既判力の主観的範囲の書き方(後編)
ビルのオーナーXがデザイン会社Yに絵画の引渡しを求めて勝訴し、判決が確定した後、Yがその絵を、判決の確定を知っている取引先のUに贈った場合と、従業員のWに無償で預けた場合を素材に、前訴の既判力がUとWに及ぶか、115条1項の3号と4号のどちらで検討するか、後訴で何を争えるかを、答案の順に確かめます。
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ゼロから民事訴訟法 論文/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
事例
図:X・Y・U・Wと前訴P・後訴Q
前編の続きです。前訴Pは、前編と同じです。ビルのオーナーXが、デザイン会社Yを被告として、所有権にもとづき、風景画の油絵、本件絵画の引渡しを求めました。Yは「贈与を受けた」と抗弁しましたが、贈与の事実は認められず、請求は認容されました。口頭弁論の終結は令和8年2月20日、判決は同年3月13日で、判決書は同じ日に双方に送達されました。控訴がなく、判決は、3月28日に確定しています。それでも、Yは引渡しに応じません。
前編では、そのあとYが、知人のTに絵を売りました。この後編では、確定のあとのYの動きが違う筋書きを、二つ見ます。どちらも別々の「もしも」で、同じ絵を同時に複数の人が持っているわけではありません。
一つめの筋書きでは、Yは、取引先のUに、本件絵画を贈ります。時期は、終結後の令和8年4月下旬です。Uは、前訴Pの判決が確定したことも、Xが絵の返還を求めて勝ったことも、Yから聞いて知ったうえで受け取りました。Xは、Uを被告として、所有権にもとづき、本件絵画の引渡しを求めて訴えます。これが後訴Qです。
二つめの筋書きでは、Yは、令和8年4月中旬に、本件絵画を、Yの従業員Wに渡して、「会社の倉庫が手狭だから、しばらく自宅で預かってくれ」と言いました。Wは、無償で、包んだまま自宅の押入れに入れていて、使っていません。Yが求めれば、いつでも返す約束です。Xは、Wを被告として、本件絵画の引渡しを求めて訴えます。これも、後訴Qと呼びます。Wは、「預かっているだけだ。Yに言ってくれ」と言っています。
Uは贈られた人で、Wは預かっているだけの人です。同じように、前訴Pの判決が及ぶのでしょうか。問いは二つです。前訴Pの確定判決の既判力は、UとWに及ぶか。及ぶとして、後訴Qで、何を争えるか。あわせて、Wの別の形も、あとで確かめます。Wが、Yに月額5,000円を払って絵を借り、自宅の居間に飾っている場合です。
検討の順番
図:原則から結論まで、順に
検討の順番は、前編と同じです。一つめに、既判力は原則として当事者にしか及ばないので、UとWが、前訴Pの当事者でないことを確かめます。二つめに、条文が既判力を広げている号のうち、どれにあたるかを特定します。三つめが承継人の範囲、四つめが固有の防御方法の扱いで、ここは前編で立てた規範を使います。最後に、後訴で何が争えなくなり、何が争えるのかを言い切ります。
前編と比べて新しいのは、二つめの、号の特定です。譲り受けた人は3号、預かっているだけの人は4号で、検討する号が変わります。号が変われば、確かめる事実も、争える範囲も変わります。以下では、この分かれ目を、事実から決めていきます。
Uは承継人か、後訴で何を争えるか
図:Uは承継人にあたるか。出せる主張は残るか
ここで、前編の復習です。承継人に既判力が及ぶとき、固有の防御方法を持つ承継人は、後訴で何を争えて、何を争えないのでしたか?前訴で確定した、XがYに引渡しを求める権利は、争えません。でも、自分の取引で得た即時取得のような、固有の防御方法は、後訴で出せました。前編のTには、出せる主張が残っていました。Uは、どうなるでしょうか。順に見ます。
まず、Uは、前訴Pの当事者ではないので、1号にはあたりません。Uは、当事者だったYから、終結のあとに、本件絵画を贈られています。譲り受けた人ですから、3号の、口頭弁論終結後の承継人にあたるかを検討します。
