審査請求の審理②(弁明書・口頭意見陳述)
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第10章 行政不服申立て #135/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
処分庁が出す「弁明書」は、行手法の「弁明」と同じなのか
図:今日の問い
- ①処分庁が出す弁明書と行手法の弁明は出す人が同じか逆か
- ②審査請求人は処分庁に直接質問できるか
- ③処分庁が出した書類を見られるか・写しをもらえるか
- ④当事者が言っていない事実を審理員が自分で調べてよいか
- 道筋=弁明書→反論書・意見書→争点整理→口頭意見陳述→証拠調べ→閲覧→審理手続の終結→審理員意見書→職権探知
審理員Cの下で、処分庁のAと、審査請求人のBが向き合う形ができました。設例は同じで、甲県の知事Aに営業停止2か月を命じられた、飲食店の経営者Bです。Aは審査庁でもあります。営業停止の事務は、県の自治事務と仮定します。今日は、審理員の下で出し合う書面と手続の中身を見て、答えを出します。第10章の6本目です。今日の問いは4つです。1つ目、処分庁が出す弁明書と、行手法の弁明は、出す人が同じか逆か。2つ目、審査請求人は、処分庁に直接質問できるのか。3つ目、審査請求人は、処分庁が出した書類を見られるのか、写しをもらえるのか。4つ目、当事者が言っていない事実を、審理員が自分で調べてよいのか。答えの芯を先に言うと、審理は、書面を出し合う往復が土台です。そこに、口頭意見陳述と証拠調べが加わり、審理員が終わりと認めたところで締めて、審理員意見書が審査庁に出ます。
審理の流れを一本の線で
図:審理の流れ
- 審理員の指名→処分庁等へ審査請求書の写しを送付〔処分庁等が審査庁なら不要〕→弁明書〔29条〕→反論書・意見書〔30条〕→争点整理〔37条・意見聴取手続〕→口頭意見陳述〔31条〕・証拠調べ〔32〜36条〕→閲覧・写しの交付〔38条〕→審理手続の終結〔41条〕→審理員意見書〔42条〕→審査庁
- 審理手続の特色=書面審理・職権進行
先に、時間の順に一本の線を引きます。審理員が指名されたら、処分庁が弁明書を出します。それに対して、審査請求人が反論書を出し、参加人は意見書を出します。争点が多いときは、審理員が関係者を集めて整理します。申立てがあれば口頭意見陳述を開き、証拠も出し合います。その間、審査請求人と参加人は、出された書類を見られます。審理員が十分だと認めたら審理手続を終結し、審理員意見書を審査庁に出します。ただ、順番に意味があります。書面で言い分を出し合い、足りないところを口頭と証拠で補い、最後に審理員が意見をまとめる。この並びで読むと、暗記ではなく流れで入ります。
弁明書——29条
図:弁明書
- 29条
- 審理員は指名されたら直ちに審査請求書の写しを処分庁等に送付〔処分庁等が審査庁なら不要〕→相当の期間を定めて弁明書の提出を求める→処分庁等が弁明書に処分の内容及び理由を記載→調書・報告書・弁明書があれば添付→審理員が審査請求人と参加人に送付
- 行手法の弁明=名あて人が出す・行審法の弁明書=処分庁等が出す=出す人が逆
最初は、弁明書です。本編の問いです。行手法の弁明は、誰が出すものでしたか。そして行審法の弁明書は、誰が出すでしょうか。行審法の弁明書は、処分庁等が出します。同じ29条という番号で、出す人が逆です。行手法の弁明の機会の付与では、名あて人が、処分に反論する書面を出しました。それも弁明書と呼びました。行審法の弁明書は、処分をした側が、自分の処分を説明する書面です。覚え方は、行審法の弁明書は、処分した側の言い分、です。
条文行政不服審査法29条1項・2項
行政不服審査法 第二十九条(弁明書の提出)(1項・2項) 審理員は、審査庁から指名されたときは、直ちに、審査請求書又は審査請求録取書の写しを処分庁等に送付しなければならない。ただし、処分庁等が審査庁である場合には、この限りでない。 2 審理員は、相当の期間を定めて、処分庁等に対し、弁明書の提出を求めるものとする。
1項から順に見ます。審理員は、指名されたら直ちに、審査請求書の写しを処分庁等に送ります。ただし、処分庁等が審査庁である場合は送りません。設例のAは、処分庁でも審査庁でもありますから、送る必要がありません。すでに手元にあるからです。2項で、審理員が、相当の期間を定めて、弁明書の提出を求めます。
