行政法ゼロから行政法#58

裁量の有無の見分け方②(処分の性質)

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第5章 行政裁量 #58/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

同じ「許可」なのに、選べる場合と選べない場合がある

申請が2つ競合したら(同じ「許可」でも、行政庁が「より良い申請」を選べるものと、先に出した人に出さなければならないものがある/違いを決めるのは名前ではなく処分の性質/条文の文言に続く、裁量の有無の2つ目の手がかり) 図:申請が2つ競合したら

  • 同じ「許可」でも、行政庁が「より良い申請」を選べるものと、先に出した人に出さなければならないものがある
  • 違いを決めるのは名前ではなく処分の性質
  • 条文の文言に続く、裁量の有無の2つ目の手がかり

名前が同じでも、扱いは同じとは限りません。違いを決めるのは、名前ではなく、その処分の性質です。今回の問いは、申請が2つ競合したとき、町長は、より良い申請の方を選べるのか、です。答えは、後半で出します。前回は、条文の書き方を、裁量の有無の最初の手がかりとして見ました。今回は2つ目の手がかり、処分の性質です。持ち帰るものは4つです。1つ目は、制限する処分と、与える処分で、裁量の傾きが違うこと。2つ目は、裁量が否定される規定の型と、それを1本の理屈で通すこと。3つ目は、警察許可と公企業の特許を、物差しとして使う方法。4つ目は、文言と性質を合わせて、答案に書く形です。前回の学校施設の判決を思い出してください。判決が裁量を認めた理由は、文言だけではなく、学校施設という施設の性質でした。護身用具の輸入業の登録の事件でも、控訴審は、登録を、一般に禁止されていた自由を回復させる許可だと性質づけて、処分の性質を重く見ました。処分の性質は、実際に結論を動かす手がかりです。

処分の性質の手がかり——制限する処分と、与える処分

設例テ(町の条例2本〔実在の条例ではない仮定〕/テ1「町長は、衛生基準に違反した営業者に、営業の停止を命ずることができる」→国民の自由を制限する処分〔侵害処分〕/テ2「町長は、町の遊休施設を、町の振興に資すると認める者に、有償で貸し付けることができる」→利益や特別の地位を与える処分〔授益処分〕/A=町の役場) 図:設例テ

  • 町の条例2本〔実在の条例ではない仮定〕
  • テ1「町長は、衛生基準に違反した営業者に、営業の停止を命ずることができる」→国民の自由を制限する処分〔侵害処分〕
  • テ2「町長は、町の遊休施設を、町の振興に資すると認める者に、有償で貸し付けることができる」→利益や特別の地位を与える処分〔授益処分〕
  • A=町の役場

設例テです。町の条例が2本あるとします。実在の条例ではなく、説明のための仮定です。1本目は、町長は、衛生基準に違反した営業者に、営業の停止を命ずることができる、です。2本目は、町長は、町の遊休施設を、町の振興に資すると認める者に、有償で貸し付けることができる、です。どちらも、できる、と書いてあります。でも、処分の性質は、正反対です。1本目は、営業という国民の自由を制限する処分です。2本目は、町の施設を使える、という利益や特別の地位を、与える処分です。学説は、前者を侵害処分、後者を授益処分とも呼びます。

裁量の広さは、同じ、できる、でも、傾きが違います。制限する処分は、裁量が認められにくい方向です。与える処分は、比較的広い裁量がありうる方向です。理由を、それぞれ言います。

傾きの理由(制限する処分=国民の自由に踏み込むので法律が許す範囲を裁判所が厳密に確かめる必要が大きい→要件に当たるかを裁判所が確かめやすい/与える処分=誰にどう配分するかに行政が何を重視するかの政策判断が混じる→誰に貸すかに幅/どちらも断定でなく傾き) 図:傾きの理由

  • 制限する処分=国民の自由に踏み込むので法律が許す範囲を裁判所が厳密に確かめる必要が大きい→要件に当たるかを裁判所が確かめやすい
  • 与える処分=誰にどう配分するかに行政が何を重視するかの政策判断が混じる→誰に貸すかに幅
  • どちらも断定でなく傾き

制限する処分は、国民の自由に踏み込みます。法律が許した範囲を超えていないかを、裁判所が厳密に確かめる必要が、特に大きい場面です。1本目なら、衛生基準に違反したかどうかは、検査の結果と基準を見れば、裁判所が確かめられます。ですから、要件に当たるかを裁判所が確かめる方向に傾きます。要件に当たるかを判断する段階の幅を要件裁量、当たったあとに処分をするか、どの処分をするかを選ぶ段階の幅を効果裁量と言いました。違反が認められたあとに、停止まで命じるかどうかは、効果裁量の話で、前回の設例チで見ました。

与える処分の傾き(遊休施設は町の財産→誰に貸せば町の振興になるかは行政が何を重視するかの政策判断が混じる→貸す相手に広い幅が残りやすい/前回の学校施設の判決は与える側の例=教育以外の目的で使いたい人は例外として使わせてもらう立場→支障がなくても当然には許可されない/どちらも傾きであって断定ではない) 図:与える処分の傾き

  • 遊休施設は町の財産→誰に貸せば町の振興になるかは行政が何を重視するかの政策判断が混じる→貸す相手に広い幅が残りやすい
  • 前回の学校施設の判決は与える側の例=教育以外の目的で使いたい人は例外として使わせてもらう立場→支障がなくても当然には許可されない
  • どちらも傾きであって断定ではない

