民訴ゼロから民事訴訟法 論文

確認の利益の書き方(前編)

亡くなった経営者の遺言が無効であることの確認を相続人が求めた訴えと、賃貸借が続いているうちに借り手が敷金返還請求権の確認を求めた訴えを素材に、過去の法律行為や将来の権利に見えるものを確認の対象にできるかを、方法選択の適否・対象選択の適否・即時確定の利益の順に検討し、答案の形にまとめます。

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ゼロから民事訴訟法 論文/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

事例

A・B・C・Dと、遺言(Aの死亡後) 図:A・B・C・Dと、遺言(Aの死亡後)

Aは、80歳の画材店の経営者でした。令和6年6月10日、自筆証書遺言で、「店舗兼自宅の土地建物と預貯金のすべてを、10年来の従業員Dに遺贈する」と書きました。遺贈とは、遺言で、財産を無償で人に与えることです。Aの相続人は、子のBとCです。ところが、遺言を書いたとき、Aは認知症が進んでいて、意思能力、つまり、自分のしている行為の意味を理解する力を、欠いていた、とBは考えています。医師の診断書もあります。一方、Dは、遺言は有効だと主張しています。Aは、令和7年10月に亡くなりました。Dは、遺言を示して、「遺言どおり名義を移す」とBに求めましたが、Bは応じません。登記の移転は、まだされていません。預貯金も、まだ払い戻されていません。令和7年12月、Bは、Dを被告として、「遺言が無効であることの確認」を求めて、訴えを提起しました。Bが求めているのは、土地や預貯金を返せという請求ではなく、遺言が無効だという判決だけです。

ここで、1つ目の問いです。「Bの訴えは許されるか」。

X・Y・Zと、敷金60万円 図:X・Y・Zと、敷金60万円

次は、別の事例です。Xは、ビルのオーナーです。令和6年4月1日、デザイン会社Yに、ビルの2階の事務所を、賃料月額30万円で貸しました。契約のとき、Yは、敷金として60万円を、契約の窓口だった仲介会社の担当者Zを通じて、Xに預けた、と主張しています。Zから、預かり証のメモも受け取りました。敷金とは、賃貸借で、借り手の債務を担保するために、貸し手に預けておくお金です。令和7年3月、賃貸借は続いているのに、Xが、「敷金は受け取っていない。返す義務はない」と言い出しました。そこで、Yは、Xを被告として、「敷金返還請求権を有することの確認」を求めて、訴えを提起しました。

Yの訴えは、敷金を返してくださいと支払を求める訴えではありません。返還請求権があることの確認を求める訴えです。2つ目の問いです。「Yの訴えは許されるか」。この2つの訴えを、順に検討します。

検討の順番

方法選択、対象選択、即時確定の順に 図:方法選択、対象選択、即時確定の順に

順番を決めます。確認の訴えは、権利や法律関係があること、または無いことを、判決で確かめてもらう訴えです。確かめてほしい対象は、いくらでも広げられます。だから、確認の判決を出すだけの意味がある場合に限って、許されます。この意味のことを、確認の利益と呼びます。そこで、確認の利益を、3つの観点で当てはめます。1つ目が、確認という方法で足りるのか、という方法選択の適否です。2つ目が、確認の対象が、現在の権利や法律関係なのか、という対象選択の適否です。そして3つ目が、今、確定する必要があるのか、という即時確定の利益です。この順に当てて、最後に、訴えの適否を言い切ります。適法なら、本案の審理へ進みます。不適法なら、訴えを却下します。

3つの観点は、全部を満たさなければなりません。1つでも欠ければ、確認の利益がなく、訴えは却下です。だから、対象選択で認められても、そこで終わりにはしません。この順番を、2つの事例で、実際にたどります。

第1 確認の利益の判断枠組み

規範と答案の型|確認の利益の判断枠組み 図:規範と答案の型|確認の利益の判断枠組み

答案の最初に書く枠組みです。確認の利益があるかは、方法選択の適否、対象選択の適否、即時確定の利益の3点を順に検討して決めます。それぞれの中身は、事例に当てる場面で確かめます。この3つの観点は、条文には書かれていません。確認の訴えの利益を絞るために、学説と実務が整理してきた基準です。条文に書いていないことを、解釈で導いた基準を、規範と呼びます。ですから、答案では、規範として書きます。

1つ目の観点に入る前に、確認判決と給付判決の違いを確かめます。違いは、強制執行ができるかどうかです。給付判決は、強制執行ができますが、確認判決は、権利があることを宣言するだけで、強制執行はできません。そこから、方法選択の適否で見る補充性が出てきます。給付の訴えができるのに、あえて確認の訴えを起こしても、執行力のない判決しか得られず、紛争が根本から片づきません。そのため、給付の訴えができる事案では、確認の利益は原則として否定されます。答案では、1つ目の観点で、まず、この補充性を確かめます。

