刑法ゼロから刑法#72

承継的共同正犯の類型別検討

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第9章 共犯 ⑨/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

受け直し——後行者が背負うのは、状態か結果か

途中から加わった人は、けがまで背負うのか。だました後に受け取っただけの人は 図:途中から加わった人は、けがまで背負うのか。だました後に受け取っただけの人は

前回、承継的共同正犯が認められるのはどんな場合だと言いましたか?後行者が、先行者の行為やその結果を、自分の犯罪をやり遂げる道具として積極的に利用する意思のもとで、実際にそれを利用した場合でした。設例は、脅されて怖がっているVのところへBが途中から来て、一緒に現金を受け取る場面でしたね。前回の最後で、この規範を犯罪の種類ごとに当てはめると予告しました。今日はその続きです。まず2つ、問いを置きます。1つ目。仲間が既に相手を殴ってけがをさせていました。そこへ途中から加わって、一緒に殴った人は、そのけがまで背負うのでしょうか。

もう1つの問いとして、だます電話が済んだあと、荷物を受け取りに行っただけの人は、詐欺をした一人になるのでしょうか。どちらも「途中から加わった」という点は同じです。ですが、これから見る最高裁の答えは、逆になります。1つは否定され、もう1つは肯定されます。同じ規範を使っているのに、なぜ結論が分かれるのか。今日はこの理由を、1つの物差しで説明します。

物差しを1つ立てる——利用できるのは、状態か結果か

状態はまだそこにある。結果はもう固定されている 図:状態はまだそこにある。結果はもう固定されている

論文で書く規範:積極的利用の規範(前回の受け直し) 後行者が、先行者の行為及びこれによって生じた結果を、自己の犯罪遂行の手段として積極的に利用する意思のもと、現にこれを利用した場合には、承継的共同正犯が成立する。 (規範(限定的肯定説))

もう一度、前回の規範を確認します。ポイントは「現にこれを利用した」の部分です。利用するためには、利用する対象が、後行者が関与した時点でまだそこに残っていなければなりません。ここで、先行者が作り出すものを2種類に分けます。1つは、今も続いている状態です。だまされて財産を渡そうとしている状態、暴行によって抵抗できなくなっている状態、監禁されている状態。これらは、後行者が関与した時点でも、まだそこにあります。もう1つは、既に発生し終わった結果そのものです。相手が既に死亡した、既に傷を負わされた。これらは、後行者が関与した時点で、もう固定されています。後行者がこれから手を加えて、自分の犯罪の材料として使う余地がありません。

リレーで言えば、状態は、まだ手の中にあるバトンです。途中で受け取った走者も、それを使って最後まで走り切れます。結果は、前の走者が転んでできた骨折です。後から合流した人が、その骨折を自分の走りの材料に使うことはできません。今日はこの1本の問いを物差しにします。後行者が現に利用できるのは、今も続いている状態か、それとも既に終わった結果か。状態なら、承継肯定に傾く。終わった結果そのものなら、承継否定に傾く。これから見る全ての犯罪類型は、この物差しの上に乗ります。

詐欺(246条1項)——だまされている状態は、まだ続いている

詐欺は2段構え。交付の段階だけに関与しても 図:詐欺は2段構え。交付の段階だけに関与しても

条文刑法246条1項

刑法246条1項(詐欺) 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。

まず、詐欺です。詐欺罪は、人をだます場面と、それによって財物を渡させる場面という、条文上2つの段階に分かれています。設例で考えます。Aは、Vに電話をかけ、還付金があるという嘘を告げ、Vを誤信させました。Vが、誤信したまま現金を用意した段階で、Bが現れます。Bは、Aがどんな嘘をついたのか経緯を全部知ったうえで、Aと意思を通じ、誤信したままのVから現金を受け取りました。ここで、さっきの物差しを当てます。Bが関与した時点で、Vはまだ誤信したまま、現金を渡そうとしています。この「誤信して渡そうとしている状態」は、Bが関与した時点でも、まだ続いています。

Bは、Aが作り出したVの誤信状態を、自分の犯罪の道具として、現に利用しています。この場合、通常は積極的利用が認められ、Bは詐欺罪の承継的共同正犯として、詐欺既遂の責任を負います。しかも、詐欺罪はもともと交付という後半の行為がまだ構成要件上残っている段階での関与です。この点でも、Bは詐欺という1個の犯罪の、まだ終わっていない部分そのものに関与しています。

