて参加しなかった場合

1 問題の所在

 Sは訴訟告知を受けたが参加しなかった。この場合も46条の効力が及ぶか(民事訴訟法53条4項)、及ぶとしてその範囲が問題となる。

2 規範

 53条4項により、告知を受けて参加しなかった者も、46条の適用では、参加することができた時に参加したものとみなされる。もっとも、効力が及ぶのは、被告知者が補助参加の利益を有する場合に限られる。及ぶ判断の範囲は、第2の効力と同じである。

3 あてはめ

 Sは、Xの請負人としてXが負ければ賠償を求められる立場にあり、補助参加の利益を有する。告知を受けて参加できたのに参加しなかった。よって、参加したものとみなされる。なお、補助参加の利益を欠く者には、告知を受けても効力は及ばない。

4 結論

 よって、Sには46条の効力が及ぶ。

 ⇒Sは、原因と損害額は争えない。

 ⇒試運転と残代金に関する主張は争える。

参照条文

  • 民法606条1項
  • 民事訴訟法46条
  • 民事訴訟法53条

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