与える処分は、事情が違います。遊休施設は、町の財産です。誰に貸せば町の振興になるかは、何を重視するかという、行政の政策判断が混じります。貸す相手を選ぶ判断に、広い幅が残りやすい方向です。前回の学校施設の判決は、与える側の例でした。教育以外の目的で使いたい人は、例外として使わせてもらう立場です。だから、支障がなくても、当然には許可されませんでした。では、制限する処分なら、裁量は絶対に無いのか。制限する処分でも、裁量が絶対に無いとまでは言えません。どちらも傾きであって、断定ではありません。認められにくい、ありうる、と言うにとどめます。第5章の最初の回の美濃部三原則は、制限する処分なら自由裁量を否定する、と言い切りました。今の解釈論は、同じ発想を、傾きとして使います。前回の、できる、や不確定概念と同じ、手がかりです。もう1つ、政治的な判断や、専門技術的な判断が要る処分は、裁量が認められやすい系統です。その中身と判例は、後の回で扱います。今は、そういう系統がある、という地図まで持ってください。

⭐ 論文で書く規範:解釈(一般的な整理):処分の性質は、裁量の有無の2つ目の手がかり。国民の権利・自由を制限する処分は裁量が認められにくい方向、利益や特別の地位を与える処分は比較的広い裁量がありうる方向、政治的・専門技術的な判断が要る処分は裁量が認められやすい系統。いずれも傾きであって断定ではない (短答・論文共通)

裁量が否定される型——答えが1つに決まる処分

問い(「正当の理由」のような抽象的な言葉があれば、行政庁の裁量は認められるか/前回の確認=不確定概念があっても裁判所が意味を確定する場合がある) 図:問い

  • 「正当の理由」のような抽象的な言葉があれば、行政庁の裁量は認められるか
  • 前回の確認=不確定概念があっても裁判所が意味を確定する場合がある

次は、処分の性質から、裁量が否定される型を見ます。先に問いです。正当の理由、のような抽象的な言葉が条文にあれば、行政庁の裁量は認められるでしょうか?認められるとは限りません。条文を見ます。

条文墓地、埋葬等に関する法律13条

墓地、埋葬等に関する法律第13条 墓地、納骨堂又は火葬場の管理者は、埋葬、埋蔵、収蔵又は火葬の求めを受けたときは、正当の理由がなければこれを拒んではならない。

設例の対比(墓地の管理者が埋葬の求めを断れるか/断れば処罰される構造〔同法に罰則〕→何が正当の理由かは町長でなく裁判所が決める/設例テ2の貸付け〔誰に貸すかは町の政策判断〕と対比) 図:設例の対比

  • 墓地の管理者が埋葬の求めを断れるか
  • 断れば処罰される構造〔同法に罰則〕→何が正当の理由かは町長でなく裁判所が決める
  • 設例テ2の貸付け〔誰に貸すかは町の政策判断〕と対比

墓地の管理者は、埋葬の求めを受けたとき、正当の理由がなければ、拒んではなりません。この法律には罰則があり、拒んだ者は処罰されます。

設例テの貸付けとの並べ方(貸付け=誰に貸すかは町の政策判断で幅が残る/埋葬の求めを断れるか=断れば処罰される場面→どこまで拒んでよいかを役所が決めれば罰せられる範囲を役所が決めることになる→町長や役場でなく裁判所が自分で判断する) 図:設例テの貸付けとの並べ方

  • 貸付け=誰に貸すかは町の政策判断で幅が残る
  • 埋葬の求めを断れるか=断れば処罰される場面→どこまで拒んでよいかを役所が決めれば罰せられる範囲を役所が決めることになる→町長や役場でなく裁判所が自分で判断する

設例テの貸付けと並べます。遊休施設を誰に貸すかは、町の政策判断で、幅が残ります。一方、墓地の管理者が、埋葬の求めを断れるかは、断れば処罰される、という場面です。どこまで拒んでよいかを役所が決めれば、罰せられる範囲を役所が決めることになってしまいます。町長や役場が決めるのではなく、裁判所が自分で判断する、という整理になります。判例もそう言っているのか。この条文に関わる最高裁の判決は、第3章で見た、墓地埋葬通達事件です。ただし、判決が述べたのは、通達は国民を拘束せず、裁判所は通達に縛られない、という点です。正当の理由を判断するとき、通達に示された事情以外も考慮すべきだ、という言い方でした。判決が、裁量は無い、と述べたのではありません。ここでは、判決の言ったことと、整理上の位置づけを分けます。刑罰の構成要件になる規定は、行政庁に解釈を委ねず、裁判所が判断するものだ、という整理の、例として使います。

条文水道法15条1項

水道法第15条第1項 1 水道事業者は、事業計画に定める給水区域内の需要者から給水契約の申込みを受けたときは、正当の理由がなければ、これを拒んではならない。

水道法にも、同じ書き方があります。給水契約の申込みを、正当の理由がなければ拒んではならない。水道事業者が拒む場面の中身は、後の回で見ます。ここでは、同じ、正当の理由、という言葉の型だと押さえてください。

