刑法ゼロから刑法#94

刑罰の種類と拘禁刑への一本化

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問い:刑罰にはどんな種類があり、どれが重いか。懲役・禁錮が拘禁刑にまとめられて何が変わったか。没収はどんな物に、どこまでできるか。

骨組み

  1. 1刑の種類と軽重:=主刑は死刑・拘禁刑・罰金・拘留・科料、付加刑は没収。重さはこの順()=罰金のほうが拘留より重い。追徴・労役場留置は刑ではない
  2. 2死刑:刑事施設内で絞首()。最大判昭23・3・12=死刑そのものは直ちにの残虐な刑罰ではない(憲法・が死刑の存置を想定)/執行の方法等が時代と環境で残虐なら36条違反
  3. 3拘禁刑への一本化(2025-06-01):懲役・禁錮をまとめた。=必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができる。は削除。施行前の行為はなお従前の例(懲役・禁錮)
  4. 4拘禁刑の幅と拘留:有期は1月以上20年以下()。加重は30年まで・減軽は1月未満まで()。拘留は1日以上30日未満()
  5. 5罰金・科料・労役場留置:罰金=1万円以上(減軽で1万円未満)/科料=1000円以上1万円未満。払えなければ労役場留置(罰金1日以上2年以下・科料1日以上30日以下=)
  6. 6没収の性質と種類:付加刑=主刑を言い渡すときだけ。原則は任意的、刑法典の必要的没収=賄賂()。拘留・科料のみの罪は原則没収不可()
  7. 7没収の対象():1号組成物件・2号供用物件・3号生成・取得・報酬物件・4号対価物件
  8. 8没収の要件①(教材の整理):対象が裁判の時に現存していること。加工で同一性を失えば不可。の文言には無い
  9. 9没収の要件②:犯人以外の者に属しない物に限る(本文)。「犯人」には共犯者を含む。盗品は被害者の物=通常没収できない(売却代金は4号で没収)
  10. 10ただし書:犯人以外の者の物でも、犯罪の後にその者が情を知って取得した物は没収できる=犯罪の前から持っていた第三者には働かない
  11. 11第三者の物を没収する手続(最大判昭37・11・28):関税法118条1項による第三者所有物の没収は、告知、弁解、防禦の機会を与える手続が無い → ・違反
  12. 12追徴():3号・4号の物を没収できないとき、その価額を追徴できる(1号・2号には無い)。追徴は刑ではない(換刑処分)。賄賂は追徴も必要的

色の札は出どころ:条文 判例 学説。条文番号は押すと条文が出ます。流れは、刑の種類と重さ(項目1)→ 主刑を1つずつ(項目2〜5)→ 付加刑の没収(項目6〜11)→ 没収の代わりの追徴(項目12)。条文は2025-06-01以降の現行法(拘禁刑)で書いています。

1刑の種類と軽重(・)条文

  • :「死刑、拘禁刑、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。」=主刑5つ+付加刑1つ=6種類(改正前は懲役・禁錮が別で7種類)。
  • 主刑=それだけで言い渡せる刑。付加刑=主刑に付け加えてだけ言い渡せる刑(没収)。
  • 奪うもので分けると:生命刑=死刑/自由刑=拘禁刑・拘留/財産刑=罰金・科料・没収。
  • :「主刑の軽重は、前条に規定する順序による。」=死刑 > 拘禁刑 > 罰金 > 拘留 > 科料。自由刑の拘留が、財産刑の罰金より軽い。順序の理由は条文に書かれていない=覚えるのは順序そのもの。
  • 改正前の10条1項にあったただし書(無期禁錮と有期懲役では禁錮を重いとする等)は削除=現行はの順序だけで決まる。
  • :同種の刑は、長期の長いもの又は多額の多いものを重い刑とし、長期・多額が同じなら短期の長いもの・寡額の多いものを重いとする(多額=罰金などの上限額・寡額=下限額)。:それでも同じなら犯情で決める。
  • 追徴と労役場留置はに無い=刑ではない(換刑処分)。財産刑に追徴を、自由刑に労役場留置を数えない。
  • 科料(かりょう)=の主刑=刑罰。過料(読みは同じ「かりょう」)=行政上・訴訟上などの秩序罰で、刑罰ではない。

