刑法 ゼロから刑法#52

信用毀損罪・業務妨害罪

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第11章 秘密・名誉・信用・業務に対する罪 ②/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

信用毀損罪の保護法益と「信用」の意義 〔短答・論文共通〕

信用毀損罪の保護法益=経済的な側面における人の社会的評価(最判平15・3・11)=名誉に対する罪と財産犯の中間。客体=人の信用。「信用」の意義に争い。A説(従来の通説)=支払能力・支払意思に対する社会的信頼に限定(経済的信用)。B説(判例・最判平15・3・11)=それに加え販売される商品の品質に対する社会的信頼も含む(拡張)。理由=現代社会では商品の広告・宣伝がきわめて重要→信用の範囲を広く解するのが妥当。たとえ=昔は「ツケを払える人か」という財布の信用だけ→今は「あの店の商品は安全か」という品質の信用も同じく守る。論者名は出さず中身で。判例=B説(商品の品質への信頼も「信用」に含む)。

まず信用毀損罪。守っているのは、何だと思いますか。保護法益はこうです。経済的な側面における、人の社会的評価。いい所に気づきました。名誉毀損は、評価一般を守る。だから信用毀損は、名誉毀損と財産犯の、中間なんです。では客体の「信用」。ここに昔から争いがあります。従来の通説は、こう考えました。支払能力と、支払意思への信頼。要するに、お金まわりの信用に限る、という立場。うまい。でも判例は、もう一歩広げます。最判平15・3・11です。販売される商品の品質に対する社会的信頼も、「信用」に含む。なぜ広げたか。理由は、現代の広告・宣伝の重要性です。だから品質への信頼も、経済的な評価として守る。

信用毀損罪の「信用」の拡張 before/after。BEFORE=従来の通説(A説)=「信用」は経済的信用に限定(支払能力・支払意思に対する社会的信頼)=「あの人はツケを払えるか」というお金まわりの信頼だけが対象。AFTER=判例(B説・最判平15・3・11)=経済的信用に加え、販売される商品の品質に対する社会的信頼も含む(∵現代社会では商品の広告・宣伝が重要)=「あの店の商品は安全か」も守る。保護法益=経済的な側面における人の社会的評価(名誉に対する罪と財産犯の中間)。判例=B説。

図で、ビフォーアフターを見ましょう。左は、支払能力・支払意思への信頼だけ。理由は、広告・宣伝の社会経済的な重要性。

信用毀損罪の行為(虚偽の風説の流布/偽計)と抽象的危険犯 〔短答・論文共通〕

信用毀損罪の行為。①虚偽の風説を流布=客観的真実に反する事実を不特定または多数人に伝播させること。「流布」=不特定または多数人に伝播する可能性があれば足り、特定かつ少数の者に伝えた場合でも成立しうる(判例)。②偽計を用いる=人を欺罔・誘惑し、あるいは人の錯誤・不知を利用すること。「毀損した」の文言だが抽象的危険犯=現実に信用が低下したことは不要(信用低下の認定が困難なため)。→名誉毀損罪と同じ構造。デマを流せば、現実に評判が落ちたか測れなくても、信用低下の危険が生じれば既遂。行為態様の例は中立に自前で。

次に、信用毀損罪の行為です。手段は二つ。一つ目が、虚偽の風説を流布する、です。客観的真実に反する事実を、不特定または多数人に伝播させる。ここで大事なのが、流布の範囲です。不特定または多数人に伝播する可能性があれば、足りる。だから、特定かつ少数の人に伝えただけでも成立しうる。二つ目が、偽計を用いる、です。人を欺罔・誘惑する、または、人の錯誤や不知を利用すること。この偽計は、後の業務妨害罪でも出てきます。そして、ここが要注意。条文は「毀損した」と書いています。一見そう見えます。でも、これは抽象的危険犯です。なぜか。信用が実際に下がったか、認定するのが難しいから。だから、信用低下の危険が生じれば既遂。名誉毀損と同じ構造です。

