審査・応答義務と申請権
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第8章 行政手続 #108/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
書類を返された。これは断られたのか
図:今日の問い
- 窓口で「この書類はお受け取りできません」と返された→断られたのか
- 法律の上ではまだ何も返事を受けていない
- だから争い方が変わる
- 今日の道筋=①7条の審査・応答義務②「受理」の語が無い理由③申請権④返事が来た・来ない・返された場面の争い方⑤取り違えやすい点⑥事前協議と審査⑦申請権の有無⑧9条・10条・11条⑨当てはめ演習
窓口に申請書を出したところ、「この書類はお受け取りできません」と返されました。これは、申請を断られたのでしょうか。実は、法律の上では、まだ何も返事をもらっていない状態です。だから、断られたときとは、争い方が変わります。同じに見えます。でも、行政庁が「許可しません」と判断して通知するのと、書類を返すだけなのとでは、法律上の扱いが違います。前者は返事で、後者は返事ではありません。なぜ違うのか。そして違うと、何が変わるのか。今日はそこを、条文から順に読みます。前回は、申請を審査する物差しと、いつごろ答えるかの目安を、先に見せる条文を読みました。今日は、申請が行政庁に届いたあと、行政庁に何が義務づけられるか。そして、その裏返しとして、申請した人に何が保障されるかを見ます。
7条——届いたら審査を始め、不備は補正か拒否
図:7条の骨格
- 申請が事務所に到達→遅滞なく審査を開始
- 形式上の要件に適合しない=記載事項の不備・必要書類の添付漏れ・申請期間外など→速やかに「相当の期間を定めて補正を求める」か「拒否する」
- 選べない道=放置・黙って返す
- 形式の審査と、要件の中身の審査は別
設例を置きます。ある個別の法律が、河川敷の広場を、臨時のイベントに使うための許可を定めています。許可を出す行政庁をA、使いたい人をBとします。行政指導の回で、窓口が申請書を受け取らない型を、7条が封じると見ました。今日は、その7条の本体です。Bが申請書を出す場面から、7条を全文で読みます。
条文行政手続法7条
行政手続法 第七条(申請に対する審査、応答) 行政庁は、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始しなければならず、かつ、申請書の記載事項に不備がないこと、申請書に必要な書類が添付されていること、申請をすることができる期間内にされたものであることその他の法令に定められた申請の形式上の要件に適合しない申請については、速やかに、申請をした者(以下「申請者」という。)に対し相当の期間を定めて当該申請の補正を求め、又は当該申請により求められた許認可等を拒否しなければならない。
読み方は、2つに分かれます。まず、1つ目は、申請が事務所に到達したら、遅滞なく審査を開始しなければならない、という部分です。2つ目は、形式上の要件に合わない申請は、速やかに、補正を求めるか、拒否するか、のどちらかにしなければならない、という部分です。届いたら、です。郵便受けに入った時点で、手紙は届いています。家の人が「受け取りません」と言っても、届いていないことにはなりません。それと同じで、申請書が行政庁の事務所に届けば、その後に窓口の担当者が受け取りを渋っても、審査を始める義務は、すでに動き出しています。
条文に例が挙がっています。申請書の記載事項に不備がないか。必要な書類が添付されているか。申請できる期間内か。設例なら、イベントの日程を書く欄が空白、添付すべき主催者名簿が付いていない、使用を申し込める期間を過ぎている、といったものです。これらは、申請の中身が許可に値するかを見る前の、外形の話です。そして、形式が整っていない申請に対して、行政庁が選べる道は2つだけです。補正を求めるか、拒否するか。補正を求めるなら、相当の期間を定めて求めます。選べないのは、黙って放っておくことと、黙って書類を返すことです。そのどちらも、条文には出てきません。
条文の上では、補正を求めるか拒否するか、行政庁が選べます。直せば済む不備なのに、補正の機会を与えず拒否すれば、運用としては不親切だと言われます。ただ、7条の要点はそこではありません。要点は、不備があっても、放置や返却という第3の道は無い、ということです。もう一つ区別します。形式の審査と、要件の中身の審査は別です。主催者名簿が付いているかは形式、イベントの騒音が周辺の暮らしに著しい支障を与えないかは、中身です。補正を求められるのは形式の不備で、中身が足りないなら、補正ではなく、審査をして断ることになります。
