行政法ゼロから行政法#134

審査請求の審理①(審査請求書と審理員)

行政法の復習ノートを1ページで通して読む(この回から)→

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第10章 行政不服申立て #134/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

自分の処分を自分で見直して、公正といえるのか

今日の問い(①審査請求は何を出して始まるか・書類に不備があったらどうなるか/②審理員は誰がなり、誰はなれないか/③審理員は裁判官のような第三者なのか/道筋=全体の流れ→標準審理期間→審査請求書→補正と却下→審理員→参加人→審理の構造) 図:今日の問い

  • ①審査請求は何を出して始まるか・書類に不備があったらどうなるか
  • ②審理員は誰がなり、誰はなれないか
  • ③審理員は裁判官のような第三者なのか/道筋=全体の流れ→標準審理期間→審査請求書→補正と却下→審理員→参加人→審理の構造

要件が揃ったら、次は出し方と審理です。前回の最後に予告した、書面の中身と、書類に不備があったときの補正、そして審理員を、今日見ます。設例は同じで、甲県の知事Aに営業停止2か月を命じられた、飲食店の経営者Bです。営業停止の事務は、県の自治事務と仮定します。審査庁が処分をした知事A自身の場合、処分の当事者が自分で見直す形になり、公正さに不安が残ります。この不安に応える仕組みが、審理員です。今日の問いは3つです。1つ目、審査請求は何を出して始まり、書類に不備があったらどうなるのか。2つ目、審理員は誰がなり、誰はなれないのか。3つ目、審理員は、裁判官のような第三者といえるのか。答えの芯を先に言うと、審理員は公正さを高める工夫ですが、組織の外の第三者ではありません。

審査請求の全体の流れ

審査請求の全体の流れ(①審査請求〔審査請求書〕→補正→②審理員による審理〔審理員の指名→弁明書→反論書→口頭意見陳述・証拠→閲覧→終結〕→③審理員意見書→④諮問〔行政不服審査会等〕→⑤答申→⑥裁決/審理員の段階=②③/今日=①と②の入口/審理手続の特色=書面審理・職権進行・口頭意見陳述は申立てがあったときだけ) 図:審査請求の全体の流れ

  • ①審査請求〔審査請求書〕→補正→②審理員による審理〔審理員の指名→弁明書→反論書→口頭意見陳述・証拠→閲覧→終結〕→③審理員意見書→④諮問〔行政不服審査会等〕→⑤答申→⑥裁決
  • 審理員の段階=②③
  • 今日=①と②の入口
  • 審理手続の特色=書面審理・職権進行・口頭意見陳述は申立てがあったときだけ

先に、全体の地図を描きます。審査請求は、まず1つ目、審査請求書の提出で始まります。不備があれば補正があります。2つ目、審理員による審理です。審理員が指名され、処分庁が弁明書を出し、審査請求人が反論書を出す、といった手続が進みます。3つ目、審理員が審理を終えて、審理員意見書を出します。4つ目、審査庁が、行政不服審査会などの第三者機関に諮問します。5つ目、その答申が出ます。6つ目、審査庁が裁決をします。審理員が関わるのは、2つ目と3つ目の段階です。今日は、1つ目と、2つ目の入口、つまり審理員が指名されて審理の形ができるところまで見ます。

審理は、法廷のような口頭のやり取りが中心ではありません。審理手続の特色は、書面審理と、職権進行です。書面を出し合って進め、審理員が主導して進めます。口頭意見陳述は、審査請求人が申し立てたときに開かれるものです。なお、前に見たとおり、再調査の請求には審理員の審理がありません。再審査請求にはあります。

標準審理期間——16条

標準審理期間(16条1項/審査庁となるべき行政庁→審査請求が事務所に到達してから裁決をするまでに通常要すべき標準的な期間を定めるよう努める〔努力義務〕/定めたときは公にする義務〔備付けその他の適当な方法〕/行手法6条=申請が到達→処分/行審法16条=審査請求が到達→裁決/目安であって裁決の義務ではない) 図:標準審理期間