業務妨害罪の「業務」の意義 〔短答・論文共通〕

業務妨害罪の「業務」の意義。233後段=偽計業務妨害/234=威力業務妨害。保護法益=業務活動そのもの(判例)。「業務」=社会生活上の地位に基づき継続して行う事務(職業に限らない)。報酬・経済性は不要(無償・ボランティアの継続的活動でも「業務」たりうる)。過失致死傷罪の「業務」と違い娯楽は含まない。∵ここの「業務」は刑の加重要件でなく保護の対象そのもの(娯楽は保護に値しない)。違法な業務でも、要保護性が認められる限り「業務」に含まれる場合がある(有力説・要確認)。「社会生活上の地位に基づき継続して行う事務」=論文の規範。逐語で押さえる。

ここから業務妨害罪です。条文は二つに分かれています。233条後段が偽計業務妨害、234条が威力業務妨害です。では、その「業務」とは何か。これが論文の規範です。社会生活上の地位に基づき、継続して行う事務。これが「業務」。職業に限りません。社会的な地位で、繰り返し行う事務なら入ります。いいんです。報酬や経済性は不要。無償の継続的活動でも業務たりうる。ここで、一つ注意点。過失致死傷罪にも「業務」が出ましたね。あちらの「業務」には、娯楽も含まれました。覚えていますか。でも、この業務妨害罪の「業務」には、娯楽は含まれません。そこが面白い所です。理由は、役割が違うから。過失致死傷の「業務」は、刑を重くする要件。危険なものを広く拾う。でも業務妨害の「業務」は、刑法が守る対象そのものです。だから娯楽は含まない。役割が違えば、範囲も変わる。なお、違法な業務でも、要保護性があれば含む場合があります。そこは有力説で、射程に議論もあります。深入りはしません。

条文を確認——233条(信用毀損及び業務妨害)・234条(威力業務妨害) 〔約束③(条文全文)〕

刑法233条(信用毀損及び業務妨害)。前段=信用毀損罪=虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損した者は、三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。後段=偽計業務妨害罪=虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、その業務を妨害した者は、三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。「毀損」「妨害」とあるが抽象的危険犯(現実の信用低下・業務妨害は不要)。接続詞「又は」・漢数字はe-Gov正文どおり。e-Gov現行=拘禁刑表記。

核心の条文を全文で見ます。233条です。前段が信用毀損罪。後段が偽計業務妨害罪です。それで「人の信用を毀損した者」が、信用毀損罪。手段は共通で、結果が信用か業務か、で分かれます。古い本だと刑名が違うかもしれません。続いて234条。威力業務妨害です。

刑法234条(威力業務妨害)。威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。「前条の例による」=233条と同じ=三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金。「威力」=人の意思を制圧するに足りる勢力。e-Gov現行=拘禁刑表記。

234条はシンプルです。威力を用いて人の業務を妨害した者も。前条、つまり233条と同じ刑、という意味です。233条後段が偽計、234条が威力。これで業務妨害は二つそろう。

🔴 偽計と威力の区別 〔短答・論文共通〕

🔴 偽計 vs 威力 対比。偽計(233条後段)=定義=人を欺罔・誘惑し、または人の錯誤・不知を利用する/目に見えない形で仕掛ける(相手に気づかれにくい)/例(自前)=嘘の電話注文で配達させる・こっそり通信回線を切る。威力(234条)=定義=人の意思を制圧するに足りる勢力を示す(暴行・脅迫に至らないものも含む)/目に見える形で示す(相手の目の前で勢力を見せる)/例(自前)=大声で怒号して立ちふさがる・気味の悪い物を置いて発見させる。区別の目安=妨害が被害者の目に見える形か(見える=威力/見えない=偽計)。どちらも抽象的危険犯。

では疑問②、偽計と威力の区別です。対比表で見ましょう。まず偽計。さっき信用毀損でも出た言葉です。ポイントは、目に見えない形で仕掛けること。相手に気づかれないように、こっそり妨害する。あるいは、こっそり通信回線を切る、とか。これに対して威力。定義はこうです。人の意思を制圧するに足りる勢力を示すこと。ただし、暴行・脅迫に至らないものも含みます。社会的地位や経済的な優越、集団の勢いなども威力になりうる。目に見える形で示すこと。相手の目の前で、勢力を見せる。大声で怒号して立ちふさがる、とか。だから区別の目安は一つ。妨害が、目に見える形か。そして、どちらも抽象的危険犯。さっきと同じですね。

