会社法ゼロから会社法#11

単独株主権・少数株主権と株式買取請求権

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第2章 株式 ⑪/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

Aさんは帳簿を見られるか

持株の合算(A=Aさん〔100株〕/B=友人〔100株〕/C=友人〔100株〕/D=会社〔発行済株式 1万株〕/A,B,C→D 帳簿を見せろと請求する/合計300株=1万株の100分の3) 図:持株の合算

  • A=Aさん〔100株〕
  • B=友人〔100株〕
  • C=友人〔100株〕
  • D=会社〔発行済株式 1万株〕
  • A,B,C→D 帳簿を見せろと請求する
  • 合計300株=1万株の100分の3

前回のAさんを思い出してください。ある会社の株式を、発行済みの1万株のうち100株、つまり100分の1だけ持っている株主です。Aさんは、その会社の会計帳簿を見たいと思っています。ところが、帳簿の閲覧を請求するには、100分の3の持株が要るので、Aさんは届きません。ここで3つの問いです。1つ目、Aさんは、どうすれば帳簿を見られるのか。友人2人が、それぞれ100株持っていて、協力してくれるなら、どうでしょうか。2つ目、株を買い足した翌日に、100分の3に達したら、見られるのか。3つ目、その会社が他の会社と合併すると決めて、Aさんが反対したら、Aさんは会社に残るしかないのか。

答えを先に言います。1つ目、持株は合算できると解されています。Aさんと友人2人の合計300株は、1万株の100分の3なので、帳簿を見られます。2つ目、それは権利によって違います。帳簿の閲覧には保有期間の条件がないので、買い足した翌日でも数えられます。一方、公開会社では、半年間持ち続けていないと使えない権利があります。公開会社は、以前の回で見たとおり、譲渡制限のない株式が1種類でもある会社です。3つ目、合併などに反対した株主は、会社に株式を公正な価格で買い取らせて、出ていくことができます。今日の1問は、株主の権利には、なぜ使える条件の違いがあるのか、そして、条件で守れない少数派には何が用意されているのか、です。

この回の地図(1.1株で使える権利と条件付きの権利/2.なぜ作り分けるのか/3.一覧表で見る要件/4.要件の共通ルール3つと権利の濫用/5.株式買取請求権=出ていく権利/6.反対株主と手続・価格・効力発生) 図:この回の地図

  • 1.1株で使える権利と条件付きの権利
  • 2.なぜ作り分けるのか
  • 3.一覧表で見る要件
  • 4.要件の共通ルール3つと権利の濫用
  • 5.株式買取請求権=出ていく権利
  • 6.反対株主と手続・価格・効力発生

地図です。前半は、権利の使える条件を見ます。まず、1株で使える権利と、条件の付く権利を分けます。次に、なぜ分けるのか。そのうえで一覧表で要件を確かめ、3つの共通ルールと、権利の濫用を押さえます。後半は、出ていく権利である株式買取請求権です。

単独株主権と少数株主権

権利の使える条件(単独株主権=1株でも使える〔例=議決権308条1項・株主名簿の閲覧125条2項〕/少数株主権=議決権や株式の一定割合が要る〔例=会計帳簿の閲覧433条1項=3%〕/期間の条件=6か月前から引き続き有する〔例=代表訴訟847条1項・違法行為の差止め360条1項〕/自益権はすべて単独株主権〔454条3項・504条3項〕) 図:権利の使える条件

  • 単独株主権=1株でも使える〔例=議決権308条1項・株主名簿の閲覧125条2項〕
  • 少数株主権=議決権や株式の一定割合が要る〔例=会計帳簿の閲覧433条1項=3%〕
  • 期間の条件=6か月前から引き続き有する〔例=代表訴訟847条1項・違法行為の差止め360条1項〕
  • 自益権はすべて単独株主権〔454条3項・504条3項〕

先に、前回の復習を1問です。配当を受ける権利と、会計帳簿の閲覧を請求する権利は、それぞれ自益権と共益権のどちらでしょうか?配当は自益権で、帳簿の閲覧は共益権、その中の監督是正権でした。今日は、その共益権に付く条件を見ます。まず言葉です。1株でも持っていれば使える権利を、単独株主権といいます。持株数が足りないと使えず、一定の数の議決権、総株主の議決権の一定の割合、あるいは発行済株式の一定の割合を持っていることが要る権利を、少数株主権といいます。少数株主権という名前ですが、少数の株主が持つ権利という意味ではありません。少数の株主でも、足りるだけの持株を集めれば使える権利、という意味です。たとえば、帳簿の閲覧は、1万株の会社なら300株で足ります。単独株主権の代表は、議決権です。308条1項で、1株につき1個です。株主名簿の閲覧も、1株の株主が請求できます。自益権は、すべて単独株主権です。配当も残余財産の分配も、持株数に応じて受け取るだけで、持株数が足りない株主を締め出す条件、つまり足切りはありません。454条3項と504条3項が、株式の数に応じて、と定めているのは、そのためです。共益権には、単独株主権のものと、少数株主権のものの両方があります。

