一部請求の書き方(後編)
事故の損害800万円のうち500万円を一部だと明示して請求し、3割の過失を認定されつつ認容されたXが、残りの300万円と、判決のあとに必要になった再手術の費用などの200万円を求めてまた訴えた事例を素材に、一部請求での過失相殺の引き方(外側説)、認容後の残部請求、後遺症の損害と前訴の既判力を、答案の順に確認します。
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事例
図:X・Y・Wと、前訴・後訴②③
設例を、短く確かめます。Xは、ビルのオーナーで、デザイン会社Yに、ビルの2階の事務所を貸していました。令和7年6月28日、退去の立ち会いに来たXが、Yの従業員Wの搬出作業中に、書棚の角で右肩を打たれて、骨折しました。Yは、Wの使用者として責任を負う立場です。ただ、Xは、通路に入らないよう言われていたのに、入っていました。損害は、治療費150万円、休業損害350万円、慰謝料300万円で、合わせて800万円と見込まれます。
Xは、前訴で、損害の総額800万円のうちその一部として、500万円を請求すると、訴状に書きました。前編で見た、明示のある一部請求です。
前編は、前訴が棄却されたときの話でした。後編は、同じ前訴が認容されたときです。裁判所は、Wの過失とYの使用者責任を認め、損害の総額を800万円と認定しました。ただ、Xにも3割の過失がある、と認定しています。口頭弁論の終結は令和8年2月で、判決は令和8年4月に確定しました。
そのあと、Xは、2つの訴えを起こします。1つ目は、令和8年6月に提起した、同じ事故による損害の残額、300万円を請求する訴えです。これを後訴②と呼びます。2つ目は、令和8年7月に右肩の機能が急に悪化して、再手術を受けた、その費用などの200万円を請求する訴えです。これを後訴③と呼びます。再手術が必要になることは、前訴の口頭弁論が終結したときには、医学的に、通常は予想できませんでした。
問いは、2つです。前訴で、裁判所が認容すべき額は、いくらか。そして、後訴②と③は、許されるか。
認容される額は、Xが請求した500万円の満額になるのでしょうか。Xにも3割の過失がありますから、そう単純ではありません。3割を、どこから引くのかで、額が変わります。これが、最初の場面です。
その前に、1つ確かめます。前編で見た、前訴が棄却されたときの残りの請求は、既判力は残りに及ばないけれど、信義則に反して、却下されました。後編では、前訴が認容されていますから、その信義則が使えるのかどうかも、確かめます。
検討の順番
図:認容額から、後訴の扱いまで
順番を、理由とともに言います。まず、前訴で認容すべき額を決めます。過失相殺を、どこから引くかで、認容額が変わるからです。次に、後訴の適否を、前訴の確定判決の既判力が後訴に及ぶかで検討します。既判力は、確定した判断の中身を、後の裁判で、当事者も裁判所も争い直せなくする拘束力です。そして、114条1項のとおり、既判力は、主文に包含するものに限って生じます。主文が判断するのは、その訴訟で審判の対象になった権利、つまり訴訟物ですから、前訴の訴訟物は何だったのかを見ます。そのうえで、前編で見た信義則が使えるかも確かめます。後訴②は、前訴と同じ債権の残りで、後訴③は、前訴のあとに生じた損害です。この違いで、場面を分けます。
条文民事訴訟法114条1項
民事訴訟法114条1項(既判力の範囲)
確定判決は、主文に包含するものに限り、既判力を有する。
114条1項です。確定判決は、主文に包含するものに限り、既判力を有する。前編で見た条文です。
第1 前訴で認容すべき額——過失相殺の外側説
図:前訴の認容額は、いくらか
条文民法722条2項
民法722条(過失相殺)第2項
被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。
722条2項です。過失相殺の成立要件は、条文を音読すれば出てきます。被害者に過失があったとき、裁判所は、それを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。Xには、立入りを止められていた通路に入った、という過失があり、裁判所は、その割合を3割と認定しました。成立要件は、そろっています。
