会社法 復習ノート全文

会社法の地図(条文から引く)→

第1章総論・会社法総則

#1単独ページ動画

会社とは何か

第1章 総論・会社法総則 ①/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

友人と出し合ったお金は、どうなる?

友人2人で事業を始める場面の3つの不安(①失敗したら出したお金以上の責任を負う?②相棒が勝手に契約したら誰の責任?③途中で抜けたいときはどうなる?) 図:友人2人で事業を始める場面の3つの不安

友人と100万円ずつ出し合って、新しい事業を始めるとします。うまくいけばいい話ですが、始める前に、3つの不安が浮かびます。1つ目。事業が失敗したとき、出したお金が消えるだけで済むのか。それとも、出した以上の借金まで背負うのか。2つ目は、仲間の1人が結んだ契約の責任を、誰が負うのか。3つ目は、半年後に私は抜けたいと思ったとき、出したお金は戻るのか、です。だから、これらをあらかじめ決めておく入れ物が要ります。会社は、その入れ物の一つなんです。そしてもう1つ、最初に驚いてほしいことがあります。日常では、会社に勤める人を「社員」と呼びますよね。

ところが会社法で「社員」と言えば、従業員のことではありません。出資をした人、つまりお金や物などを出した側を指します。従業員は、出資者ではないんです。会社法の言葉では、雇われて働く人は社員ではありません。この理由は、この回の中で順に分かるようにします。今日の1問は、会社とは結局何なのか、です。答えを先に言うと、共同で事業をするための法的な入れ物の一つで、会社法が用意した4種類のうち、株式会社が大きな事業によく使われる、ということです。シリーズ最初の回なので、この座標軸を持ち帰ってもらいます。ゼロから会社法、始めます。

出資者になる人、ならない人

個人企業と共同企業(A=出資者で事業を営む/A・B=出資者で共同して事業を営む/C=お金を貸す人・D=従業員は、事業と契約するが出資者ではない) 図:個人企業と共同企業

  • A=出資者で事業を営む
  • A・B=出資者で共同して事業を営む
  • C=お金を貸す人・D=従業員は、事業と契約するが出資者ではない

事業から利益を得る主体を、企業と呼びます。そしてお金を出す人、つまり出資者が1人なら個人企業、複数なら共同企業です。単にお金を渡すのとは、少し違います。出資とは、事業が出す利益を受け取る地位を得るために、資金を提供することです。うまくいった分を受け取れる代わりに、うまくいかなければ、受け取れるものが減る立場に立ちます。たとえば、100万円を出した事業が年に50万円もうければ、その分け前を受け取れます。赤字なら、何も受け取れません。銀行からお金を借りた場合は、出資にならないんですか。なりません。図で見てください。冒頭のあなたをAとします。Aが1人で出資して事業をすれば個人企業です。友人のBと100万円ずつ出し合えば、共同企業です。ここに、お金を貸すCを加えます。Cは、事業が成功しても失敗しても、約束した元本と利息を返してもらう権利を持つだけです。利益の分け前を受け取る立場ではありません。

Dが受け取るのは賃金で、これも約束された金額を受け取る権利です。つまりCもDも、事業と契約を結ぶ相手であって、出資者ではありません。ここで冒頭の話に戻ります。会社法の「社員」は、図でいうAやBのほうです。従業員のDは違います。従業員の地位は、会社と雇用契約を結ぶ立場であって、出資者の地位、つまり社員の地位ではありません。ちなみに、会社と従業員の関係は、主に労働法が規律します。会社法にも10条以下に、使用人、つまり、会社に雇われて働く人の代理権の規定がありますが、これは、会社の代わりに契約を結べる権限の話です。出資者かどうかとは別の問題です。

共同事業の入れ物:組合と会社

共同事業の入れ物の比べ方(組合=A・Bが契約で結びつく/会社=A・Bが出資し、会社という法人がもう一人の主体になる) 図:共同事業の入れ物の比べ方

  • 組合=A・Bが契約で結びつく
  • 会社=A・Bが出資し、会社という法人がもう一人の主体になる

共同企業にするとして、入れ物は会社だけなんですか。違います。共同事業の入れ物は、いくつかの法律が用意しています。民法にあるのが組合、会社法にあるのが会社です。まず組合の条文を見ましょう。民法667条1項です。

条文民法667条1項

民法第667条第1項 組合契約は、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することによって、その効力を生ずる。

組合は、当事者どうしの契約で成り立ちます。そして組合員は、組合の債務について、個人として責任を負います。民法675条の話ですが、ここでは名前だけにします。会社には、この条文があります。会社法3条です。

条文会社法3条

会社法第3条 会社は、法人とする。

法人とは、人間ではないのに、権利や義務の主体になれる存在です。会社自身が、契約を結び、財産を持つ主体になります。図でいえば、組合は、AとBが直接つながります。会社は、AとBが出資して、会社という別の主体を作り、取引の相手は、その会社になります。民法で学ぶ団体の形でいえば、組合は法人格の無い形、会社は法人格のある形です。たとえば、冒頭の友人2人の事業で、300万円の機械を買うとします。組合なら、買ったのはあなたと友人の2人で、機械も2人の財産になります。条文の言葉では総組合員の共有ですが、一人で勝手に処分も分割もできない持ち方で、学説では合有と呼びます。代金を払えなければ、最後は2人が自分の財布から払うことになりえます。

