刑事訴訟法ゼロから刑事訴訟法#32

再逮捕・再勾留①禁止の原則と例外

刑事訴訟法の復習ノートを1ページで通して読む(この回から)→

問い:一度釈放した被疑者を、同じ被疑事実でもう一度逮捕・勾留できるか。できるなら、どんなときか。

骨組み

  1. 1再逮捕・再勾留禁止の原則:同一の被疑事実で、釈放した後に改めて逮捕・勾留する=原則として許されない。理由=無制限に許すと拘束期間の制限(〜)が無意味になる
  2. 2再逮捕の例外の根拠(通説):(前に同一の犯罪事実で逮捕状の請求・発付があれば裁判所に通知)・刑訴規則142条1項8号(請求書に記載)=再逮捕を前提にした条文 → 例外的に再逮捕できる
  3. 3再勾留:明文は無い。だが再逮捕を認めて再勾留を認めない合理的な理由が無い → 再勾留も例外的に認められる
  4. 4例外の物差し(解説書が紹介する見解・通説とは書かれていない):入口=事情変更があり単なる蒸し返しでない。そのうえで必要性の程度と不利益の程度を比較衡量(不利益=先行した勾留期間/必要性=犯罪の重大性・新証拠の重要性・逃亡・罪証隠滅のおそれ)
  5. 5東京地決昭47・4・4の基準:単なる事情変更だけでは許されない。諸般の事情を考慮し、強制捜査を断念させることが首肯し難く、かつ不当なむしかえしでない場合に限る
  6. 6東京地決の事案と結論:5件(併合罪)で勾留 → 期間満了で釈放 → 共犯者の供述 → 1件で再逮捕・再勾留請求 → 却下 → 準抗告で取消し=再勾留を認めた(重大事犯・前の勾留は5件全体のため)
  7. 7再勾留の期間:「同一事実の勾留は通じて20日まで」=却下した原裁判官の立場。東京地決=期間は当初の勾留と同様、先の期間は延長・取消しの判断で重く見る。解説書は東京地決を妥当とする
  8. 8先行する逮捕が違法だった場合:一切不可とはしない=通説/物差しは行4と同じ比較衡量=解説書。違法が極めて重大(嫌疑が極めて薄い・送致までの制限時間を守らない)→ 不可/手続の種類の選択を誤ったにすぎない(緊急逮捕すべきところを現行犯逮捕)→ 必要性に照らし例外的に可
  9. 9京都地決昭44・11・5:恐喝未遂の現行犯逮捕。緊急逮捕の要件はあったのに緊急逮捕状を請求せず拘束を続けた点が重大な違法 → 勾留請求却下(準抗告棄却)。勾留請求の却下の後、検察事務官が緊急逮捕し、当初の逮捕から72時間以内の再度の勾留請求が認められたとされる(その裁判の理由は不明)
  10. 10逮捕し直したときの時間:法文上は=逮捕し直した拘束から48時間以内に請求すればよいことになる(緊急逮捕し直したときもで同じ)。解説書は、検察官が当初の違法逮捕時から72時間(・)以内に請求していることを、検察官の「配慮」として書く

色の札は出どころ:条文 判例 学説。条文番号は押すと条文、丸い札(出題)は押すと過去問の肢と正答が出ます。この回の裁判例(東京地決・京都地決)は、どちらも地方裁判所の決定。

主語を分けて覚える。例外がある(行2・3)=通説。どの範囲で認めるかの比較衡量(行4・8)=解説書が紹介する見解(通説とは書かれていない)。行5・6=東京地決の言葉(決定は「比較衡量」という言い方をしていない)。

重ねて拘束する同時に釈放した後に改めて
別の被疑事実二重逮捕・二重勾留=できるできる(この回の原則の問題ではない)
同一の被疑事実重複逮捕・重複勾留=原則禁止再逮捕・再勾留=原則禁止(この回)

