刑事訴訟法ゼロから刑事訴訟法#19

捜査の端緒①職務質問——「停止」はどこまでの実力行使を含むか

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第2章 捜査 ⑨/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

警職法2条1項——「停止」を解釈する

停止させて質問することができるという条文の言葉だけでは実力行使の限度が決まらないことを示す板

もう一度、前回読んだ条文を開きましょう。

条文警察官職務執行法第2条1項

警察官職務執行法第2条1項——質問(再掲) 警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者を停止させて質問することができる

要件の分解は、もうやり直しません。今日見るのは、末尾の2文字だけです。条文は、「停止させて質問することができる」としか言っていません。言葉だけを見れば、そうとも読めます。でも、条文の言葉は、それだけでは意味が決まりません。実際の場面に当てて、外側から測って初めて、その言葉がどこまでを含むかが見えてきます。今日のこの後全体が、その解釈の実演でもあります。では、1つ目の場面を見ましょう。

雪の路上でエンジンキーを取り上げた事件——事案

電話報告から蛇行停止職務質問エンジンキー取り上げ15分後の前科連絡までの時系列を示す図

ある警察署に、本人からの電話があったという報告が入りました。意味のよく分からない内容の電話でした。警察官が現地に出向いて事情と車の特徴を聞き、覚醒剤使用の容疑があると判断しました。別の警察署の巡査が、国道を走るその車を発見し、拡声器で停止を指示しました。車は2、3度蛇行しながら進み、交差点の手前で指示に従って停止しました。当時、付近の道路は積雪により滑りやすい状態でした。この積雪という事実を、覚えておいてください。到着した巡査部長が、職務質問を始めます。本人は、素直には応じません。目をキョロキョロさせ、落ち着きのない態度でした。

エンジンを空ふかししたり、ハンドルを切るような動作をしたため、巡査部長は車の窓から腕を差し入れ、エンジンキーを引き抜いて取り上げました。そして、その15分後に、「覚醒剤取締法違反の前科が4犯ある」という無線連絡が入りました。この時間の刻みが、後で効いてきます。まず、判旨を見ましょう。

2本の足で立つ適法性——判旨

警職法2条1項と道交法67条4項という2本の根拠でエンジンキー取り上げが立っていることを示す表

最高裁が示した判断を、そのまま読みます。

判例最決平6・9・16 刑集48巻6号420頁

雪の路上でエンジンキーを取り上げた事件——2本の足で立つ適法性 職務質問を開始した当時、被告人には覚せい剤使用の嫌疑があったほか、幻覚の存在や周囲の状況を正しく認識する能力の減退など覚せい剤中毒をうかがわせる異常な言動が見受けられ、かつ、道路が積雪により滑りやすい状態にあったのに、被告人が自動車を発進させるおそれがあったから、前記の被告人運転車両のエンジンキーを取り上げた行為は、警察官職務執行法二条一項に基づく職務質問を行うため停止させる方法として必要かつ相当な行為であるのみならず、道路交通法六七条三項に基づき交通の危険を防止するため採った必要な応急の措置に当たるということができる。

「のみならず」という言葉に注目してください。この行為は、2本の足で立っています。1本目は、警職法2条1項に基づく、停止させる方法として必要かつ相当な行為だという足です。もう1本は、道路交通法に基づく、交通の危険を防止するため採った必要な応急の措置だという足です。読んでみましょう。

条文道路交通法第67条4項

道路交通法第67条4項——応急の措置 4 前三項の場合において、当該車両等の運転者が第六十四条第一項、第六十四条の二第一項、第六十五条第一項、第六十六条、第七十一条の四第四項から第七項まで又は第八十五条第五項から第七項(第二号を除く。)までの規定に違反して車両等を運転するおそれがあるときは、警察官は、その者が正常な運転ができる状態になるまで車両等の運転をしてはならない旨を指示する等道路における交通の危険を防止するため必要な応急の措置をとることができる

