命令等を定める手続と意見公募手続
印刷のコツ
プリンターでは次の設定がおすすめです。
- 用紙:A4 / 向き:縦
- 拡大縮小:「実際のサイズ」(フィット縮小しない)
- 両面印刷:オン、とじ方は「長辺をとじる」(左綴じ)
- モノクロ印刷OK(強調は色でなく太字なので白黒でも読めます)
第8章 行政手続 #117/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
役所がルールの案を出した
図:今日の問い
- 役所が新しいルールの案を公表した
- あなたは意見を出せるか
- 反対意見が9割を占めたら案は変わるか→ルールを定める前の手続の対象・流れ・例外を条文で追う
役所が、新しいルールの案を公表しました。あなたは、その案に、意見を出せるでしょうか。そして、反対の意見が9割を占めたら、案は変わるのでしょうか。今日は、この2つの問いを見ます。どちらも、条文で確かめると、答えが違います。意見は、関係のない人でも出せます。そして、反対が9割でも、案を変える義務は、ありません。ただ、役所は、意見をどう扱ったかを、理由つきで公表しなければなりません。前回は、取消しのあとのやり直しを見ました。今日は、処分ではなく、ルールそのものを定める場面です。順番はこうです。なぜルールづくりに手続が要るのかを見て、対象になるルールの範囲を、条文で確かめます。次に、手続の流れ、省ける場合、自治体の場合を通して、最後に場面で判定します。
なぜルールづくりに手続が要るのか
図:処分の手続とルールの手続
- 処分=名あて人が特定される→聴聞・弁明・理由提示で個別に聴く
- ルール=相手方が特定されない→広く一般から意見を聴く
- 経緯=制定当初の行手法には無し→1999年に閣議決定でパブリック・コメント〔行政運営上の措置〕→2005年の改正で法律の手続に〔第6章〕
これまで見た手続は、ほとんど、処分の手続でした。聴聞も、弁明の機会も、理由の提示も、処分を受ける相手方が決まっているから、成り立ちます。その人に、直接、聴けるからです。ところが、ルールは違います。省令や審査基準は、特定の誰かではなく、条件に当てはまる、すべての人に効きます。誰に聴けばよいのか、決まっていません。そこで、広く一般から、意見を聴く形になります。たとえば、ある1軒の宿に営業停止を出すなら、その宿の経営者に聴けば足ります。けれども、全国の宿すべてに効く防火の基準を作るなら、聴く相手を一人に決められません。経緯も押さえます。行政手続法が制定された当初は、ルールを定める手続は、法律に置かれていませんでした。1999年に、閣議決定によって、案と資料を公表して意見を募る運用が始まりました。これは、行政運営上の措置です。そして、2005年の行政手続法の改正で、法律の第6章として定められました。
閣議決定の時代と法律になってからの違いは、義務かどうかです。閣議決定の運用は、行政運営上の措置で、法律上の義務ではありませんでした。法律になってからは、ルールを定める機関が、守らなければならない手続になりました。
どのルールが対象か——「命令等」
図:同時に出た6枚
- 架空の宿泊施設防火設備法
- 所管大臣Aが①施行規則〔省令〕の改正案=消火設備の設置基準②許可の審査基準案③違反時の処分基準案〔改善命令から営業停止までの目安〕④事業者向けの行政指導指針案を同時に公表
- 対比=⑤宿泊事業者Bだけに出す改善命令⑥職員向けの解釈通達
- 問い=この6枚のうち意見公募の対象は
架空の法律で考えます。宿泊施設防火設備法という法律があるとします。宿泊施設を営む事業者は、許可を受けなければなりません。所管の大臣をAとします。宿泊事業者をB、広く一般の人をCとします。Aは、同じ時期に、4つの案を公表しました。1つ目。許可の要件を具体化する施行規則、つまり省令の改正案で、消火設備の設置基準です。2つ目。許可の審査基準の案。3つ目。違反したときの処分基準の案で、改善命令から営業停止までの目安を定めています。4つ目。事業者向けの行政指導指針の案です。一方、同じ時期に、Bだけに出された書類が1枚あります。Bの設備が基準に足りないとして出された、改善命令です。もう1枚は、Aが職員向けに出した、条文の解釈を示す通達です。合わせて6枚です。審査基準、処分基準、行政指導指針は、第8章と第6章の回で、それぞれ見ていますね。ここで、復習です。第3章の、行政基準の回で、行政規則のうち、意見公募の対象になるものは3つだけ、と見ました。どれとどれとどれでしたか?
