行政法ゼロから行政法#83

計画裁量(法律の根拠・策定手続・事業認可で争う道)

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第6章 行政契約・行政指導・行政計画 #83/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

家の前に道路が通る計画——裁判所に行けるのか

今日の問い(波野市が駅前通りを延ばす都市計画道路を決定/沿道に住む会社員X「なぜうちの前なのか」「説明会で意見を聞いてもらえなかった」/計画が決まった段階で裁判所に行けるのか/行けないなら、いつ・何を相手に計画の違法を言うのか) 図:今日の問い

  • 波野市が駅前通りを延ばす都市計画道路を決定
  • 沿道に住む会社員X「なぜうちの前なのか」「説明会で意見を聞いてもらえなかった」
  • 計画が決まった段階で裁判所に行けるのか
  • 行けないなら、いつ・何を相手に計画の違法を言うのか

設例を置きます。波野市が、駅前通りを延ばす都市計画道路を決定しました。予定地は、会社員のXさんの家の前です。Xさんは、なぜうちの前なのか、と思います。説明会でも、意見をきちんと聞いてもらえなかった、と感じています。ところが、この計画が決まった段階では、裁判所に持ち込みにくいのです。では、計画の違法は、いつ、何を相手に言えるのか。答えの形だけ先に言うと、計画のあとに出る、別の処分が窓口になります。今日は、この問いを、最後に回収します。

今日の道順(1 計画に法律の根拠は要るか/2 計画裁量はなぜ広いか/3 広い裁量をどう縛るか/4 策定の手続/5 計画を争う入口=事業認可/6 違法性の承継との違い/7 設例を解く) 図:今日の道順

  • 1 計画に法律の根拠は要るか
  • 2 計画裁量はなぜ広いか
  • 3 広い裁量をどう縛るか
  • 4 策定の手続
  • 5 計画を争う入口=事業認可
  • 6 違法性の承継との違い
  • 7 設例を解く

道順です。まず、計画に法律の根拠が要るかを、前に見た分類の答え合わせとして確かめます。次に、計画裁量がなぜ広いのか。それを縛る方法として、策定の手続を、条文で見ます。山場は、計画を争う入口です。最後に、設例を解きます。

計画に、法律の根拠は要るか

法律の根拠が要る計画・要らない計画(要否の物差し=その計画が私人の権利義務に法的な影響を与えるか/拘束的計画〔例:都市計画〕=根拠が要る/指針的計画〔例:市の10年ビジョン〕=根拠は不要/補足の見解=指針でも国の方向を決める重要な計画には根拠を置くべきだという議論もある〔学説〕) 図:法律の根拠が要る計画・要らない計画

  • 要否の物差し=その計画が私人の権利義務に法的な影響を与えるか
  • 拘束的計画〔例:都市計画〕=根拠が要る
  • 指針的計画〔例:市の10年ビジョン〕=根拠は不要
  • 補足の見解=指針でも国の方向を決める重要な計画には根拠を置くべきだという議論もある〔学説〕

最初に、想起の問いです。行政計画の最初の回で、計画を五つの軸で分けました。そのうち、後の問いの入口になると言ったのが、法律に基づくかどうかと、拘束の強さの二つです。拘束の強さは、拘束的、誘導的、指針的、という三つでした。では、法律の根拠が要るのは、どの計画でしょう。物差しは、その計画が、私人の権利義務に法的な影響を与えるかどうかです。都市計画は、法律に基づいて決まるからこそ、土地の利用を制限するという効果が正当化されます。たとえば、都市計画で道路の区域が決まると、その区域内の建築は許可制になります。国民の権利を制限する以上、法律の根拠が要ります。反対に、市が、今後十年のまちづくりのビジョンを冊子にまとめたとします。これは、市民に何かを義務づけるものではありません。法律の根拠がなくても、作れます。

原則として、指針にとどまる計画には、法律の根拠は要りません。ただ、学説には補足があります。指針でも、国の将来の方向を決め、事実上、大きな影響力をもつ計画には、民主的な正当化のために、法律の根拠を置くべきだ、という議論です。これは学説の議論で、条文や判例の話ではありません。なお、根拠があることと、根拠が要ることは別です。前に見た介護保険事業計画は、法律に根拠のある法定計画ですが、中身は主に指針的でした。今日の問いは、根拠が要るかのほうです。暗記は、法的な効果があれば根拠が要る、事実行為にとどまるなら不要、の一本です。