買ったのは会社で、機械も会社の財産です。代金を払う義務を負うのも、まず会社です。その先で出資者がどこまで負うかは、会社の種類で変わります。たとえるなら、組合は仲間の名前で持ち合う財布、会社は財布そのものに名義がついた状態です。この違いが、冒頭の3つの不安への答え方を大きく変えます。財布に名義がつくと、何が変わるんですか。そこは、これから先の回で順に見ていきます。今日は、組合は契約、会社は法人、という対比の見取り図だけ持っていてください。

会社法が用意した4種類の会社

会社法2条1号(株式会社/合名会社/合資会社/合同会社)と出資者の呼び名(出資者=社員、株式会社では株主と呼ぶ)、後3つの総称=持分会社

条文に書いてあります。会社法2条です。この条文は、言葉の意味を定める規定で、その1号が会社の定義です。

条文会社法2条1号

会社法第2条(柱書・第1号) この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 一 会社 株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社をいう。

株式会社、合名会社、合資会社、合同会社。これ以外に、会社法上の会社はありません。会社法ができる前には、有限会社という種類もありました。いま新しく作れるのは、この4種類です。ここで、冒頭の言葉を整理します。出資者は、どの会社でも社員です。ただし株式会社の社員だけは、特に株主と呼びます。会社法は、会社を、出資した人たちの集まりと見ます。出資者はその集まりの構成員、つまりメンバーなので、社員と呼ぶんです。出資者が一人だけの会社も認められていますが、出資者をメンバーと見る点は変わりません。もう1つ、合名会社、合資会社、合同会社の3つは、まとめて持分会社と呼びます。持分とは、出資者としての地位のことです。民法の共有で出てきた、物に対する割合の持分とは、別の意味です。会社法575条1項が、この総称を決めています。この回は、名前と呼び名までです。責任の違いや、ルールの決め方の違いは、この第1章の中で、改めて見ます。

会社法でいう「社員」にあたるのは、従業員、株主、取引先のうち、どれでしょうか。少し考えてみてください。ヒントは、社員とは出資者のことだという点です。答えは株主です。株式会社の出資者が株主で、会社法の言葉では、これも社員に含まれます。従業員と取引先は、出資者ではないので、社員ではありません。これで、今日の1問の答えの骨組みがそろいました。会社は、共同で事業をするための入れ物の一つで、会社法が用意したのは、この4種類です。

株式会社は、なぜ大きな事業に向くのか

株式会社が大きな共同事業に向く4つの理由(①経営を専門家に委ねる仕組み②利益の計算と開示③有限責任と分配の限度④持分の譲渡で出資を回収) 図:株式会社が大きな共同事業に向く4つの理由

大きな事業では、株式会社が主役です。ただ、株式会社と聞くと、上場している大企業を思い浮かべませんか。実は、友人2人が出資して作る小さな株式会社も、同じ株式会社です。出資者が増えても、出資者の地位は、株主として同じ性質です。では、なぜ株式会社は大きな事業に向くのか。見取り図を4つ渡します。名前と位置づけだけです。1つ目。出資者が何千人にもなれば、全員で毎日の経営は決められません。そこで経営を専門家に委ね、それを監督する仕組みが要ります。株主総会や取締役といった機関です。誰が会社の名前で契約を結べるかを決めるのも、この機関の仕組みです。冒頭で挙げた2つ目の不安、相棒が勝手に契約したらどうなるか、への答えはここにあります。2つ目。出資者は、事業のもうけを分けてもらう立場です。だから、利益がいくらかを計算し、見せる仕組みが要ります。

3つ目。株式会社の出資者は、有限責任です。冒頭で挙げた1つ目の不安、出した以上の借金まで背負うのか、への答えはここにあります。会社が借金を返せなくなっても、債権者は、出資者に残りを請求できません。出資者は、出した分を失うだけで済みます。出資者の負担は、出した額で止まります。そのかわり、会社の財産だけが債権者の頼りになります。だから、出資者へのお金の分配には、限度が必要になります。4つ目。出資者は、原則として、出したお金の返還を会社に求められません。会社の財産だけが債権者の頼りなので、出資者が自由に引き揚げられると、債権者が困るからです。そのかわり、出資者の持分を、株式会社では株式と呼び、他人に譲ってお金を回収できます。冒頭の「途中で抜けたい」への答えが、これです。4つとも、ほかの種類の会社と比べると、意味が分かります。たとえば合名会社では、出資者が原則として自分たちで経営し、会社の借金も、最後は自分の財布から払います。持分を他人に譲るにも、ほかの出資者全員の承諾が要ります。株式会社では、経営を任せられて、責任は出した分まで、地位は原則として自由に譲れます。だから、知らない人どうしが大勢で出資できるんです。

