二重起訴の禁止の書き方(前編)
賃借人Yの債務不存在確認の訴え甲が係属している間に、賃貸人Xが別の裁判所に同じ壁紙の張り替え費用20万円の支払を求める訴え乙と、床の傷の補修費80万円を求める訴え丙を起こした事例を素材に、142条の「事件」の同一性を当事者と審判対象の2つで判断する規範、乙と丙のあてはめ、却下された後の反訴の道までを答案の順に確認します。
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ゼロから民事訴訟法 論文/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
事例
図:X・Yと、訴え甲・乙・丙
Xは、ビルのオーナーです。令和6年4月1日、デザイン会社Yに、ビルの2階の事務所を、賃料月額30万円、毎月末日払いで貸し、同じ日に鍵を引き渡しました。令和7年6月30日にYが退去し、鍵は、仲介会社の担当者Zの会社に預けられました。前に見た既判力の事例と同じ、Xのビルの事務所です。Yは、まず壁紙の張り替え費用20万円の債務が存在しないことの確認を求めて訴えましたが、争いがなく確認の利益を欠くとして却下され、その判決は確定しました。ところが、そのあとでXが「20万円を請求する」と通知してきたので、Yは、同じ確認の訴えを、もう一度起こしました。
この、再び起こされた確認の訴えを、甲と呼びます。Yが原告、Xが被告で、A地方裁判所に係属しています。訴状はXに送達済みで、審理が進んでいます。
ここへ、Xが動きます。甲が係属している間に、Xは、B地方裁判所に、Yを被告として、壁紙の張り替え費用20万円の支払を求める訴えを起こしました。これを、乙と呼びます。甲は「債務はない」という確認で、乙は「払え」という請求です。同じ20万円を、逆の向きから争っている形です。
もう1つあります。Xは、別に、床の傷の補修費80万円を請求する訴えも起こしています。Yの従業員Wが荷物を搬入したときに付いた床の傷について、使用者としてのYの責任を問うものです。これを、丙と呼びます。丙も、甲が係属したあとに、Xが起こしたものとします。
前に見た既判力の事例で、Yの再訴は、前の却下判決の既判力では妨げられないと見ました。既判力は、確定した判断の中身を、当事者も裁判所も、もう争い直せなくする力でした。では、その再訴の甲が係属している間に、Xが別の裁判所に同じ20万円を請求したら、どうなるのでしょうか?
問いを、答案の形にします。乙は、142条に反しないか。反するなら、乙はどう扱われるのか。別訴ではなく、反訴にできないか。そして、丙は、142条に反するのか。この4つを、順番に考えます。
検討の順番
図:142条から、後訴の扱いまで
順番を、決めます。1つ目は、142条を示します。後訴が142条に触れるかは、条文の「係属する事件について」と「更に訴えを提起」を満たすかで決まるからです。2つ目は、「事件」が同じかどうかの基準が、条文に書かれていないことを、問題の所在として挙げます。3つ目は、142条の趣旨から、同じ事件かどうかの規範を立てます。4つ目は、当事者、審判対象の順にあてはめます。そして5つ目の結論では、後訴をどう扱うかまで言い切ります。
後訴が不適法だと言うだけでは、答案は半分です。却下されたあと、Xは20万円をどこで求めればよいのかまで書けて、問いに答えたことになります。
条文民事訴訟法142条
民事訴訟法142条(重複する訴えの提起の禁止)
裁判所に係属する事件については、当事者は、更に訴えを提起することができない。
142条です。裁判所に係属する事件については、当事者は、更に訴えを提起することができない。音読すれば出てくる条文ですから、成立要件にあたります。覚える規範ではありません。