下の段の2つ(同一の被疑事実で重ねる)が、一罪一逮捕一勾留の原則(一罪一勾留の原則)の中身。名前ではなく「別の事実か同一の事実か」「同時か、釈放後か」で見分ける。

1再逮捕・再勾留禁止の原則学説

  • 再逮捕・再勾留=一度釈放した被疑者を、同一の被疑事実について、もう一度逮捕・勾留すること。
  • 原則:許されない(再逮捕・再勾留禁止の原則)。ただし例外が全く無いわけではない(項目2・3)。
  • 理由(解説書):同一の被疑事実で再逮捕・再勾留を無制限に許すと、身体拘束の期間の制限(〜)が無意味になる。勾留は請求の日から10日()、延長は通じて10日まで()でも、満了ごとに釈放してまた逮捕すれば、拘束に終わりが無くなる。
  • 位置づけ:一罪一逮捕一勾留の原則の中身は ①再逮捕・再勾留の禁止(同一の被疑事実で、釈放後に繰り返す)②重複逮捕・重複勾留の禁止(同一の被疑事実で、同時に複数)。どちらも原則であり、例外がある。

窃盗で20日勾留し、不起訴で釈放した。新しい証拠も事情の変化も無いまま、翌週に同じ窃盗で逮捕し直す → 期間制限をすり抜けるだけ=許されない。釈放後に分かった別の日の放火で逮捕するのは、同一の被疑事実ではないので、この原則の問題ではない。

×にされやすい形
  • 「同一の被疑事実で再逮捕することは、いかなる場合も許されない」(原則であって、例外がある)
  • 釈放後に別の被疑事実で逮捕することまで、再逮捕・再勾留の禁止に当たるとする形

2再逮捕の例外の根拠=・刑訴規則142条1項8号条文学説

  • :検察官又は司法警察員は、逮捕状を請求する場合に、同一の犯罪事実についてその被疑者に対し前に逮捕状の請求又はその発付があったときは、その旨を裁判所に通知しなければならない。
  • 刑訴規則142条1項8号:逮捕状請求書に、同一の犯罪事実(または現に捜査中である他の犯罪事実)について前に逮捕状の請求・発付があったときは、その旨とその犯罪事実を記載する。
  • 通説:どちらも、同一の被疑事実でもう一度逮捕状を請求する場面がありうることを前提にしている → 例外的に再逮捕を認める。
  • 過去問の正答から:窃盗で逮捕した後に釈放した被疑者を、同一の窃盗の事実で再び逮捕することが許される場合もある(○)。

出題同一の事実で、釈放後に再び逮捕することが許される場合もある=原則に例外がある(○)

×にされやすい形
  • を「同一の犯罪事実での再度の逮捕状請求を禁止する規定」と読む形(通知を求める規定=再逮捕を前提にしている)

3再勾留には明文が無い学説判例

  • 勾留については、のような規定が無い。
  • 解説書(通説):再逮捕を認めながら再勾留を認めない合理的な理由が無い → 再勾留も例外的に認められる。
  • 東京地決昭47・4・4の理由づけ:は再度の逮捕を前提にしている/現行法上、再度の勾留を禁止した規定は無い/逮捕と勾留は相互に密接不可分 → 法は例外的に再度の勾留も許している。
×にされやすい形
  • 「再逮捕にはの手がかりがあるが、再勾留には規定が無いので一切許されない」

