行政法ゼロから行政法#101

秩序罰と過料の手続、刑罰との関係

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第7章 行政調査・義務履行確保・行政罰 #101/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

刑罰ではない罰

今日の3つの問い(問い1=刑罰ではない罰とは何か/問い2=同じ過料でも誰が科すのか/問い3=同じ行為に過料と刑罰を両方科してよいのか/設例=転入届を出し忘れた会社員Aと、路上喫煙禁止の町で吸ったB) 図:今日の3つの問い

  • 問い1=刑罰ではない罰とは何か
  • 問い2=同じ過料でも誰が科すのか
  • 問い3=同じ行為に過料と刑罰を両方科してよいのか
  • 設例=転入届を出し忘れた会社員Aと、路上喫煙禁止の町で吸ったB

引っ越したのに、転入の届出を出し忘れた。そんな会社員のAのもとに、ある日、裁判所から通知が届きます。届出の遅れについて、過料を科すかどうか、意見を聞きたい、という内容です。犯罪者にはなりません。前科もつきません。刑罰ではない罰だからです。ここが、今日の出発点です。同じころ、路上喫煙を禁じる条例のある町で、指定された地区でたばこを吸ったBに、町から過料の通知が届きます。どちらも同じ過料です。ところが、Aには裁判所が、Bには町長が科します。この違いが、払わなかったとき、争いたいときの道を、全部分けてしまいます。問いは3つです。1つ目、刑罰ではない罰とは、何か。2つ目、同じ過料でも、誰が、どんな手続で科すのか。3つ目、同じ行為に、過料と刑罰を両方科してよいのか。3つ目だけ先に言います。科せます。理由は最後に確かめます。前回は、行政罰の1本目、刑罰を見ました。今日は2本目の過料です。そして最後に、第7章の後半を、守らせる手段の地図で閉じます。

秩序罰と3つの「かりょう」

前回までの確認(問い=将来の履行を促して履行まで繰り返す過料は何罰か/過去の違反に1回科す過料とはどこが違うか) 図:前回までの確認

  • 問い=将来の履行を促して履行まで繰り返す過料は何罰か
  • 過去の違反に1回科す過料とはどこが違うか

先に、確認です。将来の履行を促して、履行されるまで繰り返す過料は、何罰でしたか?執行罰です。守らせる手段の地図では、Aの、履行を強制するほうでした。今日の過料は、それとは別物で、地図ではBの、制裁のほうです。過去の違反に、1回科します。定義です。秩序罰とは、行政上の秩序に障害を与えるおそれのある、比較的軽い義務違反に科す、金銭の制裁です。名前は、過料。届出が遅れた、といった違反が典型です。人を傷つけたり、財産を奪ったりする悪さがあるわけではなく、決まりの形を守らなかったことを咎める罰です。刑罰ではない、という点が決定的です。過料は、刑法に刑名のある罰、つまり刑法9条が刑の種類として並べる、死刑、拘禁刑、罰金、拘留、科料、没収のどれでもありません。ですから、刑法の総則は適用されず、手続も刑事訴訟とは別です。そして、前科にはなりません。前回の行政刑罰は、刑法の総則が適用され、刑事裁判で科されました。ここで、はっきり分かれます。

3つの「かりょう」(科料=刑罰・1,000円以上1万円未満〔刑法17条〕・納められないと労役場留置〔刑法18条2項〕/執行罰の過料=将来の履行を促す・履行まで繰り返せる・砂防法36条/秩序罰の過料=過去の違反への制裁・1回・刑罰ではない・前科にならない) 図:3つの「かりょう」

  • 科料=刑罰・1,000円以上1万円未満〔刑法17条〕・納められないと労役場留置〔刑法18条2項〕
  • 執行罰の過料=将来の履行を促す・履行まで繰り返せる・砂防法36条
  • 秩序罰の過料=過去の違反への制裁・1回・刑罰ではない・前科にならない

