民法ゼロから民法#222

根保証と極度額・賃貸借の保証・身元保証

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第4章 債権総論 #222/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

親がアパートの保証人に。滞納が続いたら、いくらまで払うか

冒頭の設例の関係図。A 債権者(貸主)、B 主債務者(借主)、C 保証人(Bの親)。AはBにアパートを月額8万円で貸した。Cは「Bがこの賃貸借で負う一切の債務を保証する」という契約書に署名した。Bは家賃を払わず、滞納は3年分(288万円)になった。問い=Cはいくらまで払わなければならないか。辺ラベルの語=賃貸借/保証/請求。 図:冒頭の設例の関係図

  • A 債権者(貸主)、B 主債務者(借主)、C 保証人(Bの親)
  • AはBにアパートを月額8万円で貸した
  • Cは「Bがこの賃貸借で負う一切の債務を保証する」という契約書に署名した
  • Bは家賃を払わず、滞納は3年分(288万円)になった
  • 問い=Cはいくらまで払わなければならないか
  • 辺ラベルの語=賃貸借/保証/請求

先に答えです。契約書に、上限の金額、つまり極度額が書かれていなければ、Cの保証契約は、そもそも無効です。Cは払わなくてよいです。465条の2の第2項が決めています。極度額が200万円と書かれていれば、滞納が288万円でも、Cが払うのは200万円までです。この極度額は、家賃だけの上限ではありません。利息も違約金も損害賠償も含めた、全部こみの上限です。なお、この答えは、2020年4月1日以降に結ばれた保証契約の話です。今日は、なぜこうなるのかを、順にほどきます。今日の登場人物です。Aが債権者で貸主、Bが主債務者で借主、Cが保証人でBの親です。前の回までと同じ役です。

前の回の受けと、根拠の札

前の回の受けと根拠の札の板。ここまで=保証する債務が1本に決まっていた保証(1,000万円の貸金の保証など)。今日=これから生まれては消える債務をまとめて保証する「根保証」。根抵当権の極度額・元本の確定と同じ発想=物で担保するか、人で担保するか。根拠の札=条文(法律に書いてあること)/判例(最高裁や大審院の判決が述べたこと)/こちらの説明(理解のための説明)。 図:前の回の受けと根拠の札の板

  • ここまで=保証する債務が1本に決まっていた保証(1,000万円の貸金の保証など)
  • 今日=これから生まれては消える債務をまとめて保証する「根保証」
  • 根抵当権の極度額・元本の確定と同じ発想=物で担保するか、人で担保するか
  • 根拠の札=条文(法律に書いてあること)/判例(最高裁や大審院の判決が述べたこと)/こちらの説明(理解のための説明)

前の回までの保証は、保証する債務が、1本に決まっていました。1,000万円の貸金の保証、といった形です。今日は、これから生まれては消えていく債務を、まとめて保証する場合を見ます。これを根保証といいます。その前に、根抵当権の回を思い出してください。根抵当権で、担保する額の上限を、何と呼んだでしょうか?極度額です。今日の極度額も、根抵当権の極度額と同じ発想です。違うのは、物で担保するか、人で担保するかです。元本の確定という言葉も、根抵当権で学んだ、担保される債権の顔ぶれが、ある時点で締め切られて固まること、と同じ意味で使います。今日も、話の根拠が混ざるので、そのつど、なにに基づく話かを言います。条文に書かれていることは、条文の札です。最高裁や、その前の大審院の判決が述べたことは、判例の札です。条文にも判例にも書かれていない、理解のための説明は、こちらの説明の札です。答案では、条文は条文番号を引いて書き、それ以外は理由を添えて書きます。

柱1——根保証とは。なぜ使い、なぜ危ないか

根保証の板。根保証=一定の範囲に属する不特定の債務をまとめて保証すること。例=1 続いていく融資や仕入れの保証/2 賃貸借の借主の債務の保証(冒頭の設例)/3 身元保証。使う理由=取引のたびに保証契約を結び直さなくて済む。危ない理由=期間が長い・額が読めない→保証人の責任が予想を超えて膨らむ。札=こちらの説明。 図:根保証の板

  • 根保証=一定の範囲に属する不特定の債務をまとめて保証すること
  • 例=1 続いていく融資や仕入れの保証/2 賃貸借の借主の債務の保証(冒頭の設例)/3 身元保証
  • 使う理由=取引のたびに保証契約を結び直さなくて済む
  • 危ない理由=期間が長い・額が読めない→保証人の責任が予想を超えて膨らむ
  • 札=こちらの説明

1つめの柱です。根保証とは、一定の範囲に属する不特定の債務を、まとめて保証することです。例は3つあります。1つめは、続いていく融資や仕入れの保証です。AがBに、必要なたびにお金を貸していくとき、Cがその全体を保証します。2つめは、冒頭の、賃貸借の借主の債務の保証です。3つめは、あとで見る身元保証です。根保証にする利点は、取引のたびに保証契約を結び直さなくて済むことです。貸す側にとっては、貸すたびに保証人の署名をもらう手間が消えます。こちらの説明です。ただし、保証人にとっては危険が大きいです。期間が長くなりがちで、将来どれだけ債務が積み上がるかも、署名した時点では読めません。Cが署名したとき、頭にあったのは、せいぜい数か月分の家賃でしょう。それが気づけば3年分、288万円です。金額欄が空白のままの小切手に署名するのと似ています。こちらの説明です。だから民法は、個人の根保証人を、特に守ります。465条の2から465条の4です。保証人が法人なら、この特則は適用されません。法人は、リスクを自分で見積もれる立場にあるからです。こちらの説明です。改正の流れです。極度額も期間も決めない根保証を、包括根保証と呼びます。2004年の改正で、貸金等、つまりお金を借りることで負う債務などを含む根保証だけは、極度額が必要になりました。2017年の改正で、これが個人の根保証すべてに広がりました。賃貸借の保証も入ります。身元保証も、保証の形を取るものは入ります。