審査基準と、処分基準と、行政指導指針です。解釈の通達は入りません。では、法規命令の側は、省令でしたね。それでは、この6枚のうち、意見公募の対象になるのは、どれでしょうか。いったん、考えてみてください。条文を、全文で読みます。
条文行政手続法2条8号
行政手続法 第二条(第8号) 八 命令等 内閣又は行政機関が定める次に掲げるものをいう。 イ 法律に基づく命令(処分の要件を定める告示を含む。次条第二項において単に「命令」という。)又は規則 ロ 審査基準(申請により求められた許認可等をするかどうかをその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準をいう。以下同じ。) ハ 処分基準(不利益処分をするかどうか又はどのような不利益処分とするかについてその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準をいう。以下同じ。) ニ 行政指導指針(同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとするときにこれらの行政指導に共通してその内容となるべき事項をいう。以下同じ。)
イは、省令などの、法規命令です。国民を直接縛るルールです。ロ、ハ、ニは、行政規則です。役所の内部の基準で、国民を直接には縛りません。性質の違うものが、命令等という一つの包みに、まとめて入っています。命令等の、等という字が、ここで効いています。命令だけでなく、それ以外のものも、入っているのです。注意が2つあります。1つ目は、命令という言葉です。ここでいう命令は、ルールの形式のことです。政令、省令、告示などです。違反を正すよう個別に出す、改善命令とは別物です。改善命令は、Bという特定の相手に出す、不利益処分です。ですから、6枚の中の5枚目は、対象外です。2つ目は、告示です。イには、処分の要件を定める告示、と書かれています。すべての告示ではありません。単に事実を知らせる告示は、入りません。そして、職員向けの解釈通達は、ロからニに並んでいませんので、入りません。では、なぜこの3つは並んでいるのでしょうか。審査基準は5条、処分基準は12条、行政指導指針は36条で、定めて、公にしておく、あるいは公表する、と行政手続法が書いています。処分基準は努力義務です。内部の基準でも、申請者や相手方に見せることが予定されている基準です。見せる基準だから、案の段階で意見を聴く意味があります。解釈通達には、行政手続法に、そうした定めがありません。
公にされない審査基準などは、あとで見る適用除外で、対象から外れます。ここでは、4つの型の名前をつかんでください。命令等は、命令と規則、審査基準、処分基準、行政指導指針の4つです。
38条——命令等を定めるときの一般原則
図:38条
- 1項=根拠法令の趣旨に適合させる義務
- 2項=定めた後も実施状況・社会経済情勢の変化を勘案し必要に応じ検討を加え適正を確保する努力義務
- 意見公募の手続規定ではなく中身についての規律
- 医薬品ネット販売事件〔最判平25・1・11〕は委任命令の違法を判断する中で38条1項を引いた
- 3条2項・3項・4条4項の適用除外では38条も外れるが39条4項で意見公募だけ省く場合は38条は適用される
手続の流れに入る前に、第6章の最初の条文を読みます。これは、意見を聴く手続ではなく、ルールの中身についての原則です。
条文行政手続法38条
行政手続法 第三十八条(命令等を定める場合の一般原則) 1 命令等を定める機関(閣議の決定により命令等が定められる場合にあっては、当該命令等の立案をする各大臣。以下「命令等制定機関」という。)は、命令等を定めるに当たっては、当該命令等がこれを定める根拠となる法令の趣旨に適合するものとなるようにしなければならない。 2 命令等制定機関は、命令等を定めた後においても、当該命令等の規定の実施状況、社会経済情勢の変化等を勘案し、必要に応じ、当該命令等の内容について検討を加え、その適正を確保するよう努めなければならない。