耳で聞くと同じ「かりょう」が、全部で3つあります。1枚に並べます。1つ目は、科料。「科」に、料金の「料」と書きます。こちらは刑罰です。主な刑の中でいちばん軽く、1,000円以上1万円未満。刑法17条です。納められないときは、労役場に留置されます。刑法18条2項です。2つ目は、執行罰の過料。前に見たとおり、将来の履行を促す手段で、履行されるまで繰り返せます。現行法では、砂防法36条だけでした。3つ目が、今日の秩序罰の過料です。過去の違反への制裁で、1回。刑罰ではありません。もう1つ、取り立ての違いがあります。科料は、納めないと、労役場留置という身体の拘束になります。過料には、それがありません。お金の請求として取り立てられるだけです。その取り立ての方法は、あとで見ます。補足です。過料という名前でも、裁判の手続の中で科されるものや、特別な監督関係での懲戒として科されるもの、たとえば、裁判官への懲戒の過料があります。行政上の義務違反への秩序罰とは別物です。ただ、裁判の手続のほうは、最後の、併科、つまり過料と刑罰を両方科す話の入口になります。問いです。科料、執行罰の過料、秩序罰の過料のうち、刑罰はどれでしょうか。そして、過去の違反に1回科すのは、どれでしょうか。

刑罰は、科料です。過去の違反に1回科すのは、秩序罰の過料です。

典型は届出義務違反

典型の届出義務違反(住民基本台帳法=転入した日から14日以内に届出〔22条1項〕・正当な理由なく届出をしない者は5万円以下の過料〔52条2項〕/戸籍法137条=正当な理由なく期間内にすべき届出又は申請をしない者は5万円以下の過料/特徴=人の生命・身体・財産を侵さない形式的な違反) 図:典型の届出義務違反

  • 住民基本台帳法=転入した日から14日以内に届出〔22条1項〕・正当な理由なく届出をしない者は5万円以下の過料〔52条2項〕
  • 戸籍法137条=正当な理由なく期間内にすべき届出又は申請をしない者は5万円以下の過料
  • 特徴=人の生命・身体・財産を侵さない形式的な違反

設例のAに戻ります。住民基本台帳法は、転入をした日から14日以内に届け出ることを求めています。22条1項です。正当な理由なく届出をしない者は、5万円以下の過料です。52条2項です。同じ型の条文を、戸籍法から読みます。

条文戸籍法137条

戸籍法第137条 正当な理由がなくて期間内にすべき届出又は申請をしない者は、五万円以下の過料に処する。

骨格は、正当な理由がなく、期間内にすべき届出や申請をしない者は、5万円以下の過料、です。正当な理由とは、たとえば、入院していて、物理的に届け出られなかった、といった事情です。ただ忘れていた、というだけでは、まず認められません。ここで、覚えてほしいのは、典型の形です。人の生命や身体、財産を傷つけるのではなく、届出という形式を守らなかった違反。軽い、形式的な義務違反に過料、という組み合わせです。

手続その1——法律の過料は裁判所が科す

法律の過料の流れ(Aが転入届を出さない→行政庁などが裁判所に通知→地方裁判所が検察官の意見と当事者の陳述を聴く→過料の裁判〔決定・理由を付す〕→不服=即時抗告/納めない=検察官の命令で執行〔執行力のある債務名義と同一の効力〕) 図:法律の過料の流れ

  • Aが転入届を出さない→行政庁などが裁判所に通知→地方裁判所が検察官の意見と当事者の陳述を聴く→過料の裁判〔決定・理由を付す〕→不服=即時抗告
  • 納めない=検察官の命令で執行〔執行力のある債務名義と同一の効力〕

法律に定める過料から見ます。設例のAは、14日を過ぎても、転入届を出していません。市区町村などの行政庁が、これに気づいて裁判所に知らせると、過料の事件が始まります。科すかどうかを決めるのは、役所ではなく、裁判所です。どこの裁判所か。非訟事件手続法119条です。非訟事件とは、前に制裁の一覧で触れたとおり、刑事裁判でも通常の訴訟でもない、裁判所が簡単な手続で処理する事件です。