🔴 公務と業務——保護の隙間という問題 〔論文の骨格〕

🔴 保護の隙間。設例=妨害者 甲 が、公務員 X の公務を、暴行・脅迫でなく威力・偽計で妨害した。①威力・偽計で公務を妨害(ただし暴行・脅迫はしていない)。②公務執行妨害罪95条は「暴行・脅迫」が要件→暴行・脅迫がない以上、成立しない(×)。③では業務妨害罪で拾えるか?=公務が「業務」に含まれるかという問題(=威力業務妨害と公務執行妨害の保護の隙間)。→答えは「打たれ強さ」で割れる。権力的公務なら隙間のまま/非権力的公務なら業務妨害罪で拾う(次のフロー)。実在人物・実在事件名は設例に使わず抽象化。

まず問題の場面から。図を見てください。妨害者の甲が、公務員Xを妨害します。ただし、暴行も脅迫もしない。威力か偽計で妨害する。ここで、公務員を守る専用の罪を思い出してください。でも、95条は「暴行・脅迫」が成立の要件なんです。公務執行妨害罪は、成立しません。では、業務妨害罪で拾えないか、と考える。そこです。これが、威力業務妨害と公務執行妨害の、保護の隙間。この隙間をどう埋めるか。

🔴 公務と業務——打たれ強さで割る 〔論文の骨格〕

🔴 公務と業務フロー。軸=打たれ強さ(自力で妨害を排除する力=自力排除力)があるか。出発点=公務を、暴行・脅迫でなく威力・偽計で妨害→業務妨害罪で拾える? 分岐=その公務は強制力を行使する権力的公務(実力で抵抗を押し返す公務)か? YES=権力的=打たれ強い(自力排除力あり)=逮捕・勾留・捜索・差押え・強制執行・即時強制等→業務妨害罪で守るまでもない→「業務」に含まれない(暴行・脅迫があれば95条で守る)。NO=非権力的=打たれ弱い(自力排除力なし)=条例案採決・選挙届出受理・大学の講義・撤去作業等→民間の業務と同じく守る必要→「業務」に含まれる(威力・偽計でも業務妨害罪が成立しうる)。★規範=強制力を行使する権力的公務は「業務」に含まれないが、それ以外の公務は「業務」に含まれる(判例)。

では、その隙間をどう埋めるか。判例の考え方をフローで通します。鍵になるのは、たった一つの軸。打たれ強さ、です。正確には、自力で妨害を排除する力。自力排除力です。ここで、自前のたとえを一つ。用心棒を連れているか、です。警察の捜索を考えてみて。屈強な用心棒を連れた要人のようなものです。逮捕や捜索や強制執行は、相手の抵抗を実力で押し返せる。これを、強制力を行使する権力的公務、と呼びます。打たれ強いなら、わざわざ業務妨害罪で守る必要がない。だから権力的公務は「業務」に含まれない。そのときは公務執行妨害罪95条で守れば足りる。役割分担です。一方、こちら。役所の窓口や、大学の講義を考えてみて。丸腰です。絡まれても、自分では追い払えない。これを、強制力を行使しない、非権力的公務と呼びます。だから、民間の業務と同じく、業務妨害罪で守る必要がある。ここで規範です。これは逐語で押さえてください。強制力を行使する権力的公務は「業務」に含まれない。そして、それ以外の公務は「業務」に含まれる。判例の立場です。軸は一本。打たれ強さがあれば95条に任せ、なければ業務妨害罪で守る。

🔴 権力的公務と非権力的公務——判例まとめ 〔短答・論文共通〕

🔴 権力的公務/非権力的公務まとめ。権力的公務→「業務」に含まれない=強制力を行使する公務(打たれ強い)=逮捕・勾留・捜索・差押え(刑事)/執行官の現実的執行(民事の強制執行)/即時強制・行政代執行(行政)→暴行・脅迫なら公務執行妨害罪95条で対応。非権力的公務→「業務」に含まれる=強制力を行使しない公務(打たれ弱い)=県議会委員会の条例案の採決(最決昭62・3・12)/選挙長の立候補届出受理(最決平12・2・17)/国立大学の講義/段ボール住居の撤去・動く歩道の整備作業(最決平14・9・30)→威力・偽計でも業務妨害罪が成立しうる。判例の年月日・事案の細部はFC。確定済の核心=権力的公務は含まれない/非権力的公務は含まれる(軸=打たれ強さ)。