条文行政不服審査法29条3項・4項
行政不服審査法 第二十九条(弁明書の提出)(3項・4項) 処分庁等は、前項の弁明書に、次の各号の区分に応じ、当該各号に定める事項を記載しなければならない。 一 処分についての審査請求に対する弁明書 処分の内容及び理由 二 不作為についての審査請求に対する弁明書 処分をしていない理由並びに予定される処分の時期、内容及び理由 4 処分庁が次に掲げる書面を保有する場合には、前項第一号に掲げる弁明書にこれを添付するものとする。 一 行政手続法(平成五年法律第八十八号)第二十四条第一項の調書及び同条第三項の報告書 二 行政手続法第二十九条第一項に規定する弁明書
3項で、中身が決まっています。処分についての審査請求なら、処分の内容及び理由です。Bの場合は、営業停止2か月を命じた内容と、なぜ命じたのか、たとえば立入検査で衛生基準の違反が見つかったから、という理由を書きます。不作為についての審査請求なら、処分をしていない理由と、予定される処分の時期、内容及び理由です。処分の前に聴聞を開いていたなら、処分庁はその調書と報告書を持っています。弁明の機会の付与をしていたなら、名あて人が出した弁明書があります。これらを持っているときは、処分庁の弁明書に添付します。処分の前の手続の記録が、審査請求の資料としてここでつながります。
条文行政不服審査法29条5項
行政不服審査法 第二十九条(弁明書の提出)(5項) 審理員は、処分庁等から弁明書の提出があったときは、これを審査請求人及び参加人に送付しなければならない。
5項で、審理員は、弁明書が出たら、審査請求人と参加人に送ります。Bは、Aの言い分を読んでから、反論できます。
反論書と意見書——30条
図:反論書・意見書
- 30条
- 審査請求人→反論書〔弁明書への反論〕
- 参加人→意見書〔事件に関する意見〕
- 審理員が相当の期間を定めたらその期間内に提出
- 審理員が反論書を参加人・処分庁等に、意見書を審査請求人・処分庁等に送付
- 審理員が出す審理員意見書〔42条〕とは別物
- 設例の切替=BがEの営業許可を争う場面でEは処分庁A側
弁明書への返事が、30条です。
条文行政不服審査法30条
行政不服審査法 第三十条(反論書等の提出) 審査請求人は、前条第五項の規定により送付された弁明書に記載された事項に対する反論を記載した書面(以下「反論書」という。)を提出することができる。この場合において、審理員が、反論書を提出すべき相当の期間を定めたときは、その期間内にこれを提出しなければならない。 2 参加人は、審査請求に係る事件に関する意見を記載した書面(第四十条及び第四十二条第一項を除き、以下「意見書」という。)を提出することができる。この場合において、審理員が、意見書を提出すべき相当の期間を定めたときは、その期間内にこれを提出しなければならない。 3 審理員は、審査請求人から反論書の提出があったときはこれを参加人及び処分庁等に、参加人から意見書の提出があったときはこれを審査請求人及び処分庁等に、それぞれ送付しなければならない。
1項は、審査請求人が出す反論書です。弁明書に書かれた事項への反論です。Bなら、立入検査の日にはすでに改善していた、といった反論を書きます。2項は、参加人が出す意見書です。反論書は審査請求人、意見書は参加人。短答で入れ替えて出ます。審理員が期間を定めたら、その期間内に出さなければなりません。3項で、出た書面は、審理員が相手方に送ります。反論書は参加人と処分庁等に、意見書は審査請求人と処分庁等に送られます。往復の構造です。ここで、参加人が何をするのか、設例を切り替えて見ます。BがEという事業者の営業許可を争う場面にします。許可は知事Aが出しました。Bは許可の取消しを求めて審査請求をしています。許可を受けたEは、取り消されれば営業ができなくなる立場です。Eは許可を守りたい側ですから、利害の向きは処分庁のAと同じ側です。
Eは、審理員の許可を得て参加人になり、意見書で、この許可は適法で維持すべきだ、と主張できます。参加人の関わりは、意見書だけではありません。このあと見る口頭意見陳述の申立て、証拠書類の提出、書類の閲覧も、参加人に認められています。前回、参加人になると手続に関われる、と言いました。その中身が、これです。設例を、Bの営業停止に戻します。もう1つ注意です。審理員が出す書面に、審理員意見書があります。42条のもので、審査庁に出す意見書です。参加人の意見書とは別物で、名前が似ているだけです。