例外が2つあります。1つ目は、単元未満株主や、権利を制限した種類株式の株主です。単元とは、たとえば100株を1つのまとまりとして、議決権1個を与える単位で、定款で決めます。単元未満株主は、それに届かない株を持つ株主で、議決権がありません。こうした株主は、定款で、使える権利を制限されていることがあります。2つ目は、保有期間の条件です。1株でよいけれど、6か月前から引き続き持っていることが要る、という単独株主権があります。つまり、足切りには、持株数と、持ち続けた期間の2つの軸があります。

なぜ作り分けるのか

綱引きの構図(広げすぎ=零細株主の濫用で会社・他の株主が害される/絞りすぎ=多数派・取締役の濫用に少数派が対抗できず、少数派として出資する人がいなくなる/線の引き方は政策判断の暫定結果・立法で動きうる) 図:綱引きの構図

  • 広げすぎ=零細株主の濫用で会社・他の株主が害される
  • 絞りすぎ=多数派・取締役の濫用に少数派が対抗できず、少数派として出資する人がいなくなる
  • 線の引き方は政策判断の暫定結果・立法で動きうる

ここが今日の中心です。共益権の足切りは、なぜ権利ごとに違うのでしょうか。前回見たとおり、共益権は、使った結果が、他の株主や会社全体に及びます。ですから、誰でも自由に使えるようにすると、困ったことが起きます。たとえば、ごく少数の株式を持った人が、嫌がらせで、会社の帳簿を見せろ、総会を開け、取締役を訴える、と繰り返したらどうなるでしょうか。会社は対応に追われ、他の株主も損をします。反対に、足切りを高くしすぎると、別の困ったことが起きます。多数派や取締役が不正をしても、少数派は、何もできません。そうなれば、少数派の株主として出資しようとする人が、いなくなります。会社は資金を集めにくくなります。つまり、足切りは、零細株主の濫用を防ぐことと、少数派を守ることの、綱引きの結果です。そして、その線の引き方は、論理的に1つに決まるものではありません。立法の政策判断の、暫定的な結果です。

暗記する数字は、一覧表で確かめます。ただ、どんな権利が重いかは、使われたときに何が起きるかから、おおよそ見当がつきます。ここで、使えるか考えてみましょう。代表訴訟は、前回見たとおり、会社が取締役の責任を追及しないとき、株主が会社のために取締役を訴えるものです。代表訴訟と、会計帳簿の閲覧では、1株で使えるのは、どちらだと思いますか?帳簿の閲覧のほうが条件が重い、という見当は当たっています。実際、代表訴訟は1株で使えます。帳簿には、営業上の秘密が含まれます。1人の株主が、軽い理由で何度も見られると、会社は秘密を守れません。だから、帳簿の閲覧は、議決権の100分の3を要求しています。代表訴訟は、不正があるのに会社が追及しないときの、最後の手段なので、入口を絞りすぎないのです。同じ考え方で、重さの順を見てみます。取締役の違法行為の差止めも、会社が株式を発行するときの、募集株式の発行の差止めも、被害を、1人の株主が食い止める権利です。1株で使えます。これに対して、総会の招集の請求、役員の解任の訴え、帳簿の閲覧、会社の業務や財産を調べる検査役を、裁判所に選んでもらう申立ては、会社の運営を止めたり、揺らしたり、秘密に触れたりするので、一定の持株数を要求します。その中でも、解散の訴えは、会社の存立そのものに関わるので、100分の10と、一番重いのです。ただし、これはあくまで見当をつけるための整理です。条文が、理由を明示しているわけではありません。親会社の株主が子会社の役員の責任を追及する、多重代表訴訟のように、100分の1と軽いけれど、訴える相手を、親会社が株式を全部持つ子会社のうち、重要な子会社の役員に絞っているものもあります。

一覧表で見る要件

持株数の要件がない権利(1株・期間なし=議決権〔308条〕・決議取消しの訴え〔831条〕・募集株式発行等の差止め〔210条〕・株主名簿の閲覧謄写〔125条2項〕・総会議事録の閲覧謄写〔318条4項〕・計算書類等の閲覧〔442条3項〕・定款の閲覧〔31条2項〕/1株+6か月〔公開会社〕=代表訴訟の提訴請求〔847条1項・2項〕・取締役の違法行為の差止め〔360条1項・2項〕) 図:持株数の要件がない権利