では、具体的にどんな公務がどちらか。判例で整理します。左の権力的公務。これは「業務」に含まれない側です。民事なら、執行官の現実的な強制執行。行政なら、即時強制や、行政代執行。だから含まれない。95条に任せます。これは「業務」に含まれる側。判例が積み重なっています。最決昭62・3・12。権力的・非権力的の区別を立てた判例です。次が、選挙長の、立候補の届出受理。最決平12・2・17。国立大学の講義も、非権力的公務です。そして、段ボール住居の撤去や、動く歩道の整備作業。これらは、自力排除力を持たない公務。だから守る。年月日や事案の細部は、深入りしません。核心は区別の軸です。

📝 論文の型

★コア規範|公務と業務妨害罪の「業務」。業務妨害罪の「業務」に公務が含まれるかは、その公務に打たれ強さ(自力排除力)があるかで決まる。すなわち、強制力を行使する権力的公務は通常それにふさわしい自力排除力を備えるから業務妨害罪で守るまでもなく「業務」に含まれないが、それ以外の公務(非権力的公務)は「業務」に含まれる(判例)。復元キー=①95条は暴行・脅迫が要件→威力・偽計で公務を妨害しても公務執行妨害罪は不成立(保護の隙間)②公務も「業務」の定義に該当しうる③もっとも権力的公務は自力で妨害を排除できる(打たれ強い)→業務妨害罪で守る必要がない④権力的公務は含まれない(95条に任せる)/非権力的公務は含まれる⑤(有力説=偽計には自力排除力が奏功しない→偽計業務妨害ではおよそ公務を含むとする見解もある)。

公務と業務妨害罪の「業務」。コア規範の核心だけ。権力的公務は含まれない、それ以外は含まれる。採点キーワードは、ここを逐語で押さえる。復元キーで、趣旨から組み立て直します。まず保護の隙間から。だから威力・偽計だと公務執行妨害が成立しない。そして打たれ強さで割る。権力的なら自分で排除できる。この鎖を、趣旨から再構成すればいい。逐語は核心だけ。

答案の型|公務と業務妨害罪の「業務」。【事例】甲は、警察官による捜索を、暴行・脅迫は用いず、威力を用いて妨害した。甲に威力業務妨害罪が成立するか。【問題提起】暴行・脅迫がない以上、公務執行妨害罪(95条1項)は成立しない。では業務妨害罪の「業務」に公務が含まれ、威力業務妨害罪が成立するかが問題となる。【規範】公務も定義には該当しうる→もっとも権力的公務は自力排除力(打たれ強さ)を備える→強制力を行使する権力的公務は「業務」に含まれない/それ以外の公務は含まれる。【あてはめ】捜索は、相手の抵抗を実力で排除しうる強制力を行使する権力的公務である。したがって自力排除力を備え、業務妨害罪の「業務」に含まれない。よって甲に威力業務妨害罪は成立しない(暴行・脅迫があれば公務執行妨害罪95条で処理すれば足りる)。

答案の型です。さっきの捜索の設例で、最後まで通しましょう。問題提起で、暴行・脅迫がないから95条は不成立、と書く。規範で、打たれ強さから区別を立てる。だから威力業務妨害罪は成立しない、で締めます。

論文の型:信用毀損罪の「信用」の意義 〔論文〕

★コア規範|信用毀損罪の「信用」の意義。信用毀損罪の「信用」とは、支払能力・支払意思に対する社会的信頼に加え、販売される商品の品質に対する社会的信頼も含む(最判平15・3・11)。復元キー=①保護法益=経済的な側面における人の社会的評価(名誉に対する罪と財産犯の中間)②従来の通説=「信用」を支払能力・支払意思に対する社会的信頼(経済的信用)に限定③もっとも現代社会では商品の広告・宣伝の社会経済的重要性が高い④だから「信用」には商品の品質に対する社会的信頼も含むと解する(最判平15・3・11)。

