債権者代位訴訟の書き方(後編)
スタジオの貸主Xが、借主Yに代位して、Yの取引先Zに報酬320万円の支払を求めた訴訟で、Xが敗訴して判決が確定した場面を素材に、その判決の効力が、訴訟に参加しなかったYに及ぶか、Yの別の債権者Wは訴訟にどの形で入れたか、確定判決の効力はWにも及ぶかを、答案の順に確かめます。
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ゼロから民事訴訟法 論文/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
事例
図:債権者X・債務者Y・第三債務者Z・別の債権者Wと債権の向き
前編と同じ、スタジオの賃料と映像制作の報酬の話ですが、筋は前編とは別です。登場するのは4人です。撮影スタジオを貸している個人の債権者のX。フリーで映像を作っている債務者のY。飲料メーカーの第三債務者のZ。そして、撮影機材のレンタル会社で、Yの別の債権者のWです。4人の間には、債権が3本と、債権者のXが債務者のYの権利を自分の名で行使する、代位しての請求が1本あります。XがYに対して持つと主張する、賃料180万円の債権。YがZに対して持つ、報酬320万円の債権。WがYに対して持つ、レンタル料90万円の債権。そして、XがYに代位してZにする請求です。時間の順に見ていきます。
図:時系列(1):提訴と告知まで
令和6年4月1日に、XはYに、撮影スタジオを貸しました。賃料は月額15万円で、毎月末日払いです。令和6年4月分から令和7年3月分までの12か月分、合わせて180万円が支払われていない、というのがXの主張です。債権者のXが、債務者のYに持つこの賃料債権が、被保全債権です。
令和7年2月3日に、YはZと、映像制作の請負契約を結びました。報酬は320万円で、支払期限は令和7年8月29日です。Yは、令和7年7月18日に納品しましたが、Zは払っていません。債務者のYが、第三債務者のZに持つこの報酬債権が、被代位権利です。Yには、ほかに見るべき財産がなく、ほかにも500万円の借金があって、報酬債権の320万円を入れても、債務を払いきれません。
WはYに、撮影機材を貸していました。レンタル料は90万円で、支払の期限である弁済期は、令和7年10月31日でしたが、これも未払いのままです。
令和8年1月13日に、Xは、民法423条1項によってYに代位して、Zを被告に、報酬320万円の支払を求めて訴えました。金銭の支払を求める訴えなので、民法423条の3により、自分への支払を求められます。Xは、Xへの支払を求めました。この訴えを、訴訟1とします。
令和8年1月16日に、XはYに、訴訟告知をしました。訴訟告知とは、訴訟が起きていることを、債務者に知らせる手続です。Yは同じ日に受け取りましたが、仕事で海外に出ていたため、訴訟1には参加しませんでした。
図:時系列(2):審理から後訴まで
令和8年2月10日に、Wは、訴訟1が起きていることを知りました。Xが報酬の弁済を独占するのを防ぎたい、と考えましたが、参加しないまま、審理は進みました。Wは、Yの賃料債務も、Yの報酬債権の存在も、争うつもりはありません。
訴訟1の審理です。Zは、納品物は契約の内容に適合しておらず、Yは報酬を請求できない、と主張しました。Xは弁護士をつけない本人訴訟で、映像制作の内容に詳しくなく、反証をほとんど出しませんでした。Yは、納品物が契約に適合していることを示す資料を持っていましたが、訴訟1には出ていません。
令和8年6月16日に、判決が言い渡されました。請求棄却です。報酬債権は存在しない、という判断でした。電子判決書は、6月18日に両当事者へ送達され、控訴期間の2週間は、令和8年7月2日に満了し、判決は確定しました。
