民訴ゼロから民訴#35

確認の利益と形成の訴えの利益

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第1章 訴訟の開始 ㉟/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

まだ生きている親の遺言は、無効だと今すぐ確認できるか

冒頭事案の板(Aは高齢で心神喪失の状態にあり、回復の見込みがない。Aは以前、自分の財産を知人のCに遺贈する遺言を書いていた。Aの推定相続人であるBは、この遺言の内容に不満があり、この遺言は無効だと今のうちに確認しておきたい。Aはまだ生きており、相続は開始していない) 図:冒頭事案の板

Aは高齢で、心神喪失の状態にあります。回復する見込みもありません。Aは以前に、自分の財産を知人のCに遺贈する、つまり遺言で譲るという遺言を書いていました。Aが亡くなれば相続人になるはずの立場、推定相続人であるBは、この遺言に不満を持っています。Bは、遺言が無効だと今のうちに確認しておきたいと考えました。ただし、Aはまだ生きています。相続は、まだ始まっていません。生きているうちに、遺言が無効かどうかを、裁判で確認してもらえるんでしょうか。実は、これは認められません。理由は、今日の内容を最後まで追うと分かります。今日は、確認の訴えという型を扱います。前回の給付の訴えとは、話の運び方がまるで違います。

確認の訴えには、なぜ利益による絞りが必要か

確認の訴えの定義の板(確認の訴え=請求が特定の権利・法律関係の存在または不存在の主張である訴え。確認を求める対象の種類には格別の制限が無く、理論上は無限定になりうる→権利の確認という手段が有効かつ適切かという観点から、確認の利益による絞りが特に強く必要とされる) 図:確認の訴えの定義の板

確認の訴えとは、特定の権利や法律関係が存在する、あるいは存在しないということを主張する訴えです。前回の給付の訴えが「何かをせよ」と求める訴えだったのに対して、確認の訴えは、何かの状態を確認してほしいという訴えです。では、確認してほしいことなら何でも訴えられるのか。実は、そこが問題になります。確認を求める対象の種類には、これといった制限がありません。だから、理屈のうえでは、対象は無限定になり得ます。例えば、この土地は私のものだ、という確認も、あの人は昔うそをついた、という確認も、形のうえでは求められてしまいます。だからこそ、権利や法律関係を確認するという手段が、その紛争の解決にとって本当に有効で適切かという観点から、絞りをかける必要が特に強くなります。この絞りを、確認の利益と呼びます。前回見た訴えの利益、つまり判決を出す意味があるかという関門を、確認の訴えについて具体化したものです。

確認の利益の3つの観点

確認の利益3観点の板(①方法選択の適否=確認の訴えという方法を選ぶことが有効・適切か ②対象選択の適否=選ばれた訴訟物が紛争解決にとって有効・適切か ③即時確定の利益=原告の権利・法的地位についての危険・不安を除去するため、判決で即時に確定する法律上の利益・必要性があるか) 図:確認の利益3観点の板

  • ①方法選択の適否=確認の訴えという方法を選ぶことが有効・適切か
  • ②対象選択の適否=選ばれた訴訟物が紛争解決にとって有効・適切か
  • ③即時確定の利益=原告の権利・法的地位についての危険・不安を除去するため、判決で即時に確定する法律上の利益・必要性があるか

確認の利益は、3つの観点から判断されます。1つ目は、方法選択の適否です。確認という方法を選ぶこと自体が、有効で適切かどうかです。2つ目は、対象選択の適否です。選んだ対象が、紛争の解決にとって有効で適切かどうかです。3つ目は、即時確定の利益です。原告の権利や立場についての危険や不安を除くために、今すぐ判決で確定させる利益や必要性があるかどうかです。答案では、この3つを順番に見ていきます。ただ、どこで結論が決まることが多いかは、後半で見えてきます。