乙は、甲が係属している間に、Xが更に起こした訴えですから、「更に訴えを提起」しているのは、そのとおりです。残るのは、「係属する事件」にあたるかどうかです。甲が係属しているのは確かですが、乙が、その甲と同じ事件なのか。ここで、この条文の読みが問われます。
第1 乙は、係属中の甲と同じ事件か——事件の同一性の基準
図:乙は、係属中の甲と同じ事件か
最初の問題です。142条は、係属する「事件」について、更に訴えることを禁じています。ところが、どういうときに「同じ事件」と言えるのか、条文は何も書いていません。そこで、乙は、係属中の甲と同じ事件か、が問題になります。よりどころは、条文の趣旨です。142条は何を防ぎたいのか。そこから、同じ事件かどうかの線を引きます。
図:規範と答案の型|事件の同一性
規範は、こうです。重複起訴の禁止の趣旨は、審判の重複による不経済、既判力の抵触の可能性、被告の応訴の負担の防止にあります。そこで、事件の同一性は、当事者の同一性と、審判対象の同一性により判断します。趣旨の3つも、判断の基準も、条文に書かれたものではありません。条文の趣旨と通説による整理ですから、これが、覚えるほうの規範です。
3つの趣旨が、どうして、当事者と審判対象の2つに結びつくのでしょうか。3つの弊害が実際に起きるのは、同じ2人が、同じ中身を、2か所で争っているときだけだからです。甲と乙で確かめます。
1つ目、審判の重複による不経済です。A地方裁判所もB地方裁判所も、壁紙の張り替えが必要だったのか、20万円が相当なのかを、それぞれ調べます。同じ証拠調べを、2回やることになります。
2つ目、既判力の抵触の可能性です。甲が確定して、「債務は存在しない」という判断に既判力が生じ、乙も確定して、「20万円を支払え」という判断に既判力が生じたら、同じ債権について、正反対の判断が並びます。
既判力は、判決が確定したあとの話です。まだ係属中の段階で、どうして問題になるのでしょうか。確定したあとに食い違いが出てからでは、遅いからです。142条は、判決が出る前の段階で、将来の食い違いを、芽のうちに防ぐ条文です。確定後の蒸し返しを止めるのは、既判力という別の道具で、その関係は、後編で見ます。
3つ目、被告の応訴の負担です。Yは、甲では原告として、乙では被告として、2つの裁判所で、同じ争いに2度、対応することになります。
どの弊害も、人が違ったり、争う中身が違ったりしたら、起きません。ですから、当事者が同じか、審判対象が同じか。この2つが、同じ事件かどうかの物差しになります。審判対象とは、裁判所に判断を求めている中身のことです。審判対象が同じかどうかは、請求の同一性とも呼ばれます。
図:当事者の同一性|甲と乙の原告・被告
まず、当事者の同一性から確かめます。甲の原告はY、被告はX。乙の原告はX、被告はYです。原告と被告の立場は入れ替わっていますが、争っているのは、XとYの同じ2人です。立場が逆でも、別の事件にはなりません。弊害が起きる場面を思い出してください。甲ではYが勝ち、乙ではXが勝つ、という形で、同じ2人の勝ち負けが、2か所で食い違うおそれがあります。立場が入れ替わっても、同じ2人が、同じ紛争を、向きを逆にして争っているだけです。ですから、甲と乙の当事者は、同一です。
第2 審判対象の同一性——乙
図:甲は「ない」、乙は「ある」
ここからが本番です。甲は、壁紙の張り替え費用20万円の債務が存在しないことの確認を求めています。乙は、その同じ20万円を支払えと求めています。請求の形が、確認と給付で違います。形のうえでは訴訟物が違うのに、審判対象は同一と言えるのでしょうか。請求の形だけで事件の同一性を決めてしまうのが、いちばん多い間違いの入口です。規範を確かめます。
図:規範と答案の型|審判対象の同一性
規範は、こうです。審判対象の同一性は訴訟物によって判断しますが、訴訟物が別であっても、2つの訴えが同じ権利関係の存否を審理の中身にしているときは、審判対象は同一です。債務不存在確認の訴えは、給付の訴えの反対の形であり、同一の債権の存否を審判対象とします。これも、通説の整理です。判例の規範ではありませんから、答案では、通説の立場として書きます。
