行政法ゼロから行政法#32

法律と条例がぶつかるとき

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第2章 行政組織法 ㉜/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

空き家条例は国の法律に負けるか

みなと町の問い(A=町の空き家条例/B=国の空き家の法律/C=空き家の持ち主/A→C=町は修理を命じる/B→C=国の法律も措置を定める/問い=町のほうが厳しい部分があるとき、どちらが勝つ?) 図:みなと町の問い

  • A=町の空き家条例
  • B=国の空き家の法律
  • C=空き家の持ち主
  • A→C=町は修理を命じる
  • B→C=国の法律も措置を定める
  • 問い=町のほうが厳しい部分があるとき、どちらが勝つ?

条例の続きです。まず、前の回の確認から入ります。条例が守らなければならない枠の1つは、何でしたか?法令に違反しない限り、という枠です。今日は、その枠の中身を掘り下げます。板は、前の回と同じ、海沿いのみなと町です。みなと町は、屋根が落ちかけた空き家の持ち主に、修理を命じる条例を作りました。ところが、空き家については、国にも法律があります。そして、町の条例のほうが、国の法律より厳しいところがあるとします。国の法令と町の条例が食い違うとき、どちらが優先するのか。それが今日の問いです。町の条例は、国の法律に負けて、無効になるのでしょうか。

今日の問い(①条例が国の法令に違反するとは、何と何を比べて決めるのか/②同じ物差しで、条例が勝つ場合と負ける場合はどう分かれるのか) 図:今日の問い

  • ①条例が国の法令に違反するとは、何と何を比べて決めるのか
  • ②同じ物差しで、条例が勝つ場合と負ける場合はどう分かれるのか

問いは2つです。1つ目。条例が国の法令に違反するとは、何と何を比べて決めるのか。そして2つ目。同じ物差しで、条例が残る場合と負ける場合は、どう分かれるのか。持ち帰ってほしいのは、条文の番号ではなく、物差しの使い方です。

ぶつかるとは何か

法律と命令・法律と条例の関係(命令=法律の委任の範囲内で作る→上下/条例=委任なしに作れる自主法→役割分担/それでも条例は法令に違反しない限り〔憲法94条・自治法14条1項〕=役割分担がぶつかったときの調整の原理) 図:法律と命令・法律と条例の関係

  • 命令=法律の委任の範囲内で作る→上下
  • 条例=委任なしに作れる自主法→役割分担
  • それでも条例は法令に違反しない限り〔憲法94条・自治法14条1項〕=役割分担がぶつかったときの調整の原理

まず、そもそも何がぶつかるのかです。国の命令、たとえば政令は、法律の委任がなければ、国民に義務を課せません。法律の下にいて、委任の範囲の中で作るものです。ここは、法律と命令の上下の関係でした。条例は違います。前の回で見たとおり、条例は委任なしに作れる自主法です。憲法94条が、法律の例外として、地方に自分で決める力を認めているからです。ですから、条例は、命令のように、法律の委任を受けて、その範囲の中で作る、という意味での上下の関係にはありません。作るのに、法律の許しは要らないのです。ただし、作った条例の中身が法律とぶつかったときは、法律が勝ちます。憲法の回で、条例は法律の下に位置づけられる、と言ったのは、この、ぶつかったときの順位のことでした。

委任が要らなくても法律が勝つのは、憲法自身が、そう順位を決めているからです。94条は、条例を、法律の範囲内で作れる、と定めました。国全体の法の秩序を、1つに保つためです。前の回で見た、法律の優位の地方版が、14条1項の、法令に違反しない限り、です。ですから、法令が勝つのは、命令のように、法律から作る力をもらっているからではありません。憲法が決めた役割分担の中での、ぶつかったときの順位だからです。そして、国の法令と地方の条例は、同じ場面に同時に出てくることがあります。どこからが、ぶつかったことになるのか。それを決めるのが、この94条と14条1項です。問題は、何が違反なのかです。ここで、かつての考え方を1つ見ます。法令先占論です。法令先占論は、国の法令がすでに規制している事項には、条例を作れない、という考え方です。国が先に占めた領域だから、地方は入れない、とみるわけです。

法令先占論とその難点(考え方=国の法令が規制している事項には条例を作れない/難点=法令は自治事務にも幅広く及ぶ→条例の余地がほとんど残らない/例=国の基準が全国の平均に合わせた緩い線→海沿いのみなと町の事情に合わせた規制を足せない) 図:法令先占論とその難点

