民法ゼロから民法#47

代理行為の瑕疵101条

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第1章 民法総則 ㊹/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

騙されたのはB、損をするのはA

冒頭設例板(本人Aが土地の売却を代理人Bに委託/相手方Cがだましてきた/Bはそれに気づかず安く売った) 図:冒頭設例板

  • 本人Aが土地の売却を代理人Bに委託
  • 相手方Cがだましてきた
  • Bはそれに気づかず安く売った

騙されたのはBです。ですが、契約の効果を受け取るのはAです。ここで聞きます。この契約を取り消せるのは誰でしょうか。結論を先に言うと、取り消せるのはAです。騙されたのはBなのに、なぜAなのか。それを確かめるには、まず一つ、順番を確かめておく必要があります。騙されたかどうかを判定するとき、そもそも誰を見て判定すればよいのか、という順番です。

三つ目の要件、覚えていますか

3要件の払い戻し板(①代理権②顕名③代理人自身の意思表示/行為の主体は代理人とする見方=その根拠が101条) 図:3要件の払い戻し板

  • ①代理権②顕名③代理人自身の意思表示
  • 行為の主体は代理人とする見方=その根拠が101条

本編に入る前に、代理の3要件を思い出してください。①代理権があること、②顕名、つまり本人のためにすることを示すこと、③代理人自身が意思表示をすること。この三つでした。三つ目の要件が、今日の出発点です。以前、行為の主体は本人なのか代理人なのかという対立を見たとき、代理人が行為の主体だとする見方が通説であり判例だと確認しました。その根拠として、今日扱う101条を挙げていました。今日は、その101条の中身を実際に開いて、なぜそれが根拠になるのかを確かめます。

効果の届く先と、判断する人がズレている

ズレの構造板(99条1項=代理人が意思表示→効果は本人に直結/瑕疵は意思表示という行為そのものの中で起きる出来事) 図:ズレの構造板

  • 99条1項=代理人が意思表示→効果は本人に直結
  • 瑕疵は意思表示という行為そのものの中で起きる出来事

99条1項を思い出してください。代理人が権限内で本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に直接効力を生じる、という条文でした。ここで起きているのは、意思表示をする人と、その効果を受け取る人が分かれる、という分業です。意思表示はB、効果はAと分かれています。ここで、詐欺や錯誤という瑕疵が何の中で起きるのかを考えてみてください。詐欺や錯誤は、意思表示という行為そのものの中で起きる出来事です。Cの嘘を信じたかどうかは、意思表示の現場で起きたことです。その場にいたかどうかが決め手です。判定できるのは、その場に立ち会って自分の判断で意思表示をした人だけです。効果を受け取るだけのAは、判定材料そのものを持っていません。だから、瑕疵の有無を見るときの基準は、意思表示をした代理人になります。以前、行為の主体は代理人だという見方の根拠に101条を挙げたのは、このためです。条文が瑕疵を代理人について判定するのは、意思表示をしているのが代理人自身だからです。

代理人Bと相手方Cの意思表示、そして本人Aと相手方Cを直接結ぶ効果の線 図:代理人Bと相手方Cの意思表示、そして本人Aと相手方Cを直接結ぶ効果の線

図で確認してください。相手方Cから代理人Bへ、嘘を持ちかける矢印が伸びています。意思表示そのものは、代理人Bから相手方Cへ向かいます。そして、効果だけが、本人Aと相手方Cを直接つなぎます。嘘を受け取ったのはBの位置、効果が生じるのはAの位置。この二つの位置がズレているのが、代理という制度そのものです。

101条1項・2項——原則は代理人基準

能動代理・受動代理の対比板(1項=代理人が相手方にした意思表示/2項=相手方が代理人にした意思表示、どちらも代理人基準) 図:能動代理・受動代理の対比板

  • 1項=代理人が相手方にした意思表示
  • 2項=相手方が代理人にした意思表示、どちらも代理人基準

条文で確認しましょう。

条文民法101条1項・2項

民法 第百一条(代理行為の瑕疵)第1項・第2項 代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在錯誤詐欺強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。 2 相手方が代理人に対してした意思表示の効力が意思表示を受けた者がある事情を知っていたこと又は知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする

