憲法ゼロから憲法#64

国会の運営——会期・緊急集会・会議の原則

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第4章 統治 #64/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

今日の地図——時間・空白・数字

今日の地図(①会期=国会が動ける時間の区切り/②緊急集会=衆議院が無い空白を埋める代役/③会議の原則=決を採るための数字) 図:今日の地図

  • ①会期=国会が動ける時間の区切り
  • ②緊急集会=衆議院が無い空白を埋める代役
  • ③会議の原則=決を採るための数字

この二つの宿題を回収しながら、今日は一つの問いに答えていきます。国会はいつ動き、衆議院が無いときは誰が決めるのか。今日の地図を、先に見ておきましょう。一つ目は、会期です。国会が動ける時間には区切りがあります。二つ目は、緊急集会です。衆議院が存在しない空白を、参議院が埋めます。三つ目は、会議の原則です。実際に決を採るときの数字のルールです。この三つの軸で今日は進みます。では、まず会期から見ていきましょう。

会期制——国会には「開いていない時間」がある

会期とは何か(定義=国会が憲法上の権能を行使できる限られた期間/なぜ区切るのか=議員も生活者で選挙区の活動がある・審議を集中させる・行政の負担を無限にしない) 図:会期とは何か

  • 定義=国会が憲法上の権能を行使できる限られた期間
  • なぜ区切るのか=議員も生活者で選挙区の活動がある・審議を集中させる・行政の負担を無限にしない

国会は一年三百六十五日、いつでも開いているわけではありません。実は、国会が実際に権能を行使できる期間には区切りがあります。これを会期と呼びます。国会が憲法上の権能を行使できる、限られた期間のことです。理由はいくつか考えられます。まず、議員も一人の生活者です。選挙区に戻って活動する時間も必要です。また、期間を区切ることで審議を一つの案件に集中させやすくなります。そして、国会が動いている間は行政の側もそれに対応する負担を負います。その負担を無限に続けさせないためにも、区切りは意味を持ちます。では、実際にどういう集会で国会が動くのか、条文を見てみましょう。

条文日本国憲法 52条

日本国憲法 第五十二条 国会の常会は、毎年一回これを召集する。

この常会が、いちばん基本になる会期です。毎年一回、召集されます。この条文が言っているのは、毎年一回召集する、というところまでです。いつ召集し、どれくらい続くのかは書かれていません。

常会の実際(憲法52条=毎年1回としか言っていない/国会法2条=1月中に召集するのが常例/国会法10条=会期は150日間) 図:常会の実際

  • 憲法52条=毎年1回としか言っていない
  • 国会法2条=1月中に召集するのが常例
  • 国会法10条=会期は150日間

実際の召集の時期や会期の長さは、国会法という法律に書かれています。国会法二条は、常会は毎年一月中に召集するのを常例とする、と定めています。そして、国会法十条が常会の会期は百五十日間とすると定めています。憲法五十二条は毎年一回という頻度だけを決めています。一月中に始まって百五十日間続く、という実務の中身は国会法が決めているんです。ここは、はっきり分けておいてください。もう一つ、大事な点があります。実は、会期制そのものは憲法の条文にはっきりとは書かれていません。会期制という言葉自体は、憲法のどこにも書かれていないんです。ただ、憲法は五十二条・五十三条・五十四条で三種類の集会を定めています。常会、臨時会、そして特別会の三つです。そこから、国会は会期という区切られた単位で動く仕組みを採っている、と解釈されています。

条文に書いてあることと、解釈で導かれることを混同しないでください。では、その三種類の集会のうち二つ目——臨時会に進みましょう。ここに、今日いちばん最初の急所があります。

臨時会の急所——「求められても召集しない」を止める手段がない

臨時会とは(常会だけでは足りない場合に開かれる国会/要件は五十三条に定められている) 図:臨時会とは

  • 常会だけでは足りない場合に開かれる国会
  • 要件は五十三条に定められている

常会だけでは、国会が対応しきれない場面があります。そこで、臨時会という制度があります。条文を見てみましょう。

条文日本国憲法 53条

日本国憲法 第五十三条 内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。

前段は、内閣が必要と判断すれば臨時会を召集できる、という定めです。そして後段が、今日の急所です。いずれかの議院の、総議員の四分の一以上が要求すれば、内閣は召集を決定しなければならない、とあります。