  • 考え方=国の法令が規制している事項には条例を作れない
  • 難点=法令は自治事務にも幅広く及ぶ→条例の余地がほとんど残らない
  • 例=国の基準が全国の平均に合わせた緩い線→海沿いのみなと町の事情に合わせた規制を足せない

困る場面を、みなと町で考えます。国の法律が、全国の平均に合わせて、緩めの基準を定めているとします。海沿いのみなと町は、浜辺の事情から、もっと厳しい基準が欲しい。ところが先占論だと、国が基準を定めた分野には、町は一切、手を出せません。今は、法令が自治事務にまで幅広く及んでいます。先占論をとると、地域の実情に応じた条例を作れる領域が、ほとんど残りません。そこで最高裁は、先占論をとりませんでした。文言が重なっているかではなく、国の法令の趣旨を見て決める。この考え方に進みました。次の節で、その物差しを手元に出します。

物差しと3つの型

判断フロー(憲法の回の想起:国の法令に明文の規定がある?→〔無い〕放置する趣旨か→違反/→〔ある〕目的は同じか→〔別目的〕目的・効果を阻害しなければ違反しない/→〔同じ目的〕全国一律の趣旨でなく、各地の事情に合わせて国と別の規制を置くことを認める趣旨なら違反しない/最大判昭50・9・10) 図:判断フロー

  • 憲法の回の想起:国の法令に明文の規定がある?→〔無い〕放置する趣旨か→違反
  • →〔ある〕目的は同じか→〔別目的〕目的・効果を阻害しなければ違反しない
  • →〔同じ目的〕全国一律の趣旨でなく、各地の事情に合わせて国と別の規制を置くことを認める趣旨なら違反しない
  • 最大判昭50・9・10

物差しは、憲法の回で、もう手に入れています。徳島市公安条例事件の一般論です。板に、その流れを1枚にしました。ここで、憲法の回を思い出してください。条例が国の法令に違反するかは、何と何を比べて決めるのでしたか?対象事項と文言を見比べるだけではなく、趣旨、目的、内容、効果を比べて、矛盾抵触があるかで決める、でした。矛盾抵触とは、2つの決まりが、両方は生かせない形でぶつかることです。板の流れの順に、確かめます。国の法令に明文の規定がありますか。ないなら、国が放置する趣旨でしょうか。放置する趣旨とは、国があえて何も規制しないと決めた、という意味です。あるなら、目的は同じでしょうか。別の目的なら、国の法令の目的や効果を妨げないかを見ます。同じ目的なら、国の法令が全国一律の趣旨か、各地の事情に合わせて、国と別の規制を置くことを認める趣旨かを見ます。ちなみに、憲法の回では、同じ事件を、条例の文言が明確かという面から見ました。今日は、国の法令との関係の面から見ます。この流れを、整理して使うために、3つの型に分けます。ただし、これは学説の整理で、判決自身の分類ではありません。

3つの型と確かめる点(別目的の条例=条例の適用が国の法令の目的と効果を阻害しないか/横出し条例=国の法令が対象外の事項への規制の横出しを許容する趣旨か/上乗せ条例=国の法令が地方による上乗せを容認する趣旨か〔全国一律の趣旨でないか〕/例:大気汚染防止法4条1項=都道府県が、国の基準では足りない区域について、条例でより厳しい排出基準を定められる) 図:3つの型と確かめる点

  • 別目的の条例=条例の適用が国の法令の目的と効果を阻害しないか
  • 横出し条例=国の法令が対象外の事項への規制の横出しを許容する趣旨か
  • 上乗せ条例=国の法令が地方による上乗せを容認する趣旨か〔全国一律の趣旨でないか〕
  • 例:大気汚染防止法4条1項=都道府県が、国の基準では足りない区域について、条例でより厳しい排出基準を定められる

別目的の条例、横出し条例、上乗せ条例です。上乗せと横出しは、憲法の回で見た言葉です。みなと町で言えば、国の法律と同じ空き家を、より厳しく扱うのが上乗せ条例。国の法律が対象にしていない空き家にまで広げるのが横出し条例。浜辺の花火のように、国の法律とは違う目的で規制するのが別目的の条例です。行政法で大事なのは、型ごとに確かめる点が違うことです。別目的の条例では、条例の適用が、国の法令の目的と効果を阻害しないかを見ます。横出し条例では、国の法令が、対象外の事項に規制を広げる横出しを許す趣旨かを見ます。上乗せ条例では、国の法令が、地方による上乗せを認める趣旨か、つまり全国一律の趣旨ではないかを見ます。

一番わかりやすいのは、法律が自分で書いている場合です。行政法の最初のほうで、建物の柱を例に、法令の段を降りたとき、地方が条例で上乗せして定める場合もある、と触れました。その代表例です。

