行政法ゼロから行政法#33

行為形式の地図と行政処分の3つの特徴

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第3章 行為形式の地図と行政基準 ㉝/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

役所の1日、4つの顔

役所の1日(朝=県の知事が喫茶店Bに営業の許可を出す/昼=町役場の課長が窓口の運用ルールを文書にして部下に配る/午後=町が道路の補修を業者と契約する/夕方=町が騒音を出す工場に「音を小さくしてもらえませんか」と頼む/問い=どれも行政の活動。法的には同じか) 図:役所の1日

  • 朝=県の知事が喫茶店Bに営業の許可を出す
  • 昼=町役場の課長が窓口の運用ルールを文書にして部下に配る
  • 午後=町が道路の補修を業者と契約する
  • 夕方=町が騒音を出す工場に「音を小さくしてもらえませんか」と頼む
  • 問い=どれも行政の活動。法的には同じか

ここから、第3章に入ります。行政の行為の形を、地図にして見ていきます。まず、ある町を舞台にした、役所の1日を見てください。朝、県の知事が、喫茶店Bに、営業の許可を出します。昼、町役場の課長が、窓口の運用ルールを文書にして、部下に配ります。午後、町が、道路の補修を、工事の業者と契約します。夕方、町が、騒音を出している工場に、音を小さくしてもらえませんか、とお願いします。役所の仕事という点では同じです。けれど、法的には、まったく違う顔をしています。ここで、1つ問いを置きます。夕方の工場へのお願いを、工場の経営者が、裁判で取り消してほしい、と言い出したら、通るでしょうか。

工場へのお願いが、なぜ裁判の対象にならないのか。その理由を言葉にすることが、今日の中身です。

今日の問い(①行政の活動は、法的にどんな型に分けられるのか/②そのうち「処分」を、ほかの型とどう見分けるのか) 図:今日の問い

  • ①行政の活動は、法的にどんな型に分けられるのか
  • ②そのうち「処分」を、ほかの型とどう見分けるのか

問いは2つです。まず、行政の活動は、法的に、どんな型に分けられるのか。次に、そのうち、処分という型を、ほかの型とどう見分けるのか。持ち帰ってほしいのは、型の地図1枚と、見分けるための3つの物差しです。権利義務に直接関わるか、具体的に決めるか、公権力か、の3つです。

なぜ型で見るのか

行為形式=行政の活動を、法的に特徴のある部分で切り出した型(型が決まると→当てはめるルールと→争い方が決まる/たとえ=医者は「風邪・骨折・糖尿病」と型に分けて診る)

最初に、なぜ型で見るのかです。行政の活動は、実に多様です。許可を出す日もあれば、計画を立てる日も、契約を結ぶ日もあります。毎日、形を変えます。その全部を、ひとまとめにして、法で縛ったり、裁判で争ったりすることはできません。そこで、行政の活動のうち、法的に見て特徴のある部分を切り出して、型にします。この型を、行為形式と呼びます。医者にたとえます。患者さんの訴えは、人の数だけあります。けれど医者は、風邪、骨折、糖尿病と型に分けて診ます。型が決まれば、どの検査をして、どの薬を使うかが決まるからです。行為形式も同じです。型が決まれば、どの法的なルールを当てはめるか、どう争うかが決まります。

法律による行政は、行政は法律に従わなければならない、という大きな原則でした。ただ、大きな原則のままだと、目の前の具体的な活動に当てはめられません。型に分けると、この活動には、この形で法律の縛りがかかる、と言えるようになります。行為形式は、原則を具体的な活動に当てはめるための道具です。ここは覚えてください。行為形式とは、行政の活動を、法的に特徴のある部分で切り出した型です。

5つの型と、型の外側

行為形式の地図(行政処分=個別の相手の権利義務を一方的に決める〔許可・免許・認可・取消し〕/行政基準=一般的なルール〔外向け=政令・省令/内向け=通達〕/行政計画=将来の目標と手段をまとめた方針〔道路をどこに通すか〕/行政契約=私人と合意で結ぶ契約〔道路補修の請負〕/行政指導=任意の協力を求める働きかけ/型の外側=内部行為〔役所の内側だけのやりとり〕) 図:行為形式の地図