  • 1株・期間なし=議決権〔308条〕・決議取消しの訴え〔831条〕・募集株式発行等の差止め〔210条〕・株主名簿の閲覧謄写〔125条2項〕・総会議事録の閲覧謄写〔318条4項〕・計算書類等の閲覧〔442条3項〕・定款の閲覧〔31条2項〕
  • 1株+6か月〔公開会社〕=代表訴訟の提訴請求〔847条1項・2項〕・取締役の違法行為の差止め〔360条1項・2項〕

一覧表を作りました。切り口は、持株数の条件があるかないか、そして、6か月の保有期間の条件があるかないか、の二本立てです。この掛け合わせで、4つの区分に分けます。まず、持株数の条件がない権利です。ここでは、期間の条件もない権利が先です。議決権、決議取消しの訴え、募集株式の発行の差止め、株主名簿の閲覧、総会の議事録の閲覧、計算書類の閲覧、定款の閲覧です。いずれも1株で、すぐ使えます。閲覧の請求は、営業時間内なら、いつでもできます。期間の条件だけがある権利は、代表訴訟と、取締役の違法行為の差止めの、二つです。どちらも1株でよいのですが、公開会社では、6か月前から引き続き株式を持っていることが要ります。

持株数の要件がある権利(持株数あり・期間なし〔公開会社でも6か月不要〕=会計帳簿の閲覧謄写〔433条1項〕議決権3%または株式3%・業務財産状況の検査役選任の申立て〔358条1項〕3%・会社の解散の訴え〔833条1項〕10%/持株数あり+6か月〔公開会社〕=総会の招集請求〔297条〕議決権3%・議題の提案〔303条2項〕議決権1%または300個〔取締役会設置会社〕・総会検査役の選任申立て〔306条〕議決権1%・役員の解任の訴え〔854条〕3%・多重代表訴訟の提訴請求〔847条の3〕1%) 図:持株数の要件がある権利

  • 持株数あり・期間なし〔公開会社でも6か月不要〕=会計帳簿の閲覧謄写〔433条1項〕議決権3%または株式3%・業務財産状況の検査役選任の申立て〔358条1項〕3%・会社の解散の訴え〔833条1項〕10%
  • 持株数あり+6か月〔公開会社〕=総会の招集請求〔297条〕議決権3%・議題の提案〔303条2項〕議決権1%または300個〔取締役会設置会社〕・総会検査役の選任申立て〔306条〕議決権1%・役員の解任の訴え〔854条〕3%・多重代表訴訟の提訴請求〔847条の3〕1%

次に、持株数の条件がある権利です。ここも、期間の条件がない権利から。会計帳簿の閲覧、業務や財産の状況を調べる検査役の選任の申立て、会社の解散の訴えです。帳簿と検査役は100分の3、解散の訴えは100分の10です。これらには、公開会社であっても、6か月の条件がありません。持株数と期間の、両方の条件がある権利は、公開会社の場合です。総会の招集の請求は、議決権の100分の3。議題の提案は、取締役会のある会社で、議決権の100分の1か300個。取締役会のない会社なら、1株でもできます。総会検査役の選任の申立ては、100分の1。総会検査役は、総会の招集の手続と決議の方法を調べる検査役です。役員の解任の訴えは、100分の3。取締役を辞めさせるのは、前回見たとおり、総会の決議です。解任の訴えは、不正や重大な法令違反があるのに、総会で解任が否決されたときなどの、裁判所を使う道です。多重代表訴訟の提訴請求は、100分の1です。

見るべきは、6か月が要る権利の範囲です。落とし穴は、帳簿の閲覧、業務や財産の検査役、解散の訴えです。これらは少数株主権でも、公開会社の6か月は要りません。6か月は、株を買ったばかりの人が権利を濫用するのを、期間で防ぐ足切りです。この3つには、期間の代わりになる関門があります。帳簿の閲覧は、請求の理由を示さなければならず、会社は決められた場合には拒めます。検査役と解散の訴えは、不正の疑いや、やむを得ない事由があるかを、裁判所が確かめます。中身で絞れるので、期間では絞らない、と見当をつけられます。もう1つ、読み方です。割合の分母は、議決権の場合、総株主の議決権です。ただし、433条など多くの条文では、決議をする全部の事項について議決権を行使できない株主は、分母から外します。株式で数える場合の分母は、自己株式を除いた発行済株式です。招集や提案、総会検査役の請求は、議決権で数える形だけです。株式で数える形は、ありません。

要件の共通ルール

共通ルール3つ(1.定款で緩和はできるが加重はできない/2.複数の株主は持株を合算して要件を満たせる〔解釈〕/3.非公開会社では6か月の保有要件は課されない) 図:共通ルール3つ

  • 1.定款で緩和はできるが加重はできない
  • 2.複数の株主は持株を合算して要件を満たせる〔解釈〕
  • 3.非公開会社では6か月の保有要件は課されない

数字の確認ができたので、要件に共通する3つのルールを見ます。まず、条文の書き方から。会計帳簿の閲覧の請求を定めた、433条1項です。

条文会社法433条1項

会社法第433条第1項 総株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主又は発行済株式(自己株式を除く。)の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の数の株式を有する株主は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。 一 会計帳簿又はこれに関する資料が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求 二 会計帳簿又はこれに関する資料が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求