では、3割を引くだけで、よいのでしょうか。引くことは、決まっています。問題は、どこから引くかです。条文には、「これを考慮して、損害賠償の額を定める」とだけ書かれていて、一部請求のときの引き方は、書かれていません。1つは、損害の総額の800万円から引く方法。もう1つは、請求した500万円から引く方法です。この、条文に書かれていない基準を、判例が立てています。
図:規範と答案の型|過失相殺と一部請求
規範は、こうです。一部請求の損害賠償で過失相殺をするときは、まず、損害の全額から、過失割合による減額をします。残った額が、請求額をこえないなら、その残った額を認容します。こえるなら、請求の全額を認容します。出どころは、判例です。これを、過失相殺の外側説と呼びます。請求した額から引くもう1つの考え方は、按分説と呼ばれます。
判例最判昭和48年4月5日 民集27巻3号419頁
一部請求と過失相殺が争われた事件(最高裁判決)
一個の損害賠償請求権のうちの一部が訴訟上請求されている場合に、過失相殺をするにあたつては、損害の全額から過失割合による減額をし、その残額が請求額をこえないときは右残額を認容し、残額が請求額をこえるときは請求の全額を認容することができる
判決の原文です。最高裁は、一部請求がされているときの過失相殺を、損害の全額から過失割合分を減らし、残った額と請求額を比べる、という手順で示しています。
では、なぜ、総額から引くのでしょうか。請求した500万円から3割を引くほうが、素直に見えます。理由は、一部請求をする原告の、通常の意思です。Xは、自分にも過失があることを見込んだうえで、なお500万円は請求したい、と考えて、総額の一部として500万円を請求しています。そこで、請求額からさらに3割を引くと、Xの考えていた額より少なくなってしまい、原告の意思にそいません。そこで、まず、損害の総額から過失を引くのです。
具体的に、頭に置いてみます。800万円の被害のうち、手前の500万円分だけを請求して、奥の300万円分には、手を付けていないとします。3割の過失で減る分は、800万円の3割で、240万円です。この240万円は、まず、請求していない奥の300万円の側で受け止められます。手前の500万円まで、食い込みません。これは、理解のための見方で、判例の理由は、あくまで、原告の通常の意思です。
手前の500万円まで食い込む場合も、あるのでしょうか。あります。過失による減額が、奥の300万円を超えるときです。もし、Xの過失が4割だったとします。800万円の4割は、320万円で、奥の300万円では受け止めきれません。残る額は、800万円の6割の、480万円で、請求額の500万円を下回ります。この場合は、請求額の全額ではなく、残った額の480万円を認容します。決め手は、過失で減らしたあとの残額が、請求額に届くかどうかです。
図:前訴に要件を当てる(事実と評価)
あてはめます。前訴は、損害の総額800万円のうちの一部として、500万円を請求しています。裁判所は、損害の総額を800万円、Xの過失を3割と認定しました。外側説では、まず損害の全額から、過失割合による減額をします。
図:前訴に要件を当てる(計算と結論)
800万円から、3割を減じると、560万円です。この560万円は、請求額の500万円をこえています。したがって、請求の全額、500万円を認容します。
図:結論 前訴の認容額は500万円
結論です。前訴の認容額は、500万円です。Yは、Xに、500万円を支払え、という判決になります。過失が3割あっても、請求した額の500万円は、全額もらえます。Xが、総額の一部しか請求していなかったから、そうなります。
図:外側説と按分説|計算の比較
ここで、按分説と比べます。按分説は、請求額の500万円から、3割を引きます。500万円の7割で、350万円を認容することになります。外側説の500万円とは、150万円の差です。判例は、外側説です。
