二院制と衆議院の優越——なぜ議院が2つあるのか
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第4章 統治 #63/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
明治憲法の二院制は、何が違ったのか——類型
図:二院制、二つの型
- 明治憲法=貴族院型・貴族院議員は世襲や貴族間の互選
- 日本国憲法=民主的二院制・42条43条で両院とも民選
二院制にも、実はいくつかの型があります。まず、明治憲法の二院制を見てみましょう。明治憲法にも、二つの議院がありました。貴族院と、衆議院です。明治憲法三十三条は、帝国議会は貴族院と衆議院の二つの議院で成立する、と定めていました。ただし、中身はまったく違います。衆議院議員は、当時から民選でした。貴族院議員は選挙で選ばれません。世襲や、貴族の中からの互選などで選ばれます。互選とは、その身分の人たちの中だけで代表を選び合うことです。国民全体が選ぶわけではありません。これが貴族院型と呼ばれる二院制です。選ぶ人が違うので、二つ置く意味も分かりやすくなります。
貴族の意見と庶民の意見を両方聞くという理解で、そのとおりです。では、日本国憲法はどうでしょうか。もう一度、条文を見てみましょう。
条文日本国憲法 42条
日本国憲法 第四十二条 国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する。
国会は、衆議院及び参議院の両議院で構成される。これが、二院制そのものの根拠条文です。今日一日、何度もこの条文に戻ってきます。そして、両方の議院の議員は、こう定められています。両議院は、全国民を代表する選挙された議員で組織する、という条文です。この「両議院は」というのが大事です。衆議院も参議院も、同じように全国民を代表する選挙された議員で組織されます。これが民主的二院制と呼ばれる型です。選ぶ人が同じなのに、なぜ二つ置くのか。そこが、今日これから解いていく問題です。なお、両方の議院を国民が選ぶという型は、外国の憲法ではほとんど例をみません。
はい、珍しい部類に入ります。多くの国では、貴族院型のように、選び方そのものを変えて二つの声を作っています。日本国憲法は同じ選び方で、あえて二つ置いています。だからこそ、選び方以外のところに違いを作る必要があります。では、その違いはどこにあるのか。次に見ていきましょう。
違いは「時間」で作ってある——趣旨①民意の多角的反映
図:任期と解散の対比
- 衆議院=任期四年・解散あり=45条ただし書・短期的民意
- 参議院=任期六年・三年ごとに半数改選=46条・解散なし=7条3号
- 69条参照・長期的民意
選ぶ人が同じなら、違いはどこで作られているんでしょうか。まず、衆議院議員の任期を見てみましょう。
条文日本国憲法 45条
日本国憲法 第四十五条 衆議院議員の任期は、四年とする。但し、衆議院解散の場合には、その期間満了前に終了する。
衆議院議員の任期は、四年です。ただし書に注目してください。衆議院が解散された場合は、四年の任期を待たずに、そこで終了します。しかも、衆議院の解散は、実際にたびたび起きます。では、参議院はどうでしょうか。
条文日本国憲法 46条
日本国憲法 第四十六条 参議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半数を改選する。
この条文、前に見た覚えがあります。以前、投票価値の平等の回で、この条文をカードで見ました。あのときは、一票の重みという角度から見ましたよね。今日は、同じ条文を任期の長さという角度から見直します。条文の意味を変えているわけではありません。参議院議員の任期は六年で、しかも三年ごとに半分だけ入れ替わります。全員が一斉に入れ替わることはない、ということです。常に半分は、前の選挙で選ばれたままの議員が残ります。参議院は解散されません。任期の途中で強制的に終わることが無いんです。ここまでで、二つの議院の違いが見えてきました。
この違いが、何を生むと思いますか。たとえば地域の子ども会で、当番は毎年選び直し、世話役は少しずつ入れ替わるとします。任期が短くて解散もある衆議院は、選挙のたびに構成が変わりえます。だから、衆議院の議員構成には直近の世の中の空気が、そのまま反映されやすいんです。衆議院は短期的な民意を映す、と言えます。一方、参議院は半分ずつしか変わらず、解散もありません。一気に総入れ替えは起きません。参議院は長期的な民意を映す、と言えます。数年単位の、長い傾向を映します。これが、民主的二院制の趣旨の一つ目、民意の多角的反映の中身です。