この回の地図(1.事業を始めるとき/2.出資者になる人・ならない人/3.組合と会社/4.会社の4種類/5.株式会社が大きな事業に向く理由/6.会社法の範囲/7.シリーズ12章の地図) 図:この回の地図

  • 1.事業を始めるとき
  • 2.出資者になる人・ならない人
  • 3.組合と会社
  • 4.会社の4種類
  • 5.株式会社が大きな事業に向く理由
  • 6.会社法の範囲
  • 7.シリーズ12章の地図

どれも、この先の章で詳しく見ます。この回は、会社法という言葉が指す範囲を見て、最後にシリーズ12章の地図で締めます。

「会社法」はどこまでのルールか

会社法の範囲(中心=会社法/細目=会社法施行規則・会社計算規則・電子公告規則/特別法=社債株式等振替法・担保付社債信託法・商業登記法/関連=民法・商法・金融商品取引法・独占禁止法・法人税法など) 図:会社法の範囲

  • 中心=会社法
  • 細目=会社法施行規則・会社計算規則・電子公告規則
  • 特別法=社債株式等振替法・担保付社債信託法・商業登記法
  • 関連=民法・商法・金融商品取引法・独占禁止法・法人税法など

「会社法」という言葉には、二通りの意味があります。1つは、会社の組織と運営を定め、会社に関わる人たちの利害を調整するルール全体、という広い意味で、これを実質的意義の会社法と呼びます。もう1つは、会社法という名前の、平成17年にできた法律そのもので、これを形式的意義の会社法と呼びます。どちらも使います。まず、法律そのものの周りを見ましょう。細かい決まりは、法務省令、つまり法務大臣が定めるルールに任されています。書類の書き方のような細目まで法律で決めると、変えるたびに国会の議決が要るからです。会社法施行規則、会社計算規則、電子公告規則です。次に、会社法の特別法、つまり会社法の一部の場面について、別に詳しく定めた法律です。社債、つまり、会社がお金を借りるために出す債券や、株式の振替、担保付きの社債、商業登記を決める法律があります。社債株式等振替法、担保付社債信託法、商業登記法です。さらに、会社に関わる他の法律もあります。民法、商法、消費者契約法、独占禁止法、法人税法などです。金融商品取引法は、株式を市場で売ってお金を集めるときの投資者保護で、特に重要です。板でいえば、真ん中の会社法という法律だけが、形式的意義の会社法です。省令や特別法まで含めた、会社のルールの全体が、実質的意義の会社法です。

試験での位置づけ

試験での位置づけ(司法試験法3条:論文式の民事系科目=民法・商法・民事訴訟法/司法試験の短答式は憲法・民法・刑法/予備試験は同法5条:論文式に「商法」・短答式にも商法) 図:試験での位置づけ

  • 司法試験法3条:論文式の民事系科目=民法・商法・民事訴訟法
  • 司法試験の短答式は憲法・民法・刑法
  • 予備試験は同法5条:論文式に「商法」・短答式にも商法

試験の科目にも「商法」がありますが、これは、さっき並べた商法という法律より広い枠の名前で、会社法も、その中に入ります。司法試験の論文式では、民事系科目に、民法、商法、民事訴訟法が入っていて、会社法はその商法の中にあります。予備試験の論文式にも、商法があります。論文式は、事例の問題に文章で答える試験です。予備試験は、合格すれば、法科大学院を出なくても司法試験を受けられる試験です。短答式は、選択肢から正しいものを選ぶ試験です。司法試験の短答式は、憲法、民法、刑法の3科目です。だから商法は、司法試験の短答には出ません。一方、予備試験の短答式には、商法が入っています。

シリーズ全体の地図:12章の道のり

シリーズ12章の地図(1.総論・会社法総則/2.株式/3.機関/4.計算/5.資金調達/6.設立/7.定款変更/8.解散・清算/9.企業の買収・結合・再編/10.企業グループ/11.持分会社・組織変更/12.国際会社法) 図:シリーズ12章の地図

  • 1.総論・会社法総則
  • 2.株式
  • 3.機関
  • 4.計算
  • 5.資金調達
  • 6.設立
  • 7.定款変更
  • 8.解散・清算
  • 9.企業の買収・結合・再編
  • 10.企業グループ
  • 11.持分会社・組織変更
  • 12.国際会社法

では最後に、このシリーズ全体の地図です。12の章に分かれています。最初の章が、この回を含む総論と会社法総則です。次に、株式。出資者の地位がどう細かく決まっているかを見ます。その次が機関で、さっき出てきた、経営を委ねる仕組みの章です。そして計算、資金調達と続きます。株式会社が事業を動かし、お金を集めるまでの話が、ここまでで一通りそろいます。会社を作る話は、第6章です。順番が後ろの理由があります。出来上がった会社が、株式、機関、資金調達でどう動くかを知ってから設立の論点を見たほうが、お金の代わりに物を出す現物出資や、払い込んだふりをする仮装払込みといった論点の意味が分かるからです。そのあと、定款変更、解散と清算、企業の買収や結合や再編と、会社が変わっていく場面が続きます。さらに企業グループ、持分会社と組織変更、最後に国際会社法です。

