違憲判断の手法と違憲判決の効力
問い:裁判所はどういう形で「違憲」と言うのか。最高裁に違憲と判断された法律の規定は、その瞬間に消えるのか。判決のどの部分が、のちの裁判を縛るのか。
骨組み
- 1法令違憲(学説・判例):法令に焦点を当て、法令それ自体を違憲とする。全部を違憲・無効(尊属殺重罰規定違憲判決・昭48)と、規定の一部だけを違憲・無効(国籍法違憲判決・最大判平20・6・4=要件の一部を除いて解釈)。一部だけを違憲とした例にはほかに再婚禁止期間違憲判決(最大判平27・12・16=100日超過部分)
- 2適用違憲(学説):事案の行為に焦点を当て、憲法上の保護の枠内なのに法令が禁圧するとき、その適用を違憲とする。審査は法令違憲が先=目的が合憲で手段も大部分合憲なら、法令違憲を避けて適用を審査することがある。導き方は2段(保障の範囲内と認定 → 適用は許されないと判断)
- 3猿払事件(判例):第一審(旭川地判昭43・3・25)=罰則を被告人の行為に適用される限度において・違反として無罪=適用違憲の典型と説明される。上告審(最大判昭49・11・6)=原判決・第一審判決を破棄し合憲。「適用する限度において」という限定を付けた形も「ひつきよう法令の一部を違憲とするにひとしく」、批判を免れないとした
- 4文面上無効(学説):立法事実を検出・論証せず、法律の文面だけで違憲を導く=違憲判断の特殊な類型。例=検閲(前段=絶対的禁止)・刑罰法規の不明確(合理的な合憲限定解釈で除去されない限り)
- 5適用違憲の判決の効力(学説):その事案での適用が否定されるだけ=当然、当該事案に限られる
- 6法令違憲の判決の効力(学説):一般的効力説(法令集から削除されたのと同じ)vs 個別的効力説(通説=当該事件に限って及ぶ)。理由2本=①一般的に失効させると裁判所が消極的な立法権を持ち後段(唯一の立法機関)に反する ②付随的審査制=事件の解決に必要な限りで審査
- 7刑法200条のゆくえ(学説・実例):違憲判決(昭48)は当該事件で200条を無効とするだけ → 個別的効力説に立てば理論上は有効なまま、平成7年に国会が削除するまで残った。その間、行政は200条を使わず199条で起訴。国会の改廃・政府の執行差控えが期待されると解される
- 8判例の拘束力と変更(学説・裁判所法):狭義の判例=判決理由(結論を導くうえで意味のある法的理由づけ)。それ以外=傍論。最高裁の憲法判断の事実上の拘束力は判決理由の部分に。判例変更はできるが大法廷が要る(裁判所法10条3号)
色の札は出どころ:条文 判例 学説。条文番号は押すと条文が出ます(押せるのは日本国憲法の条文だけ。刑法・国家公務員法・国籍法・民法・裁判所法・刑事訴訟法は文字のまま)。最大判=最高裁判所大法廷の判決、地判=地方裁判所の判決。判決の引用は原文どおり(昭和49年の判決は漢数字と旧かな、平成の判決は「,」と全角数字)。1〜4がどう違憲と言うか(手法)、5〜7が違憲と言われた法令がどうなるか(効力)、8が判決のどこが後の裁判を縛るか。
1法令違憲(全部・一部)学説判例
- 法令違憲=法令に焦点を当て、法令それ自体を違憲とする手法。
- 全部を違憲・無効とする例=尊属殺重罰規定違憲判決(刑法200条そのものを違憲とした)。
- 規定の一部だけを違憲・無効とする例(「部分違憲」「一部違憲」と呼ばれる)=国籍法違憲判決。一部の形は1つではない:
| 国籍法違憲判決(最大判平20・6・4) | 再婚禁止期間違憲判決(最大判平27・12・16) | |
|---|---|---|
| 対象の規定 | 国籍法3条1項(届出による国籍取得) | 民法733条1項(女性について6箇月の再婚禁止期間) |
| 違憲とされた一部 | 過剰な要件(父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得したこと)を設けて区別を生じさせている部分 | 6箇月のうち100日を超える部分(100日の部分は合憲) |