  • 行政処分=個別の相手の権利義務を一方的に決める〔許可・免許・認可・取消し〕
  • 行政基準=一般的なルール〔外向け=政令・省令/内向け=通達〕
  • 行政計画=将来の目標と手段をまとめた方針〔道路をどこに通すか〕
  • 行政契約=私人と合意で結ぶ契約〔道路補修の請負〕
  • 行政指導=任意の協力を求める働きかけ
  • 型の外側=内部行為〔役所の内側だけのやりとり〕

型は5つです。板に、地図にしました。1つずつ、一言で言います。1つ目は、行政処分です。行政が、個別の相手の権利や義務を、一方的に決める行為です。第1章で、処分と呼びました。営業の許可、運転免許の取消しや停止、運賃の上限の認可、どれもこの型です。第1章で、学問の言葉では行政行為と呼ぶ、と名前だけ出しました。2つはほぼ重なります。条文と判例が使う言葉は、処分のほうです。重なりきらない部分は、後の回で整理します。今日は、同じものを指している、と思っておいてください。2つ目は、行政基準です。行政機関が定める、一般的なルールです。国民に向けたものは、政令や省令です。役所の内側に向けたものには、通達があります。鉄道事業法の回で、省令に委ねられた手続を見ました。3つ目は、行政計画です。行政が、将来の目標と、そこへ行く手段をまとめた方針です。たとえば、町が、道路をどこに通すかを決める計画です。4つ目は、行政契約です。行政が、私人と、合意で結ぶ契約です。午後の、道路補修の請負がそうです。5つ目は、行政指導です。相手に、任意の協力を求める働きかけです。夕方の、音を小さくしてもらえませんか、がそうです。第1章で、役所が喫茶店の看板の照明を夜に消させたい、という場面で、名前が出ました。消すよう命じるのか、消してもらえませんか、とお願いするのか、の違いも見ました。

昼の運用ルールは、5つの型のどれでもありません。型の外側です。役所の組織の内側だけで行われるやりとりを、内部行為と呼びます。上級の機関から下級の機関への通達や、上司が部下に仕事のやり方を命じる職務命令が、その代表です。課長が部下に配った運用ルールは、これです。通達は、内側に向けたルールなので、行政基準の一種でもあり、同時に内部行為の代表でもあります。二重の顔を持つ、と覚えてください。通達が法的な力を持たない、という話は、前に見ました。中身は後の回で扱います。もう1つ大事な注意です。どの型かは、名前ではなく、中身で決まります。看板の照明の場面を思い出してください。あのときは、法律の根拠が要るかを分けるために、従う義務を負わせているのか、応じるかどうかを決める自由が相手に残っているのか、を見ました。型を見分けるときも、この見方が効きます。名前がお願いでも、個別の相手に従う義務を負わせる中身なら、型は処分です。逆に、命令のように見える文書でも、役所の内側にしか向いていなければ、内部行為です。5つの型の中身は、それぞれ、後の回で掘り下げます。今日は、その入口の地図です。その中でも、処分は、特に大事な型です。裁判で争う入口になるからです。次の節から、処分の見分け方に入ります。

処分の定式と、その事案

処分の定式を3つに割る(「公権力の主体たる国または公共団体が行う行為」=③公権力性の入口/「直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定する」=①権利義務との関わり・②具体性/「法律上認められているもの」=③公権力性の核心/第1章の一言との対応:法律にもとづく→「法律上」/国民の権利義務→①/一方的→③/具体的→②) 図:処分の定式を3つに割る

  • 「公権力の主体たる国または公共団体が行う行為」=③公権力性の入口
  • 「直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定する」=①権利義務との関わり・②具体性
  • 「法律上認められているもの」=③公権力性の核心
  • 第1章の一言との対応:法律にもとづく→「法律上」
  • 国民の権利義務→①
  • 一方的→③
  • 具体的→②

第1章で、処分を、こう説明しました。行政が、法律にもとづいて、国民の権利や義務を、一方的に、具体的に決める行為。許可や営業停止命令もそうだ、と言いました。この説明を、最高裁の言葉で、正確に言い直します。これが、処分の定式です。

判例最判昭39・10・29 民集18巻8号1809頁

処分の定式 公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によつて、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているもの

読み方です。この、公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、直接国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定することが、法律上認められているもの。これを、処分と呼びます。暗記してください。論文でも、使い続ける言葉です。板のとおり、3つに割れます。まず、直接国民の権利義務を形成し、または範囲を確定する、の部分です。国民の権利や義務に、直接関わること。これが1つ目の物差しです。形成する、というのは、権利や義務を新しく生み出すことです。範囲を確定する、というのは、権利や義務がどこまで及ぶかを、はっきり決めることです。税務署長が、Bの今年の税額はいくらだ、と決めるのが、その例です。どちらも、誰の、どの権利義務かが決まって、初めてできます。誰にでも当てはまる形で定めるだけでは、まだ誰の権利も、生まれも、決まりもしません。ですから、この部分は、個別の人の権利義務を決めることを求めています。これが2つ目の物差しの、具体性です。3つ目は、公権力の主体たる、と、法律上認められている、の部分です。法律が、行政に、相手の同意が無くても決めてよい、と認めている。だから、行政は一方的に決められます。これが、公権力の面です。第1章の説明にあった、一方的に、がここに当たります。

法律上認められているもの、の部分です。処分は、法律がそうする力を認めているから処分なのです。ここが一番の核心で、あとで掘り下げます。なお、ここで言う法律は、条例も含めて読むのが一般的な整理です。この定式が出てきた事件を、一言で見ます。事案は、東京都が、ごみ焼却場を設置したというものです。近くの住民が、その設置行為は無効だ、として、処分の無効確認、つまり、その行為は初めから効力が無い、と確かめてもらう訴えを起こしました。最高裁は、この設置行為を、処分には当たらない、としました。

焼却場の事案(A=東京都/C=近くの住民/A→土地=私人から買って都の土地にした/A→焼却場=私人と対等の立場で結んだ私法上の契約で設置/都議会に計画案を出した行為=都の内部的な手続/結論=処分に当たらない) 図:焼却場の事案

  • A=東京都
  • C=近くの住民
  • A→土地=私人から買って都の土地にした
  • A→焼却場=私人と対等の立場で結んだ私法上の契約で設置
  • 都議会に計画案を出した行為=都の内部的な手続
  • 結論=処分に当たらない

迷惑かどうかは、処分かどうかを決めません。判決が見たのは、焼却場がどういう形で作られたかです。判決は、この焼却場が、都が私人から買った都の土地の上に、私人と対等の立場で結んだ、私法上の契約、つまり私人どうしが結ぶのと同じ、ふつうの契約で設置されたものだと見ました。都議会に計画案を出した行為も、都の内部の手続にとどまる、と見ました。だから、都が公権力を使って、住民の権利義務を直接決めた場合には当たらない、としたのです。ここで、先の3つが、すでに顔を出しています。契約で作ったから、公権力ではありません。内部の手続だから、国民の権利義務に直接関わりません。第2章の、新幹線の工事の計画の認可を、覚えていますか。大臣が公団に出した認可は、監督の手段で、内部の行為だから、直接国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定するものではない、とされました。あの判決の言葉は、この定式の後半です。この事案には、あとで戻ります。なお、この判決は、当時の法律の、行政庁の処分という言葉について判断したものです。今の行政事件訴訟法3条2項にも、行政庁の処分という言葉が、そのまま受け継がれています。ですから、条文の処分に当たるかどうかは、この定式で判断します。

物差し1 国民の権利義務に直接関わるか

物差し①=国民の権利義務に直接関わるか(関わらない=行政指導〔応じるかは相手が決める〕・内部行為〔通達・職務命令〕/関わる=許可・免許・一部の認可〔受けずにやると禁止+罰則〕・給付の決定〔決定で初めて受ける権利が生じる〕)

1つ目の物差しです。国民の権利義務に、直接関わるか。権利義務を生じさせない行為は、処分ではありません。例を2つ出します。まず、行政指導です。夕方の、音を小さくしてもらえませんか、というお願いは、相手に法的な義務を課していません。応じるかどうかは、相手が決めます。応じなくても、法的には何も起きません。どうしても従わせたいなら、命じてよい、と定める法律が要ります。命令と指導は、別の型です。次に、内部行為です。課長が部下に配った運用ルールは、役所の組織の内側のものです。部下には守る義務が生じるかもしれませんが、それは組織の内側の話です。窓口に来る国民に、直接、義務が生じるわけではありません。