条文はなぜ「受理」と言わないのか
図:「受理」の語が無い理由
- 7条=到達→審査開始
- 日常語の受理=受け取ってよいか行政庁が決める→不受理・返戻が生まれる
- 行手法は受理を法的な概念として認めない構成
- 答案=「受理しなければならない」でなく「審査を開始しなければならない」
- 例外=個別法が受理の拒否を明示的に認めている場合
7条をもう一度見てください。受理、という言葉が出てきません。出てくるのは、到達、と、審査の開始、です。これは、わざとです。日常語の受理は、受け取ってよいかを、窓口側が決めるというニュアンスを持ちます。そう考えると、受け取らない、つまり不受理や返戻が、行政庁の権限として成り立ってしまいます。7条は、これを封じるために、行政庁側の受け取りの許否に、審査の義務を左右させない作りにしました。届いたら審査を始める。受理されたかどうかは、関係がありません。だから、答案では、受理しなければならない、と書くのは避けてください。受理という言葉の法的な意味を巡って、争いを呼びます。書くなら、審査を開始しなければならない、です。これが、7条の言葉に沿った書き方です。例外が一つあります。個別の法律が、一定の場合に受理を拒むことを、はっきり認めている場合です。以前の回で、建築確認では、設計が建築士法に違反するときなどに受理を拒める、という例を見ました。そうした法律は、その法律の仕組みとして読みます。7条の原則が、すべてを上書きするわけではありません。
申請とは何か——申請権は返事を求める権利
図:申請と申請権
- 2条3号=法令に基づく・許認可等を求める行為・行政庁が諾否の応答をすべきこととされているもの
- 行政庁=審査し諾否を応答する義務
- 申請者=申請権=実体的な権利〔許可をもらう〕とは別の手続的な権利〔審査され諾否の返事を受ける〕
- 要件を満たさなくても申請権は侵害されうる
- 例:レストランの注文
次は、申請の定義です。2条3号を、全文で読みます。
条文行政手続法2条3号
行政手続法 第二条(定義)(3号) 三 申請 法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分(以下「許認可等」という。)を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをいう。
注目するのは最後です。行政庁が、諾否の応答をすべきこととされているもの。申請とは、行政庁が、認めるか断るかの返事をすべきものとして、法令が予定している求めのことです。ここから、行政庁には審査をして返事をする義務が出ます。そして、その裏返しとして、申請した人には、審査を受けて、返事をもらう権利があります。これを、申請権と呼びます。申請権って、許可をもらう権利のことですか。違います。ここが、最初に押さえる点です。許可をもらう権利は、要件を満たしたときに生じる実体的な権利です。申請権は、それとは別の、手続的な権利です。審査を受けて、認めるか断るかの返事を受ける権利です。レストランにたとえます。注文票を出した客に、必ず料理が出るわけではありません。材料が切れていれば、出せません。でも、客は、「できます」か「できません」かの返事を、受けることができます。料理を食べられるのが実体、返事を受けられるのが手続です。申請権は、後者にあたります。
要件を満たしていない申請でも、返事をもらう権利はあるんですか。あります。要件を満たさない申請なら、返事は断る、になります。その断る返事を受ける権利が、申請権です。ですから、要件を満たしていないBでも、申請を返されたり、放置されたりすれば、申請権は侵害されています。申請の仕組みがあることの効果は、3つあります。1つ目、行政庁の応答は、認めるものも断るものも、処分になること。2つ目、第2章の手続、つまり審査基準や理由の提示といった保障が、申請に対する処分に及ぶこと。そして3つ目、応答が無いときに、救済の道があること。この3つ目が、今日の中心です。
返事が来た・来ない・返された——3つの場面と争い方
図:3つの場面と争い方
- 申請書が行政庁に到達→審査→場面A 返事が来た〔認める/断る=どちらも処分〕→断られたら審査請求・取消訴訟・申請型義務付け訴訟〔行訴法3条6項2号〕
- 場面B 相当の期間を過ぎても返事が来ない→不作為についての審査請求・不作為の違法確認の訴え〔3条5項〕・申請型義務付け訴訟