令和8年9月2日に、Yは、Zに報酬320万円の支払を求めて訴えました。これを後訴①とします。そして令和8年9月24日に、Wは、判決が確定していることを初めて知りました。Wは、Yに代位して、Zに報酬320万円の支払を求める訴えを考えています。これを後訴②とします。
図:事実の整理:ア・イ・ク・ケ
記号で整理します。事実アは、Xが、賃料180万円を被保全債権として、報酬320万円を代位行使し、Xへの支払を求めたことです。事実イは、Xが、遅滞なくYに訴訟告知をしたことです。事実クは、Yが告知を受けたのに参加せず、Xが反証をほとんど出さないまま敗訴して、判決が確定したことです。事実ケは、Yが、納品物が契約に適合していることを示す資料を持っていたことです。
図:事実の整理:コ・サ・シ・ス
事実コは、後訴①、つまりYがZに、報酬320万円の支払を求めて訴えたことです。事実サは、WがYに対するレンタル料債権90万円を持ち、Yは無資力、つまり債務を払いきれず、Wも代位できることです。事実シは、Wが、訴訟1の係属中に参加を考えたことで、WはYの賃料債務も、報酬債権の存在も争いません。事実スは、後訴②、つまりWが、Yに代位して、Zに報酬320万円の支払を求める訴えを考えていることです。
図:この事例で問うこと
問うのは、3つです。1つめは、訴訟1の確定判決、つまり請求棄却の効力は、Yに及ぶか。2つめは、訴訟1の係属中に、Wは、どの形で入れたか。3つめは、訴訟1の確定判決の効力は、Wに及ぶか、です。
条文と検討の順番
図:検討の順番
検討の順番は4つです。1つめは、判決の効力が、利害の対立しうる債権者の訴訟でも、債務者のYに及ぶか。2つめは、債権者が敗訴した判決でも、及ぶか。3つめは、Wが、どの形で参加できたか。4つめは、判決の効力が、Wにも及ぶか。このうち、1つめと2つめを第1に、3つめと4つめを第2にまとめます。
この順番にする理由は、Wが入れる形が、訴訟1の判決の効力がどこまで及ぶかに左右されるからです。共同訴訟参加は、当事者の一方と同じ側に立って、同じ方向で争う参加で、判決の効力が及ぶ関係を前提にします。そこで、先にYへ及ぶかを確かめて、そこからWへ進みます。
検討に入る前に開く条文は2つです。共同訴訟参加の民事訴訟法52条1項は、第2で開きます。まず、確定判決の効力が及ぶ者を定めた、民事訴訟法115条1項です。
条文民事訴訟法115条1項
民事訴訟法115条(確定判決等の効力が及ぶ者の範囲)第1項
確定判決は、次に掲げる者に対してその効力を有する。
一 当事者
二 当事者が他人のために原告又は被告となった場合のその他人
三 前二号に掲げる者の口頭弁論終結後の承継人
四 前三号に掲げる者のために請求の目的物を所持する者
2号は、当事者が他人のために原告又は被告となった場合の、その他人です。債権者代位訴訟では、債権者のXが、債務者のYの権利を、自分の名で行使しています。答案では、これを、XがYのために原告となった場合にあたる、と整理し、判決の効力は、その他人のYに及ぶ、と書きます。ここまでは、条文の文言から出てくる、成立要件です。
2つめは、債権者に訴訟告知を義務づける、民法423条の6です。
条文民法423条の6
民法423条の6(被代位権利の行使に係る訴えを提起した場合の訴訟告知)
債権者は、被代位権利の行使に係る訴えを提起したときは、遅滞なく、債務者に対し、訴訟告知をしなければならない。
債権者は、代位の訴えを起こしたら、遅滞なく債務者に訴訟告知をしなければなりません。なお、訴訟告知には、告知を受けた人に参加的効力を生じさせる仕組みもありますが、それは補助参加の効力で、ここまで確定判決の効力と呼んできたものとは別のものです。ここで書くのは、確定判決の効力のほうです。
2号に、判決の効力はYに及ぶと書いてあるなら、規範で立てることは、残っていないようにも見えます。しかし、2号があっても、規範で立てることは残っています。2号が定めるのは、当事者が他人のために原告又は被告となった場合に、確定判決の効力がその他人に及ぶ、というところまでです。債権者と債務者の利害が対立しうるときも及ぶのか、債権者が負けた判決でも及ぶのかは、書かれていません。条文に書かれていない部分を、規範で立てます。
