理由の提示と処分基準
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第8章 行政手続 #112/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
事実も条文も書いてある。それでも足りない
図:今日の問い
- 通知書の理由欄
- 「当該設計は法令に違反し、また不誠実な行為である。根拠=建築士法10条1項。」
- 事実あり・条文あり
- それでも理由を示したことにならない場合がある
- ①前回の物差しを満たしても足りないのはなぜか②判例の総合考慮の4要素③通知書の理由欄を自分で判定する
資格を持つ専門職の免許が、取り消されました。通知書には、違反した設計の具体的な事実が書かれています。根拠の条文も書かれています。前回の物差しで見れば、事実関係と適用した法規は、記載自体から分かります。最高裁は、それでも足りないと判断しました。今日は、この判決を1本かけて読みます。3つ進めます。1つ目、前回の物差しと、処分基準を、軽く思い出します。2つ目、判決の事案と判旨を読み、足りないのは何かを突き止めます。3つ目、最後に、架空の通知書を4通り見て、自分で判定します。
前回の物差しと、処分基準を思い出す
図:思い出す2つ
- 理由の2つの働き=①判断を慎重にして恣意を抑える②理由を知らせて争う手がかりを渡す
- 旅券の判決=いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用したかが記載自体から分かること
- 14条1項=不利益処分の名あて人に同時に理由
- 処分基準=処分の判断基準〔2条8号ハ〕・定めて公にするのは努力義務〔12条〕
前回の内容から確認します。理由を示させる目的は、2つの働きです。1つ目は、処分をする側の判断を慎重にして、恣意を抑えること。2つ目は、理由を知らせて、争う手がかりを渡すことです。旅券の判決は、これをもとに、事実関係と適用した法規が、記載自体から分かることを求めました。今日の条文は、不利益処分の14条1項です。
条文行政手続法14条1項
行政手続法 第十四条(不利益処分の理由の提示)(1項) 行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない。ただし、当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は、この限りでない。
もう一つ、思い出すものがあります。処分基準です。処分をするかどうか、どんな処分にするかを、行政庁が定めておく物差しでした。ここで問いを一つ置きます。処分基準を定めて公にすることは、義務でしょうか。努力義務でしょうか?努力義務です。12条1項が、定め、かつ、公にしておくよう努めなければならない、としていました。2項は、定めるときはできる限り具体的に、でした。そして、営業停止の基準の事件を思い出してください。処分基準を公にした意味は、判断過程の公正と透明性を確保し、相手方の権利利益を保護することにある、という話でした。ここが今日の橋です。公にされた処分基準は、処分庁が自分で、この物差しで処分を選びます、と宣言したものです。宣言した以上、実際にその物差しをどう当てたかが、理由の核心になりうる。今日の判決は、この考え方で読めます。
事案——一級建築士の免許取消し
図:事案の流れ
- A=国土交通大臣
- B=一級建築士
- Bが構造基準に適合しない設計を行い、耐震性等の不足する建築物を現出させた→Aは建築士法10条1項に基づき免許取消し
- 通知書=①違反設計の事実〔複数の敷地を列記〕②構造計算書に偽装の見られる不適切な設計③10条1項該当・品位と信用を著しく傷つける
- 書かれていないもの=処分基準の適用関係
- 懲戒の種類=戒告・業務停止・免許取消し
事案です。国土交通大臣のAが、一級建築士Bに、免許取消しの処分をしました。根拠は建築士法10条1項です。建築士の懲戒は、戒告、業務停止、免許取消しの3種類で、Aはその中から、いちばん重い免許取消しを選びました。通知書には、Bが構造基準に適合しない設計をして、耐震性などが足りない危険な建築物を生み出したこと、構造計算書に偽装の見られる不適切な設計をしたこと、そして、10条1項に該当し、建築士としての品位と信用を著しく傷つけたことが、書かれていました。違反の事実は、複数の敷地を挙げて、具体的でした。ところが、通知書に書かれていなかったものがあります。処分基準の適用関係です。この処分には、当時の建設省が定め、意見公募手続を経て公にしていた処分基準がありました。