罰金1万円と拘留29日 → 罰金のほうが重い(の順)。「1年以上10年以下の拘禁刑」と「6月以上15年以下の拘禁刑」→ 長期の長い後者が重い()。

×にされやすい形
  • 「拘留は自由刑であるから、財産刑である罰金より重い」(=の順で罰金が重い)
  • 「財産刑には、罰金、没収及び追徴が含まれる」(追徴はに無い=刑ではない)
  • 「自由刑には、拘禁刑・拘留のほか労役場留置が含まれる」(労役場留置は刑ではない)
  • 「主刑は死刑・拘禁刑・罰金・拘留・科料・没収の6つである」(没収は付加刑)

2死刑()と(最大判昭23・3・12)条文判例

  • :「死刑は、刑事施設内において、絞首して執行する。」:「死刑の言渡しを受けた者は、その執行に至るまで刑事施設に拘置する。」
  • 最も重い刑(生命刑)。法定刑に死刑がある罪の例:現住建造物等放火()・殺人()=「死刑又は無期若しくは五年以上の拘禁刑」、強盗致死(後段)=「死刑又は無期拘禁刑」。
  • 事案:殺人等(199条・旧200条)で死刑を言い渡された被告人が、死刑はの残虐な刑罰だから死刑の規定は失効したと主張 → 上告棄却。
  • 刑罰としての死刑そのものが、一般に直ちに同条にいわゆる残虐な刑罰に該当するとは考えられない。
  • ただ死刑といえども、他の刑罰の場合におけると同様に、その執行の方法等がその時代と環境とにおいて人道上の見地から一般に残虐性を有するものと認められる場合には、勿論これを残虐な刑罰といわねばならぬから、将来若し死刑について火あぶり、はりつけ、さらし首、釜ゆでの刑のごとき残虐な執行方法を定める法律が制定されたとするならば、その法律こそは、まさに憲法第三十六条に違反するものというべきである。
  • 理由は2つの条文:(公共の福祉)と(法律の定める手続)。
  • しかし、同時に同条においては、公共の福祉に反しない限りという厳格な枠をはめているから、もし公共の福祉という基本的原則に反する場合には、生命に対する国民の権利といえども立法上制限乃至剥奪されることを当然予想しているものといわねばならぬ。
  • そしてさらに、憲法第三十一条によれば、国民個人の生命の尊貴といえども、法律の定める適理の手続によつて、これを奪う刑罰を科せられることが、明かに定められている。
    すなわち憲法は、現代多数の文化国家におけると同様に、刑罰として死刑の存置を想定し、これを是認したものと解すべきである。
  • 判決が述べたのは「死刑という刑罰そのもの」と「執行の方法等」の物差しまで。絞首という方法について判決は何も述べていない(全文に「絞首」の語が無い)。
×にされやすい形
  • 「最大判昭23・3・12は、絞首による死刑の執行は残虐な刑罰に当たらないと判示した」(判決は絞首に触れていない)
  • 「判例によれば、死刑は合憲であるから、その執行方法がどのようなものであっても憲法に違反しない」(執行の方法等が残虐なら違反)
  • 「判例は、死刑の合憲性の根拠として憲法だけを挙げた」(も挙げる)

