民訴ゼロから民訴#44

当事者の欠席と擬制自白・職権進行主義と釈明処分

印刷用PDFを開く

第2章 訴訟の審理 ㊹/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

誰も来ない法廷で、判決は出るのか

冒頭事案の関係図(Xが被告Yに貸金返還を求めて提訴・第1回口頭弁論期日にYが欠席・答弁書も未提出) 図:冒頭事案の関係図

前回、当事者が自分から手続を動かす場面を見ました。申立て、主張、立証。この3つは、当事者が自分の意思で手を動かす行為でした。今日は、その問いから始めます。事案を1つ出します。XさんがYさんに1000万円を貸したとして、返還を求めて訴えを起こしました。場面は同じ貸金請求ですが、今日はYさんの態度が違います。第1回の口頭弁論期日に、Yさんは来ませんでした。答弁書も、何も出していません。ここで、今日いちばん最初の問いです。この日、判決が出てしまうことは、ありうるでしょうか。この日で判決まで行ってしまうのか、それとも呼び出し直しになるのか。その答えは、この先ではっきり出します。前回見たのは、当事者が動く場面でした。今日は、その裏返しです。当事者が動かなかったとき、手続を動かすのは誰か。そこを見ていきます。

一方だけが来ない——陳述擬制と擬制自白

想起の板(前回・159条1項=沈黙は口頭弁論終結時まで争わなければ擬制自白/159条2項=知らない旨の陳述は争ったものと推定) 図:想起の板

  • 前回・159条1項=沈黙は口頭弁論終結時まで争わなければ擬制自白
  • 159条2項=知らない旨の陳述は争ったものと推定

本題に入る前に、1つだけ思い出してください。前回、相手方の主張に対する答え方を5つ見ました。そのうち、沈黙した場合と、知らないと答えた場合、それぞれどう扱われるという話でしたか。ええと、知らないと答えるのが不知で、争ったものと推定される。何も言わない沈黙は、口頭弁論の終結時まで争わなければ、自白したとみなされる。そういう話でした。今日は、この「争わない」という扱いが、期日そのものに出てこない場合にも及ぶかどうかを見ます。

陳述擬制の板(158条=最初にすべき口頭弁論期日に限る・出頭せずまたは出頭しても本案の弁論をしない場合・出頭した相手方に弁論をさせることができる) 図:陳述擬制の板

まず、こちらの条文を見てください。

条文民事訴訟法158条

民事訴訟法第158条(訴状等の陳述の擬制) 原告又は被告が最初にすべき口頭弁論の期日に出頭せず、又は出頭したが本案の弁論をしないときは、裁判所は、その者が提出した訴状又は答弁書その他の準備書面に記載した事項を陳述したものとみなし、出頭した相手方に弁論をさせることができる。

この「最初にすべき」という言葉が、今日いちばん大事な限定です。この条文が働くのは、いちばん最初の口頭弁論期日、それも弁論準備手続をまだ経ていない期日に限られます。2回目以降の期日には及びません。なお、弁論準備手続というのは、争点と証拠を整理するための、口頭弁論とは別の準備の手続のことです。理由は、原告と被告で少し違います。原告が最初の期日に欠席したら、訴状すら陳述されない状態になり、審理そのものが始まりません。だから、手続を先へ進めるために、訴状の内容を陳述したものとみなす必要があります。被告が最初の期日に欠席した場合は、少し理由が違います。被告は答弁書を出したうえで、期日に来ないこともあります。せっかく答弁書を出しておいたのに、期日に来なかったというだけで、その内容がまるごと無視されるのは不公平です。

あのとき触れた「答弁書を出しておけば来なくても扱いが変わる」という話が、ここで条文としてはっきりします。続行期日には、158条は及びません。ここは、あとでもう一度、対比として扱います。まず、最初の期日の欠席について、もう一歩進めます。

擬制自白の板(159条3項=1項の規定を口頭弁論期日に出頭しない場合に準用・ただし公示送達による呼出しを受けたときはこの限りでない) 図:擬制自白の板

陳述擬制は、あくまで「その者が出した書面の内容を陳述したことにする」という話でした。では、欠席した被告が、答弁書すら出していなかったら、どうなるでしょうか。さっきの158条だと、そもそも陳述したことにできるものが、何もありません。そこで働くのが、こちらの条文です。