使う規範は、前編のものです。口頭弁論終結後の承継人とは、前主から紛争の主体たる地位を基準時後に承継した者をいい、訴訟物たる権利義務そのものを承継した者に限られません。そして、自分だけの防御方法をもつ者も、承継人に含まれます。もっとも、既判力が及ぶ承継人は、前訴で確定した、前主と相手方の間の権利関係を争えませんが、承継人が相手方との間で自ら有する固有の防御方法の提出は、既判力に妨げられません。Uについて、新しく立てる規範はありません。
前編との違いが出るのは、Uに、出せる固有の防御方法があるかどうかです。前編のTの武器は、民法192条の即時取得でした。条文の文言だけ、確かめておきます。
条文民法192条
民法192条(即時取得)
取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
192条です。取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。条文どおりの成立要件です。ここで見るのは、善意であり、かつ、過失がないとき、という文言です。善意とは、前の持ち主に処分する権限が無いことを、知らないことをいいます。
図:Uに、承継人の要件と固有の防御方法を当てる
あてはめます。事実を拾います。YからUへの贈与は、前訴Pの口頭弁論終結のあとです。Uは、本件絵画を現に占有しています。Uは、前訴Pの判決が確定して、Yが絵をXに引き渡すべきことが確定したと知ったうえで、受け取りました。そして、Uが持つほかの実体法上の主張は、Yから贈与を受けたこと以外に、見当たりません。
評価です。前訴Pの争いは、Yが自分の絵だと主張して持っている本件絵画を、Xに返すべきか、でした。Uは、贈与でその絵を受け取り、この争いの席を、終結のあとにYから引き継いでいます。紛争の主体たる地位を承継しています。一方で、Uには、Xに対して自分だけで言える主張がありません。即時取得の入口である善意を、Uは、知っていたという事実のために、満たせないからです。したがって、Uは、承継人にあたり、固有の防御方法は無い、とあてはめられます。
図:TとUの違い、争えるものが残るか
結論です。前訴Pの既判力は、Uに及びます。Uは、XがYに本件絵画の引渡しを求める権利を持つことを、争えません。そのうえ、出せる固有の防御方法も無いので、後訴QでのXの請求は、認容されます。
TもUも承継人なのに、結論は逆になります。TとUは、承継人にあたる点は、同じです。違いは、争えるものが、あとに残るかどうかです。Tには即時取得という自分の武器が残り、Uには残りません。ですから、答案は、「承継人だから認容」とだけ書くのではなく、Uに出せる主張が無いことを、事実を拾って確かめてから、書く必要があります。
預かっているだけのWにも及ぶか
図:預かっているだけのWは、判決に縛られるか
Wは、絵を買ってもらってもいないし、贈られてもいません。ただ預かっているだけです。それでも、前訴Pの判決に縛られるのでしょうか?ここが、後編の本番です。結論から言うと、縛られます。ただし、Uのように3号で書き始めると、答案が崩れます。まず、どの号の話なのかを、事実から決めます。
条文民事訴訟法115条1項
民事訴訟法第115条(確定判決等の効力が及ぶ者の範囲)第1項
確定判決は、次に掲げる者に対してその効力を有する。
一 当事者
二 当事者が他人のために原告又は被告となった場合のその他人
三 前二号に掲げる者の口頭弁論終結後の承継人
四 前三号に掲げる者のために請求の目的物を所持する者
条文を、4号を中心に読み直します。1号は当事者で、Wは、前訴Pの当事者ではありません。2号は、当事者が他人のために原告や被告になった場合のその他人で、Yは自分のために被告になっていますから、Wは当たりません。3号は、前二号に掲げる者の、口頭弁論終結後の承継人です。4号は、前三号に掲げる者のために、請求の目的物を所持する者です。ここまでは、条文を音読すれば出てくる話で、成立要件です。