4例外の物差し=比較衡量(見解)学説

  • 入口:釈放後に事情変更(釈放した後に事情が変わること。典型は新しい証拠が見つかったこと)があり、再逮捕・再勾留しても単なる蒸し返しとはいえないこと。
  • そのうえで、再逮捕・再勾留の必要性の程度と、被疑者が被る不利益の程度とを比較衡量して相当かを判断する=解説書は「これを基準に考える見解がある」と紹介する(通説とは書いていない)。必要性と不利益を量るので、比例原則と同じ型の検討になる。
天秤の側見るもの
被疑者の不利益①先行した勾留の期間(長く拘束されていたほど重い)
再逮捕・再勾留の必要性❶犯罪の重大性 ❷新しく発見された証拠の重要性 ❸逃亡・罪証隠滅のおそれの程度
  • 不利益が小さい場合(解説書):被疑者が逃亡した場合/20日の満了前に勾留の理由が無くなって釈放し、その後に新証拠が出た場合 → 必要性がある限り認められるであろう。
  • 読み分け:ここでの「逃亡した場合」は、解説書が不利益の側(①先行した勾留期間)を説明する中で挙げた例。表の必要性の側にある❸「逃亡・罪証隠滅のおそれの程度」とは置き場所が違う。
  • 不利益が大きい場合(解説書):20日勾留して釈放した後に新証拠 → ❶〜❸を考慮し、必要性の程度と権衡する(釣り合う)場合にのみ認められることになろう。
同一の被疑事実で、釈放した被疑者を再逮捕・再勾留したい事情変更があるか単なる蒸し返しとはいえないか許されない原則どおりいいえはい必要性が不利益と釣り合うか不利益=先行勾留の期間/必要性=重大性・新証拠・逃亡等のおそれ許されないいいえはい例外的に認められる
解説書が紹介する見解の整理(通説とは書かれていない)。どこで釣り合うかの数値の線は無い。先行勾留が短ければ不利益側は軽く、20日いっぱいなら重い。

逮捕して2時間後に被疑者が逃走し、1か月後に見つかった → 先の拘束は2時間で終わっている=天秤の不利益の側が軽い(解説書が「被疑者が逃亡した場合」として挙げる、不利益が大きくない例)→ 必要性がある限り認められる方向。
20日満了で釈放した後、軽い罪について補強程度の証拠が出ただけ → 新しい証拠という事情変更はある(入口を通るとしても)。だが天秤で、不利益(20日いっぱいの拘束)は大きく、必要性(重大性・新証拠の重要性)は軽い=釣り合わず、認められにくい方向。

×にされやすい形
  • 「釈放後に事情が変われば、それだけで再逮捕・再勾留できる」(入口にすぎない。そのうえで必要性と不利益を量る)
  • 比較衡量の枠組みを「通説」「判例の基準」とする形(解説書が紹介する見解。東京地決の言葉は項目5)

5東京地決昭47・4・4の基準判例

  • 出発点:単なる事情変更を理由に再び逮捕・勾留するのは、以下の期間の制約の趣旨を無視するもので、許されない。
  • どんな場合に再勾留が許されるか(決定):
  • いかなる場合に再勾留が許されるかについては、前記の原則との関係上、先行の勾留期間の長短、その期間中の捜査経過、身柄釈放後の事情変更の内容、事案の軽重、検察官の意図その他の諸般の事情を考慮し、社会通念上捜査機関に強制捜査を断念させることが首肯し難く、また身柄拘束の不当なむしかえしでないと認められる場合に限るとすべきであると思われる。
  • 形:「…場合に限る」=2つの条件(①強制捜査を断念させることが首肯し難い=納得しがたい ②身柄拘束の不当なむしかえしでない)がそろわなければ許されない、という必要条件の形。
  • ①の向き:ここで再勾留を認めないと、捜査機関は身柄を拘束しての捜査(逮捕・勾留という強制捜査)をあきらめるしかない。それをさせるのが社会通念上納得しがたいほど捜査の必要が高い、という再勾留を認める側の条件。
  • 考慮する事情:先行の勾留期間の長短/その期間中の捜査経過/釈放後の事情変更の内容/事案の軽重/検察官の意図/その他の諸般の事情。
  • 項目4との違い:「事情変更があるだけでは足りない」ところから出発する点は同じ。項目4(解説書が紹介する見解)は必要性と不利益を天秤で量る形、東京地決は諸般の事情を考慮して2つの条件がそろうかを見る形で、決定は「比較衡量」という言い方をしていない。短答では、どちらの言葉を誰の言葉として書いているかで○×が分かれうる。
×にされやすい形
  • 「東京地決は、釈放後に事情が変われば再勾留できるとした」(単なる事情変更では許されないところから出発し、2つの条件がそろう場合に限るとした)
  • 東京地決の基準を「必要性の程度と不利益の程度の比較衡量」とする形(決定はその言い方をしていない)