3拘禁刑への一本化(・削除)条文

  • 刑法等の一部を改正する法律(令和4年法律67号)で、2025-06-01から懲役と禁錮が拘禁刑にまとめられた。(旧禁錮)は「削除」。
  • :「拘禁刑は、無期及び有期とし、有期拘禁刑は、一月以上二十年以下とする。」:「拘禁刑は、刑事施設に拘置する。」
  • :「拘禁刑に処せられた者には、改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができる。」
  • 「できる」は国の側の権限。受刑者が断れるという意味ではない:刑事収容施設法84条1項「受刑者には、矯正処遇として…作業を行わせ…指導を行う」、93条「刑事施設の長は…必要と認められる場合には、作業を行わせるものとする」、74条2項9号(遵守事項)「正当な理由なく…作業を怠り、又は…指導を拒んではならないこと」。
  • 変わったこと:作業を課すかを刑の種類(判決)で固定していた(懲役=所定の作業あり/禁錮=なし)→ 拘禁刑の中で、必要に応じて作業・指導を課す。
  • 改正前も、懲役か禁錮かが罪名だけで決まっていたわけではない:刑法典でも旧95条1項・旧211条など少なくない罪が「懲役若しくは禁錮」の選択刑で、裁判所が刑種を選んだ(例:旧211条 業務上過失致死傷「五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金」、旧95条1項 公務執行妨害「三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金」)。
  • 施行前の行為:整理法(令和4年法律68号)441条1項「…施行前にした行為の処罰については、次章に別段の定めがあるもののほか、なお従前の例による」=2025-06-01より前の行為には、懲役・禁錮の判決が出る。
旧懲役旧禁錮拘禁刑(現行)
拘置刑事施設に拘置する(同じ)
作業拘置して所定の作業を行わせる(旧12条2項)拘置する(旧13条2項)=所定の作業なし必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができる()
作業を決める段階判決の刑種で固定執行の段階で必要に応じて

2025年5月31日の傷害 → 判決の刑名は懲役(なお従前の例による)。2025年6月1日の傷害 → 拘禁刑。

拘禁刑の受刑者が、課された作業を「は『できる』だから義務ではない」と言って拒む → 正当な理由が無ければ遵守事項違反(刑事収容施設法74条2項9号)。

×にされやすい形
  • 「拘禁刑の受刑者は、刑務作業を拒むことができる」(の「できる」は国の側の権限)
  • 「改正前は、懲役と禁錮のいずれを科すかは罪名によって一律に定まり、裁判所が選ぶ余地はなかった」(「懲役若しくは禁錮」の選択刑が多くあった)
  • 「2025年6月1日より前にした行為にも、拘禁刑が科される」(なお従前の例による=懲役・禁錮)

4拘禁刑の幅()と拘留()条文

  • 有期拘禁刑=1月以上20年以下()。各罪の法定刑が片方しか書かないときは、残りをここで補う:詐欺()「十年以下の拘禁刑」→ 短期は1月。傷害致死()「三年以上の有期拘禁刑」→ 長期は20年。
  • :死刑又は無期拘禁刑を減軽して有期とする場合 → 長期は30年。
  • :有期拘禁刑を加重する場合は30年まで上げられ、減軽する場合は1月未満に下げられる。
  • 20年=有期拘禁刑そのものの上限/30年=減軽で有期にするとき・加重するときの上限。どちらの向きから来ても30年。
  • :「拘留は、一日以上三十日未満とし、刑事施設に拘置する。」:と同じ型(必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができる)。
拘禁刑拘留
期間無期/有期=1月以上20年以下1日以上30日未満
加重・減軽の限度加重30年まで・減軽1月未満まで()—
作業・指導必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができる(・)

どんな場合に・どれだけ加重・減軽するかは別の規定が決める。14条2項は、その結果が届きうる限度=上は30年・下は1月未満を決めるだけ。

×にされやすい形
  • 「有期拘禁刑を加重する場合、その上限は20年である」(30年まで)
  • 「有期拘禁刑を減軽しても、1月未満に下げることはできない」(1月未満に下げられる)
  • 「拘留は、1日以上30日以下である」(30日未満)

5罰金・科料・労役場留置(・・)条文

  • :「罰金は、一万円以上とする。ただし、これを減軽する場合においては、一万円未満に下げることができる。」
  • :「科料は、千円以上一万円未満とする。」
  • 労役場留置=罰金・科料を完納できない者を労役場に留め置くこと(刑ではない=換刑処分)。
罰金科料
金額1万円以上(減軽で1万円未満も可)1000円以上1万円未満
完納できないときの留置期間(・2項)1日以上2年以下1日以上30日以下
併科(2つ以上を同時に言い渡す)したときの留置の上限()罰金を併科・罰金と科料を併科=3年まで科料を併科=60日まで
裁判の確定後、本人の承諾が無ければ留置を執行できない期間()30日以内10日以内
  • :罰金・科料の言渡しとともに、留置の期間を定めて言い渡さなければならない。:一部を納めた者の留置日数は、残額を留置1日の割合の金額で割った日数(1日未満の端数は1日)。