| 一部の形 | 要件の一部を除く | 期間という量の一部を切る |
| 違反する条文 | ・ |
- 国籍法違憲判決(最大判平20・6・4):
- そして,上記の解釈は,本件区別に係る違憲の瑕疵を是正するため,国籍法3条1項につき,同項を全体として無効とすることなく,過剰な要件を設けることにより本件区別を生じさせている部分のみを除いて合理的に解釈したものであって,その結果も,準正子と同様の要件による日本国籍の取得を認めるにとどまるものである。
- …この解釈をもって,裁判所が法律にない新たな国籍取得の要件を創設するものであって国会の本来的な機能である立法作用を行うものとして許されないと評価することは,国籍取得の要件に関する他の立法上の合理的な選択肢の存在の可能性を考慮したとしても,当を得ないものというべきである。
- 再婚禁止期間違憲判決(最大判平27・12・16):
- よって,本件規定のうち100日の再婚禁止期間を設ける部分は,憲法14条1項にも,憲法24条2項にも違反するものではない。
- 以上の次第で,本件規定のうち100日超過部分が憲法24条2項にいう両性の本質的平等に立脚したものでなくなっていたことも明らかであり,上記当時において,同部分は,憲法14条1項に違反するとともに,憲法24条2項にも違反するに至っていたというべきである。
- 通説(個別的効力説)では、法令違憲でも、条文が法令集から消えるわけではない(項目6・7)。法令違憲と適用違憲の違いは判断の対象(規定そのもの/この事案への適用)であって、条文が消えるか残るかではない。
「一部違憲=要件の一部を除く操作」と覚えると、再婚禁止期間違憲判決を説明できない。この判決は要件ではなく、6箇月という期間のうち100日を超える部分を違憲とした。
- 「法令違憲の判決が出るとその条文は消え、適用違憲の判決なら条文は残る」(通説では、法令違憲でも条文は法令集に残る=刑法200条)
- 「法令の一部を違憲とする判断は、規定が定める要件の一部を取り除く形に限られる」(再婚禁止期間違憲判決=100日超過部分)
- 「国籍法違憲判決は、国籍法3条1項を全体として無効とした」(全体として無効とすることなく、部分のみを除いて解釈)
- 「国籍法違憲判決で最高裁は、法律にない新たな国籍取得の要件を創設することも許されるとした」(そう評価することは当を得ないとした=要件の創設ではないという立場)
- 「再婚禁止期間違憲判決は、民法733条1項の再婚禁止期間の全部を違憲とした」(100日の部分は合憲)
2適用違憲(使う場面と2段の導き方)学説
- 適用違憲=その事案での行為そのものに焦点を当て、行為が憲法上の保護の枠内にあるのに法令がそれを禁圧しようとしている場合に、当該法令の適用を違憲とする手法。
- 使う場面:違憲審査では法令違憲かどうかの審査が先。法令の目的が合憲で、手段も大部分合憲という場合に、法令違憲の判断を避けて、当該事案への適用が違憲かを審査することがある。
- 導き方の2段:①問題の行為が憲法で保障される範囲内にあると認定する → ②その行為に禁止規定を適用することは許されないと判断する。
- ①だけでは足りない。保障の範囲内の行為でも、法令が大筋で合理的なら規制は許されうる=②で、この行為への適用が目的との関係で行き過ぎかを判断する。
駅前広場での物品配布を一律に禁じる条例。混雑時の大量配布を止める目的は正当で、規制も大部分は合理的(法令違憲ではない)。そのうえで、深夜の人通りがほとんど無い広場で、一人が通行人に案内のビラを手渡した行為にまで罰則を科すのは目的との関係で行き過ぎだ、と判断するのが適用違憲の形。同じ条例でも、何も書いていない紙を大量にまく行為は何かを伝える表現とは言いにくく、第1段で外れる。
- 「行為が憲法の保障の範囲内にあれば、その行為への規定の適用は当然に違憲となる」(第2段の判断が要る)
- 「適用違憲は、法令の目的や手段の合憲性を審査する前に検討する」(法令違憲の審査が先)
