行政法ゼロから行政法#74

行政指導とは何か

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第6章 行政契約・行政指導・行政計画 #74/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

G市の「お願い」は断ってよいか

今日の問い(G市の担当課/マンションを建てようとする業者/お願い①近隣の住民と話し合ってから着工してほしい②戸数を少し減らせないか/法律にそんな義務は書いていない/問い=断ったら何が起きるのか・この「お願い」は法的に何か) 図:今日の問い

  • G市の担当課
  • マンションを建てようとする業者
  • お願い①近隣の住民と話し合ってから着工してほしい②戸数を少し減らせないか
  • 法律にそんな義務は書いていない
  • 問い=断ったら何が起きるのか・この「お願い」は法的に何か

今日は、行政の「お願い」は断ってよいのか、という問いから始めます。設例は、架空のG市です。G市で、ある業者が、マンションを建てようとしています。法律上の建築の手続は、きちんと進んでいます。そこへ、市の担当課が来て、こう言います。近隣の住民と話し合ってから、着工してもらえませんか。それから、戸数を少し減らせませんか。ところが、法律のどこにも、住民と話し合えとも、戸数を減らせとも、書いてありません。業者は、これを断ってよいのでしょうか。断ったら、何が起きるのでしょうか。そもそも、この「お願い」は、法的に何なのでしょうか。

断っても法的には何も起きない、という面と、それでも断りにくい、という面。この両方が、今日の主題です。この「お願い」の名前が、行政指導です。先に、答えの形だけ言っておきます。断っても、法的な義務違反にはなりません。ただ、任意という建前だからこそ、法律の縛りが届きにくい。だから、定義で輪郭を決め、認めたうえで縛る。これが今日の筋です。

設例の関係図(A=G市の担当課/B=マンション業者/C=近隣住民/A→B=お願い〔点線=応じるかは任意〕/B⇄C=話し合い) 図:設例の関係図

  • A=G市の担当課
  • B=マンション業者
  • C=近隣住民
  • A→B=お願い〔点線=応じるかは任意〕
  • B⇄C=話し合い

関係を整理します。担当課Aから業者Bへ、お願いが出ています。線は点線です。命令ではなく、応じるかどうかが、Bの任意に委ねられているからです。Bの先には、近隣住民Cがいます。

今日の道順(1 なぜ問題になるのか/2 定義を4つの部品で読む/3 名前では決まらない/4 法律に根拠があるとき/5 3つの種類/6 行手法の地図/7 功罪/8 契約と並べる) 図:今日の道順

  • 1 なぜ問題になるのか
  • 2 定義を4つの部品で読む
  • 3 名前では決まらない
  • 4 法律に根拠があるとき
  • 5 3つの種類
  • 6 行手法の地図
  • 7 功罪
  • 8 契約と並べる

道順です。一つ目、なぜ行政指導が問題になるのか。二つ目、定義を、四つの部品で読みます。三つ目、名前では決まらないこと。そして四つ目は、法律が根拠を置く場合。五つ目、三つの種類。六つ目、行政手続法の地図。七つ目、良い面と悪い面。最後に、行政契約と並べて閉じます。

なぜ行政指導が問題になるのか

法律による行政の原理と行政行為(原理が想定してきたもの=行政行為〔権利を制約し義務を課す法的効果〕→だから法律で厳しく縛る/行政指導=任意が前提の事実行為→縛りが届きにくい/危険=「任意」の建前で原理が空洞化) 図:法律による行政の原理と行政行為

  • 原理が想定してきたもの=行政行為〔権利を制約し義務を課す法的効果〕→だから法律で厳しく縛る
  • 行政指導=任意が前提の事実行為→縛りが届きにくい
  • 危険=「任意」の建前で原理が空洞化