罰金30万円・1日5000円に換算と言い渡された者が全く払えない → 留置は60日。

×にされやすい形
  • 「科料は、1万円以下である」(1000円以上1万円未満)
  • 「罰金は、どのような場合でも1万円未満に下げることはできない」(減軽する場合は下げられる)
  • 「科料を完納できない者の労役場留置は、2年以下である」(科料は30日以下)

6没収の性質と種類(・・)条文

  • 没収=犯罪に関係のある特定の物の所有権を剥奪して国庫に帰属させる財産刑。
  • 付加刑=主刑を言い渡す場合にだけ言い渡せる → 責任無能力で無罪など、主刑の言渡しが無ければ没収もできない。
  • 任意的没収(裁判官の裁量=「没収することができる」)が原則。必要的没収(要件を満たせば必ず)は、刑法典では(賄賂)。特別法にも「没収する」と定めるもの(関税法118条1項等)がある=賄賂に限らない。
  • :「犯人又は情を知った第三者が収受した賄賂は、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。」
  • :「拘留又は科料のみに当たる罪については、特別の規定がなければ、没収を科することができない。ただし、第十九条第一項第一号に掲げる物の没収については、この限りでない。」=組成物件(1号)だけは没収できる。

犯行に使ったナイフがあるが、被告人が心神喪失で無罪 → 主刑を言い渡さないので、ナイフ(2号)も没収できない。

×にされやすい形
  • 「責任無能力を理由に無罪とする場合でも、犯行の用に供した物は没収できる」(付加刑=主刑の言渡しが要る)
  • 「犯人が収受した賄賂の没収は、任意的没収である」(=必要的没収)
  • 「必要的没収は、賄賂罪の賄賂に限られる」(特別法にもある)

7没収の対象()条文

  • :「次に掲げる物は、没収することができる。」
号条文呼び名・中身
1号犯罪行為を組成した物組成物件=構成要件の要素になっている物(その物なしに犯罪が成り立たない)。例:偽造私文書行使罪の偽造私文書
2号犯罪行為の用に供し、又は供しようとした物供用物件=犯罪に現に使った物・使おうと準備した物
3号犯罪行為によって生じ、若しくはこれによって得た物又は犯罪行為の報酬として得た物生成物件(犯罪で新たにできた物)・取得物件(犯罪当時すでにあり、犯罪で取得した物)・報酬物件(犯罪行為の対価)
4号前号に掲げる物の対価として得た物対価物件=3号の物を売るなどして得た物
  • 号は物の性質だけで決まらない:同じ偽造文書でも、偽造私文書行使罪で見れば1号、だます道具として使った詐欺罪で見れば2号。号の区別が効くのは、追徴できるか(3号・4号だけ=項目12)と、拘留・科料のみに当たる罪で没収できるか(特別の規定が無ければ1号だけ=項目6)。
  • 3号もすべて任意的没収(「できる」)。

偽造した契約書を見せて相手をだまし、100万円を受け取り、その金で中古車を買った → 偽造契約書=詐欺罪との関係では2号(だますのに使った。偽造・行使の罪から見れば3号・1号にもなる)、100万円=3号(取得物件)、中古車=4号(3号の物の対価)。

×にされやすい形
  • 「犯罪行為によって得た物(3号)は、必要的没収の対象である」(任意的)
  • 「犯罪の報酬として得た物を売った代金は、没収できないので追徴の対象となる」(代金は4号の物=手元にあれば没収)

8没収の要件①:裁判の時に現存していること学説判例

  • 教材は没収の要件を2つ並べる:①対象が裁判の時に現存していること ②対象が犯人以外の者に属していないこと(本文=項目9)。
  • ①はの文言には無い=の要件ではない。没収は物そのものを取り上げる処分なので、物が無ければ取り上げようがない。没収できないときの手当てが追徴(項目12)。
  • 消費・紛失・破壊で無くなれば没収できない。加工されて同一性を失ったときも同じ。
  • 金銭は、両替しても性質が変わらない → 没収できると解されている(大判大2・3・25 等=教材の紹介)。