柱1——465条の2 極度額がなければ効力を生じない

465条の2の全文カードの背景。個人根保証契約=根保証契約のうち、保証人が法人でないもの。保証人は「その全部に係る極度額」を限度として責任を負う。極度額の定めが無ければ、保証契約は効力を生じない。極度額の定めも書面(446条2項・3項の準用)。 図:465条の2の全文カードの背景

  • 個人根保証契約=根保証契約のうち、保証人が法人でないもの
  • 保証人は「その全部に係る極度額」を限度として責任を負う
  • 極度額の定めが無ければ、保証契約は効力を生じない
  • 極度額の定めも書面(446条2項・3項の準用)

核心の条文を読みます。条文の札です。

条文民法465条の2

民法第465条の2(個人根保証契約の保証人の責任等) 1 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であって保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。 2 個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。 3 第四百四十六条第二項及び第三項の規定は、個人根保証契約における第一項に規定する極度額の定めについて準用する。

1項は、個人根保証契約の定義です。根保証契約のうち、保証人が法人でないものです。そして保証人は、その全部に係る極度額を限度として責任を負います。この極度額に入るものが、全部こみです。主たる債務の元本、その利息、違約金、損害賠償、そのほか従たるもの全部、さらに保証債務そのものについて決めた違約金や損害賠償の額まで含みます。

極度額に入るものの板。極度額200万円の設例。入るもの=主たる債務の元本(家賃)/利息/違約金/損害賠償/その他その債務に従たるもの/保証債務について約定された違約金・損害賠償の額。全部を合計して極度額200万円が上限。札=条文。 図:極度額に入るものの板

  • 極度額200万円の設例
  • 入るもの=主たる債務の元本(家賃)/利息/違約金/損害賠償/その他その債務に従たるもの/保証債務について約定された違約金・損害賠償の額
  • 全部を合計して極度額200万円が上限
  • 札=条文

数字で言います。極度額を、200万円と決めたなら、滞納家賃の元本も、遅延損害金も、違約金も、全部足して200万円が上限です。家賃は150万円までで、あとは別に払う、という計算にはなりません。条文の札です。2項の文言は、個人根保証契約は、極度額を定めなければ、その効力を生じない、です。無効になるのは、保証契約そのものです。極度額の部分だけが無効になって、上限の無い保証が残る、という扱いではありません。上限の見えない保証を、そもそも成立させない、という条文です。条文の札です。冒頭の答えは、ここから出ます。極度額の書かれていない契約書に署名したCは、払わなくてよいです。3項は、極度額の定めを書面でせよ、という規定です。446条2項と3項、つまり保証契約を書面でしなければ効力を生じない規定が、極度額の定めに準用されます。電磁的記録でも書面とみなされます。ここで整理しておきます。保証契約そのものの書面は446条2項、極度額の定めの書面は465条の2の第3項です。別々の規定です。条文の札です。実務の目で補います。極度額は、何円と、金額で明瞭に定めます。条文は、額の多寡を制限していません。保証人の資力を超える額も定められます。ただし、保証人は署名の時点で、上限の金額を見ています。そのうえで署名しているので、納得して負う責任になります。こちらの説明です。なお、これは条文どおりに成立要件として書く所で、覚える規範ではありません。答案では、465条の2を引きます。

柱1——入れ子の図。根保証・個人根保証契約・個人貸金等根保証契約

入れ子の図。いちばん外=根保証。その内側=個人根保証契約(保証人が法人でないもの)。さらに内側=個人貸金等根保証契約(主たる債務の範囲に貸金等債務が含まれるもの)。賃貸借の保証=個人根保証契約の内側のうち、貸金等でない部分。継続的な融資の保証=いちばん内側。法人が保証人の根保証=外側の根保証だけで、465条の2以下は適用なし。札=条文。 図:入れ子の図

  • いちばん外=根保証
  • その内側=個人根保証契約(保証人が法人でないもの)
  • さらに内側=個人貸金等根保証契約(主たる債務の範囲に貸金等債務が含まれるもの)
  • 賃貸借の保証=個人根保証契約の内側のうち、貸金等でない部分
  • 継続的な融資の保証=いちばん内側
  • 法人が保証人の根保証=外側の根保証だけで、465条の2以下は適用なし
  • 札=条文

用語を整理します。3つの輪が入れ子になっています。いちばん外が、根保証です。その内側が、個人根保証契約で、根保証のうち、保証人が法人でないものです。さらにその内側が、個人貸金等根保証契約です。個人根保証契約のうち、主たる債務の範囲に貸金等債務が含まれるものです。条文の札で、465条の3の第1項です。貸金等債務とは、お金を借りることで負う債務と、手形の割引を受けることで負う債務です。手形の割引は、手形という紙を使ったお金の借り入れに近いものと考えれば足ります。配置です。継続的な融資の保証は、いちばん内側です。冒頭の賃貸借の保証は、真ん中です。個人根保証契約ですが、貸金等債務は含みません。次の柱は、この真ん中と内側の違いが、山場になります。

柱2——元本の確定。確定期日 465条の3

元本の確定の板。元本の確定=保証される債務の顔ぶれが、ある時点で締め切られて固まること。確定した時点にある元本と、その利息・損害金だけを保証する。その後に生まれる元本は保証しない。確定するのは、期日の到来か、確定事由の発生。札=こちらの説明。 図:元本の確定の板

