都市計画の地図(区域区分・用途地域・開発許可)
印刷のコツ
プリンターでは次の設定がおすすめです。
- 用紙:A4 / 向き:縦
- 拡大縮小:「実際のサイズ」(フィット縮小しない)
- 両面印刷:オン、とじ方は「長辺をとじる」(左綴じ)
- モノクロ印刷OK(強調は色でなく太字なので白黒でも読めます)
第6章 行政契約・行政指導・行政計画 #81/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
自分の土地なのに建てられない
図:今日の問い
- ある町に土地を買った家族の3つの疑問
- ①この土地だけ、家が建てられない
- ②隣の地区より、高い建物が建てられない
- ③家の前の道路予定地にかかる部分に、建て増しできない/理由は1枚の地図に書いてある
設例を置きます。ある町に、土地を買った家族がいます。家を建てようとして、三つの壁に当たりました。一つ目、この土地だけ、そもそも家が建てられない。二つ目、隣の地区なら建つ高さの建物が、ここでは建てられない。三つ目、家の前の道路予定地にかかる部分には、建て増しもできない。この三つの理由は、すべて一枚の地図に書いてあります。前回、計画の分類で、私人を直接縛る拘束的計画の例として、都市計画の区域区分を名前だけ出しました。今日は、その中身を含めて、都市計画の制度を一枚の地図にします。先に言っておくと、この地図は、規制で土地の使い方に網をかける二つの箱と、事業で町を実際に作る二つの箱でできています。そこに、開発許可と都市計画事業が重なります。そして、土地への制限は、計画の決定から事業の認可へと、段階を追って強くなります。最後に、あとの章で裁判の論点になる行為を、この地図の上に、旗を立てて示します。
図:今日の道順
- 1 国土の計画の中の位置
- 2 都市計画法の目的と入れ物
- 3 箱① 区域区分
- 4 箱② 地域地区
- 5 箱③ 都市施設・箱④ 市街地開発事業
- 6 開発許可
- 7 都市計画事業
- 8 地図に旗を立てる
道順です。まず、国土の計画の中で、都市計画がどこにあるかを見ます。次に、都市計画法の目的と、都市計画の入れ物。その中に置く四つの箱を、順に見ます。そのあと、開発許可、都市計画事業と進み、最後に旗を立てます。
国土の計画の中で、都市計画はどこにあるか
図:国土の計画の体系
- 国土形成計画〔全国計画・広域地方計画〕
- 国土利用計画〔全国・都道府県・市町村〕→土地利用基本計画〔都道府県が定める〕→5つの地域に区分→個別法:都市地域=都市計画法
- 農業地域=農業振興地域整備法
- 森林地域=森林法
- 自然公園地域=自然公園法
- 自然保全地域=自然環境保全法
家族の三つの壁の理由を探す前に、都市計画が国土の計画のどこにあるかを見ます。一番上に、国土全体の計画があります。国土の利用、整備、保全の大きな方向を示す国土形成計画と、土地の使い方の方向を示す国土利用計画です。国土利用計画には、国、都道府県、市町村と、三つの層があります。その下に、土地利用基本計画があります。条文を見ます。
条文国土利用計画法9条1項
国土利用計画法第9条第1項 都道府県は、当該都道府県の区域について、土地利用基本計画を定めるものとする。
都道府県が、自分の区域を、都市地域、農業地域、森林地域、自然公園地域、自然保全地域の五つに色分けする計画です。同じ県の中でも、駅のまわりの町は都市地域、郊外の田んぼは農業地域、奥の山は森林地域、という色分けです。都市地域とは、一体の都市として総合的に開発し、整備し、保全する必要がある地域のことです。地域ごとの個別の法律です。都市地域は都市計画法、農業地域は農業振興地域整備法、森林地域は森林法、自然公園地域は自然公園法、自然保全地域は自然環境保全法。土地利用基本計画は、各法律の計画を調整する上位の計画で、住民を縛る個別の効果は、下の個別法のレベルで生じます。前回の軸でいえば、下位の計画は上位の計画に合わせて作る、という上位計画と下位計画の関係の実物です。覚えるのは一点です。都市地域に対応する個別法が、都市計画法。ここから先は、この法律の中に入ります。
都市計画法の目的と、都市計画の入れ物
図:都市計画法の目的と都市計画の中身
- 1条=内容・決定手続・都市計画制限・都市計画事業を定める
- 4条1項=都市計画は3種類の計画〔土地利用/都市施設の整備/市街地開発事業〕
- 5条1項=都市計画区域〔入れ物〕を都道府県が指定
まず、この法律の目的です。
