憲法保障と憲法改正
問い:憲法が壊されないように守るしくみには、どんな種類があるのか。憲法を守る義務を負うのは誰で、国民は入るのか。憲法を変えるには、誰が、どれだけの賛成で、どの順に手続を踏むのか。その手続を全部踏めば、憲法はどんな中身にでも変えられるのか。
骨組み
- 1憲法保障の意義と類型(学説):憲法保障=憲法を壊す方向の政治の動きを、事前に防止し、または事後に是正して、憲法の最高法規性を保つしくみ。明文あり=憲法内的保障(基本書の挙げ方=硬性憲法()・尊重擁護義務()・違憲審査制())/明文なし=超憲法的保障。憲法内的保障を事前・事後に分けると、違憲審査制()は事後的手段
- 2尊重擁護義務():義務を負うのは天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員。国民は挙げられていない。最高法規性は(取り違えない)
- 3抵抗権と国家緊急権(学説):明文のない憲法保障としてあげられることがある2つ。抵抗権の主体=国民/国家緊急権の主体=国家権力(非常事態に立憲的な憲法秩序を一時停止して非常措置をとる権限)。日本国憲法に国家緊急権の規定は無い(明治憲法にはあった)。濫用の危険があるので、改正で認めるとしても統制の方策が必要不可欠と解されている
- 4発議に必要な賛成(前段・学説):各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が発議(出席議員ではない)。衆議院の優越は無い。「総議員」の意味=法定議員数説が有力(現在議員数説もある)
- 5改正原案を出せるのは誰か(国会法・学説):議員の原案の発議=衆議院100人以上・参議院50人以上の賛成(国会法68条の2。修正の動議を議題とするのも同じ人数=68条の4)=国会法の要件で、の要件ではない。憲法審査会も原案を提出できる(国会法102条の7)。内閣の発案権=争いあり・法律案とは異なり否定説が有力(政府解釈は肯定・国会法は決めていない)
- 6国民の承認(後段・法律):特別の国民投票又は国会の定める選挙の際の投票で、その過半数の賛成。何の過半数か=有権者総数・投票総数・有効投票総数の3説が争われてきた。改正手続法は有効投票総数の過半数にあたる扱いを採った(法律の定めであって、の解釈が確定したのではない)。投票権者=満18年以上の日本国民
- 7天皇の公布(・):承認を経たとき、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちに公布する。公布は内閣の助言と承認による国事行為
- 8改正の限界(学説):通説=限界説。の手続を踏んでも改廃できない=①国民主権②憲法改正国民投票制③人権宣言の基本原則④平和主義の原則。ただし戦力不保持()の改正は可能と解されている
- 9限界説と無限界説の根拠(学説):無限界説=主権の全能を根拠にする(講義)。限界説=自然法・根本規範を前提にする(講義)。基本書は、憲法制定権力(憲法をつくる力)が、基本理念に反しない限りでの憲法改正権に変容して憲法典に残されたと説き(国民主権の説明)、限界②の理由もこれを参照する。国民主権の改正=改正権の自殺行為。前文1項は改正の限界を画す法規範と解されている
色の札は出どころ:条文 判例 学説。条文番号は押すと条文が出ます(押せるのは日本国憲法の条文だけ。国会法・日本国憲法の改正手続に関する法律(以下「改正手続法」)・明治憲法の条文番号は文字のまま)。1〜3が憲法を守るしくみ(1が意義と類型、2が明文のある手段の1つ=、3が明文のない2つ)、4〜7が改正の手続(発議→国民の承認→公布の3段。5は発議の前の、誰が案を出せるか)、8〜9が改正の限界。この回に判例は無い。学説の強さ:8の限界説は「通説」、4の法定議員数説と5の否定説は「有力」とされる。3の2つは基本書が「あげられることがある」と留保して挙げるもの。「(補足)」と付けた文は、条文や基本書が直接そう言っているのではない、ここでの説明。