一つ目の問いは、なぜ行政指導が問題になるのか、です。その前に、第3章の復習を1問。行政の活動を分ける五つの型のうち、任意の協力を求める働きかけの型は、どれでしたか?行政指導です。応じるかは相手が決めて、応じなくても、法的には何も起きないんでした。命令と指導は、別の型でした。そこから、今日の問題が出てきます。法律による行政の原理は、行政が、私人の権利を制限したり、義務を課したりするときは、法律の根拠が要る、という考え方です。この原理が想定してきたのは、主に行政行為でした。行政行為は、法的な効果をもって、一方的に権利を制約し、義務を課します。力が強いから、法律で厳しく縛るのです。たとえば、市が業者に、工事を止めなさい、と命じる。従わなければ、法的な義務違反になります。だから、命じるには法律の根拠が要ります。これに対して、行政指導は、相手の任意が前提です。従うとしても、それは相手本人の意思です。法的には、権利を制限したことにも、義務を課したことにも、なりません。だから、法律で縛る対象として、あまり意識されてこなかったのです。

法的な効果が無いからといって、安心はできません。現実の行政と私人には、力の差があります。お願いを断ったら、あとで許可が遅れるかもしれない。そう思えば、本当は不本意でも、従ってしまいます。つまり、自分の意思で従ったという形の下で、法律の縛りをすり抜けて、自由が制約されかねません。任意という建前が、法律による行政の原理を、空洞にしてしまう。これが、行政指導の危険の中心です。一方で、行政指導には、相手のためになる面もあります。そこで、行政手続法は、行政指導をなくすのではなく、一つの行為形式として認めたうえで、規律することにしました。押さえるのは三点です。行政指導は、任意が前提の事実行為。危険は、任意の建前で原理が空洞になること。行政手続法は、認めたうえで規律する。

定義を4つの部品で読む

行政手続法2条6号(全文を4部品で色分け=①その任務又は所掌事務の範囲内において②一定の行政目的を実現するため③特定の者に一定の作為又は不作為を求める④処分に該当しないもの) 図:行政手続法2条6号

二つ目の問いです。行政指導は、行政手続法に定義があります。条文です。

条文行政手続法2条6号

行政手続法第2条第6号 六 行政指導 行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう。

長い一文なので、四つの部品に切って読みます。

部品①(その任務又は所掌事務の範囲内において=担当の範囲は組織規範・根拠規範は原則不要/建築指導課は範囲内・観光課は範囲外) 図:部品①

  • その任務又は所掌事務の範囲内において=担当の範囲は組織規範・根拠規範は原則不要
  • 建築指導課は範囲内・観光課は範囲外

部品の一つ目は、その任務または所掌事務の範囲内、です。所掌事務とは、その機関が受け持つ仕事でした。どんな機関に何を担当させるかを定めるのは、組織規範です。つまり、行政指導は、その機関の担当の範囲内でなければ、行政指導とすら言えません。範囲外の働きかけは、そもそも定義の外です。後で見る32条1項も、この範囲を逸脱してはならないと、念を押しています。G市で考えます。建築の指導を担当する課が、業者に戸数削減を求めるのは、範囲内です。観光を担当する課が、同じことを求めたら、範囲外です。権限がなければ頼めない、ということですか。そこは区別が要ります。行政指導は、権利を制限する力を与える根拠規範までは、原則として要りません。要るのは、担当の範囲という、組織規範です。権限を与える定めは要らないけれど、担当の範囲は要る。この違いは、あとで効いてきます。

部品②(一定の行政目的を実現するため=公的な目的があって頼む) 図:部品②(一定の行政目的を実現するため=公的な目的があって頼む)

部品の二つ目は、一定の行政目的を実現するため、です。公的な目的があって、頼むということです。

部品③(特定の者に一定の作為又は不作為を求める=町内全体への広報は外・業者Bへの個別の手紙は内・求めていない情報提供は外) 図:部品③

三つ目は、特定の者に、一定の作為または不作為を求める、です。作為とは何かをすること、不作為とは何かをしないことです。ここで大事なのは、特定の者に向いていることです。たとえば、町内全部に配る、節電にご協力ください、という広報は、特定の者に何かを求めていません。回覧板の貼り紙のようなもので、行政指導の定義の外です。これに対して、G市の担当課が、業者Bに宛てて、戸数を減らせませんか、と個別に手紙を出すのは、特定の者に向いています。単なる情報提供も、作為や不作為を求めていなければ入りません。ただし、中身として、求めていると解される場合は、入りえます。

部品④(処分に該当しないもの=相手の権利義務を一方的に具体的に決める行為でない/相手の立場を変えないので処分の手続・抗告訴訟の外/任意が前提=32条1項) 図:部品④