方法選択の適否——確認判決では足りないことがある

補充性の板(給付請求権の存在確認を求めても、確認判決には強制執行できる力が無く、相手が任意に履行しなければ結局もう一度給付の訴えを起こす必要がある→請求権の存在確認は原則として確認の利益が否定される(補充性)) 図:補充性の板

前回、確認判決と給付判決の違いを扱いました。何が違いましたか?確認判決には強制執行する力が無くて、給付判決にはその力がある、という違いでした。ここが、方法選択の適否に直結します。例えば、売買代金を支払えという請求権について、確認判決だけをもらったとします。相手が任意に払わなければ、どうなりますか。強制執行できないから、結局もう一度、給付の訴えを起こすことになりますね。二度手間になってしまいます。だから、給付の訴えという、より有効な手段が使えるのに、あえて確認の訴えを選ぶことは、原則として確認の利益が否定されます。

これが、方法選択の適否、通称、補充性と呼ばれる考え方です。

対象選択の適否——原則は現在の権利関係

対象選択の原則の板(確認の対象は、原則として現在の権利・法律関係に限られる。単なる事実の確認は紛争解決の前提にすぎず判決で確定しても役立たない。過去や将来の権利関係は時間の経過で変動しうるため、いずれも原則として対象にならない) 図:対象選択の原則の板

2つ目の観点、対象選択の適否に入ります。確認の対象は、原則として現在の権利や法律関係に限られます。単なる事実は、原則として対象になりません。単なる事実を確認しても、それだけでは紛争の解決には役立ちません。過去や将来の権利関係は、時間が経つうちに変動する可能性があるので、これもいずれも原則として対象になりません。例えば、去年この土地の売買契約を結んだ、という事実そのものではなく、今この土地の所有権が自分にある、という形で確認を求めるのが原則です。では、遺言のように過去に作られたものはどうなるのか。この原則には、2つの例外があります。まず1つ目の例外から見ましょう。

条文民事訴訟法134条の2

民事訴訟法第134条の2(証書真否確認の訴え) 確認の訴えは、法律関係を証する書面の成立の真否を確定するためにも提起することができる。

法律関係を証する書面、例えば遺言書のような証書について、それが本当に本人の意思で作られたものかどうか、つまり成立の真否を確認する訴えです。これは、単なる事実の確認のようですが、法律が特別に認めています。なぜ、これだけ特別に認められているんですか。遺言書のような書面が本物かどうかが争われているとき、そこさえ確定すれば紛争が解決できる場面があるからです。これが、対象選択の1つ目の例外です。

もう1つの例外——過去の権利関係でも言い換えられれば可

対象選択の例外②の板(例外②=過去の権利・法律関係であっても、それを確定することが現在の紛争を直接かつ抜本的に解決するために必要・適切な場合には、確認の利益を認めるべきという考え方。判例の多くは、対象を現在の関係として構成し直す形で確認を認めてきた) 図:対象選択の例外②の板

もう1つの例外があります。過去の権利や法律関係であっても、それを確定することが、今ある紛争を直接かつ根本的に解決するために必要で適切な場合には、確認の利益を認めるべきだという考え方です。原則は現在の権利関係なのに、なぜ過去でも認めてよいのか。確認の訴えには、権利関係の存否をはっきりさせることで、そこから派生する紛争を未然に防ぐという働きがあります。この働きを重視すれば、対象が過去のものであっても、今の紛争解決に役立つなら、認めてよいはずだという発想です。例えば、すでに亡くなった親と自分との親子関係です。相手が亡くなっている以上、過去の関係ですが、それが確定すれば、相続などをめぐる今の争いがまとめて片づきます。

ただ、最高裁の判決の多くは、この考え方をそのまま掲げるのではなく、対象を現在の関係として組み立て直す形で、確認を認めてきました。次は、その組み立て直しの実例を見ましょう。

判例の言い換え——遺言と敷金

判例の言い換え板(遺言無効確認(死後)=形式上は過去の法律行為の確認だが、遺言が有効なら生じるはずの現在の特定の法律関係が存在しないことの確認と構成(原告に確認を求める法律上の利益があるとき)/敷金返還請求権確認=契約継続中でも、明渡し時に残額があることを条件とする条件付権利=現在の権利と構成) 図:判例の言い換え板