1項は義務です。命令等は、根拠となる法令の趣旨に、合っていなければなりません。法律が許した範囲を超えるルールは、作れない、という確認です。2項は、定めたあとも見直す、という努力義務です。義務ではなく、努めなければならない、と書かれています。ここは短答で問われます。1項は、判例にも出てきます。医薬品のネット販売を規制した省令が、法律の委任の範囲を超えて無効とされた事件です。判決の中で、行政手続法38条1項が引かれていました。授権の趣旨の読み方は、第3章の、委任された命令の近時の3判例の回で見ました。今日は、38条1項が判決の中で引かれた、という点だけを押さえてください。登場する命令等制定機関という言葉は、命令等を定める機関のことです。以降、条文には、この言葉が出てきます。
手続の流れ——案の公示から結果の公示まで
図:流れ図
- ①案と関連資料の公示〔39条1項・案は具体的かつ明確・題名と根拠条項を明示=2項〕→②意見提出期間=公示の日から起算して30日以上〔3項〕→③広く一般の意見〔利害関係の有無・国籍・個人か法人かを問わない〕→④提出意見を十分に考慮〔42条〕→⑤命令等の公布と同時期に結果を公示〔43条1項=題名・案の公示日・提出意見・考慮した結果とその理由〕
- 分岐=39条4項で省く→43条5項
- 40条1項で30日未満→案の公示で理由
- 公示は情報通信技術を利用する方法〔45条1項〕
流れを、一枚の図で見ます。図の順に、条文を読みます。まず、39条です。
条文行政手続法39条
行政手続法 第三十九条(意見公募手続)(1項〜3項) 1 命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合には、当該命令等の案(命令等で定めようとする内容を示すものをいう。以下同じ。)及びこれに関連する資料をあらかじめ公示し、意見(情報を含む。以下同じ。)の提出先及び意見の提出のための期間(以下「意見提出期間」という。)を定めて広く一般の意見を求めなければならない。 2 前項の規定により公示する命令等の案は、具体的かつ明確な内容のものであって、かつ、当該命令等の題名及び当該命令等を定める根拠となる法令の条項が明示されたものでなければならない。 3 第一項の規定により定める意見提出期間は、同項の公示の日から起算して三十日以上でなければならない。
1項から読みます。ルールを定めようとするときは、案と関連する資料を、あらかじめ公示します。そして、意見の提出先と期間を定めて、広く一般の意見を求めます。広く一般、ですから、利害関係があるかどうかは問いません。国籍も問いません。個人でも法人でも出せます。宿泊施設防火設備法の省令案なら、宿泊事業者Bだけでなく、宿に泊まるだけの一般の人Cも、外国に住む人も、意見を出せます。冒頭の問いの答えは、これです。2項は、案の中身の要件です。具体的で明確であること、題名と根拠法令の条項が示されていること。何が決まろうとしているのか分からない案では、意見の出しようがないからです。3項は、期間です。公示の日から起算して、30日以上です。ここは、短答で数字が問われます。30日以上であって、30日以内ではありません。
ルールを定める前に、です。定めたあとに公示しても、意見を聴いたことにはなりません。案の段階で出して、意見を聴いてから定める、という順序です。校則の改定案を、生徒から募る場面にたとえます。改定案と理由を貼り出す。意見箱を置く。期間を決める。箱には、在校生でなくても、入れられる。これが、公示と、広く一般です。
なぜ多数決ではないのか
図:多数決ではない
- 反対意見9割でも案を変える義務は無い
- 42条=提出意見を十分に考慮する義務
- 43条1項4号=考慮した結果〔案と定めた命令等との差異を含む〕とその理由を公示→考慮の中身が外から見える
- 提出意見がなかった場合はその旨を公示〔3号〕
- 意見が出た後に命令等を定めないことにした場合も公示〔43条4項〕
本編の問いです。意見を集めたところ、反対が9割でした。命令等制定機関は、案を変えなければならないでしょうか?条文を読みます。まず、42条です。
条文行政手続法42条