条文建築基準法40条

建築基準法第40条 地方公共団体は、その地方の気候若しくは風土の特殊性又は特殊建築物の用途若しくは規模に因り、この章の規定又はこれに基く命令の規定のみによつては建築物の安全、防火又は衛生の目的を充分に達し難いと認める場合においては、条例で、建築物の敷地、構造又は建築設備に関して安全上、防火上又は衛生上必要な制限を附加することができる。

骨格は、法律の規定だけでは安全などの目的を十分に達し難いと認める場合は、地方公共団体が条例で必要な制限を付け加えられる、です。法律が、上乗せしてよいと明文で言っています。この場合、上乗せは、国の法令の趣旨に沿うので、違反しません。板の下の1行にも、同じ型の例を置きました。大気汚染防止法では、都道府県が、国の排出基準では足りない区域について、条例でより厳しい基準を定められます。40条と同じく、法律自身が、条例で厳しくしてよい、と書いている例です。難しいのは、明文が無いときです。そのとき、趣旨を、法律全体の仕組みから読み取ります。これからの3つの事件は、その練習です。

徳島市公安条例と道路交通法

事案の図(A=徳島市の条例〔地方公共の安寧と秩序の維持〕/B=道路交通法〔道路交通秩序の維持〕/C=道路での集団行進/D=公安委員会/A→C=届出制・守るべき事項・違反に罰則/B→C=許可制〔公安委員会が定めた行為だけ〕/B→D=どの行為を許可制にするかを任せる/問い=同じ場面を2つの法が規制する) 図:事案の図

  • A=徳島市の条例〔地方公共の安寧と秩序の維持〕
  • B=道路交通法〔道路交通秩序の維持〕
  • C=道路での集団行進
  • D=公安委員会
  • A→C=届出制・守るべき事項・違反に罰則
  • B→C=許可制〔公安委員会が定めた行為だけ〕
  • B→D=どの行為を許可制にするかを任せる
  • 問い=同じ場面を2つの法が規制する

当てはめの1つ目は、徳島市公安条例事件です。物差しを作った事件そのものを、国の法律との関係で見ます。事案です。徳島市の条例は、道路での集団行進を届出制にして、守るべき事項を定め、違反に罰則を置いていました。一方、同じ道路での行為には、道路交通法の、道路使用の許可の制度もあります。同じ場面を、2つの法がともに規制している。条例は、道路交通法に違反しないか、が問題になりました。判決は、2段で比べます。1つ目は目的、2つ目は国の法律の趣旨です。まず、目的です。

判例最大判昭50・9・10 刑集29巻8号489頁

目的を比べる このように、道路交通法は道路交通秩序の維持を目的とするのに対し、本条例は道路交通秩序の維持にとどまらず、地方公共の安寧と秩序の維持という、より広はん、かつ、総合的な目的を有するのであるから、両者はその規制の目的を全く同じくするものとはいえないのである。

読み方です。道路交通法は、道路の交通秩序を守る法律です。条例は、それにとどまらず、地方の安寧と秩序を守るという、より広い目的を持ちます。目的が全く同じとは言えません。ですから、型でいえば、別目的の条例に近づきます。交通秩序の面で重なる部分は、確かにあります。判決も、重なる部分があることは認めます。ただ、重なるから直ちに違反、とはしません。物差しに戻って、国の法令の趣旨を読みます。次の2つ目は、道路交通法の趣旨を読む部分です。

条文道路交通法77条1項

道路交通法第77条第1項 次の各号のいずれかに該当する者は、それぞれ当該各号に掲げる行為について当該行為に係る場所を管轄する警察署長(以下この節において「所轄警察署長」という。)の許可(……)を受けなければならない。 一 …… 二 …… 三 …… 四 前各号に掲げるもののほか、道路において祭礼行事をし、又はロケーシヨンをする等一般交通に著しい影響を及ぼすような通行の形態若しくは方法により道路を使用する行為又は道路に人が集まり一般交通に著しい影響を及ぼすような行為で、公安委員会が、その土地の道路又は交通の状況により、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図るため必要と認めて定めたものをしようとする者

条文道路交通法77条3項

道路交通法第77条第3項 3 第一項の規定による許可をする場合において、必要があると認めるときは、所轄警察署長は、当該許可に係る行為が前項第一号に該当する場合を除き、当該許可に道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図るため必要な条件を付することができる。

骨格は、祭礼行事のように一般交通に著しい影響を及ぼす通行の形態などで、公安委員会が、その土地の道路や交通の状況によって定めたものは、警察署長の許可を受ける、です。注目するのは、公安委員会が、その土地の状況によって定める、という部分です。