争点と証拠の整理——37条
図:争点整理
- 37条1項
- 審理すべき事項が多数・錯綜など事件が複雑な場合→審理員が期日・場所を指定して審理関係人を招集→申立てに関する意見の聴取〔意見聴取手続=争点・証拠の事前整理手続〕
- 2項=遠隔地などは音声の送受信による通話
- 3項=審理手続の期日・場所と終結の予定時期を決定して通知
- 28条の計画的進行とセット
書面を何往復もしても、争いの中心がかみ合わないことがあります。そのための条文が、37条です。
条文行政不服審査法37条1項
行政不服審査法 第三十七条(審理手続の計画的遂行)(1項) 審理員は、審査請求に係る事件について、審理すべき事項が多数であり又は錯綜しているなど事件が複雑であることその他の事情により、迅速かつ公正な審理を行うため、第三十一条から前条までに定める審理手続を計画的に遂行する必要があると認める場合には、期日及び場所を指定して、審理関係人を招集し、あらかじめ、これらの審理手続の申立てに関する意見の聴取を行うことができる。
事件が複雑で、計画的に進める必要があると認めるとき、審理員は、期日と場所を指定して、審査請求人、参加人、処分庁等の審理関係人を集め、あらかじめ、口頭意見陳述や証拠調べの申立てについて、意見を聴けます。口頭意見陳述と証拠調べは、このあと見る手続です。それを始める前に、何が争いで、何を証拠で確かめるかを、関係者から聴いて段取りしておく。これが意見聴取手続です。実質は、争点と証拠を、あらかじめ整理する手続ですから、争点整理の手続と呼ばれます。Bが、衛生基準違反はなかった、と言い、Aが、あった、と言うなら、争点は、違反の有無です。何を証拠で確かめるかも、先に決めておくと、審理が迷いません。2項は、関係者が遠くに住んでいるときなどに、音声の送受信による通話で行えるという規定です。3項は、意見を聴いたら、遅滞なく、審理手続の期日と場所、そして審理手続の終結の予定時期を決めて、審理関係人に通知する、というものです。前回見た28条の、相互に協力して計画的に進める義務が、この37条で具体化されています。短答では、できる規定で、複雑な事件などで必要があると認める場合に開く、という点が問われます。
口頭意見陳述——31条
図:口頭意見陳述
- 31条
- 1項=審査請求人又は参加人の申立てがあれば意見を述べる機会を与えなければならない〔困難な場合は除く〕
- 2項=審理員が期日・場所を指定し全ての審理関係人を招集
- 3項=許可を得て補佐人とともに出頭
- 4項=事件に関係のない陳述は制限
- 5項=許可を得て処分庁への質問ができる
- 比較=聴聞〔20条2項〕は許可を得て行政庁の職員に質問
審理は書面が基本です。ただ、書面では伝わらないこともあります。それを補うのが、口頭意見陳述です。本編の問いです。審査請求人は、審理員の許可を得れば、処分庁に直接質問できるでしょうか。請求人から処分庁への直接の質問は、できます。31条5項です。書面だけでは分からない処分の根拠を、処分をした側に直接確かめられます。ただし、質問には審理員の許可が要ります。順に読みます。
条文行政不服審査法31条1項
行政不服審査法 第三十一条(口頭意見陳述)(1項) 審査請求人又は参加人の申立てがあった場合には、審理員は、当該申立てをした者(以下この条及び第四十一条第二項第二号において「申立人」という。)に口頭で審査請求に係る事件に関する意見を述べる機会を与えなければならない。ただし、当該申立人の所在その他の事情により当該意見を述べる機会を与えることが困難であると認められる場合には、この限りでない。
1項です。審査請求人か参加人が申し立てたら、審理員は、口頭で意見を述べる機会を与えなければなりません。義務です。ただし、申立人の所在などの事情で困難なときは、除かれます。開くかどうかは、申立てがあってはじめて決まります。申立てが無いのに、審理員が自分で開く、という条文ではありません。
条文行政不服審査法31条2項・3項
行政不服審査法 第三十一条(口頭意見陳述)(2項・3項) 前項本文の規定による意見の陳述(以下「口頭意見陳述」という。)は、審理員が期日及び場所を指定し、全ての審理関係人を招集してさせるものとする。 3 口頭意見陳述において、申立人は、審理員の許可を得て、補佐人とともに出頭することができる。