  • 処分に該当しないもの=相手の権利義務を一方的に具体的に決める行為でない
  • 相手の立場を変えないので処分の手続・抗告訴訟の外
  • 任意が前提=32条1項

四つ目は、処分に該当しないもの、です。処分とは、第1章で見た、行政が法律にもとづいて、相手の権利や義務を、一方的に具体的に決める行為でした。さきほどの行政行為と、ほぼ重なる言葉です。処分は、それだけで相手の法的な立場を変えます。だから、争うには、抗告訴訟、つまり、行政庁の公権力の行使に不服を言う訴えを使い、出す側には、行政手続法の処分の手続がかかります。行政指導は、相手の立場を変えないので、この世界の外に置かれます。相手の任意が前提、という性格は、あとで読む32条1項が、条文の形で言っています。従わなくても、法的な義務違反にならない、ということです。名前も確認します。条文は、指導、勧告、助言、その他の行為、と並べています。これは例示です。名前は決め手ではなく、決め手は四つの部品です。

⭐ 論文で書く規範:行政指導の定義(行手法2条6号):行政機関が、任務・所掌事務の範囲内で、行政目的の実現のため、特定の者に作為・不作為を求める、処分に当たらない行為。部品=①所掌事務の範囲内②行政目的③特定の者への作為・不作為④処分でない (短答・論文共通)

1問です。観光を担当する課が、マンション業者に、戸数削減を求めました。これは行政指導でしょうか。観光課の担当の範囲外だから、最初の部品を欠いていて、行政指導とは言えません。もう一つ、任意の協力という性格を、条文で確認します。

条文行政手続法32条

行政手続法第32条 行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、いやしくも当該行政機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならないこと及び行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意しなければならない。 2 行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。

1項は、担当の範囲を逸脱しないこと、そして、内容があくまで相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意する、と求めています。2項は、従わなかったことを理由にした不利益な取扱いの禁止です。つまり、断っても、法的な義務違反にならないし、断ったことを理由に、不利益を与えてもいけません。ここで、冒頭の問いに、半分答えます。G市の業者は、お願いを断っても、義務違反にはなりません。ただし、残りの半分があります。これはあとで回収します。

名前では決まらない——勧告でも処分のことがある

中身で決まる(名前=指導・勧告・助言・指示|決め手=従う義務があるか・従わないと不利益につながるか|平17・7・15=勧告と呼ばれても処分とされた例〔病院開設中止勧告〕/生活保護法27条の指導・指示=処分と解する理解が有力) 図:中身で決まる

  • 名前=指導・勧告・助言・指示
  • 決め手=従う義務があるか・従わないと不利益につながるか
  • 平17・7・15=勧告と呼ばれても処分とされた例〔病院開設中止勧告〕
  • 生活保護法27条の指導・指示=処分と解する理解が有力

三つ目の問いです。個別の法律に、指導、勧告、助言と書いてあれば、それは行政指導でしょうか。通常は、そう読まれます。法律の中の、指導、勧告、助言という言葉は、たいていは、任意の協力を前提とする行政指導に当たります。しかし、名前だけでは決まりません。例があります。病院を開設しようとする人に対して、都道府県知事が出す、開設を中止してほしいという勧告について、最高裁は、勧告という名前でも、処分に当たると判断しました。勧告に従わないと、健康保険が使える病院としての指定を、受けられなくなることが、相当程度確実でした。保険が使えない病院は、実際上、開設をあきらめるしかありません。処分に当たるなら、行政指導の定義の四つ目の部品、処分に該当しないもの、から外れます。そうなると、この勧告そのものを、抗告訴訟で争えます。この判決の中身は、処分性の回で、改めて扱います。ここでは、名前が勧告でも処分とされた例がある、という点だけ押さえてください。もう一つ、対比の例を出します。生活保護法の27条に、指導または指示、という言葉があります。名前は、指導です。ところが、同じ法律の62条に、この指導や指示に従う義務が定められていて、従わなければ、保護の変更、停止、廃止ができる仕組みになっています。そのため、27条の指導や指示は、処分と解する理解が有力です。