道路交通法の作りと条例の比較(道路交通法=目的は道路交通秩序の維持/どの行為を許可制にするかは各公安委員会が地域の状況に応じて決める→全国一律を避けている/徳島市条例=目的は交通秩序にとどまらない地方公共の安寧と秩序/集団行進を届出制にして守るべき事項を定める/罰則は道路交通法より重い) 図:道路交通法の作りと条例の比較

  • 道路交通法=目的は道路交通秩序の維持
  • どの行為を許可制にするかは各公安委員会が地域の状況に応じて決める→全国一律を避けている
  • 徳島市条例=目的は交通秩序にとどまらない地方公共の安寧と秩序
  • 集団行進を届出制にして守るべき事項を定める
  • 罰則は道路交通法より重い

判例最大判昭50・9・10 刑集29巻8号489頁

国の法令の趣旨を読む 道路交通法七七条一項四号は、同号に定める通行の形態又は方法による道路の特別使用行為等を警察署長の許可によつて個別的に解除されるべき一般的禁止事項とするかどうかにつき、各公安委員会が当該普通地方公共団体における道路又は交通の状況に応じてその裁量により決定するところにゆだね、これを全国的に一律に定めることを避けているのであつて、このような態度から推すときは、右規定は、その対象となる道路の特別使用行為等につき、各普通地方公共団体が、条例により地方公共の安寧と秩序の維持のための規制を施すにあたり、その一環として、これらの行為に対し、道路交通法による規制とは別個に、交通秩序の維持の見地から一定の規制を施すこと自体を排斥する趣旨まで含むものとは考えられず、……

読み方です。道路交通法は、どの行為を許可制にするかを、全国で一律に決めていません。各地の公安委員会が、その地域の道路や交通の状況に応じて決めるように任せています。国の法律自身が、地域の実情に応じて決める作りになっているのです。この態度から、判決は、条例が別個に交通秩序の面の規制をすることを、排斥する趣旨までは含まない、と読みました。続きで、判決はこう結論します。両者の内容に矛盾抵触がなく、条例の重複規制に、それ自体としての特別の意義と効果があり、合理性が認められるなら、道路交通法の規制は、条例の規制が及ばない範囲で適用される。だから、条例を道路交通法に違反するものとはできない、です。言い換えると、条例の規制にも、それ自体の意味と効き目があって、筋が通っているなら、2つは重なっても並んで立てます。道路交通法は、条例の規制がかからない残りの部分を受け持つ、という整理です。

問題になりました。条例は、道路交通法より重い刑を定めています。けれど判決は、違反とはしませんでした。道路交通法の罰則は、許可制の実効性を担保するために、一般的な違反の可能性や危険を考えて定められたものです。条例の罰則は、集団行進の特殊性から、地方の安寧と秩序が侵される可能性を、全体として考えて定めたものです。目的が違うので、重くても合理性があります。そして、道路交通法が条例による別個の規制を認める以上、合理的な罰則を定めることまで否定する趣旨ではない、と見ました。結論は、条例は道路交通法に違反せず、有効、です。立ち止まって考えてください。条例のほうが重い罰を定めていても、違反にならないとされました。国の法律が、条例による別個の規制について、どういう態度だったからでしょうか?

許可制にするかどうかを、公安委員会に、つまり地域の状況に任せていて、全国一律に定めることを避けていたからです。持ち帰る形は3つです。1つ目。目的が全く同じでなくても、重なる部分があるなら、そこは、国の法令が全国一律の趣旨かを確かめる。2つ目。国の法令自身が、地方の実情に応じて決める作りになっていることが、条例を許す趣旨を読み取る手がかりになる。3つ目。併存しても、矛盾抵触がなければ、条例は有効です。ここは、論文でも論点になりえます。逆に、国の法律が、全国一律にこれで終わり、という作りなら、同じように重なる条例でも、残れません。その向きに出たのが、次の普通河川です。

普通河川と河川法

河川の3区分(①適用河川=河川法の適用を受ける一級・二級河川/②準用河川=河川法を準用する・市町村長が指定/③普通河川=どちらでもない/③でも必要が生じればいつでも指定して適用・準用の対象にできる) 図:河川の3区分

  • ①適用河川=河川法の適用を受ける一級・二級河川
  • ②準用河川=河川法を準用する・市町村長が指定
  • ③普通河川=どちらでもない
  • ③でも必要が生じればいつでも指定して適用・準用の対象にできる