条文都市計画法1条
都市計画法第1条 この法律は、都市計画の内容及びその決定手続、都市計画制限、都市計画事業その他都市計画に関し必要な事項を定めることにより、都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、もつて国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。
目的の条文が、この法律の背骨を並べています。都市計画の内容、決定手続、都市計画制限、都市計画事業。今日は、このうち、内容、制限、事業の三つを見ます。決定手続は、計画をどう作るかの話で、別の回で扱います。では、都市計画とは何か。定義の条文です。
条文都市計画法4条1項
都市計画法第4条第1項 この法律において「都市計画」とは、都市の健全な発展と秩序ある整備を図るための土地利用、都市施設の整備及び市街地開発事業に関する計画で、次章の規定に従い定められたものをいう。
都市計画の中身は、土地利用、都市施設の整備、市街地開発事業の三種類です。土地利用が、あとで見る箱の一つ目と二つ目、都市施設が三つ目、市街地開発事業が四つ目に対応します。都市計画って、全国どこにでもかかっているんですか。違います。都市計画には、入れ物があります。都市計画区域です。都道府県が、一体の都市として総合的に整備し、開発し、保全する必要がある区域を、都市計画区域として指定します。四つの箱の中身は、この入れ物の中について定められます。家族が土地を買った町も、この入れ物の中にあります。入れ物の外にも、準都市計画区域という区域があります。名前だけにしておきます。また、入れ物の外でも、大規模な開発には許可が要ります。これは、開発許可のところで見ます。決めるのは誰か、にも触れます。区域区分は都道府県、用途地域や地区計画などそのほかの多くは市町村、という分担があります。
図:4つの箱の全体図
- 都市計画区域=入れ物の中に
- 規制で網をかける箱:①区域区分〔市街化区域・市街化調整区域〕②地域地区〔用途地域ほか〕
- 事業で作る箱:③都市施設〔道路・公園・下水道など〕④市街地開発事業〔土地区画整理事業・市街地再開発事業〕
- →開発許可と都市計画事業が重なる
ここで、今日の地図を置きます。都市計画区域という入れ物の中に、四つの箱があります。一つ目の区域区分と二つ目の地域地区は、土地の使い方に網をかけて、町の形を整える箱です。三つ目の都市施設と四つ目の市街地開発事業は、道路や街を実際に作る計画を入れる箱です。規制の箱と、事業の箱。この二つの見方で、順に見ます。
箱① 区域区分——線引き
図:区域区分の定義
- 7条2項=市街化区域:すでに市街地を形成している区域+おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域
- 7条3項=市街化調整区域:市街化を抑制すべき区域
- 効果:調整区域=開発許可に34条の上乗せ・43条で建築も許可制
その前に、確認です。前回、私人を直接縛る計画を何と呼びましたか?拘束的計画です。区域区分が例として名前だけ出ていました。その区域区分の中身に入ります。都市計画区域の中に、線を引きます。区域区分は、無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るため必要があるときに定めます。大都市の都市計画区域では、必ず定めます。それ以外では、定めることができる、という書き方です。つまり、区域区分のない都市計画区域も、あります。区分を定めたものを線引き区域、定めないものを非線引き区域と呼びます。
条文都市計画法7条2項・3項
都市計画法第7条第2項・第3項 2 市街化区域は、すでに市街地を形成している区域及びおおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域とする。 3 市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域とする。