括弧書きに注目してください。これを下回る割合を定款で定めた場合は、その割合、とあります。つまり、定款で、条文より低い割合にすることはできます。逆に、高い割合にして、少数派の権利を狭めることは、できません。これが1つ目のルールで、定款で緩和はできるが、加重はできない、です。持株数だけでなく、期間の条件にも同じ書き方が付いています。足切りは、少数派を守る権利を絞る仕組みなので、会社が自由に厳しくできてしまうと、意味がなくなるからです。2つ目のルールは、合算です。複数の株主が共同して請求するとき、それぞれの議決権や株式の数を足して、要件を満たせると解されています。条文に明文の規定はなく、解釈です。少数株主権は、少数派が多数派や取締役の濫用に対抗するための権利です。1人では届かない株主が力を合わせることまで封じたら、その目的が果たせないからです。ここで、冒頭のAさんの例に戻ります。

Aさんの例(A=Aさん〔100株〕/B・C=友人〔各100株〕/D=会社〔発行済 1万株〕/合計300株=100分の3→433条の請求ができる/買い足した翌日は433条には保有期間がないので数に入る) 図:Aさんの例

  • A=Aさん〔100株〕
  • B・C=友人〔各100株〕
  • D=会社〔発行済 1万株〕
  • 合計300株=100分の3→433条の請求ができる
  • 買い足した翌日は433条には保有期間がないので数に入る

Aさんが100株、友人のBさんとCさんがそれぞれ100株を持っていて、3人で請求すれば、合計300株です。1万株の100分の3に、ちょうど届きます。帳簿の閲覧に、保有期間の条件はありません。ですから、3人の持株が最近買ったものでも、請求できます。公開会社の総会の招集請求は、議決権の100分の3を、6か月前から引き続き有することが条件です。買い足した株式は、6か月たつまで、この数に入りません。たとえば、Aさんが前から100株、昨日買い足して合計300株になっても、前から持っていた100株の分しか数えられません。会計帳簿と違い、買い足した直後には、使えません。

条文会社法297条1項

会社法第297条第1項 総株主の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る。)及び招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができる。

3つ目のルールが、非公開会社では6か月の条件が課されない、です。続けて297条の2項を見ます。

条文会社法297条2項

会社法第297条第2項 公開会社でない株式会社における前項の規定の適用については、同項中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とあるのは、「有する」とする。

公開会社でない株式会社、つまり非公開会社では、6か月前から引き続き有する、という部分が、有する、に読み替えられます。ですから、今持っていれば足ります。非公開会社は、すべての株式に譲渡制限がある会社です。非公開会社に期間の条件がない理由は、譲渡の入口です。非公開会社は、株式を譲渡するのに会社の承認が要ります。ですから、会社を困らせるために、わざと株式を買って共益権を使おうとする人を、会社が入口で止められます。公開会社は、譲渡制限のない株式があるので、入口で止めきれません。その代わりに、6か月という足切りで、買ったばかりの人の濫用を防いでいるのです。同じ読み替えの規定が、303条3項、360条2項、847条2項、854条2項などにあります。保有期間の6か月が登場する条文には、必ず非公開会社の例外がセットです。

条文会社法360条

会社法第360条 六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主は、取締役が株式会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって当該株式会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該取締役に対し、当該行為をやめることを請求することができる。 2 公開会社でない株式会社における前項の規定の適用については、同項中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主」とあるのは、「株主」とする。

取締役の違法行為の差止めの条文でも、同じ形です。1項に6か月、2項で非公開会社の場合を読み替えています。

条文会社法303条2項・3項

会社法第303条第2項・第3項 2 前項の規定にかかわらず、取締役会設置会社においては、総株主の議決権の百分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権又は三百個(これを下回る数を定款で定めた場合にあっては、その個数)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主に限り、取締役に対し、一定の事項を株主総会の目的とすることを請求することができる。この場合において、その請求は、株主総会の日の八週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までにしなければならない。 3 公開会社でない取締役会設置会社における前項の規定の適用については、同項中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とあるのは、「有する」とする。

議題の提案の条文は、持株数と期間の両方が、定款で下げられる形です。議決権の100分の1か300個、のどちらかを満たせばよい、という点にも注意してください。

権利の濫用

株主の権利にも濫用禁止(民法1条3項/株主名簿の閲覧謄写請求が、嫌がらせ・報復の目的→権利の濫用として許されない/現行法=125条3項に拒絶事由を明文化/株主提案の濫用=議案の数に上限〔305条4項〕) 図:株主の権利にも濫用禁止