第1 判決効の債務者への拡張
図:第1の確認:負けた判決をYは受け入れるか
Xは、自分の賃料を回収したくて訴えました。Yの報酬を守るためではありません。それでも、Xが負けた判決を、Yは、受け入れなければならないのでしょうか?Yは、訴訟1で何も言っていません。それなのに、Xが反証もろくに出さずに負けた結果を押しつけられるのは、納得できない、と感じるかもしれません。その感覚が、この論点の中心です。
手続保障とは、自分に関わる判断が出るときに、言い分を述べて争う機会が与えられることです。本来、判決の効力は、争う機会を与えられた当事者に及ぶものです。ところが2号は、訴訟担当者が受けた判決の効力を、本来の権利者に及ぼします。この事例では、Yのために原告となったXが訴訟担当者で、Yが本来の権利者です。本人の言い分は、担当者が代わりに述べるはずだ、と考えるからです。ただ、代位訴訟の担当者のXは、自分の債権の回収が関心で、Yの利益を守りきるとは限りません。XとYの利害が対立しうる、ということです。債権者代位訴訟が難しい場面とされるのは、この緊張があるからです。
問題提起です。XとYの利害が対立しうる債権者代位訴訟でも、確定判決の効力は、115条1項2号によって、債務者のYに及ぶのでしょうか。Xが敗訴した判決でも、同じでしょうか。
図:規範と答案の型|判決効の債務者への拡張
答案では、この規範を、判例の定式としてではなく、学説の多数の考え方として書きます。規範の文面は、こうです。115条1項2号の趣旨は、訴訟担当者が本人の言い分を代わりに述べることを期待できる点にある。債権者は債務者に遅滞なく訴訟告知をしなければならず、債務者は参加して争う機会を得る。そのため、債権者と債務者の利害が対立する可能性があっても、判決の効力は債務者に及ぶ。債権者が敗訴した判決でも、同じである。
この規範の決め手は、3つあります。1つめは、2号の根拠と、告知の働きです。Yは訴訟1の当事者ではないのに、判決の効力を受けます。それは、担当者のXの訴訟追行によって、Yの言い分を述べる機会が、代わりに確保されている、と見るからです。ただ、Xは自分の債権の回収が関心なので、この代わりの働きが十分でない恐れがあります。その恐れを埋めるのが、民法423条の6の訴訟告知です。
2つめは、参加の機会です。Xが十分に争わないかもしれない、という心配は、告知を受けたYが、自分で参加すれば防げます。参加すれば、Yは当事者として、納品物が契約に適合していることを示す資料を、自分で出せます。たとえば、町内会が、道路の使い方を決める総会を開いて、議題を前もって住民に配ったとします。出席して反対できたのに欠席した人は、決議を後から争いにくいでしょう。機会があったかどうかが重い意味を持つ、という感覚は、これと同じです。
3つめは、第三債務者のZの立場です。もし、債権者が負けた判決が債務者に及ばないとすると、ZはXに勝っても、Yから、同じ報酬債権で、もう一度請求されます。同じ債権について、二度、応訴しなければなりません。債権者が勝ったときだけ債務者に及ぶ、という片側だけの扱いは、Zにこの二重の応訴を強いるので、取りません。だから、勝訴と敗訴を区別しないのです。
では、Xが十分に争わなかったことは、結論に関係しないのでしょうか。答案では、Xの追行の出来は問いません。見るのは、告知がされて、Yに参加の機会があったかどうかです。Xの追行の出来を、判決の効力が及ぶ条件にすると、確定したあとで毎回、Xの追行が十分だったかが争われて、判決が確定した意味が薄れてしまいます。
