接見交通権(39条・接見指定)
接見交通権(39条1項)を扱う回。憲法34条に由来する自由な秘密交通を原則に、例外の接見指定(39条3項)は調整にとどまり禁止はできないこと、初回接見の特則までを押さえる。
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第2章 捜査 ⑩/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
1. 接見とは何か——憲法34条と39条1項 〔短答・論文共通〕
逮捕された人がすぐ弁護人に相談できる権利の出発点は憲法です。
【条文】憲法34条(弁護人依頼権・抑留勾禁の要件) 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。
憲法34条前段が「直ちに弁護人に依頼する権利」を保障しています。この依頼権を実質的な意味で保障するために、刑事訴訟法39条1項があります。
図:接見交通権の出発点——憲法34条前段と刑訴39条1項の関係
【条文】刑事訴訟法39条1項(接見交通権) 身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁護士でない者にあっては、第三十一条第二項の許可があった後に限る。)と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる。
ポイントは2つです。第一に、「立会人なくして」会えること。第二に、「書類若しくは物の授受」もできること。立会人に聞かれることなく、二人きりで話せる。書面でやり取りして防御を組み立てることもできます。判例もこの権利を憲法34条に由来するものと位置づけており、簡単には制限できません。
2. 原則は自由——なぜ「立会人なし」なのか 〔短答・論文共通〕
図:接見の大原則——自由な秘密交通権の内容
一般の面会には立会いがありますが、弁護人との接見は別扱いです。横で捜査機関の職員が聞いている状況では、率直に相談することができません。秘密に話せて初めて、防御の作戦が立てられます。
弁護人に話した防御方針が捜査側に筒抜けでは、弁護人がいる意味をなしません。これを秘密交通と呼びます。接見の大原則は「自由な秘密交通」です。
3. 例外=接見指定——でも「禁止」ではない 〔短答・論文共通〕
捜査機関にも都合があります。取調べの核心的な場面に弁護人が来た場合などに、例外として接見指定という制度があります。
図:接見指定——「調整」であって「禁止」ではない
【条文】刑事訴訟法39条3項(接見指定) 検察官、検察事務官又は司法警察職員(以下「捜査機関」という。)は、捜査のため必要があるときは、公訴の提起前に限り、第一項の接見又は授受に関し、その日時、場所及び時間を指定することができる。但し、その指定は、被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限するようなものであってはならない。
指定でできるのは「いつ・どこで・どれくらいの時間」の調整だけです。接見そのものを禁止することはできません。但書に歯止めがあり、指定は「防禦の準備をする権利を不当に制限」してはならないとされています。
混同しやすいので整理します。
図:接見指定(弁護人・捜査機関・調整)vs 接見禁止(家族等・裁判所・遮断)の比較
- 接見指定:対象は弁護人。行うのは捜査機関。日時・場所・時間の調整のみ。
- 接見禁止:対象は家族など弁護人以外。行うのは裁判所(81条)。完全な遮断。
弁護人との接見は憲法34条に由来するため、禁止はできません。
4. 「捜査のため必要があるとき」の限定解釈 〔論文〕
では指定できる「捜査のため必要があるとき」とはいつか。広く解すると原則の自由が骨抜きになります。判例はこの要件を厳格に限定解釈しました。
図:指定要件の限定解釈——2類型と「顕著な支障」の要件
【判例】最大判平成11年3月24日(接見国賠事件) 「捜査のため必要があるとき」とは、①現に被疑者を取調べ中であるか、または実況見分等に立ち会わせ中である場合、もしくは②間近い時に取調べ等をする確実な予定があり、接見を認めると捜査に顕著な支障が生じる場合に限られる。
指定できるのはこの2類型だけです。漠然とした予定では要件を満たしません。そして指定する場合でも、別の日時を指定して接見の機会自体は必ず与えなければなりません。「指定は調整、拒否は不可」がこの論点の結論です。
要件が厳格なのは、接見交通権が憲法34条に由来する重要な権利であるため、それを制限する要件は狭く読むべきだからです。
5. 初回接見の特則 〔論文〕
逮捕直後の最初の接見(初回接見)は特別扱いされます。黙秘権の助言、弁護人の選任、不当な拘束からの解放——最初の相談の機会がその後の防御の行方を左右します。
図:初回接見——捜査機関に課される協議・検討義務と即時近接義務
【判例】最判平成12年6月13日(第二次内田国賠事件) 初回接見においては、捜査機関は弁護人と協議し、会わせられる時間を真剣に検討する義務を負う。そして、可能な限り即時または近接した時点での接見を認める措置を採るべきである。協議も調整もせず漫然と後回しにすることは違法となる。