ここでいう権利関係(訴訟物の内容をなす権利関係)とは、訴訟物が、その訴えで指す、権利そのもののことです。甲で言えば、壁紙の張り替えの費用20万円の債権。乙で言えば、それと同じ20万円の債権です。甲は、この債権が「ない」と主張して確認を求め、乙は、この債権が「ある」と主張して給付を求めます。向きが逆なだけで、見ている債権は、1つです。
向きが逆でも同じ、とまで言い切れる決め手は、両方が確定したときの既判力です。前に見たとおり、確定判決には、主文に包含するもの、つまり訴訟物の存否の判断に、判子が押されます。甲が確定すれば、「20万円の債権はない」に、判子が押されます。乙が確定すれば、「20万円の債権はある」に、判子が押されます。同じ1つの債権に、両立しない判子が2つ並ぶわけです。これは、さきほどの2つ目の弊害、そのものです。形ではなく、判子が押される先の権利関係を見ます。この線の、ちょうど外側にあたるのが、あとで見る丙です。
なお、訴訟物が違っていても、請求の基礎、つまり訴えのもとになっている事実関係のまとまりや、主要な争点が共通していれば、同一とみる、より広い考え方もあります。ただ、乙は、その考え方に立っても同一ですから、乙の結論は変わりません。丙については、のちほど確かめます。
図:乙に当てはめ:事実と評価
あてはめます。甲の請求は、壁紙の張り替え費用20万円の債務が存在しないこと。乙の請求は、その同じ20万円の支払です。金額も、原因になった壁紙の件も、同じです。ですから、甲と乙は、確認と給付で向きが逆なだけで、同一の債権の存否を争っています。両方が確定すれば、同じ債権に、「ない」と「ある」の判子が並びます。したがって、審判対象は同一です。
図:乙に当てはめ:結論
当事者も、さきほど見たとおり、XとYの同じ2人で、同一です。そうすると、乙は、係属する甲と同一の事件について、更に起こされた訴えです。3つの弊害も、そのまま起きます。審理は2回、判断は食い違うおそれがあり、Yは2か所に出なければなりません。
図:結論 乙は142条に反し、却下される
結論です。乙は、142条に反して不適法です。裁判所は、乙を却下します。142条に反するかどうかは、職権調査事項です。当事者が主張しなくても、裁判所が自分で調べます。先に係属した甲ではなく、乙のほうが退けられます。先に生きている手続を、そのまま使えば足りますから、後から出された乙を、不適法として退けます。
補足です。確認の訴えが先にあり、給付の訴えがあとから別に出た場面では、あとの給付の訴えを重複とは見ず、先の確認の訴えのほうを、確認の利益の問題として処理する見解も、有力に主張されています。答案では、ここまで確かめてきた、通説の流れで書きます。
第3 審判対象の同一性——丙
図:床の傷の補修費80万円を求める丙
ここで、1つの問いです。丙を見てください。賃貸借は、甲と同じ。退去も、同じ。Xの相手も、同じYです。では、同じ賃貸借、同じ退去から出た床の傷の80万円は、同じ事件でしょうか?生活上の出来事が同じだから事件も同じ、と見るのは、答案で多い誤りです。確かめましょう。規範は、乙のときと同じです。当事者は、XとYの同じ2人ですから、同一です。残るのは、審判対象です。
図:丙に当てはめ:事実と評価
あてはめます。丙の請求は、従業員Wの搬入で付いた、床の傷の補修費80万円です。甲が争っているのは、壁紙の張り替え費用20万円の債権で、床の傷の債権ではありません。別の場所の、別の損傷から生じた、別の債権です。ですから、訴訟物の内容をなす権利関係が違い、審判対象は同一ではありません。