四分の一の意味(多数決の外側に置かれた少数派の武器/少数派でも一定数集まれば内閣に召集を義務づけられる) 図:四分の一の意味

  • 多数決の外側に置かれた少数派の武器
  • 少数派でも一定数集まれば内閣に召集を義務づけられる

過半数どころか、四分の一で足ります。ここに意味があります。院内で多数を握れない少数派でも、総議員の四分の一を集めれば、内閣に召集を義務づけられるんです。「開かせる」こと自体が、少数派を守るための武器として設計されているんです。逆に言うと、総議員の十分の一程度が求めても、それだけでは内閣に召集の義務は生じません。四分の一という線そのものが要件なんです。ですが、ここで一つ、大きな問題が残ります。

義務はある、けれど強制する手段がない(内閣に召集義務の履行を強制する手段は憲法にも国会法にも定められていない/「召集義務がない」わけではない) 図:義務はある、けれど強制する手段がない

  • 内閣に召集義務の履行を強制する手段は憲法にも国会法にも定められていない
  • 「召集義務がない」わけではない

総議員の四分の一以上が要求したのに、内閣が召集を決定しなかったら、どうなるでしょうか。実は、内閣に召集義務の履行を強制する手段は、憲法にも国会法にも定められていません。ただし、ここは注意してください。内閣に召集義務が無いわけではありません。義務そのものは、条文が「決定しなければならない」と、はっきり課しています。欠けているのは、その義務を強制的に実行させる手段のほうです。ここを混同しないでください。三権分立の下で、内閣の政治的な判断に司法や立法が直接介入する仕組みは限られています。義務は課しても、それを強制する制度までは作られていない。これは憲法上の欠缺と言われます。

本来あってもよいはずの仕組みが、条文に定められていない状態のことです。なお、臨時会が召集される場面は、これだけではありません。国会法には、衆議院議員の任期満了にともなう総選挙のあとや、参議院議員の通常選挙のあとにも、一定の日数以内に臨時会を召集する定めがあります。今日は、五十三条後段の急所——強制する手段が無いという一点を、まず押さえてください。では、次に進みましょう。会期にはもう一つ、切れることの効果という話があります。

会期不継続の原則と一事不再議の原則——「会期が切れる」ことの効果

明文の有無で分ける(会期不継続の原則=国会法68条本文に明文あり/一事不再議の原則=明文なし・解釈上の運用) 図:明文の有無で分ける

  • 会期不継続の原則=国会法68条本文に明文あり
  • 一事不再議の原則=明文なし・解釈上の運用

会期が終わると、審議していた案件はどうなるでしょうか。実は、原則としては持ち越されません。条文を見てみましょう。

条文国会法 68条

国会法 第六十八条 会期中に議決に至らなかつた案件は、後会に継続しない。但し、第四十七条第二項の規定により閉会中審査した議案及び懲罰事犯の件は、後会に継続する。

会期中に議決まで至らなかった案件は、次の会期に持ち越さない、というのが原則です。途中まで進んでいた審議も、原則としてリセットされます。これを会期不継続の原則と呼びます。なぜこうなるのか。会期ごとに一つの独立した意思決定の単位だと考えるからです。ただし、これは憲法が要求している原則ではありません。この原則は、国会法という法律のレベルで定められた原則です。だからこそ、同じ六十八条のただし書きで例外が作られています。閉会中に審査した議案や、懲罰にかかわる案件は、次の会期にも引き継がれます。会期不継続の原則は絶対の原則ではなく、法律で調整できる程度の原則なんです。さて、もう一つ似た名前の原則があります。一事不再議の原則です。

一度否決した案件を、同じ会期の中でもう一度審議しない、という原則です。会期不継続は会期をまたぐ話でした。一事不再議は同じ会期の中の話です。そして、ここが今日の弁別点です。会期不継続の原則には国会法六十八条という明文があります。ですが、一事不再議の原則には明文がありません。会期という区切られた単位の考え方から導かれる、解釈上の運用のルールとして扱われています。名前は似ていても、根拠の強さは違います。では、次は今日の主役——参議院の緊急集会に進みましょう。

緊急集会①——なぜ必要か、そして三つの要件

空白の七十日(解散→四十日以内→総選挙→三十日以内→特別会召集、この間は衆議院が存在しない) 図:空白の七十日

前回、同時活動の原則を見ましたね。両議院は同時に召集され、同時に開会し、同時に閉会する。だから衆議院が解散されると、参議院も同時に閉会します。では、解散されてから次の衆議院が動き出すまで、どれくらいの時間がかかるでしょうか。

