行政法とは何か
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第1章 行政法の基礎 ①/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
朝の身の回りに、法律はいくつある?
図:朝の身の回りと法律
- 蛇口の水=水道法
- 家の建築=建築基準法
- ごみ出し=廃棄物処理法
- 飲食店の開業=食品衛生法
- どれの名前にも「行政法」は付かない
朝起きて、蛇口をひねると水が出ます。この水の水質や届け方を決めているのは、水道法という法律です。家を建てたいなら建築基準法、ごみを出すなら廃棄物処理法、飲食店を開くなら食品衛生法が関わります。そして4本とも、名前がぜんぶ違います。どれにも「行政法」とは付いていません。実は、「行政法」という名前の法律は、六法のどこを探しても無いんです。それなのに、司法試験の論文式にも予備試験にも、行政法は出題されます。今日の1問は、名前の付いた法律が無いのに行政法では何を学ぶのか、です。答えを先に言いますと、ばらばらの個別の法律に共通する考え方と、全分野に通用する少数の法律、この2つです。この回では、その2つが何なのかを渡します。あわせて、行政法の全体像と、事案を解く順番まで持ち帰ってもらいます。
「行政法」という法律は、どこにも無い
図:六法に載る法律と行政法
- 憲法
- 民法
- 刑法
- 商法
- 民事訴訟法
- 刑事訴訟法
- 「行政法」という名の法律は無い
「行政法」という題名の法律は、ありません。憲法、民法、刑法、商法、民事訴訟法、刑事訴訟法。ここまでは名前そのままの法律があります。けれども行政法だけは、そういう1冊の法律がありません。行政に関する法律は無いんですか。逆です。むしろ、ものすごく多いんです。現行の法律はおよそ2100本ありますが、その大部分が、何らかの形で行政に関わっています。しかも、ここに条例や政令、省令が加わります。条例は自治体が作るルール、政令は内閣が、省令は各省の大臣が定めるルールです。朝の4本を、場面ごとに見直しましょう。水道法は、水道の水質の基準や、水を届ける仕組みを決めています。建築基準法は、建物が安全の基準に合っているかを、建てる前に行政が確認する仕組みを決めています。廃棄物処理法は、ごみの収集や処理をどういう仕組みで行うかを決めていて、食品衛生法は、食べ物を出す店の営業に許可を求めています。
4本とも、動いているのは役所、つまり行政です。この感覚が大事です。ここで言葉を1つ整理します。水道なら水道、建築なら建築と、分野ごとに作られた法律を個別法と呼びます。そして行政法を学ぶというのは、この無数の個別法を相手にすることなんです。ただし、1本ずつ丸暗記するのではありません。丸暗記じゃないなら、何をするんですか。それが、次の話です。その前に、今日の道筋を1枚にしておきます。
図:この回の地図
- 1.身の回りと「行政法」という法律は無い
- 2.1つの科目になる理由
- 3.3本柱
- 4.手元に置く法律
- 5.民事法・刑事法との並び
- 6.事案を解く3段の順路
- 7.シリーズ20章の地図
今見たのが1番目です。この先、なぜ1つの科目になるのかを見て、行政法の中身を3本の柱で整理します。そのあと、手元に置く法律、民事法や刑事法との並び、事案を解く順番を見て、最後にシリーズ全体の地図で締めます。
それでも1つの科目になる理由
図:個別法と共通の考え方
- 個別法=水道法
- 建築基準法
- 廃棄物処理法
- 食品衛生法…を貫く共通の考え方=行政法の理論
個別法が2000本以上あるなら、行政法は結局、暗記量がとんでもない科目になりませんか。そこが、いちばんの勘違いポイントです。たとえば料理で考えてみてください。レシピ本を100冊、1冊ずつ丸暗記する人と、火加減、下ごしらえ、味つけの順序という共通の技術を身につけた人がいます。初めて開いたレシピ本で、作れるのはどちらでしょうか。共通の技術がある人ですね。個別法がレシピ本で、行政法の理論が共通の技術です。個別法の一つひとつは違っても、行政が国民に何かを命じる、許す、強制する、その仕組みには共通の型があります。朝の場面で確かめましょう。家は、建てる前に行政の確認が要りました。飲食店は、開く前に行政の許可が要りました。分野は違っても、始める前に行政のチェックを通す、という型は同じです。