今日の地図(保存版)

今日の地図・保存版(会社=共同事業の入れ物の一つ/社員=出資者(株式会社では株主)/会社は法人(3条)/会社法上の会社は4種類(2条1号)/株式会社=大きな事業に向く) 図:今日の地図・保存版

  • 会社=共同事業の入れ物の一つ
  • 社員=出資者(株式会社では株主)
  • 会社は法人(3条)
  • 会社法上の会社は4種類(2条1号)
  • 株式会社=大きな事業に向く

最初の1問に戻ります。会社とは結局何なのか。共同で事業をするための法的な入れ物の一つで、会社法が用意した4種類のうち、株式会社が大きな事業に使われる、でした。出資者と、貸主や従業員は別でした。入れ物の選択肢は、契約の組合と、法人の会社。会社は、株式会社、合名会社、合資会社、合同会社の4種類です。次の回から、この会社が法人である、という点を詳しく見ていきます。

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#2単独ページ動画

会社の法人性・営利性と権利能力

第1章 総論・会社法総則 ②/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

定款に書いていない寄付は、無効?

定款に書いた事業と無関係な政党への寄付(会社=パンの製造販売が目的/株主Aの主張①「定款にない。無効だ」②「取締役は会社に弁償しろ」/問いは2つ:行為は有効か・取締役は責任を負うか) 図:定款に書いた事業と無関係な政党への寄付

  • 会社=パンの製造販売が目的
  • 株主Aの主張①「定款にない。無効だ」②「取締役は会社に弁償しろ」
  • 問いは2つ:行為は有効か・取締役は責任を負うか

パンの製造と販売を事業にしている株式会社があるとします。会社の根本のルールを書いた書面を、定款といいます。この会社の定款の目的欄には、パンの製造と販売としか書いてありません。ある年、この会社が、350万円を、地元の政党に寄付しました。これを知った株主のAさんが、株主総会で立ち上がります。「定款に書いていないことに、会社のお金を使うのはおかしい。この寄付は無効だ。それに、決めた取締役は、会社にお金を弁償しろ」と。結論を先に言います。会社の行為は、定款の目的に書いていなくても、まず無効にはなりません。

ただし、だからといって、やってよかったとは限りません。取締役、つまり会社の経営を任された人が責任を負うかどうかは、行為が有効かどうかとは別に判断します。Aさんの主張には、2つの問いが混ざっています。1つは、寄付が会社の行為として有効か。もう1つは、取締役が会社に責任を負うか。この回で、この2つを分けて答えられるようにします。今日の1問は、会社が法人であるとは、何ができて、何ができないことか、です。前回、会社は法人だと見ました。今日は、その中身を開きます。

会社が「法人」だと、何が変わるのか

財産の分離(A・B=社員が出資/会社=法人が財産と債務を持つ/C=取引相手は会社と取引/A・Bの個人財産は会社の財産と別) 図:財産の分離

  • A・B=社員が出資
  • 会社=法人が財産と債務を持つ
  • C=取引相手は会社と取引
  • A・Bの個人財産は会社の財産と別

前回、会社は法人とする、という条文が出てきました。会社法3条ですね。もう一度見ておきましょう。

条文会社法3条

会社法第3条 会社は、法人とする。

法人とは、人間ではないのに、権利や義務の主体になれる存在でした。今日は、これが具体的に何をもたらすのかを見ます。図で見ましょう。AさんとBさんが出資して会社を作り、取引先のCさんが会社と契約します。このとき、Cさんの相手は誰ですか。会社、です。出資者が1000人いても、Cさんは会社1つとだけ契約すればよいんです。出資者1人ひとりと、誰がどれだけ責任を持つのかを考える必要がありません。これが1つ目のうれしさです。2つ目は、財産が分かれることです。会社が持つ機械や預金は会社のもので、AさんBさんの自宅や貯金は、AさんBさんのものです。

会社の債務は会社のもので、出資者の債務ではない。これが基本の形です。前回見たとおり、株式会社の出資者は有限責任で、出した分を失うだけで済みます。その仕組みは、この先の回で詳しく見ます。今日は、財産と債務の帰属先が会社と出資者で分かれる、という土台だけ押さえてください。前回見たとおり、組合は契約でつながる形で、法人格がありません。会社は、法人格がある形です。周辺も少し見ます。株式会社が法人として成立するのは、設立の登記、つまり法務局の公の帳簿に会社を載せたときで、会社法49条が定めています。住所は、本店、つまり会社の本拠となる営業所の所在地にあるものとされます。これは4条です。商号、つまり会社の名前を変えても、同じ法人のままです。

法人であることに、弱点はないんですか。あります。別の人格だと強く言いすぎると、不都合が出る場面があります。たとえば、会社を借金逃れの道具にされた場合です。そのとき、例外的に別人格を認めない考え方があり、法人格否認の法理と呼ばれます。要件は後の回で扱います。今日は名前だけで十分です。

