行政法ゼロから行政法#116

手続の瑕疵による取消し後のやり直し

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第8章 行政手続 #116/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

勝訴したのに同じ拒否がありうる

今日の問い(手続の違法で拒否処分が取り消された/勝った/でも役所は同じ拒否をもう一度してよい/では勝った意味は何か→取消しの後の動きを時系列で追い、手続の違法と実体の違法を切り分ける) 図:今日の問い

  • 手続の違法で拒否処分が取り消された
  • 勝った
  • でも役所は同じ拒否をもう一度してよい
  • では勝った意味は何か→取消しの後の動きを時系列で追い、手続の違法と実体の違法を切り分ける

手続の違法を理由に、拒否処分が取り消されました。申請者は、勝ちました。ところが、役所は、もう一度、同じ内容の拒否をしてもよいのです。それなら、勝ったことに、何の意味があるのでしょうか。今日は、この問いを見ます。勝訴しても同じ拒否がありうるなら、勝訴の意味は小さい、という見方にも、半分は理由があります。勝訴して手に入るのは、やり直しです。結論まで手に入れたいなら、手続とは別の主張も、しておく必要があります。前回は、手続の瑕疵があったとき、処分が取り消されるかを、手続の種類で仕分けしました。今日は、その続きです。取り消された、そのあとです。順番はこうです。まず、取消判決が行政庁をどう縛るかを、条文で確かめます。次に、手続の瑕疵の種類ごとに、やり直しがどう進むかを見ます。そして、手続だけで勝つことの限界と、そこから出てくる、争い方の組み立てまで通します。

設例——申請を拒否された事業者D

設例(架空の家庭用蓄電池設置業法/県知事A→登録を申請した事業者D:登録の拒否/登録を受けると事業ができる/場面1=Aは審査基準を定めず・特別の支障もないのに公にもしていなかった/場面2=拒否通知書に「基準に適合しない」とだけ/場面3=通知書に「技術者の実務経験が3年に満たない」とあるがDには実際は5年の経験がある) 図:設例

  • 架空の家庭用蓄電池設置業法
  • 県知事A→登録を申請した事業者D:登録の拒否
  • 登録を受けると事業ができる
  • 場面1=Aは審査基準を定めず・特別の支障もないのに公にもしていなかった
  • 場面2=拒否通知書に「基準に適合しない」とだけ
  • 場面3=通知書に「技術者の実務経験が3年に満たない」とあるがDには実際は5年の経験がある

前回に続き、架空の、家庭用蓄電池設置業法を使います。蓄電池を設置する事業者は、県の登録を受けなければ、事業ができません。県知事をAとします。今回は、取消しではなく、申請を拒否された場面です。新たに登録を申請した事業者を、Dとします。AはDの申請を、拒否しました。場面を3つ置きます。場面1。Aは、登録の審査基準を、そもそも定めておらず、特別の支障もないのに、公にもしていませんでした。場面2。拒否の通知書に、基準に適合しない、とだけ書かれていました。場面3。通知書には、技術者の実務経験が3年に満たない、と書かれていました。ところが、Dの技術者には、実際は5年の経験があります。

拒否のどこに問題があるのかは、3つの場面で同じではありません。手順の問題か、判断の中身の問題か。この違いを見分けることが、今日の山場の一つです。3場面を、最後の演習で判定します。先に、取消判決の効力から見ましょう。

取消判決の効力——行訴法33条

行訴法33条(1項=取消判決は関係行政庁を拘束/2項=申請を却下・棄却した処分が取り消されたら判決の趣旨に従い改めて申請に対する処分をしなければならない/3項=申請に基づく処分が手続の違法で取り消された場合に2項を準用/取り消された処分は最初から無かったことになる) 図:行訴法33条

  • 1項=取消判決は関係行政庁を拘束
  • 2項=申請を却下・棄却した処分が取り消されたら判決の趣旨に従い改めて申請に対する処分をしなければならない
  • 3項=申請に基づく処分が手続の違法で取り消された場合に2項を準用
  • 取り消された処分は最初から無かったことになる

条文を、全文で読みます。

条文行政事件訴訟法33条

行政事件訴訟法 第三十三条(1項〜3項)   処分又は裁決を取り消す判決は、その事件について、処分又は裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束する。 2 申請を却下し若しくは棄却した処分又は審査請求を却下し若しくは棄却した裁決が判決により取り消されたときは、その処分又は裁決をした行政庁は、判決の趣旨に従い、改めて申請に対する処分又は審査請求に対する裁決をしなければならない。 3 前項の規定は、申請に基づいてした処分又は審査請求を認容した裁決が判決により手続に違法があることを理由として取り消された場合に準用する。