条文日本国憲法 54条

日本国憲法 第五十四条 1項 衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。 2項 衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。 3項 前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。

一項を見てください。解散の日から四十日以内に総選挙、その選挙の日から三十日以内に国会召集です。この、総選挙のあとに召集される国会を、特別会と呼びます。最長でおよそ七十日、国会そのものが存在しない期間ができます。そこで、二項のただし書きが効いてきます。内閣は参議院の緊急集会を求めることができるんです。

緊急集会の三つの要件(①衆議院の解散後・特別会召集前 ②国に緊急の必要があるとき ③内閣の求め、※衆議院の任期満了総選挙には規定なし) 図:緊急集会の三つの要件

  • ①衆議院の解散後・特別会召集前
  • ②国に緊急の必要があるとき
  • ③内閣の求め、※衆議院の任期満了総選挙には規定なし

緊急集会が開かれるには、要件が三つあります。一つ目は、衆議院が解散されたあと、特別会が召集される前であることです。二つ目は、国に緊急の必要があることです。三つ目は、内閣がそれを求めることです。参議院議員が自主的に緊急集会を開くことはできないんです。要求できるのは内閣だけです。臨時会は総議員の四分の一の要求でも開くことができました。そこが、今日いちばんの対比です。

臨時会と緊急集会の対比(臨時会53条後段=総議員の4分の1の要求で開ける/緊急集会54条2項=内閣の求めのみ・参議院議員の自主開催は不可) 図:臨時会と緊急集会の対比

  • 臨時会53条後段=総議員の4分の1の要求で開ける
  • 緊急集会54条2項=内閣の求めのみ・参議院議員の自主開催は不可

臨時会は、総議員の四分の一という少数派でも、内閣に召集を義務づけられました。ですが、緊急集会を求められるのは内閣だけです。参議院の側から動く道は用意されていません。緊急集会は、衆議院がそもそも存在しないという、異常な事態への例外的な代行措置だからです。もし参議院が自分の判断だけで開くことができるとしたら、参議院が常設的に国会の代わりを務めることにもなりかねません。参議院が常設の代役になるのは、制度としてまずいんです。緊急集会は、あくまで衆議院が戻ってくるまでの一時しのぎの制度です。だからこそ、発動する主体を内閣一本に絞ることで、その濫用を防いでいるんです。

もう一つ、注意しておきたい点があります。五十四条二項は、あくまで「衆議院が解散されたとき」を前提にしています。衆議院議員の任期満了にともなう総選挙の場合、この条文に対応する規定はありません。少なくとも、この条文が想定しているのは解散の場合だけです。ここは短答の引っかけになります。では、この緊急集会、実際にはどこまでのことができるんでしょうか。次に見ていきましょう。

緊急集会②——どこまでできるか、そして十日以内の同意

権能と国会と違う三点(権能=国会を代行する・法律案も予算も議決できる/①天皇の召集によらない ②内閣のみが求めうる ③首相指名と憲法改正の発議はできないと解されている) 図:権能と国会と違う三点

  • 権能=国会を代行する・法律案も予算も議決できる
  • ①天皇の召集によらない
  • ②内閣のみが求めうる
  • ③首相指名と憲法改正の発議はできないと解されている

緊急集会は、どこまでのことを決められるんでしょうか。実は、権能はかなり広いんです。緊急集会は国会を代行します。法律案も予算も議決できます。国に緊急の必要がある以上、必要な対応が一通りできます。なお、開催中の参議院議員には不逮捕特権や免責特権も認められます。会期の間は原則として逮捕されない、というのが不逮捕特権です。免責特権は、議院での演説や討論、表決について院外で責任を問われない、というものです。この二つの特権の趣旨と例外は、次の回でまとめて扱います。今日は緊急集会にも及ぶ、という点だけ押さえてください。さて、ここまで聞くと、ほとんど国会そのものに見えます。ですが、通常の国会とは違う点も三つあります。一つ目は、天皇の召集によらないことです。通常の国会召集は、天皇の国事行為の一つでしたね。

ですが、緊急集会はその手続きを経ません。二つ目は、求められるのが内閣だけだということです。さっき見た対比のとおりです。三つ目は、内閣総理大臣の指名と、憲法改正の発議はできないと解されていることです。この条文自体には、そう書かれていません。あくまで、解釈としてそう考えられている、ということです。緊急集会が代行できるのは国会の権能一般であって、国会そのものを新しく組み立て直すような根本的な決定までは含まれない、という理解です。首相の指名と憲法改正の発議は、そこまでの代役ではない、と理解されています。では、緊急集会で決めたことは、そのままずっと有効なんでしょうか。