退去のときの写真や立会いの記録が、両方で使われることはあるでしょう。ただ、同じ賃貸借から出た話で、証拠が一部重なる程度では、同一の債権とは言えません。甲と丙は、審理で確かめることが、別です。甲は、壁紙の張り替え費用を払う債務があるかどうか。丙は、床の傷が付いた経緯と、Yが使用者として責任を負うかどうかです。
図:丙に当てはめ:結論
先ほどの、広い考え方に立っても、同一とは言いにくいです。もとになっている事実は、壁紙の張り替えと、荷物の搬入で付いた床の傷で、別の出来事です。主要な争点も別です。決め手は、両方が確定したときに、同じ債権について、両立しない判断が並ぶかどうかです。甲で「壁紙の20万円の債務はない」、丙で「床の傷の80万円を払え」。この2つは、両立します。ですから、3つの弊害は、起きません。
図:結論 丙は適法、乙は却下
結論です。丙は、142条に反しません。適法です。乙は却下、丙は適法。同じ賃貸借から出た訴えでも、審判対象が同一かどうかで、結論が分かれます。背景が同じかどうかではなく、判子が押される先の債権が同じかどうか、で見ます。
第4 却下のあと、Xはどこで20万円を求めるか——反訴
図:乙が却下されても、反訴なら同じ手続に入る
乙が却下されたら、Xは、20万円を請求できなくなるのでしょうか。乙という訴えが退けられるだけで、20万円の債権そのものが消えるわけではありません。142条が止めるのは、別の訴えを更に起こすことでした。Xが、甲の係属しているA地方裁判所の、同じ手続の中で請求するなら、別の道があります。反訴です。
条文民事訴訟法146条1項
民事訴訟法146条(反訴)第1項
被告は、本訴の目的である請求又は防御の方法と関連する請求を目的とする場合に限り、口頭弁論の終結に至るまで、本訴の係属する裁判所に反訴を提起することができる。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。
一 反訴の目的である請求が他の裁判所の専属管轄(当事者が第十一条の規定により合意で定めたものを除く。)に属するとき。
二 反訴の提起により著しく訴訟手続を遅滞させることとなるとき。
146条1項です。被告は、本訴の目的である請求と関連する請求であれば、口頭弁論の終結に至るまで、本訴の係属する裁判所に、反訴を提起できます。ただし、他の裁判所の専属管轄に属するときと、著しく訴訟手続を遅滞させることになるときは、できません。これも、条文を読めば出てくる、成立要件です。
あてはめます。Xは、甲の被告です。Xが求める20万円の支払は、甲の目的である、20万円の債務の不存在と、まったく同じ債権をめぐる請求ですから、本訴の目的である請求と関連します。提起する先は、本訴の係属するA地方裁判所で、口頭弁論の終結に至るまでの間です。専属管轄に属する事情や、手続を著しく遅らせる事情は、事例にありません。したがって、Xは、A地方裁判所に、反訴として20万円の支払を求められます。
反訴でも、同じ20万円を、同じように争います。それでも142条に反しないのは、どうしてでしょうか。反訴は、甲と同じ手続の中に入ります。係属は、1つのままです。3つの弊害を、確かめましょう。1つ目の審理の重複は、同じ裁判所が、同じ証拠調べを一度で済ませられます。2つ目の既判力の抵触は、甲と反訴が、同じ裁判所の1つの手続の中で審理されるので、食い違いを避けやすくなります。3つ目の応訴の負担も、Yは、ひとつの手続にだけ出れば足ります。
142条の趣旨に戻れば、同じ争いが、2つの手続に分かれて生きていることが問題で、1つの手続の中に入れるなら、止める理由がありません。反訴のあとで、裁判所が弁論を分離することは、152条1項のもとで禁じられていませんが、それは裁判所の裁量の問題で、反訴が142条に反しないことは変わりません。なお、反訴が提起されたあとで、Yの確認の訴えの甲がどうなるかは、別の回で扱います。
図:結論 乙は却下。反訴なら適法
結論です。乙は、142条に反して不適法ですから、却下されます。ただし、Xが同じ20万円を求めたいなら、A地方裁判所に、反訴として提起すれば、142条に反しません。
