刑事訴訟法ゼロから刑事訴訟法#28

逮捕前置主義

刑事訴訟法の復習ノートを1ページで通して読む(この回から)→

問い:なぜ勾留の前に必ず逮捕が要るのか。その逮捕が違法だったとき、勾留はどうなるか。

骨組み

  1. 1逮捕前置主義():「前三条の規定による勾留の請求」=〜(逮捕に続く検察官の勾留請求)。だから逮捕せずにいきなり勾留はできない
  2. 2趣旨(学説):捜査の初めは嫌疑も拘束の必要も浮動的 → まず短い逮捕の間に捜査を尽くさせ、なお必要なときだけ長い勾留へ=被疑者の人身の保護。二度審査説・引致手段説は批判がある
  3. 3被疑事実で見る:逮捕と勾留の被疑事実は同一が原則。A事実で逮捕 → B事実だけで勾留は不可/A+B(逮捕していない事実を併せる)での勾留は可(A事実だけで適法に勾留できるのが前提)
  4. 4別個の手続:かつて=逮捕前置は適法な逮捕が前提 → 違法なら当然に勾留も違法。いま=捜査を尽くす要請は違法な逮捕でも一応充たされている → 直ちには勾留に影響しない
  5. 5逮捕には準抗告が無い(最決昭57・8・27):に逮捕が無い。逮捕の違法は勾留の段階で審査(勾留請求を受けた裁判官/勾留の裁判への準抗告)
  6. 6それでも響く3つの理由(学説):①準抗告が無いのは勾留段階での審査が前提 ②重大な違法なら釈放すべき=逮捕を継続する処分としての勾留も許されない ③将来の違法逮捕の抑止
  7. 7重大な違法だけが勾留に響く:令状主義の精神に反するような重大な違法がある場合に限って勾留請求を却下する、と考えるのが一般(判例として示された基準ではなく、一般的な考え方)。逮捕状のささいな誤記などは却下しない
  8. 8原則として重大な4つ:①任意同行と称した実質逮捕 ②要件を欠く現行犯逮捕 ③要件を欠く緊急逮捕 ④その他根本的な瑕疵(例:再逮捕の逮捕状請求書に必要な記載が無く、逮捕状が無効=逮捕の前置を欠く。令状を経ない型とは限らない)。一律の基準は示しにくい
  9. 9東京高判昭54・8・14:覆面パトカーに乗せてからが実質逮捕=違法。だが緊急逮捕の理由と必要性はあった+約3時間後に通常逮捕+実質逮捕の時点から数えても制限時間内 → 勾留を違法にするほど重大ではない
  10. 10却下された例:富山地決昭54・7・26(約5時間の令状なし拘束=時間を守っても治らない)・京都地決昭44・11・5(緊急逮捕の要件はあったのに緊急逮捕状を求めず拘束を続けた)
  11. 11裁判例の大勢と学説の有力説:大勢=東京高判型なら重大でない(実務は形式的な過誤と見る)。有力説=要件がそろっていても令状主義違反で重大 → 却下

色の札は出どころ:条文 判例 学説。条文番号は押すと条文、丸い札(出題)は押すと過去問の肢と正答が出ます。短答は「判例の立場」を問うので、判例と学説を混ぜない。最高裁の判断を判例、高裁・地裁の判断を裁判例と呼び分ける(この回では、札の色はどちらも「判例」)。

検察官の勾留請求逮捕が先行しているか207条1項「前三条の規定による勾留の請求」(項目1)勾留できないいきなり勾留は不可いいえはい逮捕手続に違法があるか勾留の段階で審査する(項目5)勾留の要件の判断へいいえはい重大な違法か令状主義の精神に反するような重大な違法(項目7〜9)勾留請求を却下はいいいえ(軽微な違法)勾留の要件の判断へ違法があったというだけでは却下しない
勾留請求を受けた裁判官が見る順(項目1・5・7)。2段目・3段目は条文ではなく、一般的な考え方(学説)の整理。逮捕が違法でも、重大な違法でなければ勾留は止まらない。