通達は、下級の機関を縛ります。けれど、国民との間の権利義務を、直接形づくるわけではありません。通達が法的な力を持たない、と前に見たのは、この意味です。反対側も見ます。許可や免許は、受けずにやると、法的に禁止されていて、違反には罰則があります。法律によっては、一部の認可も同じです。喫茶店Bが、許可を受けずに営業すれば、罰則の対象です。運転免許を受けずに運転するのも、同じです。許可や免許があるかないかで、Bの法的な立場が変わります。つまり、権利義務を直接形づくっています。給付の決定は、決定によって初めて、お金などを受ける権利が生じます。これも、権利を形づくっています。注意点は、直接、という言葉です。その行為によって、初めて法的な地位が変わるか、と読んでください。たとえば、応じなければ後で命令する、と匂わせる指導があります。指導の段階では、法的な地位は変わっていません。変わるのは、命令が出た段階です。この指導は、指導の段階では、処分ではないことが多いのです。細かいところは、後の回に回します。ここで1問です。課長が部下に出した、窓口の運用ルールの文書。国民に義務は生じますか?

直接は生じないと思います。役所の内側の話なので、内部行為です。1つ目の物差しで、指導と内部行為が落ちました。

物差し2 具体的に決めるか、なぜ行政の決定を挟むのか

2段構え(1段目=法令:誰にでも当てはまる形で定める〔一般的・抽象的〕→2段目=行政の決定:A〔知事〕がB〔喫茶店〕の店について審査して決める〔具体的〕/その決定に不服があれば裁判所へ/具体性=決定の及ぶ人または対象の事実が特定されていること) 図:2段構え

  • 1段目=法令:誰にでも当てはまる形で定める〔一般的・抽象的〕→2段目=行政の決定:A〔知事〕がB〔喫茶店〕の店について審査して決める〔具体的〕
  • その決定に不服があれば裁判所へ
  • 具体性=決定の及ぶ人または対象の事実が特定されていること

2つ目の物差しです。具体的に決めるか。ここが、今日の中心です。そして、なぜ、という問いにも答えます。食品衛生法は、営業の許可について、営業しようとする者は知事の許可を受けなければならない、という形で定めています。誰にでも当てはまる形です。一般的で、抽象的、と言います。法律に書いてあるだけでは、Bは営業できません。そこが落とし穴です。法律は、営業の許可を受けた者は営業できる、と言っているにすぎません。喫茶店Bの店が、衛生の基準に合っているかは、法律を読んでもわかりません。知事が、Bの店について審査して、許可を出して、初めてBに、営業できる具体的な権利が生まれます。運転免許も同じです。免許の仕組みは、一律の禁止のあとに、個別の解除がありました。法令は、誰も免許なしに運転してはならない、と一律に禁止します。そのうえで、試験に合格した個々の人について、行政がその禁止を解きます。整理します。法令は、誰にでも当てはまる形で定めます。そこに、行政の決定が入ります。誰の、どの事実について、が特定されます。この、決定の及ぶ人や対象の事実が特定されていることを、具体性と呼びます。

法令が最初から一律に認めてしまわず、行政の決定を挟む理由は2つあります。1つ目。法令だけでは、あらゆる個別の事情を、具体的に書き切れません。Bの店の厨房の広さや、衛生設備が基準に合っているか。町中の全部の店について、あらかじめ法律に書くことは、できません。誰かが、個別に当てはめて確かめる必要があります。2つ目。では、権利義務が決まるたびに、裁判所へ行かないと決まらない仕組みにしたら、どうでしょう。開業するたびに裁判をして、判決を待つことになります。これも、不便です。だから、こう決めました。まず、行政が、法令を個別の事情に当てはめて、具体的に決める。その決定に不服がある人は、裁判所で争える。法令で一般的に定め、行政の決定で具体的にする、この2段構えにしておけば、書き切れない問題も、毎回裁判所へ行く不便も、避けられます。大学の入学で言い換えます。入学の条件は、一般的に定められています。けれど、合格通知を受け取って初めて、あなたに入学できる具体的な権利が生じます。条件を知っただけでは、入れません。この、合格通知にあたる部分、行政の決定を捕まえて、型にしたのが、処分です。第1章で見た3段の順路の中で、訴訟要件の1つが、この、処分に当たるかどうかでした。その見分けの入口が、今日の3つの物差しです。ただ、本格的な当てはめは、後の回で扱います。ここで、行政基準との違いも押さえます。政令や省令は、一般的なルールです。誰にでも当てはまる形のままで、特定の人に向けたものではありません。具体的に決める処分とは、ここで分かれます。