条文非訟事件手続法119条

非訟事件手続法第119条(管轄裁判所) 過料事件(過料についての裁判の手続に係る非訟事件をいう。)は、他の法令に特別の定めがある場合を除き、当事者(過料の裁判がされた場合において、その裁判を受ける者となる者をいう。以下この編において同じ。)の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。

骨格は、過料事件は、当事者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所の管轄、です。普通裁判籍とは、人の場合は、ふつう住所で決まる、裁判所の管轄の基準です。Aなら、Aの住所地を管轄する地方裁判所に、事件が行きます。他の法令に特別の定めがあれば、そちらが優先します。裁判の中身は、120条です。

条文非訟事件手続法120条

非訟事件手続法第120条第1項から第3項(過料についての裁判等) 過料についての裁判には、理由を付さなければならない。 2 裁判所は、過料についての裁判をするに当たっては、あらかじめ、検察官の意見を聴くとともに、当事者の陳述を聴かなければならない。 3 過料についての裁判に対しては、当事者及び検察官に限り、即時抗告をすることができる。この場合において、当該即時抗告が過料の裁判に対するものであるときは、執行停止の効力を有する。

骨格は3つです。1つ、裁判には理由を付ける。2つ、あらかじめ、検察官の意見を聴き、当事者の陳述を聴く。3つ、不服があれば、当事者と検察官に限り、即時抗告ができる。即時抗告とは、裁判所の決定に対する、上級の裁判所への不服申立てです。しかも、過料の裁判への即時抗告は、執行停止の効力を持ちます。申し立てている間は、取り立てが止まります。過料の裁判では、検察官にも役があります。そこが特徴です。ここでの検察官は、起訴をする役ではありません。裁判の前に意見を述べ、そして、裁判のあとに執行をする役です。検察官は、法律の上で、公益の代表者という役も持っています。過料は、私人どうしの争いではなく、公の秩序のための制裁です。だから、公益の側に立つ検察官が、意見を述べ、執行します。刑事裁判ではありませんから、刑事訴訟の手続でもありません。設例のAは、まず、陳述の機会を与えられます。そのうえで、裁判所が、過料の裁判をします。決定の形です。簡単な事件のための略式もあります。122条です。裁判所が相当と認めるときは、陳述を聴かずに裁判ができます。不服があれば、告知から1週間の不変期間内に、異議を申し立てます。適法な異議があれば、陳述を聴いて、もう一度裁判します。名前を知っていれば足ります。納めなければどうなるか。121条1項です。

条文非訟事件手続法121条1項

非訟事件手続法第121条第1項(過料の裁判の執行) 過料の裁判は、検察官の命令で執行する。この命令は、執行力のある債務名義と同一の効力を有する。

過料の裁判は、検察官の命令で執行します。その命令は、執行力のある債務名義と、同一の効力を持ちます。債務名義とは、強制執行を始める根拠になる書面で、判決のようなものです。ですから、検察官の命令だけで、民事の強制執行の手続、つまり差押えなどに進めます。2項は、その執行を、民事執行法などに従ってする、と定めています。性質は、行政作用、つまり行政の働きだと説明されます。中身が、行政上の義務違反への制裁だからです。ただ、科す手続が、裁判所の裁判の形をとっています。行政庁の処分ではありませんから、取消訴訟ではなく、裁判所の中の、即時抗告で争うのです。

設例Aの過料(A=転入届を怠った会社員/地方裁判所=過料の裁判/検察官=意見を述べ、裁判後は命令で執行/A→不服=即時抗告/納めない=検察官の命令で執行) 図:設例Aの過料

  • A=転入届を怠った会社員
  • 地方裁判所=過料の裁判
  • 検察官=意見を述べ、裁判後は命令で執行
  • A→不服=即時抗告
  • 納めない=検察官の命令で執行

設例を整理します。Aは、陳述を聴かれ、地方裁判所が過料を決めます。不服なら即時抗告、納めなければ検察官の命令で執行です。

手続その2——自治体の過料は長が処分として科す

自治体の過料の根拠(条例=5万円以下の過料〔地方自治法14条3項〕/長の規則=5万円以下の過料〔15条2項〕/科す者=長〔149条3号〕/設例B=路上喫煙禁止条例の指定地区でたばこを吸った) 図:自治体の過料の根拠

