再逮捕・再勾留②常習一罪と同時処理・重複勾留
問い:常習として何度も繰り返した犯罪(実体法上は一罪)で、行為ごとに逮捕・勾留し直せるか。保釈された後の新しい行為、前の行為が後で分かった場合はどうか。
骨組み
- 1一罪一逮捕一勾留の原則(一罪一勾留の原則):同一の被疑事実につき逮捕・勾留は原則1回。根拠=令状主義・事件単位の原則。中身=再逮捕・再勾留の禁止(繰り返し)+重複逮捕・重複勾留の禁止(同時に複数)
- 2「一罪」の基準(通説):実体法上の罪数。根拠=①実体法上の一罪には1個の刑罰権しか生じない ②一罪の分割は実質的な蒸し返しのおそれが高い=その予防。対立=令状に記載された被疑事実を基準とし、常習犯なら行為ごとに何度でもできるとする見解
- 3通説の帰結:常習犯(常習賭博=・包括して一罪)も、科刑上一罪(住居侵入・窃盗=)も、分割して逮捕・勾留できない
- 4通説を徹底したときの不都合:保釈後の新たな賭博も実体法上の一罪の一部。保釈中も勾留の効力は継続 → 重複逮捕・重複勾留になり逮捕・勾留できない=捜査の不当な制限
- 5同時処理の可能性(多数説・仙台地決もこの立場):同時処理が可能だった被疑事実には同時処理義務。可能性が無ければ義務は無く蒸し返しともいえない → 原則は適用されず、新たな事実で逮捕・勾留できる(保釈後の新たな行為はこちら)
- 6前の行為が後で判明したとき:仙台地決=捜査機関に犯罪自体が発覚していれば可能性あり/有力説=当初の逮捕・勾留の前の犯罪なら直ちに可能性あり(基準の明確化)→ 原則が適用される
- 7重複禁止の例外:再逮捕・再勾留の禁止と同様、例外が認められると考えられている。被疑者の不利益の程度と必要性の程度の比較衡量。解説書の検討(有力説で原則が適用されるとしたうえで)=先行20日・単純賭博なら、逃亡・罪証隠滅のおそれが相当に大きい場合でない限り認められない
- 8仙台地決の結末:逮捕状請求書に・刑訴規則142条1項8号の記載が無い → 逮捕状も違法無効 → 逮捕の前置を欠く → 勾留も違法無効 → 勾留取消し。これを逮捕手続の根本的な瑕疵(重大な違法の一類型)に当たるとするのは解説書の位置づけ
- 9併合罪なら():解説書=通説の基準では「一罪」でない → 原則として同時処理義務は無いと考えられる。ただし同時処理が可能だったのに実質的に蒸し返していれば、後の勾留請求が制限されることもありうる
- 10最決平30・10・31(法廷意見):特別抗告はの抗告理由に当たらない=棄却。職権で:原決定が実質的同一性・一罪関係に立つ場合との均衡等「のみから」同時処理義務を説示した点は是認できない。の準用まではしない
- 11同決定の補足意見(三浦守裁判官):両事実は社会通念上別個独立の行為で併合罪の関係と解されるところ、後の事実は相当幅広い捜査が必要 → したがって原決定が実質的同一性・一罪関係に立つ場合との均衡等「のみから」同時処理義務を説示した点は・の解釈適用を誤った
色の札は出どころ:条文 判例 学説。条文番号は押すと条文、丸い札(出題)は押すと過去問の肢と正答が出ます。仙台地決=仙台地決昭49・5・16(地方裁判所の決定。裁判所サイトに全文は無く、内容は解説書の要約による)。
主語を分けて覚える。項目2・3=通説。項目5=多数説(仙台地決も同じ立場)。項目6の「前なら直ちに」=有力説、「発覚していれば」=仙台地決。項目7の結論の方向・項目8の「根本的な瑕疵」・項目9=解説書。項目10=法廷意見、項目11=補足意見(「併合罪」と言ったのは補足意見)。
| 重ねて拘束する | 同時に | 釈放した後に改めて |
|---|---|---|
| 別の被疑事実 | 二重逮捕・二重勾留=できる | できる |
| 同一の被疑事実 | 重複逮捕・重複勾留=原則禁止(この回の中心) | 再逮捕・再勾留=原則禁止 |
下の段の2つが一罪一逮捕一勾留の原則の中身。この回は「同一」の中身=一罪をどこで数えるか、と、保釈中(勾留の効力が続いている)に同じ一罪の別の行為が出たときの重複の扱い。
1一罪一逮捕一勾留の原則学説
- 定義:同一の被疑事実につき、逮捕・勾留は1回しか認められないという原則。実際には勾留が問題になることが多いので「一罪一勾留の原則」ともいう。