この回の地図(1.法人性=帰属点が別/2.営利性=利益を社員に配る/3.商人性=会社の行為は商行為/4.社団性と一人会社/5.会社にできること=定款の目的と民法34条/6.政治献金=有効性と取締役の責任は別) 図:この回の地図

  • 1.法人性=帰属点が別
  • 2.営利性=利益を社員に配る
  • 3.商人性=会社の行為は商行為
  • 4.社団性と一人会社
  • 5.会社にできること=定款の目的と民法34条
  • 6.政治献金=有効性と取締役の責任は別

ここで、この回の地図を見せます。法人性の次に、営利性、商人性、社団性と、会社の性質を順に見ていきます。そのあと、会社にできることの範囲に進み、最後に冒頭の寄付の問題に戻ります。

営利性——儲けを社員に配ること

営利法人と非営利法人の比較(会社=事業で得た利益を社員に分配する/一般社団法人・公益社団法人=分配しない/会社の営利性の現れ=105条1項1号2号) 図:営利法人と非営利法人の比較

  • 会社=事業で得た利益を社員に分配する
  • 一般社団法人・公益社団法人=分配しない
  • 会社の営利性の現れ=105条1項1号2号

会社は営利団体だ、とよく聞きます。お金を稼ぐための団体、という意味ですか。そこが落とし穴です。法律でいう営利は、お金を稼ぐことではありません。事業で得た利益を、構成員、つまり社員に分配することです。たとえば、公益のための一般社団法人が、事業で利益を上げたとします。でも、その利益を社員に配らず、次の活動に使うなら、営利法人ではありません。会社は、利益を社員に分配することが予定されている点で、営利法人です。「稼ぐかどうか」ではなく、「社員に配るかどうか」で分かれます。社員とは出資者のことでしたね。株主の地位を定める105条を見ましょう。

条文会社法105条

会社法第105条 株主は、その有する株式につき次に掲げる権利その他この法律の規定により認められた権利を有する。 一 剰余金の配当を受ける権利 二 残余財産の分配を受ける権利 三 株主総会における議決権 2 株主に前項第一号及び第二号に掲げる権利の全部を与えない旨の定款の定めは、その効力を有しない。

1号が剰余金の配当、つまり、儲けの分け前です。2号が残余財産の分配で、会社が解散したあとに残った財産の分け前です。この2つが、営利性の中身にあたります。2項が定めているのは、1号と2号の権利を、両方とも全部与えない、という定款の定めは無効だ、ということです。配当は一切出さない。解散後に残った財産も、株主には渡さない。これでは、株主は、出資して分け前を得る地位に立てません。会社の営利性が、なくなってしまいます。片方だけを制限した株式は、作れます。たとえば、配当は受けられないけれど、残余財産は分配を受けられる株式です。種類株式の話は、後の回に回します。条文が禁じるのは、両方を全部与えない定めです。持分会社でも、同じ発想です。利益の配当は621条、残余財産の分配は666条が定めています。ここは名前だけにします。

営利目的だからといって、利益に直結しない活動が全部禁じられるわけではありません。儲けを配る会社でも、世間から見て無理のない額の慈善寄付までは禁じられない、と考えられています。この点は、冒頭の寄付の問題で、もう一度出てきます。

会社の行為は商行為——商人性

会社の行為は商行為(会社法5条:事業としてする行為・事業のためにする行為=商行為/例=パンの販売・事業資金の借入/効果=商法の商行為の規定がかかる) 図:会社の行為は商行為

  • 会社法5条:事業としてする行為・事業のためにする行為=商行為
  • 例=パンの販売・事業資金の借入
  • 効果=商法の商行為の規定がかかる

商法でいう商人は、自己の名をもって商行為をすることを業とする者です。会社も、そこに入ります。その根拠が、会社法5条です。

条文会社法5条

会社法第5条 会社(外国会社を含む。次条第一項、第八条及び第九条において同じ。)がその事業としてする行為及びその事業のためにする行為は、商行為とする。

「事業としてする行為」は、先ほどのパン屋さんなら、パンを売ることです。「事業のためにする行為」は、パンを作る資金を借りることです。この2つが、どちらも商行為になります。だから会社は、商法4条1項の商人に当たります。商行為になると変わるのは、民法ではなく、商法の商行為の規定がかかることです。例を2つ挙げます。1つ目は、商法512条です。商人が営業の範囲内で他人のために行為をしたときは、報酬の約束がなくても、相当な報酬を請求できます。民法では、無償が原則ですが、その特則です。たとえば、パンの会社が、取引先に頼まれて配送を手配したとします。報酬の約束をしていなくても、相当な報酬を請求できます。2つ目は、商法511条1項です。数人の者が、その一人または全員のために商行為となる行為によって債務を負担したときは、その債務は連帯になります。民法では、債務は分割されるのが原則ですが、その特則です。たとえば、パンの会社と別の会社が、2社で小麦を共同で仕入れたとします。売主は、どちらの会社にも、代金の全額を請求できます。