  • 元本の確定=保証される債務の顔ぶれが、ある時点で締め切られて固まること
  • 確定した時点にある元本と、その利息・損害金だけを保証する
  • その後に生まれる元本は保証しない
  • 確定するのは、期日の到来か、確定事由の発生
  • 札=こちらの説明

2つめの柱です。まず、元本の確定の意味を、根抵当権の言い方で受けます。担保される債権の顔ぶれが、ある時点で締め切られて固まることでした。根保証でも同じです。確定した時点にある元本と、それにつく利息や損害金だけを、保証人が負います。その後に生まれる元本は、保証の対象外です。家計簿の締め日と同じで、締め日までの出入りは精算されますが、締め日より後の買い物は入りません。こちらの説明です。確定するのは、決めた期日が来たときと、確定事由が起きたときの2通りです。

465条の3の全文カードの背景(1項・2項)。個人貸金等根保証契約だけの規律。元本確定期日を定めてもよい。ただし契約締結の日から5年を経過する日より後の日は、定めが効力を生じない。定めが無ければ3年を経過する日。賃貸借の保証にはこの規律が無い。 図:465条の3の全文カードの背景

  • 1項・2項
  • 個人貸金等根保証契約だけの規律。元本確定期日を定めてもよい。ただし契約締結の日から5年を経過する日より後の日は、定めが効力を生じない。定めが無ければ3年を経過する日。賃貸借の保証にはこの規律が無い。

まず期日です。これは、貸金等を含む場合だけの規律です。条文の札です。

条文民法465条の3

民法第465条の3 第1項・第2項(個人貸金等根保証契約の元本確定期日) 1 個人根保証契約であってその主たる債務の範囲に金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務(以下「貸金等債務」という。)が含まれるもの(以下「個人貸金等根保証契約」という。)において主たる債務の元本の確定すべき期日(以下「元本確定期日」という。)の定めがある場合において、その元本確定期日がその個人貸金等根保証契約の締結の日から五年を経過する日より後の日と定められているときは、その元本確定期日の定めは、その効力を生じない。 2 個人貸金等根保証契約において元本確定期日の定めがない場合(前項の規定により元本確定期日の定めがその効力を生じない場合を含む。)には、その元本確定期日は、その個人貸金等根保証契約の締結の日から三年を経過する日とする。

1項は、期日を定めてもよいが、契約締結の日から5年を経過する日より後なら、その定めは効力を生じない、です。上限は5年です。2項は、期日の定めが無い場合、1項で効力を生じなかった場合も含めて、契約締結の日から3年を経過する日が、元本確定期日になる、です。数字で言います。融資の根保証で、期日を10年後と書けば、その定めは無効です。3年後に確定します。4年後と書けば、有効です。期日に上限を置くのは、保証人の責任が、いつまでも積み上がり続けないようにするためです。こちらの説明です。根抵当権にも5年と3年が出てきましたが、あちらは、期日を定めなければ、自動では確定しませんでした。根保証は、定めが無ければ3年で自動的に確定します。

465条の3第3項のカードの背景。期日の変更の制限。変更後の期日が、変更した日から5年を経過する日より後になる変更は、効力を生じない。ただし、期日の直前の2か月の間に変更し、変更後が変更前の期日から5年以内の日になるなら、この限りでない。 図:465条の3第3項のカードの背景

  • 期日の変更の制限
  • 変更後の期日が、変更した日から5年を経過する日より後になる変更は、効力を生じない
  • ただし、期日の直前の2か月の間に変更し、変更後が変更前の期日から5年以内の日になるなら、この限りでない

続けて、期日を変更するときの制限です。条文の札です。

条文民法465条の3

民法第465条の3 第3項(個人貸金等根保証契約の元本確定期日) 3 個人貸金等根保証契約における元本確定期日の変更をする場合において、変更後の元本確定期日がその変更をした日から五年を経過する日より後の日となるときは、その元本確定期日の変更は、その効力を生じない。ただし、元本確定期日の前二箇月以内に元本確定期日の変更をする場合において、変更後の元本確定期日が変更前の元本確定期日から五年以内の日となるときは、この限りでない。

3項は、変更した日から5年を経過する日より後にする変更は、効力を生じない、です。ただし、期日の直前の2か月の間に変更して、変更後が変更前の期日から5年以内なら、許されます。期日が来る間際に、延ばすことができる余地を残した規定です。こちらの説明です。4項は、期日の定めと変更にも書面の規定を準用する条文です。賃貸借の保証には、元本確定期日の規律がありません。定めるかどうかは自由です。465条の3が、個人貸金等根保証契約だけを対象にしているからです。条文の札です。理由もあります。賃貸借は、5年を超えて続くことも珍しくありません。期日の規律を及ぼすと、定めた期日で元本が確定し、その後の家賃には保証人がいなくなってしまいます。こちらの説明です。この違いは、のちの比較表にも出てきます。

柱2——元本確定事由 465条の4

465条の4第1項の全文カードの背景。1項=個人根保証契約すべて。1号 保証人の財産への強制執行・担保権の実行の申立て(手続の開始があったときに限る)/2号 保証人の破産手続開始の決定/3号 主たる債務者または保証人の死亡。 図:465条の4第1項の全文カードの背景

  • 1項=個人根保証契約すべて
  • 1号 保証人の財産への強制執行・担保権の実行の申立て(手続の開始があったときに限る)/2号 保証人の破産手続開始の決定/3号 主たる債務者または保証人の死亡