物差し3 公権力は力の大きさではない

契約と処分の違い(契約=AとBが合意で権利義務を生む〔道路補修の請負:合意が要る〕/処分=Aが法令に照らして一方的に決める〔許可:申請はきっかけにすぎない〕) 図:契約と処分の違い

  • 契約=AとBが合意で権利義務を生む〔道路補修の請負:合意が要る〕
  • 処分=Aが法令に照らして一方的に決める〔許可:申請はきっかけにすぎない〕

3つ目に入る前に、1つ復習です。免許の取消しは、行政が、相手の同意なしに、権利を失わせる処分でした。この、同意なしに、一方的に決める力を、前に何と呼びましたか?公権力の行使です。3つ目の物差しは、これと同じ言葉を使います。公権力性です。まず、契約です。町が、道路の補修を、業者に請け負わせる契約を結びました。この契約も、町と業者の権利義務を、直接形づくります。業者は工事をする義務を負い、町は代金を払う義務を負います。1つ目の物差しは、満たしています。処分ではありません。権利義務が、合意で生まれているからです。町が一方的に決めたのではなく、業者も同意しています。業者が同意しなければ、契約は成立しません。さきほどの、焼却場の事案も、これでした。

判例最判昭39・10・29 民集18巻8号1809頁

焼却場は契約で設置された 本件ごみ焼却場は、被上告人都がさきに私人から買収した都所有の土地の上に、私人との間に対等の立場に立つて締結した私法上の契約により設置されたものである

読み方です。被上告人というのは、この裁判の相手方の当事者で、東京都のことです。都は、私人から土地を買い、私人との間に対等の立場に立って、私法上の契約で焼却場を設置しました。対等の立場、というところが、判断の材料です。都が上から一方的に決めたのではなく、相手と合意で作ったのです。判決は、下の裁判所が認めた事実を、そのまま受けています。一方、処分は、行政の一方的な判断で決まります。喫茶店Bが申請した場合を考えます。申請は、きっかけにすぎません。許可を出すか、どんな内容にするかは、行政が、法令に照らして決めます。Bと条件を交渉して、折り合いをつけるのではありません。Bが申請したことで、知事が許可に合意したことにはなりません。申請があっても、決めるのは行政の一方的な判断です。ここが、契約との違いです。次に、公権力という言葉の意味です。公権力と聞くと、政治的な力の強さや、動かすお金の大きさを想像する人が多いと思います。

公権力は大きさで決まらない——比較(10億円の道路工事=契約→処分ではない/喫茶店Bの営業許可=手数料もわずかな手続→処分/決め手=法律が行政に一方的に決める権限を与えているか) 図:公権力は大きさで決まらない——比較

  • 10億円の道路工事=契約→処分ではない
  • 喫茶店Bの営業許可=手数料もわずかな手続→処分
  • 決め手=法律が行政に一方的に決める権限を与えているか

違います。公権力とは、法律が、行政に、相手の同意が無くても一方的に決めてよい権限を与え、その決定に相手を従わせる仕組みを定めているか、の問題です。食品衛生法は、許可を受けなければ営業してはならない、許可するかどうかは知事が決める、と定めています。Bが納得しなくても、知事の決定で、Bが営業できるかどうかが決まります。法律がこういう仕組みを定めている行為が、処分です。定式の、法律上認められている、は、この意味でした。比べてみます。町が、10億円を動かす道路工事を、業者と契約しました。金額は巨大です。けれど、契約なので、処分ではありません。反対に、喫茶店Bの営業許可は、手数料もわずかな、小さな手続です。けれど、許可するかどうかを知事が一方的に決める、と法律が定めているので、処分です。大きさでは決まりません。ここで1問です。町が、市民会館を建てるために、何十億円もかけて、地主と話し合って土地を買い取りました。これは、公権力ですか?