- 根拠:逮捕状・勾留状の請求には被疑事実が要り、裁判官は被疑事実を単位として逮捕・勾留の可否を審査する(令状主義・事件単位の原則)。
- 中身は2つ:①再逮捕・再勾留の禁止=同一の被疑事実での逮捕・勾留の繰り返しを許さない ②重複逮捕・重複勾留の禁止=同一の被疑事実について同時に複数の逮捕・勾留を許さない。
- 一罪の関係の例(解説書):傷害の事実で逮捕・勾留中に、強盗目的だったと分かった → 傷害と一罪の関係にある強盗致傷の事実で、再逮捕・再勾留も、重複逮捕・重複勾留もできない。
- 「重複逮捕・重複勾留」を、別の被疑事実で同時に逮捕・勾留すること(=二重逮捕・二重勾留)と取り違える形
- 罪名が傷害から強盗致傷に変われば「別の事件」として重ねて逮捕・勾留できる、とする形(一罪の関係なら同一の被疑事実の扱い)
2「一罪」の基準学説
| 令状に記載された被疑事実で数える見解 | 実体法上の罪数で数える見解(通説) | |
|---|---|---|
| 単位 | 令状に書かれた被疑事実 | 実体法(刑法)上の罪数 |
| 常習犯 | 行為1つにつき逮捕・勾留できる(行為の数だけ、何度でも) | 一罪=行為ごとに逮捕・勾留することは許されない |
- 通説の根拠①:実体法上の一罪には1個の刑罰権しか発生しない → それを実現するための逮捕・勾留も1回しか許されない。
- 通説の根拠②:実体法上の一罪を分割して逮捕・勾留することを認めると、実質的に逮捕・勾留の蒸し返しになるおそれが高い → それを予防するため。
- 過去問の正答から:「個々の可罰的行為ごとに1回の逮捕勾留が許される」という見解に立てば、当初の逮捕・勾留の前の行為(①)でも、保釈中の新たな行為(③)でも、その行為での逮捕勾留は常に許される(オ○。カ×=「許されないことがある」は誤り=常に許される)。この見解Ⅲは、表の左の列(令状に記載された被疑事実で数える見解)に近い。
最初の逮捕状に「ある日の賭博」、次の逮捕状に「別の日の賭博」と書き分けても、常習賭博として一罪なら、通説では同じ「一罪」の中の話になる。
出題見解Ⅲ(行為ごとに1回)に立つと、①での逮捕勾留は常に許される(○)
出題見解Ⅲ(行為ごとに1回)に立つと、③での逮捕勾留は許されないことがある(×)
- 行為ごとに1回とする見解に立ちながら、保釈中の新たな行為での逮捕勾留が「許されないことがある」とする形(司法H19-24-カ)
- 通説の基準を「令状に記載された被疑事実」とする形(通説は実体法上の罪数)
3通説の帰結=分割できない学説条文
- 常習犯:実際には数個の行為があるのに、実体法上は包括して一罪。=常習として賭博をした者は、3年以下の拘禁刑 → 賭博行為ごとに逮捕・勾留することは許されない。
- 科刑上一罪:住居侵入・窃盗の事案で、住居侵入で逮捕・勾留し、さらに窃盗で逮捕・勾留することも許されない(科刑上一罪=1個の行為が2個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断=)。
- 過去問の正答から:事案は常習特殊窃盗(盗犯等防止法2条)。「一罪の範囲では1回の逮捕勾留しか許されない」という見解に立てば、すでに起訴された常習特殊窃盗と一罪の関係にある前の窃盗(①)で逮捕勾留することは許されることがある、とはいえない(ア×)。
- 見解Ⅰは例外を言わない言い切り。解説書の「原則(一罪一勾留)+例外(比較衡量・項目7)」とは同じでない。アが×なのは、この言い切りのため。
出題見解Ⅰ(一罪の範囲で1回)でも、一罪の一部の①での逮捕勾留は許されることがある(×)
4通説を徹底したときの不都合学説
- 保釈後に新たな賭博をした → その行為も実体法上の一罪(同じ常習賭博)の一部。
- 保釈中も勾留の効力は継続している → 新たな行為で逮捕・勾留すると重複逮捕・重複勾留になる → 一罪一勾留の原則から逮捕・勾留できない。
- これでは捜査の不当な制限となりかねない → 項目5の考え方へ。
- 保釈=勾留の効力を残したまま身柄を外に出す制度。起訴後の被告人の話で、被疑者の勾留には保釈が無い(ただし書)。
- 過去問の正答から:「一罪の範囲では1回」という見解に立てば、保釈中の新たな窃盗(③)での逮捕勾留が「常に許される」とはいえない(イ×)。