市街化区域は、すでに町になっている所と、おおむね十年以内に優先して町にする所です。市街化調整区域は、町になるのを抑える所です。引っ越した先の町なら、市街化区域は建物をどんどん建ててよい側、調整区域は建てるのを控えさせる側、と考えると、輪郭がつかめます。調整区域だと、具体的に何が変わるんですか。二つあります。一つ目、土地を宅地に造成するときに要る、都道府県知事等の許可、つまり開発許可に、追加の基準が掛かります。たとえば周辺の住民のための店舗のように、決められた場合に当たるときだけ許す、という絞りです。二つ目、開発許可を受けた区域以外では、建築そのものが原則として許可制になります。さらに、市街化区域には、少なくとも、住宅地、商業地、工業地といった土地の使い道を割り振る、用途地域を定めます。調整区域には、原則として用途地域を定めません。家族の一つ目の壁です。この土地は調整区域でした。だから、建てるには、追加基準のどれかに当たるか、建築の許可を受けるかが必要になる。理由は、地図の一箇所に書いてあったわけです。あとの章で、区域区分の決定そのものが取消訴訟で争える処分か、という問いが立ちます。処分かどうかは、前に見た三つの物差し、権利義務に直接関わるか、具体的に決めるか、公権力か、で測ります。また、調整区域の制限に損失補償が要るか、という問いもあります。ここでは、名前だけ置きます。
箱② 地域地区——都市計画法が描き、建築基準法が効かせる
図:用途地域と建築基準法の連動
二つ目の箱は、地域地区です。市街化区域の中を、さらに細かく塗り分けます。代表が、用途地域です。住居系、商業系、工業系の三つのグループに、全部で十三種類あります。そのほか、防火地域、高度地区、風致地区なども、地域地区の仲間です。家族の二つ目の壁、隣と高さが違う理由は、二つの法律がつながっているところにあります。都市計画法は、どこがどの用途地域かを決めます。さらに、容積率や建蔽率の数値も、都市計画で定めます。容積率は、敷地面積に対する延べ面積の割合、建蔽率は、敷地面積に対する建築面積の割合です。一方、その地域で何が建てられるか、そして容積率や建蔽率の制限そのものは、建築基準法が課します。数値は都市計画が決め、効かせるのは建築基準法です。用途の例を見ます。
条文建築基準法48条1項
建築基準法第48条第1項 第一種低層住居専用地域内においては、別表第二(い)項に掲げる建築物以外の建築物は、建築してはならない。ただし、特定行政庁が第一種低層住居専用地域における良好な住居の環境を害するおそれがないと認め、又は公益上やむを得ないと認めて許可した場合においては、この限りでない。
地域ごとに、建てられるものが別表で決まっています。別表の中身は、暗記しません。押さえるのは構造だけです。原則は別表どおり、ただし、特定行政庁の許可という例外がある。確認です。用途地域ごとに、建てられるものを決めるのは、都市計画法でしょうか、建築基準法でしょうか。建築基準法です。都市計画法は、どこがどの地域かと、数値を決めるほうです。この制限の守らせ方が、建築確認です。建築する前に、計画が建築基準関係規定、つまり建築基準法などの建物のルールに適合するかを、確認の手続で審査します。建築確認が、行政行為の分類では確認と見るのが通常だということは、前に見ました。二つ目の壁は、これで解けます。高さを抑える仕組みは二つです。一つは、容積率です。延べ面積の上限が決まるので、同じ敷地に積める床の量が抑えられ、高い建物が建てにくくなります。もう一つは、高さそのものの上限です。低層の住宅のための用途地域では、建物の高さを十メートルか十二メートルまでに抑え、高度地区では、都市計画で高さの最高限度や最低限度を定めます。隣の地区とは、用途地域や高度地区が違うので、建てられる用途と高さが違うわけです。もう一つ、地区計画があります。用途地域より狭い、いくつかの区画をまとめた単位のきめ細かいルールです。細かいルールである地区整備計画が定められた区域内で、一定の行為をする者は、市町村長に届け出ます。そして、計画に合わない場合は、勧告を受けます。許可ではなく、届出と勧告という作りです。覚えるのは、届出と勧告、の二語です。
あとの章で問われる行為も置きます。用途地域の指定は取消訴訟で争える処分か。建築基準法の道路の、一括した指定は処分か。いずれも、この箱の上にある行為です。
箱③ 都市施設と箱④ 市街地開発事業——事業で作る箱
図:箱③都市施設
- 11条1項=道路・都市高速鉄道・駐車場
- 公園・緑地・広場
- 水道・下水道・ごみ焼却場
- 河川・運河
- 学校・図書館
- 病院・保育所
- 市場・と畜場・火葬場
- 都市計画で定められた施設=都市計画施設〔4条6項〕
- 市街化区域には少なくとも道路・公園・下水道
- 53条=都市計画施設の区域内の建築は知事等の許可制