この決定の「67条3項」は、決定当時の条文番号です。改正で項がずれ、今は67条4項が同じ中身になりました。今の3項は呼気検査の規定なので、答案では4項と書いてください。ここは読み飛ばして構いません。効いているのは、66条だけです。過労や病気、薬物の影響などで正常な運転ができないおそれがある状態での運転を禁止する条文です。覚醒剤の影響で正常な運転ができないおそれがあったから、交通警察としての足が立つんです。積雪で滑りやすい道路で、薬物の影響下で発進されるおそれがあった。だから、警察官は交通の危険を防止する応急の措置をとることができました。

片方だけの事案ではありません。だから、「エンジンキーの取り上げは、いつでも適法」だとは一般化できません。積雪と、発進のおそれという、交通の足まで揃った事案です。1本だけで足りるかは、この決定は答えていません。2本とも立つ事案についての判断だからです。答案では、立つ足を全部挙げる。それが、射程を外さない書き方です。

同じ事件の中で、結論は分かれる

警職法2条1項と道交法67条4項という2本の根拠でエンジンキー取り上げが立っていることを示す表

ここで、1つ確認しておきたいことがあります。この事件、実はエンジンキーの取り上げの後、話が続きます。身体に対する捜索差押許可状の執行が始まるまでの間、約6時間半以上、本人は現場に留め置かれました。最高裁は、この留め置きを「任意捜査として許容される範囲を逸脱したものとして違法」と判断しています。違法とされたのは、この留め置きの部分だけです。ただし、「その違法の程度は、いまだ令状主義の精神を没却するような重大なものとはいえない」ともしていて、尿の鑑定書の証拠能力は肯定されています。1つの事件の中で、結論が分かれています。

結論が分かれる理由は、天秤にあります。短時間の実力行使と、6時間半の留め置きでは、天秤の傾き方が変わります。6時間半の中身、証拠の扱いは、また別の回で扱います。今日は、この事件が全部適法だったわけではない、ということだけ持ち帰ってください。

天秤に目盛りを入れる

天秤の左の皿に権利利益の種類と時間右の皿に不審事由嫌疑重大性予防の必要性代替手段の不存在を乗せた板

さて、ここからが今日の中心の1つです。左の皿に対象者が受ける権利・利益の侵害・制約の程度。右の皿には、捜査の必要性ではなく、警察目的から来るもっと広い必要性、でしたよね。今、それぞれの皿に何を乗せたか、思い出せますか?えっと……あの天秤には、まだ中身が無かった気がします。あの天秤は、まだ空っぽの器でした。今日は、そこに目盛りを入れます。左の皿は、2項目で尽きます。1つ目、権利・利益の種類です。身体の自由を直接に制約するなら大きく、行動の自由にとどまるなら、やや小さいと見ます。2つ目は、侵害・制約された時間です。これは、後でじっくり扱います。

右の皿は、5項目です。1つ目、不審事由の内容・程度。理由のある質問に不合理な対応を続けたり、繰り返し逃げようとしたりするほど、程度が大きくなります。2つ目、犯罪の嫌疑の有無・程度。3つ目、犯罪の重大性。4つ目、犯罪や危険行為を予防する必要性です。5つ目、停止を求める重要性——代替手段が無いかどうかです。ここで、7項目を板にまとめておきます。

論文で書く規範:天秤の目盛り——考慮要素7項目 左の皿は、権利・利益の種類侵害・制約された時間の2項目。 右の皿は、不審事由の内容・程度犯罪の嫌疑の有無・程度犯罪の重大性犯罪や危険行為を予防する必要性停止を求める重要性——代替手段が無いかどうかの5項目。 (比例原則の当てはめで拾う7つの考慮要素(左2・右5))

この目盛りを、実際にさっきの事案で使ってみましょう。

当てはめを目盛りで通す——雪の路上の事件

雪の路上の事件の各事情を天秤の目盛りに1つずつ乗せて左は軽く右は重いと確定する板 図:雪の路上の事件の各事情を天秤の目盛りに1つずつ乗せて左は軽く右は重いと確定する板