図:どの号にあたるか(W)
Wは、Yから、本件絵画の所有権を譲り受けていません。絵の占有と帰属をXと争う立場も、引き継いでいません。Wは、絵が自分のものだとも、自分に持つ権利があるとも言わず、Yに頼まれて、預かっているだけだからです。Xと争う立場は、Yに残ったままです。ですから、Wは、3号の承継人ではありません。残るのは、4号です。Yは、前訴Pの当事者で1号にあたり、本件絵画は、前訴Pで引渡しを求めた目的物です。Yのために本件絵画を持っているWについて、4号を検討します。
答案では、4号は、3号の承継人とは、別のものとして書きます。3号は、前の人の地位を引き継いだ人の話で、4号は、当事者のために目的物を持っているだけの人の話です。引き継いだのか、預かっているのかで、書く号が分かれます。そこで、問題はこうです。4号の、前三号に掲げる者のために請求の目的物を所持する者とは、どのような人でしょうか。預かっているだけのWは、これにあたるでしょうか。
図:規範と答案の型|請求の目的物の所持者
規範は、こうです。請求の目的物の所持者とは、目的物の所持について固有の利益を有せず、もっぱら当事者、つまり前三号に掲げる者のために所持している者をいいます。自己の利益のために占有する者、賃借人や質権者などは、含まれません。この規範は、条文には書かれていません。条文は「のために」としか言っていないので、その意味を、解釈で絞った規範です。通説の考え方で、判例が立てた規範ではありません。答案では、規範として書きます。
Wは、前訴Pに出ていません。それなのに、なぜ判決に縛られるのでしょうか。理由は、固有の利益の有無です。たとえば、旅行に出る友人の荷物を、玄関で預かっているだけの人は、その荷物に、自分の取り分がありません。争う利害を持つのは、荷物の持ち主のほうです。この事例でいえば、絵を預けたYが持ち主の側にあたり、Yは前訴Pで争う機会を与えられています。固有の利益が無い所持者には、独自に手続保障を与える必要が無いので、持ち主が受けた結果を及ぼしてよい、と考えます。
輪郭を、境目の例で確かめます。Wが、Yに頼まれて、無償で預かっているだけなら、Wは、Yのためだけに持っています。ところが、Wが、月額5,000円を払って借り、居間に飾っているのなら、Wは、自分が使う利益のために持っています。決め手は、その占有が、誰の利益のためか、です。前者は4号の所持者にあたり、後者は含まれません。
答案の失敗は、二つあります。一つめは、Wが預かっているだけなのに、3号で書き始めてしまうことです。二つめは、「所持者だから及ぶ」とだけ書いて、Wが自分の利益のために持っていないことを、事実から拾わないことです。
図:Wに、4号の要件を当てる
あてはめます。事実を拾います。請求の目的物は、本件絵画で、前訴Pで引渡しを求めた対象です。Wは、Yに頼まれて預かっています。無償で、包んだまま自宅の押入れに入れ、使っていません。Yが求めれば、いつでも返す約束です。そして、Wが、自分の側に持つ権利や利益の主張は、見当たりません。
評価です。Wが絵を持っているのは、Wの利益のためではなく、もっぱらYのためです。Wには、独自に守るべき固有の利益が無く、Wのために別に争う場を用意する必要もありません。したがって、Wは、Yのために請求の目的物を所持する者にあたります。
図:Wの結論、争えないこと、争えること
結論です。前訴Pの既判力は、4号により、Wに及びます。Wは、XがYに本件絵画の引渡しを求める権利を持つことを、争えません。
Wは「預かっているだけだ。Yに言ってくれ」と言っています。この言い分は、通りません。預かっているだけだという事実は、むしろ、4号にあたることを裏づける事実で、防御にはならないからです。