次は、期日の前でも元本が確定してしまう出来事、元本確定事由です。まず1項です。条文の札です。

条文民法465条の4

民法第465条の4 第1項(個人根保証契約の元本の確定事由) 1 次に掲げる場合には、個人根保証契約における主たる債務の元本は、確定する。ただし、第一号に掲げる場合にあっては、強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。 一 債権者が、保証人の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき。 二 保証人が破産手続開始の決定を受けたとき。 三 主たる債務者又は保証人が死亡したとき。

1項は、個人根保証契約すべてに当たる3つです。1つめ、債権者が保証人の財産について強制執行や担保権の実行を申し立てたとき。ただし、手続が実際に開始したときに限ります。申し立てただけでは確定しません。2つめ、保証人が破産手続開始の決定を受けたとき。3つめ、主たる債務者または保証人が死亡したときです。

465条の4第2項の全文カードの背景。2項=個人貸金等根保証契約だけ。1号 主たる債務者の財産への強制執行・担保権の実行の申立て(手続の開始があったときに限る)/2号 主たる債務者の破産手続開始の決定。 図:465条の4第2項の全文カードの背景

  • 2項=個人貸金等根保証契約だけ
  • 1号 主たる債務者の財産への強制執行・担保権の実行の申立て(手続の開始があったときに限る)/2号 主たる債務者の破産手続開始の決定

次に2項です。条文の札です。

条文民法465条の4

民法第465条の4 第2項(個人根保証契約の元本の確定事由) 2 前項に規定する場合のほか、個人貸金等根保証契約における主たる債務の元本は、次に掲げる場合にも確定する。ただし、第一号に掲げる場合にあっては、強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。 一 債権者が、主たる債務者の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき。 二 主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。

確定事由の仕分け板。全部の個人根保証(1項)=1 保証人の財産への強制執行・担保権の実行(手続の開始があったときに限る)/2 保証人の破産手続開始の決定/3 主たる債務者または保証人の死亡。貸金等だけ(2項)=4 主たる債務者の財産への強制執行・担保権の実行(手続の開始があったときに限る)/5 主たる債務者の破産手続開始の決定。仕分けの軸=保証人側の事情と主債務者の死亡/主債務者の財産の悪化。札=条文。 図:確定事由の仕分け板

  • 全部の個人根保証(1項)=1 保証人の財産への強制執行・担保権の実行(手続の開始があったときに限る)/2 保証人の破産手続開始の決定/3 主たる債務者または保証人の死亡
  • 貸金等だけ(2項)=4 主たる債務者の財産への強制執行・担保権の実行(手続の開始があったときに限る)/5 主たる債務者の破産手続開始の決定
  • 仕分けの軸=保証人側の事情と主債務者の死亡/主債務者の財産の悪化
  • 札=条文

2項は、個人貸金等根保証契約だけに当たる2つです。4つめ、債権者が主たる債務者の財産について強制執行や担保権の実行を申し立てたとき。これも、手続が開始したときに限ります。5つめ、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたときです。仕分けの軸は、1項が、保証人側の事情と、主たる債務者の死亡です。2項は、主たる債務者の財産の悪化です。賃貸借の保証では、借主のBが破産しても、元本は確定しません。条文の札です。2項の2つは、2004年の改正で、貸金等を含む根保証について置かれた事由です。2017年の改正は、賃貸借などの根保証では、借主が破産しても保証が打ち切りにならないという扱いを、そのまま維持しました。なぜ分かれるのかを、こちらの説明として補います。融資なら、借主が強制執行を受けたり、破産したりした後は、貸主は、新しく貸すのをやめれば済みます。それでも貸し続けた分まで保証人に負わせるのは酷だ、と考えると、締め切る理由が説明できます。賃貸借は違います。借主が破産しても、賃貸借はそれだけでは終わりません。部屋は貸したままで、家賃は生まれ続けます。そこで元本を確定させると、その後の家賃には保証人がいなくなります。期日の規律を及ぼさないのと、同じ向きの理由です。だから、この2つの事由は貸金等に限られている、と整理できます。ここで問いです。借主のBが破産手続開始の決定を受けました。親のCの、賃貸借の保証の元本は、確定するでしょうか?

賃貸借の保証は貸金等を含まないので、確定しないと思います。主たる債務者の破産は2項の事由で、貸金等を含む場合だけです。ただし、Bが死亡したなら、1項3号で確定します。主たる債務者の死亡は、全部の個人根保証に当たります。ここまでを、1枚にします。

山場の比較表。縦=極度額/確定期日の規律/保証人の財産への執行開始・保証人の破産・主たる債務者または保証人の死亡/主たる債務者の財産への執行開始・主たる債務者の破産。横=個人根保証契約一般(賃貸借の保証など)/個人貸金等根保証契約。極度額=どちらも必要(無いと無効)。確定期日=一般は規律なし(定めるのは自由)/貸金等は定めても5年まで・無ければ3年・変更も制限。保証人側の3事由=どちらも確定する。主たる債務者側の2事由=一般は確定しない/貸金等は確定する。札=条文。 図:山場の比較表

  • 縦=極度額/確定期日の規律/保証人の財産への執行開始・保証人の破産・主たる債務者または保証人の死亡/主たる債務者の財産への執行開始・主たる債務者の破産
  • 横=個人根保証契約一般(賃貸借の保証など)/個人貸金等根保証契約
  • 極度額=どちらも必要(無いと無効)
  • 確定期日=一般は規律なし(定めるのは自由)/貸金等は定めても5年まで・無ければ3年・変更も制限
  • 保証人側の3事由=どちらも確定する
  • 主たる債務者側の2事由=一般は確定しない/貸金等は確定する
  • 札=条文