もう一枚、信用毀損の「信用」の型です。こちらは簡潔に。支払能力・支払意思に加え、商品の品質への社会的信頼も含む。復元キーは、保護法益から。経済的な社会的評価です。でも広告・宣伝が重要だから、品質の信頼も含む、と展開する。

答案の型|信用毀損罪の「信用」の意義。【事例】甲は、Xが販売する飲料に異物が混入しているという虚偽の風説を流布した。甲に信用毀損罪が成立するか。【問題提起】商品の品質に対する信頼が、信用毀損罪の「信用」に含まれるかが問題となる。【規範】保護法益=経済的な社会的評価→従来は経済的信用に限定→もっとも広告・宣伝の重要性→商品の品質への社会的信頼も「信用」に含む(最判平15・3・11)。【あてはめ】飲料への異物混入という虚偽の風説は、その商品の品質に対する社会的信頼を低下させる。商品の品質への信頼も「信用」に含まれるから、甲は虚偽の風説を流布して「信用」を毀損したといえ、信用毀損罪が成立する(抽象的危険犯ゆえ現実の信用低下は不要)。

答案の型も見ましょう。飲料の虚偽の風説の設例です。問題提起で、商品の品質への信頼が「信用」に入るか、と書く。あてはめで、品質も「信用」だから信用毀損成立、と締める。この型で、信用毀損もコンパクトに書けます。

公務執行妨害罪95条の「職務」の範囲(接続) 〔短答〕

公務執行妨害罪95条の「職務」の範囲(接続)。問い=業務妨害罪で守られる非権力的公務は、公務執行妨害罪95条の「職務」からは外れる? 判例(最判昭53・6・29)=公務執行妨害罪95条の「職務」はおよそ全ての公務に及ぶ。∵公務は公共の福祉に奉仕するものだから厚く保護する必要がある。帰結=非権力的公務は、業務妨害罪と公務執行妨害罪の両方で二重に守られうる(暴行・脅迫なら95条/威力・偽計なら業務妨害罪)。権力的公務は「業務」に含まれない(業務妨害罪では守らない)が、95条の「職務」には当然含まれる。95条の構成要件の詳細は第2編 国家的法益回で本格的に扱う=ここは接続のみ。

一つ、接続の論点に触れます。95条の「職務」の範囲です。いい問いです。判例は、こう考えます。最判昭53・6・29。95条の「職務」は、およそ全ての公務に及ぶ。なぜなら、公務は公共の福祉に奉仕するもの。厚く守る。業務妨害罪と、公務執行妨害罪の、両方で守られうる。暴行・脅迫なら95条、威力・偽計なら業務妨害罪で拾える。権力的公務も、95条の「職務」には当然含まれます。そこは混同しやすいので注意。95条の中身は、国家的法益の回で扱います。

業務妨害罪が抽象的危険犯であること 〔短答・論文共通〕

業務妨害罪が抽象的危険犯であること。「業務を妨害した」の文言だが、業務が現実に妨害されたかの認定が困難なため、抽象的危険犯=現実の業務妨害の結果は不要。信用毀損罪と同じ構造(名誉毀損罪も同様)。→妨害行為があれば、現実に業務が止まったか立証できなくても、業務妨害の危険が生じれば既遂。

もう一点、業務妨害罪も抽象的危険犯です。さっきと同じ話ですね。業務が現実に妨害されたか、認定するのは難しいんです。だから、業務妨害の危険が生じれば既遂、と解する。この章の罪は、危険犯でそろう。まとめて押さえましょう。

電子計算機損壊等業務妨害罪234の2 〔短答中心〕

電子計算機損壊等業務妨害罪234の2。趣旨=コンピュータによる業務の代替が進み、損壊等による業務妨害が深刻→偽計・威力業務妨害より重く処罰(5年以下の拘禁刑・100万円以下の罰金)。加害行為=①電子計算機・電磁的記録の損壊②虚偽の情報・不正な指令の入力③その他の方法(電源切断・通信回線切断等)→電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせず/使用目的に反する動作をさせて業務を妨害。「電子計算機」=人の代替となるもの(情報を集積・処理・制御する機能)=パソコンは○/家電・自販機のマイコンは×(判例)。危険犯。未遂処罰あり(234条の2第2項)。電子計算機使用詐欺罪246条の2(財産犯)とは別物=こちらは業務妨害/あちらは財産・利益の取得。