計画裁量——なぜ広いのか

計画裁量と広い3つの理由(計画裁量=どのような計画を策定するかについて行政に認められる広い裁量/①基準が抽象的〔法律は目標と考慮事項を示すだけ〕②多数の利害の調整③将来の見通し/前回の許可の判断=計画を作る裁量が許可に流れ込んだ現れ) 図:計画裁量と広い3つの理由

  • 計画裁量=どのような計画を策定するかについて行政に認められる広い裁量
  • ①基準が抽象的〔法律は目標と考慮事項を示すだけ〕②多数の利害の調整③将来の見通し
  • 前回の許可の判断=計画を作る裁量が許可に流れ込んだ現れ

ここで、復習です。前回、ごみ収集の許可で、新しい業者の申請を断れたのは、なぜでしたか?許可の要件に、計画に適合することがあって、計画は既存の業者を前提に作られていたからです。計画を作る側の判断が、許可の判断に流れ込んでいました。今日は、その流れ込んだ判断、つまり、計画を作るときの裁量そのものを見ます。これを、計画裁量と呼びます。どのような計画を作るかについて、行政に認められる、広い裁量のことです。理由は三つです。一つ目は、法律の基準が抽象的だからです。条文を見ます。都市計画法の、都市施設の定め方です。都市施設とは、前に都市計画の地図で見た、道路や公園のような施設のことです。

条文都市計画法13条1項11号

都市計画法第13条第1項第11号 十一 都市施設は、土地利用、交通等の現状及び将来の見通しを勘案して、適切な規模で必要な位置に配置することにより、円滑な都市活動を確保し、良好な都市環境を保持するように定めること。この場合において、市街化区域及び区域区分が定められていない都市計画区域については、少なくとも道路、公園及び下水道を定めるものとし、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域及び田園住居地域については、義務教育施設をも定めるものとする。

骨格です。都市施設は、土地利用や交通の現状と将来の見通しを勘案して、適切な規模で、必要な位置に配置して、定めること。後半の細かい規定は、今日は使いません。注目するのは、適切な規模、必要な位置、という言葉です。何が適切で、何が必要かは、法律が決めていません。目標と、考慮すべき事柄を示すだけです。これが、目標プログラムの作りでした。要件を満たせば結果が決まる作りと違い、中身の判断が、計画を作る側に委ねられています。設例でいえば、駅前通りをどの幅で、Xさんの家の前に通すのか、一本裏の通りに通すのかは、条文を読んでも決まりません。二つ目は、多数の利害の調整です。道路を通したい側と、家を失う側。沿道の騒音に悩む人と、通勤時間が短くなる人。計画は、立場の違う人々の利益を、ひとつの線に落とし込む作業です。三つ目は、将来の見通しです。さきほどの条文にも、現状及び将来の見通し、とありました。十年後の人口や交通量は、予測するしかありません。予測には、幅が出ます。以上三つが、計画裁量が広い理由です。ただ、広いからといって、何をしてもよいわけではありません。計画裁量にも、裁量を統制する、一般的な考え方は当てはまります。

広い裁量を、どう縛るか——2本の柱

計画の統制の2本柱(①手続で縛る=策定手続〔案の段階から利害関係者が参加〕②裁判所で縛る=司法審査〔審査の中身は次回/裁判所に持ち込む入口は今日〕/理由=実体の基準が抽象的なぶん、作る過程で縛る) 図:計画の統制の2本柱

  • ①手続で縛る=策定手続〔案の段階から利害関係者が参加〕②裁判所で縛る=司法審査〔審査の中身は次回/裁判所に持ち込む入口は今日〕
  • 理由=実体の基準が抽象的なぶん、作る過程で縛る

基準が抽象的でも、縛る方法はあります。中身の基準で縛りにくいぶん、作る過程で縛るのです。縛り方は、二本柱で覚えます。一本目は、手続です。計画の案の段階から、利害をもつ人々を参加させます。二本目は、裁判所の審査です。ただ、そもそも裁判所に、どの入口から持ち込むのか。これは今日、山場で扱います。まず、一本目の手続から見ます。

計画の策定手続——都市計画法の定め

都市計画の策定手続の流れ(案の作成=16条〔公聴会の開催等〕→公告・2週間の縦覧=17条1項→意見書の提出=17条2項→意見書の要旨を審議会に提出=18条2項→都市計画審議会の議を経て決定=18条1項・19条1項→告示=20条1項→告示の日から効力=20条3項/変更にも準用=21条2項) 図:都市計画の策定手続の流れ