1逮捕前置主義(「前三条」)条文

  • :前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。但し、保釈については、この限りでない。
  • 「前三条」は・・。どれも、逮捕された被疑者について検察官が勾留を請求するときの時間の制限と、遅れた場合の扱い。
  • だから、が前提にしているのは逮捕に続く勾留請求だけ=勾留の前に必ず逮捕を置く。これを逮捕前置主義という。逮捕せずに、いきなり被疑者を勾留することは許されない。
条文中身前三条か
司法警察員が、拘束から48時間以内に検察官へ送致する入らない
検察官が自ら逮捕した・逮捕された被疑者を受け取った(送致された者を除く)→ 拘束から48時間以内に勾留を請求入る
・送致を受けた検察官 → 受け取ってから24時間以内、かつ拘束から72時間以内に勾留を請求入る
やむを得ない事情で時間の制限に従えなかったときの勾留請求入る

警察が任意で事情を聴いていただけの人について、検察官が逮捕しないまま「10日間勾留したい」と請求した → 「前三条の規定による勾留の請求」に当たらず、勾留できない。先に逮捕が要る。

×にされやすい形
  • 「前三条」=〜(警察の送致の48時間は入らない。入るのは〜)
  • 「逮捕していない被疑者でも、検察官は勾留を請求できる」

2なぜ勾留の前に逮捕を置くのか(趣旨)学説

  • 捜査の初めは、犯罪の嫌疑も、拘束しておく必要も、まだ浮動的(定まっていない)。
  • そこで、まず短い逮捕を先にさせ、その間に捜査を尽くさせ、それでもなお長い拘束が必要なときに限って勾留へ進ませる。慎重な手続で被疑者の人身の保護を図る。
  • 解説書はこの説明をとり、ほかの2つの見解を、批判のあるものとして紹介する。
見解中身批判
捜査を尽くさせる短い逮捕の間に捜査を尽くし、なお必要なときだけ勾留—(解説書がとる説明)
二度審査説逮捕時と勾留時の2度、裁判官の審査を通して慎重を期す①現行犯逮捕には2度の審査が無い ②逮捕と勾留の期間の長短を説明できない
引致手段説逮捕は、勾留の審査のため裁判官のもとへ連れて行く手段=逮捕の間は捜査せず速やかに引致すべきそう定めた規定は無く、逮捕の間の捜査は当然予定されている

万引きをその場で店員が取り押さえて警察に引き渡し、検察官が勾留を請求した → この人が裁判官の審査を受けるのは勾留の1回だけ。「2度審査するため」という説明は当てはまらない。

3逮捕前置は被疑事実で見る学説

  • 趣旨(短い逮捕の間に捜査を尽くさせる)から、逮捕の被疑事実と勾留の被疑事実は同一が原則。
  • A事実で逮捕した被疑者を、B事実だけで勾留することは許されない。
  • B事実で勾留したいなら、被疑者を一旦釈放し、改めてB事実で逮捕してから勾留請求する。
  • A事実で逮捕した被疑者を、A事実+B事実で勾留することは許される(逮捕した事実に、逮捕していない事実を併せて勾留請求できる)。前提は、A事実について逮捕が先行し、A事実で適法に勾留できること。
  • 理由:A事実で適法に勾留できる以上、B事実を加えても被疑者に不利益は無い。逆にB事実でも改めて逮捕させると、かえって身体拘束の期間が長くなり被疑者に不利益になる。

窃盗で逮捕 → その後の捜査で、窃盗と同一性を欠く別の暴行の事実も判明 → 窃盗で適法に勾留できるなら、検察官は「窃盗+暴行」で勾留を請求できる。一方、暴行の事実だけで勾留することはできない(暴行で勾留したいなら、一旦釈放して暴行で逮捕し直す)。