- 場面C 窓口で返された〔返戻〕=処分ではない・申請は到達している→場面Bとして争う
- 根っこ=審査・応答の義務と申請権
ここから、今日の中心です。設例で、Bの身に起こりうることを、3つに分けます。Bが河川敷の広場の使用許可を申請します。場面Aは、返事が来た場合です。Aが、認める、または、断る、と通知します。どちらも、申請に対する処分です。処分は、第1章で見たとおり、行政が法律にもとづいて、相手の権利や義務を具体的に決める行為でした。断られたBは、その処分を争えます。審査請求、取消訴訟、そして、断る処分を取り消すだけでなく、許可をせよ、と求める申請型の義務付けの訴え、という道があります。この義務付けの訴えが、行政事件訴訟法3条6項2号に当たるものです。審査請求は行政に、取消訴訟は裁判所に、処分の見直しを求める道です。
拒否された後の申請のやり直しは、できます。第4章で見たとおり、通常の拒否処分には、実質的確定力、つまり、した庁以外も覆せなくなる確定の力は生じません。争いを裁く行為ではないからです。事情が変われば、再び申請できます。設例なら、騒音の対策を整えたうえでの申請し直しです。ただし、同じ内容を何度も出して、審査の邪魔をするのは、第1章で見た申請権の濫用にあたり、別の話になります。場面Bは、返事が来ない場合です。Bが書類を郵送して、届いたのに、半年たっても返事がありません。この場合、Bは、不作為についての審査請求ができます。また、訴訟では、不作為の違法確認の訴えと、申請型の義務付けの訴えがあります。不作為の違法確認の訴えは、行政事件訴訟法3条5項です。相当の期間が過ぎたかは、前回見たとおり、標準処理期間が重要な考慮要素になります。場面Cは、Bが窓口に書類を出したところ、担当者が「まず事前に相談を」と言って、書類を返した場合です。窓口は、受け取ってくれていません。ここで、取消訴訟を起こせるでしょうか。
書類の返戻を処分とみて、その取消しを求める道はとりません。書類を返すのは、法律上の行為ではなく、事実上の取扱いです。返しても、Bの申請が届いたという状態は消えず、Bの権利や義務は何も変わりません。だから処分ではありません。取消訴訟の対象にもなりません。では、どう争うか。7条は、申請が行政庁の事務所に到達した時から、審査の義務が始まる、としていました。返されても、到達はしています。つまり、Bの申請は到達したのに、応答がされていない状態です。これは、場面Bと同じです。ですから、場面Bの道具、不作為についての審査請求や、不作為の違法確認の訴えで争います。3つを貫くのは、同じ根っこです。行政庁には、審査をして応答する義務があり、申請者には、それを求める申請権がある。返事があれば、その返事が処分です。返事がなければ、不作為です。窓口で返された場合は、返事がない場合に含まれます。
取り違えやすい点——断られたのに不作為?
図:取り違えやすい2点
- ①断られた〔場面A〕のに不作為の違法確認の訴え=誤り:断る返事は処分であり「処分をすべきなのにしない」に当たらない→取消訴訟・申請型義務付け
- ②返戻〔場面C〕を取消訴訟で争う=誤り:処分でない→不作為の違法確認・不作為審査請求・申請型義務付け/組み合わせ=A→取消し系・B C→不作為系
ここで、問いを一つ置きます。Aから「要件を満たさないので許可しません」という通知が、Bに届きました。Bは、不作為の違法確認の訴えを使えるでしょうか。理由とともに答えてください。決め手は、断る返事も処分であり、処分はすでにされている、という点です。不作為の違法確認の訴えは、相当の期間内に何らかの処分をすべきなのに、しないことの違法を確認するものです。断る処分がされている以上、処分をしない状態ではありません。Bが争うなら、その拒否の処分を取消訴訟で取り消す、あるいは許可を義務付ける訴えです。逆に、返戻を取消訴訟で争うのも誤りです。返戻は処分でないので、取り消す対象がありません。組み合わせで覚えてください。返事が来た場面Aは、取消し系の道具。来ない場面Bと、返された場面Cは、不作為系の道具です。短答では、場面と道具のペアを、入れ替えた肢が出ます。
事前協議の指導と審査
図:事前協議の指導と審査
- 行政指導=相手が任意に応じる限り違法でない
- 申請者が従わない意思を表明した後も、指導を続けて審査を始めない・応答しない=特段の事情が無い限り留保は違法(品川マンション事件)
- 33条=判決の趣旨を条文化=従う意思がない旨の表明後も指導を続けて申請者の権利の行使を妨げてはならない
- 7条との接続=到達で審査義務が動いている