ここからは、事業で作る箱です。三つ目は、都市施設です。道路、都市高速鉄道、駐車場。公園、緑地、広場。水道、下水道、ごみ焼却場。河川。学校や図書館。病院や保育所。市場や火葬場。町を支える施設のうち、主なものが七つ並んでいます。都市計画で定められたものが、都市計画施設です。市街化区域には、少なくとも道路、公園、下水道を定めます。家族の三つ目の壁です。家の前の道路予定地にかかる部分は、都市計画施設の区域です。この区域内で建築するには、計画決定の段階から、都道府県知事等の許可が要ります。道路がまだ一メートルも作られていなくても、です。
道路がまだ無くても止めるのは、事業の障害になるのを防ぐためです。あとで道路を作ろうとしたとき、建物が増えていては、買い取りも立ち退きも大変になります。ただし、この制限は、事業がまだ動いていない段階のものです。事業が動くと、制限の形が変わります。あとの事業のところで比べます。
図:箱④市街地開発事業
- 12条1項=土地区画整理事業・市街地再開発事業ほか
- 土地区画整理=土地の一部を出し合う〔減歩〕→道路・公園を生む→残りを整理後の土地に置き換える〔換地〕=平面の整え直し
- 市街地再開発=〔第一種〕土地・建物の権利を新しいビルの床の権利に置き換える〔権利変換〕・余った床〔保留床〕を売って費用に
- 〔第二種〕いったん買い取りや収用で土地・建物を取得する方式=立体の作り替え
四つ目は、市街地開発事業です。条文には、種類が列挙されています。そのうち、一番大事な二つを見ます。一つ目、土地区画整理事業です。区域内の地主たちが、土地の一部を出し合います。これを減歩といいます。出し合った土地で、道路や公園を作り、一部を事業の費用にも充てます。そして、残った土地を、整えた区画の中の土地に置き換えます。これが換地です。面積は減ります。ただ、道路や公園が整って、土地の使いやすさと値段が上がる、というのが発想です。畑を持ち寄って、真ん中に通路を通し、残りを並べ直す、というイメージです。二つ目、市街地再開発事業です。こちらは、平面ではなく、立体です。敷地を共同にして、高いビルを建てます。第一種市街地再開発事業では、土地や建物の権利を、新しいビルの床の権利に置き換えます。これが権利変換です。余った床は保留床といい、売って、事業費に充てます。戸建ての持ち分を、マンションの一室に取り替える、と考えると近いです。第二種市街地再開発事業は、権利変換ではなく、施行者がいったん、買い取りや収用で土地や建物を取得して進める方式です。この二つの箱の上にも、旗が立ちます。土地区画整理事業の計画の決定は、取消訴訟で争える処分か。都市計画の決定に、裁判所はどこまで踏み込んで審査できるか。後のほうは、裁量の章で、小田急線の高架化の事件を例に、都市計画の決定には広い裁量がある、と見ました。どちらも、ここでは名前だけ置きます。
開発許可——開発行為への網
図:開発許可の二重の網
- 開発行為=主として建築物の建築又は特定工作物の建設の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更〔4条12項〕
- 29条=知事等の許可・小規模や農林漁業用などは除外
- 市街化区域:33条の基準
- 市街化調整区域:33条+34条〔限定列挙の追加基準〕+43条〔建築許可〕
家を建てる前に、土地を造成することがあります。これが開発行為で、主として建築物の建築や、ゴルフ場のような特定工作物の建設のために行う、土地の区画形質の変更、つまり、道路を入れて区画を変えたり、土を盛ったり削ったり、畑を宅地に変えたりすることです。山を切り開いて宅地にする、といった場合です。この開発行為には、都道府県知事等の許可が要ります。これが、区域区分のところで名前の出た開発許可です。小規模なもの、農林漁業用の建築物のためのもの、公益上必要な建築物のもの、そして、都市計画事業や区画整理事業として行うものなどは、除外されます。また、都市計画区域の外でも、大規模なら許可が要ります。許可の基準が、二層になっています。ここは、間違えやすい所です。最初は、三十三条。道路、公園、排水、給水、災害防止などの技術的な基準です。基準に適合し、手続が適法なら、許可しなければならない、という書き方です。三十三条は、市街化区域だけの基準ではありません。許可を受けるすべての開発に共通です。そのうえで、三十四条です。市街化調整区域は、町になるのを抑える所です。だから、三十三条の基準に加えて、三十四条の各号のどれかに当たると認める場合でなければ、許可してはならない、とされます。周辺の住民のための店舗や、農林漁業用など、各号は限定列挙です。号の細部は暗記不要で、限定列挙で、最後に、開発審査会という、都道府県などに置かれる審査の機関に諮って認める受け皿がある、と覚えます。