- 「適用違憲は、法令の目的そのものが違憲の場合に用いられる」(目的が合憲で手段も大部分合憲の場合)
3猿払事件——第一審の適用違憲と、上告審の評価判例学説
- 北海道の郵便局に勤める郵政事務官(労働組合協議会の事務局長)が、衆議院議員選挙で、協議会の決定にしたがい特定の政党を支持する目的で、同党公認候補者の選挙用ポスターを公営掲示場に掲示し、掲示を他に依頼して配布した
- 国家公務員法102条1項・人事院規則14−7の政治的行為の禁止に違反するとして、罰則(国家公務員法110条1項19号)で起訴
- 第一審(旭川地判昭43・3・25):規則に該当するとしながら、罰則は被告人の行為に適用される限度において・に違反するとして無罪。控訴審も第一審の判断を結論において相当とした
- 上告審(最大判昭49・11・6):原判決と第一審判決を破棄し、罰金5000円
- 上告審が要約した第一審の判断:
- 第一審判決は、右の事実は関係証拠によりすべて認めることができるとし、この事実は規則の右各規定に該当するとしながらも、非管理職である現業公務員であつて、その職務内容が機械的労務の提供にとどまるものが、勤務時間外に、国の施設を利用することなく、かつ、職務を利用せず又はその公正を害する意図なくして行つた規則六項一三号の行為で、労働組合活動の一環として行われたと認められるものに、刑罰を科することを定める国公法一一〇条一項一九号は、このような被告人の行為に適用される限度において、行為に対する制裁としては合理的にして必要最小限の域を超えるものであり、憲法二一条、三一条に違反するとの理由で、被告人を無罪とした。
- 第一審判決は、また、たとえ公務員の政治的行為を違法と評価してこれを禁止することが憲法二一条に違反しないとしても、その禁止の違反に対し罰則を適用することについては、さらに憲法二一条、三一条違反の問題を生じうるとの考えに立ち、国公法の立法過程にふれたうえ、その罰則は被告人の本件行為に対し適用する限度において違憲であると結論し、原判決もこれを支持するのである。
- 第一審が違憲としたのは禁止そのものではなく、罰則のこの行為への適用。禁止が合憲かどうかは措いて、罰則の適用を問題にした。
- 「適用違憲の典型」は学説の評価。第一審は、被告人の政治活動を最も重要な権利の一つとして扱い、21条違反という結論を出した(保障が及ぶことが前提)。ただ、この行為自身が規制できるかどうかは「ともかくとして」と判断を留保し、保障の範囲内という認定を独立の段として正面から立ててはいない。2段は学説が示す導き方で、第一審が適用違憲に当たるとされるのは、条文を残してこの行為への適用だけを違憲とした結論の形による。
- 上告審は、第一審・原判決の違憲の理由(弊害が軽微な行為にまで一律に罰則を適用するのは違憲/より制限的でない他の手段=懲戒処分で足りる)を、それぞれ「失当」「相当ではない」として退けた。そのうえで、「適用する限度において」と限定を付けても、その批判から逃れられないとした:
- 右各判決は、また、被告人の本件行為につき罰則を適用する限度においてという限定を付して右罰則を違憲と判断するのであるが、これは、法令が当然に適用を予定している場合の一部につきその適用を違憲と判断するものであつて、ひつきよう法令の一部を違憲とするにひとしく、かかる判断の形式を用いることによつても、上述の批判を免れうるものではない。
- 以上のとおり、被告人の本件行為に対し適用されるべき国公法一一〇条一項一九号の罰則は、憲法二一条、三一条に違反するものではなく、また、第一審判決及び原判決の判示する事実関係のもとにおいて、右罰則を被告人の右行為に適用することも、憲法の右各法条に違反するものではない。
| 第一審(旭川地判昭43・3・25) | 上告審(最大判昭49・11・6) | |
|---|---|---|
| 規則への該当 | 該当する | 該当する |
| 罰則の合憲性 | 被告人の行為に適用される限度で違憲 | 罰則も、この行為への適用も合憲 |
| 結論 | 無罪 | 原判決・第一審判決を破棄・罰金 |