上から読みます。極度額です。どちらも必要です。無いと無効です。確定期日の規律です。個人根保証契約一般には、ありません。個人貸金等根保証契約だけが、定めても5年まで、無ければ3年で、変更にも制限がかかります。保証人側の3つの事由、保証人の財産への執行の開始、保証人の破産、主たる債務者または保証人の死亡は、どちらも元本が確定します。主たる債務者の財産への執行の開始と、主たる債務者の破産は、一般では確定せず、貸金等では確定します。貸金等のほうが、規律が厳しい、というのが全体の姿です。

柱2——465条の5 法人の根保証の求償権を個人が保証する場合

465条の5の関係図。ここだけ設例を取り替える。A 債権者(貸主)、B 主債務者(借主)、保証会社(法人の根保証人)、保証会社の求償権を保証する個人。AはBに継続的に貸す。保証会社がBの債務を根保証した(極度額なし)。保証会社が払えば、保証会社はBに求償権を持つ。個人がその求償権の債務を保証した。辺ラベルの語=貸付/根保証/求償権/保証。 図:465条の5の関係図

  • ここだけ設例を取り替える
  • A 債権者(貸主)、B 主債務者(借主)、保証会社(法人の根保証人)、保証会社の求償権を保証する個人
  • AはBに継続的に貸す
  • 保証会社がBの債務を根保証した(極度額なし)
  • 保証会社が払えば、保証会社はBに求償権を持つ
  • 個人がその求償権の債務を保証した
  • 辺ラベルの語=貸付/根保証/求償権/保証

ここだけ、設例を取り替えます。先ほどのCとは別の話です。AがBに、継続的にお金を貸します。その債務を、保証会社という法人が、根保証します。そして、保証会社の求償権を、ある個人が保証します。登場するのは、貸主のA、借主のB、法人の保証会社、保証会社の求償権を保証する個人です。問いです。保証人が法人で、極度額の定めが無い根保証は、有効でしょうか?465条の2は個人の根保証の規定なので、法人なら有効だと思います。法人の根保証は、極度額が無くても有効です。ところが、ここに抜け道が開きます。保証会社がAに払うと、保証会社はBに求償権を持ちます。そこで個人が、その求償権の債務を保証したとします。この個人の保証は、1つの特定の債務を保証しているだけで、根保証ではありません。ですが、これを無条件に有効とすると、個人は、Bの継続的な債務を、直接、根保証したのと同じ危険に立ちます。こちらの説明です。そこで465条の5が、一定の場合に、その個人の保証契約を無効とします。

条文民法465条の5

民法第465条の5 第1項(保証人が法人である根保証契約の求償権) 1 保証人が法人である根保証契約において、第四百六十五条の二第一項に規定する極度額の定めがないときは、その根保証契約の保証人の主たる債務者に対する求償権に係る債務を主たる債務とする保証契約は、その効力を生じない。

1項は、法人の根保証に極度額の定めが無いとき、その法人の求償権を主たる債務とする保証契約は、効力を生じない、です。条文の札です。いまの保証会社の例なら、極度額の無い法人の根保証について、個人が求償権を保証しても、その保証は無効です。2項と3項は、要点だけです。2項前段は、法人の根保証で、貸金等債務を含むものについて、元本確定期日の定めが無い、または期日の定めやその変更が465条の3の規定に反するときも、同じように個人の保証が無効になる、というものです。後段は、個人が、求償権に係る債務を含めて根保証した場合も同様です。3項は、求償権を保証する側が法人であれば、適用しない、という規定です。守られるのは個人だけ、という趣旨です。条文の札です。

柱3——賃貸借の保証。更新後の債務にも及ぶか

賃貸借の保証の板。保証人が個人=個人根保証契約(極度額が必要)。ただし個人貸金等根保証契約ではない(貸金等債務を含まない)=比較表の左の列。確定期日の規律なし。確定事由=保証人側の3つ(主たる債務者または保証人の死亡を含む)。冒頭の問いの答え=極度額なしなら無効/ありなら極度額まで。札=条文。 図:賃貸借の保証の板

  • 保証人が個人=個人根保証契約(極度額が必要)
  • ただし個人貸金等根保証契約ではない(貸金等債務を含まない)=比較表の左の列
  • 確定期日の規律なし
  • 確定事由=保証人側の3つ(主たる債務者または保証人の死亡を含む)
  • 冒頭の問いの答え=極度額なしなら無効/ありなら極度額まで
  • 札=条文

3つめの柱に入ります。設例はもとのA、B、Cに戻します。まず賃貸借の保証の性質です。保証人が個人なら、個人根保証契約です。極度額が必要です。ただし、貸金等債務は含まないので、個人貸金等根保証契約ではありません。さきほどの比較表の、左の列です。期日の規律はなく、元本の確定事由は、保証人側の事由と、主たる債務者の死亡です。条文の札です。冒頭の問いの答えも、ここでそろいます。極度額が書かれていなければ、Cの保証は無効です。書かれていれば、その額までです。

更新と保証の問題の板。期間の定めのある建物賃貸借(例=2年契約)。保証契約を結んだのは当初の期間。更新を重ねたあとの滞納を、保証人は払うか。向き=更新は貸主の意思にかかわらず起きることが多い。更新で保証が切れると困るのは貸主。札=こちらの説明。 図:更新と保証の問題の板