裁量が否定される4つの型(課税要件を定める規定/刑罰の構成要件になる規定〔墓地埋葬法13条・水道法15条1項の「正当の理由」〕/収用の補償金の額〔最判平9・1・28〕/客観的事実を確認する行為〔最判平25・4・16 水俣病の認定〕/1本の理屈=何が正しい答えかが法律の趣旨・憲法の要請・事実から1つに決まる→行政庁に選ばせる理由がなく裁判所が自分で答えを出す〔判断代置〕) 図:裁量が否定される4つの型

  • 課税要件を定める規定
  • 刑罰の構成要件になる規定〔墓地埋葬法13条・水道法15条1項の「正当の理由」〕
  • 収用の補償金の額〔最判平9・1・28〕
  • 客観的事実を確認する行為〔最判平25・4・16 水俣病の認定〕
  • 1本の理屈=何が正しい答えかが法律の趣旨・憲法の要請・事実から1つに決まる→行政庁に選ばせる理由がなく裁判所が自分で答えを出す〔判断代置〕

ここで、裁量が否定される規定の型を、4つ並べます。1つ目は、課税要件を定める規定。2つ目は、刑罰の構成要件になる規定で、さきほどの2つの条文がこれです。3つ目は、収用の補償金の額。4つ目は、客観的な事実を確認する行為です。

4つを貫く1本の理屈(何が正しい答えかが法律の趣旨・憲法の要請・事実から1つに決まる→行政庁に選ばせる理由がない→裁判所が自分で答えを出す〔判断代置〕/裁量があれば裁判所は幅の中の判断を尊重し枠を踏み外したときだけ違法〔逸脱・濫用の審査〕) 図:4つを貫く1本の理屈

  • 何が正しい答えかが法律の趣旨・憲法の要請・事実から1つに決まる→行政庁に選ばせる理由がない→裁判所が自分で答えを出す〔判断代置〕
  • 裁量があれば裁判所は幅の中の判断を尊重し枠を踏み外したときだけ違法〔逸脱・濫用の審査〕

4つを貫く理屈は、1本です。何が正しい答えかが、法律の趣旨や、憲法の要請や、事実から、1つに決まる。だから、行政庁に選ばせる理由がありません。裁判所が自分で答えを出す、つまり判断代置になります。裁量があれば、裁判所は幅の中の判断を尊重し、枠を踏み外したときだけ違法とします。これが、逸脱や濫用の審査でした。

税と罰(国民の財産や自由を直接に奪う根拠→租税法律主義・罪刑法定主義の考え方から法律が明確に決めておくべき/行政庁が選べるなら法律で決めたことにならない→答えは法律の読み方として1つに決まる/第3章の課税の通達=裁量の無い処分の例も同じ理屈) 図:税と罰

  • 国民の財産や自由を直接に奪う根拠→租税法律主義・罪刑法定主義の考え方から法律が明確に決めておくべき
  • 行政庁が選べるなら法律で決めたことにならない→答えは法律の読み方として1つに決まる
  • 第3章の課税の通達=裁量の無い処分の例も同じ理屈

税と罰は、国民の財産や自由を直接に奪う根拠です。租税法律主義や罪刑法定主義の考え方から、法律が明確に決めておくべきだ、と考えられます。それは、憲法と刑法で見た考え方です。法律で決めておくべき中身を、行政庁が選べるなら、法律で決めたことになりません。だから、答えは法律の読み方として1つに決まります。第3章で、解釈基準と裁量基準を見分けたとき、課税の通達を、裁量の無い処分の例として見たのも、同じ理屈です。

収用の補償金の額(土地収用法71条=「相当な価格」という不確定概念/判断代置の根拠になるのは「完全な補償」という基準/第5章の最初の回の設例セで見た判決〔最判平9・1・28〕) 図:収用の補償金の額

  • 土地収用法71条=「相当な価格」という不確定概念
  • 判断代置の根拠になるのは「完全な補償」という基準
  • 第5章の最初の回の設例セで見た判決〔最判平9・1・28〕

補償金の額を見ます。第5章の最初の回の設例セで見た判決です。今回は、判断代置の根拠になる、完全な補償、という基準に注目します。収用の補償金について、土地収用法71条に、相当な価格、という言葉があります。

条文土地収用法71条

土地収用法第71条 収用する土地又はその土地に関する所有権以外の権利に対する補償金の額は、近傍類地の取引価格等を考慮して算定した事業の認定の告示の時における相当な価格に、権利取得裁決の時までの物価の変動に応ずる修正率を乗じて得た額とする。

骨格は、補償金の額は、事業の認定の告示の時における相当な価格に、物価の変動に応ずる修正率を乗じた額とする、です。相当な価格は、まさに不確定概念です。判決は、こう言いました。

判例最判平9・1・28 民集51巻1号147頁

収用の補償金の額と裁量 完全な補償、すなわち、収用の前後を通じて被収用者の有する財産価値を等しくさせるような補償をすべきであり、 ……同法による補償金の額は、「相当な価格」(同法七一条参照)等の不確定概念をもって定められているものではあるが、右の観点から、通常人の経験則及び社会通念に従って、客観的に認定され得るものであり、かつ、認定すべきものであって、補償の範囲及びその額(以下、これらを「補償額」という。)の決定につき収用委員会に裁量権が認められるものと解することはできない。

完全な補償と裁量の否定(収用の前後で持ち主の財産価値を等しくする基準→額は経験則と社会通念から客観的に認定できる→「相当な価格」という不確定概念があっても収用委員会に裁量は認められない/裁判所は逸脱・濫用の有無を見るのではなく正当な補償額を自分で認定し裁決で定めた補償額がそれと違えばその補償額を違法として正当な補償額を確定/完全補償の中身は補償の回) 図:完全な補償と裁量の否定