窓口の担当者が「まず事前に協議を」と求める。これは、よくある場面です。行政指導の回で見た品川マンション事件では、返事を待たせてよい土台は、相手の任意の協力でした。だから、協力できないとはっきり表明して返事を求めた後は、特段の事情が無い限り、返事を止めておくこと、つまり留保は違法とされました。33条は、この判決の趣旨を条文にしたものです。33条は、申請の取下げや変更を求める指導について、従う意思が無いと表明された後も、指導を続けて、申請者の権利の行使を妨げることを禁じています。7条とつなげて整理します。申請が届けば、審査の義務が動いています。事前協議を求めること自体は、任意に応じる限り適法ですが、それを理由にした審査の先延ばしには、限りがあります。
申請権があるのか、仕組みから読む
図:申請権の有無の見分け方
- 個別法の仕組みの解釈で決まる
- 「許可」「認可」「免許」「申請」の文言は手がかり
- 「申出」「届」でも仕組みの解釈で申請権がありうる
- 申請権が無い場面=処分等の求め〔別の回〕・応答の処分性〔別の回〕
ここまでの話は、申請権がある場面でした。では、ある法律の仕組みに、申請権があるかは、どう見分けるのでしょうか。決めるのは、その個別の法律の仕組みの解釈です。手がかりは、2条3号の、法令に基づき、行政庁が諾否の応答をすべきこととされているもの、という定義です。返事をせよと定めているのは、その個別の法律だからです。設例のBの使用許可は、法律が許可の申請を定めているので、申請です。これに対して、近隣の住民が市に、広場にベンチを置いてほしい、と要望を出しても、返事をせよと定めた法令が無ければ、申請ではありません。返事が無くても、不作為を争う道具は使えません。許可、認可、免許、申請、といった文言は、有力な手がかりになります。ただ、申出と書かれていても、仕組みを読んで、行政庁が応答すべきものと解釈できるなら、申請権がありえます。申請権が無い場面には、処分等の求めという別の仕組みがあります。法令違反を正す処分や指導をしてほしいと、誰でも求められる仕組みで、行政指導の手続の回で触れました。
9条・10条・11条——義務と努力義務の色分けに中身を足す

- 9条1項 申請者の求めに応じ審査の進行状況・処分の時期の見通しを示す=努力
- 9条2項 申請をしようとする者・申請者の求めに応じ必要な情報を提供=努力
- 10条 申請者以外の者の利害の考慮が許認可等の「要件とされている」処分で必要に応じ公聴会等=努力
- 11条1項 他庁の審査を理由に殊更に遅延させない=義務
- 11条2項 連絡をとり審査の促進=努力
前に、第2章の条文を、義務と努力義務に色分けしました。9条と10条は努力義務、11条は1項が義務、2項は努力義務でした。違いは、守らなかったときに表れます。義務を破れば、違法の問題になります。努力義務は、前に見たとおり、それを欠いたことだけで処分を違法とするのは難しい、と整理されます。今日は、それぞれの中身を足します。ここで、前に見た論点を一つ思い出します。標準処理期間を過ぎたら、直ちに違法でしょうか?目安なので、直ちには違法になりません。相当の期間を過ぎたかを判断する、重要な考慮要素になります。その考えを持ったまま、9条から読みます。
条文行政手続法9条
行政手続法 第九条(情報の提供) 行政庁は、申請者の求めに応じ、当該申請に係る審査の進行状況及び当該申請に対する処分の時期の見通しを示すよう努めなければならない。 2 行政庁は、申請をしようとする者又は申請者の求めに応じ、申請書の記載及び添付書類に関する事項その他の申請に必要な情報の提供に努めなければならない。
9条は、求めに応じて、情報を出す条文です。1項は、申請者の求めに応じて、審査がどこまで進んでいるか、いつごろ処分が出るかを示します。2項は、申請をしようとする段階の人や、申請者の求めに応じて、書き方や添付書類といった、申請に必要な情報を提供します。どちらも努力義務で、求めがあって初めて動く、という点も押さえてください。設例なら、半年待たされているBは、9条1項で、いつごろ処分が出るかの見通しを尋ねられます。示された見通しが標準処理期間を大きく超えていれば、相当の期間を過ぎたかを考える材料になります。次は10条です。
条文行政手続法10条
行政手続法 第十条(公聴会の開催等) 行政庁は、申請に対する処分であって、申請者以外の者の利害を考慮すべきことが当該法令において許認可等の要件とされているものを行う場合には、必要に応じ、公聴会の開催その他の適当な方法により当該申請者以外の者の意見を聴く機会を設けるよう努めなければならない。