  • 民法1条3項
  • 株主名簿の閲覧謄写請求が、嫌がらせ・報復の目的→権利の濫用として許されない
  • 現行法=125条3項に拒絶事由を明文化
  • 株主提案の濫用=議案の数に上限〔305条4項〕

要件を満たしていても、権利を使えない場合があります。濫用です。株主の権利にも、民法1条3項の、権利の濫用の禁止が及びます。判例を1つ見ます。株主名簿の閲覧と謄写の請求が争われた事件です。

判例最三小判平成2・4・17 集民159号449頁

株主名簿閲覧謄写請求事件 株主の株主名簿の閲覧又は謄写の請求が、不当な意図・目的によるものであるなど、その権利を濫用するものと認められる場合には、会社は株主の請求を拒絶することができると解するのが相当である。 ……上告人の被上告人に対する株主名簿の閲覧及び謄写請求は、株主としての権利の確保等のためではなく、右新聞等の購読料名下の金員の支払を再開、継続させる目的をもってされた嫌がらせであるか、あるいは右金員の支払を打ち切ったことに対する報復としてされたものと推認することができる……

会社は、新聞などの購読料という名目で、ある人物にお金を払っていましたが、その支払いを打ち切りました。すると、その人物が会社の株式を取得して株主になり、株主名簿の閲覧と謄写を請求したものです。最高裁は、この請求を、支払いを再開、継続させる目的の嫌がらせか、支払いを打ち切ったことへの報復だと推認して、権利の濫用にあたると判断しました。株主の権利は、株主としての利益を守るためのものです。それとは無関係の目的で使うことは、許されません。この事件は旧商法のものですが、現在の会社法は、125条3項で、拒絶できる事由を明文で定めています。たとえば、権利の確保や行使のための調査以外の目的や、会社の業務を妨げる目的での請求は、拒めます。また、株主が提案を濫用的に繰り返す問題には、令和元年の改正で、305条4項が、議案の数に上限を設けました。

株式買取請求権とは

出ていく権利(払戻しは原則不可→売るか、買い取らせるか/株式買取請求権=一定の場面で、株主が自分の株式を公正な価格で会社に買い取らせる権利/場面=事業譲渡等〔469条〕・組織再編〔785条・797条・806条・816条の6〕・株式の併合で端数となる株式〔182条の4〕・定款変更など〔116条1項〕) 図:出ていく権利

  • 払戻しは原則不可→売るか、買い取らせるか
  • 株式買取請求権=一定の場面で、株主が自分の株式を公正な価格で会社に買い取らせる権利
  • 場面=事業譲渡等〔469条〕・組織再編〔785条・797条・806条・816条の6〕・株式の併合で端数となる株式〔182条の4〕・定款変更など〔116条1項〕

ここから後半です。前回、株主は出資の払戻しを、原則として受けられないと見ました。出ていくには、株式を売るか、会社に買い取らせるか、でした。今日は、後者を詳しく見ます。株式買取請求権とは、一定の場合に、株主が自分の株式を公正な価格で会社に買い取らせる権利です。これも自益権の1つなので、持株数の足切りはありません。大きく2種類あります。1つは、株主の利益に重大な影響を及ぼす会社の行為に反対する株主が使うもので、今日の中心です。もう1つは、単元未満株主が使うもので、192条にあります。こちらは名前だけにとどめます。反対する株主が使える場面を、地図にします。事業の全部や重要な一部の譲渡など、469条の場面。合併、会社分割、株式交換、株式移転、株式交付といった組織再編。株式の併合で、1株に満たない端数になる株式の場面、182条の4。そして116条1項の、3つの場面です。第一に、全部の株式に譲渡制限を付ける定款変更。第二に、ある種類の株式に、譲渡制限か全部取得条項を付ける定款変更。第三に、種類株主に損害を及ぼすおそれのある行為で、その種類株主の総会の決議を要しないと、定款で定めている場合です。

バラバラに見えます。共通点はあるんですか。あります。どの場面も、株主が株式を買ったときの前提が、多数決で変えられる場面です。売れなくなる、つまり譲渡制限が付く。無理やり株式を取られる、つまり全部取得条項や、株式の併合です。会社が別物になる、つまり事業譲渡や組織再編です。116条1項の第三の場面も同じです。種類株主は、本来、自分たちだけの総会で、損になる行為を止められます。その総会を定款で外すと、止める手段がなくなるのです。こういう場面では、反対した少数派が、多数決の結果に従うしかないのでは、あまりに酷です。そこで、多数決の効力は認めたまま、反対した株主には、出口を用意したのです。足切りで入口を絞る代わりに、前提が崩れる場面では、出口を保障する。この見方が、今日の全体をつなぎます。