  • 収用の前後で持ち主の財産価値を等しくする基準→額は経験則と社会通念から客観的に認定できる→「相当な価格」という不確定概念があっても収用委員会に裁量は認められない
  • 裁判所は逸脱・濫用の有無を見るのではなく正当な補償額を自分で認定し裁決で定めた補償額がそれと違えばその補償額を違法として正当な補償額を確定
  • 完全補償の中身は補償の回

決め手は、完全な補償、という基準です。収用の前後で、持ち主の財産価値を等しくする、という基準があるので、額は、経験則と社会通念から、客観的に認定できます。相当な価格という不確定概念があっても、収用委員会に裁量は認められません。裁判所は、逸脱や濫用の有無を見るのではなく、正当な補償額を自分で認定し、裁決で定めた補償額がそれと違えば、その補償額を違法として、正当な補償額を確定します。完全補償の中身は、補償の回で見ます。4つ目は、客観的事実の確認です。水俣病の認定の判決を読みます。申請者が水俣病にかかっているかを、行政庁が認定する制度で、申請を退けた処分が争われました。

判例最判平25・4・16 民集67巻4号1115頁

水俣病の認定は客観的事実の確認 上記の認定自体は、前記(1)アのような客観的事象としての水俣病のり患の有無という現在又は過去の確定した客観的事実を確認する行為であって、この点に関する処分行政庁の判断はその裁量に委ねられるべき性質のものではないというべきであり、 ……裁判所において、経験則に照らして個々の事案における諸般の事情と関係証拠を総合的に検討し、個々の具体的な症候と原因物質との間の個別的な因果関係の有無等を審理の対象として、申請者につき水俣病のり患の有無を個別具体的に判断すべきものと解するのが相当である。

水俣病の認定の判決(事案=認定申請の棄却処分の取消し等/判旨=水俣病のり患の有無は現在又は過去の確定した客観的事実→処分行政庁の判断は裁量に委ねられるべき性質のものではない/裁判所が個別具体的に判断/結論=原判決破棄・差戻し〔原審が運用の指針の合理性などの観点から審査したのを誤りとした〕) 図:水俣病の認定の判決

  • 事案=認定申請の棄却処分の取消し等
  • 判旨=水俣病のり患の有無は現在又は過去の確定した客観的事実→処分行政庁の判断は裁量に委ねられるべき性質のものではない
  • 裁判所が個別具体的に判断
  • 結論=原判決破棄・差戻し〔原審が運用の指針の合理性などの観点から審査したのを誤りとした〕

判旨の要点です。水俣病にかかっているかどうかは、すでに確定している、現在または過去の客観的事実です。それを確認する行為だから、処分行政庁の判断は、裁量に委ねられる性質のものではない、と言いました。そして、裁判所が、経験則に照らして証拠を総合し、申請者がかかっているかを、個別具体的に判断すべきだ、としました。結論は、原判決を破棄して、差し戻しです。原審は、運用上の指針の合理性などの観点から、処分を審査していました。最高裁は、その審査の仕方が誤りだとしたのです。裁量が否定される型に当たる例は、この水俣病のり患の有無です。あるか、ないか、の確認なので、答えは1つです。型から外れる、すぐ外の例は、被害に苦しむ人たちのうち、誰にどんな救済を優先して配るか、という判断です。例えば、町が、限られた予算の見舞金を、どの人から先に配るかを決める場面です。これは、与える処分の側で、政策判断が混じります。事実の確認と、配分の判断は、性質が違うのです。

⭐ 論文で書く規範:解釈(判例と一般的な整理):裁量が否定される規定の型は、判例では、収用の補償金の額、客観的事実を確認する行為(水俣病の認定)。一般的な整理では、課税要件を定める規定、刑罰の構成要件になる規定も同じ型。共通の理屈は、答えが法律の趣旨や事実から1つに決まるので、行政庁に委ねる理由がなく、裁判所が自分で判断する(判断代置)こと。不確定概念があっても、裁量があるとは限らない (短答・論文共通)

警察許可と公企業の特許を、物差しに使う

第4章の想起(許可=もともとの自由を、公共の福祉のために一般的に禁止しておき、申請に応じて解く行為〔警察許可・消極規制〕/特許=自由にない特権を与える行為〔公企業の特許は裁量が大きい〕/今回は定義の復習でなく、裁量の幅を測る物差しとしての使い方) 図:第4章の想起

  • 許可=もともとの自由を、公共の福祉のために一般的に禁止しておき、申請に応じて解く行為〔警察許可・消極規制〕
  • 特許=自由にない特権を与える行為〔公企業の特許は裁量が大きい〕
  • 今回は定義の復習でなく、裁量の幅を測る物差しとしての使い方

第4章で、許可と特許を分けました。復習を1問。許可と特許は、どちらが、もともとの自由を返す行為でしたか?許可です。もともと自由なのに、公共の福祉のために一般に禁止していて、申請に応じて個別に解くのが許可でした。許可は、新しい権利を与えるのではなく、もともとの自由が戻る行為でした。害悪を防ぐための警察許可は、消極規制です。特許は、自由にない特権を与える行為で、中でも電気やガスなどの公企業の特許は、裁量が大きい、とされました。今回は、定義をもう一度説明するのではなく、この2つを、裁量の幅を測る物差しとして使います。表にします。