強盗(236条)——反抗を抑えた状態を、そのまま使う

抵抗できない状態は、後から来た人にも使える 図:抵抗できない状態は、後から来た人にも使える

条文刑法236条1項

刑法236条1項(強盗) 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期拘禁刑に処する。

次は強盗です。強盗罪は、それぞれ単独でも罪になる暴行・脅迫という行為と、財物を奪う行為とを、1つに結びつけた犯罪です。このように、独立して罪となる複数の行為を結びつけて1個の犯罪にしたものを、結合犯と呼びます。設例で考えます。Aは、Vに刃物を示して脅し、Vを恐怖で動けなくさせました。Vがまだ動けずにいる段階で、Bが加わり、Aの脅しの経緯を知ったうえで、一緒に金品を持ち去りました。ここでも同じ物差しを当てます。Bが関与した時点で、Vはまだ抵抗できない状態のままです。この抵抗できない状態は、Bが金品を持ち去るための道具として、そのまま使えます。多くの場合、積極的利用が認められ、Bは強盗罪の承継的共同正犯として責任を負います。前回見た恐喝も、脅されて怖がっている状態を利用する、まったく同じ構造でした。強盗は、それに財物の強取という行為が結びついた、いわば恐喝の親戚です。

強盗殺人・強盗傷害(240条)——奪ったのは、状態だけ

Bが利用したのは、抵抗できない状態。死亡結果には届かない 図:Bが利用したのは、抵抗できない状態。死亡結果には届かない

条文刑法240条

刑法240条(強盗致死傷) 強盗が、人を負傷させたときは無期又は六年以上の拘禁刑に処し、死亡させたときは死刑又は無期拘禁刑に処する。

ここで、条文を1つ整理します。240条は、財物奪取の意図で人を殺害・傷害した場合の強盗殺人罪・強盗傷害罪と、殺意までは無かったのに結果として死傷させてしまった場合の強盗致死罪・強盗致傷罪の、両方をこの一つの条文が引き受けている、というのが多数の理解です。名前だけ、押さえておいてください。では設例です。Aは、財物を奪う意図で、Vに暴行を加え、死亡させました。その後、Bが現れ、経緯を知ったうえで、財物の持ち去りにのみ関与しました。ここでも物差しを当てます。Bが関与した時点で、Vは既に死亡しています。

Bが利用できるのは、抵抗する者が既にいなくなっている状態、せいぜいそれだけです。Vの死亡という結果そのものは、Bが関与する前に既に固定されており、Bがこれから手を加えて利用する余地がありません。この点をめぐって、2つの立場があります。

結合犯だから承継する、という考え方と、そうでない考え方 図:結合犯だから承継する、という考え方と、そうでない考え方

1つ目は、承継を認める立場です。下級審には、これを認めた裁判例もあります。強盗殺人罪・強盗傷害罪も結合犯であることに変わりはない、という理由です。もう1つは、承継を認めない立場です。今日の結論はこちらです。理由は2つあります。1つ目、後行者が利用したのは、あくまで反抗抑圧状態、つまり抵抗できない状態にすぎず、死亡や傷害という結果そのものを利用したわけではありません。2つ目、強盗殺人罪・強盗傷害罪は法定刑がきわめて重く、これほど重い罪の承継を、安易に認めるべきではありません。結論として、Bには強盗殺人罪・強盗傷害罪の承継的共同正犯は成立せず、財物の持ち去りに関与した限度で、強盗罪の共同正犯が成立するにとどまります。

結果的加重犯と傷害罪(204条)——一個の暴行に途中で加わっただけでは

加わる前に既にできていた傷は、後行者から見ればもう固定されている 図:加わる前に既にできていた傷は、後行者から見ればもう固定されている

条文刑法204条

刑法204条(傷害) 人の身体を傷害した者は、十五年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。

さきほどの240条は、殺意の無い強盗致死傷罪の場合も、終わった結果は利用できないという同じ理由で、承継的共同正犯は否定されます。もう1つ、暴行の結果的加重犯としての傷害罪も見ておきます。傷害罪は、暴行の故意しかなくても、実際に傷害という結果が生じれば成立する、結果的加重犯の1つです。暴行の設例で考えます。Aは、Vに暴行を加えていました。その暴行だけで、既にVに傷害が生じていました。そこへ、Bが途中から加わり、Aと意思を通じて、一緒にVを殴りました。Bには、Aの暴行を手伝う以外の目的はありません。