1項は、代理人が相手方に対してした意思表示、つまりBがCに向かって行った意思表示についての規定です。今日の設例のように、Bが売却の意思表示をした場面がこれにあたります。最初に並んでいる意思の不存在は、表示に見合う本気の意思が無い状態のことです。2項は逆に、相手方が代理人に対してした意思表示、つまりCがBに向かって行った意思表示についての規定です。どちらの方向でも、判定の基準は代理人になります。当てはめます。Cが嘘をついてBを騙し、Bがそれを信じて売却の意思表示をしました。これは1項の場面です。詐欺かどうかを判定する基準はBです。Bは実際に騙されているので、この意思表示には詐欺による瑕疵があります。

詐欺による意思表示は取り消すことができる、というのが以前見た条文です。

条文民法96条1項

民法 第九十六条(詐欺又は強迫)第1項 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる

この意思表示は取り消しうるものになりました。そして、この意思表示の効果は、99条1項によってAに帰属しています。取り消せる状態にある権利義務が、Aのところに生じている、ということです。

101条3項——本人の悪意は隠せない

3項の構図板(特定の法律行為を委託された代理人/本人が自ら知っていた事情は代理人の不知で覆せない) 図:3項の構図板

  • 特定の法律行為を委託された代理人
  • 本人が自ら知っていた事情は代理人の不知で覆せない

もう一つ、3項があります。1項・2項の原則を、ある場面でひっくり返す規定です。

条文民法101条3項

民法 第百一条(代理行為の瑕疵)第3項 特定の法律行為をすることを委託された代理人がその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする。

場面を一つ変えて確認しましょう。今度は土地の売却ではなく、絵の買い付けです。Aは、知人のCが冗談半分に「その絵、欲しいなら売ってもいいよ」と言っているのを聞いていて、Cが本気ではないと知っていました。ですがAは、そのことをBには一切伝えないまま、「Cの持っている絵を、この一件だけ買ってきてほしい」と委託しました。Bはそんな事情を知らないまま、Cのところへ行き、Cから本気でない「売ります」という意思表示を受け取りました。Cは、自分の意思表示は真意ではなかったとして、無効を主張してきます。ここでAが、「受け取ったのはBで、Bはその冗談を知らなかったのだから、無効にはならない」と言い張れるかどうかが問題です。

2項の原則どおりにBを基準にすれば、Bは冗談だと知らなかったので、無効にはならない、ということになりそうです。ここで使うのが、本気でない意思表示を扱った条文です。表意者の真意ではないと相手方が知っていたか、知ることができたときは、その意思表示は無効になる、という条文があります。ですが、ここで3項が働きます。Aは自分でCの冗談を知っていました。特定の法律行為、つまりこの絵の買い付けだけを具体的に委託していました。この二つがそろうと、Aは自分が知っていた事情について、Bが知らなかったことを盾に使うことはできません。その結果、Cの無効の主張は通り、この絵の売買は無効になります。

1項・2項の原則は、代理人が自分の判断で動く場面を前提にしています。ところが、本人が「この行為だけ」と具体的に指図していた場合、本人は自分の知っている事情を代理人に隠したまま、代理人の無知を都合よく利用できてしまいます。分業の建前を本人自身が悪用する場面にだけ、基準を本人へ引き戻す。それが3項です。本人が知っていた事情は隠せません。3項が守っているのは、代理人の無知ではなく、本人の悪意を隠させないという一点です。逆に、Aも冗談だと知らず、知ることもできなかったのなら、3項は働かず、原則どおりBを基準にします。Bも冗談だと知ることができなかったなら、意思表示は有効なままです。