物差しの表(警察許可=規制の目的は消極〔衛生・安全〕/要件裁量は狭い〔要件に当たるかは客観的に判断できる〕/効果裁量は無い〔要件を満たすのに拒む裁量は無い〕/許可後は営業するかは自由・開始の義務なし 公企業の特許=規制の目的は積極〔良いサービスを安定して届ける〕/要件裁量は広い/効果裁量は広い/許可後は特権〔独占〕と引き換えに開始義務・広い監督) 図:物差しの表

  • 警察許可=規制の目的は消極〔衛生・安全〕

  • 要件裁量は狭い〔要件に当たるかは客観的に判断できる〕

  • 効果裁量は無い〔要件を満たすのに拒む裁量は無い〕

  • 許可後は営業するかは自由・開始の義務なし

  • 公企業の特許=規制の目的は積極〔良いサービスを安定して届ける〕

  • 公企業の特許:要件裁量は広い

  • 公企業の特許:効果裁量は広い

  • 公企業の特許:許可後は特権〔独占〕と引き換えに開始義務・広い監督

警察許可は、目的が消極で、衛生や安全を守るものです。要件に当たるかは、検査や基準で客観的に判断できます。ですから、要件裁量は狭い。要件を満たす人には、もともとの自由を返すので、満たすのに拒む裁量は無い。許可のあとも、営業するかどうかは自由で、営業を始める義務はありません。公企業の特許は、目的が積極で、良いサービスを安定して届けることです。誰に任せるのが最も適切かを、行政庁が考える必要があります。要件裁量も効果裁量も広い。その代わり、特権を与えられた事業者は、事業を始め、続ける義務を負い、広い監督も受けます。前回の設例ツ、屋台の許可は、警察許可の型の実例でした。基準を満たせば許可、満たさなければ不許可で、拒む幅はありませんでした。

物差しの使い方(名前が許可でも警察許可と決めて裁量は無いと答えない/警察許可と公企業の特許の区別は今は相対化/物差しは典型を理解するための枠であって結論の根拠ではない/代わりに個別法の規定から決める=問い1 許可の基準が何を見ているか〔衛生だけか事業の良し悪しまでか〕・問い2 許可のあとの監督がどこまで及ぶか〔衛生の検査だけか事業全般か開始の義務はあるか〕) 図:物差しの使い方

  • 名前が許可でも警察許可と決めて裁量は無いと答えない
  • 警察許可と公企業の特許の区別は今は相対化
  • 物差しは典型を理解するための枠であって結論の根拠ではない
  • 代わりに個別法の規定から決める=問い1 許可の基準が何を見ているか〔衛生だけか事業の良し悪しまでか〕・問い2 許可のあとの監督がどこまで及ぶか〔衛生の検査だけか事業全般か開始の義務はあるか〕

名前が許可でも、それだけで警察許可と決めて、裁量は無いと答えてはいけません。警察許可と公企業の特許の区別は、今は相対化しています。名前や分類のラベルを当てはめて、結論にしてはいけません。物差しは、典型を理解するための枠であって、結論の根拠ではありません。ラベルの代わりに、個別法の規定から決めます。持つ問いは2つです。1つ目は、許可の基準が何を見ているか。衛生だけか、事業の良し悪しまで見ているか。2つ目は、許可のあとの監督が、どこまで及ぶか。衛生の検査だけか、事業全般か、開始の義務はあるか。この2つを、法律の規定から読みます。

⭐ 論文で書く規範:解釈(一般的な整理):警察許可は要件裁量が狭く、要件を満たす者に拒む裁量は無い。公企業の特許は要件裁量・効果裁量とも広い。ただし区別は相対化しており、ラベルで結論を出さない。個別法の規定から、許可の基準が何を見ているか、許可後の監督がどこまで及ぶかを読んで、処分の性質を決める (短答・論文共通)

申請が競合したとき——物差しで確かめる

設例ト(A=町の役場〔審査〕/B・C=キッチンカーの店主/条例〔実在しない仮定〕=移動販売車の営業許可は「衛生基準を満たすこと」と「すでに許可を受けた者の営業場所から50メートル以上離れていること」/B・Cは観光通りの同じ区画に申請・2人とも衛生基準を満たし互いに50メートル未満〔同時には許可できない〕/Bが先に申請書を提出・Cは内容がより充実〔雨よけ・地元食材〕/AはCに許可しBを不許可) 図:設例ト

  • A=町の役場〔審査〕
  • B・C=キッチンカーの店主
  • 条例〔実在しない仮定〕=移動販売車の営業許可は「衛生基準を満たすこと」と「すでに許可を受けた者の営業場所から50メートル以上離れていること」
  • B・Cは観光通りの同じ区画に申請・2人とも衛生基準を満たし互いに50メートル未満〔同時には許可できない〕
  • Bが先に申請書を提出・Cは内容がより充実〔雨よけ・地元食材〕
  • AはCに許可しBを不許可

冒頭の問いに戻ります。設例トです。町の観光通りの一区画で、キッチンカーの営業をしたい店主が2人います。実在の条例ではなく、仮定です。町の条例は、移動販売車の営業許可について、衛生基準を満たすこと、すでに許可を受けた者の営業場所から50メートル以上離れていること、の2つを定めています。審査するのは、町の役場Aです。店主BとCが、同じ区画に申請しました。2人とも衛生基準を満たしていて、2人の場所は互いに50メートル未満なので、同時には許可できません。Bが先に申請書を出しました。Cは、後から出しましたが、雨よけを付けて地元の食材を使う、より充実した内容です。Aは、より良いCに許可を出して、Bを不許可にしました。Bは、取消しを求めました。Aは、より良い方を選べるでしょうか?