反対株主

反対株主の判定(総会決議が要る場合=事前に会社へ反対を通知+総会で反対〔議決権を行使できる株主〕/総会で議決権を行使できない株主=当然に反対株主/総会決議が要らない場合=すべての株主〔116条2項〕) 図:反対株主の判定

  • 総会決議が要る場合=事前に会社へ反対を通知+総会で反対〔議決権を行使できる株主〕
  • 総会で議決権を行使できない株主=当然に反対株主
  • 総会決議が要らない場合=すべての株主〔116条2項〕

買取請求ができるのは、反対株主です。反対株主の定義は、116条2項です。まず、請求できる場面を定めた1項を、全文で見ます。柱書と、1号、2号からです。

条文会社法116条1項

会社法第116条第1項(柱書・1号・2号) 次の各号に掲げる場合には、反対株主は、株式会社に対し、自己の有する当該各号に定める株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる。 一 その発行する全部の株式の内容として第百七条第一項第一号に掲げる事項についての定めを設ける定款の変更をする場合 全部の株式 二 ある種類の株式の内容として第百八条第一項第四号又は第七号に掲げる事項についての定めを設ける定款の変更をする場合 第百十一条第二項各号に規定する株式

続けて、1項3号です。

条文会社法116条1項

会社法第116条第1項(3号) 三 次に掲げる行為をする場合において、ある種類の株式(第三百二十二条第二項の規定による定款の定めがあるものに限る。)を有する種類株主に損害を及ぼすおそれがあるとき 当該種類の株式 イ 株式の併合又は株式の分割 ロ 第百八十五条に規定する株式無償割当て ハ 単元株式数についての定款の変更 ニ 当該株式会社の株式を引き受ける者の募集(第二百二条第一項各号に掲げる事項を定めるものに限る。) ホ 当該株式会社の新株予約権を引き受ける者の募集(第二百四十一条第一項各号に掲げる事項を定めるものに限る。) ヘ 第二百七十七条に規定する新株予約権無償割当て

次に、2項で、反対株主とは誰かを確かめます。

条文会社法116条2項

会社法第116条第2項 前項に規定する「反対株主」とは、次の各号に掲げる場合における当該各号に定める株主をいう。 一 前項各号の行為をするために株主総会(種類株主総会を含む。)の決議を要する場合 次に掲げる株主 イ 当該株主総会に先立って当該行為に反対する旨を当該株式会社に対し通知し、かつ、当該株主総会において当該行為に反対した株主(当該株主総会において議決権を行使することができるものに限る。) ロ 当該株主総会において議決権を行使することができない株主 二 前号に規定する場合以外の場合 すべての株主

整理します。総会の決議が要る場合は、2つの条件を満たす株主です。第一に、総会の前に、反対の旨を会社に通知しておくこと。第二に、総会で反対の議決権を行使すること。総会で議決権を行使できない株主は、この2つがなくても、そのまま反対株主です。そもそも反対票を入れられないので、2つを求めようがないからです。総会の決議が要らない場合は、すべての株主です。事前通知の趣旨は、会社が請求の規模を予測できるようにすることです。買取請求が多くなると、会社は代金を用意しなければならず、財産的な基礎が危うくなります。取締役は、反対の通知を見て、規模を見積もり、提案を取り下げるかどうかを判断できます。冒頭のAさんの会社が、合併を総会にかけたとします。Aさんが総会の前に反対を会社へ通知し、総会でも反対票を入れれば、反対株主です。通知をしないまま、総会で反対票を入れただけでは、反対株主になりません。

手続・価格・効力発生

買取請求の時系列(通知・公告=効力発生日の20日前まで/請求期間=効力発生日の20日前の日から前日まで/効力発生日=買取りの効力が生じる〔117条6項〕/協議=効力発生日から30日/申立て=その満了日後30日以内/撤回可=効力発生日から60日以内に申立てがなければ/利息=60日の満了日後の法定利率) 図:買取請求の時系列

  • 通知・公告=効力発生日の20日前まで
  • 請求期間=効力発生日の20日前の日から前日まで
  • 効力発生日=買取りの効力が生じる〔117条6項〕
  • 協議=効力発生日から30日
  • 申立て=その満了日後30日以内
  • 撤回可=効力発生日から60日以内に申立てがなければ
  • 利息=60日の満了日後の法定利率

手続を、条文の順に追います。問いを一つ置きます。反対株主が請求を出したあとで、株価が上がったので、取り下げたくなりました。できるでしょうか?答えは、後で出します。まず、116条の第3項から第5項です。

条文会社法116条3項〜5項

会社法第116条第3項〜第5項 3 第一項各号の行為をしようとする株式会社は、当該行為が効力を生ずる日(以下この条及び次条において「効力発生日」という。)の二十日前までに、同項各号に定める株式の株主に対し、当該行為をする旨を通知しなければならない。 4 前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。 5 第一項の規定による請求(以下この節において「株式買取請求」という。)は、効力発生日の二十日前の日から効力発生日の前日までの間に、その株式買取請求に係る株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)を明らかにしてしなければならない。

