刑法ゼロから刑法#96

執行猶予の効果と取消し・仮釈放

刑法の復習ノートを1ページで通して読む(この回から)→

問い:言い渡された刑は、どんなときに執行されずに済み、早く出られ、効力を失うのか。全部の執行猶予と一部の執行猶予は、起算日と効果で何が違うか。

骨組み

  1. 1全部の執行猶予の要件():初度=3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金・情状により/再度=前に全部の執行を猶予された者が2年以下の拘禁刑・情状に特に酌量すべきもの。ただし書=この項本文(再度)で猶予され保護観察中に再犯した者は除く
  2. 2保護観察:全部の初度=裁量/全部の再度=必ず付する()/一部=裁量()
  3. 3全部の執行猶予の取消し:必要的()=拘禁刑以上でその刑の全部について猶予が無いとき等/裁量的()=罰金・遵守事項違反で情状が重いとき等
  4. 4全部の執行猶予の効果():取り消されずに期間を経過 → 刑の言渡しは効力を失う。ただし言渡しを受けた事実を量刑の資料に参酌しても違法でない(最決昭33・5・1)
  5. 5期間内の再犯で公訴提起中(〜6項):期間が過ぎても効力継続期間は言渡しの効力が続く。取消し=拘禁刑以上で全部について猶予なし→必要的/罰金→裁量的
  6. 6一部の執行猶予の要件・取消し():3年以下の拘禁刑のみ(罰金は無い)・再犯防止に必要かつ相当。必要的取消しの1号・2号は「拘禁刑以上の刑に処せられたとき」=全部について猶予が無いことは要件でない(3号の発覚の場面は「全部について猶予の言渡しがない」ことが要件)
  7. 7一部の執行猶予の起算日と効果:起算=実刑部分の執行を終わった日(又は執行を受けることがなくなった日)/経過 → 実刑部分を刑期とする拘禁刑に減軽し、執行を受け終わったものとする(言渡しは消えない)
  8. 8仮釈放():拘禁刑・改悛の状・有期は刑期の3分の1/無期は10年経過後・行政官庁の処分。取消しは裁量・釈放中の日数は刑期に算入しない
  9. 9刑の時効(・):刑(死刑を除く)の言渡しを受けた者は、確定後に一定期間執行を受けないと、時効により執行の免除を得る
  10. 10刑の消滅():拘禁刑以上の刑の執行を終わり(免除を得)、罰金以上の刑に処せられないで10年 → 言渡しは効力を失う/罰金以下は5年。一部の執行猶予を終えた人も対象
全部の執行猶予一部の執行猶予
条文〜〜
対象の刑3年以下の拘禁刑・50万円以下の罰金(再度は2年以下の拘禁刑だけ)3年以下の拘禁刑だけ
保護観察初度=裁量/再度=必要的裁量
猶予の期間1年以上5年以下(同じ)
起算日裁判が確定した日実刑部分の執行を終わった日(又は執行を受けることがなくなった日)
無事に経過したら刑の言渡しは効力を失う実刑部分を刑期とする拘禁刑に減軽・執行を受け終わったものとする=言渡しは残る(その後はの対象)

色の札は出どころ:条文 判例 学説。条文番号は押すと条文が出ます。執行猶予=刑の言渡しをしたうえで、一定期間その刑の全部または一部の執行を猶予する制度。流れは、全部の執行猶予の要件→保護観察→取消し→効果(項目1〜5)→一部の執行猶予(項目6・7)→刑の執行の段階の仮釈放(項目8)→執行を受けないまま/終えたあとの時効・消滅(項目9・10)。いちばんの弁別点は表の起算日と無事に経過したらの2行。「拘禁刑以上」「罰金以下」の以上・以下は刑の重さの順(主刑の軽重は死刑・拘禁刑・罰金・拘留・科料の順=・)。