では、さっきの、雪の路上の場面を、この目盛りで量ってみましょう。まず左の皿、1つ目、権利・利益の種類です。奪われたのは、自動車で移動する自由にとどまります。2つ目、時間です。エンジンキーを取り上げてから、前科の連絡までは15分。短時間です。次に右の皿です。1つ目、不審事由。目をキョロキョロさせ、落ち着きなく、素直に応じず、空ふかしにハンドル操作。かなり大きいです。2つ目、嫌疑。覚醒剤使用の嫌疑、大きいです。3つ目、重大性。覚醒剤の使用は、重大な犯罪です。4つ目、予防の必要性。積雪の路上で空ふかしをするような行動は、交通の危険を生じさせかねません。予防の必要性、大きいです。

5つ目、代替手段。エンジンキーを取り上げるほかに、発進を防ぐ手段はありません。必要性、大きいです。左は軽く、右は重い。この差が大きいほど、比例原則の相当性は満たされます。だから、警職法2条1項の「停止」として適法と言えるのです。目盛りを1つずつ拾って、どちらが重いかを口で確定する。これが、答案の書き方そのものです。

「時間」が性質を変える

対象者Bへのキーの取り上げが5分で返す場合と日暮れまで続く場合とで天秤ごと1階に落ちうることを示す図

ここで、さっき後回しにした「時間」に戻ります。「侵害・制約された時間」。これは、量の話に見えて、実は質の話です。見解が分かれています。整理してみましょう。

論文で書く規範:「時間」が性質を変える——見解の対立 エンジンキーを取り上げた状態が長時間に及び、対象者が身動きできないまま置かれたときは、実質はもはや逮捕と変わらないとして、強制処分に該当するとみる見解がある。これに対し、対象者から奪われているのはあくまで自動車で移動する自由にとどまり、身体そのものを拘束する逮捕とはなお性質が異なるとして、任意処分という枠組みの中でその適法性を判断すべきとする見解もある。 (見解の対立(判例は正面から答えていない))

ここでは、決着をつけません。判例も、正面から答えていないからです。さっき見た6時間半の留め置きも、「任意捜査として許容される範囲を逸脱した」としているだけで、強制処分に当たるとは言っていません。そこを混同しないでください。自分たちの例で、確かめましょう。警察官Aが、対象者Bからエンジンキーを取り上げて、5分後に返したとします。この5分の取り上げは、任意処分の範囲内です。では、Aが、キーを取り上げたまま、Bを日が暮れるまで車から出られない状態にしたら、どうでしょうか。この見解に立てば、天秤の左の皿が重くなりすぎて、天秤ごと、1階に落ちることになります。

強制処分だと判定されれば、警職法2条3項違反で直ちに違法です。同じ「エンジンキーを取り上げる」という行為の名前でも、時間の長さ次第で、階が変わりうるんです。答案は、どちらの立場でも書ける形で大丈夫です。時間の長さを具体的に指摘して、どちらの見解を採るかを示し、それに沿って結論を出せば、筋は通ります。

ホテルの客室で内ドアを押し開けた事件——事案

110番通報から臨場外ドア内ドアの攻防殴りかかりまでの時系列を示す図 図:110番通報から臨場外ドア内ドアの攻防殴りかかりまでの時系列を示す図

2つ目の場面に移りましょう。あるホテルで、責任者が110番通報をしました。チェックアウトの予定時刻を過ぎても客が出てこず、問い合わせにも要領を得ない返答。おまけに、清涼飲料水を一度に5缶注文していました。料金の不払い、退去してほしいという希望、そして薬物使用の可能性。これが通報の内容です。臨場した巡査2名が、責任者から事情を聞き、警職法2条1項に基づいて職務質問を行うことにしました。外ドアをたたいて声をかけましたが、返事がありません。無施錠だった外ドアを開けて内玄関に入り、料金の支払いを督促する来意を告げました。

客は、内ドアを内向きに20から30センチほど開けましたが、すぐに閉めてしまいました。巡査は、制服姿の自分と目が合うなり、慌てて内ドアを閉められたことに、不審の念を強めました。巡査は、内側から押さえられている内ドアを押し開け、ほぼ全開にして、内玄関と客室の境の敷居あたりに足を踏み入れ、内ドアが閉められるのを防止しました。そして、その途端、客は両手を振り上げて、殴りかかってきました。この続きは、後で扱います。まず、ドアを押し開けた行為そのものの判断を見ましょう。