条文民事訴訟法159条3項

民事訴訟法第159条3項(自白の擬制) 第一項の規定は、当事者が口頭弁論の期日に出頭しない場合について準用する。ただし、その当事者が公示送達による呼出しを受けたものであるときは、この限りでない。

1項は、相手方の主張した事実を争うことを明らかにしない場合に、自白したものとみなす、という規定でした。3項は、この1項の規定を、口頭弁論の期日に出頭しない場合に準用します。つまり、期日に出頭せず、何も争う姿勢を示していない当事者は、相手方の主張した事実を認めたものとみなされうる、ということです。ただし、ただし書に注目してください。公示送達による呼出しを受けていた場合は、この限りではありません。公示送達で呼び出された当事者は、実際には呼出しがあったことすら知りません。知りようがない人に対して、「争わなかったから認めた」という重い効果を及ぼすのは、あまりに酷です。だから、このただし書で除外されています。

冒頭事案の回収板(Y=第1回期日欠席・答弁書未提出・公示送達ではなく通常の呼出しが到達している→158条は陳述の対象なし→159条3項により争う姿勢なし→擬制自白の余地・この日結審・判決もありうる) 図:冒頭事案の回収板

ここで、冒頭の事案に戻ります。Yさんは、第1回期日に欠席し、答弁書も出していませんでした。そして、Yさんへの呼出しが、公示送達ではなく、通常どおり届いていたとします。Yさんは、争う姿勢を一切示していません。この日で審理が終わり、判決が出ることもありうる、というのが、冒頭の問いの答えです。ただし、もしYさんへの呼出しが公示送達だったなら、話は別です。擬制自白は成立しません。

続行期日で一方が欠席したら——審理の現状に基づく判決①

続行期日対比の板(最初の期日=158条陳述擬制が働く/続行期日=158条は及ばない・欠席した側を抜きに出席側の提出書面だけで審理を進めるのが原則) 図:続行期日対比の板

  • 最初の期日=158条陳述擬制が働く
  • 続行期日=158条は及ばない・欠席した側を抜きに出席側の提出書面だけで審理を進めるのが原則

では、さきほど予告した続行期日の対比です。最初の期日を過ぎたあと、2回目以降の期日で一方が欠席したら、どうなるでしょうか。158条は、最初の期日にしか使えないんでした。続行期日で一方が欠席した場合、原則として、欠席した側を抜きにして、出席している当事者がすでに提出している書面をもとに弁論を進めていくことになります。さきほどのYさんが、第2回、第3回の期日にも来なかったとします。Xさんは毎回出廷して、書面も出しています。ただ、欠席が続くようなら、いつまでも待ち続けるわけにもいきません。ここで、審理の現状に基づく判決という制度が出てきます。

244条ただし書の板(審理の現状及び当事者の訴訟追行の状況を考慮して相当と認めるとき・一方が欠席の場合は出頭した相手方の申出があるときに限り終局判決ができる) 図:244条ただし書の板

244条という条文があります。見出しはありませんが、審理の現状に基づく判決と呼ばれています。今日は、まずただし書の部分だけを見ます。一方の当事者が口頭弁論の期日に出頭せず、または弁論をしないで退廷した場合、審理の現状及び当事者の訴訟追行の状況を考慮して相当と認めるときは、終局判決をすることができます。ただし、これは、出頭した相手方の申出があるときに限られます。なぜ、申立てが要件になっているのか。出席している当事者は、現に手続に関与し、判断を待っています。その人が「もう判決してほしい」と言わない限り、裁判所が勝手に審理を打ち切るべきではないからです。

この「申立てが要る/要らない」という違いは、あとで双方欠席の場合と並べたときに、もう一度きちんと効いてきます。覚えておいてください。

双方とも来ない——訴えの取下げ擬制

双方欠席事案の板(第1回期日に原告X・被告Y双方が欠席・そのまま1か月何も申し立てない場合) 図:双方欠席事案の板

ここから、場面を変えます。一方ではなく、双方が欠席したらどうなるか、です。さきほどの貸金請求で、第1回期日に、原告のXさんも、被告のYさんも、両方とも欠席したとします。そのまま、1か月間、どちらからも何も申立てがなかったとしましょう。