では、Wには、争えるものが何も残らないのでしょうか。固有の防御方法は、Xに対して自分だけで言える主張でした。絵について自分の権利も利益も持たないWには、その元になるものがありません。ですから、固有の防御方法として残るものは、見当たらないと考えられます。争えるのは、Wが本当にYのために預かっているのか、という、4号にあたるかどうかそのものです。Wが、実は自分の利益のために持っている、と事実で示せれば、4号にはあたらなくなります。そうならなければ、後訴QでのXの請求は、認容されます。
図:Wと賃借のWの違い
では、先ほど境目の例にした、月額5,000円で絵を借りて居間に飾っているWに戻ります。借りた時期は、預かりの筋書きと同じ、終結のあとの4月中旬とします。ここでは、これを、賃借のWと呼びます。賃借のWは、自分が使う利益のために占有していますから、4号の所持者にあたりません。ですから、4号では、既判力は及びません。
それなら、賃借のWには、前訴Pの判決は及ばないのでしょうか。そこで終わりにはしません。4号で及ばなくても、3号の承継人にあたるかは、別に残ります。確かめることは、前編と同じ二つです。一つめは時期で、借りたのは終結のあとですから、満たします。
二つめは、紛争の主体たる地位を承継したかです。預かっているだけのWは、絵を持ち続ける理由を自分の側に持たず、Xと争う立場はYに残っていました。賃借のWは違います。借りて使う者として、自分のために絵を持ち続けたい立場で、Yから占有を受け取っています。絵をXに返すべきかという争いの席に、W自身が座ることになりますから、紛争の主体たる地位を承継した者として、3号の承継人にあたると考えられます。あたるなら、前訴Pの既判力は、3号によって及びます。
どの号かを見分ける事実は、全部で三つです。一つめは、譲り受けたかどうか。二つめは、預かっているだけかどうか。三つめは、自己の利益のために占有しているかどうかです。
4つの場合の分かれ目
図:T・U・W・賃借のWの対比、分かれ目は3つ
四つの場合を、ならべて見ます。T、U、W、そして賃借のWです。分かれ目は、三つあります。
一つめは、譲り受けたのか、預かっているだけなのかで、検討する号が変わることです。TとUは、Yから譲り受けているので、3号です。Wは、預かっているだけで、4号です。賃借のWは、自分の利益のために占有しているので、4号ではなく、3号の道で、確かめ直します。
二つめは、承継人なら、固有の防御方法があるかどうかで、争える範囲が変わることです。Tは、即時取得の主張を持っているので、後訴で出せます。Uは、知って受け取ったので、出せるものがありません。
三つめは、所持者の場合の、固有の防御方法です。所持者は、固有の利益が無いので、固有の防御方法として残るものは、見当たらないと考えられます。争えるのは、4号にあたるかどうか、という点です。ですから、同じように既判力が及んでも、後訴で残るものは、Tでは即時取得の主張、Uでは無し、Wでは4号の該当性に限られると考えられます。
どの場合でも、まず、号を決めます。号が決まれば、確かめる事実が決まり、後訴で何を争えるかまで、順に決まります。
まとめ
結論を、振り返ります。Uは、贈与で紛争の主体たる地位を承継した、3号の承継人です。固有の防御方法が無いので、後訴で争えるものが残りません。Wは、預かっているだけの所持者で、4号により既判力が及び、争えるのは、4号にあたるかどうかに限られると考えられます。賃借のWは、自分の利益のための占有なので、4号ではなく、3号の承継人にあたるかを確かめます。どの号かは、譲り受けたか、預かっているだけか、自己の利益のためか、という事実で決まります。
図:完成答案:第1 既判力が及ぶ者
こちらが、完成答案です。第1の、前訴Pの既判力が及ぶ者です。図と同じ文面を、本文でも置きます。
第1 前訴Pの既判力が及ぶ者
1 原則
確定判決の既判力は、原則として当事者にしか及ばない(民事訴訟法115条1項1号)。U及びWは、前訴Pの当事者ではない。
2 例外の号の特定
