民法ゼロから民法#18

未成年者は、なぜ取り消せるのか——同意という原則と、二つの「取り消せない」

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第1章 民法総則 ⑭/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

今日の地図——四人のうちの、一人目

前回の四人の札の予告を開ける板+今日は未成年者の中身に入るという宣言 図:前回の四人の札の予告を開ける板+今日は未成年者の中身に入るという宣言

前回の最後を、少し、振り返っておきます。四人の名前を、聞きましたね。あのとき、こう予告していました。「次は、いよいよ、四人のうちの、一人目——未成年者の、中身に、入っていきます」。その前に、一つ、確認させてください。前回の話で、意思能力だけでは足りない、その理由は何だったでしょうか?だから、外から見える札——行為能力が、必要でした。その札を貼られた、四人のうちの、一人目に、今日、入っていきます。

四人の地図を、もう一段

四人の札に原則の向きの列を足した比較板(未成年者・成年被後見人は原則ぜんぶ制限/被保佐人・被補助人は原則ぜんぶ自由) 図:四人の札に原則の向きの列を足した比較板

  • 未成年者・成年被後見人は原則ぜんぶ制限
  • 被保佐人・被補助人は原則ぜんぶ自由

では、四人の地図を、もう一段、詳しくしていきましょう。前回は、名前と、一つの軸だけを、置きました。「何で決まるか」という軸です。今日は、そこに、もう一つの軸を、足します。「原則の向き」です。並べてみると、この四人は、二つに割れます。未成年者と、成年被後見人は——原則、ぜんぶ制限されていて、例外だけ、単独でできます。逆に、被保佐人と、被補助人は——原則、ぜんぶ自由で、決められた行為だけが、制限されます。具体的に言うと、未成年者が一人で結んだ契約は、原則、すべて、取消しの対象になります。逆に、被保佐人や被補助人が一人でした契約は、原則、そのまま有効です。法律が挙げている行為や、審判で決められた行為だけが、制限されます。

なぜ、向きが、逆になるのか——その答えは、この二人を、一人ずつ、扱う回で、出します。ただし、今日は、要件や、保護者の権限、取り消せる範囲には、入りません。名前と、この二つの軸だけを、持ち帰ってください。では、この一人目——未成年者の、中身に、入っていきましょう。

未成年者とは、誰か

十八歳未満という年齢の線を示す板と2022年4月1日より前は二十歳だったという改正の注記

未成年者とは、誰のことでしょうか。根拠は、この条文です。

条文民法4条

民法 第四条(成年) 年齢十八歳をもって、成年とする。

とても短い条文ですが、ここには、大事な歴史があります。この「十八歳」、実は、二〇二二年、四月一日より前は——「二十歳」でした。成年年齢の引下げという、大きな改正が、ありました。だから、もし、手元に、古い問題集があったら——そこには、「二十歳未満」と、書かれているはずです。もう一つ、付け加えておきます。二〇二二年、四月一日、その日に、ちょうど十八歳や十九歳だった人も——その日から、まとめて、成年になりました。今の答えは、「未成年者は、十八歳未満」です。未成年者とは、何か、分かったところで——今日の背骨に、入っていきましょう。

山場——原則は、同意が要るということ

5条の骨格板(1項本文は原則同意が要る・1項ただし書は例外・2項は取消し・3項は例外という4区画が1本の条文に入っている) 図:5条の骨格板

ここから、今日の背骨に、入ります。未成年者がした契約は、どうなるのでしょうか。ただ、その前に、一つ、大事な区別があります。未成年者は、契約が「できない」わけでは、ありません。契約そのものは、未成年者、一人でも、できます。ただし、原則として、法定代理人の同意が、要ります。ここが、今日、一番、押さえてほしい違いです。この背骨が、一本の条文に、全部、入っています。この条文です。

条文民法5条1項・2項・3項

民法 第五条(未成年者の法律行為) 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。 2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。 3 第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。