まとめ
図:規範と答案の型|事件の同一性
結論を、規範の図で確かめます。事件の同一性は、当事者の同一性と、審判対象の同一性で判断します。甲と乙は、原告と被告が入れ替わっていても、XとYの同じ2人でした。
図:規範と答案の型|審判対象の同一性
審判対象は、訴訟物の内容をなす権利関係が同一なら、同一です。債務不存在確認の甲と、給付の乙は、同じ債権の存否を争う裏表ですから、乙は却下です。丙は、別の損傷から生じた別の債権ですから、適法です。そして、Xが20万円を求めるなら、反訴の道があります。
図:完成答案:第1 後訴乙(問題の所在・規範)
こちらが、完成答案です。答案の第1の、問題の所在と規範から見ていきます。答案の文面を、本文でも置きます。
第1 後訴乙
1 問題の所在
Yが提起した壁紙の張り替え費用20万円の債務不存在確認の訴え甲の係属中に、Xは、B地方裁判所に、同じ20万円の支払を求める訴え乙を提起した。乙は、142条に反しないか。142条にいう『事件』の同一性の基準は条文に定められていないため、問題となる。
2 規範
142条は、審判の重複による不経済、既判力の抵触の可能性、被告の応訴の負担を防ぐ趣旨である。そこで、『事件』の同一性は、当事者の同一性と審判対象の同一性により判断する。審判対象の同一性は訴訟物によって判断するが、訴訟物が別であっても、2つの訴えが同じ権利関係の存否を審理の中身にしているときは、審判対象は同一である。債務不存在確認の訴えは、給付の訴えの反対の形であり、同一の債権の存否を審判対象とする。
図:完成答案:第1 後訴乙(あてはめ・結論)
答案の第1の続きで、あてはめと結論です。結論の一文まで、目で追ってください。
3 あてはめ
(1)当事者=甲の原告はY・被告はX、乙の原告はX・被告Yであり、原告と被告の立場は入れ替わっているが、争っているのはXとYの同じ2人である。したがって、当事者は同一である。
(2)審判対象=甲は壁紙の張り替え費用20万円の債務が存在しないことの確認、乙は同じ20万円の支払を求めるものであり、訴訟物の形は異なる。しかし、甲はその債権の不存在を、乙はその存在を求めるものであり、同一の債権の存否を審判対象とする。したがって、審判対象は同一である。
4 結論
よって、乙は142条に反し不適法であり、却下される。もっとも、Xが同じ20万円を、甲の係属するA地方裁判所に反訴(146条1項)として提起すれば、同一の手続で審理されるから、142条に反しない。
図:完成答案:第2 後訴丙(問題の所在・規範・当事者)
答案の第2の、丙の答案です。問題の所在と規範、当事者のあてはめを確かめてください。
第2 後訴丙
1 問題の所在
Xは、甲の係属中に、床の傷の補修費80万円の支払を求める訴え丙を提起した。丙は、142条に反しないか。
2 規範
第1の2で述べたとおり、『事件』の同一性は、当事者の同一性と審判対象の同一性により判断し、審判対象は、訴訟物の内容をなす権利関係が同一であれば同一である。
3 あてはめ(当事者)
丙の当事者はXとYであり、甲の当事者と同一である。
図:完成答案:第2 後訴丙(審判対象・結論)
答案の第2の続きで、審判対象のあてはめと結論です。最後の一文まで、目で追ってください。
3 あてはめ(審判対象)
丙は、従業員Wの搬入で付いた床の傷の補修費80万円の債権を求めるものであり、甲が争う壁紙の張り替え費用20万円の債権とは、別の損傷から生じた別の債権である。賃貸借と退去が共通し、証拠の一部が重なるとしても、同一の債権の存否を審判対象とするものではない。もとになる事実も主要な争点も別であり、両立しない判断が並ぶおそれもない。したがって、審判対象は同一でない。
4 結論
よって、丙は142条に反せず、適法である。
参照条文
- 民事訴訟法142条
- 民事訴訟法146条1項