  • 遺言無効確認(死後)=形式上は過去の法律行為の確認だが、遺言が有効なら生じるはずの現在の特定の法律関係が存在しないことの確認と構成(原告に確認を求める法律上の利益があるとき)
  • 敷金返還請求権確認=契約継続中でも、明渡し時に残額があることを条件とする条件付権利=現在の権利と構成

まず、遺言が無効だという確認を、亡くなった人について求めた事件です。こちらは、遺言者がすでに亡くなっている場合です。

判例最判昭和47・2・15 民集26巻1号30頁〈百選23〉

最高裁判決(遺言無効確認の訴えの構成が争われた事件) いわゆる遺言無効確認の訴は、遺言が無効であることを確認するとの請求の趣旨のもとに提起されるから、形式上過去の法律行為の確認を求めることとなるが、請求の趣旨がかかる形式をとつていても、遺言が有効であるとすれば、それから生ずべき現在の特定の法律関係が存在しないことの確認を求めるものと解される場合で、原告がかかる確認を求めるにつき法律上の利益を有するときは、適法として許容されうるものと解するのが相当である。

遺言そのものではなく、遺言が有効だったら生じるはずの、今の権利関係が無いことを確認する、という形に組み替えています。こうすることで、対象を現在の権利関係に収めています。ただし判決は、言い換えさえすれば認める、とは言っていません。確認を求める法律上の利益があるときは、という条件が付いています。この事件では、遺言者が亡くなって相続が始まり、遺産を誰が取るのかが今まさに争いになっていました。今確定させる意味が、はっきりあったわけです。もう1つの言い換え例もあるんですか。あります。次は、敷金をめぐる事件です。

判例最判平成11・1・21 民集53巻1号1頁〈百選27〉

最高裁判決(敷金返還請求権確認の訴えの対象が争われた事件) 建物賃貸借における敷金返還請求権は、賃貸借終了後、建物明渡しがされた時において、それまでに生じた敷金の被担保債権一切を控除しなお残額があることを条件として、その残額につき発生するものであって……、賃貸借契約終了前においても、このような条件付きの権利として存在するものということができるところ、本件の確認の対象は、このような条件付きの権利であると解されるから、現在の権利又は法律関係であるということができ、確認の対象としての適格に欠けるところはないというべきである。また、本件では、上告人は、被上告人の主張する敷金交付の事実を争って、敷金の返還義務を負わないと主張しているのであるから、被上告人・上告人間で右のような条件付きの権利の存否を確定すれば、被上告人の法律上の地位に現に生じている不安ないし危険は除去されるといえるのであって、本件訴えには即時確定の利益があるということができる。

敷金を返してもらえる権利は、未払いの賃料など、敷金から差し引く債務を引いた残りについて、契約が終わっていない今の時点でも、条件つきの権利として、すでに現在のものとして存在していると構成しました。ここで、1つ考えてみてください。冒頭のAとBの話も、生きているうちの遺言を同じように「現在の権利関係」と言い換えれば、認められるでしょうか? 言い換えられそうに見えるところが、今日いちばんのつまづきどころです。答えは、次のパートで分かります。

対象を言い換えるより、大事なことがある

橋渡しの板(敷金の事案は見方によっては将来の権利関係とも言え、遺言の対象もいろいろに言い換えられる。対象を現在の権利関係に限ることにどれだけの意味があるかは疑わしい→即時確定の利益で判断すべきという見方) 図:橋渡しの板

敷金を返してもらう権利は、明渡しのときに残額があって初めて払われるので、見方によっては将来の権利とも言えます。遺言の事案も、いろいろな形に言い換えられます。そこで、対象を現在の権利関係に限ることにどれほどの意味があるのか、と疑問を向ける見方があります。この見方からは、対象をどう呼べるかではなく、即時確定の利益があるかどうかに重心を置いて判断すべきだ、ということになります。答案の骨格は、3つの観点のままです。