金額は大きくても、話し合いで買う契約なので、公権力ではありません。法律が、一方的に決める権限を与えているかで決まります。そして、処分が、形式と呼ばれる理由も、ここにあります。行為の中身の大きさではなく、法律が一方的に決める形式を定めているかで、処分かどうかが決まるからです。形式の名前のとおりです。補足を1つ。一方的、優越的という言葉で、処分と契約を本当にきれいに分けられるのか、近年は疑問も出ています。とくに、補助金のように、行政がお金を渡す決定の場面で、はっきりしなくなります。次の節で見ます。

区別の実益、つまずき、まとめ

型で争い方が変わる(処分=抗告訴訟〔行政庁の公権力の行使に関する不服の訴え〕で争う/処分でない=別の道/行政事件訴訟法3条1項/役所の1日=工場へのお願い〔行政指導〕→処分ではない→取り消しを求める訴えの対象にならない) 図:型で争い方が変わる

  • 処分=抗告訴訟〔行政庁の公権力の行使に関する不服の訴え〕で争う
  • 処分でない=別の道
  • 行政事件訴訟法3条1項
  • 役所の1日=工場へのお願い〔行政指導〕→処分ではない→取り消しを求める訴えの対象にならない

最後に、型を見分ける実益です。処分なら、争い方が決まります。処分に当たる行為は、抗告訴訟で争います。抗告訴訟とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴えのことです。行政事件訴訟法3条1項が、そう定めています。代表は、処分を取り消してほしい、と求める取消訴訟です。中身は、後の章で見ます。処分でなければ、別の道になります。冒頭の問いに戻ります。工場へのお願いを、裁判で取り消してほしい、と言えるか。お願いは、行政指導です。応じるかどうかは、相手が決めます。権利義務に直接関わらないので、処分ではありません。だから、処分を取り消してほしい、という形の訴えの対象には、なりません。争い方は、別の道を探すことになり、これも後の回で見ます。

つまずきどころ(給付の決定〔補助金の交付決定が微妙/生活保護の決定は処分として確立〕=国民に具体的な権利が生じる→処分に近い/お金を渡す贈与に近い面も→契約か?/処分か契約かが微妙→「公権力」とは何かも微妙/答えは後の回) 図:つまずきどころ

  • 給付の決定〔補助金の交付決定が微妙/生活保護の決定は処分として確立〕=国民に具体的な権利が生じる→処分に近い
  • お金を渡す贈与に近い面も→契約か?
  • 処分か契約かが微妙→「公権力」とは何かも微妙
  • 答えは後の回

きれいに分かれない場面が、1つあります。給付の決定です。生活保護の決定は、処分として扱うことで、固まっています。微妙なのは、補助金の交付決定です。決定によって、国民に具体的な権利が生じます。1つ目、2つ目の物差しは、満たしています。ところが、お金を渡すという面では、贈与のような契約に近いようにも見えます。処分なのか、契約なのか。そうなると、公権力とは何かも、微妙になります。ここは、問題の所在を知っておくところまでです。答えは、後の回で扱います。

今日の地図(保存版)(行為形式=活動を法的に特徴のある部分で切り出した型/5つの型+内部行為/処分の定式=公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているもの/物差し①権利義務に直接関わるか→指導・内部行為と違う/物差し②具体的に決めるか→法令・行政基準と違う/物差し③公権力=法律が行政に一方的に決める権限を与えているか→契約と違う) 図:今日の地図

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  • (行為形式=活動を法的に特徴のある部分で切り出した型/5つの型+内部行為/処分の定式=公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているもの/物差し①権利義務に直接関わるか→指導・内部行為と違う/物差し②具体的に決めるか→法令・行政基準と違う/物差し③公権力=法律が行政に一方的に決める権限を与えているか→契約と違う)

問いの答えです。1つ目。行政の活動は、行政処分、行政基準、行政計画、行政契約、行政指導の5つの型に分けて見ます。それに加えて、型の外側に、役所の内側だけの、内部行為があります。型は、名前ではなく、中身で決まります。2つ目。処分は、定式で見分けます。公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、直接国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定することが、法律上認められているもの。これを3つの物差しに割ります。1つ目。国民の権利義務に、直接関わるか。関わらない指導や内部行為は、処分ではありません。2つ目。具体的に決めるか。法令や行政基準は、誰にでも当てはまる形で、行政の決定が個別の人に当てはめて、初めて具体的になります。書き切れないこと、そして毎回裁判所へ行く不便さがあるから、行政の決定が挟まります。3つ目。公権力か。合意でなく一方的に決めるもので、力の大きさではなく、法律が行政に一方的に決める権限を与えているかです。

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