ただし、27条の3項は、この指導や指示を、保護を受けている人、つまり被保護者の意に反して強制し得るものと解釈してはならない、とも定めています。ですから、処分と言い切れるわけではなく、処分と解する理解が有力、にとどまります。また、同じ法律の27条の2、相談及び助言は、あとに続く不利益処分が予定されておらず、行政指導です。つまり、決め手は名前ではありません。従う義務があるか。従わないと不利益につながる仕組みがあるか。この中身で決まります。第3章の地図でも、型は、名前ではなく中身で決まる、と見ました。同じことです。

⭐ 論文で書く規範:行政指導か処分かは、名前(指導・勧告・助言)ではなく中身で決まる。従う義務があり、従わないと不利益につながる仕組みがあれば、処分と解される。勧告でも処分とされた例がある (短答・論文共通)

法律が根拠を置くとき——法定行政指導

個人情報保護法の段階(助言・指導〔147条=違反の事実を前提としない〕→勧告〔148条1項=違反を前提に中止・是正措置を求める〕→命令〔148条2項=正当な理由なく従わず重大な権利利益の侵害が切迫と認めるとき〕→罰則〔178条=命令違反〕/148条3項=緊急時は勧告を経ずに命令/命令の前は行政指導=従う義務を生まない) 図:個人情報保護法の段階

  • 助言・指導〔147条=違反の事実を前提としない〕→勧告〔148条1項=違反を前提に中止・是正措置を求める〕→命令〔148条2項=正当な理由なく従わず重大な権利利益の侵害が切迫と認めるとき〕→罰則〔178条=命令違反〕
  • 148条3項=緊急時は勧告を経ずに命令
  • 命令の前は行政指導=従う義務を生まない

四つ目の問いです。行政指導には、法律の根拠が要るのでしょうか。結論から言うと、原則として、作用法上の根拠、つまり、さきほどの、権限を与える根拠規範は、要りません。権利を制限しない、任意のお願いだからです。一つ目の問いで見たとおり、根拠が要るのは、権利を制限したり、義務を課したりするときでした。第1章で、侵害留保説と呼んだ考え方です。行政指導は、そのどちらにも当たりません。ただし、要らない、というのは、根拠がなくても適法、という意味です。法律が根拠を置いてはいけない、という意味ではありません。実際、個別の法律が、行政指導の根拠を置く例は、たくさんあります。これを、法定行政指導と呼びます。理由の詳しい説明は、別の回で扱います。ここでは、置かれることがある、ということと、置かれたら縛られる、ということだけ押さえます。例を、個人情報保護法で見ます。国の機関である、個人情報保護委員会が、個人情報を扱う事業者に、指導や助言をする規定があります。147条です。違反の事実がなくても、出せます。そして、148条の1項は、違反があった場合に、中止などの是正措置を取るよう、勧告できると定めます。場面で見ます。ある通販会社が、集めた顧客の名簿を、本人の同意なく、別の会社に渡していたとします。委員会は、まず、やめるよう勧告できます。

勧告は、命令と違い、従う義務を生みません。ですから、従わなくても、それだけで義務違反ではありません。ただ、148条の2項は、勧告に正当な理由なく従わず、個人の重大な権利利益の侵害が切迫していると認めるときに、命令を出せると定めます。命令に違反すれば、178条で、罰則があります。つまり、この2項の流れでは、指導や助言、勧告、命令、罰則と、段階を踏む仕組みです。なお、148条の3項は、重大な権利利益を害する事実があって、緊急に措置をとる必要があるときは、勧告を経ずに命令を出せると定めています。勧告に従わなくても、あとで命令が出るかもしれない。ただし、確実ではありません。この、事前の警告としての働きは、あとの功罪で、もう一度使います。法定行政指導だと、何が変わるのか。法律が根拠を置いたなら、その要件や手続の縛りが、かかります。もう一つ、法律が要件を定めたなら、指導がその要件に合っているかを、問えるようになります。指導を受けた人が、この指導は法律の要件に合っていない、と考えたときに、指導の中止などを求められます。行政指導の中止等の求め、と呼ばれ、36条の2が定めています。たとえば、さきほどの通販会社が、名簿の渡し方は法律に違反していない、と考えるなら、委員会に、勧告をやめるよう申し出られます。使えるのは、法律に根拠がある指導で、違反を正すよう求めるもの、つまり是正要求型に限られます。また、弁明など意見を述べる手続を経たうえでされた指導は、対象から除かれます。仕組みの中身は、別の回で扱います。