1全部の執行猶予の要件:初度と再度()条文

初度()再度()
対象者1号=前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがない者/2号=処せられたことがあっても、その執行を終わった日又は執行の免除を得た日から5年以内に拘禁刑以上の刑に処せられたことがない者前に拘禁刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者
今回の刑3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金2年以下の拘禁刑(罰金は入らない)
情状情状により情状に特に酌量すべきものがあるとき
期間裁判が確定した日から1年以上5年以下
除かれる者—ただし書:この項本文の規定により猶予されて保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者
  • 1号の「前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがない者」には、罰金の前科しかない者も入る(文言から)。全部の執行猶予の期間を無事に過ごした者も1号に当たる(項目4)。
  • 2項の「前に拘禁刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者」は、新しい刑を言い渡す時点で、前の拘禁刑の全部の執行猶予の期間中にいる人(基本書は「全部の執行猶予中の者」と言い換える)。期間を取り消されずに過ごし終えた人は、で前の言渡しが効力を失うので、2項ではなく1項1号の側に入る。期間中の罪で公訴を提起され、効力継続期間にある人も、の適用では同じ扱い()。
  • 2号の5年の起算は、前の刑の執行を終わった日又は執行の免除を得た日。
  • 拘留・科料の言渡しには、全部の執行猶予を付けられない(1項は拘禁刑と罰金・2項は拘禁刑だけが対象)。再度の猶予は罰金にも付けられない。
  • ただし書で除かれるのは、再度の猶予(2項本文)で保護観察に付され、その期間内に再犯した者だけ。初度の猶予で保護観察に付された者は、このただし書に当たらない。

初度の猶予で保護観察に付された人が、その期間中に再犯した → ただし書には当たらない → 2年以下の拘禁刑で、情状に特に酌量すべきものがあれば、再度の猶予が付き得る。
拘禁刑の全部の執行猶予中の人が、新しい罪で罰金30万円を言い渡される → 再度の猶予(2項)は拘禁刑だけが対象 → この罰金には付けられない。

×にされやすい形
  • 「再度の執行猶予は、1年以下の拘禁刑の言渡しを受けた場合に限り付けることができる」(現行のは2年以下の拘禁刑)
  • 「刑の全部の執行猶予の期間中に保護観察に付された者が、その期間内に更に罪を犯したときは、再度の執行猶予を付けることはできない」(除かれるのは2項本文=再度の猶予で保護観察に付された者だけ。初度の猶予の保護観察中なら除かれない)
  • 「再度の執行猶予は、50万円以下の罰金の言渡しにも付けることができる」(2項の対象は拘禁刑だけ)
  • 「科料の言渡しにも、情状により執行猶予を付けることができる」(拘留・科料には付けられない)
  • 「罰金刑に処せられたことがある者には、初度の執行猶予を付けることができない」(1号は「拘禁刑以上の刑」に処せられたことがない者=罰金の前科だけなら当たる)

2保護観察:初度は裁量・再度は必要的・一部は裁量条文

  • 保護観察=猶予の期間中、行政官庁による見守りを受けること。付せられた者には遵守すべき事項があり、守らないと猶予の取消しの理由になる(第2号・第2号)。
  • :「前条第1項の場合においては猶予の期間中保護観察に付することができる」(初度=裁量)、「同条第2項の場合においては猶予の期間中保護観察に付する」(再度=必要的)。
  • :一部の執行猶予は「猶予の期間中保護観察に付することができる」=常に裁量(一部には初度・再度の区分が無い)。
  • 付けた保護観察は、行政官庁の処分で仮に解除できる(・)。仮解除の間は、ただし書・第2号(一部では第2号)の適用で、保護観察に付せられなかったものとみなす(各3項)。
×にされやすい形
  • 「再度の執行猶予を言い渡す場合、保護観察に付するかどうかは裁判所の裁量による」(再度は必ず付する)
  • 「初度の執行猶予を言い渡す場合は、必ず保護観察に付さなければならない」(初度は裁量)
  • 「一部の執行猶予を言い渡す場合は、必ず保護観察に付さなければならない」(一部は裁量)