基準の中身を、自分の言葉で整理します。まず、違反の類型ごとに、重さを表すランクが決まっています。次に、情状でそのランクを加減します。最後に、ランクごとに、戒告、業務停止、免許取消しが対応づけられています。違反が複数あるときは、いちばん重い違反のランクを基本に、それを加重する定めもあります。
図:処分基準の仕組み
- 類型ごとにランクを決める→情状で加減→複数の事由は最も重いランクを加重→ランクごとに処分を対応づける〔戒告・業務停止・免許取消し〕
- 別枠=故意または過失で結果が重大な場合は業務停止の下限や免許取消しに直結する分岐
- どの枝を通ったかで結論が変わる
さらに、故意や過失があって結果が重大な場合は、別枠の分岐があります。つまり、基準のどの枝を通ったかで、結論が変わる仕組みです。訴訟になってから、国は、免許取消しの根拠は、この別枠の分岐だと主張しました。ランク方式の本文は、予備的な主張、つまり、別枠が認められない場合に備えた控えの主張でした。ところが、通知書を読んでも、どちらの枠を通ったのか、分かりません。原審の札幌高裁は、根拠条文と具体的な事実が示されていれば足りる、処分基準の内容や適用関係までは要らない、として、Bの請求を退けました。最高裁は、これを破棄して、免許取消処分を取り消しました。
立ち止まる——足りないのは何か
図:問い
- 通知書には違反の事実と根拠条文がある
- それでも足りないとしたら、足りないのは何か
- 答えを考えてから進む
ここで、判旨を読む前に立ち止まります。通知書に、事実も条文もある。それでも足りないとしたら、足りないのは何でしょうか?通知書の理由は、2段に分けて考えられます。1段目は、なぜ要件に当たるのか。違反した設計の事実と条文で、これは分かります。2段目は、なぜ数ある処分のうち、免許取消しが選ばれたのか。ここが、事実と条文からは分かりません。たとえば、目的地は駅前だ、とだけ書かれた道案内の紙を想像してください。複数のルートが載った地図が公開されているのに、どのルートを通ったのかが書かれていない。目的地に着いたことは分かっても、なぜそのルートなのかは分かりません。これが、2段目が欠けた状態です。
判旨——4つの要素を総合考慮する
図:判旨の一般論
- 14条1項本文の趣旨=判断の慎重と合理性を担保して恣意を抑える+理由を知らせて不服申立ての便宜を与える
- どの程度の理由か=この趣旨に照らし①処分の根拠法令の規定内容②処分基準の存否・内容・公表の有無③処分の性質・内容④処分の原因となる事実関係の内容 等を総合考慮して決する
- 暗記の形=趣旨に照らし、法令・基準・処分・事実を総合考慮
判旨に入る前に、もう一つ問いです。前回の旅券の判決は、何を書けと言っていましたか?事実関係と、適用した法規が、記載自体から分かるように書く、でした。その上で、今回の判決を読みます。判旨は、大きく二つに分かれます。どの程度の理由が要るかを決める一般論と、それを本件に当てた部分です。まず、一般論です。
判例最判平23・6・7 民集65巻4号2081頁
一級建築士の免許取消しの事件——理由の提示の趣旨と程度 行政手続法14条1項本文が,不利益処分をする場合に同時にその理由を名宛人に示さなければならないとしているのは,名宛人に直接に義務を課し又はその権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み,行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解される。そして,同項本文に基づいてどの程度の理由を提示すべきかは,上記のような同項本文の趣旨に照らし,当該処分の根拠法令の規定内容,当該処分に係る処分基準の存否及び内容並びに公表の有無,当該処分の性質及び内容,当該処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮してこれを決定すべきである。