改正との関係も整理します。学説の多数は、訴訟告知によって参加の機会を与えていたことを、判決の効力を債務者に及ぼす要件とします。平成29年の改正で、その告知が、債権者の義務として、民法423条の6に書かれました。この規範は、同じ考え方を、改正後の条文に沿って書いたものです。設例では告知がされているので、手続保障の面から、効力を及ぼすことが正当化されます。
境目も確認します。Xが告知をしておらず、Yが訴訟1のことを知らないまま判決が確定したとします。このときは、Yに参加の機会がなく、手続保障の前提が欠けるので、学説の多数の考え方では、判決の効力をYに及ぼせません。そのとき訴えそのものをどう扱うかは、条文に書かれておらず、議論があります。設例では告知がされているので、ここには立ち入りません。
図:利害対立と手続保障の比較
整理します。Xの告知義務と、告知を受けたYの参加の機会。この2つがそろって、手続保障が充たされる、と考えます。
図:あてはめ:判決効の債務者への拡張
あてはめます。まず、事実クのうち、Yが告知を受けたのに参加しなかった部分です。事実イのとおり、XはYに、令和8年1月16日に遅滞なく告知をしました。Yには、参加して争う機会がありましたが、参加していません。ですから、手続保障は充たされます。
次に、事実クのうち、Xが反証をほとんど出さないまま敗訴した部分と、事実ケです。Xは、反証をほとんど出さずに敗訴しました。Xは自分の債権の回収が関心なので、利害が対立しうる場面です。ただ、Yは、納品物が契約に適合していることを示す資料を持っていて、参加すれば、それを出せました。参加の機会を使わなかった結果は、Yが引き受けます。
最後に、事実コです。令和8年9月2日に、Yは、Zに報酬320万円を求めて訴えました。前訴、つまり訴訟1の判断は、報酬債権は存在しない、というものです。その効力は、Yに及んでいます。ですから、Yは、報酬債権が存在すると主張できず、後訴①は、請求棄却になります。
結論です。訴訟1の確定判決の効力は、債務者のYに及びます。Yは、後訴①で、報酬債権が存在すると主張できません。Xが敗訴した判決であっても、同じです。
第2 他の債権者Wの関与
図:第2の確認:債務者が争うときの参加の形
第2に入る前に、前編で見たことを確かめます。債務者が被保全債権を争うとき、債務者が入る参加の形は、権利主張参加です。債権者の請求と債務者の請求が、論理的に両立しない関係になるからです。権利主張参加では、債務者は、債権者も相手方にする請求を立てて、三面の争いとして入ります。債務者が争わず、債権者と同じ側に並ぶなら、共同訴訟参加です。権利主張参加と共同訴訟参加という、この2つの物差しを、同じ訴訟1に入ろうとするWに当てます。
図:他の債権者Wの整理
問題提起です。訴訟1の係属中に、Wが入って、Xが報酬の弁済を独占するのを防ぎたいとき、Wは、どの形で入れるでしょうか。
最初に、Wにも代位できることを確かめます。WはYに対するレンタル料債権90万円を持ち、弁済期はすでに来ています。Yは、報酬債権を入れても債務を払いきれない、無資力です。ですから、Wも、民法423条1項によって、Yの報酬債権を代位行使できます。Xが先に代位して訴えたからといって、Wが、自分の債権で代位できなくなるわけではありません。
まず、権利主張参加からです。権利主張参加ができるのは、本訴の請求と参加人の請求とが論理的に両立しないとき、つまり一方が認められれば他方は認められないときです。Wは、Yの賃料債務の存在も、Yの報酬債権の存在も、争いません。Wが立てたいのは、Zに対する報酬の請求だけです。Xの請求が認められても、Wの請求が認められなくなる、という関係にはありません。両立しうるので、権利主張参加はできません。
境目も見ておきます。債務者のYが、賃料は弁済した、と被保全債権を争うなら、Xの請求はその前提を失う関係になり、Xの請求と、報酬を自分に払わせるYの請求は両立しません。Wは争わないので、そこが違います。
次に、共同訴訟参加です。民事訴訟法52条1項を確認します。