按分説だと、Xは、請求していない300万円の分で受け止められるはずの過失まで、請求した額から引かれます。請求していない分の過失まで、請求額から引かれてしまうことが、原告の通常の意思に、そわない理由です。
第2 認容後の残部請求——後訴②
図:受け|一部請求の訴訟物(明示説・前編)
次は、後訴②です。同じ事故による損害の残額、300万円の請求です。前訴は認容されて確定しました。残りを、あらためて請求できるのでしょうか。
検討の順番どおり、まず、前訴の確定判決の既判力が、残りの300万円に及ぶかを見ます。ここは、前編で導入した明示説を、そのまま呼び戻します。一個の債権の数量的な一部についてだけ判決を求める、と明示して訴えたときは、訴訟物は、その一部の存否だけで、既判力は残部に及びません。原告は、請求の範囲を自分で決められますし、一部だと示されていれば、被告も、残りがあとで請求されうると、前もって分かるからです。
あてはめます。Xは、前訴の訴状に、総額800万円のうちその一部として500万円を請求する、と書きました。一部であることが、はっきり示されています。したがって、前訴の訴訟物は、500万円の存否だけで、既判力は、残りの300万円には及びません。
前編では、既判力が及ばなくても、信義則で却下されました。前編で見た信義則は、一部請求の訴訟で、敗訴した原告が、残部を請求する場合の話でした。理由は、棄却の判決が、債権全体を審理したうえで、残りとして請求できる部分はない、と判断したことにあたるからです。前訴で請求の全部が認められた原告の残部請求かどうかが、後編の分かれ目です。Xは、前訴で、請求の全部が認められています。前訴の主文は、Yに500万円の支払を命じただけで、残りの300万円がない、とは言っていません。敗訴した原告の問題ではありませんから、信義則の問題は生じません。
したがって、後訴②は、前訴の既判力に触れず、信義則にも反せず、適法です。
では、後訴②では、その残りの300万円を、そのまま全部もらえるのでしょうか。違います。ここで答えるのは、後訴②が許されるかどうか、つまり適否までです。いくら認められるかは、別の判断で、ここでの問いの外です。
第3 後遺症——後訴③
図:前訴の基準時と、後訴③の損害
最後に、後訴③です。令和8年の7月に、右肩の機能が急に悪化して、再手術を受けた、その費用などの200万円の請求です。事故は同じです。前訴の確定判決の既判力は、この請求に及ぶのでしょうか。
先に、言葉を1つ確かめます。基準時です。判決は、事実審の口頭弁論が終結した時点を、基準にして、権利関係を判断します。この時点を、基準時と呼びます。前訴の基準時は、令和8年2月です。
そこで、問いです。再手術の費用は、前訴で「損害のうち500万円」と書いたときの、残りの300万円に含まれるのでしょうか?
同じ事故から生じた損害だから残りの300万円に入る、と考える人が多いです。ただ、ここに、落とし穴があります。前訴の800万円は、基準時までに生じていた損害の総額です。治療費、休業損害、慰謝料、どれも、令和8年2月までの話でした。再手術が必要になったのは、その5か月後です。後訴②で請求する300万円と、後訴③の200万円は、同じ事故から出ていても、別のものです。
同じ事故なのに、別のものになるのでしょうか。前訴の判決は、ある時点までに出そろったレシートを束ねて、精算したものだと考えてみてください。7月に出た新しいレシートは、その精算の束には、入っていません。同じ店のレシートでも、精算の対象になっていないのです。ここは、理解のための喩えです。判例が、どう言っているかを見ます。
図:規範と答案の型|後遺症と前訴の既判力
規範は、こうです。前訴で請求した損害と、そのあとに生じた再手術などの損害とは、訴訟物が異なります。判例は、前訴と後訴は、それぞれ訴訟物を異にするから、前訴の確定判決の既判力は後訴に及ばない、としています。ここまでが、判例の判示で、図の太字です。