1憲法保障の意義と類型学説条文
- 憲法保障=憲法を壊す方向の政治の動きを、起きる前に防ぐ(事前に防止)か、起きた後に正す(事後に是正)かして、憲法の最高法規性を保つしくみ。
- 硬性憲法=改正に、普通の法律より重い手続が要る憲法。改正しにくくしておくこと自体が、憲法を守ることになる。
- 基本書は、明文のある制度として硬性憲法()・公務員の憲法尊重擁護義務()・違憲審査制()を挙げる(「や」で並べた例示)。明文のない制度として抵抗権・国家緊急権が挙げられることがある(項目3)。
- 明文のある側=憲法内的保障(憲法の内側にあらかじめ用意されたしくみ)、明文のない側=超憲法的保障(憲法の外から憲法秩序を守る)。講義の整理では、明文なし=超憲法的保障、明文あり=憲法内的保障と対応する=「明文の有無」と「憲法内的か超憲法的か」は同じ切れ目で、別の軸ではない。
- 憲法内的保障の側だけを、さらに事前的手段と事後的手段に分ける整理がある。事後的手段=違憲審査制()。事前的手段=最高法規性()・尊重擁護義務()・権力分立(・・)・硬性憲法()。
- 統治機構がすべて事前的手段なのではない。司法の中にある違憲審査制()は、違憲の行為が起きた後に正す事後的手段。
- :最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。
- 基本書は、違憲審査制には、個人の人権を守る役割と、憲法保障の役割の2つがあると説明する。付随的審査制(通常の裁判所が、具体的な争訟において違憲かどうかを審査するしくみ)は人権保障の面と親和的で、憲法保障の面は弱くなりがちなので、審査の範囲を広げる解釈などで憲法保障も図ろうとしている、とされる。
- (補足)権力分立は、権力を1か所に集めないことで、憲法を壊せるほどの力がそもそも生まれないようにする=事前に防ぐ側。
出題憲法改正規定も違憲審査制も、憲法保障の方法の一つと位置付けられる(○)
- 「違憲審査制は、憲法が壊される前にそれを防ぐ事前的な憲法保障の手段である」(違憲の行為が起きた後に正す事後的手段)
- 「統治機構の諸制度は、いずれも事前的な憲法保障の手段である」(違憲審査制=は事後的手段)
- 「抵抗権は、明文のある憲法内的保障の1つである」(明文は無い=超憲法的保障として挙げられることがある)
2尊重擁護義務条文
- :天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
- 挙げられているのは、全員、国家の公的な地位にある人(天皇・摂政と公務員)。国民は挙げられていない。
- (補足)憲法は、国民のために国家権力の側を縛る法(立憲主義)。だから憲法を壊しうる立場の人たち自身に、壊さない義務を負わせている。
- :この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。=最高法規性は、尊重擁護義務は。
「は国民にも憲法尊重擁護義務を課している」→ 誤り。列挙されているのは天皇・摂政・国務大臣・国会議員・裁判官その他の公務員だけ。
- 「は、天皇及び公務員のほか、国民にも憲法を尊重し擁護する義務を課している」(国民は挙げられていない)
- 「憲法の最高法規性を定めるのはである」(最高法規性=・尊重擁護義務=)
3抵抗権と国家緊急権学説
- 明文のない憲法保障(超憲法的保障)として、抵抗権と国家緊急権があげられることがある。基本書も講義も、認められると言い切ってはいない。
- 抵抗権:国家権力が国民に重大な人権侵害をしたとき、国民の側がそれを拒む権利。主体は国民。
- (補足)憲法そのものが壊されたときは、憲法の内側のしくみはもう働かない。そのとき憲法秩序を押し戻す力は、憲法の外側=国民の側にしか残らない。抵抗権が憲法保障の一類型として挙げられるのは、この位置づけによる。