十日以内の同意(緊急集会の措置=臨時のもの/次の国会開会後十日以内に衆議院の同意が必要=54条3項) 図:十日以内の同意

  • 緊急集会の措置=臨時のもの
  • 次の国会開会後十日以内に衆議院の同意が必要=54条3項

五十四条三項を、もう一度見てみましょう。緊急集会で採られた措置は臨時のものです。そして、次の国会開会の後、十日以内に衆議院の同意が必要だと定められています。実務上は、この後に召集される特別会を指すことが多いです。ですが、条文そのものの言葉は「次の国会」であって、「特別会」とは書かれていません。ここは条文の言葉のまま覚えておいてください。では、もし十日以内に衆議院の同意が得られなかったら、どうなるでしょうか。同意が得られなかったときの効果。そこが、今日いちばんの急所です。

将来に向かって無効(不同意の効果=これから先の効力を失う/すでに実行された措置は覆らない=遡及しない) 図:将来に向かって無効

  • 不同意の効果=これから先の効力を失う
  • すでに実行された措置は覆らない=遡及しない

条文の言葉を、正確に見てみましょう。同意がない場合には「その効力を失ふ」とあります。これは、将来に向かって効力を失う、という意味です。過去にさかのぼって無効になるわけではありません。具体例で考えてみましょう。緊急集会が、緊急の生活支援金を配る法律を成立させたとします。そして、実際に多くの人へ、支援金の振り込みがもう終わっていたとします。その場合でも、すでに振り込まれたお金を返してもらうことはできません。無効になるのは、これから先の部分だけです。まだ配っていない、これからの支給は止まります。ですが、すでに実行してしまった措置そのものは覆りません。

なぜ、こうなるんでしょうか。緊急の必要に応じて実際に行われた措置を信頼して、国民や行政はすでに動いています。それを後から根こそぎ覆すと、その信頼のうえに築かれた法律関係が崩れてしまいます。緊急集会は、暫定的だけれど有効な代行を認める制度です。だからこそ、事後に承認されなかった場合の効果も、将来だけを止める形にとどめているんです。では、緊急集会の話はここまでにして、今度は会議そのものの原則に進みましょう。冒頭に残しておいた宿題——憲法五十六条を開きます。

会議の原則①——定足数と表決数、五十六条の中身を開く

五十六条が二つある(国会法56条1項=発議の要件・衆20人参10人/憲法56条1項2項=定足数・表決数) 図:五十六条が二つある

  • 国会法56条1項=発議の要件・衆20人参10人
  • 憲法56条1項2項=定足数・表決数

以前、国会法五十六条一項の話をしました。覚えていますか。法律案を発議するのに必要な人数でしたよね。衆議院は二十人以上、参議院は十人以上。それは、法律案を国会に出すための条件でした。そして、あのとき、もう一つの五十六条——憲法の五十六条は、また別の話だと予告しましたね。今日、その中身を開きます。条文を見てみましょう。

条文日本国憲法 56条

日本国憲法 第五十六条 1項 両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。 2項 両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

一項が定足数、二項が表決数です。まず一項から見てみましょう。両議院は、総議員の三分の一以上が出席していないと、そもそも議事を開くことも議決することもできません。これが定足数です。そして二項です。議事の中身は、出席議員の過半数で決めます。賛否が同数のときは議長が決めます。そこが、今日の答え合わせです。国会法五十六条一項は、法律案を発議するための人数の要件でした。それに対して、憲法五十六条は、議事を開いて実際に決を採るための、出席人数と賛成の割合の要件です。数字が似ているからこそ、必ず法令名を付けて区別してください。国会法五十六条一項、憲法五十六条。この二つを、はっきり分けて言えるようにしておきましょう。