三十三条が全区域共通、三十四条が調整区域への上乗せです。さらに、調整区域では、開発許可を受けた区域以外での建築も許可制です。開発許可と建築許可の、二重の網になります。
図:公共施設管理者の同意
- 開発行為の前に:開発行為に関係がある公共施設〔道路・公園など〕の管理者と協議→同意
- 設置される公共施設を管理する者とも協議
- →その後に開発許可
- 同意を拒んだことは処分か=あとの章の問い
開発許可の前に、もう一つ、手続が挟まります。
条文都市計画法32条1項
都市計画法第32条第1項 開発許可を申請しようとする者は、あらかじめ、開発行為に関係がある公共施設の管理者と協議し、その同意を得なければならない。
開発で、道路や下水道などをいじるなら、その管理者と協議して、同意を得る必要があります。許可の前に、協議と同意が挟まる。もう一つ、開発で新しく作られる道路や公園を、あとで管理することになる者とも、あらかじめ協議します。こちらは協議だけで、同意までは求められていません。利害を段階的に調整する作りです。計画と許可がつながる構造は、あとの回で、計画を基準にした許可として見ます。ここにも旗が立ちます。この同意を拒んだことは、取消訴訟の対象になる処分か。この問いには、最高裁の判決があります。答えは、あとの章で見ます。また、開発許可や建築確認のあと、工事が終わったら、許可の取消しを求める利益は残るのか、という問いも、あとで出ます。
都市計画事業——計画が事業に変わり、収用まで届く
図:都市計画の事業の流れ
最後の段階です。都市計画に、道路を通すと決めただけでは、道路はできません。実際に作る段階に進むには、事業の認可が要ります。ここでの認可は、許可・特許・認可の分類でいう、私人どうしの行為を補って効力を完成させる認可とは別の意味で、施行者に事業を始めてよいと認める行為です。59条の認可または承認を受けて行われる、都市計画施設の整備の事業と、市街地開発事業を、都市計画事業といいます。箱の三つ目と四つ目が、実際に動く段階です。施行者によって、認可する人が違います。原則は市町村で、都道府県知事の認可。都道府県は、市町村では難しいなど特別な事情があるときに、国土交通大臣の認可。国の機関なら、国土交通大臣の承認です。それ以外の者、たとえば民間の事業者は、必要な許認可を受けているときなど、特別な事情があるときに限って、都道府県知事の認可を受けて施行できます。認可が出ると、施行者の名称、事業の種類、施行期間、事業地が告示されます。この告示が、制限の切り替わる目印になります。
図:告示のあとの流れ
- 〔65条=告示後の建築制限〕→土地収用法の事業とみなす〔69条〕・事業認定の代わり〔70条〕→収用の手続
- 旗:事業認可を周辺住民は争えるか
告示のあとの制限の条文です。
条文都市計画法65条1項
都市計画法第65条第1項 第六十二条第一項の規定による告示又は新たな事業地の編入に係る第六十三条第二項において準用する第六十二条第一項の規定による告示があつた後においては、当該事業地内において、都市計画事業の施行の障害となるおそれがある土地の形質の変更若しくは建築物の建築その他工作物の建設を行い、又は政令で定める移動の容易でない物件の設置若しくは堆積を行おうとする者は、都道府県知事等の許可を受けなければならない。
告示のあとは、事業の障害になる行為が、許可制になります。先ほどの、計画決定の段階の制限は、告示のあとには、この区域には適用されません。つまり、制限は二段階です。計画決定の段階は五十三条、事業認可の告示のあとは六十五条。六十五条のほうが強いのは、二点です。一つ目、対象が広がります。五十三条は建物の建築だけですが、六十五条は、土地の形質の変更や、工作物の建設まで含みます。二つ目、許可の緩さが消えます。計画決定の段階では、地下の無い二階建てまでで、木造など、あとで動かしたり取り壊したりしやすい建物なら、許可しなければならない、とされています。道路がいつ作られるか、まだ決まっていないからです。告示のあとは、事業が始まり、まもなく買い取る段階なので、そうした決まりは無く、事業の障害になるかどうかで判断します。確認です。家族の家の前の道路予定地で、市が事業の認可を受け、告示されました。建て増しの制限は、その前と後で、どう変わるでしょうか。