順番に、見ていきましょう。まず、1項の本文。法定代理人の同意を、要求している部分です。これが、原則です。未成年者が、一人で、法律行為をするには——法定代理人の同意が、要ります。そこで、2項です。「取り消すことができる」。同意の無い契約は、取り消せます。そこが、大事なところです。無効ではなく、取消しです。取り消せる、というのは——取り消すまでは、有効、ということです。取消しは、不確定に有効な状態でした。未成年者や、法定代理人が、望めば——そのまま、契約を通すことも、できます。だから、未成年者の契約は、「無効」ではなく——「取り消すまでは有効」な、状態から、スタートします。では、逆に、同意が、あったら、どうでしょうか。

例えば、契約の前に——同じ十六歳が、親にメッセージで聞いて、「いいよ」と、返事をもらっていたとします。この場合は、取り消せません。確定的に、有効です。まとめましょう。原則は、「同意が要る」。同意が無ければ、取り消せる。取り消すまでは、有効。同意があれば、確定的に、有効です。前回、行為能力とは——一人で確定的に、契約を完成させられる資格だ、と言いました。未成年者は、その資格が、制限されています。だから、同意という、もう一押しが、要るんです。この一本の線が、今日、ずっと効いてきます。

同意を与えるのは、誰か

法定代理人は誰か板(親権者はふつう父と母/未成年後見人は家庭裁判所が選ぶ) 図:法定代理人は誰か板(親権者はふつう父と母/未成年後見人は家庭裁判所が選ぶ)

では、この「同意」を、与えるのは、誰なのでしょうか。代理の回で見た、法律で決まる代理——法定代理を、担う人です。では、法定代理人とは、具体的には、誰なのでしょうか。ふつうは、親権者——つまり、父と母です。ちなみに、父と母が、二人とも揃っている場合は——この二人で、一つの親権者として、扱われます。原則は、そうです。父と母、両方の意思が、必要になります。では、両親とも、亡くなっている場合は、どうなるでしょうか。その場合のために、未成年後見人という、仕組みがあります。家庭裁判所が、代わりの人を、選んでくれます。

親権者か、未成年後見人か——どちらかが、未成年者の、法定代理人になります。この二本立て、覚えておいてください。中身の詳しい話は、また、別の回で、扱います。今日は、「同意を与えるのは、この人たち」ということだけ、持ち帰ってください。

山場——なぜ、同意があれば有効なのか

なぜ同意で足りるのかを示す2段の板(足りないのは経験・知識であり保護者の判断力で埋め合わせる) 図:なぜ同意で足りるのかを示す2段の板

ここで、一つ、立ち止まって、考えてみましょう。なぜ、法定代理人の同意さえあれば、有効になるのでしょうか。大人が認めたから、と考えても、悪くはないのですが——もう少し、掘り下げてみます。前回、行為能力とは、外から見える札だ、という話を、しました。未成年者に、足りないのは——その日、その瞬間の、判断力ではなく——経験や、知識の、蓄積そのものです。だから、その足りない分を——法定代理人の判断力で、埋め合わせれば、十分だと、考えられています。たとえるなら、自転車の補助輪のようなものです。バランス感覚が、まだ十分でないうちは——補助輪という、外からの支えが、必要です。法定代理人の同意も、これと同じで——未成年者に足りない分だけを、外から、支えています。

支えがある分だけ、前に進める——よいたとえです。経験のある大人の判断が、同意という形で、加われば——未成年者に、足りない部分は、補われた、と扱われます。ここで、一つ、開けておきたい問いがあります。実は、この理屈が、そのまま当てはまらない相手も、います。成年被後見人です。この人の場合は、保護者が同意しても、意味が、ありません。なぜだと、思いますか。同意しても、そのとおりに行動できるとは、限らない——まさに、そこが、この人の保護者の側に、同意権が無い理由です。この先の回で、詳しく、扱います。今日は、未成年者について——「足りない判断力を、保護者の判断力で埋める」——この理屈だけ、押さえてください。

例外の地図——取り消せない場面は、四つある

例外の地図板(四つの例外のうち今日扱う二つと次回に送る二つを分けた一覧) 図:例外の地図板(四つの例外のうち今日扱う二つと次回に送る二つを分けた一覧)