もう一つあります。商人の行為は、営業のためにするものと推定されます。商法503条2項です。判例も、会社の行為は事業のためにするものと推定されると、述べています。たとえば、パンの会社が小麦粉を買ったなら、パンを作る事業のための買い物だと推定されます。会社の行為を「事業と関係がない」と争う側が、それを証明しなければならなくなります。今日は、商法の中身には入りません。会社の行為には、商行為の規定がかかる、という見取り図まで持ち帰ってください。

社団性と、一人会社

社団性と一人会社(社団=人の集合体/財団=財産の集合体/一人会社=社員が1人でも会社として成り立つ/株式会社・合名会社・合同会社は1人で設立可・合資会社は最低2人) 図:社団性と一人会社

  • 社団=人の集合体
  • 財団=財産の集合体
  • 一人会社=社員が1人でも会社として成り立つ
  • 株式会社・合名会社・合同会社は1人で設立可・合資会社は最低2人

ここで、前回の内容を一つだけ確認させてください。会社法でいう「社員」にあたるのは、従業員、株主、取引先のうち、どれでしたか?株主、でしたよね。出資者だから。出資者が社員です。この確認を使って、次の性質に進みます。会社は、社団法人だといわれます。社団とは、人の集合体のことです。財産の集合体である財団と、対にして覚えます。実は、社員が1人だけの会社も認められています。一人会社といいます。名前だけ見ると、矛盾して見えますよね。でも、一人会社は、便利さの方が大きく、困る点は少ない、という理由で認められています。社員の数にかかわらず、会社は同じ会社法のルールで運営されるので、1人だからといって困ることは、あまりありません。たとえば、個人事業を会社にして、財産を会社のものと自分のものに分けたいとき、一人会社が便利です。株式会社、合名会社、合同会社は、1人で設立できます。合資会社だけは、会社の借金を自分の財産で限りなく負う無限責任社員と、出資の額を限度に負う有限責任社員が1人ずつ必要なので、最低2人です。ここは名前だけで十分です。

社団法人とは、人の集まりに、その一人ひとりとは別の法人格を与えたものです。「人の集合体」というのは、財団のように財産ではなく、人を土台にする、という意味で、人数の話ではありません。だから、集まりを作る人の数は、1人でもかまいません。それで、社員が1人の一人会社も、社団法人です。たとえば、1人の株主が、保有している株式の一部を人に譲れば、一人会社は、そのまま普通の会社になります。

会社にできること——定款の目的と民法34条

会社の権利能力(定款の目的は絶対的記載事項=27条1号/民法34条=目的の範囲内で権利義務/疑問=目的外の行為は無効か) 図:会社の権利能力

  • 定款の目的は絶対的記載事項=27条1号
  • 民法34条=目的の範囲内で権利義務
  • 疑問=目的外の行為は無効か

ここから、冒頭の問題に入ります。会社は、何でもできるのでしょうか。会社は定款の目的に書いたことしかできないのか。条文で確かめます。まず、定款に何を書くのか。会社法27条です。

条文会社法27条

会社法第27条 株式会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。 一 目的 二 商号 三 本店の所在地 四 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額 五 発起人の氏名又は名称及び住所

1号に、目的があります。定款の目的は、必ず書かなければならない事項です。次に、民法34条です。民法で学んだ条文を、思い出してください。

条文民法34条

民法第34条 法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。

民法の回で見たとおり、この条文は、法人の一般ルールとして会社にも当てはまる、と解されています。目的の範囲外の行為は、会社の代表者が会社のためにしても、効果が会社に帰属しません。ただし、問題は、目的の範囲をどう読むかです。判例は、とても広く読みます。まず事案を見ましょう。不動産などの財産を保存し、運用して増やすこと、つまり利殖を図ることを目的とする会社が、持っていた建物を買主に売りました。買主は、その建物に住んでいる人に、出ていくよう求めました。ところが、一つ前の裁判所、つまり原審は、建物の売却は目的の範囲外で、現実にも売る必要がなかったから、売買は無効だと判断しました。最高裁は、これを破棄して、審理をやり直させました。判旨を見ます。

目的の範囲の物差し(定款の目的の文言→目的遂行に必要な行為も範囲内→必要かは客観的・抽象的に判断=現実の必要性は問わない) 図:目的の範囲の物差し

判例最高裁判所第二小法廷判決・昭和27年2月15日

目的の範囲と建物の売却 「財産の運用利殖を計るためには、時に既有財産を売却することもあり得ることである」 …… 「仮りに定款に記載された目的自体に包含されない行為であつても目的遂行に必要な行為は、また、社団の目的の範囲に属するものと解すべきであり、その目的遂行に必要なりや否やは、問題となつている行為が、会社の定款記載の目的に現実に必要であるかどうかの基準によるべきではなくして定款の記載自体から観察して、客観的に抽象的に必要であり得べきかどうかの基準に従つて決すべきものと解すべきである。」