2項で、審理員が期日と場所を指定し、全ての審理関係人を招集します。処分庁のAも出席します。Bが意見を述べる場に、Aも同席しているわけです。3項で、申立人は、審理員の許可を得て、補佐人とともに出頭できます。補佐人は、申立人の話を手助けする人で、たとえばBが、専門的な説明のために、衛生管理の専門家を連れてくる、といった場合です。許可が要ります。
条文行政不服審査法31条4項・5項
行政不服審査法 第三十一条(口頭意見陳述)(4項・5項) 口頭意見陳述において、審理員は、申立人のする陳述が事件に関係のない事項にわたる場合その他相当でない場合には、これを制限することができる。 5 口頭意見陳述に際し、申立人は、審理員の許可を得て、審査請求に係る事件に関し、処分庁等に対して、質問を発することができる。
4項は、事件に関係のない陳述などを、審理員が制限できる、という規定です。そして5項です。申立人は、審理員の許可を得て、処分庁等に質問を発することができます。質問する先は、請求人の側から処分庁です。Bは、審理員の許可を得て、Aに、なぜ営業停止の期間を2か月にしたのか、と聞けます。聴聞にも、同じ仕組みがありました。聴聞の20条2項で、当事者と参加人は、期日に出頭して意見を述べ、証拠書類を出し、主宰者の許可を得て、行政庁の職員に質問できました。似た作りです。違いは3つです。聴聞は処分の前の手続で、相手は行政庁の職員です。審査請求の口頭意見陳述は処分の後で、相手は処分庁等であり、申立てがあってはじめて開かれます。ここは論文でも、審査請求人の手続的権利として、論点になりうるところです。
証拠調べ——32条から36条
図:証拠調べ
- 32条=審査請求人・参加人は証拠書類又は証拠物を提出
- 処分庁等は処分の理由となる事実を証する書類その他の物件を提出
- 33条=物件の提出要求〔書類その他の物件・所持人・留め置ける〕
- 34条=参考人の陳述・鑑定
- 35条=検証〔申立てなら日時・場所を通知して立会いの機会〕
- 36条=審理関係人への質問
- 33〜36条=申立て又は職権
次は証拠です。32条から36条まで、5つの条文を1つずつ読みます。
条文行政不服審査法32条
行政不服審査法 第三十二条(証拠書類等の提出) 審査請求人又は参加人は、証拠書類又は証拠物を提出することができる。 2 処分庁等は、当該処分の理由となる事実を証する書類その他の物件を提出することができる。 3 前二項の場合において、審理員が、証拠書類若しくは証拠物又は書類その他の物件を提出すべき相当の期間を定めたときは、その期間内にこれを提出しなければならない。
32条は、当事者の側が証拠を出す条文です。審査請求人と参加人は、証拠書類や証拠物を出せます。Bなら、仕入れの記録や、清掃の記録です。処分庁等は、処分の理由となる事実を証する書類その他の物件を出せます。Aなら、立入検査の記録です。審理員が期間を定めたら、その期間内に出します。
条文行政不服審査法33条
行政不服審査法 第三十三条(物件の提出要求) 審理員は、審査請求人若しくは参加人の申立てにより又は職権で、書類その他の物件の所持人に対し、相当の期間を定めて、その物件の提出を求めることができる。この場合において、審理員は、その提出された物件を留め置くことができる。
33条からは、審理員が動く条文です。申立てによって、または職権で、書類その他の物件を持っている人に、提出を求められます。たとえば、検査を請け負った会社が持つ検査票です。出された物件は、審理員が留め置けます。返さずに手元に置いておける、という意味です。
条文行政不服審査法34条
行政不服審査法 第三十四条(参考人の陳述及び鑑定の要求) 審理員は、審査請求人若しくは参加人の申立てにより又は職権で、適当と認める者に、参考人としてその知っている事実の陳述を求め、又は鑑定を求めることができる。
34条は、人に話を聞く、専門家に意見を求める条文です。参考人は、事実を知っている人です。たとえば、Bの店に食材を納めている業者です。鑑定は、専門的な知見に基づく意見のことで、たとえば、食中毒の原因について、専門家に判断を求めます。
条文行政不服審査法35条