当てはめの2つ目は、普通河川の事件です。今度は、普通河川を条例でどこまで管理してよいか、国の法律に、はっきりした明文が無い場面です。河川には、3つの区分があります。河川法がそのまま適用される、一級河川と二級河川。河川法を準用する、準用河川。そして、どちらでもない、普通河川です。準用河川は、市町村長が指定したものです。準用とは、そのまま当てはめるのではなく、必要な読み替えをして当てはめることです。

条文河川法100条1項前段

河川法第100条第1項前段 一級河川及び二級河川以外の河川で市町村長が指定したもの(以下「準用河川」という。)については、この法律中二級河川に関する規定(政令で定める規定を除く。)を準用する。

骨格は、一級河川と二級河川以外で、市町村長が指定したものを準用河川とし、二級河川の規定を準用する、です。大事なのは、普通河川でも、河川法と同じ程度の管理が必要になれば、いつでも指定して、適用か準用の対象にできる、という点です。事案です。高知市は、河川法の適用も準用も受けない普通河川の管理について、条例を作りました。この条例は、護岸などの施設を、誰が設けたか、管理者の同意があるかを問わず、管理の対象に含めるようにも読めました。市は、河川法に定めの無い普通河川を、市の条例で、河川法より強く管理できるのか、が問題になりました。

普通河川と市条例(A=市の条例/B=河川法/C=普通河川/B→C=適用も準用もしない〔必要なら指定の途がある〕/A→C=管理の定めを置く/×=適用河川等に対する管理以上に強力な管理は定められない) 図:普通河川と市条例

  • A=市の条例
  • B=河川法
  • C=普通河川
  • B→C=適用も準用もしない〔必要なら指定の途がある〕
  • A→C=管理の定めを置く
  • ×=適用河川等に対する管理以上に強力な管理は定められない

判例最判昭53・12・21 民集32巻9号1723頁

普通河川 このように、河川の管理について一般的な定めをした法律として河川法が存在すること、しかも、同法の適用も準用もない普通河川であつても、同法の定めるところと同程度の河川管理を行う必要が生じたときは、いつでも適用河川又は準用河川として指定することにより同法の適用又は準用の対象とする途が開かれていることにかんがみると、河川法は、普通河川については、適用河川又は準用河川に対する管理以上に強力な河川管理は施さない趣旨であると解されるから、普通地方公共団体が条例をもつて普通河川の管理に関する定めをするについても(……)、河川法が適用河川等について定めるところ以上に強力な河川管理の定めをすることは、同法に違反し、許されないものといわなければならない。

定めが無いから自由、という筋は通りそうです。けれど判決は、そう読みませんでした。判決の答えは2段です。1段目は河川法の趣旨、2段目は、それでも条例を生かす読み方です。河川法という一般的な定めがあり、必要なら普通河川も適用や準用の対象にする道が開かれている。そうであるのに、普通河川には、適用河川や準用河川以上に強力な管理は施さない趣旨だと読んだのです。明文が無くても、法全体の仕組みから、それ以上はしない趣旨を読む。これが、趣旨を読むということです。条例で普通河川の管理を定めること自体はできますが、河川法が適用河川等について定める以上に強力な管理は、定められません。区別を、境界で確かめます。国の法令に規定が無いだけで、まだ手が回っていない場合は、地方が先に条例で手を打てます。今回は違います。河川法は、強い管理が必要なら、指定という別の道を用意しています。だから、規定が無いのは、手が回っていないからではありません。それ以上はしない、と決めた趣旨なのです。板の流れでいえば、明文が無いときに、規定が無いこと自体に国の意図を読む枝です。ただ、何も規制しない、ではなく、ここまでなら、という意図を読んだので、条例で管理すること自体はできます。

普通河川の条例は、残りました。ここは間違えやすい点です。判決は、条例を無効とはしませんでした。条例の規定は、可能な限り法律と調和するように、合理的に解釈すべきだとしました。そして、条例が護岸などの施設を対象にするのは、河川管理者が設けたものか、設けた人などの同意を得たものに限る、と読みました。そう読んでいなかった原審を破棄して、差し戻したのです。理由は、同意を得ずに、設けた人の施設を河川管理に服させる定めは、河川法が、管理する権原、つまり、その施設についての法律上の権利、のある人の同意を要するとしている趣旨、つまり財産権への配慮に反するからです。持ち帰る形は2つです。1つ目。明文が無い場面でも、法全体から、それ以上はしない趣旨を読む。分類名に無理に当てはめず、条例が上乗せすることを許さない趣旨、と言えれば十分です。2つ目。ただし、法律と調和するように読めるなら、条例を生かす道も探る。普通河川の管理そのものは、後の回で見ます。