第2 Bの訴え——相続開始後の遺言無効確認

遺言は、過去の法律行為ではないか 図:遺言は、過去の法律行為ではないか

Bの訴えから検討します。Bが求めているのは、「遺言が無効であることの確認」です。遺言は、令和6年6月10日に、Aが作ったものです。つまり、過去の法律行為です。確認の対象は、原則として、現在の権利・法律関係に限られます。これも通説の立場で、規範です。過去の行為そのものを確認しても、今の権利関係がどうなるかまでは決まらないからです。そして、「遺言が無効であることの確認」は、形式上は、過去の法律行為の確認です。ここで、許されるのかが問題になります。

もっとも、遺言のような書面については、成立の真否を確認する訴えを認める条文があります。それを使えば足りるのではないか、を先に確かめます。

条文民事訴訟法134条の2

民事訴訟法134条の2(証書真否確認の訴え)
確認の訴えは、法律関係を証する書面の成立の真否を確定するためにも提起することができる。

134条の2です。確認の訴えは、法律関係を証する書面の成立の真否を確定するためにも、提起することができる。解釈で立てた規範ではなく、条文にそのまま書いてある成立要件です。成立の真否とは、その書面が、作ったとされる本人の意思で、作られたものかどうか、という点です。争われるのは、たとえば、他人が勝手に作った偽造ではないか、です。この条文があるので、遺言書が本物かどうかを確定する道は、別にあります。ところが、Bの事例では、遺言書を書いたのはA本人です。Bが争っているのは、書いたときにAに意思能力があったか、という遺言の有効性です。誰が作ったかではなく、作られた遺言に効力があるかを争っています。ですから、遺言無効確認の訴えとして立てます。この条文だけでは、Bの訴えは受け止められません。

規範と答案の型|過去の法律行為の確認 図:規範と答案の型|過去の法律行為の確認

判例最判昭和47・2・15 民集26巻1号30頁

最高裁判所判決(遺言無効確認の訴えが許されるかが争われた事件)
いわゆる遺言無効確認の訴は、遺言が無効であることを確認するとの請求の趣旨のもとに提起されるから、形式上過去の法律行為の確認を求めることとなるが、請求の趣旨がかかる形式をとつていても、遺言が有効であるとすれば、それから生ずべき現在の特定の法律関係が存在しないことの確認を求めるものと解される場合で、原告がかかる確認を求めるにつき法律上の利益を有するときは、適法として許容されうるものと解するのが相当である。けだし、右の如き場合には、請求の趣旨を、あえて遺言から生ずべき現在の個別的法律関係に還元して表現するまでもなく、いかなる権利関係につき審理判断するかについて明確さを欠くことはなく、また、判決において、端的に、当事者間の紛争の直接的な対象である基本的法律行為たる遺言の無効の当否を判示することによつて、確認訴訟のもつ紛争解決機能が果たされることが明らかだからである。

判例は、こう言っています。遺言が有効だとすれば、そこから生ずべき現在の特定の法律関係が存在しないことの確認を求めるものと解される場合で、原告が、その確認を求めるについて法律上の利益を持つときは、適法として許容されうる。請求の趣旨が、遺言の無効という形でも、同じです。遺言そのものの確認ではなく、今の法律関係の確認に言い換えて読む、ということです。理由も、判決が述べています。請求の趣旨を、わざわざ、現在の個別の法律関係に書き直さなくても、何について審理判断するのかは、はっきりしています。そして、紛争の直接の対象である遺言の無効の当否を判断すれば、確認訴訟の、紛争を解決する働きが果たされるからです。

規範には、もう1つの条件があります。原告に、法律上の利益があることです。たとえば、Bは、Aの相続人です。もし、相続人でない、近所の人が、「Aの遺言は無効だ」と確認を求めても、遺言が有効でも無効でも、その人の権利や地位は変わりません。この場合は、法律上の利益がなく、却下されます。言い換えができれば、誰でも訴えられるわけではありません。言い換えと、法律上の利益。この2つが、そろって初めて、遺言無効確認の訴えは適法になります。