個別法ごとに違うのは、何を基準にチェックするか、です。建物の安全なのか、食品の衛生なのか。そこは個別法ごとに違うので、条文を読んで確かめます。この共通の型、つまり共通の考え方を取り出して体系にしたものが、行政法という科目なんです。この理論には2つの働きがあります。1つ目は、まだ法律が無い場面での働きです。たとえば、これまでに無かった新しい商売が現れて、それを扱う法律がまだ無いとします。始める前に行政のチェックを通す型にするのか、始めたあとで問題が出たら止める型にするのか。どこまで行政に任せ、どんな手続を用意すべきか。その設計の指針になります。立法の指導原理です。2つ目は、すでに法律がある場面での働きです。たとえば条文に「公益上必要がある場合には、許可を取り消すことができる」と書いてあるとします。何が公益上必要なのかは、条文には書き切られていません。行政の判断に広く任せる趣旨なのか、狭くしか任せない趣旨なのか。その読み分けの指針になります。つまり解釈の指針です。
受験でも、初めて見る個別法が出るってことですか。そこが核心です。未知の個別法が出ても、条文を読み、共通の考え方で組み立てれば解けます。逆に、個別法を丸暗記しているだけでは、初見の法律には手も足も出ません。行政法は、ばらばらの個別法を、同じ道具で読むための科目です。この1文を、今日の軸にしてください。
行政法の中身は3本柱
図:行政法の3本柱
- 組織法=誰が行政をするか
- 作用法=行政が何をできるか
- 救済法=行政をチェックし被害を救う
大きく3本の柱で考えます。1本目が組織法。誰が行政をするのか、つまり、国や自治体の役所がどう作られ、誰がどんな権限を持つのかを扱います。2本目が作用法。作用というのは、行政が国民に対して行うことです。許可を出す、命令する、お金を給付する。行政が何をできるのか、どんなルールのもとでできるのかを扱います。3本目が救済法です。行政活動をチェックして、間違いを正し、被害を受けた人を救う仕組みです。行政救済法とも呼ばれます。この3本の柱の全体像を、一枚の絵にしてみましょう。
図:行政と私人の関係
- A=行政(国・自治体)
- B=私人(飲食店を開く人)+Aが法律を根拠にBへ許可・命令
- Bが不服申立て・訴えで争う
- Aが損害を賠償する
Aが行政、Bが飲食店を開こうとする私人です。AがBに許可を出したり、命令したりします。これが作用法の世界です。その許可や命令に納得できないとき、Bは不服を申し立てたり、裁判所に訴えたりできます。さらに違法な行政で損害を受けたら、Aに賠償を求められます。ここが救済法です。組織法は、Aの内側にあります。Aという役所の中で、誰が決める権限を持つのか、という部分ですね。少し考えてみてください。ヒントは、建築確認のルールが、行政が国民に対して何をするものか、です。建築確認を受けなければ家を建てられないというルールは、行政が国民に対して行う活動のルールなので、作用法です。逆に、役所の中で誰が確認を担当するかは組織法、確認に不服があるときの手段は救済法になります。
同じ建築でも、見る角度で柱が変わるんです。そこに気づけたのは大きいです。以後の回は、いつも「いま、どの柱をやっているか」で位置づけていきます。なお、「行政」とは何か、「公法」という言葉をどう考えるかは、いずれも別の回で扱います。
手元に置く法律:通則的な法律6本と個別法
図:個別法と通則的な法律6本
- 上段=行政手続法
- 行政代執行法
- 情報公開法
- 行政不服審査法
- 行政事件訴訟法
- 国家賠償法
- 下段=個別法の例:水道法
- 建築基準法
- 廃棄物処理法
- 食品衛生法