さて、ここまでは、原則の話でした。同意が無ければ、取り消せる。これが、原則です。ところが、同意が無くても、取り消せない場面が、あります。実は、四つ、あります。一つ目は、単に権利を得る、または、義務を免れる行為。二つ目は、処分を許された財産の、処分。三つ目は、許された営業——一人で商売をすることを、あらかじめ、許された場合です。四つ目は、二つ、セットです。取消しの意思表示——契約を、取り消す、と伝える行為そのもの。そして、身分行為——親子や夫婦といった、身分に関わる行為です。この四つ、条文の順に、丸暗記する必要は、ありません。大事なのは、「なぜ、同意が要らないのか」という、理由です。

一つ目と二つ目は、これから、その理由から、順に、見ていきます。三つ目と四つ目も、それぞれ、別の理由で、同意が要らなくなります。今日は、一つ目と、二つ目に、絞って、じっくり、見ていきましょう。

山場——単に権利を得る、その境目

単に権利を得るかどうかの境目を分ける対比板(条件なしの贈与と債務免除は同意なしで有効・負担付贈与と弁済受領は同意が要る、理由は債権という財産が消えるから) 図:単に権利を得るかどうかの境目を分ける対比板

一つ目の例外から、見ていきましょう。「単に権利を得、または、義務を免れる行為」です。この場合は、法定代理人の同意が、無くても——確定的に、有効になります。理由は、シンプルです。未成年者が、損をする余地が、そもそも、無いからです。同意という保護を、用意しているのは——未成年者が、不利な契約を、結ばされないようにするためでした。だとすれば、そもそも、不利になりようがない行為には——その保護を、用意する必要が、ありません。では、具体的に、見ていきましょう。未成年者が、祖母から、誕生日に、条件なしで、一万円を、もらいました。

これは、「単に権利を得る」行為に、あたります。法定代理人の同意が、無くても、確定的に、有効です。もう一つ、見てみましょう。未成年者が、友達から、三千円を、借りていたとします。その友達から、「もう、返さなくていいよ」と、言われました。三千円を、返さなければならない——その義務が、まるごと、消えます。未成年者にとっては、負担が、無くなるだけです。これも、同意なしで、確定的に、有効です。ここまでの二つ、実は、条文の言葉に、そのまま対応しています。「権利を得る」が、贈与。「義務を免れる」が、免除です。ここまでは、分かりやすいですね。では、少し、意地悪な質問をします。今度は、未成年者が、貸している側だとしましょう。友達に、三千円を、貸していて——その三千円を、現金で、返してもらったら、どうなるでしょうか?

実は、これは、同意が要るほうです。単に権利を得る行為には、あたりません。ここが、今日、最大の山場です。じっくり、考えてみましょう。未成年者は、友達に、三千円を、貸していました。これは、「三千円を、返してもらう権利」——つまり、債権を——すでに、持っていた、ということです。債権も、立派な財産です。そして、友達が、実際に、三千円を、返してきたとします。そのとき、何が、起きるでしょうか。手元には、現金の三千円が、入ります。でも、それと同時に——「三千円を返してもらう権利」という財産は——消えて、無くなります。

手元の現金は、増えていますが——持っていた権利は、消えています。これは、「単に」権利を得ているとは、言えません。だから、弁済を、受け取る行為は——同意なしでは、できません。同意が無ければ、取り消せる、原則どおりの扱いに、戻ります。では、さっきの、「もう返さなくていいよ」との、違いを、確認しましょう。同じ三千円でも、借りている側と、貸している側とで、逆になります。この二つの対比、しっかり、押さえておいてください。もう一つ、同意が要る例も、見ておきましょう。「この自転車を、あげる。ただし、毎朝、うちの犬の散歩をすること」。

これは、負担付贈与、と呼ばれます。自転車という権利を、得ると同時に——「散歩をする」という、義務も、負っています。だから、これも、同意が、要ります。まとめましょう。もらうだけの贈与と、義務を免れる免除は、同意なしで有効。負担のつく贈与と、財産が入れ替わる弁済の受領は、同意が要ります。