  • 案の作成=16条〔公聴会の開催等〕→公告・2週間の縦覧=17条1項→意見書の提出=17条2項→意見書の要旨を審議会に提出=18条2項→都市計画審議会の議を経て決定=18条1項・19条1項→告示=20条1項→告示の日から効力=20条3項
  • 変更にも準用=21条2項

順番に、条文を見ます。まず、案を作る段階です。

条文都市計画法16条1項・2項

都市計画法第16条第1項・第2項 1 都道府県又は市町村は、次項の規定による場合を除くほか、都市計画の案を作成しようとする場合において必要があると認めるときは、公聴会の開催等住民の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。 2 都市計画に定める地区計画等の案は、意見の提出方法その他の政令で定める事項について条例で定めるところにより、その案に係る区域内の土地の所有者その他政令で定める利害関係を有する者の意見を求めて作成するものとする。

骨格です。1項、都道府県や市町村は、案を作るとき、必要があると認めるときは、公聴会の開催など、住民の意見を反映させる措置を講ずる。2項は、地区計画などの特別な計画で、土地の所有者などの意見を求めて作る定めです。今日は1項を押さえます。書きぶりを見てください。必要があると認めるとき、です。必ずやらなければならない、とは書いていません。義務の強さが、ゆるいのです。次の17条と比べます。

条文都市計画法17条1項〜3項

都市計画法第17条第1項〜第3項 1 都道府県又は市町村は、都市計画を決定しようとするときは、あらかじめ、国土交通省令で定めるところにより、その旨を公告し、当該都市計画の案を、当該都市計画を決定しようとする理由を記載した書面を添えて、当該公告の日から二週間公衆の縦覧に供しなければならない。 2 前項の規定による公告があつたときは、関係市町村の住民及び利害関係人は、同項の縦覧期間満了の日までに、縦覧に供された都市計画の案について、都道府県の作成に係るものにあつては都道府県に、市町村の作成に係るものにあつては市町村に、意見書を提出することができる。 3 特定街区に関する都市計画の案については、政令で定める利害関係を有する者の同意を得なければならない。

骨格です。1項、決定しようとするときは、あらかじめ公告して、案を二週間、公衆の縦覧に供しなければならない。縦覧とは、誰でも見に来られるように、案を置いておくことです。2項、関係市町村の住民と利害関係人は、意見書を提出することができる。3項、特定街区の案は、利害関係人の同意を得なければならない。1項は、しなければならない、です。16条の公聴会は、必要があると認めるとき。17条の縦覧は、必ず。ここに、義務の強さの差があります。もうひとつ、2項に注意します。意見書は、提出することができる、と書いてあります。出した意見に市が従う義務は、条文のどこにもありません。次の条文に出てくるのは、意見書の要旨を、審議会に出す、というところまでです。

条文都市計画法18条1項・2項

都市計画法第18条第1項・第2項 1 都道府県は、関係市町村の意見を聴き、かつ、都道府県都市計画審議会の議を経て、都市計画を決定するものとする。 2 都道府県は、前項の規定により都市計画の案を都道府県都市計画審議会に付議しようとするときは、第十七条第二項の規定により提出された意見書の要旨を都道府県都市計画審議会に提出しなければならない。

骨格です。1項、都道府県が決めるときは、関係市町村の意見を聴き、都市計画審議会の議を経る。都市計画審議会は、学識経験のある人や議会の議員などでつくる、案を審議する合議の機関です。2項、審議会に付議する、つまり審議にかけるときは、意見書の要旨を審議会に提出しなければならない。市町村が決める場合は、19条に同じ趣旨の定めがあります。そして決定したら、20条で告示し、告示の日から効力が生じます。変更するときも、この手続が準用されます。流れは、案の作成、公告と縦覧、意見書、審議会の議、決定、告示、です。想起の問いです。設例のXさんの、説明会で意見を聞いてもらえなかった、という不満は、どの条文のどの手続の問題でしょうか。

案の段階で住民の声を聞く手続、つまり16条と17条の問題です。ただ、16条は必要があるときの措置ですし、17条は意見書を出せるだけです。意見を聞くことは保障されていても、意見のとおりにする義務までは、条文からは読めません。

計画策定の一般的な手続法は無い

行政手続法の対象に、計画策定は入っていない(1条1項=処分・行政指導・届出・命令等を定める手続/2条8号=命令等=法律に基づく命令・規則/審査基準/処分基準/行政指導指針/行政計画は含まれない/計画の策定手続は個別法が定める) 図:行政手続法の対象に、計画策定は入っていない