3全部の執行猶予の取消し:必要的と裁量的条文

場面必要的()=取り消さなければならない裁量的()=取り消すことができる
期間内の再犯1号:拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないとき1号:罰金に処せられたとき
言渡し前の他の罪2号:拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないとき—
言渡し前の前科の発覚3号:拘禁刑以上の刑に処せられたことが発覚したとき3号:拘禁刑に処せられ、その刑の全部の執行を猶予されたことが発覚したとき
保護観察—2号:遵守すべき事項を遵守せず、その情状が重いとき
  • 取消し=猶予の言渡しそのものを取り消すこと(条文の「刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消す」)。取り消されると猶予が無くなり、言い渡されていた刑は猶予されずに執行される側に戻る。
  • ただし書:3号の場合でも、猶予の言渡しを受けた者が2号の者であるとき、又は第3号に該当するときは、必要的取消しにならない。
  • 2号の例:猶予を言い渡された後、その言渡しの前に犯していた別の罪で、全部について猶予の無い拘禁刑に処せられた。3号の例:猶予の言渡しの前に、別の罪で拘禁刑以上の刑にすでに処せられていたことが、言渡しの後に分かった。
  • ただし書の「2号の者」=前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日(又は執行の免除を得た日)から5年以内に拘禁刑以上の刑に処せられたことがない者。発覚した前科を考えに入れても、なおこの「5年以内に拘禁刑以上の刑に処せられたことがない者」に当たるなら、もともと猶予の要件を満たしていたので、必要的取消しにならない(条文の組み合わせから)。これに当たらず、ただし書の後半にも当たらなければ(たとえば発覚した前科が実刑で、その執行を終わった日から5年以内に、今回の猶予付きの拘禁刑に処せられていた)、原則どおり必要的取消し。これとは別に、発覚した前科が全部の執行猶予付きの拘禁刑なら、ただし書の後半(第3号に該当するとき)で必要的取消しから外れ、裁量的取消しになる。
  • 1号・2号の「その刑の全部について執行猶予の言渡しがないとき」には、一部の執行猶予付きの刑も入る(全部の執行は猶予されていない)。
  • 拘禁刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消したときは、執行猶予中の他の拘禁刑の猶予も取り消さなければならない(。効力継続期間中に猶予されているとみなされる刑=後段・後段は除く)。

猶予期間中の再犯で、拘禁刑1年・うち4か月の執行を2年間猶予(一部の執行猶予)とされた → 「その刑の全部について猶予の言渡しがない」 → もとの全部の執行猶予は必ず取り消される。

×にされやすい形
  • 「猶予期間内の再犯について、刑の一部の執行猶予の言渡しを受けたときは、もとの全部の執行猶予は取り消されない」(一部の猶予では「全部について」猶予が無い=1号で必要的取消し)
  • 「猶予期間内に更に罪を犯し罰金に処せられたときは、刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消さなければならない」(罰金は第1号=裁量)
  • 「保護観察の遵守事項に違反すれば、情状を問わず全部の執行猶予を取り消すことができる」(全部の執行猶予では「情状が重いとき」に限る)

4全部の執行猶予の効果(・最決昭33・5・1)条文判例

  • :「刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消されることなくその猶予の期間を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。」
  • 効力を失う結果(基本書):①1号の「前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがない者」に当たる ②累犯加重が生じない ③この判決で生じていた職業資格などの制限が消える。
  • 失われるのは刑の言渡しの法律上の効力であって、言渡しがあったという事実ではない。判例(第一小法廷の決定)は、量刑の非難に帰するとして上告を棄却した中で、括弧書きで次のように述べた。
  • 執行猶予の言渡を取り消されることなく猶予の期間を経過し刑の言渡がその効力を失つても、その言渡を受けたという既往の事実そのものを量刑の資料に参酌しても違法でないことは当法廷判決の趣旨とするところである。
  • 基本書はこれを「当然許される」と書く。判決の言葉は「違法でない」。

全部の執行猶予を無事に終えた人が、数年後に別の罪で起訴された → 裁判官が「以前にも猶予付きの有罪判決を受けている」ことを量刑で考慮しても違法でない。
同じ人が新しい罪で3年以下の拘禁刑を言い渡されるなら → 1号の「前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがない者」として、初度の猶予の対象になる。

×にされやすい形
  • 「執行猶予の期間を無事に経過して刑の言渡しが効力を失った前科は、その後の犯罪の量刑の資料とすることは許されない」(判例は参酌しても違法でないとする)
  • 「刑の言渡しが効力を失えば、言渡しを受けたという事実も法律上なかったことになる」(失うのは言渡しの効力で、受けたという事実ではない)
  • 「全部の執行猶予の期間を無事に経過した者は、その後に罪を犯しても、初度の執行猶予の対象にならない」(1号の者に当たる)