論文で書く規範:確認の利益の判断枠組み 確認の利益は、①確認の訴えという方法を選択することが紛争解決にとって有効・適切か(方法選択の適否)、②選択された訴訟物が原告・被告間の紛争解決にとって有効・適切か(対象選択の適否)、③原告の権利または法的地位についての危険・不安を除去するために、判決によって権利関係を即時に確定する法律上の利益ないし必要性があるか(即時確定の利益)、という3つの観点から判断される。 (論文で確認の利益が問題になったときの判断枠組み)

この枠組みは、論文でも確認の利益が問題になったときに、そのまま使う骨格になります。

即時確定の利益——紛争がどれだけ熟しているか

即時確定の利益の板(即時確定の利益=特に将来の権利関係の確認で問題になる。発生要件が実際に具備されるか不確実で確認判決が無駄になる可能性があるから。他方、侵害発生の危険が確実視できるほど紛争が現実化していて、発生を待っていては回復困難な不利益が生じる場合には、原告の不安・危険を除去し将来の紛争を予防する意味がある) 図:即時確定の利益の板

即時確定の利益は、特に、将来の権利関係の確認で問題になります。なぜ、将来の話だと問題になるんですか。将来、権利が発生する要件が実際に備わるかどうかは、まだ不確実だからです。もし要件が備わらなければ、せっかく出した確認判決が無駄になってしまいます。例えば、まだ事故が起きていないのに、将来もし事故が起きたら保険金は出るのか、今のうちに確定してほしいと言われても困ります。事故が起きるかどうかも、どんな事故かも分からないからです。逆に、認められる場合もあるんですか。あります。侵害が起きる危険が、確実だと見られるくらいまで紛争が現実に進んでいて、実際に侵害が起きるのを待っていたら、取り返しのつかない不利益が生じるような場合です。こういう場合には、今のうちに確認しておくことが、原告の現実の不安や危険を取り除き、将来の紛争の芽を先に摘むことにつながります。これを、確認訴訟の予防的機能と呼びます。保険の例に戻ると、事故がもう起きていて、保険会社が保険の対象外だと争っているなら、紛争はすでに現実のものです。今すぐ白黒をつける意味があります。

これを、実際の場面にあてはめてみましょう。

あてはめ①——敷金の事案は、なぜ即時確定の利益があったか

敷金あてはめの板(敷金事案では、被告が敷金交付の事実自体を争っていた→対象を条件付権利=現在の権利関係と構成できるだけでなく、現に紛争が生まれている状態→即時確定の利益あり) 図:敷金あてはめの板

さきほどの敷金の事案には、即時確定の利益もありました。理由は分かりますか。たしか、被告が敷金を受け取ったこと自体を争っていたんでしたね。相手が敷金を受け取った事実そのものを否定している以上、原告の側には、現に不安や争いが生まれています。だから、今すぐ確定させる必要があると認められました。では、冒頭のAとBの話に戻りましょう。

冒頭事案の回収——なぜ生きているうちはダメなのか

死後・生存中の対比板(項目=相続開始の有無/今の権利関係/現実の争い/結論; 死後(遺言者死亡後)=相続開始・遺言が有効なら生じるはずの現在の権利関係が存在しないことを確認・現に争いが生じている・確認の利益あり; 生存中(遺言者生存中)=相続未開始・受遺者Cは将来権利を取得できる事実上の期待を有するにすぎない・現実の危険や不安なし・確認の利益なし) 図:死後・生存中の対比板

項目死後(遺言者死亡後)生存中(遺言者生存中)
相続開始の有無相続開始相続未開始
今の権利関係遺言が有効なら生じるはずの現在の権利関係が存在しないことを確認受遺者Cは将来権利を取得できる事実上の期待を有するにすぎない
現実の争い現に争いが生じている現実の危険や不安なし
結論確認の利益あり確認の利益なし