2文に分けて読みます。1文目は、理由の提示を求める趣旨です。判断の慎重と合理性を担保して恣意を抑えることと、理由を知らせて不服申立ての便宜を与えること。前回の2つの働きと同じです。2文目が、どの程度の理由を示すかの決め方です。この趣旨に照らして、見るのは、次の4つです。1つ目、処分の根拠になる法令の規定の内容。2つ目、処分基準の有無と内容、そして公にされているかどうか。3つ目、処分の性質と内容。4つ目、処分の原因となる事実関係の内容です。これらを、総合考慮します。総合考慮ということは、4つ全部がそろわないとだめ、というわけではないのです。そこは後ほど扱います。まず当てはめを見ます。
判旨——4要素への当てはめ
図:当てはめ
- ①根拠法令=要件は抽象的〔法令違反・不誠実行為〕+処分の選択にも裁量②処分基準=意見公募を経て公にされ、多様な事例に対応するかなり複雑な内容③処分の性質=資格を直接はく奪する重大な不利益処分④事実=要件に当たることは分かるが、なぜその処分が選ばれたかは分からない
- 結論=処分の原因事実と根拠法条に加え、処分基準の適用関係を示さなければ足りない→14条1項本文の要件を欠く
4つの要素に、本件を当てます。①根拠法令です。10条1項の要件は、法令に違反した、不誠実な行為をした、という抽象的なものです。しかも、どの処分を選ぶかにも、裁量があります。②処分基準です。意見公募という手厚い手続を経て、公にされていました。しかも、中身は、多様な事例に対応するための、かなり複雑なものです。③処分の性質です。一級建築士の資格を直接はく奪する、重大な不利益処分です。④事実関係と、結論の核心です。判決の言葉を読みます。
判例最判平23・6・7 民集65巻4号2081頁
一級建築士の免許取消しの事件——処分基準の適用関係 ……建築士に対する上記懲戒処分に際して同時に示されるべき理由としては,処分の原因となる事実及び処分の根拠法条に加えて,本件処分基準の適用関係が示されなければ,処分の名宛人において,上記事実及び根拠法条の提示によって処分要件の該当性に係る理由は知り得るとしても,いかなる理由に基づいてどのような処分基準の適用によって当該処分が選択されたのかを知ることは困難であるのが通例であると考えられる。
前半と後半に分けます。前半。事実と根拠条文を示せば、要件に当たることは分かる。後半。けれども、どの基準のどう当てはめで免許取消しが選ばれたのかは、知ることが難しい。だから、処分基準の適用関係まで示す必要がある、という流れです。
判例最判平23・6・7 民集65巻4号2081頁
一級建築士の免許取消しの事件——結論 このような本件の事情の下においては,行政手続法14条1項本文の趣旨に照らし,同項本文の要求する理由提示としては十分でないといわなければならず,本件免許取消処分は,同項本文の定める理由提示の要件を欠いた違法な処分であるというべきであって,取消しを免れないものというべきである。
注目するのは、このような本件の事情の下においては、という限定です。理由の提示の要件を欠く以上、判決は、処分の中身が正しかったかには立ち入らず、免許取消処分を取り消しました。事実と条文が分かるのに、足りないというのは、旅券の判決と、食い違いませんか。食い違いません。旅券の判決は、何を書けば記載自体から分かるか、という基本形でした。今回は、その上に、処分の選択という2段目が乗った場面です。使い分けは、あとで1枚にします。決め手を、2つの働きに当てて言います。基準が公にされ、取消しか停止かの選択が裁量なら、Aが判断を慎重にしたかどうかは、基準をどう当てたかを書かせて、はじめて確かめられます。Bも、どの枝を通ったかが分からなければ、どこを争えばよいのか、見当がつきません。しかも、資格を奪う重い処分ほど、慎重に判断させる必要も、争う必要も、大きくなります。
反対意見と、補足意見
図:割れ方
- 裁判官5名
- 多数意見3名=原判決を破棄し、免許取消処分を取消し
- 反対意見=那須・岡部裁判官
- 補足意見=田原裁判官
- 反対意見の骨子=①基準があっても適用関係の表示が常に必要とは限らない②12条は努力義務で行政庁の裁量もある③専門職は聴聞で情報を得られる④取り消してもやり直されうる
- 補足意見の骨子=公にした基準には特段の事情がなければ従う→従うと宣言した以上、適用関係を示すべき