5期間内の再犯で公訴提起中:効力継続期間(〜6項)条文

  • :猶予の期間内に更に犯した罪(罰金以上の刑に当たるものに限る)について公訴の提起がされているとき → 刑の言渡しは、期間が経過した日から、4項又は5項によりもとの全部の執行猶予の言渡しが取り消されることがなくなるまで(=効力継続期間)、引き続き効力を有する。この間は、全部の執行猶予の言渡しがされているものとみなす。
  • :効力継続期間でも、次の規定の適用では言渡しは効力を失っているものとみなす=・・・と・(3号に係る部分)・/人の資格に関する法令。不利益を除くのは3項。
  • 3項の意味:決着を待つ間も言渡しが続いていることで、不利益を生じさせない。たとえば効力継続期間中に別の罪で3年以下の拘禁刑を言い渡されるとき、の適用ではもとの言渡しは効力を失っているとみなされる → 前の言渡しを理由に初度の猶予の対象から外されない。資格の制限も、資格の法令の適用では効力を失っているものとして扱われる。
  • (必要的取消し):その罪で拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないとき。ただし、その罪が期間経過後に犯した罪と併合罪として処断され、犯情その他の情状を考慮して相当でないと認めるときは取り消さない。
  • (裁量的取消し):その罪で罰金に処せられたとき。:4項・5項で取り消したときは、執行猶予中の他の拘禁刑の猶予も取り消す。
  • 取り消されるのはもとの全部の執行猶予の言渡し(新しい罪の刑ではない)。必要的・裁量的の分け方は・と同じ軸。
全部の執行猶予の期間が、取り消されずに経過した期間内に更に犯した罪で公訴の提起がされているか罰金以上の刑に当たる罪に限る言渡しは効力を失う27条1項いいえはい(効力継続期間に入る=2項)その罪で拘禁刑以上・全部について猶予なしか必ず取消し4項(ただし書あり)はいいいえその罪で罰金に処せられたか取り消すことができる5項はいいいえ取り消されることがなくなる → 言渡しは効力を失う効力継続期間が終わり、1項どおり(2項・1項)
効力継続期間は「4項又は5項によりもとの猶予の言渡しが取り消されることがなくなるまで」。その間も、3項に挙げた規定・資格の法令の適用では、言渡しは効力を失っているものとみなされる。

猶予期間の終わる2週間前に万引きをして起訴され、判決が出ないまま期間を過ぎた → もとの言渡しはまだ効力を失わない。この罪で全部について猶予の無い拘禁刑になれば、もとの猶予は原則として取り消される(4項)。罰金なら取り消すかは裁量(5項)。この罪で拘禁刑に処せられたが全部の執行猶予が付いたなら、4項(全部について猶予なし)にも5項(罰金)にも当たらない → 取り消されることがなくなり、もとの言渡しは効力を失う。
同じ万引きでも、期間が過ぎた翌日に犯したもの → 「期間内に更に犯した罪」に当たらない → 言渡しはその時点で効力を失っている。

×にされやすい形
  • 「刑の全部の執行猶予の期間を経過すれば、期間内に犯した罪で公訴が提起されていても、刑の言渡しは必ず効力を失う」(2項=効力継続期間は効力が続く)
  • 「効力継続期間は、新たに犯した罪の刑が取り消されることがなくなるまでの間をいう」(取り消されるのはもとの全部の執行猶予の言渡し)
  • 「効力継続期間中に、その罪で罰金に処せられたときは、もとの猶予の言渡しを取り消さなければならない」(罰金は5項=裁量)

6一部の執行猶予:要件と取消し条文

  • :対象者=1号 前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがない者/2号 前に拘禁刑に処せられたことがあっても、その刑の全部の執行を猶予された者/3号 前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又は免除を得た日から5年以内に拘禁刑以上の刑に処せられたことがない者。
  • 今回の刑=3年以下の拘禁刑だけ(全部の執行猶予にあった「50万円以下の罰金」は無い)。要件=犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して、再び犯罪をすることを防ぐために必要であり、かつ、相当であると認められるとき。期間=1年以上5年以下。
  • 薬物使用等の罪には、これとは別に特別法の一部の執行猶予の制度がある。
  • 取消しは全部の執行猶予と同じく必要的()と裁量的()。ただし文言の細部が違う(下の表)。取り消したときは、執行猶予中の他の拘禁刑の猶予も取り消す()。
  • ただし書:3号の場合でも、猶予の言渡しを受けた者が3号の者であるときは、必要的取消しにならない。
全部の執行猶予一部の執行猶予
必要的取消し(再犯)1号:拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないとき1号:拘禁刑以上の刑に処せられたとき(猶予の有無を問わない)。2号(言渡し前の他の罪)も同じ
必要的取消し(前科の発覚)3号:拘禁刑以上の刑に処せられたことが発覚したとき(ただし書あり)3号:拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないことが発覚したとき(ただし書あり)
裁量的取消し(遵守事項)2号:遵守せず、その情状が重いとき2号:遵守しなかったとき(情状の限定なし)
裁量的取消し(全部猶予の前科の発覚)3号:拘禁刑に処せられ、その刑の全部の執行を猶予されたことが発覚したとき対応する号は無い(は1号・2号だけ)