⭐ 論文で書く規範:行政指導に作用法上の根拠は原則不要。ただし個別法が根拠を置く法定行政指導があり、置かれればその要件・手続に縛られる。個人情報保護法は、助言・指導→勧告→命令→罰則と段階を踏む (短答)

機能による3分類

3分類の表(規制的=相手の活動を規制する・不利益に作用・原理に照らして最も問題/助成的=情報提供など相手の活動を助ける・利益的〔教示・ノーアクションレター〕/調整的=私人間の紛争に介入し解決を探る→受ける側から見れば規制的) 図:3分類の表

  • 規制的=相手の活動を規制する・不利益に作用・原理に照らして最も問題
  • 助成的=情報提供など相手の活動を助ける・利益的〔教示・ノーアクションレター〕
  • 調整的=私人間の紛争に介入し解決を探る→受ける側から見れば規制的

五つ目の問いです。行政指導は、機能で、三つに分けて整理されます。一つ目は、規制的な行政指導です。相手の活動を規制する方向で、働きます。相手には不利益に作用します。たとえば、飲食店に、営業時間を短くしてもらえませんか、と求めるのが、これです。法律による行政の原理に照らして、最も問題になるのが、この型です。行政手続法も、主に、この型を念頭に規律を置いています。二つ目は、助成的な行政指導です。情報提供などで、相手の活動を助けます。相手には利益になります。たとえば、商店街の店主に、使える補助金を案内して、申請を勧めるのが、これです。教示、つまり、不服申立てなどについて、行政が相手に教える行為は、情報提供に尽きて、特定の行政目的を達成する意図は伴わないので、行政指導との間に線があります。また、ノーアクションレターという、事前に法令の適用を確認する仕組みも、助成的の例として、名前だけ挙げておきます。三つ目は、調整的な行政指導です。私人どうしの紛争に、行政が間に入って、解決を探ります。

G市は、近隣住民と業者の間の折り合いをつけるために、業者に求めています。ですから、調整的です。ところが、求められた業者から見れば、戸数を減らす、という負担を求められています。調整的な指導は、指導を受ける側から見ると、規制的な指導です。もう1点です。この三分類は、学説上の整理で、条文の区分ではありません。相互に排他的でもなく、一つの指導が、二つの顔をもつことがあります。

⭐ 論文で書く規範:行政指導の機能別3分類:規制的・助成的・調整的。学説上の整理で条文上の区分ではなく、排他的でもない。調整的指導は、受ける側から見れば規制的 (短答)

1問です。調整的な指導は、指導を受ける側から見ると、何的な指導でしたか。規制的です。受けた業者は、負担を求められるからです。

行手法が特に規律する類型と地方公共団体の注意書き

行手法の地図(一般原則=32条/申請に関連する指導=33条/許認可等の権限に関連する指導=34条/方式=35条/複数の者を対象とする指導=36条/中止等の求め=36条の2|注意=地方公共団体の機関がする行政指導には行手法の行政指導の規定は適用されない〔3条3項〕→行政手続条例〔行手法46条=努力義務〕) 図:行手法の地図

  • 一般原則=32条
  • 申請に関連する指導=33条
  • 許認可等の権限に関連する指導=34条
  • 方式=35条
  • 複数の者を対象とする指導=36条
  • 中止等の求め=36条の2
  • 注意=地方公共団体の機関がする行政指導には行手法の行政指導の規定は適用されない〔3条3項〕→行政手続条例〔行手法46条=努力義務〕

