両負けの回避の書き方(後編)
ビルの外壁タイルの落下で負傷したXが、ビルを一棟借りて管理するY社だけを訴えた後、答弁書で所有者Zの存在を知った事例を素材に、係属中の訴訟にZを被告として申立てだけで足せるか(訴えの主観的追加的併合)、足せないなら別訴を起こして弁論の併合を促せるか、併合された後に41条の同時審判の申出ができるかを、答案の順に確かめます。
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ゼロから民事訴訟法 論文/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
事例
図:原告X・被告Y社・所有者Zと請求の向き
前編と同じ、ビルの外壁タイルの事故の話です。前編は、被害者が、最初から2人を被告にして訴える話でした。後編は、1人だけを訴えたあとで、もう1人の存在が分かって、話が動き出します。登場するのは3人です。タイルに当たった被害者の、原告のX。ビルを一棟まるごと借りて管理している、被告のY社。そして、そのビルの所有者の、Zです。上の図には、XからY社への260万円の請求が、実線で描いてあります。XからZへの請求は、まだ訴えていないので、点線です。時間の順に見ていきます。
図:時系列(1):賃貸から事故まで
令和2年4月1日に、Zは、自分が所有する青葉ビルという雑居ビルを、Y社に一棟まるごと貸しました。地上4階建てで、Y社は1階で飲食店を営み、2階から4階は、貸事務所として転貸しています。外壁などの共用部分の維持管理は、Y社が行う、という約定です。令和6年10月21日に、Y社の従業員が、地上から外壁を、目視で確認して、異常なし、と点検記録に書きました。専門の業者がたたいて調べる、打診調査は、していません。令和6年11月12日に、商店街の歩道を歩いていたXの右肩に、青葉ビルの3階の外壁から剥がれ落ちたタイルが当たり、Xは右の鎖骨を骨折しました。損害は、治療費62万円と、休業損害108万円と、慰謝料が90万円で、合わせて260万円です。休業損害は、月収36万円の、3か月分です。
図:時系列(2):相談から答弁書まで
令和6年12月9日に、Xは弁護士に相談しました。希望は、Y社とZのどちらかからは、必ず260万円を回収したい、ということです。令和7年3月10日に、Xは、Y社だけを被告にして、260万円の支払を求めて訴えました。ビルの所有者は、調べていませんでした。管轄は、問題になりません。令和7年4月14日に、Y社の答弁書が出ました。当社は、賃借人にすぎず、所有者はZだ。当社は点検をしており、必要な注意をした、という内容です。Xは、これで初めてZの存在を知り、登記で、Zが所有者であることを確かめました。
図:事実の整理:ア・イ・ウ
事実を、記号で整理します。事実アは、Y社が占有者で、ビルを一棟借りて、外壁の維持管理を約定で負っていること。事実イは、Zが所有者であること。事実ウは、外壁の保存に瑕疵があり、損害が260万円で、瑕疵と損害の因果関係と合わせて、争いがないことです。
図:事実の整理:エ・オ・カ
事実エは、争点が1つで、Y社が、損害の発生を防止するのに必要な注意をしたか、であることです。Y社は、目視の点検だけで、打診調査はしていません。Xには、裁判所が、Y社は必要な注意をした、と認定するか、していなかった、と認定するか、予想できません。事実オは、Y社とZのどちらかからは、必ず260万円を回収したい、というXの希望です。事実カは、Xが、いまはY社だけを訴えていて、Zは被告ではない、ということです。
図:前編の結論