時間軸をずらして、同じ主権者から違う時点の声を二つ取り出す装置です。それが、正確な言い方です。そして、この趣旨をテキストは、民主的二院制の最も重要な趣旨だと位置づけています。この任期や解散の違いを作っている選挙のしくみは、前に別の回で扱いました。小選挙区や比例代表、名簿の作り方などです。今日は、そこには立ち入りません。任期と解散という結果だけを見ています。最後に、確認しておきましょう。衆議院の任期が短くて解散もあるのは、参議院と比べて、どちらの民意を映すためでしたっけ?短期的な民意です。直近の空気を映すため。では、この時間差を武器に参議院はどう動くのか、次に見ていきましょう。
慎重に、そして備えとして——趣旨②③と両院はどう動くか
図:趣旨②と趣旨③
- ②参議院は理性の府として議事を慎重にする
- ③衆議院が働けない期間も参議院の手で国政を民主的に動かす=緊急集会54条2項ただし書の根拠
民主的二院制の趣旨は、全部で三つあります。一つ目は、さっき見た民意の多角的反映でした。二つ目の趣旨は、議事を慎重にすることです。衆議院は任期が短く、解散もあります。だから、その時々の勢いに引きずられて、決定が行き過ぎることもありえます。そこで、参議院が理性の府として抑制をかけます。任期が長く、解散も無い立場から落ち着いて審議し直す役割、という意味です。ただし、そのあと最終的にどちらの判断を通すかは、また別の話です。では、三つ目の趣旨に進みましょう。三つ目は、衆議院が活動能力を失っているときの備えです。そういう場面でも、参議院の手で国政を民主的に動かせるようにする、という趣旨です。
衆議院が活動できなくなることは、あります。衆議院が解散されると、新しい衆議院議員が決まるまでの間、衆議院そのものが存在しない期間ができます。その空白の期間に、もし国に急ぎの用事が起きたら、どうしますか。そこで登場するのが、参議院の緊急集会という制度です。五十四条二項のただし書に、その根拠があります。内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる、という条文です。参議院だけで国会の代わりを務める発想です。今日押さえてほしいのは、この緊急集会が趣旨三つ目から生まれた制度だという一点です。衆議院が動けないときの備え、という趣旨でした。
では、この三つの趣旨を土台に、両院はふだんどう動いているのか。二つの原則を見ておきましょう。
図:二院制を貫く二つの原則
- 同時活動の原則=両院は同時に召集・開会・閉会する、例外は参議院の緊急集会
- 独立活動の原則=各院が独立して議事・議決する、例外は両院協議会=審議だけ合同・議決は各院に戻る
一つ目は、同時活動の原則です。両院は同時に召集され、同時に開会し、同時に閉会します。ただし、例外があります。さっき見た参議院の緊急集会です。二つ目は、独立活動の原則です。各議院は独立して議事を行い、独立して議決します。ただし、こちらにも例外があります。両院協議会という場です。両院の意見が食い違ったとき、それぞれの議院から選ばれた委員が集まります。歩み寄れる案を作れないか、話し合う場です。議決まで一緒にするのではありません。議決は各議院が別々に行います。合同でするのは、案を作る話し合いだけです。各議院だけで議事を進める、という建前が、そこで崩れます。だから例外です。
今日の後半、優越の話で何度も登場します。名前だけ、覚えておいてください。なお、この二つの原則は、憲法にひとまとめの条文があるわけではありません。五十四条二項や五十九条など、個別の条文から読み取れる原則です。二院制の趣旨そのものから導かれる考え方です。では、ここまでで「なぜ二つあるのか」は見終えました。次は、二つの議院の意見が実際に割れたとき、どちらが決めるのか、という話に進みましょう。
衆議院にしかない、二つの権限
図:衆議院にしかない権限二つ
- ①内閣不信任決議権=69条・総辞職か解散かの二択という法的効果、参議院の問責決議には法的効果なし
- ②予算先議権=60条1項・先議だけで優越は別項