法定外税の条例と地方税法

前の回の想起(地方税法3条1項=税目・課税客体・課税標準・税率は条例による/国=法律〔憲法84条〕/地方=条例) 図:前の回の想起

  • 地方税法3条1項=税目・課税客体・課税標準・税率は条例による
  • 国=法律〔憲法84条〕
  • 地方=条例

当てはめの3つ目は、課税です。前の回で、課税も条例で定める、と見ました。ここで、前の回を思い出してください。地方の税目や税率を決めるのは、何によるのでしたか?条例です。地方税法が、条例によらなければならない、と定めていました。では、条例で何でも課税できるのでしょうか。事案です。神奈川県は、財政が苦しい中で、県の条例で臨時特例企業税という税を作りました。この税は、法定外普通税です。法定外普通税とは、地方税法に決まった税目のほかに、自治体が自分で起こす、使い道を決めない税、つまり普通税のことです。資本金が大きい法人に課しました。一方、法人事業税は、都道府県が、会社の事業に課す、地方税法に決まった税です。県の新しい税は、課税標準、つまり前の回で見た、税額を計算する元になる金額を、法人事業税の所得の計算で、赤字を繰り越して引いた額に連動させました。赤字の繰越控除を、実質的に一部、なかったことにする税です。ある会社が、地方税法に違反して無効だ、と争いました。繰越控除は、前の年度の赤字を、後の年度の黒字から差し引ける仕組みです。数字で見ます。赤字を全額差し引ける会社で、去年は300万円の赤字、今年は500万円の黒字なら、今年の所得は、差し引いた額の200万円で計算されます。県の税は、この、差し引いた300万円の部分に、別に税をかけるような作りでした。この仕組みがどこから来るのか、条文の連鎖を見ます。

条文の連鎖(A=県の条例〔臨時特例企業税〕/B=地方税法72条の23〔法人事業税の所得は法人税の所得の計算の例による〕/C=法人税法57条〔過去の欠損金額は損金に算入〕/A→B=法定外普通税の根拠は地方税法4条3項/B→C=計算の例による/C→B=繰越控除が事業税の所得の計算にも及ぶ/A×C=繰越控除を一部排除する) 図:条文の連鎖

  • A=県の条例〔臨時特例企業税〕
  • B=地方税法72条の23〔法人事業税の所得は法人税の所得の計算の例による〕
  • C=法人税法57条〔過去の欠損金額は損金に算入〕
  • A→B=法定外普通税の根拠は地方税法4条3項
  • B→C=計算の例による
  • C→B=繰越控除が事業税の所得の計算にも及ぶ
  • A×C=繰越控除を一部排除する

条文地方税法4条3項

地方税法第4条第3項 道府県は、前項各号に掲げるものを除くほか、別に税目を起こして、普通税を課することができる。

骨格は、道府県は、決まった税のほかに、別に税目を起こして、普通税を課せる、です。これが、法定外普通税の根拠です。県は、この条文を使って、新しい税を作りました。

条文地方税法72条の23第1項

地方税法第72条の23第1項 第七十二条の十二第三号の各事業年度の所得は、次の各号に掲げる法人の区分に応じ、それぞれ当該各号に定めるところにより算定するものとする。 一 内国法人 各事業年度の益金の額から損金の額を控除した金額によるものとし、この法律又は政令で特別の定めをする場合を除くほか、当該各事業年度の法人税の課税標準である所得の計算の例により算定する。

骨格は、法人事業税の所得は、特別の定めが無い限り、法人税の所得の計算の例によって算定する、です。益金は、売上など、入ってくる側の額、損金は、費用や損失など、出ていく側の額です。差し引いた残りが、所得です。ここで、法人税の計算がそのまま事業税に持ち込まれます。

条文法人税法57条1項本文

法人税法第57条第1項本文 内国法人の各事業年度開始の日前十年以内に開始した事業年度において生じた欠損金額(……)がある場合には、当該欠損金額に相当する金額は、当該各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。

骨格は、過去の赤字は、後の年度の所得の計算上、損金に算入する、です。つまり、赤字を繰り越して、後の黒字から差し引ける、という仕組みです。連鎖を、まとめます。法人事業税の所得は、法人税の計算の例による。法人税の計算には、赤字の繰越控除がある。だから、法人事業税の所得の計算でも、繰越控除は必ず適用されます。例外を作れるのは、条文のとおり、この法律か政令だけで、条例は入っていません。県の条例は、その繰越控除を、実質的に一部排除しようとしたのです。