筋道を3段で見ます。1段目。条例の書き方を見ます。基準を満たさないとき許可しない、と書いてあり、基準を満たすのに拒む場面は書かれていません。

筋道の分岐(許可の基準は衛生と距離だけ→許可後の監督も衛生面だけ→開始の義務・選定の手続や基準の定めなし→警察許可寄り→基準を満たす先願者Bに許可/特許と見れば最も適切な者を選べる〔Cを選べる〕/分かれ目=個別法の規定から性質を読む) 図:筋道の分岐

  • 許可の基準は衛生と距離だけ→許可後の監督も衛生面だけ→開始の義務・選定の手続や基準の定めなし→警察許可寄り→基準を満たす先願者Bに許可
  • 特許と見れば最も適切な者を選べる〔Cを選べる〕
  • 分かれ目=個別法の規定から性質を読む

2段目。この許可を、特許と見るなら、第4章で見たとおり、競願でも早い者勝ちはそのまま当てはまらず、最も適切な主体を選べるので、Cを選べます。警察許可と見るなら、要件を満たす先に申請した者に、許可すべきです。早い者勝ち、つまり先願主義です。仮定の変形も置いておきます。もし条例が、通りのにぎわいへの貢献で選ぶ基準を置き、許可のあと営業を続ける義務まで課していたら、特許寄りで、Cを選べる方向です。

3段目の見分け(問い1 許可の基準=衛生と距離だけで事業の良し悪しを見る基準はない/問い2 許可のあとの監督=衛生面が中心・営業を始める義務や複数の申請から選ぶ手続・基準の定めもない→警察許可寄り→基準を満たす先願者Bに許可を与えるべき/基準を満たした申請に許可しなければならないのに後から出したCを優先すれば条例に無い基準で先に出したBを拒むことになる→順番で決める) 図:3段目の見分け

  • 問い1 許可の基準=衛生と距離だけで事業の良し悪しを見る基準はない
  • 問い2 許可のあとの監督=衛生面が中心・営業を始める義務や複数の申請から選ぶ手続・基準の定めもない→警察許可寄り→基準を満たす先願者Bに許可を与えるべき
  • 基準を満たした申請に許可しなければならないのに後から出したCを優先すれば条例に無い基準で先に出したBを拒むことになる→順番で決める

3段目が、見分けです。さきほどの2つの問いを当てます。許可の基準は、衛生と距離だけで、事業の良し悪しを見る基準はありません。許可のあとの監督も、衛生面が中心です。営業を始める義務や、複数の申請から選ぶ手続や基準の定めもありません。これは、警察許可寄りです。ですから、基準を満たす先願者のBに、許可を与えるべきです。基準を満たした申請には、許可しなければなりません。それなのに、出来の良さで後から出したCを優先すれば、条例に無い基準で、先に出したBを拒むことになります。だから、順番で決めます。実際の事件は、公衆浴場、つまり銭湯の許可で、競願になりました。公衆浴場法2条2項は、設置の場所や構造設備が公衆衛生上不適当なとき、または設置の場所が配置の適正を欠くときは、許可を与えないことができる、と定めています。判旨の、右規定とは、この規定のことです。判旨を読みます。

判例最判昭47・5・19 民集26巻4号698頁

競願関係と先願者への許可 右規定の趣旨およびその文言からすれば、右許可の申請が所定の許可基準に適合するかぎり、行政庁は、これに対して許可を与えなければならないものと解されるから、本件のように、右許可をめぐつて競願関係が生じた場合に、各競願者の申請が、いずれも許可基準をみたすものであつて、そのかぎりでは条件が同一であるときは、行政庁は、その申請の前後により、先願者に許可を与えなければならないものと解するのが相当である。

競願の判旨の読み方(右規定の趣旨と文言→申請が許可基準に適合するかぎり行政庁は許可を与えなければならない/競願者の申請がいずれも基準をみたし条件が同一→申請の前後により先願者に許可/先願後願は申請書が受付権限のある行政庁に提出された時で決まる〔受付・受理という行政庁の行為の前後ではない〕/判決の言葉=規定の趣旨と文言・覊束処分/「警察許可」「公企業の特許」は判決に出ない) 図:競願の判旨の読み方

  • 右規定の趣旨と文言→申請が許可基準に適合するかぎり行政庁は許可を与えなければならない
  • 競願者の申請がいずれも基準をみたし条件が同一→申請の前後により先願者に許可
  • 先願後願は申請書が受付権限のある行政庁に提出された時で決まる〔受付・受理という行政庁の行為の前後ではない〕
  • 判決の言葉=規定の趣旨と文言・覊束処分
  • 「警察許可」「公企業の特許」は判決に出ない