  • 条例=5万円以下の過料〔地方自治法14条3項〕
  • 長の規則=5万円以下の過料〔15条2項〕
  • 科す者=長〔149条3号〕
  • 設例B=路上喫煙禁止条例の指定地区でたばこを吸った

次は、Bの過料です。まず、根拠は、前に見ました。地方自治法14条3項は、条例の中に、5万円以下の過料を置けると定め、15条2項は、長の規則にも、5万円以下の過料を置けると定めていました。問題は、誰が、どう科すかです。149条3号を読みます。

条文地方自治法149条3号

地方自治法第149条第3号(普通地方公共団体の長の担任事務) 普通地方公共団体の長は、概ね左に掲げる事務を担任する。 三 地方税を賦課徴収し、分担金、使用料、加入金又は手数料を徴収し、及び過料を科すること。

骨格は、長の事務に、過料を科すること、が含まれている、です。地方税を課して集める仕事と並んでいます。税と同じく、長が、自分の権限で決める仕事だということです。Bの同意を待たずに、Bに過料を納める義務を、一方的に負わせます。第3章で見た処分の定式、個別の相手の義務を一方的に決める行為に、そのまま当たります。つまり、行政処分です。Aの過料を裁判所が決めたのとは、ここが違います。科す前の手続が、255条の3です。

条文地方自治法255条の3

地方自治法第255条の3 普通地方公共団体の長が過料の処分をしようとする場合においては、過料の処分を受ける者に対し、あらかじめその旨を告知するとともに、弁明の機会を与えなければならない。

長が過料の処分をしようとするときは、あらかじめ告知し、弁明の機会を与えなければなりません。弁明とは、処分を受ける人が、自分の言い分を述べることです。設例のBです。指定地区でたばこを吸ったBに、町長が、過料を科す、と告知します。Bは、弁明の機会を与えられ、そのうえで、町長が過料の処分をします。納付を命じる処分です。納めなければ、どうなるか。231条の3第1項です。

条文地方自治法231条の3第1項

地方自治法第231条の3第1項(督促、滞納処分等) 分担金、使用料、加入金、手数料、過料その他の普通地方公共団体の歳入を納期限までに納付しない者があるときは、普通地方公共団体の長は、期限を指定してこれを督促しなければならない。

過料も、普通地方公共団体の歳入の1つです。納期限までに納めない者があれば、長は、期限を指定して督促しなければなりません。そして、督促しても納めないときは、3項です。前に、強制徴収の回で読みました。分担金、加入金、過料などは、地方税の滞納処分の例により処分できる、とありました。過料の文字が、ちゃんと入っていましたね。裁判所も検察官も、要りません。行政が、自分の力で、財産を差し押さえて、取り立てます。争い方も、行政処分の道です。処分を争う道は、役所に見直しを求める審査請求と、裁判所に処分を取り消してもらう取消訴訟でした。Bも、このどちらかです。なお、督促や滞納処分への審査請求には、議会への諮問という特則があります。231条の3第7項です。また、督促や滞納処分を裁判で争うには、先に審査請求の裁決を経る必要があります。同じ条の10項です。名前だけ知っていれば足ります。

設例Bの過料(B=路上喫煙をした人/町長=告知・弁明の機会・過料の処分/B→納めない=督促〔231条の3第1項〕→地方税の滞納処分の例〔同条3項〕/B→不服=審査請求・取消訴訟) 図:設例Bの過料

  • B=路上喫煙をした人
  • 町長=告知・弁明の機会・過料の処分
  • B→納めない=督促〔231条の3第1項〕→地方税の滞納処分の例〔同条3項〕
  • B→不服=審査請求・取消訴訟