ここから、判例の規範が二つ取り出せます。1つ目。定款の目的そのものに含まれない行為でも、目的を遂行するのに必要な行為は、目的の範囲内です。2つ目。必要かどうかは、現実に必要だったかではなく、定款の記載自体から見て、客観的、抽象的に必要でありうるかで判断します。現実に必要だったかどうかは、見ないんですか。見ません。ここが大事です。念のため確認します。目的が「不動産の保存と運用利殖」の会社が建物を売ったとき、範囲内かどうかを判断するのは、現実の必要性ですか、それとも客観的、抽象的な必要性ですか。客観的、抽象的な必要性、です。運用利殖のためには、持っている財産を売ることもありえます。だから、この売却は、範囲内でありうる行為です。では、なぜ、そんなに広く読むのか。判旨の理由を見ます。

判例最高裁判所第二小法廷判決・昭和27年2月15日

広く読む理由 「当該行為がその社団にとつて、目的遂行上、現実に必要であるかどうかということのごときは社団内部の事情で第三者としては、到底これを適確に知ることはできないのであつて、かかる事情を調査した上でなければ、第三者は安じて社団と取引をすることができないとするならば到底取引の安全を図ることはできないからである。」

看板に例えると分かりやすいです。お店の看板に書いていない商品を、店が売ったとします。買ったお客さんが、後から「看板に書いていない商品だから、この売買は無効です」と言われたら、困りますよね。会社は、多数の相手と取引します。相手が、取引のたびに、定款の目的と照らし合わせて調べなければならないなら、安心して取引できません。相手が取引を避ければ、会社や出資者の利益にもなりません。だから、広く読むんです。営利法人の行為が、目的外で無効とされることは、今日では、ほとんどありません。会社の側から目的外を言い出して逃げることを認めると、相手方が、思わぬ損害を受けるからです。民法の回で見たとおり、農協や労働金庫のような非営利法人が会員でない人にお金を貸した場面は、目的の範囲外で無効とされました。違いは、守る相手です。非営利法人では、会員が出し合った財産を守る側に振れますが、会社では、取引の相手を守る側に振り切れます。補足を二つ。民法34条の源流には、能力外法理、つまり、法人は目的の範囲外のことをする能力が、そもそも無いとする考え方があります。今は、そのまま貫かれてはいません。能力外法理は、名前だけで十分です。また、営利法人については、目的による権利能力、つまり権利や義務を持てる資格の制限そのものを、なくすべきだという有力な意見もあります。

政治献金は有効か——会社の行為と取締役の責任

政治献金の2段(会社の代表取締役が政党に350万円を寄付→株主が取締役の責任を追及する代表訴訟→最高裁は上告棄却/①会社の行為として有効か(目的の範囲)②取締役は責任を負うか(忠実義務)) 図:政治献金の2段

  • 会社の代表取締役が政党に350万円を寄付→株主が取締役の責任を追及する代表訴訟→最高裁は上告棄却
  • ①会社の行為として有効か(目的の範囲)②取締役は責任を負うか(忠実義務)

冒頭の寄付の問題に戻ります。実際に、最高裁大法廷まで行った有名な事件があります。民法と憲法の回でも出てきた、八幡製鉄事件です。鉄鋼の製造と販売、およびそれに付随する事業を目的とする会社の代表取締役2人が、会社を代表して、350万円を、政党に寄付しました。株主が、この寄付は目的の範囲外で、取締役の忠実義務にも反するとして、取締役に損害賠償を求めました。株主が、会社に代わって取締役の責任を追及する訴訟です。これを代表訴訟といい、847条が定めていますが、名前だけで十分です。最高裁は、上告を棄却しました。株主の負けです。ここで注意してほしいのは、争われたのは、寄付そのものの効力ではなく、取締役の責任だった、ということです。ただし、判決は、責任を判断する前提として、会社に政治献金をする権利能力があるか、つまり目的の範囲内か、を先に判断しています。

この判決は、2つの問いを順に判断しています。1段目は、会社の行為として有効か。2段目は、取締役が責任を負うか、です。まず1段目から見ます。

判例最高裁判所大法廷判決・昭和45年6月24日

八幡製鉄事件①——目的の範囲 「会社による政治資金の寄附は、客観的、抽象的に観察して、会社の社会的役割を果たすためになされたものと認められるかぎりにおいては、会社の定款所定の目的の範囲内の行為であるとするに妨げないのである。」

規範は、先ほどと同じです。必要かどうかを、客観的、抽象的に見ます。会社は社会の構成単位として、社会通念上、期待や要請される行為をすることができます。災害の救援や福祉への寄付が、その例です。それらは、間接的でも、会社が活動していく上で必要な行為と見られます。政党は、議会制民主主義を支える不可欠の要素です。その健全な発展への協力は、会社に期待される行為の一つだと、判旨は考えました。定款に書いていなくても、範囲内です。これが、冒頭の1つ目の問いへの答えです。寄付は、会社の行為として有効です。判旨は、客観的、抽象的に見て、会社の社会的役割を果たすためと認められるかぎり、と限っています。たとえば、災害の被災地への寄付は範囲内です。一方、民法の回で見たとおり、税理士会が政治団体に寄付した事件では、範囲外とされました。会員一人ひとりが自分で決めるべき政治的な選択に、会のお金を使うものだったからです。なお、取締役が私益を図ったかどうかは、2段目の、取締役の責任で問題にします。