- 国家緊急権:戦争・内乱・恐慌・大規模な自然災害などの非常事態で、平時の統治機構では対処できないとき、国家の存立を維持するため、国家権力が立憲的な憲法秩序を一時停止して非常措置をとる権限。主体は国家権力。
- 名前が似ていて主体が正反対(国民/国家権力)。
- 日本国憲法には、国家緊急権の規定が無い。明治憲法には、緊急勅令(8条)・戒厳の宣告(14条)・非常大権(31条)など、複数の条文にわたって規定があった。
- 両面性:国家存亡の危機に憲法の保持を図る面と、緊急事態を名目に憲法秩序を破壊する方向で濫用される危険の面。だから、憲法改正で国家緊急権を認めるとしても、実効的な統制の方策が必要不可欠と解されている。
- 参議院の緊急集会(但書)は別物:衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。採られた措置は臨時のもので、次の国会開会の後10日以内に衆議院の同意がなければ効力を失う()。(補足)憲法の定める手続の中で国会の働きを臨時に参議院に担わせるしくみで、憲法秩序そのものを止める国家緊急権とは違う。
| 抵抗権 | 国家緊急権 | |
|---|---|---|
| 主体 | 国民 | 国家権力 |
| 場面 | 国家権力による重大な人権侵害 | 平時の統治機構で対処できない非常事態 |
| 中身 | 国家権力の行為を拒む | 立憲的な憲法秩序を一時停止して非常措置をとる |
| 日本国憲法の明文 | 無い | 無い(明治憲法にはあった) |
出題憲法が国家緊急権を規定しないのは、立憲主義の例外に慎重な姿勢を示す(○)
- 「国家緊急権は、非常事態において国民が政府に抵抗する権利である」(主体は国家権力。国民の権利なのは抵抗権)
- 「日本国憲法は、明治憲法と同じく、国家緊急権について規定を置いている」(日本国憲法には規定が無い)
- 「参議院の緊急集会の規定があるから、日本国憲法は国家緊急権を定めている」(緊急集会は憲法の手続の中のしくみで、憲法秩序を一時停止する国家緊急権ではない)
- 「抵抗権・国家緊急権は、日本国憲法上認められた憲法保障の手段であることに争いはない」(明文は無く、憲法保障としてあげられることがあるにとどまる)
4発議に必要な賛成条文学説
- :この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
- 発議=国民に提案される憲法改正案を、国会が決めること。
- 基準は総議員。出席議員の3分の2ではない。
- 衆議院の優越は無い:「各議院の」総議員の3分の2以上=両議院それぞれに同じ重い賛成が要る。法律案(=衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で再び可決)・予算()・条約の承認()・内閣総理大臣の指名()とは違う。
- 「総議員」の意味:法定議員数説(法律で定めた議員の定数)と現在議員数説(現に在職する議員の数)が対立。手続の慎重さを求める見地から法定議員数説が有力。
- (補足)現在議員数説では、欠員の分だけ分母が減るので、同じ人数の賛成でも3分の2に届きやすい。
定数240人で欠員がなく、出席200人の議院 → 出席議員の3分の2なら134人で足りるが、総議員の3分の2なら160人が要る。
定数240人で欠員が6人ある議院 → 法定議員数説なら分母240で160人、現在議員数説なら分母234で156人の賛成が要る。
衆議院が総議員の3分の2以上で可決し、参議院が否決した → 法律案なら衆議院の出席議員の3分の2以上での再可決で法律となりうるが()、改正の発議は各議院それぞれの総議員の3分の2以上が要るので、衆議院の再可決では発議にならない。
出題改正発議の「総議員」とは議員の法定数を意味する(aの見解)
- 「憲法改正の発議には、各議院の出席議員の3分の2以上の賛成が必要である」(総議員の3分の2以上)
- 「憲法改正の発議について両議院の議決が異なったときは、衆議院の議決が優越する」(衆議院の優越は無い)