そのうえで、前訴の事実審の口頭弁論が終結したあとに、その時点では通常予想できなかった事情で生じた損害は、前訴の訴訟物に含まれない、と書きます。こちらは、学説が補う理由づけで、図では太字にしていません。
判例最判昭和42年7月18日 民集21巻6号1559頁
後遺症の再手術費用と前訴の既判力が争われた事件(最高裁判決)
前訴と本件訴訟とはそれぞれ訴訟物を異にするから、前訴の確定判決の既判力は本件訴訟に及ばない
判例の事案は、前訴で、最終口頭弁論の期日までに支出した治療費を請求し、後訴で、そのあとの再手術の費用を請求したものです。最高裁は、冒頭で、明示した一部請求を認める判例を掲げています。そのうえで、前訴の請求と後訴の請求は、訴訟物が異なる、と判示しました。再手術の費用は、前訴の請求から外れていた、という見方です。第2で見たとおり、明示した一部請求では、請求した部分だけが訴訟物になり、残りは、訴訟物の外に残りました。
ここからは判決の言葉ではなく、学説の整理です。再手術の費用も、前訴で請求していない損害として、前訴の訴訟物の外に残ります。明示しようにもできなかった場面に、この一部請求と同じ理屈を当てはめた、と見るのです。
なぜ、予想できなかったことが、大事なのでしょうか。前訴の時点で、請求のしようがなかったからです。再手術が必要になるとは、通常、誰にも分からなかったのですから、Xは、前訴で「再手術の費用」を請求したくても、請求できませんでした。請求できなかった損害まで、前訴の判決で決着したことにすると、Xは、何の機会も与えられないまま、損害の回復を失います。ですから、基準時の後に、通常予想できなかった事情で生じた損害は、前訴の訴訟物の外にある、と考えるのです。
後訴②の300万円は、なぜ、別の扱いなのでしょうか。後訴②の300万円は、基準時までに生じていた損害の内側にあります。前訴の訴訟物に、含まれうるものでした。だからこそ、一部であることを明示していたことが、決め手になって、既判力が及ばなかったのです。一方、後訴③の再手術の費用は、基準時のあとに生じた、前訴が請求の対象にしていない損害で、そもそも、前訴の訴訟物の外にあります。
図:後訴③に要件を当てる(事実と評価)
あてはめます。前訴は、口頭弁論の終結時、令和8年2月までに生じた損害800万円のうち、500万円を請求したものです。後訴③の請求は、令和8年7月に右肩の機能が急に悪化して受けた、再手術の費用などの200万円です。前訴の口頭弁論が終結した時点では、再手術が必要になることは、医学的に、通常は予想できませんでした。
図:後訴③に要件を当てる(結論)
したがって、再手術の費用などの200万円は、前訴の口頭弁論の終結後に生じ、前訴の時点では、通常予想できなかった損害で、前訴の訴訟物に含まれません。前訴と後訴③は、訴訟物を異にしますから、前訴の確定判決の既判力は、後訴③に及びません。
信義則も、問題になりません。再手術の費用は、前訴では審理されておらず、Xは、前訴で請求の全部が認められています。前編の信義則が前提にしていた、「前訴で債権全体が審理されて、棄却された」という場面とは、重なりません。
図:結論 後訴③は既判力に触れず適法
結論です。後訴③は、前訴の既判力に触れず、信義則の問題も生じません。適法です。
後訴②も、後訴③も、許されますが、理由は違います。許される理由が後訴ごとに違うことが、答案で一番大事なところです。後訴②は、前訴の訴訟物に含まれうる、同じ債権の残りでしたが、明示した一部請求だったので、訴訟物から外れ、既判力が及びませんでした。後訴③は、前訴が請求の対象にしていない、基準時のあとの損害で、そもそも前訴の訴訟物の外にあるので、既判力が及びません。同じ結論でも、道筋が違います。
まとめ
図:規範と答案の型|過失相殺と一部請求
ここまでの結論を、規範ごとに確かめます。1つ目は、過失相殺です。一部請求の過失相殺は、判例に従い、損害の総額から過失割合による減額をして、残りと請求額を比べます。この事例では、560万円が、請求額の500万円をこえますから、500万円を認容します。
図:規範と答案の型|後遺症と前訴の既判力
2つ目は、後遺症です。前訴の基準時のあとに、通常予想できなかった事情で生じた損害は、前訴の訴訟物に含まれず、既判力は及びません。