行政不服審査法 第三十五条(検証) 審理員は、審査請求人若しくは参加人の申立てにより又は職権で、必要な場所につき、検証をすることができる。 2 審理員は、審査請求人又は参加人の申立てにより前項の検証をしようとするときは、あらかじめ、その日時及び場所を当該申立てをした者に通知し、これに立ち会う機会を与えなければならない。
35条は検証です。必要な場所に行って、現場を確かめます。Bの店の厨房を見に行く、という場合です。2項に注意です。審査請求人や参加人の申立てで検証するときは、あらかじめ日時と場所を通知して、立ち会う機会を与えなければなりません。職権で行うときは、この義務の対象になっていません。
条文行政不服審査法36条
行政不服審査法 第三十六条(審理関係人への質問) 審理員は、審査請求人若しくは参加人の申立てにより又は職権で、審査請求に係る事件に関し、審理関係人に質問することができる。
36条は、審理員が審理関係人に質問する条文です。Bにも、Aにも、事実を確かめられます。先ほどの31条5項は、請求人から処分庁への質問でした。こちらは、審理員から審理関係人への質問です。向きが違います。審理員は、当事者の申立てを待たずに、自分で証拠を集められます。この職権は、あとで職権探知の話につながります。短答では、32条は当事者が出す条文、33条から36条は審理員が求める条文で、申立てまたは職権、35条2項の立会いは申立てのとき、と整理してください。ここで、行手法の復習を1つ置きます。弁明の機会の付与では、処分の資料の閲覧を求められるでしょうか?
提出書類等の閲覧と写しの交付——38条
図:閲覧・写しの交付
- 38条1項
- 審査請求人・参加人→審理手続が終結するまで→審理員に提出書類等の閲覧又は写しの交付〔閲覧と写しの交付を求める権利=謄写・閲覧請求権〕を求められる
- 拒めるのは第三者の利益を害するおそれ・その他正当な理由があるとき
- 提出書類等=29条4項の書面・32条の証拠書類等・33条で提出された書類その他の物件
- 聴聞の文書閲覧〔行手法18条〕は終結まで・弁明の機会の付与は閲覧なし
聴聞には閲覧の定めがあり、弁明の機会の付与には定めがありませんでした。では、審査請求ではどうか。38条です。
条文行政不服審査法38条1項
行政不服審査法 第三十八条(審査請求人等による提出書類等の閲覧等)(1項) 審査請求人又は参加人は、第四十一条第一項又は第二項の規定により審理手続が終結するまでの間、審理員に対し、提出書類等(第二十九条第四項各号に掲げる書面又は第三十二条第一項若しくは第二項若しくは第三十三条の規定により提出された書類その他の物件をいう。次項において同じ。)の閲覧(電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)にあっては、記録された事項を審査庁が定める方法により表示したものの閲覧)又は当該書面若しくは当該書類の写し若しくは当該電磁的記録に記録された事項を記載した書面の交付を求めることができる。この場合において、審理員は、第三者の利益を害するおそれがあると認めるとき、その他正当な理由があるときでなければ、その閲覧又は交付を拒むことができない。
審査請求人と参加人は、審理手続が終結するまでの間、審理員に、提出書類等の閲覧か、写しの交付を求められます。書類を写し取って写しを得ることを、謄写といいます。閲覧と写しの交付を求める権利を合わせて、謄写・閲覧請求権と呼びます。見られる範囲は限られます。条文の対象は決まっています。弁明書に添付された調書などの書面と、32条で出された証拠書類や処分庁の書類、33条で出された書類その他の物件です。条文に無い範囲まで、広げて考えないでください。そして審理員は、第三者の利益を害するおそれがあるとき、その他正当な理由があるときでなければ、拒めません。原則は応じる、が出発点です。理由は、防御のためです。Bが、Aの出した立入検査の記録を見られなければ、どこが争われているのか分からず、反論のしようがありません。前に見た聴聞と同じ軸で、反論するには、相手の手札が見えることが要ります。聴聞と並べます。聴聞の文書閲覧は、行手法18条で、通知があった時から聴聞が終結する時までです。求められるのは、当事者と、処分で自分の利益を害される参加人だけでした。弁明の機会の付与では、閲覧は求められません。審査請求の閲覧は、審理手続が終結するまで、審査請求人と参加人が求められます。こちらは、参加人に限定がありません。2項から5項は名前だけです。2項は、閲覧や交付をさせるときに、書類を出した人の意見を聴く、という規定です。3項は閲覧の日時と場所の指定、4項は写しの交付を受けるときの実費の手数料、5項は経済的な事情による減額や免除です。この審査請求人の権利は、論文でも、手続的権利として論点になりうるところです。