- 「『総議員』の意味については、現在議員数説が有力である」(法定議員数説が有力)
5改正原案を出せるのは誰か条文学説
- 発案=改正の原案あるいは修正案を出すこと。
- 言葉の注意:国会法は、議員が憲法改正原案を出すことも「発議」と呼ぶ(68条の2)。これはの「発議」(国会として改正案を決めて国民に提案すること)とは別。国会の中の順番=議員(または憲法審査会)が原案を出す → 各議院で総議員の3分の2以上の賛成で可決 → 国会での最後の可決をもって、国会の発議(68条の5)。
- 国会法68条の2:議員が日本国憲法の改正案(以下「憲法改正案」という。)の原案(以下「憲法改正原案」という。)を発議するには、第五十六条第一項の規定にかかわらず、衆議院においては議員百人以上、参議院においては議員五十人以上の賛成を要する。
- 国会法68条の4:憲法改正原案につき議院の会議で修正の動議を議題とするには、第五十七条の規定にかかわらず、衆議院においては議員百人以上、参議院においては議員五十人以上の賛成を要する。
- この人数は国会法の要件で、そのものの要件ではない(が定めるのは各議院の総議員の3分の2以上の賛成による発議)。
- 国会法68条の3:前条の憲法改正原案の発議に当たつては、内容において関連する事項ごとに区分して行うものとする。
- 国会法68条の5第1項:憲法改正原案について国会において最後の可決があつた場合には、その可決をもつて、国会が日本国憲法第九十六条第一項に定める日本国憲法の改正(以下「憲法改正」という。)の発議をし、国民に提案したものとする。(抜粋)
- 内閣の発案権:法律案なら、内閣が国会に提出できる。憲法改正原案については争いがあり、法律案とは異なり否定説が有力。否定説の理由として、憲法制定権力が国民にある以上、原案の提出権も国民代表である国会議員に属する、と説明されている。
- 政府の解釈は一貫して肯定説。国会法は、内閣に提出権があるかどうかを決めていない(議員による原案の発議の要件〔68条の2〕と、憲法審査会による原案の提出〔102条の7〕は定めているが、内閣の提出権には触れていない)。
- 国会法102条の7第1項:憲法審査会は、憲法改正原案及び日本国憲法に係る改正の発議又は国民投票に関する法律案を提出することができる。(抜粋)
衆議院議員80人の賛成で改正原案を出そうとした → 国会法68条の2の要件(100人以上)を満たさず発議できない。これは違反の問題ではなく、国会法の要件の問題。
出題憲法改正原案の発議には衆議院100人以上・参議院50人以上の賛成が要る(○)憲法改正の発案権は内閣にはない(aの見解)
- 「は、議員が憲法改正原案を発議するには衆議院で100人以上、参議院で50人以上の賛成を要すると定めている」(人数は国会法68条の2の要件)
- 「内閣は、法律案と同じく憲法改正原案を国会に提出することができる、とするのが有力説である」(法律案とは異なり否定説が有力。肯定は政府の解釈)
- 「国会法は、内閣に憲法改正原案の提出権が無いことを明文で定めている」(国会法はこの点を決めていない)
6国民の承認条文学説
- 後段:この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
- 「過半数」が何の過半数か、条文の文言だけでは決まらない=有権者総数の過半数・投票総数の過半数・有効投票総数の過半数の3つが争われてきた。
- 平成19年の改正手続法では、有効投票総数の過半数とされている。法律がこの扱いを採ったということで、の「過半数」の憲法解釈が法律によって確定したわけではない。
- 改正手続法126条1項:国民投票において、憲法改正案に対する賛成の投票の数が第九十八条第二項に規定する投票総数の二分の一を超えた場合は、当該憲法改正について日本国憲法第九十六条第一項の国民の承認があったものとする。
- 同法98条2項の「投票総数」=(憲法改正案に対する賛成の投票の数及び反対の投票の数を合計した数をいう。)(抜粋)=無効票は分母に入らない。だから法律の文言は「投票総数」でも、中身は有効投票総数の過半数。