冒頭のAとBの話を、実際に扱った判例があります。判決の理由は、2段になっています。1段目は、生きているうちは遺言からまだ何の法律関係も生まれていないこと。2段目は、書き直せない状態でも、それは変わらないことです。

判例最判平成11・6・11 判時1685号36頁〈百選26〉

最高裁判決(遺言者生存中の遺言無効確認の訴えが争われた事件) 遺言は遺言者の死亡により初めてその効力が生ずるものであり(民法九八五条一項)、遺言者はいつでも既にした遺言を取り消すことができ(同法一〇二二条)、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときには遺贈の効力は生じない(同法九九四条一項)のであるから、遺言者の生存中は遺贈を定めた遺言によって何らの法律関係も発生しないのであって、受遺者とされた者は、何らかの権利を取得するものではなく、単に将来遺言が効力を生じたときは遺贈の目的物である権利を取得することができる事実上の期待を有する地位にあるにすぎない……。したがって、このような受遺者とされる者の地位は、確認の訴えの対象となる権利又は法律関係には該当しないというべきである。遺言者が心神喪失の常況にあって、回復する見込みがなく、遺言者による当該遺言の取消し又は変更の可能性が事実上ない状態にあるとしても、受遺者とされた者の地位の右のような性質が変わるものではない。

さっきの遺言無効確認の事件では、言い換えて認められていたのに、なぜここでは駄目なんですか。1段目です。遺言は、Aが亡くなって初めて効力を持ちます。だから今は、財産をもらうとされたC、つまり受遺者でさえ、いつか権利を取得できるという事実上の期待を持っているだけです。遺言から、今の権利関係はまだ何も生まれていません。Bの側から見ても、相続はまだ開始しておらず、今の時点で何の権利も取得していません。即時確定の利益から見ても、現実の危険や不安があるとは言えないのです。Aは心神喪失で、もう遺言を書き直せる状態じゃないですよね。それでも駄目なんですか。2段目です。判決は、取消しや変更の可能性が事実上無くても、受遺者の立場が期待にすぎないという性質は変わらない、としました。遺言が効力を持つのは、あくまでAが亡くなったときです。それまでに、Aの財産がどれだけ残るのか、BやCがその時点で生きているのかも、まだ決まっていません。今判決を出しても、それが役に立つか自体が見通せないのです。

だから、Aが生きているうちの遺言無効確認は、確認の利益が認められません。相続が始まってから、あらためて争うことになります。

もう1つのあてはめ——症状が固定する前の債務不存在確認

症状固定前あてはめの板(交通事故の被害者の症状が固定していない段階で、加害者が損害賠償債務の不存在確認を求めた事案=紛争の成熟性の観点から、確認の利益は厳格に判断される) 図:症状固定前あてはめの板

もう1つ、即時確定の利益が問題になる場面を紹介します。交通事故の被害者の症状が、まだ固定していない段階の話です。これ以上治療を続けても回復の見込みがない、という状態にまで至っていない、ということです。その段階で、加害者の側から、損害賠償の債務は存在しないという確認を求めた事案があります。この段階では、損害の内容がどこまで固まるか、まだ見通せません。争いの中身が固まって、今判決を出せば決着がつく状態になっていることを、紛争の成熟性と言います。症状が固定する前は、まだ熟していないので、こうした場面では、確認の利益は厳格に判断されるべきだとされています。将来の権利関係と同じ発想です。

形成の訴えの利益——発想が逆になる

形成の訴えの板(形成の訴え=判決が確定するまで権利変動を生じさせないとして、法律が特に訴えの提起を要求している場合に認められる。形成要件の存在を主張していれば、訴えの利益は原則として認められる。確認・給付とは逆に「原則あり」から出発する) 図:形成の訴えの板