会社は、効力発生日の20日前までに、株主へ通知します。公告で代えることもできます。通知があるから、株主は、請求するかどうかを考える時間を得られます。請求できる期間は、効力発生日の20日前の日から、効力発生日の前日までです。

条文会社法116条6項〜9項

会社法第116条第6項〜第9項 6 株券が発行されている株式について株式買取請求をしようとするときは、当該株式の株主は、株式会社に対し、当該株式に係る株券を提出しなければならない。ただし、当該株券について第二百二十三条の規定による請求をした者については、この限りでない。 7 株式買取請求をした株主は、株式会社の承諾を得た場合に限り、その株式買取請求を撤回することができる。 8 株式会社が第一項各号の行為を中止したときは、株式買取請求は、その効力を失う。 9 第百三十三条の規定は、株式買取請求に係る株式については、適用しない。

先ほどの問いの答えが、7項です。請求した株主は、会社の承諾を得た場合に限って、撤回できます。原則として、撤回できません。理由は、投機を防ぐためです。とりあえず請求しておいて、株価が上がったら取り下げる、という使い方を許すと、株主は損をしない立場に立てます。会社の側だけが、リスクを負ってしまいます。株券は、株式を表す紙の証券です。今の会社法では、定款で定めた会社だけが発行します。6項は、株券が発行されている株式では、株券を提出する、というルールです。請求したあとに、株式が第三者へ譲渡されるのを防ぐためです。株券のない株式でも、9項で、請求した株式の譲渡を受けた人は、株主名簿の名義を自分に書き換えるよう請求できません。同じ目的の規定です。8項は、会社がその行為をやめたときは、請求は効力を失う、です。買い取る前提の行為がなくなるからです。次に、価格と効力です。117条です。

条文会社法117条1項〜3項

会社法第117条第1項〜第3項 株式買取請求があった場合において、株式の価格の決定について、株主と株式会社との間に協議が調ったときは、株式会社は、効力発生日から六十日以内にその支払をしなければならない。 2 株式の価格の決定について、効力発生日から三十日以内に協議が調わないときは、株主又は株式会社は、その期間の満了の日後三十日以内に、裁判所に対し、価格の決定の申立てをすることができる。 3 前条第七項の規定にかかわらず、前項に規定する場合において、効力発生日から六十日以内に同項の申立てがないときは、その期間の満了後は、株主は、いつでも、株式買取請求を撤回することができる。

価格は、まず株主と会社の協議で決めます。協議が調えば、会社は効力発生日から60日以内に支払います。効力発生日から30日たっても協議が調わなければ、その満了日後30日以内に、株主か会社が、裁判所に価格の決定を申し立てられます。30日の話し合いと、30日の申立てで、ちょうど60日です。1項の支払いの期限と同じです。そして、効力発生日から60日以内に申立てがないままなら、その後は、株主はいつでも撤回できます。7項の原則に対する例外です。いつまでも宙ぶらりんの状態を、株主に強いないためです。

条文会社法117条4項〜7項

会社法第117条第4項〜第7項 4 株式会社は、裁判所の決定した価格に対する第一項の期間の満了の日後の法定利率による利息をも支払わなければならない。 5 株式会社は、株式の価格の決定があるまでは、株主に対し、当該株式会社が公正な価格と認める額を支払うことができる。 6 株式買取請求に係る株式の買取りは、効力発生日に、その効力を生ずる。 7 株券発行会社(その株式(種類株式発行会社にあっては、全部の種類の株式)に係る株券を発行する旨の定款の定めがある株式会社をいう。以下同じ。)は、株券が発行されている株式について株式買取請求があったときは、株券と引換えに、その株式買取請求に係る株式の代金を支払わなければならない。

4項は、利息です。裁判所が決めた価格には、効力発生日から60日の期間の満了日後の、法定利率による利息が付きます。会社が支払いを引き延ばす目的で争うことを、防ぐためです。5項は、仮払いです。会社は、価格が決まる前でも、自分が公正と認める額を、株主に支払えます。払った分は、利息が膨らむのを止められます。代金を払ったときに移るのではありません。6項のとおり、買取りの効力が生じるのは、効力発生日です。価格が決まるのも、支払いも、その後です。もし代金を払う日まで株主のままだと、価格を争っている間も配当を受け取り、そのうえ4項の利息も受け取れてしまいます。そこで、合併などの効力が生じる日に、株主の地位も切り替えると説明されます。ですから、効力発生日からは、株主ではなくなりますが、代金を受け取るまでは、会社に対する債権者になります。この債権者としての地位が、実際に問題になった判例があります。