条文民事訴訟法263条

民事訴訟法第263条(訴えの取下げの擬制) 当事者双方が、口頭弁論若しくは弁論準備手続の期日に出頭せず、又は弁論若しくは弁論準備手続における申述をしないで退廷若しくは退席をした場合において、一月以内に期日指定の申立てをしないときは、訴えの取下げがあったものとみなす。当事者双方が、連続して二回、口頭弁論若しくは弁論準備手続の期日に出頭せず、又は弁論若しくは弁論準備手続における申述をしないで退廷若しくは退席をしたときも、同様とする。

ここが罠になりやすいところで、263条には2つのルートがあります。前段は、双方欠席が1回でも、その後1か月以内に期日指定の申立てがなければ、訴えの取下げがあったものとみなされる、というルートです。後段は、連続して2回、双方が欠席したときも、同じ扱いになる、というルートです。1か月待たなくても、2回連続で欠席すれば、それだけで取下げ擬制が働きます。どちらか一方だけを覚えていると、試験では足をすくわれます。必ずセットで押さえてください。なぜ、双方欠席だと訴えそのものを消してしまうのか。理由は単純です。両方とも来ないのは、裁判所の人的・物的な資源を無駄にしているだけでなく、もうこの訴訟を続ける意思がない、とみなしてよい場面だからです。

一方欠席と双方欠席は、出口がまったく違います。ここは、あとの比較板でもう一度まとめます。

双方欠席のもう一つの出口——終局判決と審理の現状に基づく判決②

244条本文とただし書の弁別板(本文=当事者の双方又は一方が欠席し審理の現状及び訴訟追行の状況を考慮して相当と認めるとき終局判決ができる/ただし書=一方欠席の場合は出頭した相手方の申出があるときに限る) 図:244条本文とただし書の弁別板

  • 本文=当事者の双方又は一方が欠席し審理の現状及び訴訟追行の状況を考慮して相当と認めるとき終局判決ができる
  • ただし書=一方欠席の場合は出頭した相手方の申出があるときに限る

双方欠席には、もう1つ出口があります。ここで問いを立てます。双方欠席と一方欠席、判決を出すために「申立てが要る」のは、どちらの側だと思いますか。さっき、一方欠席のときは、出席している相手方が申し立てないといけない、という話でした。双方欠席のときは、誰も出席していないので、そもそも申し立てる人自体がいません。申立てが要るのは一方欠席の側だ、と理由から導けます。双方欠席の場合は、そもそも申し立てられる当事者がいないので、裁判所の判断だけで手続を進められます。まず、こちらの条文です。

条文民事訴訟法243条1項

民事訴訟法第243条1項(終局判決) 裁判所は、訴訟が裁判をするのに熟したときは、終局判決をする。

双方が欠席していても、それまでに証拠調べが済んでいて、裁判をするのに十分な材料が揃っているなら、通常どおり終局判決を出せます。これが243条1項です。たとえば、XさんとYさんの貸金の件で、借用書の取調べも証人尋問も済んでいて、あとは判断するだけ、という状態です。ここまで来ていれば、期日に誰も来なくても判決は出せます。材料が揃っていれば、誰が来ていなくても判決していい、ということです。では、材料が揃っていない場合はどうか。ここで、さきほどの244条の全体を見ます。今度は本文です。244条は、本文とただし書、両方を持つ1つの条文です。

当事者の双方または一方が口頭弁論の期日に出頭せず、または弁論をしないで退廷をした場合において、審理の現状及び当事者の訴訟追行の状況を考慮して相当と認めるときは、終局判決をすることができる。これが本文で、双方欠席にも一方欠席にも及ぶ、広い規定です。そして、ただし書がここに効いてきます。一方が欠席した場合には、出頭した相手方の申出があるときに限る、という限定が付きます。誰も来ていないなら、裁判所の判断だけで打ち切ってよい。一方は来ているなら、その人が望まない限り、裁判所が勝手に打ち切るべきではない。この理由づけさえ持っていれば、本文とただし書のどちらを使う場面かは、丸暗記しなくても導けます。