冒頭設例の決着——取消権者は誰か

120条2項の再掲板(瑕疵ある意思表示をした者・代理人・承継人に限り取り消せる/本人=効果帰属先と解する) 図:120条2項の再掲板

  • 瑕疵ある意思表示をした者・代理人・承継人に限り取り消せる
  • 本人=効果帰属先と解する

ここまでの流れを、冒頭の設例に戻して整理します。詐欺の有無はBを基準に判定しました。Bは実際に騙されているので、意思表示には詐欺による瑕疵があります。効果は99条1項によってAに帰属しています。以前見た条文を、もう一度確認しましょう。

条文民法120条2項

民法 第百二十条(取消権者)第2項 錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。

「瑕疵ある意思表示をした者」が誰かが、今日の急所です。ここでいう「瑕疵ある意思表示をした者」は、その意思表示の効果を受け取る本人だと解されています。意思表示という行為の中身を作ったのはBですが、その意思表示は99条1項によってAの意思表示として扱われ、効果もAに生じます。取消権は、その効果を持つ人のところに生じます。取消権はAにあります。詐欺かどうかを判定する基準はB、しかし取消権を持つのはA。この二つは矛盾しません。判定の基準と、権利の帰属先は、そもそも別の問いだからです。Bが自分で取り消せるかどうかは、Bが本人からどこまでの代理権を与えられているかによります。Bが任意代理人であれば、売却の代理権とは別に、取消しの意思表示についても代理権が及んでいるかどうかが問題になります。売却を頼まれたことが、当然に取消しまで頼まれたことになるとは限らないので、ここは断定できません。Bが法定代理人であれば、本人の意思にかかわらず、代理人としての判断で取消権を行使できるのが原則です。法定代理人の代理権は、本人に頼まれた範囲で決まるのではなく、法律の規定によって本人の財産に関する法律行為に広く及ぶからです。

代理人と相手方が手を組んだら

通謀虚偽表示の設例板(代理人Bと相手方Cが通謀して虚偽の売買を仕組んだ/本人Aは知らない) 図:通謀虚偽表示の設例板

  • 代理人Bと相手方Cが通謀して虚偽の売買を仕組んだ
  • 本人Aは知らない

場面ごとに、101条で足りるか、足りないなら何を使うかを確かめます。一つ目は、代理人Bと相手方Cが通謀して、虚偽の売買契約を仕組んだ場面です。本人Aはそのことを何も知りません。

代理人Bと相手方Cの通謀、その外側に立つ本人A 図:代理人Bと相手方Cの通謀、その外側に立つ本人A

このとき使う条文が94条です。まだ扱っていないので、必要な範囲だけ確認します。

条文民法94条1項・2項

民法 第九十四条(虚偽表示)第1項・第2項 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。 2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

1項が、通謀した意思表示を無効にする規定です。2項は、その無効を、事情を知らない第三者には主張できないという規定です。AがCに無効を主張する側は、問題ありません。101条1項によってB基準で判定すると、BとCの間には通謀による意思の不存在、つまり表示に見合う本気の意思が無い状態が認められます。94条1項の無効を、Aは主張できます。CがAに無効を主張する側が、問題になります。Aは、この契約の当事者そのものです。94条2項が守るのは、当事者の外側にいる第三者です。契約の当事者であるAは、94条2項の第三者にはあたりません。だから、94条2項によってCの無効主張が制限されることはありません。

では、Aは何も守られないのでしょうか。BとCがただ示し合わせただけなら、そのとおりで、Aは守られず、Cの無効主張は通ります。ただし、BがAを欺くつもりでCと通謀した場合は、もう一つの見方が入ってきます。その場合、Bは、そんなことをする権限をAから与えられてはいません。そこで、この場面のBを、Aの代理人ではなく使者とみます。使者は、以前見たとおり、ほかの人が決めたことをそのまま運ぶだけの人です。ただしここでBが運んでいるのは、Aの決定ではなく、Cの本心でない意思表示です。Bが代理人でなくなるので、代理人を基準にする101条も、この向きでは使えません。ここで使うのが、さっき絵の場面でも触れた、本気でない意思表示の条文です。心裡留保と呼ばれ、93条に置かれています。