前編の結論を、ここで受けます。Y社への請求とZへの請求は、法律上併存しえない関係にあります。ですから、2人が共同被告になれば、同時審判の申出ができて、弁論と裁判は、分離されません。ただし、Xは、いまY社だけを訴えています。前編で読んだ民法717条1項では、Y社が必要な注意をしたら、Y社は免責されて、所有者のZが負います。このまま、別々の訴訟になると、どうなるか。Y社の訴訟では、Y社は必要な注意をした、と認定されて、Y社は免責され、Y社への請求が棄却される。Zへの別の訴えでは、逆に、Y社は必要な注意をしていなかった、と認定される。所有者のZが負うのは、Y社が必要な注意をしたときですから、Zへの請求も棄却される。Xは、Y社にもZにも負けます。これが、両負けです。
図:この事例で問うこと
この事例で問うのは、2つです。1つめは、Xは、いま係属しているY社への訴訟に、Zを被告として足せるか。2つめは、足せないなら、どうすれば両負けを避けられるか、です。
条文と検討の順番
図:検討の順番
検討の順番は3つです。1つめは、Zを今の訴訟に被告として足せるか。2つめは、足せないなら、別訴を起こして、弁論の併合を求められるか。3つめは、併合されたあとで、41条の申出ができるか、です。この順番にする理由は、足す形が許されるかどうかで、代わりの道が要るかが決まるからです。そして41条は、共同被告になっていることが前提ですから、併合の話のあとに置きます。開く条文は、2つです。弁論の併合を定めた152条1項と、前編で読んだ、同時審判の申出の41条です。どちらも、条文を音読すれば出てくる内容なので、成立要件です。条文番号を添えて書けば足ります。条文に書いていないのは、足す形が許されるか、という点です。ここは、規範で立てます。ここで立てる規範は、1つです。
第1 主観的追加的併合
図:第1の確認:Zを申立てだけで足せるか
第1です。Y社への訴訟の係属中に、Zを被告として足したいとき、Xは、申立てだけで足せるのでしょうか。同じ事故の話で、足すだけなのだから、足せる気がします。けれども、申立てだけでは、足せません。判例は、足す効果を認めていません。足したい、という気持ちは自然ですが、足す仕組みが、条文に書かれていないのです。問題の所在です。Xは、係属中の訴訟に、あとからZを被告として追加できるか。これを、訴えの主観的追加的併合といいます。明文がありません。許されるかが、問題です。その前に、条文のある追加の道が、この事例では使えないことを、一言ずつ確かめます。参加承継と引受承継、それに共同訴訟参加です。
図:明文のある追加との区別
参加承継と引受承継は、訴訟の係属中に、訴訟の目的になっている権利や義務を引き継いだ者を、訴訟に入れる制度です。Zは、Y社から何かを引き継いだのではなく、所有者という別の立場にいます。ですから、参加承継も引受承継も、使えません。共同訴訟参加は、合一にのみ確定すべき場合に、第三者が入る制度です。けれども、41条の関係、つまり、Y社への請求とZへの請求のように法律上併存しえない関係は、通常共同訴訟です。共同訴訟人独立の原則が生きていて、Y社への判決とZへの判決を、そろえなければならない関係ではありません。ですから、合一にのみ確定すべき場合にあたらず、共同訴訟参加も使えません。
図:規範と答案の型|主観的追加的併合
規範は、同時審判の申出を扱った解説の回でも見た、最高裁の判決で立てます。以下、いまの訴訟を旧訴訟、あとから起こす別の訴えを、新訴と呼びます。原告が、係属中の訴訟に、別の者を被告とする請求を追加して、一個の判決を得ようとするときは、別訴を提起したうえで、口頭弁論の併合を裁判所に促し、併合につき裁判所の判断を受けるべきである。そして、共同訴訟の要件を満たす場合でも、新訴が当然に旧訴訟に併合されるとの効果を認めることはできない。これが規範です。言い換えます。足したいなら、まず別の訴えを起こして、2つの訴訟をまとめてほしい、と裁判所に促し、まとめるかどうかは、裁判所に判断してもらいなさい、ということです。新しい訴えは、起こしただけで、自動的に元の訴訟に入るわけではありません。判決の言葉で確かめます。
判例最判昭和62・7・17 民集41巻5号1402頁
最高裁判所判決(原告が、係属中の訴訟に、別の者を被告とする請求を追加した事件)