ここからは、衆議院にだけ認められている権限を見ていきます。衆議院にしかない権限は、二つ。一つ目は、以前見た内閣不信任決議権です。六十九条でしたね。内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決されたとき。十日以内に衆議院を解散しない限り、総辞職しなければならない、という条文です。この決議には、総辞職か解散かの二択を内閣に迫るという法的な効果があります。参議院にも、似た決議はできます。問責決議と呼ばれるものです。名前は似ていますが、注意してください。参議院の問責決議には法的な効果がありません。可決されても、内閣に総辞職や解散を強制する力は無い、ということです。政治的な意味しか持たないんです。
「参議院にも不信任決議がある」のではなく、「法的効果の無い決議なら参議院でもできる」という順番で理解してください。では、二つ目の権限です。予算に関する条文を見てみましょう。
条文日本国憲法 60条
日本国憲法 第六十条 1項 予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。 2項 予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。
一項を見てください。予算は、まず衆議院に提出しなければならない、とあります。これが予算先議権です。予算案は、必ず衆議院から審議が始まります。そこは、あとでじっくり見ます。今、注目してほしいのは一項だけです。予算を先に審議できるのは衆議院だけです。参議院に先議権はありません。同じ条文でも、項が違えば話している中身が別になります。ここは混同注意です。なお、内閣の解散権の根拠や、予算そのものの法的な性質は別の回でじっくり扱います。この二つは、そもそも参議院が持っていない権限でした。では、次は逆に、両院とも持っているけれど議決が食い違ったとき、どちらが勝つのか。議決が割れたときの決着、という話に進みましょう。ここが、今日いちばんの山場です。
割れたら、どう決着するか——四つの場面【この回の山】

さあ、衆議院と参議院それぞれが議決したのに、中身が食い違ったとします。そのとき、どちらが国会の意思になるんでしょうか。それが、衆議院の優越、というやつですね。実は、優越が働く場面は四つあります。まず一つ目、法律案から見ていきましょう。法律案の議決は、以前、条文ごと見ましたね。思い出してください。衆議院で可決した法律案を参議院が違う議決にしたら、どうなりましたか。衆議院が、出席議員の三分の二以上の多数でもう一度可決すれば法律になるんでした。この再議決が、法律案での決着の付け方です。そして、その前に両院協議会を開くこともできますが、これは任意的でした。
さらに、参議院が六十日以内に議決しなければ、衆議院は「否決したものとみなすことができる」んでしたね。衆議院が「みなす」という行為を、自分でしなければなりません。ここまでは、前に見たとおりです。今日は、これを基準にして残り三つの場面を比べていきます。では、二つ目、予算に進みましょう。さっきの六十条の二項です。

もう一度、六十条二項を見てみましょう。参議院が衆議院と異なる議決をした場合に、両院協議会でも話がまとまらないとき。または、参議院が衆議院の可決した予算を受け取ったあと、三十日以内に議決しないとき。このどちらかにあてはまると、衆議院の議決を国会の議決とする、とあります。そこが、法律案との決定的な違いです。法律案は、衆議院がもう一度議決し直すことで勝ちました。再議決という、追加の行動が必要でした。ですが予算は、両院協議会を開いても一致しないか、三十日を過ぎたら、それだけで自動的に、衆議院の議決が国会の議決になります。
追加の議決は要りません。予算では、両院協議会は必要的です。開かなければなりません。法律案は任意的、予算は必要的。ここは、はっきり分けて覚えてください。そして、日数も違います。法律案は六十日でしたが、予算は三十日です。この日数の違いは、あとでまとめて考えます。では、三つ目、条約に進みましょう。
図:③条約=61条(前条第2項を準用=60条2項に戻る/両院協議会=必要的/30日)
条約の承認について定めた条文を、見てみましょう。
条文日本国憲法 61条
日本国憲法 第六十一条 条約の締結に必要な国会の承認については、前条第二項の規定を準用する。