出題見解Ⅰ(一罪の範囲で1回)でも、保釈中の新たな行為③での逮捕勾留は常に許される(×)
- 「保釈されて身柄が外にあるのだから、もう勾留されていない」→ だから重複にならない、とする形(保釈中も勾留の効力は続く)
5同時処理の可能性(多数説)学説判例
- 同時処理義務=当初の逮捕・勾留の時点でまとめて処理できたはずの被疑事実は、検察官がまとめて処理しなければならない、という義務。
- 位置づけ:解説書は、通説(実体法上の罪数)を徹底したときの不都合(項目4)を受けて「そこで」この見解を挙げる。設問の検討も、通説の立場で常習賭博を包括一罪とした後に、同時処理の可能性で保釈後の行為を分けている。
- 検察官は、同時処理が可能であった被疑事実について同時処理義務を負う。
- 同時処理の可能性が無い場合には、このような義務を負わせることはできないし、実質的に逮捕・勾留の蒸し返しともいえない。
- → そうした場合には一罪一勾留の原則は適用されず、新たな事実で逮捕・勾留することも許される。これが多数説で、仙台地決もこの立場に立つ。
- 保釈後の新たな行為:当初の逮捕・勾留の時点ではまだ存在しない=同時処理の可能性が無い → 原則は適用されず、その新たな事実で逮捕・勾留できる。
| 過去問(司法H19-24)の見解 | ①当初の逮捕勾留の前の行為 | ③保釈中の新たな行為 |
|---|---|---|
| Ⅰ 一罪の範囲で1回 | 許されることがある、とはいえない(ア×) | 常に許される、とはいえない(イ×) |
| Ⅱ 勾留の裁判の時点で同時に裁判できた一罪の範囲で1回 | 常に許される、とはいえない(ウ×) | 常に許される(エ○) |
| Ⅲ 行為ごとに1回 | 常に許される(オ○) | 許されないことがある、とはいえない=常に許される(カ×) |
過去問の正答から。見解Ⅱは「同時処理の可能性」の考え方に近い。③は勾留の裁判の後に生じた行為なので、同時に裁判することはできなかった。見解Ⅰは例外を言わない言い切りで、解説書の「原則+例外(項目7)」とは同じでない=アが×なのはこの言い切りのため。
出題見解Ⅱなら、保釈中の新たな行為での逮捕勾留は常に許される(○)
- 保釈後の新たな行為も一罪の一部だから、どの見解でも逮捕・勾留できない、とする形(同時処理の可能性が無い=原則は適用されない)
6前の行為が後で判明したとき判例学説
- 保釈後の新たな行為と違い、当初の逮捕・勾留の前の行為が後で発覚した場合は、同時処理が可能だったかの判断が容易でない。
- 仙台地決(解説書の要約):捜査機関に犯罪自体が発覚していれば、同時処理の可能性があった、と判断した。
- 有力説:判断基準を明確にするため、当初の逮捕・勾留の前の犯罪であれば直ちに同時処理の可能性があった → 一罪一勾留の原則が適用される。
- 分かれ目:仙台地決=発覚していたか(捜査機関の認識)/有力説=前か後か(時点だけ。発覚していたかを問わない)。
最初の逮捕より前の賭博が、保釈後に関係者の供述で初めて分かった → 有力説なら「前の行為」なので可能性あり → 原則適用。仙台地決の基準では、当初の時点で捜査機関に発覚していたかが問われる(有力説と違い、前の行為というだけでは決まらない)。
出題見解Ⅱなら、前の行為①での逮捕勾留は常に許される(×)
- 同時処理の可能性を問う見解に立てば、前の行為でも「常に」逮捕勾留できる、とする形(司法H19-24-ウ)
- 仙台地決の基準を「前か後か」とする形(それは有力説。仙台地決は発覚の有無)
7重複逮捕・重複勾留の禁止の例外学説
- 一罪一勾留の原則に該当するとしても、再逮捕・再勾留の禁止に例外が認められたのと同様(解説書は、再逮捕・再勾留の例外と同じ比較衡量で決めるとする)、重複逮捕・重複勾留の禁止にも例外が認められると考えられている。
- 当たるかどうかは、被疑者が被る不利益の程度と、再逮捕・再勾留の必要性の程度との比較衡量により決することになろう(解説書)。「再逮捕・再勾留」は解説書の言葉どおり=ここでは、重複の場面で同じ一罪の別の行為により改めて逮捕・勾留する必要性の意味。