  • 期間の定めのある建物賃貸借(例=2年契約)
  • 保証契約を結んだのは当初の期間
  • 更新を重ねたあとの滞納を、保証人は払うか
  • 向き=更新は貸主の意思にかかわらず起きることが多い
  • 更新で保証が切れると困るのは貸主
  • 札=こちらの説明

次は、更新です。契約の期間が、2年の建物賃貸借で、Cが保証人になったとします。そして、2年たって、賃貸借が更新されました。更新後の家賃の滞納を、Cは保証するでしょうか。保証契約を結んだのは、当初の期間の賃貸借です。ここに論点があります。向きに注意してください。建物の賃貸借は、貸主に、自分で使う必要があるなどの正当な理由がなければ、貸主が更新を嫌だと言っても、契約が続くことが多いです。借地借家法の更新の仕組みは別の所で扱うので、今日は、この結論だけ使います。つまり更新は、貸主の意思にかかわらず起きます。更新で保証が切れるなら、困るのは貸主です。こちらの説明です。

平9判決の板。事案=期間の定めのある建物賃貸借を、貸主が借主に貸し、借主の親族が保証人になった。更新が重なり、更新後の賃料の滞納が積み上がり、貸主は、保証人に支払う義務があると主張した。保証人は、義務が無いことの確認を求めて訴え、更新後の債務には保証が及ばない・仮に及んでも請求は信義則に反する、と主張。結論=特段の事情も信義則違反の事情も無いとして、保証人の責任を認めた(上告棄却)。札=判例。 図:平9判決の板

  • 事案=期間の定めのある建物賃貸借を、貸主が借主に貸し、借主の親族が保証人になった
  • 更新が重なり、更新後の賃料の滞納が積み上がり、貸主は、保証人に支払う義務があると主張した
  • 保証人は、義務が無いことの確認を求めて訴え、更新後の債務には保証が及ばない・仮に及んでも請求は信義則に反する、と主張
  • 結論=特段の事情も信義則違反の事情も無いとして、保証人の責任を認めた(上告棄却)
  • 札=判例

最高裁の判決があります。事案を、冒頭の設例に置き換えます。期間の定めのある賃貸借で、AがBに貸し、Bの親のCが、Bの債務の一切を保証しました。賃貸借は更新を重ね、更新後の家賃の滞納が積み上がりました。Aは、Cに支払う義務があると主張します。Cは、その義務が無いことの確認を求めて訴えました。Cは、更新後の債務には保証が及ばない、仮に及んでも請求は信義則に反する、と主張しました。最高裁は、Cの責任を認めました。判決の理由を、3つのカードに分けて読みます。1枚目は、理由の部分です。

判例最判平9・11・13 集民186号105頁

建物賃貸借の更新と保証人の責任(理由) 建物の賃貸借は、一時使用のための賃貸借等の場合を除き、期間の定めの有無にかかわらず、本来相当の長期間にわたる存続が予定された継続的な契約関係であり、期間の定めのある建物の賃貸借においても、賃貸人は、自ら建物を使用する必要があるなどの正当事由を具備しなければ、更新を拒絶することができず、賃借人が望む限り、更新により賃貸借関係を継続するのが通常であって、賃借人のために保証人となろうとする者にとっても、右のような賃貸借関係の継続は当然予測できるところであり、また、保証における主たる債務が定期的かつ金額の確定した賃料債務を中心とするものであって、保証人の予期しないような保証責任が一挙に発生することはないのが一般であることなどからすれば、

建物の賃貸借は長く続くことが予定された契約で、貸主は正当な理由がなければ更新を拒めません。保証人になろうとする者も、その継続は当然予測できます。さらに、主たる債務は定期的で金額の確定した家賃が中心なので、保証人の予期しない責任が、一挙に生じることは一般にありません。判例の札です。ここまでが理由で、文はまだ続きます。結論の部分です。

判例最判平9・11・13 集民186号105頁

建物賃貸借の更新と保証人の責任(結論) 賃貸借の期間が満了した後における保証責任について格別の定めがされていない場合であっても、反対の趣旨をうかがわせるような特段の事情のない限り、更新後の賃貸借から生ずる債務についても保証の責めを負う趣旨で保証契約をしたものと解するのが、当事者の通常の合理的意思に合致するというべきである。

だから、反対の趣旨をうかがわせる特段の事情がない限り、更新後の債務も保証する趣旨で契約した、と解するのが、当事者の通常の合理的意思に合う、とします。判例の札です。決め手は、当事者の合理的意思の解釈です。保証人は、更新後の家賃の滞納まで引き受けた、と読むのが自然だということです。次は、その限界を述べた部分です。

判例最判平9・11・13 集民186号105頁

建物賃貸借の更新と保証人の責任(限界と結論) もとより、賃借人が継続的に賃料の支払を怠っているにもかかわらず、賃貸人が、保証人にその旨を連絡するようなこともなく、いたずらに契約を更新させているなどの場合に保証債務の履行を請求することが信義則に反するとして否定されることがあり得ることはいうまでもない。 以上によれば、期間の定めのある建物の賃貸借において、賃借人のために保証人が賃貸人との間で保証契約を締結した場合には、反対の趣旨をうかがわせるような特段の事情のない限り、保証人が更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責めを負う趣旨で合意がされたものと解するのが相当であり、保証人は、賃貸人において保証債務の履行を請求することが信義則に反すると認められる場合を除き、更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責めを免れないものというべきである。