六つ目の問いです。行政手続法は、行政指導の一般原則として、先ほどの32条を置いています。そのうえで、特に規律する場面を、いくつか定めています。一言ずつ言います。33条は、申請に関連する指導のうち、申請の取下げや内容の変更を求めるものです。申請した人が、従わないと言っているのに、指導を続けて、申請の権利の行使を妨げてはいけません。34条は、許認可等の権限に関連する指導です。許認可等の権限とは、許可や認可を出したり、取り消したりできる権限のことです。その権限を、使えない場面や、使うつもりがない場面で、使えるかのように示して、従わせてはいけません。たとえば、取り消す理由も無いのに、従わないなら許可を取り消すこともありますよ、とほのめかすのが、これに当たります。35条は、方式です。指導の趣旨、内容、責任者を、はっきり示します。36条は、複数の者を対象とする指導です。同じ目的で複数の相手に指導するなら、共通の指針を定めて、原則として公表します。最後の36条の2は、さきほどの中止等の求めです。中身は、順に別の回で扱います。注意書きが一つあります。地方公共団体の機関がする行政指導には、行政手続法の行政指導の規定は、適用されません。3条3項です。その団体が定める、行政手続条例によります。もっとも、多くの行政手続条例は、行政指導について、行政手続法とほぼ同じ内容の定めを置いています。ですから、市や町の指導でも、行政手続法の条文と同じ物差しで考えることが多いのです。行政手続法の46条が、地方公共団体に、条例などの措置を講ずる努力を求めています。

G市の機関がする行政指導なので、行政手続法ではなく、G市の行政手続条例の問題になります。定義の読み方は同じですが、適用される法が違います。

行政指導の功罪

功罪の表(利点=機動性〔法律の整備前に動ける・法律がないからと手をこまねかない〕/権限発動前の警告・事前手続として働く/窓口で先に指導を受けるほうが後で拒否処分を受けるより便宜な面|欠点=①「任意」の建前の下で根拠なく自由を制約しうる②密室で行われ・した/しない・内容・責任者があいまい③争いにくい|行手法=否定せず所定の方式を要求) 図:功罪の表

  • 利点
    • 機動性〔法律の整備前に動ける・法律がないからと手をこまねかない〕
    • 権限発動前の警告・事前手続として働く
    • 窓口で先に指導を受けるほうが、後で拒否処分を受けるより便宜な面
  • 欠点
    • ①「任意」の建前の下で、根拠なく自由を制約しうる
    • ②密室で行われ、した/しない・内容・責任者があいまい
    • ③争いにくい
  • 行手法=否定せず、所定の方式を要求

七つ目の問いです。行政指導には、良い面と悪い面があります。良い面は三つです。一つ目は、機動性です。法律を整備する前に動けます。緊急の課題が出たとき、法律がないからと手をこまねかずに、当面の手当てが打てます。たとえば、危ない新商品が出回り始めたのに、まだ規制する法律がない。そこで、販売店に、売るのを控えてもらえませんか、と頼むのです。二つ目は、権限発動前の警告として働くことです。権限があっても、先に任意の履行を促す。さきほどの通販会社への勧告が、まさにそうでした。三つ目は、相手の便宜です。たとえば、G市で建築の申請を出す前に、窓口で、このままでは通りません、と言ってもらえれば、設計を直してから出せます。悪い面も三つです。一つ目は、任意の建前の下で、法律の根拠なく、自由を制約しうることです。承諾したという形が、名ばかりになりえます。二つ目は、密室で行われやすいことです。した、しない、内容、日時、責任者が、あいまいになり、言った言わないの争いになります。三つ目は、争いにくいことです。処分ではないので、訴訟の対象になりにくい。これは、争い方の回で見ます。

便利なのに危ない、ということですね。行手法は、どっちの味方なんですか。中立です。機動性や事前の警告という良い面があるので、行政指導を禁止はしません。その代わり、悪い面を抑えるために、方式を求めます。たとえば35条は、指導の趣旨、内容、責任者をはっきり示せ、と求めます。密室で、言った言わないになる、という二つ目の悪い面への手当てです。ここで、冒頭の問いの残り半分を回収します。G市の業者は、断ってよいか。断っても、法的な義務違反にはなりません。国の機関なら、32条2項が、断ったことを理由にした不利益な取扱いを禁じています。G市の行政手続条例にも、同じ趣旨の定めがあるとします。ただし、実際には、市が許認可の権限を持っていると、断りにくくなります。その場面は、別の回で見ます。