最後の罪です。電子計算機損壊等業務妨害罪、234条の2。趣旨はシンプル。今は業務をコンピュータが担っています。だから、その妨害は深刻。偽計・威力業務妨害より重く処罰します。五年以下の拘禁刑、または、百万円以下の罰金。一段重いですね。加害行為は三つ。一つ目が、電子計算機や電磁的記録の損壊。二つ目が、虚偽の情報や、不正な指令を入力すること。三つ目が、その他の方法。電源を切る、回線を切る、などです。使用目的に沿う動作をさせない、または反する動作をさせる。ここで「電子計算機」とは何か、が問われます。基本はそうです。人の代替となるもの。情報を処理・制御する機能。家電や自販機のマイコンは、入らないとされます。判例の立場です。そして、この罪は未遂も処罰されます。234条の2第2項。最後に一つ注意。似た名前の罪があります。電子計算機使用詐欺罪。でも、あれは財産犯。財産や利益を取得する罪です。区別は財産犯の回で本格的にやります。

短答ひっかけ

ここはひっかかる(短答・論文まとめ)。①🔴信用毀損の「信用」=支払能力・支払意思+商品の品質に対する社会的信頼(最判平15で拡張)/抽象的危険犯。②「業務」=社会生活上の地位に基づき継続して行う事務(報酬・経済性不要・娯楽は含まない)。③🔴偽計=欺罔・誘惑(見えない)/威力=意思を制圧する勢力(暴行脅迫未満も含む・見える)。④🔴公務と業務=強制力を行使する権力的公務は「業務」に含まれない/それ以外の公務は含まれる(昭62・平12・平14)。⑤軸=打たれ強さ(自力排除力)。権力的公務は打たれ強い→95条に任せる/非権力的公務は打たれ弱い→業務妨害罪で守る。⑥95条の「職務」=判例はおよそ全公務に及ぶ(最判昭53・6・29)→非権力的公務は二重保護されうる。⑦業務妨害も抽象的危険犯/234の2=電子計算機損壊等業務妨害(重く処罰・未遂罰あり)。

短答でひっかかる所を整理します。①信用は商品の品質も含む。②「業務」は社会生活上の地位に基づき継続して行う事務。③偽計は見えない、威力は見える。区別の目安です。⑤軸は打たれ強さ。自力排除力があるかで割る。⑥95条の「職務」は、およそ全公務。二重保護されうる。この七つで、信用毀損・業務妨害は、かなり戦えます。

今日の地図(保存版)

#52 今日のまとめ。軸=刑法が守るのは経済活動・社会生活上の活動そのもの(名誉と財産犯の中間)。信用毀損罪233前段=保護法益=経済的な社会的評価/「信用」=支払能力・支払意思+商品の品質への信頼(最判平15)/抽象的危険犯。業務妨害罪233後段(偽計)・234(威力)=「業務」=社会生活上の地位に基づき継続して行う事務(報酬不要・娯楽不含)/抽象的危険犯。偽計=見えない(欺罔・誘惑)/威力=見える(意思を制圧する勢力・暴行脅迫未満も)。🔴公務と業務=強制力を行使する権力的公務は「業務」に含まれない/それ以外の公務は含まれる(軸=打たれ強さ/自力排除力)。95条「職務」=およそ全公務(最判昭53・6・29)→非権力的公務は二重保護/234の2=電子計算機損壊等業務妨害(重く処罰・未遂罰)。次は#53 財産犯総論。

まとめます。守るのは、活動そのものでした。信用毀損の「信用」は、商品の品質への信頼も含む。業務妨害の「業務」は、社会生活上の地位に基づき継続して行う事務。偽計は見えない、威力は見える。これが区別の目安。強制力を行使する権力的公務は「業務」に含まれない。用心棒がいるかいないか。権力的なら95条、非権力的なら業務妨害。電子計算機損壊等業務妨害も忘れずに。重く処罰、未遂罰あり。次は#53。いよいよ財産犯総論。財産そのものを守る罪に入ります。

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