甲が、乙を被告として提起した訴訟(以下「旧訴訟」という。)の係属後に丙を被告とする請求を旧訴訟に追加して一個の判決を得ようとする場合は、甲は、丙に対する別訴(以下「新訴」という。)を提起したうえで、法一三二条の規定による口頭弁論の併合を裁判所に促し、併合につき裁判所の判断を受けるべきであり、仮に新旧両訴訟の目的たる権利又は義務につき法五九条所定の共同訴訟の要件が具備する場合であっても、新訴が法一三二条の適用をまたずに当然に旧訴訟に併合されるとの効果を認めることはできないというべきである。けだし、かかる併合を認める明文の規定がないのみでなく、これを認めた場合でも、新訴につき旧訴訟の訴訟状態を当然に利用することができるかどうかについては問題があり、必ずしも訴訟経済に適うものでもなく、かえって訴訟を複雑化させるという弊害も予想され、また、軽率な提訴ないし濫訴が増えるおそれもあり、新訴の提起の時期いかんによっては訴訟の遅延を招きやすいことなどを勘案すれば、所論のいう追加的併合を認めるのは相当ではないからである。
この判決の事件は、Xの設例とは別の事件です。その事件では、原告が、すでに係属している訴訟に、別の者を被告とする請求を追加しました。原告は、追加した分は併合されたものとして、新しい訴えの手数料を納めませんでした。その訴えは、却下されました。当然には併合されないなら、新しい訴えとして、手数料が要るからです。上に引いた判決文に出てくる条文番号は、読み替えが要ります。判決文の中の、法132条は、いまの152条で、法59条は、いまの38条です。答案には、いまの条文番号を書きます。
判決が述べた理由は、4つです。1つめは、併合を認める明文が、ないこと。2つめは、新訴で、旧訴訟の訴訟状態、つまり、すでに出た主張や証拠を、当然に使えるかが問題で、訴訟経済に適わず、訴訟を複雑にすること。3つめは、軽率な提訴や、濫訴が増えるおそれ。4つめは、新訴の時期によっては、訴訟の遅れを招きやすいことです。2つめの理由を、たとえで考えます。走り出した会議で、議事録に、これまでの発言と資料が積み上がっています。途中から来た人が、自分で席に座って、議事録の内容は自分にも有効だ、と言い出したら、議長が止めるでしょう。入れるかどうかは、議長が決めます。席がほしいなら、まず議長に申し込む。議長が、裁判所です。3つめと4つめの理由も、同じです。誰でも手軽に足せるなら、ついでに足しておこう、という軽率な提訴が増えます。判決の直前に足されれば、新しい被告のために、審理をやり直すことになって、訴訟が遅れます。
ここで、別訴を起こして、併合してもらうなら、結局は足したのと同じではないか、という疑問が出ます。原告の申立てだけで足す形と、別訴を起こして併合してもらう形の違いは、併合するかどうかを、誰が決めるかです。判決が認めないのは、新訴が、起こしただけで当然に旧訴訟に入る効果です。別訴を起こして、裁判所が併合を命じれば、2人は共同被告になります。境目も確認します。最初から、Y社とZを共同被告にして訴えれば、はじめから共同訴訟でした。問題なのは、Y社だけで始まった訴訟に、あとから足す形だけです。
図:判決の理由と答案の論証
上の図は、左が判決の述べた理由で、右が答案の論証です。ここに、答案の注意があります。この判決は、Zのように、法律上併存しえない関係にある被告を追加する場合を、判断していません。判決の事案は、平成8年の改正で41条ができる前のものです。学説には、追加を認める見解もあります。けれども、判決の理由は、41条の関係にあっても、そのまま当てはまります。明文がないことは、変わりません。訴訟状態を当然に使えるかの問題も、軽率な提訴のおそれも、遅れのおそれも、Y社とZが併存しえない関係だからといって、なくなりません。決め手は、旧訴訟の訴訟状態を当然に使えるかが分からないまま、足す形を許すと、訴訟が複雑になって、遅れやすいことです。ですから、答案は、判例に従って、追加は当然には認められない、と書きます。判決の理由が41条の関係にあっても当てはまる、というここまでの部分は、答案の論証で、判決が述べたことではありません。