3つめは、限界です。貸主が保証人に請求することが信義則に反すると認められる場合は、責任を免れます。判決が挙げた場面は、借主が継続的に家賃の支払を怠っているのに、貸主が保証人にその旨を連絡することもなく、いたずらに契約を更新させているなどの場合です。判例の札です。冒頭の設例なら、Bが何年も払っていないと知りながら、AがCに黙って更新を重ねていた、という場面が、これに当たりえます。それ以外の場面、たとえば何年放置すれば足りるのかは、判決は述べていません。この判決は、2017年の改正の前の事案です。現在の個人根保証契約では、極度額が必ず決まっています。更新後の債務も、その極度額の範囲内で保証される、と読めます。465条の2の第1項が、その全部に係る極度額を限度としているからです。こちらの説明です。更新と保証は、論文で論点になりうる所です。更新後の債務にも及ぶ、という規範は、条文ではなく、判例が解釈で立てたものです。

柱3——保証人の死亡と相続

相続の時間軸の板。保証人Cの死亡の前=Cが死亡した時点の滞納100万円→Cの相続人(Cの子)が引き継ぐ。死亡の後=その後に生じる賃料→負わない。理由=保証人の死亡は元本確定事由(465条の4第1項3号)。借主Bの死亡も同じ号で元本確定→その後の賃料は保証されない。判例=大判昭9・1・30 民集13巻103頁(2017年改正前の判断)。札=条文/判例。 図:相続の時間軸の板

  • 保証人Cの死亡の前=Cが死亡した時点の滞納100万円→Cの相続人(Cの子)が引き継ぐ
  • 死亡の後=その後に生じる賃料→負わない
  • 理由=保証人の死亡は元本確定事由(465条の4第1項3号)
  • 借主Bの死亡も同じ号で元本確定→その後の賃料は保証されない
  • 判例=大判昭9・1・30 民集13巻103頁(2017年改正前の判断)
  • 札=条文/判例

保証人が亡くなると、保証債務は、相続人が引き継ぐのが原則です。賃借人の債務の保証についても、大審院は、保証人を相続した者が、保証債務を負うとしました。判例の札です。ただし、この判断は、2017年の改正の前のものです。現在は、保証人が個人なら、保証人の死亡は元本確定事由です。465条の4の第1項3号です。条文の札です。数字で言います。Cが亡くなった時点の滞納が、100万円だったとします。Cの子は、この100万円を引き継ぎます。その後にBが払わなくなった家賃は、Cの子は負いません。元本が、死亡の時点で締め切られているからです。なぜ死亡で締め切るのか。こちらの説明です。すでに生じた100万円は、Cが負っていた債務なので、Cの子が引き継ぎます。しかし、この先どこまで膨らむか分からない保証は、Cが自分で判断して引き受けたものです。その約束を自分でしていないCの子にまで、続けて背負わせるのは酷です。

主たる債務者の死亡も、同じ号の事由です。元本が確定します。Bの相続人が、そのまま部屋に住み続けても、確定後の新しい家賃は、Cの保証の対象外です。条文の札です。Cが保証を引き受けたのは、借主がBだったからです。Bの相続人が借主になったあとの家賃まで、保証する約束ではなかった、と考えます。こちらの説明です。根抵当権では、相続が起きても、合意して登記すれば、取引を続けられました。条文は、398条の8です。根保証には、その仕組みがありません。死亡で、必ず確定します。

柱3——身元保証

身元保証の要点板(身元保証ニ関スル法律)。身元保証=雇われる人(被用者)が雇い主(使用者)に与える損害を保証すること。1条=期間の定めが無ければ成立の日から3年(商工業見習者は5年)。2条=期間は5年まで・更新後も更新の時から5年まで。3条=使用者は、被用者に不適任・不誠実な事跡があるとき、任務や任地を変えて保証人の責任が重くなる、または監督が難しくなるときは、遅滞なく保証人に通知する。4条=保証人は、通知を受けたときなどに将来に向かって契約を解除できる。5条=裁判所は責任と額を定めるとき一切の事情を考える。6条=保証人に不利な特約は無効。札=条文。 図:身元保証の要点板

  • 身元保証ニ関スル法律
  • 身元保証=雇われる人(被用者)が雇い主(使用者)に与える損害を保証すること。1条=期間の定めが無ければ成立の日から3年(商工業見習者は5年)。2条=期間は5年まで・更新後も更新の時から5年まで。3条=使用者は、被用者に不適任・不誠実な事跡があるとき、任務や任地を変えて保証人の責任が重くなる、または監督が難しくなるときは、遅滞なく保証人に通知する。4条=保証人は、通知を受けたときなどに将来に向かって契約を解除できる。5条=裁判所は責任と額を定めるとき一切の事情を考える。6条=保証人に不利な特約は無効。札=条文。

最後に、身元保証です。雇われる人、被用者が、雇い主、使用者に与える損害を、保証することです。責任の範囲が広く、将来どれだけの損害が出るかも読めません。そこで、身元保証ニ関スル法律という特別法が、保証人を守っています。要点を6つ見ます。条文の札です。1条、期間の定めが無ければ、成立の日から3年です。商工業見習者、つまり店や工場で仕事を見習っている人は5年です。2条、期間は5年を超えられません。長く定めても5年に縮まります。更新もできますが、更新後の期間は、更新の時を起点に、やはり5年が上限です。3条、使用者は、被用者に業務上不適任または不誠実な事跡、つまりそうした行いがあって、保証人の責任が生じるおそれを知ったとき、また、被用者の任務や任地を変えて、保証人の責任が重くなるとき、または保証人が被用者を監督しにくくなるときは、遅滞なく保証人に通知します。4条、保証人は、その通知を受けたときなどに、将来に向かって契約を解除できます。5条、裁判所は、保証人の責任と額を定めるときに、使用者の監督の過失や、保証をするに至った事情など、一切の事情を考えに入れます。6条、この法律に反して保証人に不利益な特約は、無効です。