出題見解「勾留の被疑事実は逮捕の被疑事実と同一でなければならない」からは、別に判明した別の強盗の事実のみで勾留請求はできない(○)

出題逮捕した事実に、逮捕していない事実を併せて勾留請求できる・両方に勾留状を出せる(○)

×にされやすい形
  • 「逮捕していない事実を併せて勾留を請求するには、その事実でも改めて逮捕しなければならない」

4逮捕と勾留は別個の手続学説

  • 逮捕と勾留は、法律上それぞれ別個の手続。逮捕が違法なら、勾留はどうなるか。
  • かつての考え方:逮捕前置主義()は適法な逮捕を前提にしている → 違法な逮捕は当然に勾留に影響する。
  • いまの考え方:趣旨を「逮捕の間に捜査を尽くさせて、長期間の勾留をできる限り避けること」と見るなら、逮捕が違法でも、逮捕の間に捜査を尽くすという要請は一応充たされている → 逮捕が違法でも、直ちに勾留に影響するとはいえない。
  • ただし、影響しないわけではない(項目5〜7)。覚える順は「自動的にはつながらない」が先。
×にされやすい形
  • 「逮捕に違法があれば、それだけで勾留も違法になる」
  • 「違法な逮捕のあとでは、捜査が進んでいたかどうかで勾留への影響が決まる」(捜査がどれだけ進んだかは問わない。捜査を尽くすという要請が一応充たされている、という評価)

5逮捕には準抗告が無い → 勾留の段階で審査判例条文

  • 準抗告=裁判官がした勾留などの裁判に不服がある者が、その取消し・変更を求める手続()。
  • 逮捕状の発付など逮捕に関する裁判は、準抗告の対象にならない(最決昭57・8・27)。2号が挙げるのは「勾留、保釈、押収…に関する裁判」で、逮捕が無い。
  • だから逮捕の違法は、勾留の段階で審査される。①勾留の請求を受けた裁判官が、勾留の要件とあわせて先行する逮捕手続を見る。②勾留状が出た後、勾留の裁判に対する準抗告でも逮捕の違法が審査される。違法が重大であれば、準抗告で勾留の裁判が取り消され、勾留請求も違法だったとして却下されることがありうる。
  • 逮捕と違い、勾留には不服申立て(準抗告)がある。
何を争うか準抗告
逮捕状の発付(任意同行の違法などを理由に)できない(現行法上、不服申立ては許されない)
勾留状の発付(先行する逮捕の違法を理由に)できる

出題任意同行の違法を理由に逮捕状発付の取消しは求められず、先行する逮捕の違法を理由に勾留状発付には準抗告できる(○)

出題逮捕状を発付した裁判に対して準抗告をすることができる(×)

出題逮捕と勾留のどちらも、刑訴法上、不服申立ての手段がない(×)

×にされやすい形
  • 「被疑者又は弁護人は、逮捕状を発付した裁判に対して準抗告をすることができる」
  • 「逮捕状による逮捕も起訴前の勾留も、刑事訴訟法上、不服申立ての手段がない」
  • 「逮捕の違法は、勾留の段階でも争えない」

6それでも逮捕の違法が勾留に響く3つの理由学説

  • 別個の手続なのに、なぜ響くのか。いまの学説の説明は3つ。
理由中身
①争う場逮捕の違法を争う準抗告が認められていないのは、逮捕の違法を勾留の段階で審査することが前提だから(項目5)
②拘束の続き逮捕に重大な違法があれば被疑者は釈放されなければならない → 逮捕を継続する処分としての勾留も許されない
③抑止違法な逮捕による勾留請求を認めないことで、将来の違法逮捕を抑止する(政策的な理由)