  • 16条1項
  • 審査庁となるべき行政庁→審査請求が事務所に到達してから裁決をするまでに通常要すべき標準的な期間を定めるよう努める〔努力義務〕
  • 定めたときは公にする義務〔備付けその他の適当な方法〕
  • 行手法6条=申請が到達→処分
  • 行審法16条=審査請求が到達→裁決
  • 目安であって裁決の義務ではない

最初は、時間の話です。その前に復習です。行手法の標準処理期間は、定めるのが努力義務でしたか、義務でしたか。定めたら、公にする義務はありましたか?定めるのは努力義務で、定めたら、公にしておく義務がありました。行審法にも、同じ作りの条文があります。16条を読みます。

条文行政不服審査法16条

行政不服審査法 第十六条(標準審理期間) 第四条又は他の法律若しくは条例の規定により審査庁となるべき行政庁(以下「審査庁となるべき行政庁」という。)は、審査請求がその事務所に到達してから当該審査請求に対する裁決をするまでに通常要すべき標準的な期間を定めるよう努めるとともに、これを定めたときは、当該審査庁となるべき行政庁及び関係処分庁(当該審査請求の対象となるべき処分の権限を有する行政庁であって当該審査庁となるべき行政庁以外のものをいう。次条において同じ。)の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければならない。

行手法では、申請が事務所に到達してから処分をするまでの期間でした。行審法では、審査請求が事務所に到達してから裁決をするまでの期間です。どちらも、定めるのは努力義務、定めたら公にするのは義務、という二段構えです。目的は、審理が遅れるのを防ぐことです。標準審理期間を過ぎても、裁決は違法になりません。標準審理期間は目安です。この期間内に裁決をする義務を、審査庁に課すものではありません。たとえば、県が標準審理期間を3か月と定めて公にしていても、Bへの裁決が4か月後に出たというだけで、その裁決が違法にも無効にもなるわけではありません。

審査請求書と処分庁経由——19条・21条

審査請求書(19条/書面が原則〔他の法律・条例に口頭でできる旨の定めがあるときだけ口頭〕/処分の審査請求書の記載事項=①氏名・住所 ②処分の内容 ③処分を知った年月日 ④趣旨及び理由 ⑤処分庁の教示の有無及びその内容 ⑥審査請求の年月日/不作為=①氏名・住所 ②申請の内容及び年月日 ③審査請求の年月日/取下げも書面〔27条〕) 図:審査請求書

  • 19条/書面が原則〔他の法律・条例に口頭でできる旨の定めがあるときだけ口頭〕/処分の審査請求書の記載事項=①氏名・住所
  • ②処分の内容
  • ③処分を知った年月日
  • ④趣旨及び理由
  • ⑤処分庁の教示の有無及びその内容
  • ⑥審査請求の年月日/不作為=①氏名・住所
  • ②申請の内容及び年月日
  • ③審査請求の年月日/取下げも書面〔27条〕

次は、審査請求の出し方です。本編の問いです。審査請求は、口頭でもできるでしょうか。書面が原則です。何の処分を、どんな理由で争うのかを、紙の上で確定させるためです。このあとの審理も、書面を出し合って進みます。19条を読みます。

条文行政不服審査法19条1項

行政不服審査法 第十九条(審査請求書の提出)(1項) 審査請求は、他の法律(条例に基づく処分については、条例)に口頭ですることができる旨の定めがある場合を除き、政令で定めるところにより、審査請求書を提出してしなければならない。

1項のとおり、書面が原則で、口頭でよいのは、他の法律や条例に、口頭でできるという定めがあるときだけです。取下げも書面でする、というのが27条でした。

条文行政不服審査法19条2項

行政不服審査法 第十九条(審査請求書の提出)(2項) 処分についての審査請求書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。  一 審査請求人の氏名又は名称及び住所又は居所  二 審査請求に係る処分の内容  三 審査請求に係る処分(当該処分について再調査の請求についての決定を経たときは、当該決定)があったことを知った年月日  四 審査請求の趣旨及び理由  五 処分庁の教示の有無及びその内容  六 審査請求の年月日