一部の執行猶予の期間中に再犯して、全部の執行猶予付きの拘禁刑になった → 一部の執行猶予は必ず取り消される(1号)。同じことが全部の執行猶予の期間中なら、1号の必要的取消しには当たらない。

×にされやすい形
  • 「刑の一部の執行猶予は、3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金の言渡しを受けた場合に付けることができる」(罰金は対象外)
  • 「一部の執行猶予の言渡し後の再犯で拘禁刑に処せられても、その刑の全部の執行が猶予されたときは、一部の執行猶予は取り消されない」(1号は「拘禁刑以上の刑に処せられたとき」=必要的取消し)
  • 「一部の執行猶予は、保護観察の遵守事項に違反し、その情状が重いときに限り取り消すことができる」(2号に情状の限定は無い)

7一部の執行猶予:起算日と効果(・)条文

  • 起算日():執行が猶予されなかった部分(実刑部分)の期間を執行し、当該部分の期間の執行を終わった日又はその執行を受けることがなくなった日から猶予の期間を起算する。全部の執行猶予は裁判が確定した日から。
  • 実刑部分の途中で仮釈放されると、出所した日と「執行を終わった日」はずれる。起算するのは執行を終わった日(出所の日ではない)。
  • そのときに他に執行すべき拘禁刑があれば、その刑の執行を終わった日(又は執行を受けることがなくなった日)から起算する()。
  • 効果():取り消されずに期間を経過 → その拘禁刑を、実刑部分の期間を刑期とする拘禁刑に減軽する。実刑部分の執行を終わった日(又は執行を受けることがなくなった日)に刑の執行を受け終わったものとする。条文の語は「減軽」。
  • 全部の執行猶予(言渡しが効力を失う)と違い、言渡しは消えない=執行を終えた人になる。その日から、2号・3号の5年、(再犯)の5年、の10年が数えられる。
  • 一部の執行猶予の言渡し後その猶予の期間を経過するまでに更に犯した罪(罰金以上の刑に当たるもの)で公訴提起中なら(実刑部分の執行中に犯した罪も入る)、効力継続期間は減軽されない()。その間も、に挙げた規定の適用では減軽され執行を受け終わったものとみなす。取消しは4項(拘禁刑以上=必要的・ただし書あり)・5項(罰金=裁量的)・6項(他の猶予も取消し)。
拘禁刑2年6か月・うち8か月の執行を4年間猶予 一部の執行猶予 実刑部分 1年10か月 猶予期間 4年 確定 仮釈放で出所 =起算日ではない 執行を終わった日=起算日 経過 1年10か月の拘禁刑に減軽・ 執行を終わった日に受け終わったもの 全部の執行猶予 確定した日から猶予期間
猶予期間の長さ(1年以上5年以下)は同じ。違うのは数え始め:全部=裁判が確定した日/一部=実刑部分の執行を終わった日。実刑部分の途中で仮釈放されても、その日からは数えない。

一部の執行猶予を無事に終えた人が、執行を終わった日から5年以内に再犯して拘禁刑に処せられた → 言渡しは消えておらず、執行を受け終わった人として扱われる → 再犯加重(・)があり得る。

×にされやすい形
  • 「刑の一部の執行猶予の期間は、実刑部分の執行中に仮釈放された日から起算する」(起算は実刑部分の執行を終わった日)
  • 「刑の一部の執行猶予の期間は、全部の執行猶予と同じく裁判が確定した日から起算する」
  • 「刑の一部の執行猶予の言渡しを取り消されることなく猶予期間を経過したときは、刑の言渡しは効力を失う」(実刑部分を刑期とする拘禁刑に減軽し、執行を受け終わったものとする)