理由②:本来ならその夜のうちに釈放されていたはずの人を、そのまま10日間勾留すれば、許されない拘束をさらに延ばすことになる。

7重大な違法だけが勾留に響く学説

  • どの理由の説明をとっても、軽微な違法まで勾留請求を一切認めないのは、捜査の必要性から見て適切でない。
  • そこで、令状主義の精神に反するような重大な違法が先行する逮捕にある場合に限って、勾留請求を却下するべきだ、と考えるのが一般。判例として示された基準ではなく、一般的な考え方。
  • 軽微な違法の例:逮捕状の記載のささいな誤記 → 却下の理由にならない。
  • 令状主義:逮捕は原則として、裁判官が理由を確かめて出す令状によらなければならない。現行犯逮捕は令状が要らない。緊急逮捕は先に逮捕し、直ちに逮捕状を求める()。

逮捕状に基づく逮捕で、時間の制限内に勾留請求されたが、逮捕状の記載にささいな誤記があった → 違法は軽微=勾留請求は却下されない。

×にされやすい形
  • 「逮捕に違法があれば、勾留請求は却下される」(重大な違法に限る)
  • 「判例は、令状主義の精神に反するような重大な違法がある場合に限り勾留請求を却下するとした」(判例として示された基準ではなく、一般的な考え方)

8原則として重大な違法とされる4つ学説

  • 前置き:どこからが重大な違法かは裁判例も分かれていて、一律の基準で示すことは困難とされる。
  • そのうえで、次の4つは原則として重大な違法と考えられている(例外は項目9・11)。
類型何が起きているか型
①任意同行と称した実質逮捕任意同行と言いながら、実質的には令状なしで逮捕していた令状なしの拘束
②要件を欠く現行犯逮捕現行犯逮捕の要件が無いのに現行犯逮捕した令状なしの拘束
③要件を欠く緊急逮捕緊急逮捕の要件が無いのに緊急逮捕した事後に逮捕状の審査はある()が、要件を欠く拘束
④その他の根本的な瑕疵逮捕手続に、根本的な瑕疵がある場合の受け皿。例=仙台地決昭49・5・16:再逮捕の逮捕状請求書に、と刑訴規則の対応する規定に基づく記載(前に逮捕状の請求・発付があったことの記載)が無かった → 逮捕状も違法無効 → 逮捕の前置を欠く → 勾留も違法無効として、勾留が取り消された令状は形のうえでは出ていた=令状を経ない型とは限らない
×にされやすい形
  • 「4つの類型は、どれも裁判官の審査を通らないまま人を拘束した場合である」(④はそれに限らない)
  • 「任意同行と称した実質逮捕があれば、必ず勾留請求は却下される」(原則として重大。例外がある)