Vの傷害は、Bが関与する前に既に発生し終わった結果です。Bから見れば、これはもう固定された過去の出来事であって、自分の犯罪の道具として使えるものではありません。強盗のときのように、まだ続いている状態を使い切っているわけでもありません。この点は、高等裁判所の裁判例が、次のような筋で整理しています。承継的共同正犯が認められる実質的な理由は、後行者が先行者の行為やその結果を、自分の犯罪をやり遂げる道具として積極的に利用したことにあります。強盗や殺人のように、一連の行為が特定の結果に向かって組み立てられている犯罪類型では、多くの場合これが認められ、全面肯定説と結論が変わりません。ここで認められると言っているのは、先行者が作った状態を使って犯罪をやり遂げる場面のことで、加わる前に既に生じた死亡や傷害という結果まで引き継ぐ、という意味ではありません。さきほどの強盗殺人の結論とは、ぶつかりません。しかし、一個の暴行に途中から加わっただけで、暴行以外の目的が無い場合には、他に特別な事情がない限り、積極的利用があったとは認められません。

結論として、Bには、加わる前にAが生じさせた傷害についての承継的共同正犯は成立しません。Bが責任を負うのは、自分が関与した後の暴行によって生じた分だけです。

傷害の発生時点が分からない場合——3つに割って判定する

いつできた傷か分からなくても、判定はできる 図:いつできた傷か分からなくても、判定はできる

もう1つ、難しい場面を見ます。Aの暴行の途中からBが加わり、一緒に殴りました。ところが、Vの傷害がいつ生じたのか、証拠上はっきりしません。関与する前のAの単独暴行によるものかもしれませんし、関与した後のAの単独暴行によるものかもしれませんし、関与した後のAとBの共同暴行によるものかもしれません。この場合、Bに傷害罪の共同正犯は成立するでしょうか。ここで、自分で考えてみてください。3つの場合に分けます。1つ目、関与した後にAとBが共同で暴行して生じさせた場合。2つ目、関与した後にAが単独で暴行して生じさせた場合。3つ目、関与する前にAが単独で暴行して生じさせた場合。それぞれで、Bに傷害罪が成立するかどうか、判定してみてください。

1つ目、関与後の共同暴行で生じた場合は、当然に共同正犯として成立します。2つ目、関与後のAの単独暴行で生じた場合は、Bは、その暴行そのものをAと共同しています。共同した暴行から傷害という重い結果が生じたので、Bにも傷害罪の共同正犯が成立しうる場面です。3つ目、関与前のAの単独暴行で生じた場合は、今見たとおり、承継が否定される以上、Bには成立しません。証拠上、どの場合に当たるか特定できない以上、3つ目の場合である可能性を排除できません。つまり、全ての場合でBに傷害罪の共同正犯が成立するとは言えません。刑事裁判では、成立すると証明しきれない犯罪で有罪にはできません。したがって、Bには傷害罪の共同正犯が成立しないという判定になります。

さらに、207条の適用が問題になる 図:さらに、207条の適用が問題になる

ただし、これで終わりではありません。前回、全面否定説への批判のところで条文を見た、207条、同時傷害の特例の適用が、ここでさらに問題になります。誰の暴行による傷害か分からない場合に、共犯として扱ってよいとする特例でした。この特例が、今の場面にどこまで及ぶのかは、別の回で扱います。今日は、承継的共同正犯としては成立しない、というところまでにしておきます。

継続犯・監禁(220条)——加わった後の部分は、それ自体で共同

監禁は継続犯。加わった後の部分は、それ自体で共同 図:監禁は継続犯。加わった後の部分は、それ自体で共同

条文刑法220条

刑法220条(逮捕及び監禁) 不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、三月以上七年以下の拘禁刑に処する。