6東京地決の事案と結論判例

  1. 爆発物取締罰則違反5件(相互に併合罪=:確定裁判を経ていない2個以上の罪。5つの事件がそれぞれ別の罪)の事実で逮捕・勾留。延長のうえ、勾留期間の満了日まで拘束して釈放。
  2. その後、共犯者の供述が得られ、5件のうち1件の事実で再逮捕。検察官が再勾留を請求。
  3. 原裁判官(今回の再勾留請求を審査して却下した裁判官)が却下:同一の被疑事実の勾留は、回数を問わず通じて20日を超えられない(新証拠が出ても同じ)。
  4. 検察官の準抗告(裁判官の勾留に関する裁判に不服があるとき、裁判所にその取消し・変更を求める手続=2号)→ 東京地裁が原裁判を取り消した=再勾留を認めた。
  • 決定が挙げたこと:事案の重大さ・捜査の経緯・再勾留の必要性は検察官の申立ての理由(黙秘・組織性による通謀のおそれ・逃走のおそれ)のとおり/前の勾留が延長のうえ満了まで行われた点については、それが本件1件だけでなく、併合罪の関係にある5件の同種事実についての勾留だったことなども考慮する。
  • 結論(決定の言葉の要旨):このような重大事犯を十分に捜査させずに放置するのは社会通念上首肯できず、再勾留は不当なむしかえしにならない=極めて例外的な場合に当たる。

前の20日は5件まとめての勾留で、今回の再勾留はそのうち1件だけ。決定は、前回の勾留が延長のうえ満了まで行われた点について、それがこの1件だけでなく5件についての勾留だったことを挙げて考慮した(先行勾留の重みを減らす向き)。それ以上の説明はしていない。もし前の20日がはじめからその1件だけの勾留だったら、この事情は使えない。

×にされやすい形
  • この事件の再勾留を「必要性が不利益を上回ると比較衡量して認めた」とする形(決定の言葉は「社会通念上到底首肯できず」「身柄拘束の不当なむしかえしにはならない」)

7再勾留の期間(通じて20日を超えてよいか)判例学説

  • 問題:先に20日勾留した事件で再勾留を認めると、同一の被疑事実で見て通じて20日を超える拘束になる。
原裁判官(却下)東京地決(取消し)
結論同一の被疑事実の勾留は、回数を問わず通じて20日を超えられない先に20日勾留した事件でも、再勾留の例外(項目5の基準)は当てはまる。ただし例外はより一層限定的に解する
再勾留の期間先の期間を通算する当初の勾留と同様(10日・延長は通じて10日)
先の拘束期間上限に数える後の延長・取消しの判断で重く見るにとどまる
  • 解説書:通算20日の考え方は「結局のところ法定の身体拘束期間の超過を認めないものであって、例外的に再勾留を認める意味に乏しい」と批判されている → 東京地決の考え方が妥当であろう(解説書の評価)。
  • 批判の中身:通算すると、20日勾留しきった事件では再勾留に使える日が残らず、請求は却下するしかない(この事件の原裁判官がそうした)。再勾留の例外を認めても、まさに問題になる「20日勾留した後」の場面で使えない。
×にされやすい形
  • 「再勾留が認められても、先の勾留と通算して20日を超えることはできない、とするのが東京地決」(それは却下した原裁判官の立場。東京地決は取り消した)