9実質逮捕はあったが重大ではないとされた例(東京高判昭54・8・14)判例

東京高判昭54・8・14をモデルにした事案(解説書の設例)の経過

  1. 買い物袋の窃盗。犯人は盗難車で逃走。検問で手配の車を見つけて停止を合図
  2. 合図を無視して走り去り、車を捨てて山林へ逃げ込む
  3. 発見後、駅の待合室へ任意同行し、そこで職務質問を始める
  4. 駐在所へ同行し、約2時間事情を聴く(ここまで=適法な任意同行)
  5. 深夜、覆面パトカーの後部座席中央に乗せ、警察官2人が両側から挟んで警察署へ(本人は「どこにでも行ってよい」と述べていた)→ ここから実質逮捕
  6. その約3時間後、逮捕状による通常逮捕
  7. 検察官へ送致し、すぐに勾留請求
  • 1段目(逮捕は違法か):駅の待合室・駐在所への同行は警職法の任意同行で違法は無い。覆面パトカーに乗せてからの同行は、場所・方法・態様・時刻・同行後の状況からして逮捕と同一視できる強制力=令状のない実質逮捕で違法。
  • 2段目(重大か):当時の警部補は「まだ緊急逮捕はできない」と判断していたが、裁判所は、窃盗事件の2〜3時間後に、犯人の逃走車(盗難車)を運転していた・停止合図を無視して逃走・約1週間前に刑務所を出所・無免許などの事情から、実質逮捕の時点で緊急逮捕の理由と必要性はあったと認めた。
  • さらに、実質逮捕の約3時間後に通常逮捕、48時間以内に送致、勾留請求の時期にも違法は無い → 実質逮捕の違法の程度は、その後の勾留を違法にするほど重大ではない。
  • 時間は実質逮捕の時点から数えても制限内(下の図)。解説書が紹介する裁判例の大勢の条件としては、あとの通常逮捕から数えて間に合う、というだけでは足りない(項目11)。
  • 緊急逮捕の要件=(死刑・無期・長期3年以上の拘禁刑に当たる罪/疑うに足りる十分な理由/急速を要し逮捕状を求められない)。判決はこれに加えて逮捕の必要性もあったとした。
  • この判決は、被告事件(常習累犯窃盗・道路交通法違反)の控訴審で、逮捕・勾留の手続の適否を判断したもの。勾留請求そのものを審査した裁判ではない。
実質逮捕から数えても、通常逮捕から数えても枠内 実質逮捕から48h 72h 通常逮捕から48h 72h 送致・勾留請求 38h(16日 午後1時) 0h 実質逮捕(14日 午後11時) 約3h 通常逮捕(15日 午前2時18分) 実線の箱=48h=送致の期限(203条1項) 点線の箱=送致を受けた検察官の勾留請求の上限72h(205条2項)
時刻は解説書の時系列による。送致・勾留請求は実質逮捕から38時間目=実質逮捕を起点にしても48時間の枠に収まっている。これが「法定の制限時間が守られていた」の中身。

同じ事案で、勾留請求が実質逮捕から74時間後(通常逮捕からは約71時間後)だったら → 通常逮捕から数えれば72時間以内でも、実質逮捕から数えた制限時間を超える=重大な違法として却下の方向に動く。

出題設問の事例で、任意同行の開始を実質逮捕の時点と考えても、逮捕後の手続の時間的制限は守られている(○)

×にされやすい形
  • 「東京高裁は、あとの通常逮捕から数えて制限時間内なら足りるとした」(実質逮捕の時点から数えても制限時間内だった)
  • 「犯人は職務質問の途中で山林に逃げ込んだ」(解説書の設例では、検問の停止合図を無視して逃げた。職務質問は発見後、駅の待合室で始めた)
  • 「東京高裁は、駐在所への任意同行の時点から実質逮捕に当たるとした」(駅の待合室・駐在所への同行は適法。覆面パトカーに乗せてから)
  • 「東京高裁は、実質逮捕を違法ではないとした」(違法とした。そのうえで、勾留を違法にするほど重大ではないとした)

10重大な違法として勾留請求が却下された例判例

  • どちらも、勾留請求を却下した裁判官の判断に対して検察官が準抗告し、それを棄却した(却下を支持した)裁判。
裁判何があったか緊急逮捕の要件決め手勾留
富山地決昭54・7・26約5時間に及ぶ、逮捕状によらない逮捕(実質逮捕から数えても勾留請求までの制限時間は守っていた)解説書は触れていない令状主義違反はそれ自体重大な瑕疵=制限時間を守っても治らない却下を支持
京都地決昭44・11・5被害者の供述に基づいて「現行犯逮捕」。現行犯・準現行犯の要件は無いが、緊急逮捕の実体的要件はあったあった直ちに緊急逮捕状を求めて司法審査を受けるべきだったのに、そうせず漫然と拘束を続けた却下を支持
東京高判昭54・8・14覆面パトカーに乗せてからの実質逮捕。約3時間後に通常逮捕あった(実質逮捕の時点で理由と必要性)実質逮捕の時点で緊急逮捕の理由・必要性あり+実質逮捕から数えても時間内違法にするほど重大ではない