ここで、もう1つの道具が出てきます。個別法の上に重なる、通則的な法律です。通則というのは、どの分野にも共通する、という意味です。代表的なものは6本あります。行政手続法、行政代執行法、行政機関の保有する情報の公開に関する法律、行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償法です。行政機関の保有する情報の公開に関する法律は、略して情報公開法と呼ばれることが多いです。役割を一言ずつ見ていきましょう。行政手続法は、許可の審査や、営業停止のような不利益な処分をするときに踏むべき手続の共通ルールです。行政代執行法は、行政が命じた義務を相手が果たさないときに、行政が代わりに実現する手続です。情報公開法は、行政が持つ文書を国民が開示請求できる仕組みです。行政不服審査法は、行政に不服を申し立てる手続です。行政事件訴訟法は、行政の活動を裁判所で争う手続です。国家賠償法は、違法な行政で生じた損害を賠償してもらう仕組みです。
個別法と通則法の関係を整理します。まず個別法が、どんなときに行政が何をできるのか、国民にどんな権利や義務が生じるのかを決めます。そこに通則法が、手続や強制、公開、救済の共通ルールを重ねるのです。飲食店で言えば、営業に許可が要ること自体は食品衛生法が決めます。その審査の手続には行政手続法が、不許可を裁判で争う場面には行政事件訴訟法が重なります。ほかにも、地方自治法や国家行政組織法、個人情報保護法のように、特定の分野に限られない法律があります。6本とは役割がそれぞれ違うので、扱う章で見ていきます。今は名前だけで結構です。実践的な助言を1つ。これらの通則的な法律は、ふつうの小型の六法に載っています。まず条文を手元に置いて、読みながら学んでください。
個別法の条文を1つ実際に読む
図:食品衛生法の営業許可
- 誰が=営業を営もうとする者
- 何をするとき=前条に規定する営業を営むとき
- 誰の許可=都道府県知事
朝の場面に出てきた飲食店で見てみましょう。食品衛生法55条1項です。
条文食品衛生法55条1項
食品衛生法第55条第1項 前条に規定する営業を営もうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、都道府県知事の許可を受けなければならない。
3つ読み取ってください。誰が、営業を営もうとする者が。何をするときに、前条に規定する営業を始めるときに。誰の許可が要るのか、都道府県知事の許可です。許可とは、法律で原則として禁止されていることを、特定の場合に解除する行為です。この営業は、許可を受けるまでやってはいけない状態に置かれています。もう1つ見てほしい点があります。「前条に規定する営業」や「厚生労働省令で定めるところにより」という言い方です。ここに出てくる営業の中身や申請の細かい方法は、法律から任された政令や省令が決めます。この法律の場合は、お店の施設の基準を、都道府県の条例が決めています。個別法は、法律1本だけでなく、こうしたルールと組み合わさって働くのです。ただし条例は、政令や省令とは性格が違います。法律から任されたときだけでなく、自治体が自分の判断で、法律の範囲内で作ることもできるルールです。この違いは、別の回で扱います。
この条文を実際にどう読むかは、別の回でじっくり見ていきます。今日は、個別法が「誰が、いつ、誰の許可」を1文で書いている、という感覚だけ持っておいてください。
民事法・刑事法と並ぶ位置
図:三大分野と憲法
- 憲法=理念
- 民事法=私人どうしの関係
- 刑事法=犯罪と刑罰
- 行政法=行政と国民の関係
法律の大きな分野は、民事法、刑事法、行政法の3つに分けて考えられます。民事法は私人どうしの関係、刑事法は犯罪と刑罰、行政法は行政と国民の関係を扱います。そしてこの3分野の上に憲法があります。憲法は国の最高法規で、国のあり方の理念を定めています。行政も、この憲法に縛られます。たとえば、憲法は営業の自由を保障しています。その自由を、どんな場合にどこまで制限してよいのかを法律で決めて、日々の許可や命令の場面で守らせる。行政法は、憲法の理念が日常の暮らしの中で形になる場面だと考えてください。朝の4場面そのものです。水も、家も、ごみも、お店も、行政が関わっていました。暮らしのあらゆる場面に行政が関わり、国の中で行政の役割が大きくなっていくことを、行政国家現象と呼びます。では、なぜそこまで行政が関わるのか。民事法や刑事法は、トラブルが起きてから裁判で解決するのが基本です。でも、食中毒が出てから店に賠償を求めたり、刑罰を科したりしても、お客さんの健康は元に戻りません。だから飲食店の営業許可は、お店を開く前に必要なのです。起きてからでは取り返しのつかない被害を、起きる前に防ぐ。そのために行政は、トラブルになる前に、先回りして動きます。これが行政法の特徴の1つです。