この判決は、全員一致ではありません。判断した5名の裁判官のうち、3名が多数意見で、那須裁判官と岡部裁判官の2名が反対意見を書いています。田原裁判官は、補足意見を付けています。補足意見は、以前の回で見たとおり、結論に加わった裁判官が個人として書き足した意見で、判決の理由そのものではありません。反対意見の中身を、1段だけ見ます。基準が公にされていても、適用関係の表示が常に必要とは限らない。12条は努力義務であり、行政庁が適用関係の表示までは要らないと考えて基準を作る裁量もある。専門職は、処分の前の聴聞で必要な情報を得られるので、通知書に書かれていなくても争える。取り消しても、同じ処分がやり直されうるので、取り消す実益が薄い。これが骨子です。
多数意見は、常に必要と言ったのでしょうか。言っていません。多数意見も、本件の事情の下で、という言い方で、結論を出しています。割れたのは、本件の基準と処分について、通知書の書き方で足りるかどうか、という点です。この点が、あとで効いてきます。補足意見は、公にされた基準には、特段の事情がないかぎり処分庁が従う、と述べます。従うと宣言したのだから、適用関係を示すべきだ。基準によらない場合は、その合理的な理由を示すべきだ、という考え方です。営業停止の基準の事件でいう、自己拘束、つまり、行政が自分で公にした基準に、自分で縛られる力と、つながる話です。
言い過ぎを止める——常に書け、ではない
図:結論が動きうる場面
- 総合考慮の4要素のどれが欠けるか
- ②基準が公にされていない→適用関係を求める根拠が弱まる
- ②④基準が単純で、事実から当てはめが一義的に分かる
- ①③処分の選択肢が1つで、選択の理由が問題にならない/前提=旅券の判決の基本形〔事実関係と法規が記載自体から分かる〕は満たすこと
ここで、言い過ぎを止めます。処分基準があれば、いつも適用関係まで書け、という判決ではありません。判旨は総合考慮ですから、結論は、要素が変われば動きます。さきほどの、4つ全部がそろわないとだめか、という問いの答えもここです。この4つの要素は、全部満たすべき要件ではなく、重みを量る材料です。4つの要素のどれが欠けると、動きうるでしょうか。自分で考えてみてください。公にされていない基準は、処分庁が外に向けて約束した物差しではありません。ほかに結論が動きうるのは、基準が単純で、事実を見れば当てはめが一義的に分かる場合。そして、法が処分の種類を1つしか置いていなくて、選択の理由が問題にならない場合です。ただし、足りる、と言い切れるのは、旅券の判決の基本形、つまり事実関係と法規が記載自体から分かることを満たしていることが前提です。基準が公にされていなくても、事実が曖昧なら、そもそも足りません。
旅券の判決との使い分け
図:答案での使い分け
- 旅券の判決=何を書けば記載自体から分かるかの基本形→基準の適用関係が論点でないとき
- 平成23年の判決=処分基準が公にされ、処分の選択が争点になる場面での具体化→基準の適用関係を示すべきかが論点のとき
- 矛盾ではなく積み重ね
- 後者の中でも旅券の規範は前提に使う
答案での使い分けです。基準の適用関係が論点になっていないときは、旅券の判決の規範を使います。事実関係と法規が、記載自体から分かるか、です。処分基準が公にされていて、その適用関係を示すべきかが論点になるときは、今日の判決の枠組みを使います。趣旨に照らして、法令、基準、処分、事実の4つを総合考慮する。その中で、旅券の規範を前提として使います。2つの判決は、矛盾しません。積み重ねです。
射程——審査基準と8条
図:射程
- 本件=不利益処分・14条1項の事案
- 審査基準が公にされている申請拒否処分〔8条〕にも、基本的に同じ考え方が及ぶと解されている
- 判例が明言したのではない
- 審査基準も処分基準と同様に、判断の物差しを公にしたものだから
- 申請拒否は選択肢が許可か拒否か→問題になるのは基準のどの要件を欠くかの当てはめ
射程です。この判決が扱ったのは、14条1項の不利益処分でした。では、前回読んだ、申請を拒否するときに理由を示させる、8条の場合はどうでしょうか。審査基準が公にされている申請拒否処分にも、基本的に同じ考え方が及ぶ、と解されています。ただし、これは判例が明言したのではなく、本件は14条の事案です。学説が、審査基準も処分基準と同じく、判断の物差しを公にしたものだと整理しています。審査基準は、申請を認めるかどうかを判断する物差しです。公にすれば、この物差しで判断します、と宣言したことになる点は、処分基準と同じです。