2項の記載事項を、設例のBに当てはめます。氏名と住所。処分の内容は、営業停止2か月の命令です。処分を知った年月日は、命令書を受け取った日です。ここで、前回の期間を思い出してください。この日付があるから、期間内かどうかを、審査庁が確かめられます。趣旨及び理由は、命令を取り消してほしい、なぜなら、という中身です。教示の有無及びその内容は、処分庁が不服申立てができると教えたかどうかです。教示そのものは、別の回で扱います。最後に、審査請求の年月日です。不作為の審査請求書は、3項で、氏名と住所、申請の内容と年月日、審査請求の年月日と、記載事項が少なくなります。法人の代表者や代理人の記載は4項、期間が過ぎたあとに出すなら正当な理由を書く、というのが5項3号です。ここは、4項と5項3号にそういう記載事項がある、と知っていれば足ります。

審査庁が知事A自身だと、Aのところへ持っていくことになります。Bの場合はそうです。ただ、審査庁が処分庁と別の行政庁なら、出し方がもう1つあります。21条です。

条文行政不服審査法21条

行政不服審査法 第二十一条(処分庁等を経由する審査請求) 審査請求をすべき行政庁が処分庁等と異なる場合における審査請求は、処分庁等を経由してすることができる。この場合において、審査請求人は、処分庁等に審査請求書を提出し、又は処分庁等に対し第十九条第二項から第五項までに規定する事項を陳述するものとする。 2 前項の場合には、処分庁等は、直ちに、審査請求書又は審査請求録取書(前条後段の規定により陳述の内容を録取した書面をいう。第二十九条第一項及び第五十五条において同じ。)を審査庁となるべき行政庁に送付しなければならない。 3 第一項の場合における審査請求期間の計算については、処分庁に審査請求書を提出し、又は処分庁に対し当該事項を陳述した時に、処分についての審査請求があったものとみなす。

Bの審査庁は知事A自身ですから、経由の話は出ません。たとえば、県の出先機関の長が処分をして、審査庁が知事の場合なら、出先機関に出してかまいません。出先機関は直ちに知事へ送ります。大事なのは3項です。出先機関に出した時に審査請求があったものとみなします。送る途中で日数がかかっても、期間では不利になりません。

補正と却下——23条・24条

形式審査の流れ(審査請求書→19条に違反する不備〔記載漏れ等〕→23条=審査庁が相当の期間を定めて補正を命じる〔義務〕→補正した→審理員の指名へ/補正しない→24条=審理手続を経ないで裁決で却下/補正できないことが明らかな不適法も同じ〔24条2項〕/却下するなら審理員を指名しない〔9条1項ただし書〕) 図:形式審査の流れ

  • 審査請求書→19条に違反する不備〔記載漏れ等〕→23条=審査庁が相当の期間を定めて補正を命じる〔義務〕→補正した→審理員の指名へ
  • 補正しない→24条=審理手続を経ないで裁決で却下
  • 補正できないことが明らかな不適法も同じ〔24条2項〕
  • 却下するなら審理員を指名しない〔9条1項ただし書〕

では、書類に不備があったらどうなるか。23条と24条です。

条文行政不服審査法23条

行政不服審査法 第二十三条(審査請求書の補正) 審査請求書が第十九条の規定に違反する場合には、審査庁は、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命じなければならない。

条文行政不服審査法24条1項・2項

行政不服審査法 第二十四条(審理手続を経ないでする却下裁決)(1項・2項) 前条の場合において、審査請求人が同条の期間内に不備を補正しないときは、審査庁は、次節に規定する審理手続を経ないで、第四十五条第一項又は第四十九条第一項の規定に基づき、裁決で、当該審査請求を却下することができる。 2 審査請求が不適法であって補正することができないことが明らかなときも、前項と同様とする。