行政法は実体法と訴訟法を1科目で扱う

- 3分野×実体法
- 訴訟法(民事法=民法・商法/民事訴訟法、刑事法=刑法/刑事訴訟法、行政法=個別法・行政法総論/行政事件訴訟法)
民法には民事訴訟法、刑法には刑事訴訟法という相棒がいますよね。行政法はどうなんですか。そこが、行政法の変わったところです。まず言葉を整理します。実体法は、権利や義務の中身を決める法律です。民法や刑法がそうです。訴訟法は、その権利を裁判で実現するための手続を決める法律で、民事訴訟法や刑事訴訟法がそうです。民事法と刑事法では、実体法と訴訟法が別の科目になっています。ところが行政法は、この両方を1つの科目の中で扱います。実体法にあたるのが、各分野の個別法と、その共通の考え方をまとめた行政法総論です。訴訟法にあたるのが、行政事件訴訟法です。名前の似た行政手続法は、裁判の手続ではなく、行政が処分をするときの手続を決める法律なので、こちらには入りません。
どうして、科目を分けないんですか。中身と争い方が、切り離しにくいからです。個別法は無数にありますが、行政の活動の違法を争う裁判の基本のルールは、どの分野でも行政事件訴訟法です。そして事案では、行政の活動が違法かどうかと、それを裁判でどう争うかが、セットで問われるのがふつうです。片方だけでは答えが出ないので、1つの科目の中で両方を学びます。行政事件訴訟法だけでは、訴訟のルールは完結しません。ここで条文を見ましょう。行政事件訴訟法7条です。
条文行政事件訴訟法7条
行政事件訴訟法第7条(この法律に定めがない事項) 行政事件訴訟に関し、この法律に定めがない事項については、民事訴訟の例による。
この法律に定めがない事項は、民事訴訟の例による。つまり、行政事件訴訟法は完結した法典ではなく、足りない部分を民事訴訟のルールで補います。ただし、どの部分が行政事件訴訟法の独自ルールで、どの部分が民事訴訟のルールなのかは、後の回で整理します。今日は位置づけまでです。
事案を解く3段の順路
図:事案を解く3段の順路
- 1段目=訴訟類型を選ぶ
- 2段目=訴訟要件を検討する
- 3段目=行政活動の違法性を検討する
ここまでで道具は揃いました。次は、その道具を使って事案を解く順番を渡します。状況はこうです。Bさんが飲食店を開こうとして、食品衛生法の許可を申請したところ、Aである行政に、不許可と判断されました。Bさんは納得できず、裁判で争いたい。さて、答案では何から考えますか。まず違法性から、と考えたくなるのが自然です。でも少し立ち止まってください。最初に決めるのは、違法性ではありません。順番はこうです。1段目が、訴訟類型の選択。2段目が、訴訟要件の検討。3段目が、行政活動の違法性の検討です。訴訟類型とは、訴えの種類のことです。たとえば、不許可の判断を取り消してほしい訴えと、お金を払ってほしい訴えは、種類が違いますよね。行政の裁判には、目的に応じた訴えの型が用意されています。これを訴訟類型と呼び、名前を並べるのはまだ先です。
訴訟要件は、訴えが中身の審理に進むための関門です。たとえば、訴える資格があるか、期限を過ぎていないか。この関門を通れなければ、裁判所は中身を見ずに、門前払いにします。期限切れで訴えが門前払いなら、答案の違法性の議論は、一行も使われません。だから入口の訴訟類型と訴訟要件を先に決めて、そのあとで違法性に入るのです。入口の2つの中では、どうして訴訟類型のほうが先なんですか。訴えの型ごとに、通るべき関門が違うからです。取り消してほしい訴えと、お金を払ってほしい訴えとでは、確かめる関門の中身が別々に決まっています。先に訴訟類型を選ばないと、どの関門を検討すればよいのかが決まりません。
違法性が先だと感じるのには、理由があります。このシリーズで学ぶ順番は、行政の活動の中身が先で、争い方は後半に出てきます。学ぶ順と解く順は、逆になるんです。ちなみに、さきほどの不許可のように、行政が法律にもとづいて、国民の権利や義務を一方的に具体的に決める行為を、行政法では「処分」と呼びます。許可や営業停止命令もそうです。この順路は、論文の答案の骨格になります。選び方の細部は後の回に回して、今日は3段の順番だけ覚えてください。