| 適用違憲の形 | 使った(典型と説明される) | 「法令の一部を違憲とするにひとしく」、批判を免れないとした |
同じポスター掲示でも、管理職の公務員が勤務時間中に役所の施設を使って行った場合は、第一審が限定した類型(非管理職・現業・機械的労務・時間外・施設不使用)から外れるので、第一審の理屈でも適用違憲にはならない。なお上告審は、管理職・非管理職、現業・非現業の別などは法の目的を阻害する点に差異をもたらさないとして、この限定そのものを採らなかった。
- 「猿払事件で最高裁は、罰則を被告人の行為に適用する限度において違憲とした」(違憲としたのは第一審。最高裁は合憲)
- 「猿払事件の第一審判決は、被告人の行為が人事院規則の禁止に該当しないとして無罪とした」(該当するとしながら、罰則の適用を違憲とした)
- 「猿払事件の第一審判決は、公務員の政治的行為の禁止そのものを違憲とした」(罰則をこの行為に適用する限度で違憲)
- 「猿払事件の上告審は、適用違憲という判断の形式によれば法令違憲の批判を免れうるとした」(法令の一部を違憲とするにひとしく、批判を免れないとした)
4文面上無効の判決学説条文
- 文面上無効=立法事実(法律を支える社会的な事実)を特に検出・論証することなく、法律の文面の検討だけで違憲の結論を導く場合。違憲判断の特殊な類型。
- 通常は、立法事実を検証してから違憲かどうかを判断する。文面上無効はその検証をしない。
- 例①検閲:前段「検閲は、これをしてはならない」。検閲は絶対的に禁止 → 検閲に当たれば立法事実を問わず文面上無効。
- 例②明確性:刑罰法規が不明確な場合、その不明確さが合理的な合憲限定解釈によって除去されない限り、文面上無効。明確性が争われる場面では、合憲限定解釈で救えるかが分かれ目(検閲の例にはこの分かれ目が無い)。
「公共の場所で不穏当な行為をした者」を罰する条例。何が不穏当かを合理的に絞って読めるなら合憲限定解釈で生き残り、絞りようがなければ文面上無効に向かう。
- 「検閲に当たる場合でも、立法事実を検討して必要性が認められれば合憲となりうる」(絶対的禁止=文面上無効)
- 「刑罰法規が不明確であれば、合理的な合憲限定解釈によって不明確さを除去できるときでも、文面上無効となる」
- 「文面上無効の判断は、立法事実を詳しく検証したうえで行われる」(文面の検討だけ)
5適用違憲の判決の効力学説
- 適用違憲の判決は、その事案でその法令を適用することだけを違憲として退ける → 効力は当然、当該事案に限られる。
- 効力の範囲が争われるのは法令違憲の判決のほう(項目6)。
Aへの罰則の適用が違憲とされても、同じ条文で起訴された別人Bの事件では、裁判所はBの行為について改めて判断する。通説(個別的効力説)では法令違憲の判決も別の事件には及ばないので、この点は同じ。違いは、何を違憲としたか(規定そのものか、この事案への適用か)。
- 「適用違憲の判決が出ると、その法令は以後だれに対しても適用できなくなる」
6法令違憲の判決の効力(一般的効力説と個別的効力説)学説条文
| 一般的効力説 | 個別的効力説(通説) | |
|---|---|---|
| 法令違憲の判決の効力 | 法令は一般的に無効=法令集から削除されたのと同じ | 当該事件に限って及ぶ |
| 別の事件では | その規定は使えない | 規定は有効なまま |
- 個別的効力説の理由は2本:
- ①権力分立の側:違憲の法令を一般的に失効させると、裁判所が消極的な立法権(法律をなくす立法)を持つことになり、国会を「国の唯一の立法機関」とする後段の趣旨に反する。
- ②制度の側:日本は付随的審査制=具体的な事件の解決に必要な限りで違憲審査をする → 判断の効力も当該事件の限度にとどまる。
- 答案では1本で済ませず、2本とも書く。
「最高裁が法令違憲と判断したので、その規定は判決の日から全国で無効になった」と書くのは、通説(個別的効力説)からは誤り。