前は五十三条の許可で、告示のあとは六十五条の許可になります。後のほうが、対象が広く、動かしやすい建物でも許可が約束されない、強い制限になります。そして、この流れは、収用までつながります。二つの条文です。
条文都市計画法69条
都市計画法第69条 都市計画事業については、これを土地収用法第三条各号の一に規定する事業に該当するものとみなし、同法の規定を適用する。
条文都市計画法70条1項
都市計画法第70条第1項 都市計画事業については、土地収用法第二十条(同法第百三十八条第一項において準用する場合を含む。)の規定による事業の認定は行なわず、第五十九条の規定による認可又は承認をもつてこれに代えるものとし、第六十二条第一項の規定による告示をもつて同法第二十六条第一項(同法第百三十八条第一項において準用する場合を含む。)の規定による事業の認定の告示とみなす。
事業認定は、違法性の承継のところで見た、土地収用法の手続です。収用できる公益事業かどうかを判断します。土地収用法の事業を収用するには、本来、この認定が要ります。ところが都市計画事業は、土地収用法の事業とみなされ、事業認定は行われません。代わりに、五十九条の認可が認定の役割を果たし、六十二条の告示が認定の告示とみなされます。事業認定を省けるのは、どうしてですか。都市計画の段階で、すでに公益性を含めて検討し、決定しているからです。計画から事業、収用へ、一本の線で届くようにしてあります。家族の家の前の道路も、買い取りの話し合いがまとまらなければ、最後は収用の手続で取得されることになります。ここにも旗が立ちます。事業の認可を、周辺の住民は争えるのか。また、事業認定と収用の裁決の関係です。認定の違法が、後の裁決の違法になるのか。違法性の承継として前に見た問いで、都市計画事業では、認定の役を担う認可と、裁決の間で立ちます。名前だけ置きます。
地図に旗を立てる・まとめ
図:今日の地図
- 保存版:家族の3つの疑問→①調整区域=箱①区域区分・34条
- ②用途地域の違い=箱②地域地区・建築基準法
- ③道路予定地=箱③都市施設・53条/道路を作る側=都市計画事業・59条→65条→収用/旗=後で問われる行為:区域区分・用途地域の指定は処分か/区画整理事業計画の決定は処分か/公共施設管理者の同意の拒否は処分か/道路の一括指定は処分か/開発許可・建築確認のあと工事が終わったら訴えの利益は/事業認可を周辺住民は争えるか/都市計画決定の裁量審査・制限と補償・事業認定と収用裁決
家族の疑問に戻ります。一つ目、この土地だけ建てられないのは、市街化調整区域だから。一つ目の箱、区域区分と、開発許可の三十四条です。次に、隣と高さが違うのは、用途地域が違うから。二つ目の箱、地域地区と、建築基準法の連動です。三つ目、道路予定地に建て増しできないのは、都市計画施設の区域だから。箱の三つ目と、五十三条です。そして、その道路を実際に作る側が、都市計画事業です。この地図の上には、このあと問われる旗が立っています。区域区分や用途地域の指定は、取消訴訟で争える処分か。土地区画整理事業計画の決定は処分か。公共施設管理者の同意の拒否は処分か。建築基準法の道路の一括指定は処分か。開発許可や建築確認のあと、工事が終われば、取消しを求める利益は残るか。事業認可を、周辺住民は争えるか。都市計画決定の裁量は、どう審査されるか。都市計画の制限に、補償は要るか。事業認定と収用裁決は、どうつながるか。今は、どれも答えを言いません。問いが、この地図のどこに立っているかを、覚えておいてください。まとめます。都市計画は、都市計画区域の中に、四つの箱を置きます。規制の箱が、区域区分と地域地区。事業の箱が、都市施設と市街地開発事業。そこに、開発行為への網である開発許可が重なります。三十三条は全区域共通、そして三十四条は調整区域への上乗せです。そして、計画が事業に変わる都市計画事業は、認可が事業認定に代わり、収用まで届きます。計画、制限、許可、事業、収用。この一本の線で、地図を読みます。
都市計画は、規制の箱と事業の箱に分けて、制限が計画決定から事業認可へと強くなる、という一本の線で読めばいいんですね。
参照条文
- 国土利用計画法9条1項
- 都市計画法1条
- 都市計画法4条1項
- 都市計画法7条2項・3項
- 建築基準法48条1項
- 都市計画法32条1項
- 都市計画法65条1項
- 都市計画法69条
- 都市計画法70条1項