審理手続の終結と審理員意見書——41条・42条
図:審理手続の終結と審理員意見書
- 41条1項=必要な審理を終えたと認めるとき終結
- 41条2項=①書面・証拠が期間内に出ず、さらに期間を示して求めても出ない ②申立人が正当な理由なく口頭意見陳述に出頭しない
- 41条3項=速やかに審理関係人に通知〔審理員意見書・事件記録の提出予定時期つき〕
- 42条=審査庁がすべき裁決に関する意見書を、事件記録とともに審査庁に提出
- 審理員は裁決しない
出し合いが終わったら、審理を締めくくります。41条と42条です。
条文行政不服審査法41条1項
行政不服審査法 第四十一条(審理手続の終結)(1項) 審理員は、必要な審理を終えたと認めるときは、審理手続を終結するものとする。
1項は、必要な審理を終えたと認めるとき、審理員が審理手続を終結する、という規定です。終結のあとは、先ほどの閲覧もできなくなります。2項は、1項のほかに終結できる場合です。名前だけ見ます。1つ目、弁明書や反論書、意見書、証拠書類、書類その他の物件が、期間内に提出されず、さらに一定の期間を示して求めても出なかったとき。2つ目、口頭意見陳述を申し立てた人が、正当な理由なく出頭しないときです。つまり、出すべき人が出さない、来るべき人が来ないなら、待ち続けずに締められる、という趣旨です。3項で、審理員は終結したら、速やかに審理関係人に、終結した旨と、審理員意見書と事件記録を審査庁に出す予定時期を通知します。
条文行政不服審査法42条
行政不服審査法 第四十二条(審理員意見書) 審理員は、審理手続を終結したときは、遅滞なく、審査庁がすべき裁決に関する意見書(以下「審理員意見書」という。)を作成しなければならない。 2 審理員は、審理員意見書を作成したときは、速やかに、これを事件記録とともに、審査庁に提出しなければならない。
終結したら、審理員は遅滞なく、審査庁がすべき裁決に関する意見書を作ります。それが審理員意見書です。作ったら、事件記録とともに審査庁に出します。ここが大事です。審理員は、自分で裁決しません。裁決をするのは審査庁です。審理員は、審査庁がどんな裁決をすべきか、意見を出すだけです。設例では、審理員Cが意見書を知事Aに出し、裁決はAがします。そして審理員意見書を受けた審査庁は、原則として、行政不服審査会などに諮問します。なお、審理員は執行停止についても意見書を出せますが、それは執行停止を扱う回で見ます。
審理の原則と職権探知
図:審理の特色と職権探知
- 書面審理=弁明書・反論書・意見書・証拠書類が中心・口頭意見陳述は申立てがあったとき
- 職権進行=審理員が進行を主導
- 職権探知=審理関係人が主張していない事実を職権で取り上げて調べること・行審法に明文なし・認められると解されている
- 理由=①行政過程の争訟で行政の適正な運営も目的〔1条1項〕②簡易迅速かつ公正な救済・請求人の専門知識の不足を補う
- 義務までは無い
最後に、審理全体の原則です。まず、前回も見た2つの特色を整理します。1つ目は書面審理です。弁明書、反論書、意見書、証拠書類が中心で、口頭意見陳述は申立てがあったときだけです。2つ目は職権進行です。期日や場所の指定、物件の提出要求、検証、質問を、審理員が自分の判断で進めます。本編の問いです。審査請求人が主張していない違法の理由を、審理員が自分で調べてよいでしょうか。主張されていない違法の理由でも、審理員が調べてよい、と解されています。これを職権探知といいます。職権探知とは、審理関係人が主張していない事実を、職権で取り上げて、その存否を調べることです。行審法に明文はありませんが、認められると解されています。理由は2つです。1つ目、審査請求は、訴訟とは違い、行政の中での争訟です。国民の権利利益の救済だけでなく、行政の適正な運営を確保することも目的です。1条1項でした。2つ目、簡易迅速で公正な救済のために、専門知識が足りない審査請求人を、補う必要があるからです。Bが、衛生基準の細かい規定の違反の有無を主張しきれなくても、審理員が調べられます。ただし、調べる義務までは無いとされます。同じ考え方を示した最高裁の判決があります。ただし、事件の種類が違うので、注意して聞いてください。固定資産評価審査委員会の事件です。公定力の回で名前が出た、固定資産の価格への不服を審査する委員会です。しかも、行審法が改正される前のものです。審査決定の取消訴訟で、審査の際に主張しなかった事由を主張できるかが問題になった事件で、その理由の一部として、職権探知についての考え方が述べられました。