行政法の学習目標と、試験での位置

ゴールは、具体的な事案で2つを判断できるようになることです。1つは、個別法の仕組みのもとで、行政の活動が違法になるのはどんな場合か。もう1つは、それを訴訟などで争うにはどうすればよいか。そのために、共通の考え方と通則的な法律を使って個別法を読み解き、事案に当てはめます。個別法と理論と事案を、つなぐ科目なんです。判例もたくさん学びます。ただし判例は、特定の個別法と特定の事案についての判断です。同じ結論がほかの法律にそのまま通用するとは限りません。どこまで及ぶのか、つまり射程を見極める必要があります。
司法試験では、論文式の公法系科目、つまり憲法と行政法に関する分野の科目で出ます。予備試験では、短答式と論文式の両方に、行政法が入っています。
シリーズ全体の地図:20章の道のり
図:シリーズ20章の地図・前半
- 1.行政法の基礎
- 2.行政組織法
- 3.行為形式の地図と行政基準
- 4.行政行為
- 5.行政裁量
- 6.行政契約・行政指導・行政計画
- 7.行政調査・義務履行確保・行政罰
- 8.行政手続
- 9.情報公開・個人情報保護
- 10.行政不服申立て
では最後に、このシリーズ全体の地図です。20の章に分かれています。最初の章がこの回を含む行政法の基礎。次に、組織法にあたる行政組織法の章が来ます。そこから作用法の章が続きます。行為形式の地図、さきほど処分と呼んだ許可や命令を、学問の言葉で捉えた行政行為、行政裁量、契約や指導や計画、調査や強制や罰、そして行政手続です。行政が実際に動く場面は多いので、ここがいちばん厚くなります。情報公開と個人情報保護の章を挟んで、行政不服申立ての章から、救済法に入ります。
図:シリーズ20章の地図・後半
- 11.行政事件訴訟の全体像
- 12.処分性
- 13.原告適格
- 14.訴えの利益とその他の訴訟要件
- 15.取消訴訟の審理・判決・執行停止
- 16.取消訴訟以外の抗告訴訟と仮の救済
- 17.当事者訴訟・争点訴訟・住民訴訟
- 18.国家賠償
- 19.損失補償
- 20.総まとめ
後半は、争い方と救済です。行政事件訴訟の全体像のあとに続くのが、訴訟要件の章です。処分性は、そもそも訴えで争える行為か。原告適格は、訴える資格があるか。訴えの利益は、いま争う意味が残っているか。これが、さきほどの3段の順路の2段目にあたります。取消訴訟は、さきほどの「取り消してほしい訴え」のことです。その審理や判決、執行停止を扱う章があります。続いて、取消訴訟以外の訴えを扱う章があり、当事者訴訟や住民訴訟の章へと進みます。ここが1段目の、訴訟類型の選択につながります。そして、違法な行政による損害を埋める国家賠償と、道路を通すために土地を手放してもらう場合のように、適法な行政のために特定の人だけが負った損失を埋める損失補償の章で救済法を締めて、最後の章で、未知の個別法を相手に、3段の順路を通す総まとめをします。
3段目の違法性を学ぶのは、行政行為や裁量、手続といった、前半の作用法の章です。行政活動の違法性を考える材料は、ここで学ぶことになります。
今日の地図(保存版)
図:今日の地図・保存版
- 行政法=ばらばらの個別法を同じ道具で読む科目
- 道具=共通の考え方+通則的な法律6本
- 中身=組織法・作用法・救済法
- 解く順=訴訟類型→訴訟要件→違法性
最初の1問に戻ります。法律が無いのに、何を勉強するのか。ばらばらの個別法に共通する考え方と、全分野に通用する少数の法律、でした。行政法は、無数の個別法を同じ道具で読むための科目でした。道具は2つ。共通の考え方と、6本の通則的な法律です。中身は、組織法、作用法、救済法の3本柱。そして事案は、訴訟類型、訴訟要件、違法性の順で解いていきます。次の回からは、この地図のどこを歩いているかを確かめながら、行政法の最初の問い、行政はなぜ生まれ、なぜ私たちの生活に入り込むのか、から始めます。
参照条文
- 食品衛生法55条1項
- 行政事件訴訟法7条