条文民法93条1項

民法 第九十三条(心裡留保)第1項 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。

このただし書の考え方を、この場面に当てはめます。Bが運んだだけなら、本心でない意思表示をしたのはCで、それを受け取ったのはAです。だから、真意を知っていたかどうかを見る相手は、BではなくAになります。ここでいう「相手方」を本人Aに置き換えると、Aが相手方Cの真意、つまり虚偽であることを知っていたか知ることができたときに限り、CはAに対して無効を主張できる、という形になります。

判例大判昭和14年12月6日

代理人と相手方の通謀虚偽表示——使者としての扱い 本人の代理人が、本人を欺くつもりで相手方と通謀し、相手方を借主とする虚偽の金銭消費貸借を結んだ事案で、代理人を相手方の意思を本人に伝える使者とみて、相手方の心裡留保の問題として扱い、本人が相手方の真意を知り、又は知ることができた場合でない限り、相手方は無効を主張できないとした。

判例も、代理人が本人を欺くつもりで相手方と通謀した場面を、101条の一般論だけでは割り切らず、Bを使者と位置づけて93条のただし書で補っています。BがただCと示し合わせただけなら、Cの無効主張も101条1項のとおり通ります。93条を持ち出すのは、BがAを欺くつもりだった場面に限られます。

代理人が誰を騙したか

代理人の詐欺2パターン板((a)代理人が相手方を騙した場合/(b)代理人が本人を騙した場合) 図:代理人の詐欺2パターン板

  • (a)代理人が相手方を騙した場合
  • (b)代理人が本人を騙した場合

二つ目は、代理人が騙す側になる場面です。これは二つに分かれます。代理人が相手方を騙した場合と、代理人が本人を騙した場合です。

代理人Bから相手方Cへ向かう詐欺 図:代理人Bから相手方Cへ向かう詐欺

まず、代理人Bが相手方Cを騙した場合です。ここで一つ、考えてみてください。101条1項は、この場面にそのまま使えるでしょうか。101条1項が扱っているのは、代理人が相手方に対してした意思表示に瑕疵があったかどうかです。ですが今の場面で瑕疵を帯びているのは、相手方Cがした意思表示のほうです。向きが逆になっています。101条2項も使えません。2項が定めているのは、代理人が知っていたか過失があったかという事実の有無だけです。代理人自身が詐欺を働いたかどうかという、詐欺の主体そのものを問う場面には対応していません。

ここでは101条を離れて、代理人と本人を一体として捉えます。Bは、Aが自分で選んで交渉の場に送り込んだ人で、その契約の利益もAが受け取ります。Cから見れば、Bは外側の第三者ではなく、交渉の相手そのものだからです。代理人Bの詐欺を、本人Aの詐欺と同じものとして扱い、96条1項の詐欺による意思表示として、Cは取り消せると考えます。Aの善意・悪意は問いません。契約の当事者はAなので、Aは96条3項の第三者にもあたりません。

代理人Bから本人Aへ向かう詐欺 図:代理人Bから本人Aへ向かう詐欺

代理人が本人を騙す場合は、騙す向きが変わります。代理人Bが、本人Aに嘘の説明をして、「この条件でCと契約してよい」とAに決めさせ、その条件でBがCと契約した、という場面です。契約の当事者ではないBが、契約の一方当事者であるAを欺いた形になります。代理権を与える約束そのものをだまし取られた場合は、以前見た、内部の契約に欠陥があった場合の話になります。

条文民法96条2項

民法 第九十六条(詐欺又は強迫)第2項 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。

96条2項の第三者は、この場面ではBです。Bは契約の当事者Cではなく、外側から入り込んだ第三者として扱われます。相手方Cが、Bの詐欺の事実を知っていたか、知ることができたときに限り、Aは取り消せます。ここでも101条ではなく、96条2項で処理することになります。

錯誤・詐欺・強迫、取消権者は誰でしたか

取消権者の想起板(120条2項=瑕疵ある意思表示をした者・代理人・承継人) 図:取消権者の想起板(120条2項=瑕疵ある意思表示をした者・代理人・承継人)