- 「通説によれば、最高裁が法令違憲と判断した規定は、その判決によって一般的に効力を失う」(個別的効力説=当該事件限り)
- 「後段は、一般的効力説の根拠とされる」(個別的効力説の根拠=裁判所に消極的立法を認めない)
- 「個別的効力説の根拠は、付随的審査制だけである」(後段の趣旨と付随的審査制の2本)
7刑法200条のゆくえ(違憲判決と条文の存続)学説判例
- 昭和48年:尊属殺重罰規定違憲判決が、刑法200条を違憲とする(法令違憲・全部)。ただし無効とするのは当該事件においてだけ
- その後:個別的効力説に立てば、200条は別の事件では理論上は有効な規定のまま。実際には、行政の側は尊属殺の事件でも200条を適用せず、全て199条(通常の殺人罪)で起訴して対応した(内閣法制局長官の国会答弁・平成27年)
- 平成7年(判決から20年以上後):国会が200条を削除
- 「理論上は有効なまま」は、個別的効力説に立った帰結。一般的効力説に立てば、判決の時点で法令集から削除されたのと同じになる=ここが2説の違いが目に見える所。
- 他の国家機関:個別的効力説でも、最高裁の違憲判断を十分尊重するのが望ましい → 国会は速やかに改廃し、政府はその規定の執行を差し控える等の措置をとることを、憲法は期待していると解されている。
- 期待されるのは対応であって、判決そのものに条文を消す力があるわけではない。
違憲判決の後に起きた別の尊属殺の事件。個別的効力説に立てば、200条は理論上なお有効な規定で、判決がその事件の200条まで無効にしたわけではない。それでも実際には200条ではなく199条で起訴された=条文が残っていることと、使われていることは別。
- 「刑法200条は、尊属殺重罰規定違憲判決によって直ちに効力を失い、法令集から削除された」(削除は平成7年の国会による)
- 「尊属殺重罰規定違憲判決の後も、尊属殺の事件は刑法200条で起訴され続けた」(199条で起訴する運用)
- 「個別的効力説によれば、国会は違憲とされた規定を放置してよい」(改廃が期待されると解されている)
8判例の拘束力と判例変更学説条文
| 語 | 意味 |
|---|---|
| 判例(広義) | およそ裁判例(地裁の判決も含む) |
| 判例(狭義)=判決理由 | 判決の結論を導くうえで意味のある法的理由づけ(レイシオ・デシデンダイ) |
| 傍論 | 判決理由と関係のない部分(オビタ・ディクタム) |
- 最高裁の憲法判断は、先例として後の裁判所に対し事実上の拘束力があると解されている。拘束力を持つのは判決理由の部分(傍論ではない)。
- 「事実上の」と付くのは、日本は先例に法的な拘束力を持たせる国ではないから。法的なものではないからこそ、変更の余地がある。
- 判例変更:十分な理由があれば変更できる。ただし大法廷で行う必要がある=裁判所法10条3号「憲法その他の法令の解釈適用について、意見が前に最高裁判所のした裁判に反するとき」は小法廷では裁判できない。
- 当事者の主張に基づいて法律等が憲法に適合するかしないかを判断するとき(裁判所法10条1号。前の大法廷の合憲の裁判と同じ意見のときを除く)、それ以外で法律等が憲法に適合しないと認めるとき(同条2号)も大法廷。
- 「判例」の語は最高裁の判断に限られない。広義はおよそ裁判例で、刑事訴訟法405条3号も高等裁判所の判例を挙げる。ふつう判例として引かれるのは最高裁の判断。
ある最高裁判決が、事件の結論とは関係なく「仮に別の事情があれば違憲になりうる」と付け加えていた。この一文は傍論で、「判例は〜としている」と引くのは危うい。結論を支えた理由づけの部分を引く。
- 「最高裁の判決は、傍論の部分も含めて、後の裁判所に対し事実上の拘束力を持つ」(判決理由の部分だけ)
- 「最高裁の判例は、一度示されると変更することができない」(十分な理由があれば変更できる)
- 「判例の変更は、小法廷でもすることができる」(大法廷=裁判所法10条3号)
- 「『判例』は、最高裁判所の判断だけを指す語である」(広義はおよそ裁判例)