解説書の設問:常習賭博で逮捕され20日間勾留・起訴・保釈された後に、逮捕より前にしていた別の日の賭博が判明した場面。解説書は、有力説に立って一罪一勾留の原則が適用されるとしたうえで、例外を検討し、この行為の重大性を単純賭博の法定刑で見ている。
| 見るもの | 解説書の設問の検討(前の行為が後で判明し、有力説で原則が適用される場合) |
|---|---|
| 先行した勾留の期間 | 先行の勾留で20日間勾留されている → 被疑者の不利益は大きい |
| 犯罪の重大性 | 単純賭博の法定刑は50万円以下の罰金または科料()→ 重大な犯罪とは言いがたい |
| 逃亡・罪証隠滅のおそれ | おそれが相当に大きいといえるか。実際に罪証隠滅を図った・逃亡を企てた、といった事実はその例 |
| 結論の方向 | おそれが相当に大きいといえる場合でない限り、認められない |
保釈中に共犯者へ「何も話すな」と連絡していたと分かった → 罪証隠滅のおそれが相当に大きいといえ、必要性の側に傾く(ただし先行20日という不利益と比べて決まる)。
- 「実際に証拠を隠した事実が無ければ、例外は認められない」(見るのはおそれの程度。実際の行為は例示。ただし、おそれが相当に大きいことを示す具体的な事実は要る)
- 一罪一勾留の原則に当たれば、重複逮捕・重複勾留は一切許されない、とする形
- この比較衡量の結論を「判例の判断」とする形(解説書の設問の検討)
8仙台地決の結末(勾留取消しの理由)判例条文
- 再逮捕の際の逮捕状請求書に、・刑訴規則142条1項8号に基づく記載が無かった
- → 逮捕状も違法無効
- → 逮捕の前置を欠くことになる(逮捕前置=勾留するには、その前に有効な逮捕を経ていなければならない)
- → 勾留も違法無効 → 勾留取消し
- ここまでが、解説書が要約する決定の理由。
- 解説書の位置づけ:逮捕に重大な違法がある場合のうち「その他逮捕手続に根本的な瑕疵がある場合」に当たる(決定の言葉ではなく、解説書の分類)。
- :検察官又は司法警察員は、逮捕状を請求する場合に、同一の犯罪事実についてその被疑者に対し前に逮捕状の請求又はその発付があったときは、その旨を裁判所に通知しなければならない。
- 刑訴規則142条1項8号:逮捕状請求書に、同一の犯罪事実(または現に捜査中である他の犯罪事実)について前に逮捕状の請求・発付があったときは、その旨とその犯罪事実を記載する。どちらも、同一の被疑事実で前に逮捕状の請求・発付があったことを裁判官に知らせるための規定(解説書)。
- つなぎ:解説書はこの逮捕を「再逮捕」と呼ぶ=前の逮捕と同じ常習賭博一罪の中の行為での逮捕。
- 仙台地決では、一罪の基準とは別に、請求書の記載の欠けが取消しの直接の理由になった(解説書の要約)。
- 仙台地決は一罪の基準の話に入らず、手続の違法だけで決着した、とする形(解説書によれば多数説の立場に立ち、発覚の有無で同時処理の可能性を判断している。取消しの直接の理由が手続の違法)
- 「根本的な瑕疵=重大な違法」を決定自身の言葉とする形(解説書の位置づけ)
9併合罪なら同時処理義務は?学説条文
- 併合罪=確定裁判を経ていない2個以上の罪(前段)。実体法上は数罪。
- 通説の基準(実体法上の罪数)からは、併合罪の関係にあれば「一罪」とはいえない → 原則として同時処理義務は無いと考えられる(解説書)。
- 解説書の見解:併合罪の関係にある複数の被疑事実でも、同時処理の可能性があったのに実質的に逮捕・勾留を蒸し返していると認められれば、後の勾留請求が制限されることもありうる。
- 解説書は、最決平30・10・31が準抗告審が考慮した理由「のみ」では同時処理義務が認められないとしたのは、この趣旨を含むと理解することもできる、とする(最高裁がそう述べたのではない)。
| 実体法上一罪(常習犯など) | 併合罪 | |
|---|---|---|
| 「一罪」の枠 | 中 | 外 |
| 原則 | 同時処理の可能性があれば、一罪一勾留の原則が及ぶ(例外は比較衡量) | 原則として同時処理義務は無い |
| ただし | 可能性が無ければ原則は適用されない | 同時処理が可能だったのに実質的な蒸し返しなら制限されることもありうる(解説書) |