最後にもう1つ、監禁罪です。以前見たとおり、監禁のように、実行行為とそれによる法益侵害の状態が続いている犯罪を、継続犯と呼びます。監禁の設例で考えます。Aは、Vを不法に監禁しました。Vがまだ監禁され続けている段階で、Bが加わり、経緯を知ったうえで、監禁の継続に加担しました。この場合、物差しで言えば、残っているのは状態どころではありません。監禁という実行行為そのものが、まだ続いています。監禁が続いている以上、Bが関与した後の部分については、Bにもそれ自体で、共同正犯の2つの要件である、共同実行の意思と共同実行の事実が認められます。だから、他の犯罪のように「利用したかどうか」を持ち出すまでもなく、当然に共同正犯となります。仮に、Bが関与する前に、既に重い結果、たとえばVがけがをするような出来事が起きていたとすれば、そこはさっき見た傷害罪と同じ処理になります。

中間まとめ——同じ物差しから、逆の答えが出た

同じ物差しから、逆の答えが出ている 図:同じ物差しから、逆の答えが出ている

ここまでを整理します。詐欺、強盗、監禁は、後行者が関与した時点でも、利用できるものがまだ残っていたので、肯定に傾きました。強盗殺人・強盗傷害と、暴行から生じた傷害は、後行者が利用しようとしたものが、既に固定された結果だったので、否定に傾きました。ここからは、この同じ物差しを、実際の最高裁決定に当ててみます。

最高裁決定①(傷害)——加わる前のけがには、届かない

加わる前に既に生じていたけがには、被告人の共謀は届かない 図:加わる前に既に生じていたけがには、被告人の共謀は届かない

判例最高裁決定 平成24年11月6日

最決(傷害の承継) 先行者らが被害者に暴行を加えて傷害を負わせた後、被告人が現場で先行者らと共謀のうえ、先行者らと一緒に、共謀以前より強い暴行を加えたところ、既に生じていた傷害の一部が相当程度重篤化した、という事案。

ここで、実際の最高裁の決定を見ます。事案はこうです。先行者らが被害者に暴行を加え、既に傷害を負わせていました。そこへ被告人が現場に加わり、先行者らと共謀のうえ、共謀する前よりも強い暴行を一緒に加えました。その結果、既に生じていた傷害の一部が、相当程度重篤化しました。原審は、前回の限定的肯定説と同じ考え方で、被告人が先行者らの暴行と、それによって生じた結果を、自分の暴行の手段として積極的に利用したと認め、共謀に加わる前の傷害も含めた全体について、被告人が承継的共同正犯としての責任を負うと判断しました。

ところが、最高裁の判断は違いました。判断は2つあります。1つ目は、加わる前の傷害に責任を負うか。2つ目は、原審が重く見た、利用する事情をどう見るか、です。まず1つ目。共謀に加わる前に、先行者らが既に生じさせていた傷害の結果については、被告人の共謀やそれに基づく行為が、その結果と因果関係を持つことはない。だから、被告人はその部分の傷害罪の共同正犯としての責任を負わない、としたのです。責任を負うのは、共謀に加わった後の暴行によって、傷害の発生に寄与した部分についてだけです。2つ目です。原審は、被告人に、既に生じていた傷害を制裁の目的で利用する事情があったと見ていましたが、最高裁は、その事情があったとしても、それは共謀に加わった後にさらに暴行を加えた動機やきっかけにすぎず、加わる前の傷害について責任を問う理由にはならない、としました。

利用する事情があっても足りない理由を、今日の物差しに置き換えると、加わる前に生じていたけがは、被告人から見て既に固定された結果であり、そこに被告人の行為が因果関係を持つことはない。だから承継が否定される、という筋です。なお、この決定が、限定的肯定説という学説の立場そのものを採ったとまでは明言していません。無限定の全面肯定説を採っていないことは明らかです。答案では、限定的肯定説に立って書けば足りる、という評価にとどめておきます。

最高裁決定②(詐欺の受け子)——受け取りは、まだ終わっていない計画の続き

電話は済んでいた。だが受け取りは、詐欺を完遂するために予定されていた部分 図:電話は済んでいた。だが受け取りは、詐欺を完遂するために予定されていた部分

傷害の承継は、否定されました。では、冒頭の2つ目の問い、だます電話が済んだあとに荷物を受け取りに行っただけの人は、詐欺の一人になるでしょうか。

判例最高裁決定 平成29年12月11日

最決(詐欺の受け子) 欺く行為がされた後、被害者側が嘘に気づき、警察と協力して欺かれたふりを続けていた段階で、被告人がそれを知らずに共謀のうえ、現金の入っていない荷物の受け取りに加わった、という事案。