8先行する逮捕が違法だった場合学説

  • 前提:逮捕に重大な違法があれば、勾留請求は却下される(任意同行と称する実質的逮捕・要件を欠く現行犯逮捕・要件を欠く緊急逮捕・その他根本的な瑕疵は、原則として重大な違法)。では釈放後、同一の被疑事実で再逮捕できるか。
  • 「重大」と「極めて重大」(このページの読み方):勾留請求が却下されるのは逮捕に重大な違法があるとき。解説書が再逮捕を認めない例に挙げるのは、違法の程度が極めて重大な場合。勾留請求の却下と再逮捕の可否とで違法を別々に量るのかどうかは、解説書は明言していない(項目9の京都地決と設問の検討の食い違いも参照)。
  • 2つの逮捕の違い:現行犯逮捕=現に罪を行い、又は行い終わった者(現行犯人・)は、何人でも逮捕状なく逮捕できる()。緊急逮捕=一定の重い罪を犯したと疑うに足りる十分な理由があり、急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないとき、理由を告げて逮捕できるが、直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなければならない()。
  • 学説:先行する逮捕が違法なら、再逮捕は一切認められない、とする見解がある。
  • 通説:違法の程度を問わず一切不可とするのは妥当でない → 例外的に再逮捕を認める。
  • 物差し(解説書):前の項目と同じ比較衡量で決することができる。違法の程度が、被疑者の不利益の重さに効く。
手続の種類の選択を誤ったにすぎない違法が極めて重大
例緊急逮捕すべきところを、誤って現行犯逮捕した嫌疑が極めて薄いのに逮捕した/検察官送致までの制限時間を守らない
不利益大きくない側(設問の検討では、72時間以内であることと合わせて「大きいとまではいえず」)非常に大きい
再逮捕必要性の程度に照らし、例外的に認められることになろう認められない
違法な逮捕のため釈放した被疑者を、同一の被疑事実で再逮捕したい違法が極めて重大か例:嫌疑が極めて薄い・送致までの制限時間を守らない再逮捕できない不利益が非常に大きいはいいいえ必要性が不利益と釣り合うか選択の誤りにすぎないなら不利益は大きくない側再逮捕できないいいえはい例外的に認められる
解説書は2つの例を挙げて「比較衡量で決することができる」と書くだけで、要件の形で並べてはいない。2つの例の中間の違法も、同じ天秤で量る。勾留請求を却下する「重大な違法」との関係は、解説書は説明していない(項目9)。

犯行を見ていない警察官が、被害者の「この人です」だけで現行犯逮捕した。嫌疑も緊急性も十分で、緊急逮捕なら要件を満たしていた → 手続の種類の選択を誤った側。嫌疑がほとんど無いのに逮捕した → 極めて重大な側。

×にされやすい形
  • 「先行する逮捕が違法なら、同一の被疑事実での再逮捕は一切許されない」(そういう学説もある。通説は例外を認める)
  • 選択の誤りの例を逆向き(現行犯逮捕すべきところを緊急逮捕した)にする形(解説書の例は「緊急逮捕すべきところを誤って現行犯逮捕」)
  • 検察官送致までの制限時間を守らなかった場合を、選択の誤りと同じ軽い側に置く形(解説書は極めて重大の側の例に挙げる)