取調べ中であっても、一旦中断して短時間でも会わせることが初回接見では特に強く求められます。
図:平成11年大法廷判決——指定要件(現に取調べ中/間近い確実な予定+顕著な支障)
6. 全体の地図 〔短答・論文共通〕
図:接見交通権の全体像——憲法34条→原則自由→例外指定→限定解釈→初回特則の流れ
短答ひっかけ
- 指定は起訴前だけ:39条3項の接見指定ができるのは「公訴の提起前に限り」。起訴後は捜査の必要が乏しく、被告人には指定できない。忘れやすいので注意。
- 指定≠禁止:接見指定は日時等の「調整」、接見禁止(81条)は「遮断」。対象も、行う主体も異なる別制度。
- 指定しても機会は消えない:指定する場合でも、接見の機会自体は確保しなければならない。「今日は会わせない」は不可。
- 初回接見に漫然と後回しは違法:協議・検討義務を果たさず翌日以降に指定するだけでは違法となる。
図:短答で狙われる3つのポイント——起訴前限定・指定≠禁止・機会の確保
📝 論文の型
図:コア規範——「捜査のため必要があるとき」の限定解釈(逐語で覚えるのはここだけ)
図:答案の型——性質→原則→限定解釈→あてはめ(初回接見なら協議・検討義務を追加)
【コア規範】(逐語で覚えるのはここだけ・約110字) 「捜査のため必要があるとき」(39条3項)とは、接見交通権の重要性に鑑み厳格に解し、①現に取調べ中等の場合、または②間近い時に取調べ等をする確実な予定があり、接見を認めると捜査に顕著な支障が生じる場合に限る(最大判平11・3・24)。
【復元キー】(趣旨から答案を再構成する)
- 性質=憲法34条前段の弁護人依頼権に由来する重要な権利
- 原則=立会人なくして自由に接見(自由な秘密交通権)
- だから 39条3項の指定要件は厳格に解釈(↑の帰結)
- 限定2類型=取調べ中/確実な予定+顕著な支障
- 初回接見=弁護人と協議し即時・近接した時点の接見措置(最判平12・6・13)
【フル論証】(参照用・暗記対象ではない) 接見交通権(39条1項)は、憲法34条前段の弁護人依頼権に由来する重要な権利であり、被疑者・被告人が弁護人と立会人なくして自由に接見できること(自由な秘密交通権)を保障する。もっとも捜査機関は「捜査のため必要があるとき」に接見の日時等を指定できる(39条3項)が、接見交通権の重要性に鑑み、この要件は厳格に解釈すべきである。すなわち「捜査のため必要があるとき」とは、現に被疑者を取調べ中・実況見分等に立ち会わせ中である場合、または間近い時に取調べ等をする確実な予定があり、接見を認めると捜査に顕著な支障が生じる場合に限られる(最大判平11・3・24)。また指定をする場合でも、接見そのものは拒否できず、被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限してはならない(39条3項但書)。特に逮捕直後の初回接見は弁護人依頼権の出発点として特に重要であるから、捜査機関は弁護人と協議し、即時又は近接した時点での接見を認める措置を採るべきである(最判平12・6・13)。
【事例と答案】
弁護士Bが、窃盗の疑いで逮捕された直後の被疑者Aに初めて接見を申し出た。これに対し警察官Kは、Aを取調べ中であることを理由に、弁護人と協議することなく、接見を翌日に指定した。Kの措置は適法か。
問題提起:接見指定(39条3項)の要件、特に初回接見における「防禦の準備をする権利を不当に制限しない」(同項但書)との関係が問題となる。
あてはめ:接見指定の要件たる「捜査のため必要があるとき」は厳格に解されるところ、本件で取調べは実施中であり①の類型に該当する。もっとも初回接見は弁護人依頼権の出発点であって特に重要であるから、捜査機関は弁護人と協議し、即時又は近接した時点での接見を認める措置を採るべきである。KはBと協議することなく漫然と翌日に指定しており、取調べを一旦中断して短時間でも接見させる余地を検討していない。これは防禦の準備をする権利を不当に制限するものであり、Kの措置は違法である。
今日の地図(保存版)
図:今回の全体まとめ——接見交通権の骨格と論文の型
- 接見交通権(39条1項)は憲法34条前段の弁護人依頼権に由来する重要な権利。
- 原則は「立会人なくして自由に接見」=自由な秘密交通。
- 例外の接見指定(39条3項)は日時等の調整であって禁止ではない。
- 指定要件「捜査のため必要があるとき」は厳格解釈:①現に取調べ等実施中、または②間近い確実な予定+捜査に顕著な支障、の場合のみ(最大判平11・3・24)。
- 指定する場合でも接見の機会自体は確保必須(拒否不可)。
- 初回接見は特に重要:協議・検討義務+即時または近接した時点での接見措置(最判平12・6・13)。
- 指定は起訴前限定(公訴提起後の被告人には不可)。接見指定と接見禁止(81条)は別制度。
次回は #16「GPS捜査(新類型①・最大判平29・3・15)」。位置情報という「線・面」の把握が既存の令状では賄えない新類型の強制処分として論じられます。
参照条文
- 憲法34条(弁護人依頼権・抑留勾禁の要件)
- 刑事訴訟法39条1項(接見交通権)
- 刑事訴訟法39条3項(接見指定)