図:あてはめ:主観的追加的併合
あてはめます。使うのは、事実カ(Xが、いまはY社だけを訴えていて、Zは被告ではないこと)と、事実エ(争点が1つで、Y社が必要な注意をしたか、であること)です。Xは、令和7年3月10日に、Y社だけを訴えました。Zの存在は、令和7年4月14日の答弁書で知りました。Zを今の訴訟に足す申立てをしても、新しい請求は、当然には併合されません。足すなら、Zに対する別の訴えを、起こさなければなりません。新しい訴えですから、手数料も、新たに納めます。結論です。主観的追加的併合は、当然には認められません。Xは、Zに対する別訴を起こして、併合を促します。
第2 別訴と弁論の併合、併合後の41条
図:第2の確認:前編の結論の理由
第2に入る前に、前編の確認です。前編で見たとおり、Y社への請求とZへの請求は、法律上併存しえない関係といえました。その理由は、何だったでしょうか。必要な注意をしたという同じ事実が、Y社への請求では抗弁になり、Zへの請求では請求原因になるからです。どう認定されても、Xは、どちらかには勝てます。Y社が必要な注意をしたかという1つの事実で、Y社が負うか、Zが負うかが、入れ替わります。この結論を、そのまま使います。
問題の所在です。第1で、Zを足すには、別訴を起こして併合を促す、と決まりました。では、併合されたら何ができ、併合されなかったら何が残るのか。令和7年5月19日に、Xは、Zに対する別訴を、Y社の訴訟が係属している裁判所に提起しました。管轄は問題になりません。併合の条文を開きます。
条文民事訴訟法152条1項
民事訴訟法152条1項(口頭弁論の併合等)
裁判所は、口頭弁論の制限、分離若しくは併合を命じ、又はその命令を取り消すことができる。
併合を命じるのは、裁判所です。Xは、併合を促せますが、命じさせることはできません。弁論の併合とは、2つの訴訟を、まとめて1つの手続にすることです。
図:併合された場合と、されない場合
まず、併合された場合です。令和7年6月16日に、裁判所が弁論を併合した、と仮定します。併合されない場合は、このあとで別に見ます。併合によって、Y社とZは、共同被告になりました。前編で読んだ41条を、もう一度開きます。
条文民事訴訟法41条
民事訴訟法41条(同時審判の申出がある共同訴訟)
共同被告の一方に対する訴訟の目的である権利と共同被告の他方に対する訴訟の目的である権利とが法律上併存し得ない関係にある場合において、原告の申出があったときは、弁論及び裁判は、分離しないでしなければならない。
2 前項の申出は、控訴審の口頭弁論の終結の時までにしなければならない。
3 第一項の場合において、各共同被告に係る控訴事件が同一の控訴裁判所に各別に係属するときは、弁論及び裁判は、併合してしなければならない。
要件は、3つです。1つめは、共同被告であること。併合で、Y社とZは、共同被告になりました。2つめは、一方への権利と、他方への権利が、法律上併存しえない関係であること。これは、前編の結論のとおりです。3つめは、控訴審の口頭弁論の終結の時までに、原告が申し出ることです。第一審の途中ですから、間に合います。ですから、Xは、41条の申出ができます。申出をすれば、弁論と裁判は、分離しないでしなければなりません。同じ裁判所が、同じ証拠で、1回で認定します。Y社は必要な注意をしたと言い、Zは、Y社は必要な注意をしていないと言って、2人の言い分が食い違っても、構いません。注意をしたと認定されれば、Y社への請求は棄却されて、Zへの請求が認められます。していないと認定されれば、Y社への請求が認められます。どちらでも、Xは、どちらかには勝てます。控訴審でも、各共同被告に係る控訴事件が、同じ控訴裁判所に別々に係属するときは、併合してしなければなりません。ただし、共同訴訟人独立の原則は生きています。前編で見たとおり、控訴も確定も、請求ごとに別々です。一方の請求だけが控訴されても、その控訴には41条の効果が及びません。ですから、Xは、Y社への請求とZへの請求のうち、負けたほうの請求も、控訴しておきます。