設例を整理します。町長が告知し、弁明を聴き、過料の処分。納めなければ督促、そして地方税の滞納処分の例。不服なら、審査請求か取消訴訟です。

2つの系統を対で覚える

2系統の対比(行=科す者/事前の手続/争い方/取り立て方/根拠 列=①法律の過料:地方裁判所〔過料の裁判〕/検察官の意見+当事者の陳述/即時抗告/検察官の命令で執行〔債務名義と同一の効力〕/非訟事件手続法119条以下 ②自治体の過料:長〔行政処分〕/告知+弁明の機会/審査請求・取消訴訟/督促→地方税の滞納処分の例/地方自治法255条の3・231条の3) 図:2系統の対比(行=科す者/事前の手続/争い方/取り立て方/根拠 列=①法律の過料:地方裁判所〔過料の裁判〕/検察官の意見+当事者の陳述/即時抗告/検察官の命令で執行〔債務名義と同一の効力〕/非訟事件手続法119条以下 ②自治体の過料:長〔行政処分〕/告知+弁明の機会/審査請求・取消訴訟/督促→地方税の滞納処分の例/地方自治法255条の3・231条の3)

2つを並べます。法律の過料は、地方裁判所が科し、即時抗告で争い、取り立ては検察官の命令。自治体の過料は、長が科し、審査請求か取消訴訟で争い、取り立ては督促と滞納処分の例です。大事なのは、バラバラに覚えないことです。科す者が違うから、争い方と取り立て方が、まとめて変わります。喩えるなら、同じ警告カードでも、審判が出すものと、店長が自分で出すものがあります。審判が出したカードへの異議は、審判団の中で受け付けられ、反則の罰金も審判が取り立てる。店長が出したカードなら、異議は、本部の窓口か外部の機関に出し、罰金も店長の側が自分で回収する。出す人が決まれば、あとの道も決まります。問いです。Aの過料とBの過料を、納めずに放っておくと、それぞれ、誰が取り立てに来るでしょうか?

Aは、検察官の命令で、民事の強制執行です。Bは、町長が、督促をして、地方税の滞納処分の例で取り立てます。もう1問。それぞれ、不服があるときの争い方は?Aは即時抗告で、Bは審査請求か取消訴訟です。

放置違反金

前回までの確認(問い=反則金の納付は任意か義務か/通告は取消訴訟で争えるか/放置違反金の納付命令を行うのは誰か) 図:前回までの確認

  • 問い=反則金の納付は任意か義務か
  • 通告は取消訴訟で争えるか
  • 放置違反金の納付命令を行うのは誰か

もう1つ、秩序罰の一種を見ます。先に確認です。前回の反則金は、納付が任意でしたか、義務でしたか。通告は取消訴訟で争えましたか?納付は任意で、通告は争えません。納付義務が生じないからでした。では、反則金と同じように、お金を納めさせる仕組みなのに、争えるものがあります。放置違反金です。なぜ争えるのでしょうか?設例です。運転者が分からない放置車両があります。持ち主は、会社のCです。違法駐車と認められる状態で、運転者が車を離れ、直ちに運転できない状態でした。

放置違反金の流れ(警察署長が標章を取り付けさせる〔51条の4第1項〕→公安委員会に報告〔3項〕→使用者に書面で通知し弁明書・有利な証拠を出す機会〔6項〕→納付命令〔4項・5項〕→納めない=督促〔13項〕→地方税の滞納処分の例〔14項〕/納めたお金は都道府県の収入〔15項〕) 図:放置違反金の流れ

  • 警察署長が標章を取り付けさせる〔51条の4第1項〕→公安委員会に報告〔3項〕→使用者に書面で通知し弁明書・有利な証拠を出す機会〔6項〕→納付命令〔4項・5項〕→納めない=督促〔13項〕→地方税の滞納処分の例〔14項〕
  • 納めたお金は都道府県の収入〔15項〕

流れを追います。警察署長が、警察官などに、放置車両を確認させ、標章という告知の札を、車に取り付けさせます。署長は、公安委員会に報告します。ここまでが、51条の4の第1項と第3項です。報告を受けた公安委員会が、使用者に、放置違反金の納付を命じます。前に、契約と統制の回で、この納付命令は公安委員会が行う、と見ました。民間に任せられない、公権力の行使だからでしたね。4項を読みます。