判例最判令元・7・16 民集73巻3号211頁
職権探知を認める理由(固定資産評価審査委員会の審査について) 上記審査は、納税者の権利を保護するとともに、固定資産税の賦課に係る行政の適正な運営の確保を図る趣旨に出るものであり、同委員会が、職権により、審査に必要な資料の収集等をすることができるものとされていること(同法433条3項、11項、行政不服審査法(平成26年法律第68号による改正前のもの)27条、29条、30条)をも併せ考えると、同委員会は、審査申出人の主張しない事由についても審査の対象とすることができると解すべきである。
カードの言葉を補います。同法は地方税法、同委員会は固定資産評価審査委員会のことです。審査が、納税者の権利を守るだけでなく、行政の適正な運営も図る趣旨で、委員会が職権で資料を集められるのだから、申出人が主張していない事由も審査の対象にできる、という判断です。先ほどの理由の1つ目と、同じ発想です。ただ、この判決は、審理員の職権探知を認めた判決ではありません。審理員の事件にも通じる考え方として、理解してください。取消訴訟は、弁論主義が原則で、当事者が主張しない事実は、判決の基礎にしません。行政の中の争訟は、職権探知が認められる点で違います。取消訴訟の職権証拠調べとの違いは、取消訴訟の回で扱います。
今日の地図(保存版)
図:今日の地図と聴聞との比較
- ①主宰者/審理員
- ②処分前/処分後
- ③当事者=名あて人と行政庁/審査請求人と処分庁
- ④弁明=名あて人/弁明書=処分庁
- ⑤文書閲覧=聴聞○・弁明の機会の付与×/審査請求○〔終結まで〕
- 今いる場所=第10章の6本目
最初の4つの問いに戻ります。1つ目、弁明書は処分庁が出します。行手法の弁明は名あて人が出すので、出す人が逆でした。2つ目、審査請求人は、審理員の許可を得て、口頭意見陳述で処分庁に質問できます。3つ目、審査請求人は、審理手続が終結するまで、提出書類等の閲覧か写しの交付を求められ、審理員は正当な理由が無ければ拒めません。4つ目、審理員は、当事者が主張していない事実も職権で調べてよいと解されていますが、調べる義務までは無いとされます。持ち帰るのは5点です。1つ目、弁明書は処分庁が出す。2つ目、反論書は審査請求人、意見書は参加人、審理員意見書は審理員。3つ目、口頭意見陳述は、申立てがあれば機会を与える義務があり、全員を招集して、許可を得て処分庁に質問できる。4つ目、閲覧と写しの交付は、終結までで、正当な理由が無ければ拒めない。5つ目、審理手続を終結し、審理員意見書を審査庁に出す。裁決をするのは審査庁です。最後に、聴聞との比較です。聴聞は、処分の前の手続で、主宰者が進め、名あて人と行政庁が向き合います。弁明の機会の付与で出すのは、名あて人の弁明です。文書閲覧は、聴聞ではできて、弁明の機会の付与ではできません。審査請求は、処分の後の手続で、審理員が進め、審査請求人と処分庁が向き合い、出すのは処分庁の弁明書です。閲覧は審理手続の終結までできます。今いる場所は、第10章の6本目です。審理員は、審査庁の職員でした。審理員意見書を受けた審査庁は、その意見を、そのまま信じてよいのでしょうか。審査庁は、第三者機関に諮問します。
参照条文
- 行政不服審査法29条1項・2項
- 行政不服審査法29条3項・4項
- 行政不服審査法29条5項
- 行政不服審査法30条
- 行政不服審査法37条1項
- 行政不服審査法31条1項
- 行政不服審査法31条2項・3項
- 行政不服審査法31条4項・5項
- 行政不服審査法32条
- 行政不服審査法33条
- 行政不服審査法34条
- 行政不服審査法35条
- 行政不服審査法36条
- 行政不服審査法38条1項
- 行政不服審査法41条1項
- 行政不服審査法42条