  • 1条1項=処分・行政指導・届出・命令等を定める手続
  • 2条8号=命令等=法律に基づく命令・規則
  • 審査基準
  • 処分基準
  • 行政指導指針
  • 行政計画は含まれない
  • 計画の策定手続は個別法が定める

行政手続法は、計画を作る手続を定めていません。ここが引っかけどころです。条文で確かめます。

条文行政手続法1条1項

行政手続法第1条第1項 この法律は、処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性(行政上の意思決定について、その内容及び過程が国民にとって明らかであることをいう。第四十六条において同じ。)の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的とする。

骨格です。この法律が定めるのは、処分、行政指導、届出の手続と、命令等を定める手続です。計画の策定は、並んでいません。次に、命令等とは何かを、2条8号で見ます。

条文行政手続法2条8号

行政手続法第2条第8号 命令等 内閣又は行政機関が定める次に掲げるものをいう。 イ 法律に基づく命令(処分の要件を定める告示を含む。次条第二項において単に「命令」という。)又は規則 ロ 審査基準(申請により求められた許認可等をするかどうかをその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準をいう。以下同じ。) ハ 処分基準(不利益処分をするかどうか又はどのような不利益処分とするかについてその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準をいう。以下同じ。) ニ 行政指導指針(同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとするときにこれらの行政指導に共通してその内容となるべき事項をいう。以下同じ。)

骨格です。命令等とは、法律に基づく命令や規則、審査基準、処分基準、行政指導指針です。行政計画は、ここにも入っていません。だから、計画の策定手続は、都市計画法のような個別の法律が、それぞれ置いています。意見公募手続は命令等のための手続で、計画のためのものではない、と区別しておきます。設例のXさんが手続の不満を言うときも、よりどころは行政手続法ではなく、さきほどの都市計画法の16条と17条です。

山場——計画を争う入口は、事業認可

争う入口の線(都市計画決定〔18条・19条=処分でないと解される〕→都市計画事業の認可〔59条=処分〕→認可の要件=事業の内容が都市計画に適合〔61条1号〕→告示〔62条1項〕→土地収用法の事業認定の告示とみなす〔70条1項〕→認可の取消訴訟で、前提の都市計画決定の違法を主張) 図:争う入口の線

いよいよ山場です。設例の問いに戻ります。計画が決まった段階で、裁判所に行けるのか。一段目。都市施設の都市計画決定そのものは、特定の人の具体的な権利義務を直接に形づくるものではない、と考えられています。第3章の最初の回の物差しを思い出してください。処分は、特定の人に当てはめる、個別・具体の決定でした。たしかに、道路の区域が決まると、その区域内の建築は許可制になります。ただ、この制限は、区域の中に土地を持つ人なら誰にでも、法令と同じように一律に掛かる、一般的・抽象的なものです。Xさんの家について、何かを具体的に決めたわけではありません。だから、取消訴訟の対象になる処分には当たらない、と解されます。計画の段階では、裁判所に行きにくい。これが、設例の最初の答えです。

ただし、計画の種類で結論は変わります。土地区画整理事業の計画は、最高裁が処分と認めました。区画整理では、計画が決まると、地区内の地主は、あとで換地、つまり整えた区画の土地への置き換えを受ける立場に、具体的に置かれるからです。その話は、別の回で扱います。ここでは、都市計画道路のような、都市施設の決定を考えます。二段目。計画のあとに、事業が始まります。事業を始めるには、認可が要ります。都市計画の地図の回で、計画から事業、収用へとつながる、と見た流れです。今日は、その流れを、争う入口として読み直します。

条文都市計画法59条1項・2項

都市計画法第59条第1項・第2項 1 都市計画事業は、市町村が、都道府県知事(第一号法定受託事務として施行する場合にあつては、国土交通大臣)の認可を受けて施行する。 2 都道府県は、市町村が施行することが困難又は不適当な場合その他特別な事情がある場合においては、国土交通大臣の認可を受けて、都市計画事業を施行することができる。

骨格です。1項、都市計画事業は、市町村が、都道府県知事の認可を受けて行う。2項は、市町村では難しいときに、都道府県が国土交通大臣の認可を受けて行う定めです。認可を受けた事業が、都市計画事業です。

条文都市計画法62条1項

都市計画法第62条第1項 国土交通大臣又は都道府県知事は、第五十九条の認可又は承認をしたときは、遅滞なく、国土交通省令で定めるところにより、施行者の名称、都市計画事業の種類、事業施行期間及び事業地を告示し、かつ、国土交通大臣にあつては関係都道府県知事及び関係市町村長に、都道府県知事にあつては国土交通大臣及び関係市町村長に、第六十条第三項第一号及び第二号に掲げる図書の写しを送付しなければならない。