条文道路交通法51条の4第4項

道路交通法第51条の4第4項(放置違反金) 4 前項の規定による報告を受けた公安委員会は、当該報告に係る車両を放置車両と認めるときは、当該車両の使用者に対し、放置違反金の納付を命ずることができる。ただし、第一項の規定により当該車両に標章が取り付けられた日の翌日から起算して三十日以内に、当該車両に係る違法駐車行為をした者が当該違法駐車行為について第百二十八条第一項の規定による反則金の納付をした場合又は当該違法駐車行為に係る事件について公訴を提起され、若しくは家庭裁判所の審判に付された場合は、この限りでない。

骨格は、公安委員会が、放置車両の使用者に、放置違反金の納付を命ずることができる、です。運転者ではなく、使用者です。運転者が分からなくても、車の持ち主に責任を問える、ということです。命令の前に、6項で、使用者に書面で通知し、弁明書と有利な証拠を出す機会を与えます。納めなければ、13項で督促、14項で、地方税の滞納処分の例による徴収です。納めたお金は、都道府県の収入になります。運転した人が反則金を納めた場合の扱いは、4項のただし書と16項に定めがあります。標章が取り付けられた日の翌日から30日以内に、運転した人が反則金を納めたり、起訴されたりすれば、放置違反金は命じません。命じたあとでそうなれば、命令を取り消さなければなりません。運転者本人への制裁か、使用者への放置違反金か、どちらか一方になる仕組みです。さらに、放置違反金などを納めていないと、車検証の返付を受けられません。51条の7です。納めさせる、実効性の担保です。

設例の放置違反金(C=車の持ち主の会社/公安委員会=弁明の機会の通知→納付命令/D=運転した人〔分からない〕/Dが反則金を納めればCへの命令なし/Cが争う=取消訴訟) 図:設例の放置違反金

  • C=車の持ち主の会社
  • 公安委員会=弁明の機会の通知→納付命令
  • D=運転した人〔分からない〕
  • Dが反則金を納めればCへの命令なし
  • Cが争う=取消訴訟

位置づけを確認します。放置違反金は、刑罰ではありません。裁判所も通りません。公安委員会が、処分として、使用者に金銭の納付を命じます。過料という名前ではありませんが、過去の違反に行政が金銭を科す点で、秩序罰の一種と整理されます。争うなら、取消訴訟です。納付命令は処分だからです。処分の定式は第3章で見ましたが、放置違反金のような命令が処分に当たるかを裁判でどう見分けるかは、のちに行政訴訟の章で扱います。さきほどの問いに答えます。反則金は、通告で納付義務が生じず、納めるかは本人の選択でした。だから争えません。放置違反金は、納付命令という処分で、義務を生じさせます。義務が生じるから、取消訴訟で争えます。任意か、命令か。ここが分かれ目です。

なぜ過料が使われるのか

過料が見直される理由と使い分け(行政刑罰=警察・検察・裁判所を通すので動きにくい/自治体の過料=長が自分で行政処分として科せる→路上喫煙禁止条例などで活用/使い分け=統一の基準はない・傾向=反社会性の強い違反に刑罰、形式的な違反に過料/弱点=額が低く徴収の費用に見合わないことがある) 図:過料が見直される理由と使い分け

  • 行政刑罰=警察・検察・裁判所を通すので動きにくい
  • 自治体の過料=長が自分で行政処分として科せる→路上喫煙禁止条例などで活用
  • 使い分け=統一の基準はない・傾向=反社会性の強い違反に刑罰、形式的な違反に過料
  • 弱点=額が低く徴収の費用に見合わないことがある