憲法の問題はなかったんですか。ありました。憲法の回で見たとおり、人権は性質上可能なかぎり会社にも及び、会社も自然人と同様に、政治資金の寄付を含む政治的行為の自由を持つ、とされました。この判決は、さらに二つ述べています。参政権が自然人だけに認められていても、会社の寄付を妨げる理由にはならない。公序良俗に反する行為を無効とする民法90条に違反する、という主張は、憲法違反を前提にしていて、前提を欠く。憲法の詳しい話は、憲法の回に任せます。

政治献金の2段目=取締役の責任(会社の行為として有効でも、取締役が責任を負わないとは限らない/355条の忠実義務/判断の物差し=会社の規模・経営実績・社会的経済的地位・寄付の相手方など諸般の事情を考えて合理的な範囲か)

さて、有効だとして、取締役は責任を負わないと言えるでしょうか。ここで立ち止まってください。2段目に進みます。取締役の義務を定める355条を見ましょう。当時の商法の規定にあたるものです。

条文会社法355条

会社法第355条 取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない。

判例最高裁判所大法廷判決・昭和45年6月24日

八幡製鉄事件②——取締役の責任 「取締役が会社を代表して政治資金の寄附をなすにあたつては、その会社の規模、経営実績その他社会的経済的地位および寄附の相手方など諸般の事情を考慮して、合理的な範囲内において、その金額等を決すべきであり、右の範囲を越え、不相応な寄附をなすがごときは取締役の忠実義務に違反するというべきである」

取締役は、会社の規模や経営実績、寄付の相手方など、諸般の事情を考えて、合理的な範囲内で金額を決めなければなりません。この範囲を超えた不相応な寄付は、忠実義務違反です。この事件の寄付は、資本金、純利益、配当の額に照らして、合理的な範囲を超えていない、と判断されました。だから、取締役は責任なしです。たとえば、赤字続きで配当もできない会社が、利益の大半を超える額を寄付したら、その寄付が、会社の行為として有効でも、取締役の忠実義務違反になりえます。範囲内かどうかと、合理的な範囲かどうかは、別の物差しです。もう一つ補足です。取締役が自分や第三者の利益のために献金すれば、当然、忠実義務違反です。また、判旨は、忠実義務は善管注意義務、つまり、その立場の人に一般に求められる注意を尽くす義務を、具体的に、より明確にしたもので、別個の高度な義務ではない、としました。忠実義務違反を主張する側は、具体的な行為を挙げて、立証しなければなりません。

相手が会社の払いとして受け取ってよいかが、1段目。担当者が社内で、経費の使いすぎを問われるかが、2段目。それぞれ別の帳簿です。責任の中身は、取締役の回で詳しく見ます。なぜ分けるのか。1段目は、寄付を受け取った相手を守る物差しです。相手は、会社の内側の事情を知ることができません。2段目は、お金を出した会社と株主を守る物差しです。守る相手が違うから、別々に判断します。持ち帰る型は、これです。1つ目、会社の行為として有効か。客観的、抽象的に見て、会社の社会的役割を果たすためのものなら、範囲内です。2つ目、取締役の責任。規模や業績などに照らして、合理的な範囲を超えていないか。1つ目が通っても、2つ目は別に判断します。この区別が、論文で論点になりえます。

今日の地図(保存版)

今日の地図・保存版(法人性=帰属点が出資者と別/営利性=利益を社員に分配・105条2項/商人性=会社の行為は商行為・5条/社団性=一人会社も可/目的の範囲=客観的・抽象的に広く/政治献金=有効と取締役の責任は別) 図:今日の地図・保存版

  • 法人性=帰属点が出資者と別
  • 営利性=利益を社員に分配・105条2項
  • 商人性=会社の行為は商行為・5条
  • 社団性=一人会社も可
  • 目的の範囲=客観的・抽象的に広く
  • 政治献金=有効と取締役の責任は別

冒頭の問いに戻ります。会社が法人であるとは、何ができて、何ができないことか。権利や義務の主体になれて、取引の相手が会社1つに決まって、財産も出資者と分かれます。内側の性質としては、営利性、つまり、利益を社員に分配すること。105条2項で、配当も残余財産も両方与えない定めは無効でした。商人性、つまり、会社の行為は商行為で、商法の規定がかかります。社団性は、一人会社も認められる、でした。定款の目的の範囲は、客観的、抽象的に、広く読みます。取引の安全のためです。会社の取引が、目的外で無効になることは、まずありません。

冒頭のAさんの主張に答えを出しましょう。寄付は無効だ、という主張は、通りません。弁償しろ、という主張は、寄付が合理的な範囲を超えていれば通りえます。一つの場面に、有効性と責任という、2つの問いがありました。次の回から、会社の仕組みの、さらに中身へ進みます。

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