流れはこうです。Bの審査請求書に、処分を知った年月日が書かれていなかったとします。これは19条の違反です。すると審査庁は、相当の期間を定めて、補正を命じなければなりません。23条は義務です。いきなり突き返すことはしません。補正すればそのまま進みます。補正しなければ、審理手続を経ずに、裁決で却下できます。24条1項です。補正できないほど根本的におかしい審査請求でも、補正を待たずに却下する道があります。2項で、不適法で、補正することができないことが明らかなときは、補正を命じずに、審理手続を経ないで却下できます。たとえば、Bが争ったのが営業停止の命令ではなく、改善を求める行政指導だったとします。前回見たとおり、行政指導は審査請求の対象になりません。書類を直しても治らない不備です。却下は、裁決の形でします。短答では、補正を命じるのは審査庁、という点が問われます。審理員ではありません。そしてもう1つ、24条で却下するなら、審理員を指名しません。この理由は、次の審理員の条文で出てきます。要件を欠く門前払いは入口で済み、審理に進むものだけが審理員に渡る、と区別してください。

審理員——9条・17条

審理員の指名(9条1項/審査請求がされた審査庁→審査庁に所属する職員〔名簿があれば名簿記載者〕のうちから審理手続を行う者を指名→審査請求人と処分庁等〔審査庁以外の処分庁等〕に通知/例外〔ただし書〕=行政委員会等が審査庁・条例に特別の定め・24条による却下) 図:審理員の指名

  • 9条1項
  • 審査請求がされた審査庁→審査庁に所属する職員〔名簿があれば名簿記載者〕のうちから審理手続を行う者を指名→審査請求人と処分庁等〔審査庁以外の処分庁等〕に通知
  • 例外〔ただし書〕=行政委員会等が審査庁・条例に特別の定め・24条による却下

ここからが、今日の中心です。審理員を決めるのは9条1項です。

条文行政不服審査法9条1項本文

行政不服審査法 第九条(審理員)(1項・本文) 第四条又は他の法律若しくは条例の規定により審査請求がされた行政庁(第十四条の規定により引継ぎを受けた行政庁を含む。以下「審査庁」という。)は、審査庁に所属する職員(第十七条に規定する名簿を作成した場合にあっては、当該名簿に記載されている者)のうちから第三節に規定する審理手続(この節に規定する手続を含む。)を行う者を指名するとともに、その旨を審査請求人及び処分庁等(審査庁以外の処分庁等に限る。)に通知しなければならない。

指名するのは、審査請求を受けた審査庁です。指名される人は、審査庁に所属する職員です。非常勤の職員でもかまいません。名簿を作っていれば、名簿に載っている人の中から選びます。指名したら、審査請求人と、審査庁と別の処分庁があるときはその処分庁に、通知します。設例では、審査庁は知事Aです。Aは、県の職員のうちから審理員Cを指名し、Bに通知します。だから、なれる人に条件があります。本編の問いです。営業停止の処分をした部署の課長は、この審査請求の審理員になれるでしょうか。2項を読みます。

条文行政不服審査法9条2項

行政不服審査法 第九条(審理員)(2項) 審査庁が前項の規定により指名する者は、次に掲げる者以外の者でなければならない。  一 審査請求に係る処分若しくは当該処分に係る再調査の請求についての決定に関与した者又は審査請求に係る不作為に係る処分に関与し、若しくは関与することとなる者  二 審査請求人  三 審査請求人の配偶者、四親等内の親族又は同居の親族  四 審査請求人の代理人  五 前二号に掲げる者であった者  六 審査請求人の後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人  七 第十三条第一項に規定する利害関係人

審理員になれない者(9条2項/1号=処分・再調査の決定に関与した者〔不作為なら関与し、または関与することとなる者〕←公正の核/2号=審査請求人/3号=配偶者・四親等内の親族・同居の親族/4号=代理人/5号=3号4号であった者/6号=後見人等/7号=利害関係人〔13条1項〕/聴聞の主宰者=担当職員を外す明文なし) 図:審理員になれない者

  • 9条2項
  • 1号=処分・再調査の決定に関与した者〔不作為なら関与し、または関与することとなる者〕←公正の核
  • 2号=審査請求人
  • 3号=配偶者・四親等内の親族・同居の親族
  • 4号=代理人
  • 5号=3号4号であった者
  • 6号=後見人等
  • 7号=利害関係人〔13条1項〕
  • 聴聞の主宰者=担当職員を外す明文なし