⭐ 論文で書く規範:行政指導の功罪:利点=機動性・権限発動前の警告・相手の便宜/欠点=任意の建前で自由を制約・密室であいまい・争いにくい。行手法は中立(認めたうえで方式を要求)。断っても義務違反にならないが、権限を背景にされると断りにくい (短答・論文共通)

行政契約と並べて閉じる・まとめ

行政契約と行政指導の比較表(共通点と違い=共通は非権力的・任意の協力が前提・根拠規範は原則不要/違いは指導が事実行為で従う義務を生まず実効性確保が任意性を損なってはならない〔32条2項〕・契約は合意で拘束力|問題が出る場面=規制的に作用するとき:契約=公害防止協定/指導=規制権限の前段・代替) 図:行政契約と行政指導の比較表

  • 共通点=非権力的・任意の協力が前提・根拠規範は原則不要
  • 違い
    • 指導=事実行為で従う義務を生まず、実効性確保が任意性を損なってはならない〔32条2項〕
    • 契約=合意で拘束力
  • 問題が出る場面=規制的に作用するとき
    • 契約=公害防止協定
    • 指導=規制権限の前段・代替

最後に、行政契約と並べます。行政契約の回では、契約の側から並べたところです。1問です。契約が生む法的な効果と、指導が生まない法的な効果は、何が違いましたか。契約は、合意で権利義務を生んで、守る義務が出ます。指導は、お願いだけで、従う義務を生みません。指導の側から、一文で閉じます。指導は、従う義務を生まない代わりに、従わせるための手段が、任意性を損なってはならない、という約束事の下にあります。どちらも、任意の協力が前提で、根拠規範が原則要らない点は、共通です。そして、どちらも、規制的に作用する場面で、問題が出ます。契約なら、地方公共団体と事業者が、公害を防ぐために交わす取決め、公害防止協定でした。指導は、規制の権限の前段や、代わりとして使われる場面です。

今日の地図(定義4部品/名前では決まらない/法定行政指導/3分類/行手法の地図/功罪) 図:今日の地図

  • 定義4部品
  • 名前では決まらない
  • 法定行政指導
  • 3分類
  • 行手法の地図
  • 功罪

今日の答えです。行政指導とは、行政機関が、任務や所掌事務の範囲内で、行政目的の実現のため、特定の者に作為や不作為を求める、処分に当たらない行為です。任意が前提だから法律の縛りが届きにくく、だから定義で輪郭を決め、認めたうえで規律する、というのが筋でした。名前では決まらず、中身で決まります。個別法が根拠を置く、法定行政指導もあります。機能で、規制的、助成的、調整的に整理されます。行政手続法は、33、34、36条などで、特に規律します。良い面は機動性、悪い面は密室と争いにくさです。定義と処分との区別は、論文でも論点になりえます。

今日の短答の誤り肢(行政指導は法律の根拠がなければ行えない〔誤り〕/「勧告」と書いてあれば必ず行政指導〔誤り〕/国民への一般的な広報も行政指導〔誤り〕/行政指導に従わないと法的義務違反〔誤り〕/行手法の行政指導の規定は地方公共団体の機関の行政指導にも適用〔誤り〕) 図:今日の短答の誤り肢

  • 行政指導は法律の根拠がなければ行えない〔誤り〕
  • 「勧告」と書いてあれば必ず行政指導〔誤り〕
  • 国民への一般的な広報も行政指導〔誤り〕
  • 行政指導に従わないと法的義務違反〔誤り〕
  • 行手法の行政指導の規定は地方公共団体の機関の行政指導にも適用〔誤り〕

短答の肢を、五つ読みます。一つ目。行政指導は、法律の根拠がなければ行えない。誤りです。作用法上の根拠は、原則として要りません。二つ目。勧告と書いてあれば、必ず行政指導である。誤りです。勧告という名前でも、処分とされた例があります。中身で決まります。三つ目。国民への一般的な広報も、行政指導である。誤りです。特定の者に求めるものではないので、定義の外です。四つ目。行政指導に従わないと、法的な義務違反になる。誤りです。従う義務を生みません。五つ目。行政手続法の行政指導の規定は、地方公共団体の機関がする行政指導にも適用される。誤りです。適用されず、その団体の行政手続条例によります。

参照条文

  • 行政手続法2条6号
  • 行政手続法32条

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