行政手続法 第四十二条(提出意見の考慮) 命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定める場合には、意見提出期間内に当該命令等制定機関に対し提出された当該命令等の案についての意見(以下「提出意見」という。)を十分に考慮しなければならない。
書かれているのは、十分に考慮しなければならない、です。従わなければならない、とは書かれていません。数が多いほうに従う、という規定もありません。つまり、多数決ではありません。なぜ数で決めないのでしょうか。39条1項は、意見に、情報を含む、と書いています。集めたいのは票ではなく、役所が気づいていない事情や情報です。しかも、誰でも出せる仕組みですから、出された意見の数は、関係する人全体の賛否を測ったものではありません。ですから、数ではなく、中身を考慮させる仕組みになっています。ただし、考慮は、言いっぱなしでは終わりません。結果の公示という条文が、考慮の中身を、外から見えるようにします。
条文行政手続法43条1項
行政手続法 第四十三条(結果の公示等)(1項) 1 命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定めた場合には、当該命令等の公布(公布をしないものにあっては、公にする行為。第五項において同じ。)と同時期に、次に掲げる事項を公示しなければならない。 一 命令等の題名 二 命令等の案の公示の日 三 提出意見(提出意見がなかった場合にあっては、その旨) 四 提出意見を考慮した結果(意見公募手続を実施した命令等の案と定めた命令等との差異を含む。)及びその理由
4号に注目してください。考慮した結果と、その理由です。案と定めた命令等との差異も含みます。9割の反対があっても、案を変えなかったなら、変えなかった理由を、公示しなければなりません。逆に、少数の意見を採り入れて変えたなら、変えた点が、差異として見えます。境目を、さきほどの省令案で確かめます。反対が9割でも、Aが意見を読み、変えなかった理由を公示して、案どおり定める。これは、できます。ところが、結果の公示に、多くの意見をいただきました、とだけ書き、どう考慮したか、なぜ変えなかったかを書かない。これは、43条1項4号の公示の義務を果たしていません。
ここが、十分に考慮を支える仕組みです。整理します。案を変える義務はない。しかし、考慮する義務があり、考慮した結果と理由を見せる義務がある。校則の意見箱でいえば、賛否の数では決まらないが、校長は、どの意見をどう扱ったか、なぜそうしたかを、貼り出さなければならない、ということです。補足を3つだけ。1つ目。提出意見は、整理や要約で公示することもできます。その場合は、後で、原文を備え付けるなどして公にします。2つ目。第三者の利益を害するおそれなどがあるときは、意見の全部または一部を除けます。3つ目。意見公募をしたのに、命令等を定めないことにしたときも、その旨と題名、案の公示の日を、速やかに公示します。公示は、情報通信技術を利用する方法、つまりインターネットなどで行うのが原則です。
例外の整理——省く、短くする、準じる
図:例外の3段
- 省く=39条4項各号〔実施しない・公益上緊急など〕→省いても43条5項で公布と同時期に題名・趣旨と実施しなかった旨とその理由を公示
- 短くする=40条1項〔30日を下回る期間・やむを得ない理由・案の公示の際その理由を明らかにする〕
- 準じる=40条2項〔委員会等が意見公募に準じた手続を実施したとき自らは不要〕
- 41条=周知と情報提供の努力
例外を、3段で整理します。1段目は、意見公募そのものを省く場合です。2段目は、期間を短くする場合。3段目は、他の機関が準じた手続をした場合です。
図:39条4項 1号〜4号
- 条文の全文=1号公益上緊急に定める必要があり実施が困難
- 2号納付すべき金銭の額の算定の基礎となる金額・率・算定方法
- 3号予算による金銭の給付決定の算定の基礎
- 4号相反する利害を有する者と公益をそれぞれ代表する委員で組織される委員会等の議を経て定める命令等で政令で定めるもの