欠席の3つの出口

欠席の3つの出口フロー板(欠席→A一方欠席・最初の期日=158条陳述擬制+159条3項擬制自白=審理が進む/B一方欠席・続行期日=出席者の申立てで244条ただし書=判決が出る/C双方欠席=1か月不申立てまたは連続2回で263条=事件が消える/C双方欠席=熟していれば243条1項・熟していなくても244条本文=判決が出る) 図:欠席の3つの出口フロー板

  • 欠席→A一方欠席・最初の期日=158条陳述擬制+159条3項擬制自白=審理が進む
  • B一方欠席・続行期日=出席者の申立てで244条ただし書=判決が出る
  • C双方欠席=1か月不申立てまたは連続2回で263条=事件が消える
  • C双方欠席=熟していれば243条1項・熟していなくても244条本文=判決が出る

ここまでの条文を、番号ではなく、出口で束ねます。同じ「来ない」でも、出口は3つあります。1つめ、審理が進む出口です。一方が最初の期日に欠席したときの、158条の陳述擬制と、159条3項の擬制自白です。たとえば、Yさんが来ないまま、Xさんの主張が争われずに通って、結審することがあります。2つめ、事件が消える出口です。双方が欠席し、1か月不申立て、または連続2回欠席したときの、263条の訴えの取下げ擬制です。たとえば、XさんもYさんも来ないまま、1か月間そのままにしておけば、訴えそのものが取り下げられたことになります。3つめ、判決が出る出口です。一方欠席なら続行期日で出席当事者の申立てがあるとき、双方欠席なら裁判所の判断だけで、審理の現状に基づく判決、あるいは熟していれば通常の終局判決です。たとえば、続行期日にYさんが来なくても、出席しているXさんが申し立てれば、審理の現状に基づく判決が出ます。

条文の数だけ見ると多く感じますが、行き先はこの3つしかありません。誰が来なかったかを確認したら、この3つのどれに乗るかを考える。それが、この単元の使い方です。

手続を進めるのは誰か——職権進行主義

分業の板(内容=事実と証拠の収集提出は当事者主義・弁論主義に委ねる/進行と整序=手続をいつどう進めるかの主導権は裁判所に認める=職権進行主義) 図:分業の板

  • 内容=事実と証拠の収集提出は当事者主義・弁論主義に委ねる
  • 進行と整序=手続をいつどう進めるかの主導権は裁判所に認める=職権進行主義

ここまで見てきた条文は、実はすべて、1つの考え方の具体化です。手続の進行を最終的に握っているのは裁判所だ、という考え方です。当事者主義とは、手続を動かす主導権を当事者に置く考え方でした。ここで、その宿題を正面から回収します。訴訟の内容、つまりどんな事実と証拠を出すかは、当事者主義の現れである弁論主義に委ねられています。これは、以前弁論主義の回で見たとおりです。これに対して、手続をいつ、どのように進めるか、その進行と整序の主導権は、裁判所に認められています。これを、職権進行主義と呼びます。弁論主義が決めるのは、事実と証拠という、訴訟の中身です。弁論主義は、手続をいつ開くか、期日をどう変更するか、といった進行そのものには関与しません。そこを決めるのが職権進行主義です。

中身は当事者、進行は裁判所、という役割分担なんです。なぜ、進行まで当事者に委ねないのか。もし進行の主導権まで当事者に委ねてしまうと、訴訟の遅延が生じやすくなります。裁判所が進行のハンドルを握ることで、一方だけが手続を引き延ばして得をする事態を防ぎ、審理の中身が薄まらずに済みます。中身は生徒、進行は先生。しかも先生は、発表者が来なかったときでも会を止めずに次へ進める権限を持っています。それが訴訟では職権進行主義です。そして、さきほど見た欠席への対応、陳述擬制、擬制自白、取下げ擬制、審理の現状に基づく判決。これらはすべて、当事者が進行に協力しなくても、裁判所が手続を前に進められるようにするための道具です。