1項は、取消判決は、行政庁を拘束する、という原則です。拘束が、どこまで及ぶかの詳しい話は、別の回で扱います。今日使うのは、2項です。2項の読み方です。申請を却下したり、棄却したりした処分が、判決で取り消されたとします。すると、その処分をした行政庁は、判決の趣旨に従って、改めて、申請に対する処分をしなければなりません。拒否処分一般について、やり直しの義務が生じる、ということです。3項は、逆向きの場面です。申請を認めた処分が、手続の違法を理由に取り消された場合にも、2項を準用します。たとえば、ある事業者への許可に、手続の違法があるとして、近隣の住民が争い、勝訴したとします。この場合も、行政庁は、手続をやり直したうえで、改めて処分をします。やり直した結果、また許可することもありえます。

取り消された処分は、最初から無かったことになります。ですから、Dの申請は、出された。でも、Aはまだ応答していない。この状態に戻ります。そこから、Aは、改めて審査をして、応答するのです。

再申請は要らない

時系列(1 Dが申請→2 Aが拒否→3 取消判決で拒否が最初から無かったことに→4 申請があり未応答の状態〔再申請不要〕→5 Aが審査し直す〔基準を公に/具体的な理由〕→6 認める、または再び拒否/追加書類・申請内容の変更は可) 図:時系列

  • 1 Dが申請→
  • 2 Aが拒否→
  • 3 取消判決で拒否が最初から無かったことに→
  • 4 申請があり未応答の状態〔再申請不要〕→
  • 5 Aが審査し直す〔基準を公に/具体的な理由〕→
  • 6 認める、または再び拒否/追加書類・申請内容の変更は可

時系列で並べます。Dが申請し、Aが拒否しました。取消判決で、その拒否が、最初から無かったことになります。すると4番目、申請はあるが、未応答の状態です。Aは、ここから審査をし直し、認めるか、再び拒否するかを決めます。ここから、3つのことが言えます。1つ目。Dは、申請をし直す必要がありません。申請は、有効に出されたままだからです。2つ目。ただし、新しい事情があれば、追加の書類を出したり、申請の内容を変えたりすることは、できます。3つ目。Aは、再審査のうえで、再び拒否することも妨げられません。判決が取り消したのは、手続に瑕疵のある、その処分です。裁判所が判断したのは、手続が違法かどうかだけです。Dが登録の要件を満たすか、という中身には、まだ判断が下りていません。ですから、結論を、永久に禁じたわけではありません。適法な手続を踏み直したうえでなら、同じ内容の処分を出しても、判決に反しません。たとえるなら、採点のやり直しです。採点基準を貼り出さずに不合格にした。これが取り消された。やり直しの採点でも、不合格になることはありえます。採点という手続がやり直されただけで、合格が約束されたわけではありません。

瑕疵の種類ごとのやり直し方

やり直し方(場面1=審査基準の不設定・不公開→基準を定め〔5条1項〕公にして〔5条3項〕再審査・Dは基準を見て追加書類・内容変更ができる/場面2=理由の不備→再審査し再び拒否するなら処分と同時に具体的な理由を示す〔8条1項〕/認める処分なら理由は要らない/8条1項ただし書=客観的指標で明確・申請内容から明らかに不適合なら求めがあれば示せば足りる) 図:やり直し方

  • 場面1=審査基準の不設定・不公開→基準を定め〔5条1項〕公にして〔5条3項〕再審査・Dは基準を見て追加書類・内容変更ができる
  • 場面2=理由の不備→再審査し再び拒否するなら処分と同時に具体的な理由を示す〔8条1項〕
  • 認める処分なら理由は要らない
  • 8条1項ただし書=客観的指標で明確・申請内容から明らかに不適合なら求めがあれば示せば足りる

ここで、前に見たことを思い出してください。申請を拒否する処分の理由は、いつ、どの条文で示すのでしたか?処分と同時に、行政手続法8条1項で示します。では、瑕疵の種類ごとに、やり直しを見ます。場面1は、審査基準の問題です。審査基準の回で見た、5条です。条文を読みます。

条文行政手続法5条

行政手続法 第五条(審査基準)(1項・3項)   行政庁は、審査基準を定めるものとする。 3 行政庁は、行政上特別の支障があるときを除き、法令により申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により審査基準を公にしておかなければならない。