事案はこうです。仲間が、特別な抽選の当選金を受け取れると思い込んでいたVに、その抽選に参加するには違約金を払う必要がある、という嘘をつき、現金を送らせようとしました。ところが、Vの側は嘘だと気づき、警察と協力して、欺かれたふりを続けることにしました。この段階で、被告人が、そうした事情を知らないまま、共謀のうえ、荷物の受け取りに加わりました。届いた荷物に、現金は入っていませんでした。だまされている状態は、実はもう無くなっています。それでも最高裁は、加わる前の欺く行為も含めた詐欺全体について、被告人に詐欺未遂罪の共同正犯が成立するとしました。理由は、荷物の受け取りという行為が、詐欺を完遂するうえで、欺く行為と一体のものとして、もともと予定されていたことにあります。

この決定は、「積極的に利用した」という言葉は使っていません。使っているのは、受け取りが欺く行為と一体として予定されていたか、そして共謀のうえそれに関与したか、という理由です。Vはだまされて現金を渡したわけではないので、詐欺は完成しておらず、既遂ではなく未遂です。それでも、加わる前の欺く行為を含めた詐欺全体について、被告人は共同正犯になる。ここが、傷害の場合との決定的な違いです。傷害は、もう終わった結果だから利用できませんでした。これに対して詐欺は、欺く行為と受け取る行為が、もともと1つの計画としてつながっている、まだ終わっていない犯罪です。受け取りに関与した時点で、Bはその計画の、まだ残っていた後半部分そのものを担っています。だから、加わる前の欺く行為の分も含めて、詐欺全体の共同正犯になります。今日の物差しに戻すと、ここで残っていたのは、だまされている状態ではなく、詐欺という犯罪のまだ終わっていない後半部分でした。状態でも、続いている実行行為でも、まだ終わっていない犯罪の残りでも、残っているものは利用できる側。終わった結果は利用できない側。物差しの2つの側は、変わりません。ただし、これは学説から見た評価であって、決定自身がそう述べているわけではありません。

罪名の結論表——同じ問いから、5つの答えが出る

5つの類型を、1枚の表で並べる 図:5つの類型を、1枚の表で並べる

ここで、今日見た全ての類型を、1枚の表にまとめます。詐欺は、欺く行為と一体として予定された受け取り、つまりまだ終わっていない計画の残りを利用し、詐欺罪の共同正犯、だまされたふり作戦の事案では詐欺未遂罪の共同正犯になります。強盗は、反抗抑圧状態、つまり抵抗できない状態を利用し、強盗罪の共同正犯になります。強盗殺人・強盗傷害は、反抗抑圧状態しか利用できず、強盗罪の共同正犯にとどまります。傷害は、関与前の分については利用できる状態が残っておらず、関与後の暴行による寄与分だけが傷害罪の共同正犯になり、さらに207条の適用が問題になります。監禁は、継続する実行行為そのものを共同し、監禁罪の共同正犯になります。

今日の地図(保存版)

今日の到達点 図:今日の到達点

今日を振り返ります。全ての類型に共通する物差しは、後行者が現に利用できるのは、今も続いているものか、それとも既に終わった結果かという1点でした。続いているものは、状態のこともあれば、監禁のような実行行為や、詐欺の受け取りのような犯罪の残りのこともあります。それが残っていれば肯定に傾き、結果そのものはもう利用しようがないので否定に傾きます。2つの最高裁決定も、この物差しの上に乗ります。傷害についての決定は、加わる前に既に生じていた傷害には、被告人の行為が因果関係を持ちようがないとして、承継を否定しました。詐欺の受け子についての決定は、受け取りが欺く行為と一体として予定された、まだ終わっていない計画の残りの部分だとして、詐欺未遂罪の共同正犯を認めました。

なお、強盗殺人罪・強盗傷害罪の承継を認めるかどうかの対立は、論文で論点になりうる場面です。

参照条文

  • 刑法246条1項
  • 刑法236条1項
  • 刑法240条
  • 刑法204条
  • 刑法220条

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