ここまでを踏まえて、なぜ今、過料が見直されているのか。前回の話を思い出してください。行政刑罰は、警察、検察、裁判所を通すので、動きにくいのでした。自治体の過料は、長が自分で、行政処分として科せます。やる気があれば、動かせます。そこで、路上喫煙を禁じる条例などで、条例上の義務を守らせる現実的な手段として、使われています。設例のBも、そうでした。統一の基準はありません。傾向としては、反社会性の強い行為には行政刑罰、形式的な違反には過料です。ただし、例外もあります。単純な届出義務違反に刑罰を置く法律も、保安上の危険のある義務違反に過料を置く法律も、あります。弱点もあります。額が低いので、取り立ての費用に見合わないことがあり、抑止力に疑問が出ます。高額化や、執行手続の改善は、立法論の課題です。

刑罰と過料は併科できるか

前回までの確認(問い=追徴税と罰金を併せて科してよいとされたのはなぜか/憲法39条後段が禁じるのは何か) 図:前回までの確認

  • 問い=追徴税と罰金を併せて科してよいとされたのはなぜか
  • 憲法39条後段が禁じるのは何か

最後の問いです。その前に、確認です。前に見た、追徴税と罰金の大法廷判決は、なぜ併科を認めたのでしたか?追徴税は刑罰ではなく、行政上の措置だから、憲法39条の、刑事上の責任を重ねて問うこと、にあたらないから、でした。今日の問いは、その続きです。過料は、刑罰ではありません。では、同じ行為に、過料と刑罰を両方科すと、39条後段の問題になるでしょうか。手がかりになる最高裁の判決があります。事案は、刑事裁判の証人の証言拒否です。刑事裁判の証人が、正当な理由なく、宣誓や証言を拒むと、刑事訴訟法160条により、決定で過料が科されます。同じ拒否には、161条により、刑罰も定められています。過料と刑罰を、両方科せるのか、が争われました。設例にします。刑事裁判に呼ばれた証人が、正当な理由なく、証言を拒みました。裁判所は、160条で、この証人に過料を科しました。さらに、検察官が、同じ証言拒否を161条の罪で起訴し、別の刑事裁判で処罰を求めます。

併科の理由づけ(過料〔刑訴160条〕=訴訟手続の秩序を維持するため、手続を主宰する裁判所が直接科す秩序罰/刑罰〔刑訴161条〕=刑事司法に協力しない行為に対し、通常の刑事訴訟手続で科す/目的・要件・実現の手続が異なり、必ずしも二者択一の関係にない→併科を妨げない→憲法31条・39条後段に反しない) 図:併科の理由づけ

  • 過料〔刑訴160条〕=訴訟手続の秩序を維持するため、手続を主宰する裁判所が直接科す秩序罰
  • 刑罰〔刑訴161条〕=刑事司法に協力しない行為に対し、通常の刑事訴訟手続で科す
  • 目的・要件・実現の手続が異なり、必ずしも二者択一の関係にない→併科を妨げない→憲法31条・39条後段に反しない

判例最判昭和三十九年六月五日 刑集18巻5号189頁

証言拒否に対する過料と刑罰の併科 刑訴一六〇条は訴訟手続上の秩序を維持するために秩序違反行為に対して当該手続を主宰する裁判所または裁判官により直接に科せられる秩序罰としての過料を規定したものであり、同一六一条は刑事司法に協力しない行為に対して通常の刑事訴訟手続により科せられる刑罰としての罰金、拘留を規定したものであつて、両者は目的、要件及び実現の手続を異にし、必ずしも二者択一の関係にあるものではなく併科を妨げないと解すべきであり、右規定が憲法三一条、同三九条後段に違反しないことは、当裁判所の判例(…)の趣旨に徴し明らかである。