8仮釈放(〜)条文

  • :拘禁刑に処せられた者に改悛の状があるときは、有期刑はその刑期の3分の1を、無期刑は10年を経過した後、行政官庁の処分によって仮に釈放することができる。
  • 位置づけ:いったん拘禁刑の執行として収容された人を、刑期満了前に釈放する制度。執行猶予が刑の言渡しの段階(裁判所)なのに対し、仮釈放は刑の執行の段階(行政官庁)。
  • :取り消すことができる(裁量)=1号 仮釈放中に更に罪を犯し罰金以上の刑に処せられたとき/2号 仮釈放前に犯した他の罪で罰金以上の刑に処せられたとき/3号 仮釈放前に他の罪で罰金以上の刑に処せられた者に対しその刑の執行をすべきとき/4号 仮釈放中に遵守すべき事項を遵守しなかったとき。
  • :一部の執行猶予の言渡しを受けた刑で仮釈放中に、その執行猶予の言渡しを取り消されたときは、仮釈放の処分は効力を失う。
  • :取り消したとき・効力を失ったときは、釈放中の日数は刑期に算入しない。
  • (仮出場):拘留に処せられた者、罰金・科料を完納できず留置された者は、情状により、いつでも、行政官庁の処分で仮に出場を許すことができる。
執行猶予仮釈放
効く段階刑の言渡しの段階刑の執行の段階(収容の後)
判断する者裁判所(判決で)行政官庁(処分で)

仮釈放中に再犯して罰金に処せられた → 仮釈放は取り消すことができる(裁量)。取り消されると、外にいた日数は刑期に入らない。

×にされやすい形
  • 「仮釈放は、裁判所の決定によって行う」(行政官庁の処分)
  • 「有期の拘禁刑に処せられた者は、刑期の2分の1を経過しなければ仮釈放されない」(3分の1)
  • 「仮釈放中に更に罪を犯し罰金以上の刑に処せられたときは、仮釈放の処分を取り消さなければならない」(取り消すことができる)
  • 「仮釈放の処分が取り消されても、釈放中の日数は刑期に算入される」(算入しない)

9刑の時効(・)条文

  • :「刑(死刑を除く。)の言渡しを受けた者は、時効によりその執行の免除を得る。」
  • :時効は、刑の言渡しが確定した後、次の期間その執行を受けないことによって完成する。
号刑時効の期間
1号無期拘禁刑30年
2号10年以上の有期拘禁刑20年
3号3年以上10年未満の拘禁刑10年
4号3年未満の拘禁刑5年
5号罰金3年
6号拘留・科料・没収1年

拘禁刑5年が確定したが、執行されないまま過ぎた → 時効の期間は10年(3号=3年以上10年未満)。

×にされやすい形
  • 「死刑の言渡しを受けた者も、刑の時効によりその執行の免除を得る」(は死刑を除く)
  • 「刑の時効が完成すると、刑の言渡しは効力を失う」(の効果は執行の免除)

10刑の消滅()条文

  • 前段:拘禁刑以上の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が、罰金以上の刑に処せられないで10年を経過したとき → 刑の言渡しは効力を失う。後段:罰金以下の刑の執行を終わり又は免除を得た者は5年。
  • :刑の免除の言渡しを受けた者が、確定後、罰金以上の刑に処せられないで2年を経過したとき → 刑の免除の言渡しは効力を失う。ここの刑の免除は判決で言い渡されるもの(「刑の免除の言渡し」)で、1項やの執行の免除(言い渡された刑の執行を免れること)とは別(条文の書き分けから)。
  • 入口は「刑の執行を終わった/執行の免除を得た」こと=実刑を終えた人、罰金を納めた人、時効で執行の免除を得た人、そして一部の執行猶予を無事に終えた人(後段で執行を受け終わったものとされる)。
  • 全部の執行猶予を無事に終えた人は、でその時点で効力を失う=別の制度。

拘禁刑1年の実刑を終えた人 → 罰金以上の刑を受けずに10年過ぎれば、言渡しが効力を失う()。全部の執行猶予を無事に終えた人 → 猶予期間の経過の時点で効力を失う()。

×にされやすい形
  • 「刑の消滅()は、執行猶予が付かなかった者又は執行猶予を取り消された者だけに働く制度である」(一部の執行猶予を無事に終えた人も、執行を受け終わった者として対象)
  • 「拘禁刑の執行を終わった者が、罰金以上の刑に処せられないで5年を経過したときは、刑の言渡しは効力を失う」(拘禁刑以上は10年。5年は罰金以下)

刑法 全体ロードマップへ →

刑法 の復習ノートを1ページで通して読む(この回から)→