認容された前訴の残りの請求も、明示の一部請求でしたから、既判力が及ばず、請求の全部が認められた原告に信義則は当たりませんから、許されます。
図:完成答案:第1 前訴の認容額(前半)
こちらが、完成答案です。答案の第1の、前訴の認容額から見ていきます。問題の所在と、規範です。図と同じ文面を、本文でも置きます。
第1 前訴の認容額
1 問題の所在
Xは、本件事故による損害の総額800万円のうち、一部として500万円を請求する前訴を提起した。Xには3割の過失がある。民法722条2項により過失相殺をするが、一部請求の場合に、過失割合による減額を、損害の総額からするか、請求額からするかは、条文に書かれていないため、問題となる。
2 規範
一個の損害賠償請求権のうちの一部が訴訟上請求されている場合に、過失相殺をするにあたっては、損害の全額から過失割合による減額をし、その残額が請求額をこえないときは右残額を認容し、残額が請求額をこえるときは請求の全額を認容することができる。一部請求をする当事者の通常の意思にそうからである。
図:完成答案:第1 前訴の認容額(後半)
答案の第1の続きで、あてはめと結論です。読んでみてください。
3 あてはめ
損害の総額800万円から3割を減じると、560万円である。この残額は、請求額500万円をこえる。
4 結論
よって、請求の全額である500万円が認容される。
図:完成答案:第2 後訴②(前半)
答案の第2は、後訴②です。問題の所在と規範を確かめてください。
第2 後訴②
1 問題の所在
後訴②は、前訴と同じ事故による損害の残額300万円の請求である。前訴の確定判決の既判力(114条1項)が及べば遮断されるため、前訴の訴訟物が問題となる。また、前訴の原告が残部を請求することが信義則(2条)に反しないかも問題となる。
2 規範
一個の債権の数量的な一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴えが提起された場合は、訴訟物は一部の存否のみであり、その確定判決の既判力は残部の請求に及ばない。もっとも、一部請求訴訟で敗訴した原告が残部請求の訴えを提起することは、特段の事情がない限り、信義則に反して許されない。
図:完成答案:第2 後訴②(後半)
答案の第2の続きで、あてはめと結論です。既判力と信義則を、順に当てています。
3 あてはめ
(1)Xは、前訴の訴状に、総額800万円のうちその一部として500万円を請求する旨を記載しており、明示がある。したがって、既判力は残部300万円に及ばない。
(2)Xは前訴で請求の全部が認められており、敗訴した原告ではないから、信義則の問題は生じない。
4 結論
よって、後訴②は適法である。
図:完成答案:第3 後訴③(前半)
最後の、答案の第3は、後訴③です。問題の所在と規範を確かめてください。
第3 後訴③
1 問題の所在
後訴③は、前訴と同じ事故による損害であるが、前訴の口頭弁論終結後(令和8年2月)に右肩の機能が悪化して生じた、再手術の費用等200万円の請求である。前訴の確定判決の既判力が及ぶかが問題となる。
2 規範
前訴で請求した損害と、その後に生じた損害とは、訴訟物を異にし、前訴の確定判決の既判力は後訴に及ばない。前訴の事実審の口頭弁論終結後に、その時点では通常予想できなかった事情で生じた損害は、前訴の訴訟物に含まれない。
図:完成答案:第3 後訴③(後半)
答案の第3の続きで、あてはめと結論です。最後の一文まで、目で追ってください。
3 あてはめ
前訴は、口頭弁論終結時までに生じた損害800万円のうち500万円の請求である。再手術の費用等200万円は、口頭弁論終結後に生じ、前訴の時点では医学的に通常予想できなかった。したがって、前訴の訴訟物に含まれない。
4 結論
よって、前訴の既判力は後訴③に及ばず、後訴③は適法である。前訴で審理されておらず、Xは前訴で請求の全部が認められているから、信義則の問題も生じない。
参照条文
- 民事訴訟法114条1項
- 民法722条2項