1段目は、39条4項です。各号の全文は、図のとおり長いので、骨格だけを読みます。1号は、公益上、緊急に定める必要があって、実施が困難なとき。2号と3号は、金額の算定の基礎を定めるもの。2号は法律の制定や改正で、3号は予算で、すでに大枠が決まっていて、それを具体化する場面です。4号は、委員会等が審議するものです。委員会等とは、法律で置かれた委員会や、審議会のような合議の機関です。4号の委員会等には、利害が対立する者と公益を、それぞれ代表する委員が入ります。意見を代表する人が、審議の場に、もういるのです。
図:39条4項 5号〜8号
- 条文の全文=5号他の行政機関が意見公募手続を実施して定めた命令等と実質的に同一
- 6号技術的読替え
- 7号根拠規定の削除に伴う当然の廃止
- 8号軽微な変更として政令で定めるもの
5号は、他の機関が意見公募をして定めたものと、実質的に同一のもの。同じ中身で、もう意見を聴いています。6号から8号は、技術的な読替え、根拠規定の削除に伴う当然の廃止、軽微な変更です。他の法令の動きから当然に決まるか、ごく小さな手直しで、意見を聴いて中身を練る場面ではありません。試験では、1号を中心に、あとは類型名を知っていれば足ります。大事なのは、省いたあとです。省いても、何も言わなくてよいのではありません。
条文行政手続法43条5項
行政手続法 第四十三条(結果の公示等)(5項) 5 命令等制定機関は、第三十九条第四項各号のいずれかに該当することにより意見公募手続を実施しないで命令等を定めた場合には、当該命令等の公布と同時期に、次に掲げる事項を公示しなければならない。ただし、第一号に掲げる事項のうち命令等の趣旨については、同項第一号から第四号までのいずれかに該当することにより意見公募手続を実施しなかった場合において、当該命令等自体から明らかでないときに限る。 一 命令等の題名及び趣旨 二 意見公募手続を実施しなかった旨及びその理由
省いた場合でも、公布と同時期に、題名と趣旨、そして意見公募手続を実施しなかった旨と、その理由を公示します。ただ、趣旨まで示さなければならないのは、1号から4号に当たって省いた場合で、しかも、命令等自体から趣旨が明らかでないときだけです。5号から8号は、他で意見公募を済ませたものや、技術的なもの、軽微なものなので、趣旨までは求められていません。省いた理由を見せる、という点は同じです。2段目は、40条1項です。
条文行政手続法40条1項
行政手続法 第四十条(意見公募手続の特例)(1項) 1 命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合において、三十日以上の意見提出期間を定めることができないやむを得ない理由があるときは、前条第三項の規定にかかわらず、三十日を下回る意見提出期間を定めることができる。この場合においては、当該命令等の案の公示の際その理由を明らかにしなければならない。
短くするには、やむを得ない理由が要ります。そして、案を公示するときに、その理由を明らかにします。たとえば、宿の火災が続いて、基準の改正を急ぎたいときに、その事情を案の公示に書いたうえで、期間を30日より短くすることが考えられます。ただし、やむを得ないと言えるかは、事情ごとに判断されます。何となく急ぎたいから、では足りません。3段目は、40条2項です。審議会のような委員会等の議を経て命令等を定める場合で、その委員会等が意見公募に準じた手続を実施したときは、自分で改めて意見公募をしなくてよい、という定めです。ただし、39条4項4号に当たる場合は除かれます。4号は、さきほど見たとおり、39条4項で、意見公募そのものを省けます。準じた手続をしたかを問うまでもないので、ここから外してあるのです。44条は、この場合の結果の公示を、読み替えて準用する条文です。あることだけ知っておけば足ります。最後に、41条です。意見公募を実施するときは、必要に応じて、周知するよう努め、関連する情報の提供にも努める、という努力義務です。
適用除外と地方公共団体
図:適用除外