要点です。規定の趣旨と文言から、申請が許可基準に適合するかぎり、行政庁は許可を与えなければならない、と読みます。そこから、競願の申請がどれも基準を満たし、条件が同じなら、申請の前後で、先に申請した者に許可を与えなければならない、と言いました。判決の言葉と、整理の言葉は、分けて持ってください。この判決の文章に、警察許可、公企業の特許、効果裁量という言葉は出てきません。判決が使うのは、規定の趣旨と文言、そして、許可が覊束処分であるかぎり、という言葉です。覊束処分とは、裁量の無い処分のことです。警察許可と公企業の特許は、そうした結論を整理するための、学説の言葉です。第4章の銭湯の判決でも、特許的な要素というのは、判決の言葉ではなく、学説の呼び方でした。先願と後願の基準時も押さえます。申請書が、受け付ける権限のある行政庁に提出された時で決まります。受付や受理という、行政庁の行為の前後で決めるのではありません。設例トで、もしCが先に窓口へ書類を出したのに、細部を直すよう言われて受付が遅れ、Bの受付の方が早くなったとしても、順番は、出した時で決まります。ただし、出した時点で、受け付けるべき要件を備えていた場合です。

競願と既存業者の保護は両立する(第4章の銭湯の判決=配置の適正を許可の理由にしている→既存業者の営業上の利益は法的利益/今回の競願の判決=基準を満たせば先願者に許可/同じ法律が衛生の許可〔警察許可の性格〕に配置の適正という競争調整の要素を混ぜている→一方の名前で全部を決めない/距離制限そのものは憲法22条1項に違反しない〔憲法の回で扱い済み〕) 図:競願と既存業者の保護は両立する

  • 第4章の銭湯の判決=配置の適正を許可の理由にしている→既存業者の営業上の利益は法的利益
  • 今回の競願の判決=基準を満たせば先願者に許可
  • 同じ法律が衛生の許可〔警察許可の性格〕に配置の適正という競争調整の要素を混ぜている→一方の名前で全部を決めない
  • 距離制限そのものは憲法22条1項に違反しない〔憲法の回で扱い済み〕

第4章では、銭湯の許可には特許的な要素がある、と言いました。それなのに先願主義で決まるのか、という疑問が出ます。特許的な要素があることと、先願主義で決まることは、両立します。銭湯の許可は、基本は衛生のための許可で、警察許可の性格を持ちます。そこに、配置の適正という、競争を調整する要素が混ざっています。だから、既存の業者の営業上の利益は、法的利益として守られます。そして、競願になれば、基準を満たす先願者に許可を与えます。一方の名前で、全部を決めない。それが、ラベルでなく規定から読む、ということです。距離制限そのものは、前提として一言だけ言います。憲法の回で見たとおり、最高裁は、公衆浴場の適正配置規制を、憲法22条1項に違反しないとしました。積極的な社会経済政策に出た規制は、立法の裁量の逸脱が著しく不合理で明白な場合に限り違憲、という枠組みです。距離制限そのものが憲法に違反しない以上、同じ場所に2人は入れず、後から出した側が拒まれるのは、違憲の問題ではなく、制度から当然に生じる結果です。

⭐ 論文で書く規範:判例の整理:競願で、各申請がいずれも許可基準を満たし、条件が同一であるときは、許可が覊束処分であるかぎり、行政庁は先願者に許可を与えなければならない。先願後願は、申請書が受付権限のある行政庁に提出された時で決まる。判決は「警察許可」「公企業の特許」の語を使っていない (短答・論文共通)

2つの手がかりの合わせ方——答案の書き方

前回の確認(「できる」と書いてあれば、必ず効果裁量があると言えるか/言えない=拒む権限を授けただけの「できる」がある) 図:前回の確認

  • 「できる」と書いてあれば、必ず効果裁量があると言えるか
  • 言えない=拒む権限を授けただけの「できる」がある

最後は、2つの手がかりの合わせ方です。その前に、前回の確認を1問。条文に、することができる、と書いてあれば、必ず効果裁量があると言えるでしょうか?言えません。屋台の許可の条例のように、拒む権限を授けただけの、できる、があるからです。文言だけでは決まりません。では、文言と処分の性質を、答案でどうつなぐか。まず、悪い例です。

書き方の例(悪い例「条文の要件が曖昧だから、裁量がある」→文言で止まっている/良い例「条文の要件が曖昧なのは、この処分の性質上、行政庁に判断を任せる趣旨だからだ」→文言→性質→委ねる趣旨でつなぐ/逆向き=文言が抽象的でも、性質から客観的に決まるので委ねる趣旨ではない) 図:書き方の例

  • 悪い例「条文の要件が曖昧だから、裁量がある」→文言で止まっている
  • 良い例「条文の要件が曖昧なのは、この処分の性質上、行政庁に判断を任せる趣旨だからだ」→文言→性質→委ねる趣旨でつなぐ
  • 逆向き=文言が抽象的でも、性質から客観的に決まるので委ねる趣旨ではない

悪い例は、条文の要件が曖昧だから、裁量がある、です。文言で止まっています。良い例は、条文の要件が曖昧なのは、この処分の性質上、行政庁に判断を任せる趣旨だからだ、です。文言、性質、委ねる趣旨、の順につなぎます。設例テの貸付けで書いてみます。町長は、振興に資すると認める者に貸し付けることができる、と抽象的に書いてあります。これは、誰に配分するかに政策判断が混じる、与える処分だからです。要件を曖昧にしてあるのは、町長に判断を任せる趣旨だと読めます。よって、逸脱や濫用の審査になります。逆向きも同じです。設例トの許可では、許可の基準が衛生と距離だけで、監督も衛生面です。基準を満たせば許可すべき趣旨だと読めます。文言が、できる、と書いてあっても、行政庁に選ばせる趣旨ではない、と結びます。