総議員と出席議員(定足数=総議員が基準/表決数=出席議員が基準/基準が入れ替わることが出題点) 図:総議員と出席議員

  • 定足数=総議員が基準
  • 表決数=出席議員が基準
  • 基準が入れ替わることが出題点

もう一つ、大事な対比があります。定足数と表決数、母数が違うことに気づきましたか。あっ、定足数は総議員で、表決数は出席議員でしたね。定足数は、議院に所属する総議員が基準です。ですが、表決数は実際にそこに出席している議員が基準になります。この基準が場面によって入れ替わることが、今日の出題点です。なお、「総議員」の意味そのものにも、実は議論があります。議員として法律で定められた定数で数えるのか、実際に今いる議員の数で数えるのか、という対立です。議院の先例では、法律で定められた定数のほうで扱われています。今日は、そこまでで止めておきます。では、次に進みましょう。過半数では決まらない議決が、実はいくつもあります。

会議の原則②——過半数で決まらない議決の一覧

特別多数決、分母で見る(出席議員の3分の2=資格争訟による議席喪失55条ただし書・秘密会の開催57条1項ただし書・議員の除名58条2項ただし書・法律案の再議決59条2項/総議員の3分の2=憲法改正の発議96条1項) 図:特別多数決、分母で見る

  • 出席議員の3分の2=資格争訟による議席喪失55条ただし書・秘密会の開催57条1項ただし書・議員の除名58条2項ただし書・法律案の再議決59条2項
  • 総議員の3分の2=憲法改正の発議96条1項

憲法五十六条二項の原則は、出席議員の過半数でした。ですが、これで決まらない議決もあります。出席議員の三分の二以上が必要な議決が、四つあります。一つ目は、資格争訟の裁判で議員の資格を失わせる議決です。以前見た五十五条ただし書でしたね。二つ目は、秘密会の開催です。これはあとで詳しく見ます。三つ目は、懲罰としての議員の除名です。これも以前見た五十八条二項ただし書でしたね。四つ目は、法律案の再議決です。参議院と異なる議決をされた法律案を、衆議院がもう一度可決する場面です。このうち三つは、以前に見た内容をこの一覧に並べ直したものです。秘密会だけは、このあと初めて開きます。そして、もう一つ別の基準の議決があります。総議員の三分の二以上が必要な、憲法改正の発議です。

今日は、これを一覧として並べ直しています。

分母の違いが制度の重さを表す(出席議員基準=欠席が多い日ほど可決しやすい/総議員基準=欠席の影響を受けずハードルが下がらない) 図:分母の違いが制度の重さを表す

  • 出席議員基準=欠席が多い日ほど可決しやすい
  • 総議員基準=欠席の影響を受けずハードルが下がらない

ここにも理由があります。出席議員を基準にすると、欠席する議員が多い日ほど、実は可決しやすくなってしまいます。ですが、憲法改正の発議は、国のかたちそのものを変える重い決定です。だからこそ、欠席者を分母から外さず、総議員を基準にしています。分母の選び方そのものが、その決定の重さを表しているんです。数字だけを暗記するのではなく、分母まで含めて覚えてください。では、次は会議そのものの、公開と委員会の話に進みましょう。

会議の公開と委員会制度——どこまで見えるのか

公開と非公開、三段階の予告(本会議=公開が原則/委員会=非公開が原則/両院協議会=公開が禁止) 図:公開と非公開、三段階の予告

  • 本会議=公開が原則
  • 委員会=非公開が原則
  • 両院協議会=公開が禁止

最後に、会議そのものがどこまで見えるのかを見ていきましょう。条文を見てみます。

条文日本国憲法 57条

日本国憲法 第五十七条 1項 両議院の会議は、公開とする。但し、出席議員の三分の二以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。 2項 両議院は、各々その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるもの以外は、これを公表し、且つ一般に頒布しなければならない。 3項 出席議員の五分の一以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければならない。

一項は、会議は公開が原則だという定めです。さっきの秘密会が、ここに出てきます。秘密会を開くにも、三分の二という高いハードルが要ります。二項は、会議の記録を残して、秘密会の記録のうち特に秘密を要するもの以外は公表する、という定めです。そして三項です。出席議員の五分の一以上の要求があれば、各議員の表決を会議録に記載しなければなりません。ここにも意味があります。記名で表決を記録させることで、誰が何に賛成し誰が何に反対したかが、記録として残ります。少数派が、この記録を求める権利を持っている、ということです。