9京都地決昭44・11・5とその後判例

  1. 司法巡査が、恐喝未遂の現行犯人として逮捕(犯行の20数分後・20数m離れた所・被害者の供述で特定)。
  2. 検察官の勾留請求 → 却下。
  3. 勾留請求が却下されたので、被疑者は釈放された。
  4. 却下の後(解説書が伝える経過):検察事務官が同一の事実で緊急逮捕し、当初の現行犯逮捕から72時間以内に再度の勾留請求 → 認められた(72時間以内なので、下の準抗告の決定より前の出来事)。
  5. 最初の却下に対する検察官の準抗告 → 棄却(京都地決)。
  6. 決定の理由:緊急逮捕の実体的要件はあったが、現行犯・準現行犯の要件は無い。逮捕したこと自体に違法は無いとしても、直ちに緊急逮捕状を請求して司法審査を受けるべきだったのに、そうせずに逮捕を継続した点に重大な違法(緊急逮捕なら、逮捕の後に直ちに逮捕状を求める手続が要る=。決定は、その手続をとらずに拘束を続けた点をとがめた)。
  7. 決定は、将来同一の事実で再度の逮捕・勾留請求が予想される場合でも、違法を明確にするため勾留請求は却下するほかない、とも述べた。
  • 再度の勾留請求を認めた裁判がどんな理由を示したかは、解説書にも書かれていない。
  • 解説書の設問の検討(著者の当てはめ=裁判所の理由ではない):逮捕手続の種類の選択を誤ったにすぎず、違法の程度が重大とまではいえない場合である上、当初の違法逮捕時から72時間以内に勾留請求=不利益の程度は大きいとまではいえない/恐喝未遂という重大な犯罪・否認・逃亡や罪証隠滅のおそれ=必要性の程度は大きい → 例外的に認めてよい。
  • 食い違いに注意:京都地決は勾留請求の段階で、この逮捕に「重大な違法」があるとした。解説書は設問の検討で、同じ違法を「重大とまではいえない」とし、再逮捕・再勾留を認めてよいとする。両者の関係を、解説書は説明していない。
  • 「当初の逮捕から72時間以内」が法律の定めか、実務の配慮かは次の項目10。
×にされやすい形
  • 京都地決の重大な違法を「要件を満たさない現行犯逮捕をしたこと、それだけ」とする形(決定は、逮捕に踏み切ったこと自体ではなく、緊急逮捕状を請求せず拘束を続けた点を重大とした)
  • 「裁判所は、選択の誤りにすぎず72時間以内だから再勾留を認めた」と、裁判所の理由として言い切る形(その理由づけは解説書の当てはめ)

10逮捕し直したときの時間制限と実務の配慮条文

  • :司法警察員は、逮捕状により逮捕したとき、または逮捕状により逮捕された被疑者を受け取ったときは、身体を拘束された時から48時間以内に検察官に送致する。
  • ・:送致を受けた検察官は、受け取った時から24時間以内に勾留を請求。この制限は、身体を拘束された時から72時間を超えられない。
  • :検察官が逮捕状により逮捕したとき(または逮捕された被疑者を受け取ったとき・送致された被疑者を除く)は、身体を拘束された時から48時間以内に勾留を請求。逮捕し直しが緊急逮捕なら、で同じ(逮捕状による逮捕の規定を準用)。
  • 実務:送致を受けた検察官・検察事務官が逮捕の違法を見つけると、勾留請求の前に一旦釈放し、検察官・検察事務官が改めて通常逮捕・緊急逮捕して勾留請求する例がある。
  • 問題:これを認めると、により、逮捕し直した時から48時間以内に請求すればよいことになり、拘束が長くなる。
  • 実務の配慮(解説書):検察官は逮捕し直した後直ちに請求し、当初の違法な逮捕の時から・の72時間以内に請求して、不利益の程度が大きくならないように配慮している(図では、再逮捕からの48時間を「制限時間として考慮しない」とする)。解説書はこれを検察官の「配慮」として書く。法文()だけなら、再逮捕から48時間。
当初の逮捕 釈放→逮捕し直し 0 40時間 72時間 88時間 204条だけなら:48時間 実務の配慮:当初から72時間以内 上乗せしない
時刻は説明用の例。逮捕し直した時からの48時間を数えると、当初の逮捕から88時間まで延びうる。解説書は、検察官が当初の逮捕から72時間(・)の中に収めるよう配慮している、と書く。
×にされやすい形
  • 「逮捕し直したときのの48時間は、当初の逮捕の時から数える」(法文の48時間は逮捕し直した拘束の時から。当初から72時間内に収めるのは、解説書が検察官の「配慮」として書くもの)

刑事訴訟法 全体ロードマップへ →

刑事訴訟法 の復習ノートを1ページで通して読む(この回から)→