- 投票権者(同法3条):日本国民で年齢満十八年以上の者は、国民投票の投票権を有する。
- 期日(同法2条1項):国民投票は、国会が憲法改正を発議した日(……)から起算して六十日以後百八十日以内において、国会の議決した期日に行う。
| 分母 | 必要な賛成(有権者1億・投票5千万・うち無効5百万) | 賛成2千3百万なら |
|---|---|---|
| 有権者総数 | 5千万を超える | 不成立 |
| 投票総数 | 2千5百万を超える | 不成立 |
| 有効投票総数 | 2千2百50万を超える | 成立 |
白票を投じた人がいても、改正手続法の「投票総数」は賛成票と反対票の合計なので、分母に入らない。「法律が『投票総数』と書いているから投票総数説を採った」と読むのは誤り。
出題国民投票の「過半数」は、法律で投票総数(賛否の合計)の過半数と定められた(○)国民投票法では、「その過半数」とは有権者総数の過半数を意味する(×)改正案の国民投票は、参議院議員通常選挙の際に行うことも憲法上認められる(○)承認に要する「過半数の賛成」とは有効投票の過半数(aの見解)承認は特別の国民投票か直近の衆議院議員総選挙の際の投票で過半数を要する(×)
- 「は、国民投票において有効投票総数の過半数の賛成を必要とすると明文で定めている」(は「その過半数」とだけ定める。有効投票総数の過半数は改正手続法の扱い)
- 「改正手続法の定めにより、の『過半数』は有効投票総数の過半数と解することで確定した」(法律がその扱いを採ったのであって、憲法解釈の確定ではない)
- 「改正手続法は、無効票も含めた投票総数を分母としている」(「投票総数」=賛成票と反対票の合計)
- 「国民投票の投票権者は、満20年以上の日本国民である」(満18年以上)
7天皇の公布条文
- :憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。
- :天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。(抜粋)
- 「直ちに」=承認を経た改正を、天皇が公布しないでおくことはできない。公布は内閣の助言と承認による国事行為。
- (補足)公布するのは天皇だが、天皇自身の名ではなく「国民の名で」行う=改正の主体が国民であることの表れ、と説明できる。
出題改正の公布は天皇が「国民の名で」行い、国民の意思によることを示す(○)
- 「国民の承認を経た憲法改正は、天皇が天皇の名で公布する」(国民の名で公布)
- 「国民の承認を経た憲法改正を公布するかどうかは、天皇の判断に委ねられている」(直ちに公布する・内閣の助言と承認による国事行為)
8改正の限界学説
- 通説は、憲法改正には限界があるとする(限界説)。の手続を全部踏んでも、次の4つは改廃できない。
- ①国民主権:君主主権に変えることはできない。改正権の基盤である国民主権を改正で変えるのは、改正権の自殺行為だから。
- ②憲法改正国民投票制:廃止できない。廃止すると国民主権の原理が揺らぐから。
- ③人権宣言の基本原則:憲法の中の根本規範というべきものなので改変できない。(補足)根本規範=憲法が何のためにあるのかを決める、いちばん土台の決まり。
- ④平和主義の原則:人権保障や国民主権と不可分に結びついているので限界になる。侵略戦争を許す改正はできない。
- ただし、限界は平和主義の「原則」で、条文そのものではない。戦力の不保持を定めるの改正は、必ずしも平和主義の原則と矛盾しないので可能と解されている。
- :前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
- (補足)の改正手続も、最高法規性を保つしくみ(硬性憲法)の一部。その手続で、憲法を最高法規たらしめている中身そのものを壊せば、守るべき憲法が消える=限界説は、守るしくみの最後の一枚でもある。