請求後の地位

請求後の地位(買取請求をした者=効力発生日から株主ではない・代金を受け取るまでは会社の債権者/仮払いを受けても、価格の協議が調うか裁判が確定するまでは、債権者として株主総会議事録の閲覧謄写を請求できる〔318条4項〕/閲覧の対象=株主総会議事録/株主名簿〔125条〕ではない) 図:請求後の地位

  • 買取請求をした者=効力発生日から株主ではない・代金を受け取るまでは会社の債権者
  • 仮払いを受けても、価格の協議が調うか裁判が確定するまでは、債権者として株主総会議事録の閲覧謄写を請求できる〔318条4項〕
  • 閲覧の対象=株主総会議事録
  • 株主名簿〔125条〕ではない

株式の併合で、1株に満たない端数になる株式について、買取請求をした株主の事件です。会社は、価格が決まる前に、公正と認める額を仮払いしました。そのあとで、この元株主が、株主総会の議事録の閲覧と謄写を請求しました。

判例最二小判令和3・7・5 民集75巻7号3392頁

株主総会議事録閲覧謄写請求事件 会社法318条4項は,株式会社の株主及び債権者は株主総会議事録の閲覧等を請求できる旨を定めている。 ……同法182条の4第1項に基づき株式の買取請求をした者は,同法182条の5第5項に基づく支払を受けた場合であっても,上記株式の価格につき会社との協議が調い又はその決定に係る裁判が確定するまでは,同法318条4項にいう債権者に当たるというべきである。

最高裁は、仮払いを受けた後でも、価格について協議が調うか、裁判が確定するまでは、318条4項の債権者にあたると判断しました。理由は、価格はまだ形成されていないので、支払請求権が仮払いで全部消えたとは言えないからです。また、318条4項は、権利を適切に行使するために、会社の業務や財産の状況を知らせる規定だからです。閲覧の対象は、株主総会議事録です。株主名簿ではありません。株主名簿の閲覧は、125条の別の請求です。事案は株式の併合の買取請求ですが、116条と117条の買取請求にも、仮払いの仕組みは同じです。ただし、判決は併合の事案だけを判断しています。116条の買取請求で同じ結論を取るなら、価格がまだ決まっていない、という同じ理由が当てはまる、と示して書きます。

今日の地図(保存版)

まとめ(単独株主権=1株から/少数株主権=議決権や株式の一定割合/足切りは持株数と保有期間の2軸・濫用防止と少数派保護の綱引き/共通ルール=定款で緩和のみ・合算は解釈・非公開会社は6か月なし/濫用は許されない〔民法1条3項〕/買取請求=反対株主が公正な価格で出ていく権利・事前通知+総会で反対・撤回は承諾が要る・効力は効力発生日・請求後は債権者) 図:まとめ

  • 単独株主権=1株から
  • 少数株主権=議決権や株式の一定割合
  • 足切りは持株数と保有期間の2軸・濫用防止と少数派保護の綱引き
  • 共通ルール=定款で緩和のみ・合算は解釈・非公開会社は6か月なし
  • 濫用は許されない〔民法1条3項〕
  • 買取請求=反対株主が公正な価格で出ていく権利・事前通知+総会で反対・撤回は承諾が要る・効力は効力発生日・請求後は債権者

今日の1問に答えます。株主の権利に使える条件の違いがあるのは、なぜか。条件で守れない少数派には、何が用意されているのか。共益権は、使った結果が会社と他の株主に及びます。ですから、濫用を防ぐために、持株数や保有期間の足切りが付きます。ただし、絞りすぎると、少数派が無力になります。足切りは、この綱引きの暫定結果です。共通ルールは3つ。定款で緩和はできるが加重はできない。持株は合算できると解されている。非公開会社では6か月の条件が課されない。そして、足切りで守れない少数派には、多数決で前提が変わる場面に限って、反対株主が公正な価格で出ていく、買取請求権があります。

冒頭のAさんは、友人2人と合算して300株になれば帳簿を見られて、買い足した翌日でも大丈夫。でも、公開会社の総会の招集の請求は、半年待たないといけないんですね。合併に反対すれば、Aさんは、事前に会社へ反対を通知し、総会で反対することで反対株主になり、会社に株式を公正な価格で買い取らせて、出ていけます。短答では、単独株主権はどれか、6か月が非公開会社にもかかるか、反対株主の要件、撤回の可否、買取りの効力発生時期が、問われます。論文では、ここは論点になりうる入口です。請求の根拠を選び、持株数と期間を当てはめる形で使います。

参照条文

  • 会社法433条1項
  • 会社法297条1項
  • 会社法297条2項
  • 会社法360条
  • 会社法303条2項・3項
  • 会社法116条1項
  • 会社法116条2項
  • 会社法116条3項〜5項
  • 会社法116条6項〜9項
  • 会社法117条1項〜3項
  • 会社法117条4項〜7項

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