Uは、前訴Pの当事者であるYから、口頭弁論終結後に本件絵画の贈与を受けた者である。そこで、同項3号の口頭弁論終結後の承継人にあたるかが問題となる。
Wは、Yから本件絵画を預かっているにすぎず、譲り受けた者ではない。そこで、同項4号の請求の目的物の所持者にあたるかが問題となる。
図:完成答案:第2 Uに対する関係
第2は、Uに対する関係です。規範のうち、固有の防御方法をもつ者が承継人に含まれることを述べる一文だけ、図と言い回しを変えています。
第2 Uに対する関係
1 問題の所在
Uは、Yから本件絵画の贈与を受けた者である。Uが3号の承継人にあたるか、また、Uが固有の防御方法を有し、後訴Qでこれを提出できるかが問題となる。
2 規範
口頭弁論終結後の承継人とは、前主から紛争の主体たる地位を基準時後に承継した者をいい、訴訟物たる権利義務そのものを承継した者に限られない。自分だけの防御方法をもつ者も、承継人に含まれる。もっとも、既判力が及ぶ承継人は、前訴で確定した前主と相手方の間の権利関係を争えないが、承継人が相手方との間で自ら有する固有の防御方法の提出は、既判力に妨げられない。
3 あてはめ
(1)承継の時期=YからUへの贈与は令和8年4月下旬であり、前訴Pの口頭弁論終結(令和8年2月20日)の後である。
(2)紛争の主体たる地位の承継=Uは、本件絵画を現に占有しており、前訴Pで争われた絵の占有と帰属を争う立場をYから承継した。
(3)固有の防御方法の有無=Uは、前訴Pの判決が確定したことを知って受け取っており、民法192条の善意を満たさない。ほかにUが自ら有する実体法上の主張は見当たらない。したがって、Uは固有の防御方法を有しない。
4 結論
よって、Uは3号の承継人にあたり、前訴Pの既判力はUに及ぶ。⇒Uは、XがYに引渡しを求める権利を争えない。⇒Uには出せる固有の防御方法が無く、後訴QでのXの請求は認容される。
図:完成答案:第3 Wに対する関係(問題の所在・規範)
第3は、Wに対する関係です。まず、問題の所在と規範です。
第3 Wに対する関係
1 問題の所在
Wは、Yから本件絵画を預かっているにすぎず、譲り受けた者ではない。そこで、Wは同項4号の請求の目的物の所持者にあたるか、また、賃借人のように自己のために占有する者も含まれるかが問題となる。
2 規範
請求の目的物の所持者とは、目的物の所持について固有の利益を有せず、もっぱら当事者(前三号に掲げる者)のために所持している者をいう。自己の利益のために占有する者(賃借人・質権者など)は含まれない。所持者に固有の利益が無ければ、独自に手続保障を与える必要が無いからである。
図:完成答案:第3 Wに対する関係(あてはめ・結論)
第3の続きで、あてはめと結論、そして賃借のWについての付記です。
3 あてはめ
(1)号の特定=Wは、Yから本件絵画の所有権を譲り受けておらず、本件絵画の占有と帰属を争う立場も承継していない。したがって、3号の承継人ではなく、4号の所持者にあたるかを検討する。
(2)自己の利益のための占有か=Wは、Yに頼まれて、無償で、包んだまま自宅の押入れに入れて預かっており、使用していない。Yが求めればいつでも返す約束であり、Wが自己の側に持つ権利や利益の主張は見当たらない。Wの所持は、Wの利益のためではなく、もっぱらYのためであり、Wには固有の利益が無く、Wのために別に争う場を用意する必要が無い。したがって、Wは、Yのために請求の目的物を所持する者にあたる。
4 結論
よって、前訴Pの既判力は、同項4号によりWに及ぶ。⇒Wは、XがYに引渡しを求める権利を争えない。⇒Wには固有の利益が無く、争えるのは4号の該当性に限られると解される。
付記
ア Wが、Yに月額5,000円を払って本件絵画を借り、居間に飾っている場合は、Wは自己の利益のために占有しており、4号の所持者にあたらない。この場合は、3号の承継人にあたるかを、第2と同じ道で検討する。
参照条文
- 民法192条
- 民事訴訟法115条1項