刑事訴訟法 ゼロから刑事訴訟法#1

刑事訴訟法とは何か

刑事訴訟法とは犯罪を捜査し裁き刑罰を科すまでの手続を定めた法。実体法(刑法)との役割分担、1条のアクセル(真実発見)とブレーキ(人権保障)、捜査から執行までの全体像を整理する。

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第1章 刑事訴訟法の基礎 ①/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

1. 刑事訴訟法とは(実体法 vs 手続法)

  • 刑事訴訟法=犯罪を捜査し・裁判し・刑罰を科すまでの「流れ(手続)」を定めた法
  • 役割分担:
    • 刑法=実体法:何が犯罪で、どんな刑罰か(“中身”)。例)刑法199条「人を殺した者は、死刑又は…拘禁刑に処する」。
    • 刑訴=手続法:その犯罪をどう捜査し、どう裁くか(“流れ”)。例)逮捕→取調べ→起訴→公判→判決。
  • ポイント:刑法上は犯罪が成立しても、刑訴の定める適正な手続を経なければ国家は処罰できない

2. 2つの目的=アクセルとブレーキ(刑訴1条)

  • 実体的真実主義(真実発見)=アクセル:真相を解明し真犯人を逃さない。
  • 人権保障(適正手続)=ブレーキ:無実の人を罰せず、捜査で無理をしない。
  • 両者は対立しうる → 刑訴1条はこの調和を目指すと宣言
  • 【条文】刑事訴訟法1条

    この法律は、刑事事件につき、公共の福祉の維持個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正且つ迅速に適用実現することを目的とする。

  • 適正手続の憲法的根拠:
  • 【条文】憲法31条

    何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

    • 文言は「手続の法定」だが、通説・判例は手続の適正・実体の法定(罪刑法定主義)・実体の適正まで含むと読む(適正手続=デュープロセス条項)。

3. 刑事の「真実」は本物でなければ(刑事 vs 民事)

観点刑事訴訟民事訴訟
目指す真実実体的真実主義(本当の真実)形式的真実主義(当事者が認めた真実)
自白の扱い嘘の自白でも、証拠で確信がなければ有罪にできない認めればそれを前提に進む(弁論主義)
なぜ国家が人を罰する強力な作用だから個人間の紛争解決が目的だから

4. 無罪推定・証拠裁判主義

  • 無罪推定:有罪確定まで「罪を犯していない人」として扱う。
  • 「疑わしきは被告人の利益に」:合理的な疑いが残れば被告人に有利に=確信に至らなければ無罪。
  • 挙証責任は検察官が負う(合理的な疑いを超える証明が必要)。
  • ※ 無罪推定の直接の憲法明文はない。憲法31条(適正手続)+自由権規約(ICCPR)14条2項に支えられる。
  • 【条文】刑事訴訟法317条(証拠裁判主義)

    事実の認定は、証拠による

5. 手続の全体像(シリーズの地図)

  • ①捜査 →②公訴提起(起訴)→③公判 →④判決・上訴・確定 →⑤執行
    • 捜査=身柄確保・証拠収集(警察・検察)。任意捜査が原則、強制処分は法律の定めと令状が必要。
    • 公訴提起=検察官が裁判にかける。
    • 公判=法廷の審理(有罪無罪・量刑)。
  • 呼び分け:起訴を境に、被疑者(起訴前)→ 被告人(起訴後)。報道の「容疑者」が被疑者、「被告」が被告人にほぼ対応。刑事の「被告人」は民事の「被告」とは別概念。
  • 〔参考・数値〕逮捕後の身柄手続:警察→検察送致 48時間(203)/検察→勾留請求 24時間かつ逮捕から通算 72時間(205)/勾留 原則 10日+延長通算 10日(208)。※本編では深入りせず全体像に留める。

※ 弾劾主義・当事者主義・国家訴追主義(247条)は #2「審理の構造+訴訟の主体」 で扱う(#1は手続の全体像=地図で締める)。

短答ひっかけ

  • 「本当の真実」を要求するのは → 刑事(実体的真実主義)。自白だけでは有罪にできない。
  • 起訴の前後で呼び名 → 前=被疑者/後=被告人(起訴が境)。
  • 事実の認定は → 証拠による(証拠裁判主義・317条)。挙証責任は検察官。

📝 論文の型

  • 該当なし(導入回。具体的に暗記すべき規範は次回以降の各論で扱う)。

→ 次回:第1章② 審理の構造(糾問/弾劾・当事者主義・国家訴追247)+訴訟の主体(裁判所・検察官・被疑者/被告人・弁護人)。

参照条文

  • 刑事訴訟法1条
  • 憲法31条
  • 刑事訴訟法317条(証拠裁判主義)

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