解説書の紹介では、富山について緊急逮捕の要件の有無は書かれておらず、約5時間の令状なしの拘束という令状主義違反そのものを重大な瑕疵とした点が示されている(大勢と有力説のどちらに立つ裁判例かは、解説書からは言えない)。京都の事件は、緊急逮捕の要件があっても却下された例。「緊急逮捕の要件がそろっていれば、必ず救われる」ではない。

×にされやすい形
  • 「制限時間を守っていれば、実質逮捕の違法は治る」(富山は治らないとした)
  • 「緊急逮捕の実体的要件があれば、勾留請求が却下されることはない」(京都は、緊急逮捕状を求めず拘束を続けた点を重大な違法とした)

11裁判例の大勢と学説の有力説判例学説

  • 裁判例の大勢(ともいわれている):任意同行と称した実質逮捕でも、実質逮捕の時点で緊急逮捕の要件が事実上そろい、その時点から勾留請求まで法定の制限時間が守られていれば、却下するほどの重大な違法は無い。
  • 実務の見方:要件はそろっていたのに通常逮捕をしたのは、逮捕手続の選び方を誤った形式的な過誤にすぎない。
  • 学説の有力説:違法な実質逮捕が先行した以上、緊急逮捕の要件が事実上そろっていても、重大な違法として勾留請求を却下すべき。
  • 有力説の理由:緊急逮捕には違憲の疑いもあり、手続を厳格に解すべき。緊急逮捕なら「直ちに」逮捕状を求め()、裁判官は2段階で審査する ― 逮捕した時の事情で緊急逮捕が適法だったか/逮捕状を出す時の事情で逮捕の理由と必要性があるか。あとから通常逮捕状の審査を受けただけでは、これと同じに扱えない=令状主義違反。
  • 実務上の対処:勾留請求の段階で検察官が先行する逮捕の違法に気づき、被疑者を一旦釈放して直ちに再逮捕したうえで勾留請求することがある。再逮捕がどこまで許されるかは、再逮捕の問題として別に考える(項目8④の例は、再逮捕の逮捕状請求書に必要な記載が無く、逮捕状が無効とされたもの)。
裁判例の大勢学説の有力説
重く見ること緊急逮捕の要件が事実上そろっていたこと+実質逮捕から数えた時間踏むべき手続(直ちに逮捕状・2段階の審査)を踏んでいないこと
東京高判型の結論重大な違法ではない重大な違法 → 却下
実務の見方要件はそろっていたのに通常逮捕をしたのは、逮捕手続の選び方を誤った形式的な過誤にすぎない。有力説は逆に、あとから通常逮捕状の審査を受けただけでは緊急逮捕の事後審査と同じには扱えない=令状主義違反と見る
任意同行と称した実質逮捕の後の勾留請求緊急逮捕の要件が事実上あったか実質逮捕の時点で。罪の重さ・十分な嫌疑・急速性+逮捕の必要性原則どおり重大な違法却下の方向いいえはい実質逮捕から数えて制限時間内か実質逮捕の時点から数える(裁判例の大勢の条件)原則どおり重大な違法却下の方向いいえはい裁判例の大勢:重大な違法ではない学説の有力説はなお重大な違法として却下
東京高判昭54・8・14の考え方を、解説書が裁判例の大勢として紹介する条件の形に並べたもの。判決自身が要件の形で並べたのではない。紫の枠は裁判例(大勢)の考え方。有力説は2段目まで「はい」でも却下すべきとする。

関連緊急逮捕状を出すには、直ちに請求したこと+逮捕時の緊急逮捕の要件+発付時の通常逮捕の要件の双方が要る(○)=有力説が言う「2段階の審査」

×にされやすい形
  • 「裁判例の大勢は、あとから通常逮捕の令状を取りさえすれば重大な違法ではないとする」(緊急逮捕の要件が事実上そろい、実質逮捕の時点から時間内、が条件)
  • 「有力説は、実質逮捕の時点で緊急逮捕の要件がそろっていたことを争う」(要件がそろっていても、手続を踏んでいない点を問題にする)

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