ここまでは、確認の訴えの話でした。最後に、形成の訴えの利益を見ます。形成の訴えは、判決が確定するまで、権利の変動を起こさないと、法律があらかじめ決めている場合に使われる訴えです。確認の訴えとは、話の出発点が違うんですか。まったく逆です。法律が決めた、権利を変動させるための要件、つまり形成要件があることを主張していれば、訴えの利益は、原則として認められます。確認や給付の訴えのように、あれこれ絞り込む必要は、基本的にありません。例えば、裁判で離婚を求める場合、判決が確定して初めて離婚の効果が生じます。離婚の原因があると主張していれば、訴える意味は当然にあります。

法律がわざわざ、この場合は訴えを起こしてよい、と定めているので、その要件を主張している以上、訴える意味は当然にあると考えられます。

形成の訴えの利益が消える例外

形成の訴えの例外の板(原告が形成判決で実現しようとした目的が事実の推移で実現不能になった場合、または形成判決と同じ状態が事実の推移で既に実現した場合には、訴えの利益は否定される。役員選任決議取消しの訴えの係属中に、その役員が任期満了で退任した場合が典型) 図:形成の訴えの例外の板

ただし、形成の訴えにも、例外的に訴えの利益が消える場合があります。2つの場面があります。原告が実現しようとした目的が、事情の変化で実現できなくなった場合と、形成判決で実現しようとしたのと同じ状態が、判決を待たずにすでに実現してしまった場合です。

判例最判昭和45・4・2 民集24巻4号223頁〈百選30〉

最高裁判決(株主総会決議取消しの訴えの利益が争われた事件) しかして、株主総会決議取消の訴は形成の訴であるが、役員選任の総会決議取消の訴が係属中、その決議に基づいて選任された取締役ら役員がすべて任期満了により退任し、その後の株主総会の決議によつて取締役ら役員が新たに選任され、その結果、取消を求める選任決議に基づく取締役ら役員がもはや現存しなくなつたときは、右の場合に該当するものとして、特別の事情のないかぎり、決議取消の訴は実益なきに帰し、訴の利益を欠くに至るものと解するを相当とする。

会社の役員を選ぶ株主総会決議を取り消してほしいと訴えている間に、その役員が任期満了ですべて退任してしまった事案です。決議を取り消しても、もう誰の地位も変わりません。目的がすでに実現できなくなった典型例なので、特別な事情が無い限り、訴えの利益を欠くとされました。これが、形成の訴えの利益が例外的に消える場面です。

今日の地図(保存版)

総括マトリクスの板(給付の訴え=現在は原則あり、将来は135条の例外的要件/確認の訴え=方法選択の適否・対象選択の適否・即時確定の利益の3観点、即時確定の利益に重心を置く見方あり/形成の訴え=原則あり、事情変化で目的実現不能・同一状態実現なら例外的に消える) 図:総括マトリクスの板

  • 給付の訴え=現在は原則あり、将来は135条の例外的要件
  • 確認の訴え=方法選択の適否・対象選択の適否・即時確定の利益の3観点、即時確定の利益に重心を置く見方あり
  • 形成の訴え=原則あり、事情変化で目的実現不能・同一状態実現なら例外的に消える

今日の話を、1本の線でまとめます。確認の訴えは、対象に制限が無いからこそ、確認の利益で強く絞られます。その判断は、方法選択の適否、対象選択の適否、即時確定の利益という、3つの観点で行われます。方法選択の適否は、確認判決には強制執行する力が無いから、給付の訴えができるなら確認は原則不可、という話でしたね。対象選択の適否は、原則は現在の権利関係で、証書真否確認と、過去の関係でも言い換えられる場合が例外でした。そして、対象の呼び方より即時確定の利益に重心を置いて見る、という見方もありました。だから、遺言無効確認は、死後は相続が始まって今の争いがあるので認められ、生きているうちは、まだ何の法律関係も生まれておらず現実の危険も無いので、認められなかったんですね。そして、形成の訴えは、確認や給付とは発想が逆で、原則あり、事情の変化で目的が実現できなくなったときだけ、例外的に訴えの利益が消えます。

参照条文

  • 民事訴訟法134条の2

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