答えは、なれません。1号です。処分に関与した者は、審理員になれません。課長が起案や決裁に関わっていたなら外れます。外れるのは、起案、調査、決裁に関わった職員全員です。関わっていない職員、たとえば別の部署の職員や、法務を担当する職員から、審理員Cを選びます。処分に関与していない職員が、審理を進める。前に見たとおりの形です。2号から7号は、審査請求人の側の人間関係です。請求人本人、配偶者や親族、代理人、以前に配偶者や親族、代理人であった人、後見人など、そして利害関係人、つまり、このあと見る参加人になりうる人です。覚える軸は、1号です。これだけで公正の核は押さえられます。

審理員になれない人の決まりに近い規定は、行手法の聴聞の主宰者にもあります。ただ、重要な違いがあります。聴聞の主宰者は、行政庁が指名する職員などで、処分の調査や担当に関わった職員を外す明文はありませんでした。審理員は、1号で関与者を外すと明文で決めています。短答でよく問われる違いです。

名簿・置かない場合(17条=審理員となるべき者の名簿を作成するよう努める〔努力義務〕・作成したら公にする義務/16条と同じ二段構え/審理員を置かない場合=①行政委員会等が審査庁 ②条例に基づく処分で条例に特別の定め ③24条による却下 ④個別法〔情報公開法18条〕) 図:名簿・置かない場合

  • 17条=審理員となるべき者の名簿を作成するよう努める〔努力義務〕・作成したら公にする義務/16条と同じ二段構え/審理員を置かない場合=①行政委員会等が審査庁
  • ②条例に基づく処分で条例に特別の定め
  • ③24条による却下
  • ④個別法〔情報公開法18条〕

名簿は17条です。

条文行政不服審査法17条

行政不服審査法 第十七条(審理員となるべき者の名簿) 審査庁となるべき行政庁は、審理員となるべき者の名簿を作成するよう努めるとともに、これを作成したときは、当該審査庁となるべき行政庁及び関係処分庁の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければならない。

16条と同じ型です。作るのは努力義務で、作ったら公にするのは義務です。

条文行政不服審査法9条1項ただし書

行政不服審査法 第九条(審理員)(1項・ただし書) ただし、次の各号のいずれかに掲げる機関が審査庁である場合若しくは条例に基づく処分について条例に特別の定めがある場合又は第二十四条の規定により当該審査請求を却下する場合は、この限りでない。  一 内閣府設置法第四十九条第一項若しくは第二項又は国家行政組織法第三条第二項に規定する委員会  二 内閣府設置法第三十七条若しくは第五十四条又は国家行政組織法第八条に規定する機関  三 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第百三十八条の四第一項に規定する委員会若しくは委員又は同条第三項に規定する機関

次に、審理員を置かない場合です。9条1項のただし書でした。1つ目、審査庁が、行政委員会などの場合。委員会や審議会などは、もともと識見のある委員が、公正で慎重に判断するために置かれた機関です。その機関自身が審理するので、審理の公正さは仕組みのうえで確保されている、という整理です。2つ目、条例に基づく処分で、条例に特別の定めがある場合。条例の処分は自治体自身の仕組みなので、条例が別の審理の仕方を決めていれば、そちらに任せます。3つ目は、先ほどの24条で、審理手続を経ずに却下する場合です。却下するなら、審理をしないのですから、審理員を置く意味がありません。さらに4つ目として、個別の法律が審理員を排除する場合があります。第9章で見たとおり、情報公開法の審査請求は、審理員を置かず、直接、審査会に諮問する特則です。最初に出てきた再調査の請求は、審理員の審理がありません。再審査請求は、行審法の第2章、つまり審査請求の規定が準用されて、審理員の審理があります。ただし、行政不服審査会などへの諮問はありません。諮問は、審査請求の段階に置かれた仕組みです。