- 3条2項=第6章を適用しない命令等〔施行期日を定める政令/恩赦に関する命令/処分に当たる命令又は規則/施設・区間・地域などを指定する命令又は規則/公務員の給与・勤務条件を定める命令等/公にされるもの以外の審査基準・処分基準・行政指導指針〕
- 4条4項=国又は地方公共団体の組織・会計・財産管理・公務員の礼式や服制など7類型を定める命令等
次に、そもそも第6章が適用されない場合です。3条2項に、6つの類型があります。施行期日を定める政令、恩赦に関する命令、処分に当たる命令や規則、施設や区間や地域を指定する命令や規則、公務員の勤務条件を定める命令等、そして、公にされるもの以外の審査基準、処分基準、行政指導指針です。さきほどの、公にされない審査基準が外れる、というのは、この最後の類型です。このうち、処分に当たる命令や規則とは、形は命令や規則でも、中身が特定の相手の権利や義務を直接決めるものです。中身が処分なので、ルールを定める手続の話にはなりません。ほかの類型も、それぞれの事情から、広く一般から意見を募る手続になじまないものとして、外されています。それから、最後の類型は、基準を公にしなくてよい、という意味ではありません。審査基準は、行政上特別の支障が無い限り、5条3項で公にしておかなければなりませんでした。それとは別に、現に公にされていない基準は、意見公募の対象から外れる、という線です。4条4項にも、第6章を適用しない類型があります。国や地方公共団体の組織、予算や会計、財産の管理、公務員の礼式や服制などを定める命令等です。7つの類型があり、図に一覧があります。試験では、こういう内部の事項は外れる、という方向をつかめば足ります。適用除外では、38条も外れます。第6章全体が適用されないからです。一方、39条4項で省かれるのは、意見公募だけです。38条の、法令の趣旨に適合させる義務は、残ります。
図:地方公共団体の命令等
- 3条3項=地方公共団体の機関が命令等を定める行為には第6章は適用されない→46条=地方公共団体は行手法の趣旨にのっとり公正の確保と透明性の向上を図るため必要な措置を講ずる努力義務→行政手続条例・パブリックコメントの要綱で対応
- 2条1号=「規則」は地方公共団体の執行機関の規則〔国の外局の規則は「命令」〕
- 2条8号イに「規則」が書かれているが国の機関が定める命令等に実際にかかる
地方公共団体の場合です。処分や行政指導で、前に見た3条3項を、命令等の場面で読み直します。
条文行政手続法3条3項
行政手続法 第三条(第3項) 3 第一項各号及び前項各号に掲げるもののほか、地方公共団体の機関がする処分(その根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)及び行政指導、地方公共団体の機関に対する届出(前条第七号の通知の根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)並びに地方公共団体の機関が命令等を定める行為については、次章から第六章までの規定は、適用しない。
末尾の、地方公共団体の機関が命令等を定める行為は、第6章を含め、適用されません。つまり、市や県が定める規則や基準には、行政手続法の意見公募手続は、かかりません。理由は、適用除外の回で見た、地方自治の尊重です。自治体が自分のルールをどんな手続で作るかは、自治の中身そのものなので、国の法律で一律に決めず、各団体に委ねています。2条1号で、規則は、地方公共団体の執行機関の規則、と定義されています。国の外局が定める規則は、命令のほうに入ります。つまり、定義にある規則は地方の規則です。しかし、3条3項で、地方の機関が定める命令等は外れます。ですから、意見公募手続が実際にかかるのは、国の機関が定める命令等です。定義に入っていることで、3条3項や46条は、自治体の規則も含めて、命令等、という一つの言葉で指せます。条文の書き方の話なので、試験では、地方の規則には意見公募がかからない、という結論を押さえれば足ります。では、自治体は、何もしなくてよいのでしょうか。
条文行政手続法46条