では、Xが申出をしないで、併合されただけだと、どうなるか。あとで分離されることもあります。併合されても、通常共同訴訟ですから、裁判所は、152条1項で、あとから弁論を分離できます。申出があって初めて、分離が禁じられます。ですから、併合されたら、Xは、すぐに申出をします。
次に、併合されなかった場合です。裁判所が、併合を命じなければ、Y社とZは、共同被告になりません。別々の訴訟の被告のままです。41条は、共同被告になっていることを前提に、分離を禁じる規定です。別々の事件を、併合させる規定ではありません。ですから、41条の申出は、できません。この場合、Y社の訴訟だけが先に進んで、両負けの危険が残ります。Xが、まずできるのは、併合を促し続けることです。
図:あてはめ:併合後の41条
あてはめます。併合された場合は、Y社とZが共同被告で、前編の結論どおり法律上併存しえない関係にあり、第一審の途中で申出の時期にも間に合うので、三つの要件を満たし、申出ができます。併合されない場合は、共同被告にならないので、申出はできません。結論です。Xは、Zに対する別訴を提起して、弁論の併合を促します。併合されたら、41条の申出をします。併合されなければ、41条の申出はできません。
まとめ
図:完成答案:第1 主観的追加的併合(問題の所在・規範・射程)
こちらが、完成答案です。第1の、主観的追加的併合です。図と同じ文面を、本文でも置きます。
第1 主観的追加的併合
1 問題の所在
Xは、係属中のY社に対する訴訟に、Zを被告として追加できるか。明文がなく、訴えの主観的追加的併合が許されるかが問題となる。
2 規範
原告が、係属中の訴訟に別の者を被告とする請求を追加して一個の判決を得ようとするときは、別訴を提起したうえで、口頭弁論の併合を裁判所に促し、併合につき裁判所の判断を受けるべきであり、共同訴訟の要件を満たす場合でも、新訴が当然に旧訴訟に併合されるとの効果を認めることはできない(最判昭和62・7・17)。併合を認める明文がないこと、訴訟状態の利用に問題があり訴訟を複雑化させること、濫訴のおそれ、訴訟の遅延を招きやすいことを理由とする。
3 射程
この判決は、41条の関係にある被告の追加を判断していない。しかし、その理由は、Y社とZが法律上併存しえない関係にあっても当てはまる。よって、41条の関係にあっても、追加は当然には認められない。
図:完成答案:第1 主観的追加的併合(あてはめ・結論)
第1の、あてはめと結論です。事実の拾い方を、目で追ってください。
4 あてはめ
Xは、Y社だけを被告として訴え、Zの存在は答弁書で初めて知った。Zを今の訴訟に足す申立てをしても、新しい請求は当然には併合されない。
5 結論
よって、Xは、Zに対する別訴を提起し、弁論の併合を促すべきである。
図:完成答案:第2 別訴と弁論の併合
第2の、別訴と弁論の併合です。併合された場合と、されない場合の書き分けを、確かめてください。
第2 別訴と弁論の併合
1 問題の所在
Xが別訴を提起したとき、両負けを避けられるかが問題となる。
2 併合された場合
弁論の併合は、裁判所が命じる(民事訴訟法152条1項)。併合されれば、Y社とZは共同被告となる。Y社への請求とZへの請求は、必要な注意をしたという同じ事実が、一方では抗弁、他方では請求原因になるから、法律上併存しえない関係にある。Xは、控訴審の口頭弁論の終結の時までに申出ができ(同法41条1項・2項)、申出をすれば、弁論と裁判は分離しないでしなければならない。
3 併合されない場合
Y社とZは共同被告とならず、41条の申出はできない。Y社の訴訟だけが進み、両負けの危険が残る。Xは、併合を促し続ける。
4 結論
よって、Xは、Zに対する別訴を提起し、併合されたときは41条の申出をする。
参照条文
- 民事訴訟法152条1項
- 民事訴訟法41条