賄賂として受け取った1万円札を千円札10枚に両替して持っている → 同一性あり=没収できる。

×にされやすい形
  • 「没収の対象が裁判時に現存することは、刑法が定める要件である」(文言に無い。2項が定めるのは「犯人以外の者に属しない物」)
  • 「金銭は両替すると同一性を失い、没収できなくなる」

9没収の要件②:犯人以外の者に属しない物(本文)条文判例

  • 本文:「没収は、犯人以外の者に属しない物に限り、これをすることができる。」
  • 「属しない」=犯人以外の者が所有権その他の物権を有しないこと(大判明36・6・30=教材の紹介)。所有権に限らない。
  • 「犯人」には、その被告人のほか共犯者を含む(大判明44・2・13 等=教材の紹介)→ 共犯者の物は没収できる。
  • 盗品:3号の取得物件に当たるが、被害者に所有権がある=犯人以外の者に属する → 結局没収できないのが通常(押収した盗品で被害者に還付すべき理由が明らかなものは還付=刑訴347条1項)。
  • 盗品の売却代金:4号の対価物件で犯人に属する → 手元にあればその代金を没収する(追徴ではない)。

乙が盗んだ腕時計を持っている → 腕時計は没収できない(被害者の物)。その腕時計を売って得た10万円を持っている → その10万円を没収できる(4号)。

甲が乙の窃盗を手伝うつもりで、自分の車を待機場所として提供した → 甲が幇助犯として「犯人」に入れば、甲の車は「犯人以外の者に属しない物」=本文で没収できる(ただし書の問題ではない)。

×にされやすい形
  • 「没収の対象は、犯人である被告人自身の所有物に限られる」(共犯者の物も没収できる。ただし書の物もある)
  • 「窃盗犯人が所持する盗品は、の物として没収できる」(被害者に物権=通常没収できない)
  • 「盗品を売った代金が手元にあるときは、その価額を追徴する」(代金そのものを4号で没収)

10ただし書:犯罪の後に情を知って取得した物条文

  • ただし書:「ただし、犯人以外の者に属する物であっても、犯罪の後にその者が情を知って取得したものであるときは、これを没収することができる。」
  • 要件は2つとも要る:犯罪の後の取得+情を知って。犯罪の前から第三者が持っていた物には、知っていたかどうかにかかわらずただし書は働かない。
  • 刑法19条では、犯罪の前から持っていた第三者の物が没収されうるのは、その第三者が共犯として「犯人」に入るとき(本文・項目9)。
  • 特別法は範囲が違うことがある:関税法118条1項ただし書は、犯罪が行われることをあらかじめ知らないで引き続き所有している場合などを没収から外す=事前に知っていた所有者の物は没収されうる(刑法ただし書より広い)。
犯罪に関係する物主刑を言い渡すか付加刑。無罪なら没収もない没収できないいいえはい19条1項1〜4号に当たるか没収できないいいえはい裁判の時に現存するか同一性を保っているか(文言に無い要件)没収できない3号・4号は19条の2の追徴を検討(任意)いいえはい犯人以外の者に属するか所有権その他の物権。犯人には共犯者を含む没収できる19条2項本文いいえはい犯罪の後に情を知って取得したか没収できるただし書。第三者に告知などの手続はいいいえ没収できない例:被害者の盗品、事情を知って貸したが共犯に当たらない所有者の物
任意的没収の流れ(どの段も「できる」まで=最後は裁判官の裁量)。3段目の「現存」は教材が要件として並べたもので、19条の文言には無い。追徴は「没収することができないとき」に3号・4号の物について「できる」(19条の2)。被害者の盗品のように、もともと犯人以外の者に属する物を追徴できるかは、ここでは扱わない。

乙が文書の偽造に使った乙のプリンタを、犯行後に事情を知った丙が買い受けた → 2号の物・丙に属するが、ただし書で没収できる。事情を知らずに買った丁なら没収できず、2号なので追徴もない(は3号・4号だけ)。

Aが友人Bの車を借りて密輸に使った。Bは密輸に使われると知りながら、犯罪の前から自分の車を貸していた → ただし書は働かない(犯罪の後の取得ではない)。Bが幇助犯などの共犯として「犯人」に入るなら、本文で没収できる。共犯にならないなら、刑法では没収できない。知って貸した者が共犯に当たるかは、共犯の成立の問題で決まる(この回では扱わない)。