骨格です。認可をしたら、遅滞なく、施行者の名称、事業の種類、事業施行期間、事業地を告示する。図書の写しの送付は細部です。この告示が、次の70条で効きます。

条文都市計画法70条1項

都市計画法第70条第1項 都市計画事業については、土地収用法第二十条(同法第百三十八条第一項において準用する場合を含む。)の規定による事業の認定は行なわず、第五十九条の規定による認可又は承認をもつてこれに代えるものとし、第六十二条第一項の規定による告示をもつて同法第二十六条第一項(同法第百三十八条第一項において準用する場合を含む。)の規定による事業の認定の告示とみなす。

骨格です。都市計画事業では、土地収用法の事業認定は行わず、59条の認可をもって代える。62条の告示は、事業認定の告示とみなす。事業認定とは、その土地を収用できる事業だと国土交通大臣や都道府県知事が認める行為でした。つまり、認可と告示によって、施行者は、事業地の土地を収用できる地位を得ます。設例なら、Xさんが売りたくないと言っても、家の敷地を最後は取られうる立場に置かれます。人の土地を取れる地位を与えるのですから、認可は、取消訴訟の対象になる処分です。

認可の要件から計画の違法へ(三段目=61条1号〔事業の内容が都市計画に適合〕/四段目=前提の計画が違法なら、計画に適合していても認可は適法と言えない/だから認可の取消訴訟の中で計画の違法を主張する) 図:認可の要件から計画の違法へ

  • 三段目=61条1号〔事業の内容が都市計画に適合〕
  • 四段目=前提の計画が違法なら、計画に適合していても認可は適法と言えない
  • だから認可の取消訴訟の中で計画の違法を主張する

三段目です。その認可が出る条件を、見ます。

条文都市計画法61条

都市計画法第61条 国土交通大臣又は都道府県知事は、申請手続が法令に違反せず、かつ、申請に係る事業が次の各号に該当するときは、第五十九条の認可又は承認をすることができる。 一 事業の内容が都市計画に適合し、かつ、事業施行期間が適切であること。 二 事業の施行に関して行政機関の免許、許可、認可等の処分を必要とする場合においては、これらの処分があつたこと又はこれらの処分がされることが確実であること。

骨格です。申請手続が法令に違反せず、かつ、事業が次の各号に当たるときは、認可ができる。一号、事業の内容が都市計画に適合し、事業施行期間が適切であること。二号は、他の許認可の関係です。注目は一号です。計画に適合していなければ、認可はできません。だったら、前提になっている計画が違法なら、それに適合しているというだけでは、認可も適法とは言えない、ということですか。四段目、結論です。計画の違法は、認可の取消訴訟の中で主張できます。認可が適法であるためには、前提の都市計画が適法でなければならないからです。次の一行を、板で確認します。

判決が確認した入口(都市計画法〔略〕は、都市計画事業認可の基準の一つとして、事業の内容が都市計画に適合することを掲げているから〔61条〕、都市計画事業認可が適法であるためには、その前提となる都市計画が適法であることが必要である。〔最判平18・11・2 民集60巻9号3249頁〕/審査の物差しと当てはめ=次回) 図:判決が確認した入口

  • 都市計画法〔略〕は、都市計画事業認可の基準の一つとして、事業の内容が都市計画に適合することを掲げているから〔61条〕、都市計画事業認可が適法であるためには、その前提となる都市計画が適法であることが必要である。〔最判平18・11・2 民集60巻9号3249頁〕
  • 審査の物差しと当てはめ=次回

これは、裁量の章で、都市計画の決定には広い裁量がある、と見た、小田急線の高架化の事件の判決です。その判決が、審理の冒頭で確認した部分です。鉄道の高架化を含む都市計画が変更され、事業の認可が出ました。周辺の住民が、認可の取消しを求め、その中で、前提の都市計画の違法を主張した事件です。今日は、入口の確認だけです。設例に戻ります。波野市の決定の段階では、裁判所に行きにくい。市が事業の認可を受け、告示が出たら、認可の取消訴訟を起こします。その中で、計画の違法、たとえば、説明会が形だけだったことや、道路の位置の選び方を、認可が違法になる理由として主張します。ただし、Xさんにその訴えを起こす資格があるのかは、別の問題です。原告適格の回で、扱います。想起の問いです。認可の取消訴訟で、なぜ計画の違法を言えるのでしょうか。