審理員がいれば、知事Aが審査庁でも、公正さは高まります。前回、関与していない職員が審理するから公正を保てる、と言いました。それは、担当した人が自分で見直す形を避けられる、という意味です。ただ、限界も押さえてください。審理員は、審査庁の職員です。同じ知事Aの下の職員です。営業停止の担当課の職員は外れますが、県という同じ組織の中の人です。組織法上は第三者ではありません。裁判官のような職権行使の独立性もありません。審理員意見書が出ても、審査庁を法的には拘束しません。だからこそ、審理員だけに任せず、第三者機関への諮問が別に用意されています。全体像の回で見た、公正性を高める3つの工夫を覚えていますか。審理する人、点検する人、請求人の権利でした。今日の審理員は、その審理する人です。

参加人——13条

参加人(13条1項・2項/利害関係人=審査請求人以外の者で、処分の根拠法令に照らし利害関係を有すると認められる者/審理員の許可を得て参加〔1項〕/審理員が必要と認めるとき参加を求める〔2項〕/設例=Bが隣の店の営業許可を争う→許可を受けた事業者E/行手法17条=主宰者が許可) 図:参加人

  • 13条1項・2項
  • 利害関係人=審査請求人以外の者で、処分の根拠法令に照らし利害関係を有すると認められる者
  • 審理員の許可を得て参加〔1項〕
  • 審理員が必要と認めるとき参加を求める〔2項〕
  • 設例=Bが隣の店の営業許可を争う→許可を受けた事業者E
  • 行手法17条=主宰者が許可

審理員が決まると、次に参加人です。13条を読みます。

条文行政不服審査法13条1項・2項

行政不服審査法 第十三条(参加人)(1項・2項) 利害関係人(審査請求人以外の者であって審査請求に係る処分又は不作為に係る処分の根拠となる法令に照らし当該処分につき利害関係を有するものと認められる者をいう。以下同じ。)は、審理員の許可を得て、当該審査請求に参加することができる。 2 審理員は、必要があると認める場合には、利害関係人に対し、当該審査請求に参加することを求めることができる。

設例を切り替えます。ここだけ、BがEという事業者の営業許可を争う場面にします。許可は知事Aが出したもので、Bは許可の取消しを求めて審査請求をしました。許可を受けたEは、取り消されれば営業ができなくなります。Eは、許可の根拠になった法令に照らして利害関係がありますから、審理員Cの許可を得て参加人になれます。また、Cが必要だと考えれば、Eに参加を求めることもできます。参加人になると、手続に関われます。この制度は、審査請求人と処分庁だけでなく、利害が絡む第三者も含めた利害の調整に役立ちます。行手法の聴聞にも、参加人に当たる制度がありました。行手法では、主宰者が許可しました。行審法は、審理員が許可します。どちらも、処分の根拠法令に照らして利害関係を有する者、という作りです。

審理の構造と審理関係人——28条

審理の構造(審理員C=審理を進める/処分庁等A⇔審査請求人B〔向き合う=対審構造〕/参加人E=利害関係人として加わる〔設例のEは許可を守りたい=利害の向きは処分庁A側〕/審理関係人=審査請求人・参加人・処分庁等/審理関係人と審理員は相互に協力・計画的な進行) 図:審理の構造

  • 審理員C=審理を進める
  • 処分庁等A⇔審査請求人B〔向き合う=対審構造〕
  • 参加人E=利害関係人として加わる〔設例のEは許可を守りたい=利害の向きは処分庁A側〕
  • 審理関係人=審査請求人・参加人・処分庁等
  • 審理関係人と審理員は相互に協力・計画的な進行

最後に、審理の構造です。28条です。

条文行政不服審査法28条

行政不服審査法 第二十八条(審理手続の計画的進行) 審査請求人、参加人及び処分庁等(以下「審理関係人」という。)並びに審理員は、簡易迅速かつ公正な審理の実現のため、審理において、相互に協力するとともに、審理手続の計画的な進行を図らなければならない。

審理関係人とは、審査請求人、参加人、処分庁等です。この審理関係人と審理員は、協力して、計画的に進める義務を負います。図にすると、上に審理員Cがいます。Cの下で、処分庁のAと、審査請求人のBが向き合います。参加人のEは、請求人でも処分庁でもなく、利害関係人として加わる人です。この設例のEは、許可を守りたい立場ですから、利害の向きは処分庁のAと同じ側です。この、処分庁が相手方として向き合う構造が、対審構造です。ただし、先ほど見たとおり、Cは裁判官ほど独立していません。ここで復習です。行手法の聴聞の主宰者は、処分の担当職員を、必ず外さなければならなかったでしょうか?