申請者以外の人が求めても、意見を聴く機会が必ず設けられるわけではありません。10条には、条件が3つあります。1つ目、申請者以外の者、つまり申請者以外の第三者の利害を考慮すべきことが、法令で許可の要件とされていること。設例なら、許可の要件に、周辺の暮らしに著しい支障が無いこと、とあれば、住民Cの利害は要件に入っています。2つ目、必要に応じてであり、必要かどうかの判断は行政庁がします。3つ目、努力義務であることです。Cに、意見を言う権利、つまり参加権までは認めていません。行政手続法は、行政庁と申請者の2人の関係が基本で、Cのような第三者は、10条で少しだけ顔を出します。なお、取消訴訟は、訴える資格のある人しか起こせません。10条の申請者以外の者は、その資格のある人に限られず、もっと広く読みます。最後に、11条です。
条文行政手続法11条
行政手続法 第十一条(複数の行政庁が関与する処分) 行政庁は、申請の処理をするに当たり、他の行政庁において同一の申請者からされた関連する申請が審査中であることをもって自らすべき許認可等をするかどうかについての審査又は判断を殊更に遅延させるようなことをしてはならない。 2 一の申請又は同一の申請者からされた相互に関連する複数の申請に対する処分について複数の行政庁が関与する場合においては、当該複数の行政庁は、必要に応じ、相互に連絡をとり、当該申請者からの説明の聴取を共同して行う等により審査の促進に努めるものとする。
11条の1項は、してはならない、で義務です。他の行政庁の審査が終わるまで待つ、と、殊更に遅らせることを禁じています。設例なら、Bが河川敷の使用許可と、道路の使用許可を、別々の行政庁に出した場面です。道路の側の審査が終わらないから、と河川敷の側が理由なく止まるのは、いけません。2項は、複数の行政庁が、連絡をとり、説明の聴取を共同でするなどして、審査の促進に努める、努力義務です。
当てはめ演習——場面と条文で仕分ける
図:当てはめ演習の設例
- 河川敷の広場の臨時使用許可
- A=行政庁・B=申請者・C=近隣の住民
- ①Bが窓口で書類を出すと担当者が「まず事前に相談を」と返した②Bが書類を郵送し届いたが半年返事が無い③Aが「要件を満たさない」と断る通知を出した④申請書の添付書類が1枚欠けていた⑤近隣の住民Cが「意見を言わせろ」と求めた
5問、仕分けます。場面A、B、C、または条文の、どれに当たるかと、決め手の言葉を言ってください。1問目。Bが窓口で書類を出すと、担当者が、まず事前に相談を、と書類を返しました。2問目。Bが書類を郵送し、届いたのに、半年返事がありません。3問目。Aが、要件を満たさない、と断る通知を出しました。4問目。申請書の添付書類のうち、1枚が欠けていました。5問目。近隣の住民Cが、意見を言わせろ、と求めました。
図:当てはめ演習の答えと決め手
5問とも、決め手を言えました。答えと決め手を、1枚に並べておきます。
今日の地図(保存版)
図:今日の地図
- 7条=到達で審査開始・形式不備は補正か拒否・放置も返戻もできない
- 「受理」の語は無い→答案は審査開始義務
- 申請権=返事を求める手続的な権利・要件を満たさなくても侵害されうる
- 場面A 返事が来た→取消し系・場面B 来ない→不作為系・場面C 返された→Bと同じ
- 取り違え=断られたのに不作為の違法確認は誤り
- 9条・10条=努力義務・11条1項=義務・2項=努力義務
冒頭の問いに戻ります。窓口で書類を返された。これは、断られたのではありません。法律の上では、まだ何も返事をもらっていない状態です。だから、取消訴訟ではなく、返事が来ない場面と同じ道具で争います。持ち帰るのは3点です。1つ目。7条は、申請が到達したら遅滞なく審査を開始し、形式上の要件に合わない申請は、速やかに補正を求めるか拒否するか、と定めています。受理という言葉は使わず、答案も、審査を開始しなければならない、と書きます。2つ目。申請権は、許可をもらう権利ではなく、審査を受けて、認めるか断るかの返事を受ける権利です。返事が来たら取消し系、来ない場合と返された場合は不作為系の道具です。断られたのに不作為の違法確認、返戻に取消訴訟は、どちらも誤りです。3つ目。9条と10条は努力義務で、10条は申請者以外の者の利害が要件とされている処分に限られ、参加権ではありません。11条は、1項が義務、2項が努力義務です。
参照条文
- 行政手続法7条
- 行政手続法2条3号
- 行政手続法9条
- 行政手続法10条
- 行政手続法11条