条文民事訴訟法52条1項
民事訴訟法52条1項(共同訴訟参加)
訴訟の目的が当事者の一方及び第三者について合一にのみ確定すべき場合には、その第三者は、共同訴訟人としてその訴訟に参加することができる。
条文は、合一にのみ確定すべき場合、としか書いていません。答案で挙げる共同訴訟参加の要件は2つで、参加人に当事者適格があることと、訴訟の目的が当事者の一方と参加人について合一にのみ確定すべき場合、つまり、本訴の判決の効力が参加人と相手方の間にも及ぶ場合であることです。
1つめの要件の、当事者適格です。Wは、自分の債権を保全するために、Yの報酬債権を、自分の名で行使できます。Xと同じ立場ですから、当事者適格があります。
2つめの要件の、合一にのみ確定すべき場合かどうかです。Wが行使するのも、Xが訴訟1で行使しているのと同じ、Yの報酬債権そのものです。訴訟1の判決の効力は、115条1項2号でYに及びます。Yの権利を借りて行使するだけのWは、Yより強い立場には立てないので、判決の効力は、WとZの間にも及ぶ、と考えます。Xの訴訟とWの訴訟を別々に進めると、同じ報酬債権について、矛盾した判決が出てしまうので、合一にのみ確定すべき場合にあたります。
ただし、この、判決の効力がWにも及ぶ関係にある、という部分は、学説の整理で、判例が示した基準ではありません。この点は、このあとの後訴②で、あらためて扱います。
結論です。Wは、共同訴訟参加ができます。権利主張参加はできません。共同訴訟参加をすると、Wは当事者として、自分で主張や証拠を出せます。Xが十分に争わないかもしれない、という心配を、Wは、自分で補えます。
Wには、訴訟1に参加しないで、判決が出たあとに、自分で代位して訴える道もありえます。それが、この事例で問うことの3つめです。参加しなかったWに、確定判決の効力が及ぶかを、考えます。
図:後訴②:確定判決の効力はWに及ぶか
問題提起です。令和8年9月24日に判決の確定を知ったWが、Yに代位して、Zに報酬の支払を求めるとき、訴訟1の確定判決、つまり請求棄却の効力は、Wに及ぶでしょうか。
この点は、見解が分かれます。考え方は2つあります。1つめは、及ぶという考え方です。Yに判決の効力が及ぶ以上、Yの権利を行使するWも、Yが主張できないことは主張できない、と考えます。2つめは、及ばないという考え方です。Wは、115条1項のどの号にもあたらない第三者で、効力を及ぼす根拠がない、と考えます。どちらかが通説、とは言えません。
答案では、どちらかを選んで、理由を付けて書きます。この答案では、1つめの、及ぶという考え方を選びます。選ぶ理由は2つです。理由の1つめは、Wは、Yの権利を代位行使しているだけで、Yが失った権利を、Wが別に持っているわけではないことです。理由の2つめは、Wが訴訟1の係属を知っていて、共同訴訟参加ができたことです。ただ、理由の2つめは決め手ではなく、理由の1つめが成り立つなら、Wが知っていたかどうかに関わらず効力は及びます。
及ぶという考え方をとると、共同訴訟参加のところで、Wにも判決の効力が及ぶ関係にあるとして共同訴訟参加を認めたことと、筋がそろいます。
あてはめます。訴訟1の確定判決の効力はYに及び、Yの報酬債権は存在しない、という判断が確定しています。WはYの権利を行使するだけなので、この判断を争えません。ですから、後訴②は、請求棄却になります。
変形
図:変形:争う債務者は共同訴訟参加ができるか
変形を1つだけ見ます。債務者のYが、賃料は弁済した、と被保全債権を争いながら、報酬を自分に払わせる請求も立てたい、という場合に、Yは共同訴訟参加ができるか、です。
利害が対立しうるとしても、Xの受ける判決の効力はYに及ぶので、合一にのみ確定すべき場合を満たしうる、と書く答案もあります。ただし、共同訴訟参加は、Xと同じ側に並んで、相手方のZに請求を立てる形です。Xを相手方にして、賃料債務が存在しないことの確認を求める請求は、立てられません。被保全債権の争いを、請求として決着させたいなら、権利主張参加を選びます。