「主権は天皇に属する」と書き換える改正案が、衆参とも総議員の3分の2以上で発議され、国民投票でも過半数の賛成を得た → 手続は全部踏んでいるが、限界説ではこの改正は許されない(①国民主権)。
改正の承認を国会の議決だけで足りるとして、国民投票を廃止する改正案 → 国民投票を経て成立させようとしても、限界説では許されない(②国民投票制)。
出題国民投票制を制憲権の具体化とみると、改正でも国民投票制は廃止できない(○)基本原理の改正は憲法の廃止と新憲法の制定という法を超えた政治的事件となる
- 「の手続を踏みさえすれば、憲法のどの規定も改正できるとするのが通説である」(通説は限界説。手続を踏んでも改廃できないものがある)
- 「限界説によれば、平和主義の原則が改正の限界となるから、を改正することはできない」(の改正は可能と解されている。限界は原則)
- 「憲法改正国民投票制は手続に関する定めにすぎないから、改正によって廃止することができる」(廃止すると国民主権の原理が揺らぐ=限界)
9限界説と無限界説の根拠学説
- 無限界説:主権の全能を根拠にする(講義の整理)。(補足)主権者である国民は何でも決められ、改正権もその現れだから、改正の内容に限界は無い、という考え方。
- 基本書は、国民主権の説明の中で、憲法制定権力(憲法をつくる力)について、次のように説く:一度憲法をつくったからには、最初からつくり変えることは許されないが、基本理念に反しない限りでの改正権は残しておくべきである=憲法制定権力は憲法改正権に変容して(姿を変えて)、憲法典の中に残された。の国民投票は、そのためのものと考えられている。限界説②の理由も、この説明を参照している。
- (補足)この説明に立つと、改正権は、最初から憲法をつくり変える力ではなく、基本理念に反しない限りでの権限=自分の基盤(国民主権)や憲法の基本原理までは動かせない。①の「改正権の自殺行為」は、この前提に立って初めて言える理由。
- 講義の整理では、限界説は自然法・根本規範(③の「根本規範」と同じ語)を前提にする、とも説明される。
- 前文1項(抜粋):そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
- 条文上の手がかり:前文1項の「人類普遍の原理……に反する一切の憲法……を排除する」は、改正権を拘束し、改正の限界を画す法規範と解されている。
- 8月革命説との関係:限界説に立つと、主権者の変更は改正の限界を超える。そうすると、天皇主権の明治憲法を73条の改正手続で国民主権の日本国憲法に改めたことは、改正としては説明がつかない(明治憲法の改正として成立したとする上諭と、国民が制定したとする前文が食い違う)。その断絶を説明する考え方として、8月革命説が通説とされる。
| 無限界説 | 限界説(通説) | |
|---|---|---|
| 根拠(講義) | 主権の全能 | 自然法・根本規範を前提にする |
| 改正権 | (補足)主権の現れ | 基本理念に反しない限りでの権限(基本書:制定権力が改正権に変容して憲法典に残された) |
| 改正の内容 | 限界なし | 国民主権・国民投票制・人権宣言の基本原則・平和主義の原則は改廃できない |
出題改正権は憲法に根拠を持つ以上、憲法の同質性を失わせる改正はできない憲法規範には実定化された自然法規範が含まれ、その性質を失わない改正権を制度化された制憲権と解すれば、改正に限界はなくいかなる改正もできる(×)憲法の妥当性の根拠は、人権保障を含む根本規範である制憲権と改正権を区別する考えは、改正に法的限界があるとする見解の根拠(○)
- 「国民主権を根拠にすれば、必ず改正に限界があるという結論になる」(講義の整理では、主権の全能は無限界説の根拠。限界説は自然法・根本規範を前提にする)
- 「限界説も、無限界説と同じく、主権の全能を根拠にする」(主権の全能は無限界説の根拠。限界説は自然法・根本規範を前提にする)