方法選択 遺言の効力を一括で確定する 図:方法選択 遺言の効力を一括で確定する

あてはめます。1つ目の観点、方法選択の適否です。事実を拾います。Dは、遺言によって、店舗兼自宅の土地建物と、預貯金のすべてを、遺贈されたと主張しています。BとDの紛争の中心は、その遺言が有効か無効か、という1点です。登記の移転は、まだ、されていません。評価です。土地建物の登記や、預貯金の扱いを、個別の訴えに分けて争うと、そのたびに、遺言の有効性が争われます。それよりも、遺言の効力を、一度に確定するほうが、紛争の解決に役立ちます。登記は、まだDに移っていません。Bには、Dから取り戻すものが、まだ無いので、Dに登記を戻せと求める給付の訴えは、起こせません。給付の訴えで足りる場面ではありません。したがって、確認の訴えという方法は、有効かつ適切で、方法選択の適否は認められます。

対象選択 Dが遺贈を受けた現在の法律関係 図:対象選択 Dが遺贈を受けた現在の法律関係

2つ目の観点、対象選択の適否です。事実を拾います。Bの請求は、遺言が無効であることの確認です。遺言が有効だとすれば、Dは、店舗兼自宅の土地建物と、預貯金のすべての遺贈を、受けたことになります。そして、Bは、Aの相続人で、Dは、Bに、名義の移転を求めています。評価です。遺言が有効なら生じるのは、Dが遺贈を受けたという、現在の特定の法律関係です。Bの請求は、この関係が存在しないことの確認と、読めます。もう1点、遺言が有効なら、土地建物も預貯金も、Bの相続する遺産から外れます。ですから、Bは、確認を求める法律上の利益を持ちます。以上から、対象は、現在の特定の法律関係の不存在の確認と読めます。確認の対象になる資格、つまり対象適格が、あります。Bに法律上の利益もあります。対象選択の適否は、認められます。

遺言を書いたとき、本当にAに意思能力がなかったのかは、ここでは判断しません。意思能力の有無は、遺言が無効かどうかという、本案の中身です。確認の利益は、本案の審理に入ってよいかを、決める段階です。

即時確定の利益 紛争は現に成熟している 図:即時確定の利益 紛争は現に成熟している

3つ目の観点、即時確定の利益です。事実を拾います。Aは亡くなり、相続が開始しています。Dは、Bに名義の移転を求め、Bは、それに応じず、争っています。評価です。相続が開始しているので、遺言が有効なら、Dは、すでに土地建物と預貯金を取得していることになります。そのうえで、Dは、現に名義の移転を求めています。Bの相続人としての地位には、いま、危険や不安が生じていて、判決で取り除く必要があります。したがって、即時確定の利益も、認められます。結論です。3つの観点が、すべて認められました。Bの訴えは、確認の利益があり、適法です。裁判所は、遺言作成時のAの意思能力があったかという、本案の審理に進みます。

第3 Yの訴え——契約継続中の敷金返還請求権

敷金返還請求権は、将来の権利ではないか 図:敷金返還請求権は、将来の権利ではないか

次は、Yの訴えです。Bの訴えでは、過去の法律行為の確認に見えることが問題でした。今度は反対に、将来の権利の確認に見えることが問題になります。契約が続いているうちは、まだ払われていない敷金の返還請求権を、確認の対象にできるのでしょうか?そこが問題です。将来の権利は、確認の対象になりにくいからです。敷金は、賃貸借が終わって、建物を明け渡すときに、返してもらうお金です。Yが返還を受けられるのは、その明渡しの時で、いまは、賃貸借の継続中です。ですから、Yが求める敷金返還請求権は、将来の権利に見えます。確認の対象は、原則として、現在の権利・法律関係に限られます。Yの訴えは、許されるでしょうか。さらに、いま確定する必要があるのかも、問題になります。

規範と答案の型|条件付権利の確認 図:規範と答案の型|条件付権利の確認

判例最判平成11・1・21 民集53巻1号1頁

最高裁判所判決(敷金返還請求権の存在確認の訴えが許されるかが争われた事件)
建物賃貸借における敷金返還請求権は、賃貸借終了後、建物明渡しがされた時において、それまでに生じた敷金の被担保債権一切を控除しなお残額があることを条件として、その残額につき発生するものであって(…)、賃貸借契約終了前においても、このような条件付きの権利として存在するものということができるところ、本件の確認の対象は、このような条件付きの権利であると解されるから、現在の権利又は法律関係であるということができ、確認の対象としての適格に欠けるところはないというべきである。また、本件では、上告人は、被上告人の主張する敷金交付の事実を争って、敷金の返還義務を負わないと主張しているのであるから、被上告人・上告人間で右のような条件付きの権利の存否を確定すれば、被上告人の法律上の地位に現に生じている不安ないし危険は除去されるといえるのであって、本件訴えには即時確定の利益があるということができる。