書き方の流れ(①条文の書き方〔要件・効果・「できる」・不確定概念〕→②処分の性質〔制限する/与える・政治的・専門技術的・客観的に決まるか〕→③①を②に照らして「委ねる趣旨か」→④結論〔判断代置か、逸脱・濫用の審査か〕) 図:書き方の流れ

流れにします。1つ目に、条文の書き方を見ます。要件、効果、できる、不確定概念。2つ目に、処分の性質を見ます。制限するか、与えるか、客観的に決まるか。3つ目に、条文の書き方を、処分の性質に照らして、委ねる趣旨か、を考えます。4つ目に、結論を出します。判断代置か、逸脱や濫用の審査かです。前回の学校施設の判決は、この書き方の実例でした。文言のほかに、施設の性質が効きました。護身用具の輸入業の登録の控訴審も、処分の性質を、読み方の決め手にしました。

⭐ 論文で書く規範:解釈(一般的な整理):裁量の有無は、条文の文言→処分の性質→委ねる趣旨か→結論、の順に書く。「要件が曖昧だから裁量がある」で止めず、「要件が曖昧なのは、この処分の性質上、行政庁に判断を任せる趣旨だから」と結ぶ。逆に、文言が抽象的でも、性質から答えが客観的に決まるなら委ねる趣旨ではない (論文の骨格)

今日の地図(保存版)

今日の整理(性質の傾き=制限する処分は裁量が認められにくい・与える処分は広い裁量がありうる・政治的専門技術的は後の回/裁量否定の4型=判例は補償金の額・客観的事実の確認/一般的な整理で課税要件・刑罰の構成要件→答えが1つに決まる/物差し=警察許可と公企業の特許・ラベルでなく個別法の規定から/競願=基準を満たし条件が同一なら先願者・提出時基準/書き方=文言→性質→委ねる趣旨→結論) 図:今日の整理

  • 性質の傾き=制限する処分は裁量が認められにくい・与える処分は広い裁量がありうる・政治的専門技術的は後の回
  • 裁量否定の4型=判例は補償金の額・客観的事実の確認
  • 一般的な整理で課税要件・刑罰の構成要件→答えが1つに決まる
  • 物差し=警察許可と公企業の特許・ラベルでなく個別法の規定から
  • 競願=基準を満たし条件が同一なら先願者・提出時基準
  • 書き方=文言→性質→委ねる趣旨→結論

まとめます。冒頭の問いに答えます。申請が競合したとき、町長はより良い方を選べるのか。許可の基準が衛生と距離だけで、監督も衛生面なら、基準を満たす先願者に許可すべきです。選べるかは、許可という名前ではなく、処分の性質で決まります。手がかりを通して読みます。制限する処分は裁量が認められにくく、与える処分は比較的広い裁量がありえます。どちらも傾きです。裁量が否定される型は、課税要件、刑罰の構成要件、補償金の額、客観的事実の確認で、共通の理屈は、答えが1つに決まる、です。警察許可と公企業の特許は物差しですが、ラベルで結論を出さず、個別法の規定から読みます。答案では、文言と性質を合わせます。要件が曖昧なのは、この処分の性質上、行政庁に判断を任せる趣旨だから、と結びます。政治的、専門技術的な判断が要る処分の中身は、次の回から見ていきます。

今日の短答の誤り肢(権利を制限する処分のほうが与える処分より広い裁量が認められやすい〔誤り〕/土地収用法の補償金の額の決定には収用委員会の裁量が認められる〔誤り〕/水俣病の認定は行政庁の裁量に委ねられる〔誤り〕/競願では各申請が許可基準を満たしていても行政庁は常により良い申請を選べる〔誤り〕/先願後願は申請の受理の順で決まる〔誤り〕) 図:今日の短答の誤り肢

  • 権利を制限する処分のほうが与える処分より広い裁量が認められやすい〔誤り〕
  • 土地収用法の補償金の額の決定には収用委員会の裁量が認められる〔誤り〕
  • 水俣病の認定は行政庁の裁量に委ねられる〔誤り〕
  • 競願では各申請が許可基準を満たしていても行政庁は常により良い申請を選べる〔誤り〕
  • 先願後願は申請の受理の順で決まる〔誤り〕

最後に、短答の誤り肢です。権利を制限する処分のほうが、利益を与える処分よりも、広い裁量が認められやすい、は誤りです。傾きは逆で、制限する処分は、裁量が認められにくい方向です。土地収用法の補償金の額の決定には、収用委員会の裁量が認められる、も誤りです。相当な価格という不確定概念があっても、完全な補償の観点から客観的に認定され、裁量は認められません。水俣病の認定は、行政庁の裁量に委ねられる、も誤りです。現在または過去の確定した客観的事実を確認する行為で、裁判所が個別具体的に判断します。競願では、各申請が許可基準を満たしていても、行政庁は常により良い申請を選べる、も誤りです。許可が覊束処分であるかぎり、条件が同一なら、先願者に許可を与えなければなりません。先願後願は、申請の受理の順で決まる、も誤りです。申請書が受付権限のある行政庁に提出された時で決まります。

参照条文

  • 墓地、埋葬等に関する法律13条
  • 水道法15条1項
  • 土地収用法71条

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