判決の筋は3段(①自治体の課税権=憲法上予定されている/②地方税法の読み分け=標準税率など別段の定めは変えてよい・強行規定は変えられない/③実質で見る=形が別の税でも強行規定を実質的に変えれば負ける) 図:判決の筋は3段

  • ①自治体の課税権=憲法上予定されている
  • ②地方税法の読み分け=標準税率など別段の定めは変えてよい・強行規定は変えられない
  • ③実質で見る=形が別の税でも強行規定を実質的に変えれば負ける

判決の筋は3段です。課税権の位置づけ、地方税法の読み分け、そして実質で見ることです。まず、自治体は、国とは別に、課税権の主体になることが、憲法上、予定されています。ただし、憲法は課税権の中身までは定めていません。国民全体の税負担の調整などの観点から、法律で、準則、つまり、自治体が課税するときに従う基本のルールを定めることが予定されています。

判例最判平25・3・21 民集67巻3号438頁

準則 普通地方公共団体が課することができる租税の税目,課税客体,課税標準,税率その他の事項については,憲法上,租税法律主義(84条)の原則の下で,法律において地方自治の本旨を踏まえてその準則を定めることが予定されており,これらの事項について法律において準則が定められた場合には,普通地方公共団体の課税権は,これに従ってその範囲内で行使されなければならない。

読み方です。自治体の課税権には、憲法上の根拠があります。けれど、法律が準則を定めたら、課税権は、その範囲内で行使しなければなりません。変えてよい部分と、変えられない部分があります。分ける基準は、地方税法自身が、条例で違う定めをしてよい、と書いているかです。建築基準法40条と同じく、法律が自分で書いている場合です。その代表が、標準税率です。標準税率とは、自治体がふつうはこれによる税率で、財政上の必要などがあれば、これによらなくてよい、と地方税法が定めている税率です。地方税法は、法定の税について、課税標準や税率などを、細かく具体的に定めています。ですから判決は、標準税率のような、別段の定めのあるもの以外は、任意規定ではなく、強行規定だと見ました。任意規定とは、条例で違う定めをしてよい規定。強行規定とは、条例で変えられない規定のことです。課税標準の計算は、法人税の計算の例による、と定められていて、条例で変えてよいとは書かれていません。だから、変えられません。これが、上乗せを容認する趣旨を、読み分けた結果です。

判例最判平25・3・21 民集67巻3号438頁

実質的な変更も許されない したがって,法定普通税に関する条例において,地方税法の定める法定普通税についての強行規定の内容を変更することが同法に違反して許されないことはもとより,法定外普通税に関する条例において,同法の定める法定普通税についての強行規定に反する内容の定めを設けることによって当該規定の内容を実質的に変更することも,これと同様に,同法の規定の趣旨,目的に反し,その効果を阻害する内容のものとして許されないと解される。

読み方です。法定普通税の強行規定を、条例で変えることができないのは当然です。そして、法定外普通税の条例で、強行規定に反する内容を設けて、実質的に変えることも許されません。ここで、物差しの、目的と効果を阻害しないか、が出てきます。

繰越控除と県の税(全額差し引ける会社で、去年300万円の赤字・今年500万円の黒字→繰越控除で今年の所得は200万円/県の税=差し引いた300万円の部分に別に税をかける作り→繰越控除を実質的に一部排除/文言は繰越控除に触れなくても実質で見られる) 図:繰越控除と県の税

  • 全額差し引ける会社で、去年300万円の赤字・今年500万円の黒字→繰越控除で今年の所得は200万円
  • 県の税=差し引いた300万円の部分に別に税をかける作り→繰越控除を実質的に一部排除
  • 文言は繰越控除に触れなくても実質で見られる

繰越控除の趣旨は、事業年度ごとの所得の変動にかかわらず、税負担をできるだけ均等にして、公平な課税をすることです。県の条例は、課税標準の文言を一見すると、繰越控除に触れていません。けれど、実質は繰越控除を一部排除し、その適用を遮断するために作られていました。そこで判決は、条例は、地方税法の趣旨や目的に反し、効果を阻害するもので、強行規定と矛盾抵触する、として、違法で無効と判断しました。形は別の税でも、実質が法定税の強行規定を変えるなら、負けます。ここが核心です。文言ではなく実質で見る。徳島市公安条例の、目的と効果を阻害しないか、という考え方が、税で現れたものです。持ち帰る形は2つです。1つ目。地方税法には、条例が変えてよい部分と、変えられない部分がある。2つ目。自治体の課税権には憲法上の根拠があるが、法律の準則に従う、です。ここも、論文でも論点になりえます。