判決の筋は、こうです。160条の過料は、訴訟手続の秩序を保つために、その手続を主宰する裁判所が、直接科す秩序罰です。161条の刑罰は、刑事司法に協力しない行為に対して、通常の刑事訴訟の手続で科すものです。目的も、要件も、実現の手続も違い、必ずしも、一方が他方の代わりになる、二者択一の関係にはありません。だから、併科は、憲法31条、39条後段に違反しません。決め手は、2つが別の目的で別の手続だ、という点です。39条後段が禁じるのは、刑事上の責任を重ねて問うことでした。過料は刑罰ではなく、目的も違うので、そもそも重ねて刑事上の責任を問うことにあたらない、という筋で読めます。射程には注意です。この事案は、訴訟法上の秩序罰でした。行政上の秩序罰と刑罰の併科を、直接判断した最高裁判例は、知られていません。ただ、この理屈は、行政上の秩序罰にもあてはまる、と解されています。ですから、届出を怠って過料を科された人に、別の刑罰を併せて科しても、39条には反しない、と整理します。補足です。学説には、39条は、同じ行為で2度刑事裁判にかけることを禁じるだけだとして、併科の当否は、重すぎないか、という比例原則で個別に考えるべきだ、と説くものがあります。39条に反しないから直ちに適法、とは限らず、併科の当否は、立法政策として別に問われます。ここは、あることを知っていれば足ります。問いです。過料と刑罰を併科しても、憲法39条後段に反しないのは、なぜでしょうか?

過料は刑罰ではなく、目的も、要件も、手続も違って、必ずしも二者択一の関係にないからです。

今日の地図(保存版)

守らせる手段の地図(A=履行を強制する:代執行・強制徴収・直接強制・執行罰・民事手続/B=過去の違反を制裁する:行政刑罰・秩序罰〔過料・放置違反金〕〔今回〕・課徴金・加算税・公表・給付拒否/C=義務を課さずに実力を使う:即時強制/条例で作れる=刑罰・過料/法律の根拠が要る=強制執行) 図:守らせる手段の地図

  • A=履行を強制する:代執行・強制徴収・直接強制・執行罰・民事手続
  • B=過去の違反を制裁する:行政刑罰・秩序罰〔過料・放置違反金〕〔今回〕・課徴金・加算税・公表・給付拒否
  • C=義務を課さずに実力を使う:即時強制
  • 条例で作れる=刑罰・過料
  • 法律の根拠が要る=強制執行

冒頭の問いに戻り、そのあと、第7章の後半を、地図で閉じます。1つ目。刑罰ではない罰とは、何か。秩序罰です。軽い、形式的な義務違反に科す金銭の制裁で、名前は過料。刑法総則も刑事訴訟も適用されず、前科にならず、過去の違反に1回科します。科料と、執行罰の過料とは別物でした。2つ目。同じ過料でも、誰が科すのか。法律に定める過料は、非訟事件手続法に従い、地方裁判所が科し、即時抗告で争い、検察官の命令で執行されます。自治体の過料は、長が、告知と弁明の機会を経て、行政処分として科し、審査請求か取消訴訟で争い、督促と、地方税の滞納処分の例で取り立てます。科す者が違うから、争い方と取り立て方が連動して変わる。放置違反金は、公安委員会が処分で科す秩序罰で、反則金と違い、納付命令だから取消訴訟で争えました。3つ目。過料と刑罰は、併科できます。目的、要件、実現の手続が違い、必ずしも二者択一の関係にないからで、39条後段に反しません。行政上の秩序罰にも、あてはまると解されています。地図に戻ります。見分ける問いは、これからやらせるのか、やったことを罰するのか、義務を課さずに実力を使うのか、でした。Aは、履行を強制する手段。代執行、強制徴収、直接強制、執行罰、そして民事の手続です。Bは、過去の違反を制裁する手段。行政刑罰、今日の秩序罰、課徴金と加算税、公表、給付拒否です。Cは、義務を課さずに実力を使う、即時強制です。

守らせる手段の地図を出した回で見たとおり、強制執行、つまりAの手段は、法律の根拠が要ります。条例だけでは、作れません。一方、Bの刑罰と過料は、条例でも定められます。刑罰は条例まで、過料は条例と長の規則です。14条3項と15条2項でした。義務を課す根拠は条例でもよい。強制する根拠は法律だけ。罰を置く根拠は、条例でもよい。この3つで、地図が閉じます。第7章は、ここまでです。

参照条文

  • 戸籍法137条
  • 非訟事件手続法119条
  • 非訟事件手続法120条
  • 非訟事件手続法121条1項
  • 地方自治法149条3号
  • 地方自治法255条の3
  • 地方自治法231条の3第1項
  • 道路交通法51条の4第4項

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