判例は、こう言っています。敷金返還請求権は、賃貸借が終わり、建物の明渡しがされた時に、それまでに生じた敷金の被担保債権、つまり、未払いの賃料のように、敷金でまかなわれる借り手の債務を、全部差し引いて、なお残額があることを条件として、その残額につき発生する。そうであっても、賃貸借契約の終了前から、このような条件付きの権利として存在する。判決の言葉の、上告人と被上告人は、この事例に当てると、上告人が、返す義務を争っているXで、被上告人が、返還を求めるYです。

条件付きの権利、というのは、まだ権利になっていない、ということではないのでしょうか。違います。敷金を本当に預けたかどうかは、本案で決めることです。ここでは、Yが主張する権利が、どんな権利なのかを見ます。Yの主張では、契約のときに、すでに60万円を預けています。預けた時点で、返してもらう関係は始まっていて、まだ決まっていないのは、未払いの賃料や、原状回復の費用を引いて、残りが出るかどうか、出るならいくらか、だけです。ですから、条件が成就していないだけで、権利としては、いまも存在しています。条件が成就するのは、明渡しの時です。そうすると、Yが求める確認の対象は、将来の権利ではなく、いまある条件付きの権利です。確認の対象は、現在の権利又は法律関係である、と言えます。

即時確定の利益は、別に判断されます。判決は、被告が、敷金交付の事実を争って、返還義務を負わないと主張しているなら、条件付きの権利の存否を確定すれば、原告の法律上の地位に現に生じている不安や危険は除去される、と言いました。決め手は、被告が敷金を預かった事実そのものを争っている点です。では、もしXが、敷金は預かっているけれど、明け渡すときに精算して返す、と認めていたら、どうなるでしょうか。その場合は、Yの地位に、現に生じている不安や危険が、乏しくなります。同じ訴えでも、即時確定の利益が問題になりえます。敷金を預けた事実(差入れの事実)が争われているかどうかが、ここでの問題になります。

方法選択と対象選択 現在の給付の訴えは使えない 図:方法選択と対象選択 現在の給付の訴えは使えない

あてはめます。1つ目の観点、方法選択の適否です。敷金返還請求権は、明渡しの時に、残額があることを条件として、初めて発生します。契約継続中の今は、発生の前です。そのため、今すぐ払えと求める給付の訴えは、使えません。給付の訴えができるのに確認の訴えを選んだ、という補充性の問題は、そもそも生じません。確認の訴えは、有効かつ適切で、方法選択の適否は認められます。2つ目の観点、対象選択の適否です。Yが求めているのは、明渡しの時に、Xの控除後の残額があることを条件とする、敷金返還請求権です。これは、条件付きの権利として、契約終了前の今も存在しています。ですから、現在の権利です。対象選択の適否は、認められます。

対象が現在の権利なら、これで適法と言えるのでしょうか。まだです。対象選択をクリアしても、3つ目の観点が、残っています。

即時確定の利益 Xは差入れの事実を争っている 図:即時確定の利益 Xは差入れの事実を争っている

3つ目の観点、即時確定の利益です。事実を拾います。Xは、令和7年3月に、「敷金は受け取っていない。返す義務はない」と主張しています。Yは、Zを通じて、敷金60万円を預けた、と主張していて、Zの預かり証のメモも持っています。評価です。Yの手元には預かり証のメモがあるのに、Xは、受け取ったこと自体を否定しています。争われているのは、敷金の金額ではなく、敷金を預けたという事実そのものです。このまま放置すれば、Yは、明渡しのときに、敷金は預かっていないと言われるかもしれない、という不安を抱えたままです。この点を、条件付きの権利の存否を確定することで、除くことができます。Yの法律上の地位に、現に生じている不安があり、それを今、除く必要があります。結論です。3つの観点が、すべて認められました。Yの訴えは、確認の利益があり、適法です。

ここまでの2つの訴えは、どちらも適法でした。ただし、事例の筋書きが違えば、結論は変わります。それは、後編で扱います。

まとめ

完成答案:第1 確認の利益の判断枠組み 図:完成答案:第1 確認の利益の判断枠組み

こちらが、完成答案です。第1の、確認の利益の判断枠組みです。図と同じ文面を、本文でも置きます(規範の結びだけ、このノートの言い回しにしています)。

第1 確認の利益の判断枠組み

1 問題の所在

 確認の訴えは、対象が無限定になりうるため、確認の利益が認められなければ、訴えは却下される。そこで、確認の利益の判断枠組みが問題となる。

2 規範

 確認の利益は、①確認の訴えという方法を選択することが紛争解決にとって有効・適切か(方法選択の適否)、②選択された訴訟物が原告・被告間の紛争解決にとって有効・適切か(対象選択の適否)、③原告の法的地位に現に生じている危険・不安を、判決で今すぐ取り除く法律上の利益があるか(即時確定の利益)、の3点を順に検討して決める。