原則・例外・目的からの限定——判旨

原則として許されないから例外の事情を積み目的の範囲で付随行為として認める3段の判断構造を示す図

最高裁が示した判断を、順番に読みます。

判例最決平15・5・26 刑集57巻5号620頁

ホテルの客室で内ドアを押し開けた事件——原則 一般に、警察官が警察官職務執行法2条1項に基づき、ホテル客室内の宿泊客に対して職務質問を行うに当たっては、ホテル客室の性格に照らし、宿泊客の意思に反して同室の内部に立ち入ることは、原則として許されないものと解される。

まず、原則を固く立てています。ここが1段目です。決め手は、「客室の性格に照らし」という一言です。ホテルの客室には、借りている間、その人が私生活を送る場所としての性格がある、という理解です。そこから、原則が出てきます。例外を認める判決ほど、原則を先に固く立てる。それが、いい一般化です。では、2段目、例外に入る事情を見ましょう。

判例最決平15・5・26 刑集57巻5号620頁

ホテルの客室で内ドアを押し開けた事件——例外と目的からの限定 ……被告人は、もはや通常の宿泊客とはみられない状況になっていた。……質問を継続し得る状況を確保するため、内ドアを押し開け、内玄関と客室の境の敷居上辺りに足を踏み入れ、内ドアが閉められるのを防止したことは、警察官職務執行法2条1項に基づく職務質問に付随するものとして、適法な措置であったというべきである。

制服姿の巡査と目が合うなり慌てて閉めた態度、通報の内容、こうした事情が積み重なって、例外に入る状況を作っています。「質問を継続し得る状況を確保するため」。この目的の範囲でだけ、ドアを押し開けて足を踏み入れる行為が、職務質問に付随するものとして適法だとされました。止まらせる行為ではありません。でも、質問を続けるために必要な措置だから、付随する行為として許される。これが、条文の読み方を1段変えるところです。ここで、正確に言っておきたいことがあります。「『停止』は例示にすぎない」という言い方を、よく見かけます。でも、これは最高裁の言葉ではありません。

最高裁が言ったのは、「職務質問に付随するものとして、適法な措置」というところまでです。学説の理解です。学説の見立てでは、条文の「停止」は代表例の1つにすぎません。質問を止めずに続けるために欠かせない手段であれば、これも付随する行為として許容されると考えるのです。ここは、それだけ大事な弁別です。答案では、「判例は『停止』を例示にすぎないとした」とは書きません。「最高裁は付随する措置として適法とした」と書き、「例示にすぎない」は学説の理解として書く。ここを混ぜると、判例の射程を誤ります。もう1つ、気になる点があります。

さっき、殴りかかってきた後の話が残っていましたね。実は、この直後、警察官は内ドアの内部にまで立ち入っています。この立入りについて、決定は、「突然の暴行を契機とするもの」だから、さっきの結論を左右しないとしています。押し開けと、立ち入りは、別の話です。混同しないでください。では、「付随する」の物差しを、自分たちの例で確かめましょう。

ドアを押さえる行為と部屋の中を歩き回って引き出しを開ける行為の2場面を比較する図 図:ドアを押さえる行為と部屋の中を歩き回って引き出しを開ける行為の2場面を比較する図

警察官Aが、対象者Bの部屋で、閉まりかけたドアを押さえます。質問を続けられる状況を確保するためです。では、Aが、質問を続けたいからといって、部屋の中を歩き回って、引き出しを開けたら、どうでしょうか。それは、さすがにやりすぎでは。「付随する」の物差しは、「質問の実施・継続に必要か」です。引き出しを開ける行為は、質問を続けるために必要ではありません。付随しません。

付随行為にも限度がある

付随する行為という受け皿に入った後もなお比例原則で測り直すという二段構えを示す図 図:付随する行為という受け皿に入った後もなお比例原則で測り直すという二段構えを示す図