条約の承認について定めた条文は、たった一文です。この条文だけを読んでも、三十日も両院協議会も出てきません。「前条」というのは、さっき見た六十条です。その二項を、そのまま条約にも当てはめる、という意味です。条約の国会承認は、予算とまったく同じ決着の付け方をします。両院協議会は必要的、再議決は不要、日数は三十日です。条約は予算のコピーのような条文だという理解で、そのとおりです。なお、条約そのものの締結手続きや国内での効力は、また別の回に回します。では、四つ目、内閣総理大臣の指名に進みましょう。

内閣総理大臣の指名について定めた条文を、見てみましょう。
条文日本国憲法 67条
日本国憲法 第六十七条 1項 内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ。 2項 衆議院と参議院とが異なつた指名の議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名の議決をした後、国会休会中の期間を除いて十日以内に、参議院が、指名の議決をしないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。
一項を見てください。内閣総理大臣の指名は、ほかのどの案件よりも先に行う、と書かれています。「先に行う」を先議権と読むのは、よくある誤解です。これは先議権ではありません。先議権というのは、衆議院が先に審議を始める権限のことでした。予算だけに認められています。一項が言っているのは、首相指名という議題が、ほかのどの議題よりも優先して扱われる、という話です。議院の間の優劣ではなく、議題どうしの優先順位の話です。混同しやすいので、注意してください。では、二項を見ましょう。衆議院と参議院が違う指名をした場合、両院協議会を開いても一致しないとき。または、衆議院が指名の議決をしたあと十日以内に、参議院が指名の議決をしないとき。このどちらかで、衆議院の議決を国会の議決とする、とあります。
両院協議会は必要的、再議決は不要、決着の型も同じです。首相指名だけ十日という、いちばん短い日数になっています。そこも含めて、四つをまとめて見てみましょう。
図:四つの場面、一覧
- 先議権=予算だけあり
- 議決が異なる場合=法律案は衆議院の再議決、他の三つは両院協議会後に衆議院の議決
- 日数=60・30・30・10で不揃い
四つの場面を、一覧にしてみます。法律案は、先議権が無く、決着は衆議院の再議決、両院協議会は任意的、日数は六十日でした。予算は、先議権があり、決着は両院協議会後の衆議院の議決です。両院協議会は必要的、日数は三十日でした。条約は、先議権が無く、決着と両院協議会は予算と同じ、日数も三十日でした。内閣総理大臣の指名は、先議権が無く、決着と両院協議会は予算と同じです。ただし、日数だけ十日でした。そこが、この一覧のいちばんの出題点です。実は、憲法自身はこの理由を説明していません。ただ、数字を並べると一つの見方はできます。法律が決まらなくても、国はすぐには止まりません。だから六十日と、いちばん長く待てます。予算や条約が決まらないと、もう少し困ります。だから三十日です。そして、内閣総理大臣が決まらないと、内閣そのものが存在しない空白ができてしまいます。だから十日と、いちばん短いんです。
そう読むことはできます。ただし、これは条文の数字を並べて読み取れる整理です。憲法がそう説明しているわけではないという点は、はっきりさせておきます。もう一つ、大事な整理をしておきましょう。四つの場面は、実は二つの型に分けられます。一つ目の型は、法律案だけです。衆議院がもう一度議決し直して勝つ型です。再議決が必要で、両院協議会は任意的です。二つ目の型は、予算・条約・内閣総理大臣の指名の三つです。参議院が動かなければ、自動的に衆議院の議決が国会の議決になる型です。再議決は不要で、両院協議会は必要的です。
四つを丸暗記するのではなく、まず二つの型に分けてください。それから日数だけ覚える。これが、山場を乗り切るいちばんの近道です。違います。それらは再議決が要りません。参議院が動かなければ、自動的に衆議院の議決が国会の議決になる、という別の型でした。では、ほとんどの場面で押し切られる参議院にも、完全に対等な場面があるのか。次に見ていきましょう。
それでも対等な、四つの場面
図:対等な四つの場面
- ①皇室財産授受の議決=8条
- ②予備費の支出承諾=87条2項
- ③決算の審査=90条1項