完成答案:第2 Bの訴え(前半) 図:完成答案:第2 Bの訴え(前半)

第2は、Bの訴えです。問題の所在、規範と、あてはめのうち方法選択の適否までです。

第2 Bの訴え

1 問題の所在

 Bの訴えは、遺言が無効であることの確認を求めるもので、形式上は、過去の法律行為の確認である。確認の対象は原則として現在の権利・法律関係に限られるため、許されるかが問題となる。

2 規範

 確認の対象は原則として現在の権利・法律関係に限られる。しかし、遺言無効確認の訴えは、遺言が有効であるとすれば、それから生ずべき現在の特定の法律関係が存在しないことの確認を求めるものと解される場合で、原告がかかる確認を求めるにつき法律上の利益を有するときは、適法として許容されうる。

3 あてはめ

 (1)方法選択の適否=Dは遺言により土地建物と預貯金のすべての遺贈を受けたと主張し、遺言の効力が紛争の中心である。登記や預貯金を個別の訴えに分けて争うよりも、遺言の効力を一括して確定するほうが紛争の解決に資する。給付の訴えで足りる場面ではなく、確認の訴えは有効・適切である。

完成答案:第2 Bの訴え(後半) 図:完成答案:第2 Bの訴え(後半)

第2の続きです。あてはめの残り、対象選択の適否と即時確定の利益、そして結論です。

3 あてはめ(続き)

 (2)対象選択の適否=遺言が有効であるとすれば、Dは、店舗兼自宅の土地建物と預貯金のすべての遺贈を受けたという現在の特定の法律関係が生ずる。Bの請求は、この関係が存在しないことの確認を求めるものと解される。また、Bは、Aの相続人であり、遺言が有効であれば、これらの財産は遺産から外れるから、確認を求める法律上の利益がある。

 (3)即時確定の利益=Aは死亡して相続が開始しており、DはBに名義の移転を求め、Bは争っている。遺言が有効であればDは既に財産を取得していることになり、Bの相続人としての地位に現に危険・不安が生じている。遺言の有効性をめぐる紛争が現に生じており、即時に確定する必要がある。

4 結論

 よって、Bの訴えは、確認の利益があり、適法である。

完成答案:第3 Yの訴え(前半) 図:完成答案:第3 Yの訴え(前半)

第3は、Yの訴えです。問題の所在と規範です。

第3 Yの訴え

1 問題の所在

 Yの訴えは、賃貸借の継続中に、敷金返還請求権の存在の確認を求めるもので、明渡しの時に発生する将来の権利に見える。確認の対象は原則として現在の権利・法律関係に限られるため、対象適格と即時確定の利益が問題となる。

2 規範

 敷金返還請求権は、明渡しの時に被担保債権を控除した残額を条件として発生するもので、賃貸借契約終了前においても、このような条件付きの権利として存在するものということができる。したがって、確認の対象は現在の権利又は法律関係であるということができる。また、被告が敷金交付の事実を争って返還義務を負わないと主張しているときは、条件付きの権利の存否を確定すれば、原告の法律上の地位に現に生じている不安ないし危険は除去されるから、即時確定の利益がある。

完成答案:第3 Yの訴え(後半) 図:完成答案:第3 Yの訴え(後半)

第3の続きです。あてはめと結論です。

3 あてはめ

 (1)方法選択の適否=敷金返還請求権は明渡しの時に発生するもので、賃貸借継続中は、現在の給付の訴えを提起できない。補充性の問題は生じず、確認の訴えは有効・適切である。

 (2)対象選択の適否=Yが求めるのは、明渡しの時に控除後の残額があることを条件とする敷金返還請求権であり、条件付きの権利として賃貸借契約終了前から存在する。したがって、現在の権利である。

 (3)即時確定の利益=Xは、敷金を受け取っていないと主張し、返還義務を負わないと主張している。争いは敷金の額ではなく、差入れの事実そのものに及んでいる。条件付きの権利の存否を確定すれば、Yの法律上の地位に現に生じている不安・危険は除去される。

4 結論

 よって、Yの訴えは、確認の利益があり、適法である。

同じ遺言で、Aがまだ生きているうちに、Bが同じ訴えを起こしたらどうなるのかは、後編で扱います。

参照条文

  • 民事訴訟法134条の2

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