問題になるのは、基準のどの要件を欠いたのか、という当てはめです。処分の種類の選択ではなく、要件への当てはめを示すことになります。
取消しという結論の位置づけ
図:結論部分
- 理由の提示の要件を欠く→それだけで処分は取り消される
- 処分の中身が適法かどうかは問わない
- 足りないと間違っているは別〔前回〕
- 送り=手続の瑕疵一般が取消事由か・理由の提示がなぜ厳格かは後の回
結論部分です。理由の提示の要件を欠く、というだけで、処分は取り消されます。処分の中身が正しいかどうかは、問われません。中身が正しければ残す、とすると、理由を書かなくても済んでしまい、慎重さの確認も、争う手がかりも、働かなくなるからです。前回の、足りないのと間違っているのは別、という話の延長です。ただし、手続の瑕疵が一般に取消事由になるのか、なぜ理由の提示だけは厳格なのかは、後の回で見ます。
演習——通知書の理由欄を判定する
図:通知書の理由欄・4通り
- 文化財修復士法/長官A→登録を受けた修復士B/懲戒=戒告・業務停止・登録取消し/処分基準=違反の類型ごとに点数→情状で加減→合計点で処分
- ①事実と条文だけ〔基準は公にされ複雑〕
- ②事実と条文と基準の該当箇所
- ③基準が公にされていない
- ④取消ししか処分の種類がない/判定の型=趣旨→4要素→結論
演習です。文化財修復士法という、架空の法律で考えます。国の長官Aが、登録を受けた修復士のBに、懲戒をします。懲戒は、戒告、業務停止、登録取消しの3種類です。要件は、法令違反または不誠実な行為、という抽象的なものです。処分基準が公にされていて、違反の類型ごとに点数が決まり、情状で加減し、合計点で処分を決める方式です。判定の型は、趣旨、4要素、結論です。1通目。Bが無許可で文化財に手を加えた事実と、法令の条文が書かれています。基準の適用の記載はありません。2通目。事実と条文に加えて、類型は無許可の加工で何点、情状で何点を加え、合計何点で登録取消しの区分に当たる、と基準の該当箇所が書かれています。
3通目。基準は内部の運用で、公にされていません。事実と条文は具体的に書かれています。3通目は、足りないとは決まりません。ただし、旅券の判決の基本形を満たすこと、つまり事実が具体的に書かれていることが条件です。4通目。法が処分の種類を、登録取消しの1つしか置いていません。通知書には事実と条文があります。
図:演習の答え
- ①事実と条文だけ・基準は公で複雑・選択に裁量=足りない〔2段目が欠ける〕
- ②事実と条文と基準の該当箇所=足りる
- ③基準が非公表で事実が具体的=基準の適用関係を求める根拠は弱まり、足りうる〔足りないと決まらない〕
- ④処分の種類が1つ=選択の理由は問題にならず、足りうる
答えは1枚に並べます。見るのは、基準が公にされているか、処分の選択に裁量があるか、の2点でした。
今日の地図(保存版)
図:今日の地図
- 問い=事実も条文もあるのに足りないのはなぜか→足りないのは、数ある処分のうちその処分が選ばれた理由
- 枠組み=趣旨に照らし、法令・基準・処分・事実の4要素を総合考慮
- 当てはめ=公にされた複雑な基準+裁量ある選択+重大な処分→適用関係まで
- 常にではない
- 旅券の判決は基本形・今日の判決はその具体化
- 射程=審査基準・8条にも基本的に及ぶと解されている
- 結論=要件を欠けば取消し
冒頭の問いに戻ります。事実も条文もあるのに、足りないのは、なぜか。足りないのは、要件に当たることではなく、数ある処分のうち、なぜその処分が選ばれたのか、でした。持ち帰るのは3点です。1つ目。枠組みは、2つの働きに照らして、法令、基準、処分、事実の4つを総合考慮する、です。2つ目。公にされた複雑な基準があり、処分の選択に裁量がある重大な処分では、基準の適用関係まで示す必要がありました。ただし、常にではありません。3つ目。旅券の判決は基本形、今日の判決はその具体化で、審査基準のある8条にも、基本的に同じ考え方が及ぶと解されています。
参照条文
- 行政手続法14条1項