次に進む前に、思い出してください。錯誤、詐欺、強迫によって取り消すことができる行為は、誰が取り消せましたか?取り消せるのは、瑕疵ある意思表示をした側でした。では、騙すのが本人自身だったら、瑕疵を帯びるのは誰の意思表示か。三つ目の場面で確かめます。

本人が直接、相手方を騙したら

本人による詐欺の板(本人Aが相手方Cに直接詐欺行為をした場合/代理人Bの善意悪意は無関係) 図:本人による詐欺の板

  • 本人Aが相手方Cに直接詐欺行為をした場合
  • 代理人Bの善意悪意は無関係

三つ目は、本人Aが相手方Cに対して直接詐欺行為をした場合です。ここでは101条の出番そのものがありません。この場合は、契約の当事者であるA自身がCを欺いているので、第三者詐欺の話にはなりません。瑕疵を帯びるのは、騙されたCの意思表示です。96条1項がそのまま働き、Cは取り消せます。代理人Bの善意や悪意は関係ありません。Aが直接騙している以上、Bが何を知っていたかは問題になりません。ここは今日見た中で、一番単純な形です。

判断の基準と、代理人になる能力は別の話

101条と102条の対比板(101条=判断の基準は代理人/102条=代理人の能力は問わない) 図:101条と102条の対比板

  • 101条=判断の基準は代理人
  • 102条=代理人の能力は問わない

101条と102条は、問うている中身がまったく違います。101条は、瑕疵の有無を判断する基準が誰かという話でした。102条は、代理人になるのに行為能力が要るかどうかという、代理人自身の能力の話です。基準の話と、能力の話は別物なので、混ぜないでください。

答え合わせ

今日の内容の保存版板(101条1項2項=原則は代理人基準/3項=本人の悪意は隠せない/取消権は効果帰属先の本人/代理人の詐欺2パターン) 図:今日の内容の保存版板

  • 101条1項2項=原則は代理人基準
  • 3項=本人の悪意は隠せない
  • 取消権は効果帰属先の本人
  • 代理人の詐欺2パターン

今日の内容を並べ直します。瑕疵の有無を判定する基準は、原則として代理人です。意思表示という行為そのものの中で起きた出来事だからです。ただし、本人が特定の行為を具体的に委託していた場合、本人が自ら知っていた事情は、代理人の不知を盾にして覆すことはできません。取消権は、意思表示の効果を受け取る本人のところに生じます。代理人自身が取り消せるかどうかは、任意代理か法定代理かで扱いが分かれます。後半の三つの場面では、101条で足りるかを先に確かめ、足りないときは別の条文を使いました。代理人が本人を欺くつもりで相手方と通謀し、相手方が無効を主張してくるなら93条ただし書の考え方。代理人が相手方を騙したなら96条1項、代理人が本人を騙したなら96条2項。本人自身が騙したなら96条1項です。

冒頭の問いに戻ると、取り消せるのはAです。詐欺の有無を判定する基準はB、しかし取消権を持つのはA。判定の基準と権利の帰属先は別の問いだ、という今日の一本の筋がそのまま答えです。最後に一つだけ付け加えます。代理人が自分の利益のために代理権を使ってしまう場面もありますが、これは意思表示そのものの瑕疵ではないので、今日の101条では扱いません。別の回で扱います。最後に一問だけ。代理人Bが相手方Cを騙して契約させた場合、101条1項をそのまま使って、Cの意思表示の瑕疵を判定できますか?101条が扱うのは代理人がした意思表示の瑕疵なので、向きが逆なら使えません。判断の基準と権利の帰属先を分け、101条で足りなければ何を使うかを確かめる。この順番で、代理人が絡む意思表示の瑕疵の場面は整理できます。今日はここまでにします。

参照条文

  • 民法101条1項・2項
  • 民法96条1項
  • 民法101条3項
  • 民法120条2項
  • 民法94条1項・2項
  • 民法93条1項
  • 民法96条2項

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