基準を定めること、そして公にしておくこと。この2つを、Aは怠っていました。やり直しでは、Aは、まず基準を定めて、公にします。そのうえで、改めてDの申請を審査し、応答します。Dにも利益があります。公にされた基準を見て、基準を知らずに出した申請を、直せるからです。追加の書類を出したり、内容を変えたりできます。場面2は、理由の問題です。条文を読みます。

条文行政手続法8条1項

行政手続法 第八条(理由の提示)(1項)   行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。ただし、法令に定められた許認可等の要件又は公にされた審査基準が数量的指標その他の客観的指標により明確に定められている場合であって、当該申請がこれらに適合しないことが申請書の記載又は添付書類その他の申請の内容から明らかであるときは、申請者の求めがあったときにこれを示せば足りる。

やり直しでは、Aは改めて審査します。そして、再び拒否するなら、処分と同時に、具体的な理由を示さなければなりません。条文は、拒否する処分の理由、と書いています。ですから、今度は認める、という結論なら、理由を示す義務はありません。短答の罠として、ただし書も確認します。要件や基準が、数量的な指標などで明確で、申請がそれに適合しないことが、申請の内容から明らかなときは、申請者の求めがあってから示せば足ります。この例外に当たらなければ、同時に示すのが原則です。理由の程度の見方は、理由の提示の回で見たとおりです。

山場——やり直しても同じ結論がありうる

手続だけで勝つと(得るもの=手続のやり直し・基準の公表・具体的な理由・追加書類を出す機会/得ないもの=登録そのもの/再び拒否がありうる→1回の訴訟で登録まで得たいなら ①実体の違法も主張 ②申請型義務付け訴訟を併合提起) 図:手続だけで勝つと

  • 得るもの=手続のやり直し・基準の公表・具体的な理由・追加書類を出す機会/得ないもの=登録そのもの/再び拒否がありうる→1回の訴訟で登録まで得たいなら
  • ①実体の違法も主張
  • ②申請型義務付け訴訟を併合提起

本編の問いです。手続の違法で、拒否が取り消されました。Aは、もう一度、同じ拒否をしてよいでしょうか。そして、Dは、何を得たのでしょうか?Aは、適法な手続を踏めば、してよいです。Dが得たのは、手続のやり直しで、結果は約束されていません。この点を、表にします。手続の違法だけで勝つと、Dが得るのは、基準が公になること、具体的な理由が示されること、追加の書類を出す機会が与えられること、そして、改めて審査されること。得られないのは、登録そのものです。ですから、手続の瑕疵だけを理由にした取消しは、無意味ではありません。ただ、救済としては限界があります。Dの本当の目的は、登録を受けて、事業を始めることです。1回の訴訟で、そこまで得たいなら、やり方が2つあります。1つ目。手続の違法に加えて、実体の違法も主張します。登録の要件を満たしているのに、拒否した。場面3なら、技術者には実際は5年の経験があり、要件を満たしている、と争うことです。この点を争って、勝てれば、結論が動く可能性が出てきます。判決が、要件を満たしているのに拒否したのは違法だ、と判断するからです。取消判決は行政庁を拘束するので、Aは判決の趣旨に従って応答し直すことになり、同じ理由で、もう一度拒否することはできません。2つ目。より直截な方法として、取消訴訟に、申請型義務付け訴訟を併合して提起します。登録をせよ、と求める訴えです。取消判決だけなら、Aがもう一度審査して処分する工程が、まだ残ります。義務付けの訴えが認められれば、裁判所が、Aに、登録をせよ、と命じる判決をします。これが、より直截、の意味です。その要件は、別の回で扱います。ここでは、手続だけで終わらせない選択肢がある、ということをつかんでください。

実体の違法は、通るとは限りません。要件の判断に、行政庁の裁量が認められることもあります。一方、手続の違法だけでは、結論までは約束されません。ですから、答案では、両方を立てておくのです。どちらかが認められれば、Dには前進があるからです。

手続の違法と実体の違法を切り分ける

切り分け表(行=理由/審査基準、列=手続の違法/実体の違法:理由=示していない・記載が足りない〔場面2〕|示した理由の内容が事実と違う〔場面3〕/審査基準=定めていない・公にしていない〔場面1〕|公にされた基準の内容が根拠法令の趣旨に反する/理由の程度=どの事実関係にどの法規を当てはめたかが記載自体から分かれば足りる) 図:切り分け表(行=理由/審査基準、列=手続の違法/実体の違法:理由=示していない・記載が足りない〔場面2〕|示した理由の内容が事実と違う〔場面3〕/審査基準=定めていない・公にしていない〔場面1〕|公にされた基準の内容が根拠法令の趣旨に反する/理由の程度=どの事実関係にどの法規を当てはめたかが記載自体から分かれば足りる)