みなと町の回収とまとめ

みなと町の確認表(空き家条例と空家法=目的は同じ方向〔周辺の生活環境の保全〕/空家法は措置の段階と手続を定める〔助言・指導→勧告→命令→代執行・命令の前に意見を述べる機会〕/確かめる点=①条例による別段の定めを許容する趣旨か②上乗せか横出しか③手続が趣旨を妨げないか/浜辺の花火の条例=目的が違えば別目的の型/課税=法定外税の手続と準則に反しないこと) 図:みなと町の確認表

  • 空き家条例と空家法=目的は同じ方向〔周辺の生活環境の保全〕
  • 空家法は措置の段階と手続を定める〔助言・指導→勧告→命令→代執行・命令の前に意見を述べる機会〕
  • 確かめる点=①条例による別段の定めを許容する趣旨か②上乗せか横出しか③手続が趣旨を妨げないか
  • 浜辺の花火の条例=目的が違えば別目的の型
  • 課税=法定外税の手続と準則に反しないこと

冒頭の問いに戻ります。みなと町の空き家条例は、国の法律に負けるのか。物差しを当てて、何を確かめるかを整理します。空家法の目的は、周辺の生活環境の保全です。町の条例と、目的は同じ方向です。別目的の型ではありません。そして、空家法は、特に問題のある空き家について、助言や指導から勧告、命令、代執行という段階と、意見を聴く手続を、詳しく定めています。しかも、空家法の条文には、条例という語が出てきません。明文が無い場面ですから、法律全体の趣旨から読みます。確かめる点は3つです。1つ目。空家法は、条例による別段の定めを許す趣旨か、それとも全国一律の手続を定める趣旨か。2つ目。町の条例のどこが空家法と重なる上乗せで、どこが空家法の対象に至らない空き家への横出しか。3つ目。町の条例の手続は、空家法の手続の趣旨を妨げないか。結論は、条例の内容次第です。法令の趣旨の読み方が、持ち帰りです。

花火を一般的に規制する国の法律があるか、まず確かめます。火薬類の規制は、別の目的です。目的が違えば、別目的の型です。国の法律が、花火について放置する趣旨とは、考えにくいところです。ここも、確かめる点として押さえておけば十分です。町が花火の客に、浜辺の独自の税を課すなら、法定外税の手続と、地方税法の準則に反しないことが要ります。今日見た、臨時特例企業税の事件の筋です。もう1つ。新しく条例で規制するとき、すでに手続を進めていた事業者の地位を不当に害さない配慮が要る、という水道水源保護条例の判例は、権限の濫用の回で、新しい条例で規制した場面として見ました。みなと町なら、空き家条例を作る前から計画していた人への配慮です。

今日の答え(①違反かどうかは、文言の見比べではなく、目的・内容・効果を比べて国の法令の趣旨を読む/②3件=目的は一部重なっても、国の法律が全国一律を避ける作りで共存〔道路交通法と公安条例〕/明文が無くても、それ以上はしない趣旨で負ける〔普通河川〕/形を変えても、実質が強行規定の変更なら負ける〔法定外税〕/条例は命令と法律のような上下ではなく、役割分担の調整) 図:今日の答え

  • ①違反かどうかは、文言の見比べではなく、目的・内容・効果を比べて国の法令の趣旨を読む
  • ②3件=目的は一部重なっても、国の法律が全国一律を避ける作りで共存〔道路交通法と公安条例〕/明文が無くても、それ以上はしない趣旨で負ける〔普通河川〕/形を変えても、実質が強行規定の変更なら負ける〔法定外税〕/条例は命令と法律のような上下ではなく、役割分担の調整

問いの答えです。1つ目。条例は、法令に負けます。ただし、命令のように、法律の委任で作る上下ではありません。憲法が決めた役割分担の中での、ぶつかったときの順位です。負けるかどうかは、文言の比較ではなく、目的、内容、効果を比べて、国の法令の趣旨を読んで決めます。2つ目。同じ物差しで、結論は両方向に出ます。道路交通法は、地域の状況に応じて決める作りだったので、条例が残りました。普通河川は、明文が無くても、それ以上はしない趣旨だったので、強い管理の条例は許されませんでした。法定外税は、形が別の税でも、実質が強行規定の変更だったので、負けました。行政の行為の形を、地図にして見ていきます。

参照条文

  • 建築基準法40条
  • 道路交通法77条1項
  • 道路交通法77条3項
  • 河川法100条1項前段
  • 地方税法4条3項
  • 地方税法72条の23第1項
  • 法人税法57条1項本文

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