では、さっき保留した続きに戻りましょう。警察官らは、その後、約30分間にわたって、全裸の被告人をソファーに座らせて押さえ続けました。その間、衣服を着用させる措置も採りませんでした。決定は、この行為をどう見たか、読んでみましょう。この中に「所持品検査」という言葉が出てきます。この事件で行われたもので、中身は次の章です。

論文で書く規範:付随行為にも限度がある なお、警察官らが約30分間にわたり全裸の被告人をソファーに座らせて押さえ続け、その間衣服を着用させる措置も採らなかった行為は、職務質問に付随するものとしては、許容限度を超えており、そのような状況の下で実施された上記所持品検査の適否にも影響するところがあると考えられる。 (最決平15・5・26 刑集57巻5号620頁)

付随する行為だと認められたからといって、警察官が何をしてもいいわけではありません。少なくとも、衣服を着用させる措置くらいは、採るべきだったということです。受け皿に入れて終わりにせず、なお比例原則で測り直す。これが答案の作法です。自分たちの例で、確かめてみましょう。たとえば、警察官Aが、対象者Bに衣服を着せたうえで、数分間ソファーに座らせて質問を続けたとします。質問の実施・継続に必要な範囲として、限度内に収まりうると考えられます。でも、実際の事案は、全裸のまま30分間、衣服を着せる措置も採らずに押さえ続けました。

着せるという最低限の配慮を欠いたまま、30分という長さまで積み重なったから、限度を超えたと判断されました。ちなみに、殴りかかってきた点は、公務執行妨害罪を構成する疑いがあり、警職法5条に基づく制止とみる余地もあるとされています。中身には、今日は立ち入りません。最後に、1つだけ結論を言っておきます。許容限度を超えていたとしても、令状主義に関する規定を潜脱する意図があった証跡は無いとして、発見された証拠を違法収集証拠として排除することには結び付かない、とされました。この判断の中身、排除するかどうかの枠組みは、また別の回で扱います。今日は、「受け皿に入れても、なお測り直す」という作法だけ、持ち帰ってください。

論文の型

行政警察活動か強制処分かの2段に停止の枠か付随行為かを差し込み比例原則を満たすかで締める4段の型を示す板

では、今日渡したものを、答案の型に組み込みましょう。前回、3段の型を作りましたよね。①そもそも行政警察活動か、②強制処分に当たらないか、③任意処分として比例原則を満たすか。この3段でしたね。今日は、この型を作り直さず、1段足します。②と③の間です。なぜ、そこに差し込むのか、理由から話します。②で強制処分に当たると判定されたら、令状が要るという結論で、そこで話は終わりです。任意処分だと決まって初めて、警職法2条1項が授権する「停止」の枠に乗るのか、乗らないなら付随行為なのかを問えます。強制か任意かという土俵が決まらないと、この問いは立てられません。

新しい③は、その措置は「停止」の枠に入るか。入らないなら、質問の実施・継続に必要な、「付随する行為」といえるかを問います。ここで落ちれば、職務質問の範囲外の行為だったという結論になります。④、警職法1条2項が定める比例原則を満たすか。ここに、今日作った天秤——権利・利益の侵害・制約の程度と必要性を量る、あの目盛りが入ります。③で落ちれば付随行為の議論に進み、④で落ちれば違法という結論です。同じ「落ちる」でも、行き先が違うんです。この型は、次に出会う事案でも、そのまま使えます。

今日の地図(保存版)

今日渡した柱の一覧板 図:今日渡した柱の一覧板

最後に、今日渡したものを振り返りましょう。「停止」を解釈対象にしたこと。エンジンキーの取り上げが、2本の足で立っていたこと。同じ事件の中で結論が分かれていたこと。天秤に目盛りが入ったこと。「時間」が性質を変えること。「停止」は例示にすぎないという学説の理解。原則・例外・目的からの限定という書き方。付随行為にも限度があること。そして、答案の型が4段になったことです。ここまでが、今日の全体像です。よかったです。しっかり使いこなしてください。前回見た4項の余白——逮捕されていない人の所持品を調べる明文が無い、あの余白を、次は埋めにいきます。

今日の受け皿が、次の章の土台になります。

参照条文

  • 警察官職務執行法第2条1項
  • 道路交通法第67条4項

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