次に、争い方の組み立てです。大事な切り分けがあります。理由の提示の回で、一度言いました。理由が足りないのは手続の違法。理由が間違っているのは実体の違法。今日は、これを審査基準にも広げます。表で整理します。理由の側。示していない、記載が足りない、これは手続の違法です。場面2がこれです。示した理由の内容が、事実と違う、これは実体の違法です。場面3がこれです。審査基準の側。定めていない、公にしていない、これは手続の違法です。場面1がこれです。公にされた基準の内容が、根拠法令の趣旨に反している、これは実体の違法です。たとえば、法律が安全な設置のために技術者を求めているのに、県の基準が、県内に本店があること、を条件にしていた場合です。手続の違法は、無い、足りない、の側です。実体の違法は、中身が誤り、の側です。行政手続法の違反として言えるのは、前者だけです。行政手続法が決めているのは、基準を定めて見せる、理由を示す、という手順です。中身が正しいかどうかは、登録の要件を定めた、根拠の法律に照らして判断します。

理由が書いてあれば、内容が誤っていても、手続の面では守られています。ただし、何を書いてもよい、というわけではありません。どの程度の記載で足りるかは、判例があります。旅券の発給拒否の事件です。

判例最判昭60・1・22 民集39巻1号1頁

旅券発給拒否の理由付記の事件——理由の程度 いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して一般旅券の発給が拒否されたかを、申請者においてその記載自体から了知しうるものでなければならず、

通知書の記載そのものから、どの事実関係に、どの法規を当てはめたのかが分かる。それが、理由の程度の物差しです。この事件は、拒否の根拠規定を示すだけでは足りない、として取り消されました。場面3に当てはめます。実務経験は3年に満たない、という記載です。事実関係、つまり経験年数と、法規、つまり3年という要件が、記載から分かります。理由の提示としては、足りています。Dの、実際は5年ある、という主張は、理由が間違っている、という主張です。これは、行政手続法違反ではありません。拒否処分の内容が誤っているという、実体の違法として争います。訴訟の中で、理由を差し替えられるかは、別の回で扱います。

論文の型

答案の型(1本目=手続の違法〔行手法のどの規定のどの要件を欠くか:審査基準の不設定・不公開/理由の提示の不備〕→取り消されても再拒否がありうる/2本目=実体の違法〔登録の要件を満たしているのに拒否/理由の事実が違う/基準の中身が法令の趣旨に反する〕→通れば同じ理由での再拒否は不可/+義務付けの併合) 図:答案の型

  • 1本目=手続の違法〔行手法のどの規定のどの要件を欠くか:審査基準の不設定・不公開/理由の提示の不備〕→取り消されても再拒否がありうる
  • 2本目=実体の違法〔登録の要件を満たしているのに拒否/理由の事実が違う/基準の中身が法令の趣旨に反する〕→通れば同じ理由での再拒否は不可
  • 義務付けの併合

答案の型です。ここは、論文で論点になりうる所です。

⭐ 論文で書く規範:解釈(取消し後の動きの整理):手続の違法だけで拒否が取り消されても、行政庁は適法な手続を踏み直して同じ結論の処分をしうる。したがって、争い方は、手続の違法と、実体の違法の2本に分けて主張し、結論まで得たいときは、実体の違法も主張し、申請型義務付け訴訟を併合する (論文の骨格)

手順は2本立てです。1本目、手続の違法。行政手続法のどの規定の、どの要件を欠いているか。審査基準の不設定や不公開、理由の提示の不備です。2本目、実体の違法。登録の要件を満たしているのに拒否した、理由の事実が違う、基準の中身が法令の趣旨に反する、といった主張です。1本目だけだと、再拒否がありえます。2本目が通れば、同じ理由での再拒否は封じられ、結論に近づきます。ですから、答案では、この2本を混ぜずに、別々に立てます。理由が足りない、という主張と、理由が間違っている、という主張を、同じ段落に書いてしまうのが、よくある失敗です。

行政手続法の2つの顔

2つの顔(行為規範=職員の動き方の規範:義務の手続だけでなく努力義務の手続も無視してよいわけではない/努めなかったなら、なぜできなかったかを説明する責任が生じる→事実上守らせる方向に働く/裁判規範=義務とされた手続の違反は取消訴訟の本案で処分の違法事由になりうる・ただし実体法上の違法事由とは区別して位置づける) 図:2つの顔