×にされやすい形
  • 「犯罪の前から物を所有していた第三者が、犯罪に使われることを知って貸したときは、ただし書により没収できる」(ただし書は犯罪の後に情を知って取得した場合だけ)
  • 「犯人以外の者に属する物は、どのような場合にも没収できない」(ただし書の物・共犯者の物)

11第三者の物を没収する手続(最大判昭37・11・28)判例

  • 事案:関税法違反(密輸出)。第一審(原審が是認)は、被告人の所有する機帆船と、第三者の所有に係る貨物を、関税法118条1項で没収した → 最高裁は貨物の没収を違憲として原判決・第一審判決を破棄し、自判で被告人の船(の換価代金)だけを没収。
  • 関税法一一八条一項の規定による没収は、同項所定の犯罪に関係ある船舶、貨物等で同項但書に該当しないものにつき、被告人の所有に属すると否とを問わず、その所有権を剥奪して国庫に帰属せしめる処分であつて、被告人以外の第三者が所有者である場合においても、被告人に対する附加刑としての没収の言渡により、当該第三者の所有権剥奪の効果を生ずる趣旨であると解するのが相当である。
  • しかし、第三者の所有物を没収する場合において、その没収に関して当該所有者に対し、何ら告知、弁解、防禦の機会を与えることなく、その所有権を奪うことは、著しく不合理であつて、憲法の容認しないところであるといわなければならない。
  • 然るに、関税法一一八条一項は、同項所定の犯罪に関係ある船舶、貨物等が被告人以外の第三者の所有に属する場合においてもこれを没収する旨規定しながら、その所有者たる第三者に対し、告知、弁解、防禦の機会を与えるべきことを定めておらず、また刑訴法その他の法令においても、何らかかる手続に関する規定を設けていないのである。
    従つて、前記関税法一一八条一項によつて第三者の所有物を没収することは、憲法三一条、二九条に違反するものと断ぜざるをえない。
  • 理由の筋:没収は被告人への付加刑として言い渡され、その効果が第三者に及ぶ → 第三者にも告知、弁解、防禦の機会が必要 → それなしの没収は、適正な法律手続によらないで財産権を侵害する制裁を科することになる(・)。
  • 没収の言渡しを受けた被告人も、第三者の所有物についての没収の違憲を理由に上告できる(これと矛盾する昭和35年10月19日の大法廷判例を変更)。理由=没収は被告人に対する附加刑である/被告人も物の占有権を奪われ、所有権を奪われた第三者から賠償請求権等を行使される危険にさらされるなど、利害関係がある。
  • 判決が問題にしたのは手続の欠如。第三者が事情を知っていたかで線を引いた判決ではなく、刑法を論じてもいない(はこの判決の前からある規定)。
  • 判決の後、刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法(昭和38年法律138号)が、第三者への告知・参加の手続を定めた。ただし書で第三者の物を没収するときも、この手続が要る。
×にされやすい形
  • 「最大判昭37・11・28は、刑法本文の『犯人以外の者に属しない物に限る』との規定を憲法・から導いた」(関税法118条1項の没収について、手続が無いことを違憲とした)
  • 「ただし書により第三者の物を没収するときは、その第三者に告知する手続は要らない」
  • 「第三者の所有物の没収が違憲であっても、被告人はそれを理由に上告できない」(上告できる)

12追徴()条文

  • :「前条第一項第三号又は第四号に掲げる物の全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴することができる。」
  • 対象は3号・4号だけ=1号(組成物件)・2号(供用物件)には追徴の規定が無い。追徴も「できる」=任意的。
  • 「没収することができないとき」=消費・売却などで没収できない場合。
  • 追徴は刑ではない(に無い)=没収に代わる処分(換刑処分)。
  • 賄賂は、没収と同じく追徴も必要的(「その価額を追徴する」)。

盗品を売って得た10万円を遊興費に使い切った → 4号の物を没収できないので、価額10万円を追徴できる。

×にされやすい形
  • 「犯行に使った道具(2号)を処分してしまったときは、その価額を追徴できる」(追徴は3号・4号だけ)
  • 「追徴は、の定める財産刑の1つである」(刑ではない)

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