まとめ
図:完成答案:第1 判決効の債務者への拡張(問題の所在・規範)
こちらが、完成答案です。図と同じ文面を、本文でも置きます。それぞれの文面の前に、読むときに見てほしいところを、先に挙げます。第1は、判決効の債務者への拡張です。利害が対立しうる、という問題の所在を先に書いて、告知と参加の機会で、規範を立てているところを、見てみてください。
第1 判決効の債務者への拡張
1 問題の所在
訴訟1の確定判決(請求棄却)の効力は、民事訴訟法115条1項2号により、債務者Yに及ぶか。債権者Xの関心は自己の債権の回収であり、XとYの利害は対立しうる。そこで、利害が対立しうる場合や、債権者が敗訴した場合でも、判決の効力が債務者に及ぶかが問題となる。
2 規範
同号の趣旨は、訴訟担当者が本人の言い分を代わりに述べることを期待できる点にある。債権者は債務者に遅滞なく訴訟告知をしなければならず(民法423条の6)、債務者は参加して争う機会を得る。そのため、利害が対立する可能性があっても、判決の効力は債務者に及ぶ。債権者が敗訴した判決でも、同じである。
図:完成答案:第1 判決効の債務者への拡張(あてはめ・結論)
第1の続きで、あてはめと結論です。Xが敗訴した事実を、Yが参加して補えたことに結びつけているところを、確かめてみてください。
3 あてはめ
Xは、令和8年1月16日、Yに遅滞なく訴訟告知をした。Yは参加して争う機会を得たが、参加しなかった。Xは反証をほとんど出さずに敗訴したが、Yは参加して、納品物が契約に適合することを示す資料を出すことができた。よって、手続保障は充たされている。
4 結論
よって、訴訟1の確定判決の効力はYに及ぶ。Yは後訴①で、報酬債権が存在すると主張できず、Yの請求は棄却される。
図:完成答案:第2 他の債権者Wの関与(問題の所在・参加の形)
第2は、他の債権者Wの関与です。権利主張参加はできず、共同訴訟参加はできる、と、それぞれの規範に当てて書き分けているところを、見てみてください。「2 権利主張参加」の最初の1文は、図の文面を、同じ内容の別の言い方に改めています。
第2 他の債権者Wの関与
1 問題の所在
訴訟1の係属中、他の債権者Wは、いかなる形で訴訟1に参加できるかが問題となる。
2 権利主張参加
権利主張参加ができるのは、本訴の請求と参加人の請求とが論理的に両立しないとき、つまり一方が認められれば他方は認められないときである(民事訴訟法47条1項後段)。Wは、Yの賃料債務の存在も、Yの報酬債権の存在も争わず、Wの請求とXの請求は両立しうる。よって、Wは権利主張参加ができない。
3 共同訴訟参加
共同訴訟参加には、参加人に当事者適格があることと、訴訟の目的が当事者の一方と参加人について合一にのみ確定すべき場合であることが必要である(同法52条1項)。Wは、自己の債権を保全するため、Yの報酬債権を代位行使できるから、当事者適格がある。訴訟1の判決の効力はYに及び、Yの権利を行使するWとZの間にも及ぶ関係にあるから、合一にのみ確定すべき場合にあたる。よって、Wは共同訴訟参加ができる。
図:完成答案:第2 他の債権者Wの関与(後訴②)
第2の続きで、後訴②です。見解が分かれる、と先に断って、1つを選び、理由を付けているところを、確かめてみてください。
4 後訴②
訴訟1の確定判決の効力がWに及ぶかは、見解が分かれるが、次のように考える。訴訟1の確定判決の効力はYに及ぶ。Wは、Yの権利を代位行使するにすぎず、Yが主張できないことはWも主張できない。よって、判決の効力はWにも及び、Wは後訴②で、報酬債権が存在すると主張できず、Wの請求は棄却される。
参照条文
- 民事訴訟法115条1項
- 民法423条の6
- 民事訴訟法52条1項