  • 行為規範=職員の動き方の規範:義務の手続だけでなく努力義務の手続も無視してよいわけではない
  • 努めなかったなら、なぜできなかったかを説明する責任が生じる→事実上守らせる方向に働く
  • 裁判規範=義務とされた手続の違反は取消訴訟の本案で処分の違法事由になりうる・ただし実体法上の違法事由とは区別して位置づける

最後に、行政手続法の性格を整理します。裁量の審査の回で、行為規範と裁判規範という2つの言葉を見ました。動く側の規範と、後から点検する側の規範です。行政手続法にも、この2つの顔があります。1つ目は、行為規範です。職員が、どう動くべきかを定めた規範、ということです。ここでは、義務とされた手続だけでなく、努めなければならない、とされた手続も、無視してよいわけではありません。たとえば、審査基準の回で見た、申請から処分までにかかる目安の期間である、標準処理期間を定めることは、努めなければならない、とされた手続です。

努めなかった場合は、なぜできなかったのかを、国民に説明する責任が生じます。この責任があるので、事実上、守らせる方向に働くのです。説明責任の原則は、適正手続と説明責任の回で見たとおりです。2つ目は、裁判規範です。義務とされた手続に違反すると、取消訴訟の本案で、処分の違法事由になりえます。場面1の、審査基準を定めず、公にもしていなかったことは、義務とされた手続の違反です。ただし、処分の中身が根拠の法律に反している、という実体の違法とは、別の違法事由として位置づけます。今日の、手続の違法と実体の違法の切り分けは、まさにここにつながります。なお、努力義務の手続の違反が、そのまま違法事由になる、とまでは言えませんので、注意してください。

演習——3場面を判定する

演習の答え(場面1=基準を定め公にして再審査・再申請不要・再拒否もありうる→登録まで得たいなら実体の違法の主張+義務付け併合/場面2=再拒否なら同時に具体的な理由・認容なら理由不要/場面3=Dの主張は実体の違法であって手続の違法ではない) 図:演習の答え

  • 場面1=基準を定め公にして再審査・再申請不要・再拒否もありうる→登録まで得たいなら実体の違法の主張+義務付け併合
  • 場面2=再拒否なら同時に具体的な理由・認容なら理由不要
  • 場面3=Dの主張は実体の違法であって手続の違法ではない

演習です。取消判決のあと、Aは何をするか。Dは何を得るか。Dの主張は、手続の違法か、実体の違法か。場面1。審査基準を、定めておらず、公にもしていませんでした。場面2。通知書に、基準に適合しない、とだけ書かれていました。場面3。実務経験は3年に満たない、と書かれていますが、Dには5年あります。3場面は、同じ、納得いかない、でも、争う軸が違いました。

今日の地図(保存版)

今日の地図(問い=勝訴したのに同じ拒否がありうる/拒否の取消しは応答前の状態に戻る・再申請不要・33条2項/やり直しで同じ結論もありうる→実体の違法の主張+申請型義務付けの併合/手続の違法=無い・足りない/実体の違法=中身が誤り/行手法の行為規範と裁判規範) 図:今日の地図

  • 問い=勝訴したのに同じ拒否がありうる
  • 拒否の取消しは応答前の状態に戻る・再申請不要・33条2項
  • やり直しで同じ結論もありうる→実体の違法の主張+申請型義務付けの併合
  • 手続の違法=無い・足りない
  • 実体の違法=中身が誤り
  • 行手法の行為規範と裁判規範

冒頭の問いに戻ります。手続の違法で、拒否が取り消されても、役所は、同じ結論を出しうる。勝った意味は、何だったのでしょうか。答えは、やり直しの機会です。基準が公にされ、具体的な理由が示され、追加の書類を出せる。ただ、結論までは約束されません。持ち帰るのは3点です。1つ目。拒否が取り消されると、申請は、応答前の状態に戻ります。再申請は要らず、行政庁は、行政事件訴訟法33条2項により、改めて応答する義務を負います。2つ目。やり直しでも、同じ結論はありえます。結論まで得たいなら、実体の違法も主張し、申請型義務付け訴訟を併合します。3つ目。理由や基準が、無い、足りないのが手続の違法。中身が誤っているのが、実体の違法です。主張は、手続と実体の2つに分けて主張します。

参照条文

  • 行政事件訴訟法33条
  • 行政手続法5条
  • 行政手続法8条1項

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