臨時会の四分の一と並んで、これも少数派を守るための数字だと言えます。では、公開の話をもう少し広げてみましょう。会議には、本会議のほかに委員会もあります。

非公開の強さの違い(本会議=公開が原則・秘密会は例外/委員会=非公開が原則・報道機関等は許可で傍聴可/両院協議会=公開が禁止・例外なし) 図:非公開の強さの違い

  • 本会議=公開が原則・秘密会は例外
  • 委員会=非公開が原則・報道機関等は許可で傍聴可
  • 両院協議会=公開が禁止・例外なし

委員会は、本会議とは扱いが逆です。委員会は非公開が原則です。国会法五十二条一項が、委員会は議員のほか傍聴を許さない、と定めています。ただし、報道の任務にあたる者などは、委員長の許可があれば傍聴できます。「非公開」と「見えない」は同じではありません。そして、もう一つ。両院協議会は、さらに扱いが違います。両院協議会は、衆参の議決が食い違ったときに双方の委員が妥協案を探す場でしたね。国会法九十七条が、傍聴を許さない、と定めています。ここは注意してください。委員会は「非公開が原則」で、例外もあります。ですが、両院協議会は「公開が禁止」です。例外はありません。

本会議は公開が原則、委員会は非公開が原則だけれど例外あり、両院協議会は公開が禁止で例外なし。この三段階を、はっきり分けて覚えてください。

委員会中心主義(審議の中心は本会議ではなく委員会=国会法40条以下/常任委員会と特別委員会の2種類/常任委員会は衆参各17=国会法41条2項3項) 図:委員会中心主義

  • 審議の中心は本会議ではなく委員会=国会法40条以下
  • 常任委員会と特別委員会の2種類
  • 常任委員会は衆参各17=国会法41条2項3項

さて、その委員会が、実は審議の中心になっています。これを委員会中心主義と呼びます。国会法四十条以下が、委員会には常任委員会と特別委員会の二種類がある、と定めています。常任委員会は、ほぼ省庁に対応する形で置かれていて、衆議院・参議院とも、それぞれ十七あります。この十七という数字は、言い切って大丈夫です。国会法四十一条二項・三項の現行の条文を数えても、十七のままです。実際の審議は、この十七の常任委員会や、必要に応じて作られる特別委員会で行われています。本会議は、その結果を最終的に議決する場という位置づけになります。

本会議がメインだと思う人は多いです。ですが、実際に中身を詰めているのは委員会のほうなんです。では、今日の内容を一つにまとめましょう。

今日の地図(保存版)

三つの軸(時間=会期・常会52条/臨時会53条/特別会54条1項という区切られた時間の中で動く/空白=緊急集会・衆議院不在の間は参議院が代行する/数字=会議の原則・定足数と表決数と特別多数決が意思決定の物差しになる) 図:三つの軸

  • 時間=会期・常会52条
  • 臨時会53条
  • 特別会54条1項という区切られた時間の中で動く
  • 空白=緊急集会・衆議院不在の間は参議院が代行する
  • 数字=会議の原則・定足数と表決数と特別多数決が意思決定の物差しになる

今日は、国会はいつ動き、衆議院が無いときは誰が決めるのか、という問いから出発しました。一つ目は、時間です。国会は、常会・臨時会・特別会という、区切られた時間の中で動きます。会期不継続の原則や一事不再議の原則も、この時間の区切りから出てきた話でしたね。二つ目は、空白です。衆議院が解散されると、最長でおよそ七十日、国会が存在しません。その間は、内閣の求めがあれば参議院の緊急集会が国会を代行します。そして、決めたことは臨時のもので、次の国会開会後十日以内に衆議院の同意が必要でした。三つ目は、数字です。定足数は総議員の三分の一以上、表決数は出席議員の過半数でした。これが、以前予告していた憲法五十六条の中身でした。国会法五十六条一項とは別物でしたね。

さらに、出席議員の三分の二が必要な議決が四つ、総議員の三分の二が必要な議決が一つありました。会議の公開も、本会議は原則公開、委員会は原則非公開、両院協議会は公開が禁止と、強さが三段階でしたね。国会という機関は、いつでも全員がそこにいて何でも決められるわけではありません。だからこそ、動ける時間をあらかじめ区切り、機関が欠けたときの代役を用意し、実際に決を採るときの最低ラインまで、条文で手当てしているんです。さて、今日、緊急集会の議員にも不逮捕特権と免責特権が認められる、と少しだけ触れました。では、そもそも、なぜ議員だけがそうした特権で守られているんでしょうか。

この続きは、次の回で扱います。それでは、また、お会いしましょう。

参照条文

  • 日本国憲法 52条
  • 日本国憲法 53条
  • 国会法 68条
  • 日本国憲法 54条
  • 日本国憲法 56条
  • 日本国憲法 57条

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