行政手続法 第四十六条(地方公共団体の措置) 地方公共団体は、第三条第三項において第二章から前章までの規定を適用しないこととされた処分、行政指導及び届出並びに命令等を定める行為に関する手続について、この法律の規定の趣旨にのっとり、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
努力義務です。実際は、行政手続条例や、パブリックコメントの要綱で、同じ趣旨の手続を置いています。適用されない、でも努める、という順序です。
計画との違い
図:ルールと計画
- 命令等=広く一般から案の公示を経て意見
- 行政計画=都市計画のように個別の法律が意見聴取の定めをそれぞれ置く→誰が・どの段階で意見を言えるかが違う
- 意見公募手続は命令等のための手続であって計画のものではない
一つだけ、対比を置きます。都市計画のような、行政計画の策定です。行政計画は、第6章で見たとおり、将来の目標と、そこへ行く手段をまとめた方針です。命令等は、条件に当てはまる人なら誰にでも、同じように効く決まりでした。これに対して、都市計画は、どの地域に何を建てられるかを、場所ごとに描きます。影響を受ける人も、地域ごとに違います。ですから、誰が、どの段階で意見を言えるかは、行政手続法ではなく、個別の法律が、計画ごとに定めています。都市計画なら、案の縦覧と意見書でした。意見公募手続は、命令等のための手続であって、計画のためのものではありません。
演習——4場面を判定する
図:演習の答え
- 場面1=意見提出期間20日・理由の明示なし→39条3項違反の問題
- やむを得ない理由があり案の公示の際に明らかにしていれば40条1項で可
- 場面2=反対9割でも変更義務なし・考慮した結果と理由は公示
- 場面3=公益上緊急で省略→39条4項1号・43条5項で題名・実施しなかった旨・理由を公示(趣旨が明らかでなければ趣旨も)
- 場面4=市の規則→第6章は適用されない・46条の努力
演習です。場面1。大臣Aが、省令案を公示し、意見提出期間を20日にしました。理由は、公示で何も示していません。どう考えますか。30日以上でなければなりません。20日にするには、やむを得ない理由が要り、その理由を案の公示で明らかにしなければなりません。示していないので、手続に問題があります。場面2。意見の9割が反対でした。Aは案どおりに省令を定めました。場面3。公益上、緊急に定める必要があるとして、Aは意見公募をしないで省令を定めました。場面4。市が、規則の案を定めるとき、意見を募りませんでした。
論文では、命令等に当たるかを判定し、38条1項の法令の趣旨への適合を検討する、という形で使います。ここは、論文で論点になりうる所です。
今日の地図(保存版)
図:今日の地図
- 問い=意見は誰が出せるか・反対9割で案は変わるか
- 命令等=命令・規則
- 審査基準
- 処分基準
- 行政指導指針
- 流れ=案と資料の公示→30日以上→広く一般→十分に考慮→結果の公示
- 多数決ではない・考慮した結果と理由の公示
- 例外=省く〔43条5項〕・短くする〔40条1項〕・準じる〔40条2項〕
- 自治体=3条3項で適用外・46条の努力
冒頭の問いに戻ります。意見は、誰が出せるでしょうか。反対が9割なら、案は変わるでしょうか。答えです。意見は、利害関係の有無や国籍を問わず、広く一般の人が出せます。反対が9割でも、案を変える義務はありません。しかし、命令等制定機関は、十分に考慮して、考慮した結果と理由を公示しなければなりません。持ち帰るのは3点です。1つ目。対象は、命令等です。命令と規則、審査基準、処分基準、行政指導指針の4つで、個別の改善命令や解釈の通達は入りません。2つ目。流れは、案と資料の公示、30日以上の期間、広く一般の意見、十分な考慮、結果の公示です。多数決ではありません。省いても、43条5項で理由を公示します。3つ目。自治体の命令等には第6章は適用されず、46条の努力義務になります。
参照条文
- 行政手続法2条8号
- 行政手続法38条
- 行政手続法39条
- 行政手続法42条
- 行政手続法43条1項
- 行政手続法43条5項
- 行政手続法40条1項
- 行政手続法3条3項
- 行政手続法46条