- ④憲法改正の発議=96条1項
ここまで、衆議院が優越する四つの場面を見てきました。参議院はほとんど負ける、そう見えるかもしれません。ですが、両院がまったく対等で優越が働かない場面も、四つあります。対等な場面は、あります。一つ目は、以前、少しだけ触れた場面です。憲法八条を、もう一度見てみましょう。皇室に財産を譲り渡すこと、皇室が財産を譲り受けること、そして皇室が財産を賜与すること。賜与は、天皇を扱った回で見た、ただで与えることです。この三つが、国会の議決にもとづかなければならない、という条文です。この議決には衆議院の優越は働きません。両院は対等です。
二つ目は、予備費の支出承諾です。八十七条二項にあります。内閣は、あらかじめ用意しておいた予備費を実際に使ったら、あとから国会の承諾を得なければなりません。三つ目は、決算の審査です。九十条一項にあります。国の収入や支出の決算は、会計検査院が検査したうえで内閣が国会に提出しなければなりません。四つ目は、以前見た憲法改正の発議です。九十六条一項でしたね。この四つ、皇室財産、予備費、決算、憲法改正の発議には、衆議院の優越が及びません。実は、四つを貫く一つの理由を、憲法は書いていません。共通しているのは、条文の形です。さっきの四つの場面と違って、この四つには、衆議院の議決だけで決められる、という定めが置かれていません。
図:事前と事後(予算=60条・事前・衆議院優越/決算=90条1項・事後・両院対等)
一つ、気づいてほしいことがあります。さっき見た予算と、ここで見た決算を並べてみてください。予算は、これから使うお金の計画で、事前のものです。決算は、もう使ってしまったお金の確認で、事後のものです。そう見ることができます。お金を使う前は急いで決める必要がありますが、使ったあとの検証に急ぐ理由はありません。そう読むこともできます。ただし、これも憲法自身がその理由を説明しているわけではありません。最後に、数字の弁別をもう一度しておきましょう。法律案の再議決に必要な三分の二は、出席議員の三分の二でした。憲法改正の発議に必要な三分の二は、総議員の三分の二です。
出席している人数を基準にするのか、議院に所属する全員を基準にするのか。ここは混同しないでください。予備費や決算の中身、憲法改正の手続きは、それぞれ別の回でじっくり扱います。今日は、対等な四つの場面がある、という位置づけまでです。では、今日の内容を一つにまとめましょう。
今日の地図(保存版)
図:二つあることの意味
- 趣旨は三つ=民意の多角的反映・慎重審議・衆議院不在への備え
- 優越は四つの場面=法律案・予算・条約・首相指名
- 対等は四つの事項=皇室財産・予備費・決算・憲法改正の発議
今日は、なぜ議院が二つあるのか、という問いから出発しました。日本国憲法の二院制は、衆議院も参議院も国民が選ぶ民主的二院制でした。明治憲法の貴族院型とは、選び方がまったく違います。趣旨は三つありました。一つ目は、民意の多角的反映です。衆議院は短期的な民意、参議院は長期的な民意を映します。二つ目は、議事を慎重にすること。参議院が理性の府として抑制をかけます。三つ目は、衆議院が活動能力を失っているときの備え。参議院が国政を担えることです。これが緊急集会の根拠でした。そして、議決が割れたときの決着は、四つの場面に出ました。法律案は、衆議院の再議決、両院協議会は任意的、六十日。予算・条約・内閣総理大臣の指名は、参議院が動かなければ、自動的に衆議院の議決になる型で、両院協議会は必要的でした。日数は三十日・三十日・十日です。
そして、それでも両院が完全に対等な場面が四つありました。皇室財産授受の議決、予備費の支出承諾、決算の審査、憲法改正の発議です。この三つの数を、覚えておいてください。議院が二つあるのは、参議院が衆議院に負け続けるためではありません。時間差で違う声を聞き、時に抑制をかけ、時に対等に振る舞う、という設計です。優越は、あくまで議決が食い違ったときの決着のルールにすぎません。さて、今日、一つだけ残った趣旨があります。衆議院が活動能力を失っているときの備え、というものです。では、国会はいつ動き、そして衆議院が居ないときは誰が国の意思を決めるのでしょうか。
それでは、また、お会いしましょう。
参照条文
- 日本国憲法 42条
- 日本国憲法 45条
- 日本国憲法 46条
- 日本国憲法 60条
- 日本国憲法 61条
- 日本国憲法 67条