- 「併合罪でも実質的に蒸し返していれば後の勾留請求は制限される、と最高裁が判示した」(解説書の見解。最高裁はそう述べていない)
10最決平30・10・31(法廷意見)判例
- 大麻の密輸入についてクリーン・コントロールド・デリバリーによる捜査が行われ、大麻が代替物に差し替えられた → 被疑者は、規制薬物として取得した大麻の代替物の所持の被疑事実で勾留
- その後、元の大麻の営利目的輸入の被疑事実で勾留請求 → 勾留を認めた裁判に弁護人が準抗告(この段は解説書の要約)
- 準抗告審(原決定):両事実の実質的同一性や一罪関係に立つ場合との均衡等から、前の勾留中に同時処理が義務付けられていたとして、勾留請求を却下
- 検察官(解説書)の特別抗告 → 棄却(裁判官全員一致)→ 勾留請求の却下(原決定)が残る
- 本件抗告の趣意は、判例違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反の主張であって、刑訴法433条の抗告理由に当たらない。
- なお、所論に鑑み職権により調査すると、原決定が、本件勾留の被疑事実である大麻の営利目的輸入と、本件勾留請求に先立つ勾留の被疑事実である規制薬物として取得した大麻の代替物の所持との実質的同一性や、両事実が一罪関係に立つ場合との均衡等のみから、前件の勾留中に本件勾留の被疑事実に関する捜査の同時処理が義務付けられていた旨説示した点は是認できないが、いまだ同法411条を準用すべきものとまでは認められない。
- 否定したのは、その理由「のみから」義務を導いた点。「併合罪なら同時処理義務は無い」とは述べていない。法廷意見は「併合罪」という言葉を使っていない。
- :本来は上告審の条文。各号の事由が無くても、411条各号の事由(判決に影響を及ぼすべき法令の違反 等)があって、原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときは、破棄することができる。準用しない=説示に誤りはあっても、原決定を取り消すまではしない。
- 「最高裁は、併合罪の関係にあるから同時処理義務は認められないとして、原決定を取り消した」(抗告は棄却。否定したのは「のみから」義務を導いた説示)
- 事案を「麻薬」の所持・輸入とする形(大麻とその代替物)
11同決定の補足意見(三浦守裁判官)判例
- 本件の被疑事実と前件の被疑事実とは、一連のものであって密接に関連するが、社会通念上別個独立の行為であるから、併合罪の関係にあるものと解されるところ、両事実の捜査に重なり合う部分があるといっても、本件の被疑事実の罪体や重要な情状事実については、前件の被疑事実の場合より相当幅広い捜査を行う必要があるものと考えられる。
- したがって、原決定が、両事実の実質的同一性や、両事実が一罪関係に立つ場合との均衡等のみから、捜査機関が、前件の被疑事実による勾留の期間中に、本件の被疑事実の捜査についても、同時に処理することが義務付けられていた旨の説示をした点は、刑訴法60条1項、426条の解釈適用を誤ったものというほかない。
- 取り消さない理由(補足意見):証拠関係・捜査状況のほか、被疑者が原決定により釈放され、既に相当の日数が経過していること等も考え合わせると、取り消さなければ著しく正義に反するとすることには「わずかながら躊躇を覚える」→ 準用せず。
| だれの言葉か | 中身 |
|---|---|
| 法廷意見 | の抗告理由に当たらず棄却/「のみから」義務を説示した点は是認できない/準用せず |
| 補足意見 | 併合罪の関係と解される/後の事実は相当幅広い捜査が必要/原決定が実質的同一性・一罪関係に立つ場合との均衡等「のみから」同時処理義務を説示した点は・の解釈適用を誤った |
| 解説書 | 併合罪でも、同時処理が可能だったのに実質的な蒸し返しなら制限されうる/「のみ」はその趣旨を含むと理解することもできる |
- 「併合罪の関係にあるからこそ幅広い捜査が必要」と、併合罪であることを捜査の幅の原因とする形(原文は「併合罪の関係にあるものと解されるところ、…重なり合う部分があるといっても、…相当幅広い捜査を行う必要がある」)
- 「・の解釈適用を誤った」を法廷意見の言葉とする形(補足意見)