身元保証は、相続されません。大審院の判決が、そうしています。特別の事情がない限り、身元保証人の地位は、保証人の死亡により相続人に承継されない、という結論です。判例の札です。理由は、身元保証が、保証人と被用者の人的な信頼関係にもとづくからです。こちらの説明です。

賃貸借の保証と身元保証の対比表。縦=保証人の死亡で保証債務は引き継がれるか/特別法の有無。横=賃貸借の保証/身元保証。賃貸借の保証=相続される(ただし死亡で元本確定、死亡後の賃料は負わない)/特別法なし(民法の個人根保証の規律)。身元保証=保証人の地位は相続されない(人的な信頼関係にもとづく)/身元保証ニ関スル法律で期間・通知・解除などを規律。出典=大判昭9・1・30 民集13巻103頁/大判昭18・9・10 民集22巻948頁。札=条文/判例/こちらの説明。 図:賃貸借の保証と身元保証の対比表

  • 縦=保証人の死亡で保証債務は引き継がれるか/特別法の有無
  • 横=賃貸借の保証/身元保証
  • 賃貸借の保証=相続される(ただし死亡で元本確定、死亡後の賃料は負わない)/特別法なし(民法の個人根保証の規律)
  • 身元保証=保証人の地位は相続されない(人的な信頼関係にもとづく)/身元保証ニ関スル法律で期間・通知・解除などを規律
  • 出典=大判昭9・1・30 民集13巻103頁/大判昭18・9・10 民集22巻948頁
  • 札=条文/判例/こちらの説明

対比を1枚にします。賃貸借の保証は、保証人が亡くなると、保証債務が相続されます。ただし、死亡で元本が確定するので、死亡時までの債務だけが、相続人に移ります。特別法はなく、民法の個人根保証の規律が働きます。身元保証人の地位は、相続されません。身元保証ニ関スル法律が、期間、通知、解除などを定めています。

冒頭の問いに戻る——まとめ

冒頭の設例の関係図(答え)。A 債権者(貸主)、B 主債務者(借主)、C 保証人(Bの親)。極度額の書面が無い=Cの保証契約は無効(465条の2第2項)で、Cは払わなくてよい。極度額200万円の書面がある=滞納288万円でもCは200万円まで。更新を重ねた後の滞納も、特段の事情がある場合・信義則に反する場合を除き、極度額の範囲で保証。Cが死亡すれば元本が確定し、その後の賃料は相続人も負わない。 図:冒頭の設例の関係図

  • 答え
  • A 債権者(貸主)、B 主債務者(借主)、C 保証人(Bの親)。極度額の書面が無い=Cの保証契約は無効(465条の2第2項)で、Cは払わなくてよい。極度額200万円の書面がある=滞納288万円でもCは200万円まで。更新を重ねた後の滞納も、特段の事情がある場合・信義則に反する場合を除き、極度額の範囲で保証。Cが死亡すれば元本が確定し、その後の賃料は相続人も負わない。

冒頭の問いに戻ります。Cは、いくらまで払うか。極度額の書面がなければ、Cの保証契約は無効で、払いません。200万円と書かれていれば、滞納が288万円でも、200万円までです。更新を重ねたあとの滞納も、特段の事情がなく、貸主の請求が信義則に反する場合でなければ、この極度額の範囲で保証されます。そしてCが亡くなれば、元本はそこで確定し、その後の家賃は、相続人も負いません。

今日のまとめ。3つの柱=1 個人根保証契約は極度額(元本・利息・違約金・損害賠償まで全部こみ)を書面で定めなければ無効(465条の2)/2 元本の確定=確定期日の規律は個人貸金等根保証契約だけ・確定事由は5つのうち3つが全部の個人根保証(保証人側の事情と主債務者の死亡)・2つが貸金等だけ(主債務者の財産への執行と破産)・法人の根保証の求償権を個人が保証する場合も極度額(と期日)が要る(465条の5)/3 賃貸借の保証人は更新後の債務も負う(特段の事情がある場合・信義則で請求が否定される場合を除く)・保証人の死亡で元本確定・身元保証は相続されず特別法で期間等が制限される。 図:今日のまとめ

3つの柱で整理します。1つめ、個人根保証契約は、極度額を書面で定めなければ無効です。極度額は、元本も利息も違約金も損害賠償も含めた、全部こみの上限です。2つめ、元本の確定です。確定期日の規律は、個人貸金等根保証契約だけです。確定事由は5つあり、保証人側の事情と主たる債務者の死亡の3つが、全部の個人根保証に当たります。主たる債務者の財産への執行と破産の2つは、貸金等だけです。法人の根保証の求償権を個人が保証する場合にも、465条の5で、極度額や期日の定めが求められます。3つめ、賃貸借の保証人は、特段の事情がある場合や、貸主の請求が信義則に反する場合を除いて、更新後の債務も負います。保証人が亡くなれば、元本が確定します。身元保証は、相続されず、特別法で期間などが制限されます。根拠の札を付けて、整理します。条文は、465条の2から465条の5と、身元保証ニ関スル法律です。判例は、更新後の債務にも保証が及ぶという最高裁の判決と、賃貸借の保証の相続、身元保証の相続についての大審院の判決の、あわせて3つです。こちらの説明は、主なものとして、根保証が危ない理由、元本の確定を家計簿の締め日にたとえる説明、法人を挟む抜け道をふさぐ理由、身元保証が相続されない理由です。

参照条文

  • 民法465条の2
  • 民法465条の3
  • 民法465条の4
  • 民法465条の5

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