違います。外す明文は無かったです。では、審理員の審理と聴聞を、表で比べます。

審理員の審理と聴聞の比較(審査請求の審理〔行審法〕=審理員〔審査庁の職員・処分に関与していない者は明文で保証〕が主宰/処分庁と審査請求人が向き合う/処分の後の手続/聴聞〔行手法〕=主宰者〔行政庁が指名する職員など・担当職員を外す明文なし〕が主宰/行政庁と不利益処分の名あて人〔当事者〕/処分の前の手続) 図:審理員の審理と聴聞の比較

  • 審査請求の審理〔行審法〕=審理員〔審査庁の職員・処分に関与していない者は明文で保証〕が主宰
  • 処分庁と審査請求人が向き合う
  • 処分の後の手続
  • 聴聞〔行手法〕=主宰者〔行政庁が指名する職員など・担当職員を外す明文なし〕が主宰
  • 行政庁と不利益処分の名あて人〔当事者〕
  • 処分の前の手続

一番の違いは、時点です。聴聞は処分の前の手続で、審査請求の審理は処分の後の手続です。聴聞では、行政庁と、不利益処分を受けるおそれのある名あて人が向き合い、主宰者は、行政庁が指名する職員などで、担当職員を外す明文はありません。審査請求の審理では、処分庁と、処分に不服のある審査請求人が向き合い、審理員は、関与した者を明文で外した審査庁の職員です。

今日の地図(保存版)

今日の地図(審査請求書〔19条〕→不備は補正〔23条〕→補正しなければ審理を経ず却下〔24条〕/標準審理期間〔16条〕=努力義務+公にする義務・目安/審理員〔9条〕=審査庁の職員・処分に関与していない者・名簿〔17条〕・置かない場合4類型/審理員は第三者ではない→諮問/参加人〔13条〕・審理関係人の協力〔28条〕/今いる場所=第10章の5本目) 図:今日の地図

  • 審査請求書〔19条〕→不備は補正〔23条〕→補正しなければ審理を経ず却下〔24条〕
  • 標準審理期間〔16条〕=努力義務+公にする義務・目安
  • 審理員〔9条〕=審査庁の職員・処分に関与していない者・名簿〔17条〕・置かない場合4類型
  • 審理員は第三者ではない→諮問
  • 参加人〔13条〕・審理関係人の協力〔28条〕
  • 今いる場所=第10章の5本目

最初の問いに戻ります。Bの審査請求は、書面で始まり、不備があれば、審査庁が補正を命じます。補正されなければ、審理を経ずに却下です。進めば、審査庁Aは、処分に関与していない県の職員を、審理員Cに指名します。持ち帰るのは4点です。1つ目、審査請求は書面が原則で、不備は補正を命じ、補正しなければ審理手続を経ずに却下です。2つ目、標準審理期間は、定めるのが努力義務、定めたら公にする義務で、目安にすぎません。3つ目、審理員は審査庁の職員で、処分に関与していない者です。名簿は努力義務、置かない場合は、行政委員会など、条例の特別の定め、24条の却下、個別法です。4つ目、審理員は第三者ではありません。だから審査請求では、諮問があります。審理関係人と審理員は、協力して計画的に審理を進めます。今いる場所は、第10章の5本目です。審理員の下で、処分庁と審査請求人は、何を、どんな順に出し合うのでしょうか。

参照条文

  • 行政不服審査法16条
  • 行政不服審査法19条1項
  • 行政不服審査法19条2項
  • 行政不服審査法21条
  • 行政不服審査法23条
  • 行政不服審査法24条1項・2項
  • 行政不服審査法9条1項本文
  • 行政不服審査法9条2項
  • 行政不服審査法17条
  • 行政不服審査法9条1項ただし書
  • 行政不服審査法13条1項・2項
  • 行政不服審査法28条

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