認可の要件に、計画に適合すること、があって、前提の計画が違法なら、認可も適法とは言えないからです。たとえるなら、計画は地図に引いた線、認可はその線どおりに工事を始める許可証です。線そのものは訴えにくくても、許可証が出る条件は線どおりであること。だから、線の誤りは、許可証の取消しを求める中で言えます。

つまずきどころ——違法性の承継との違い

比較(違法性の承継=先行行為も処分/出訴期間が過ぎた先行処分の違法を、後行処分の訴訟で主張できるか/計画と認可=先行の都市計画決定は処分でないと解される/認可の要件〔計画適合〕を判断する前提として計画の適法性を見る/取消しの対象は認可のまま) 図:比較

  • 違法性の承継=先行行為も処分
  • 出訴期間が過ぎた先行処分の違法を、後行処分の訴訟で主張できるか
  • 計画と認可=先行の都市計画決定は処分でないと解される
  • 認可の要件〔計画適合〕を判断する前提として計画の適法性を見る
  • 取消しの対象は認可のまま

似ていますが、違う形です。違法性の承継の問題は、先行の行為も処分で、その取消しを求める期間を過ぎたあとに、その違法を後の処分の訴訟で言えるか、というものでした。問題の所在は第4章で見ました。今日の場合、先行の都市計画決定は、処分ではないと解されます。だから、承継を認めるかどうか、という話にはなりません。後の認可の適法性を審査するときに、認可の要件、計画に適合すること、の判断の前提として、計画の適法性を見る。要件の審査の中に、前提の審査が入っているのです。注意点があります。計画決定の取消しを、認可の訴訟で求めるのではありません。取消しの対象は、あくまで認可です。計画の違法は、認可が違法になる理由として、主張するのです。設例でいえば、Xさんが求めるのは知事の認可の取消しで、波野市の都市計画決定の取消しではありません。

都市計画事業の認可と収用裁決の組み合わせでは、認可が先、収用裁決が後で、どちらも処分の関係でした。同じ認可が、計画から見れば後ろ、収用裁決から見れば前に立つわけです。今日の線とは、別の形です。

今日の地図(保存版)

今日の持ち帰り(①根拠=法的な影響を与える計画には必要/②計画裁量=広い〔基準が抽象的・利害調整・将来の見通し〕/③縛り方=策定手続+裁判所の審査〔中身は次回〕/④手続=16条の措置・17条の縦覧と意見書・審議会/行手法に計画策定手続は無い/⑤争う入口=事業認可の取消訴訟〔61条1号経由〕/この論点は論文で論点になりうる) 図:今日の持ち帰り

  • ①根拠=法的な影響を与える計画には必要
  • ②計画裁量=広い〔基準が抽象的・利害調整・将来の見通し〕
  • ③縛り方=策定手続+裁判所の審査〔中身は次回〕
  • ④手続=16条の措置・17条の縦覧と意見書・審議会/行手法に計画策定手続は無い
  • ⑤争う入口=事業認可の取消訴訟〔61条1号経由〕/この論点は論文で論点になりうる

まとめます。一つ目、計画に法律の根拠が要るかは、私人の権利義務に法的な影響を与えるかで決まります。二つ目、計画裁量は広く、その理由は、基準が抽象的なこと、利害の調整、将来の見通しです。三つ目、その広い裁量は、手続と裁判所の審査で縛ります。手続は、都市計画法の16条、17条、審議会で、計画策定の一般法は、行政手続法にもありません。四つ目、計画を争う入口は、事業認可の取消訴訟です。61条1号の計画適合を通して、前提の計画の違法を言います。ここは、論文でも論点になりえます。設例の答えです。計画が決まった段階では、裁判所に行きにくい。市が認可を受けて告示されたら、認可の取消訴訟を起こし、その中で、計画の違法を主張する。これが、道筋です。

計画の段階では争いにくくても、認可という次の処分が、窓口になるんですね。裁判所が、何を物差しに、計画の判断を審査したのかを、順に見ます。

参照条文

  • 都市計画法13条1項11号
  • 都市計画法16条1項・2項
  • 都市計画法17条1項〜3項
  • 都市計画法18条1項・2項
  • 行政手続法1条1項
  • 行政手続法2条8号
  • 都市計画法59条1項・2項
  • 都市計画法62条1項
  • 都市計画法70条1項
  • 都市計画法61条

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