山場——処分を許された財産

処分を許された財産の板(目的を定めて渡された教科書代と目的を定めないで渡されたお小遣いはどちらも5条3項) 図:処分を許された財産の板

二つ目の例外に、進みましょう。「処分を許された財産」です。これも、同意が無くても、確定的に、有効になります。同じに見えますが、二つ目の例外は、一つ目とは、理由が、違います。一つ目の例外は、「損をする余地が、無いから」でした。二つ目の例外は、「先に、包括的な同意が、渡してあるから」です。法定代理人が、あらかじめ、その財産の使い道を——未成年者に、任せてしまっている、ということです。だから、一つ一つの、買い物のたびに——改めて、同意を、取り直す必要が、ありません。具体例で、見てみましょう。法定代理人が、「教科書代として」と、目的を決めて——未成年者に、三千円を、渡したとします。この三千円で、指定の参考書を、買いました。

目的を定めて渡された財産は——その目的の範囲内で、自由に、処分できます。もう一つ、見てみましょう。毎月のお小遣いで、好きなバンドのCDを、買いました。実は、目的を定めないで渡された財産の処分も——同じ、条文の中に、書かれています。決めて渡した場合も、決めずに渡した場合も——どちらも、未成年者が、自由に、処分できます。では、一つ、考えてみましょう。教科書代として、渡された三千円で——ゲームソフトを、買ってしまったら、どうでしょうか。ここで、範囲内かどうかが、問題になります。ただし、この範囲を、超えた場合の扱いについては——今日は、深入りしません。

この先の回で、必要になったら、また、扱います。今日、押さえてほしいのは——一つ目の例外とは、違う理由で、同意が要らない場面がある、ということです。この二つを、両方とも、ただ「例外だから」で片付けてしまうと——この違いが、見えなくなってしまいます。理由が違う、ということを、しっかり、区別しておいてください。

決着——守る線は一本、外す線は二本

冒頭のスマホの契約を同意なし・損をする余地あり・先の同意もなしの順で回収する板 図:冒頭のスマホの契約を同意なし・損をする余地あり・先の同意もなしの順で回収する板

では、ここまでの話を、一つに、つなげましょう。未成年者を、守る線は、一本です。十八歳未満という、年齢です。そして、その保護を、外す線は、二本、ありました。片方は損をする余地、もう片方は先に渡した同意。どちらも、判断力そのものとは、関係ありません。未成年者の保護は、最初から最後まで——判断力を、直接、測らない仕組みで、できています。では、冒頭の、あのスマホの契約に、戻りましょう。十六歳の高校生が、親に内緒で、分割払いで、スマホを買いました。まず、この契約に、法定代理人の、同意は、ありましたか。同意は、ありませんでした。では、この契約は、損をする余地の、無い行為でしょうか。

これから何回も払っていく契約ですからね。損をする余地は、大いに、あります。では、この財産は、先に、処分を許された財産だったでしょうか。先に渡された同意も、ありません。同意は無く、損をする余地はあり、先の同意も、無い。だから、この契約は、取り消せます。これが、今日の、答えです。

今日の地図(保存版)

今日のまとめ板(守る線は年齢一本、外す線は損をする余地なしと先の同意ありの二本)+次回はパン屋の予告 図:今日のまとめ板

  • 守る線は年齢一本、外す線は損をする余地なしと先の同意ありの二本
  • 次回はパン屋の予告

今日、見てきたことを、まとめましょう。未成年者とは、十八歳未満の人でした。原則は、「できない」ではなく、「同意が、要る」。そして、同意が要らない場面が、二つありました。損をしようがない場合と、同意が先に済んでいる場合。この二つは、理由が、違いましたね。保護が要らない場合と、保護がもう与えられている場合ですね。そして、この二つの理由、条文の中でも——1項ただし書と、3項という、別々の場所に、書かれています。今日、名前だけ、置いていったのは——許された営業、取消しの意思表示、身分行為の、三つです。それから、成年被後見人には、同意が意味を持たないという話や——被保佐人、被補助人の、要件と、保護者の権限も——この先の回で、順番に、扱っていきます。

取り消したあと、あのスマホがどうなるかも——この先の回で、扱います。では、最後に、一つ、開けておきます。先ほどの十六歳が、もし、自分で、パン屋を開いたら、どうなるでしょうか。毎日の仕入れに、いちいち、親の同意が、要るのでしょうか。この続きは、次に、扱います。

参照条文

  • 民法4条
  • 民法5条1項・2項・3項

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