訴訟指揮権は誰に帰属するか

訴訟指揮権の帰属ツリー板(原則は裁判所が行使=89条・151条〜155条/合議体では裁判長が行使することもある=148条・149条/裁判長自身に帰属する場合=93条1項・137条/受命裁判官・受託裁判官にも権限の範囲内で=206条・215条の4) 図:訴訟指揮権の帰属ツリー板

  • 原則は裁判所が行使=89条・151条〜155条
  • 合議体では裁判長が行使することもある=148条・149条
  • 裁判長自身に帰属する場合=93条1項・137条
  • 受命裁判官・受託裁判官にも権限の範囲内で=206条・215条の4

職権進行主義を具体化した、裁判所が審理を主宰する権能のことを、訴訟指揮権と呼びます。誰が行使できるかを見ていきます。原則は、裁判所が行使します。89条や151条から155条にかけて、その根拠が置かれています。ただし、合議体で審理している場合は、裁判長が行使することもあります。148条、149条がこれにあたります。さらに、裁判長自身に、はじめから帰属している場合もあります。93条1項の期日の指定、137条がこれです。そして、もう1つ。受命裁判官、つまり合議体の中の1人が処理を任された裁判官。それから受託裁判官、つまり他の裁判所に嘱託して手続をしてもらう裁判官。この2人にも、権限の範囲内で訴訟指揮権が認められます。206条、215条の4です。ここは名前だけ押さえておいてください。

たとえば、Yさんの事情を知っている証人が遠方に住んでいて、この裁判所まで来てもらうのが難しいとします。そのとき、証人の住んでいる土地の裁判所に尋問を頼むことがあります。頼まれた側の裁判官が、受託裁判官です。その尋問の場では、その裁判官が手続を仕切ります。なぜ場面で分かれるのか。期日を1つ決めるのに合議体全員で評議していては、かえって手続が遅れます。迅速に決めてよいものは裁判長が単独で、審理の枠組みを動かすものは裁判所全体で。そう振り分けられている、と見てください。あのときの一般論をそのまま前提にします。今日は深入りしません。訴訟指揮権は、裁判所を頂点にしながら、場面ごとに、裁判長や受命裁判官にも分かれて帰属する、という構造だけ押さえてください。

訴訟指揮の4類型——裁量が義務に転じる場面

4類型の板(①進行に関するもの=期日の指定及び変更93条・中断した手続の続行命令129条/②整序に関するもの=弁論の制限分離併合152条・弁論の再開153条・時機に後れた攻撃防御方法の却下157条/③期日における訴訟行為の整理=口頭弁論の指揮148条/④訴訟関係を明瞭にするもの=釈明権149条・釈明処分151条) 図:4類型の板

  • ①進行に関するもの=期日の指定及び変更93条・中断した手続の続行命令129条
  • ②整序に関するもの=弁論の制限分離併合152条・弁論の再開153条・時機に後れた攻撃防御方法の却下157条
  • ③期日における訴訟行為の整理=口頭弁論の指揮148条
  • ④訴訟関係を明瞭にするもの=釈明権149条・釈明処分151条

訴訟指揮権の中身を、4つの類型に整理します。この4つが、今日の後半の背骨になります。1つめ、進行に関するものです。期日の指定及び変更、93条。中断した手続の続行命令、129条です。受継というのは、当事者が亡くなったときなどに、相続人が訴訟を引き継ぐ手続です。当事者の確定を見た回で触れました。129条は、当事者から受継の申立てがなくても、裁判所が職権で手続の続行を命じられる、という規定です。2つめ、整序に関するものです。弁論の制限、分離、併合、152条。弁論の再開、153条。時機に後れた攻撃防御方法の却下、157条です。

152条と153条は、はっきり分けてください。152条は、複数の争点や複数の事件をどうまとめる、または分けるかという話です。153条は、いったん終わった口頭弁論を、もう一度開き直すかどうかという話です。時機に後れた攻撃防御方法の却下は、以前、口頭弁論の諸原則を見た回で、157条の3つの要件まで扱いました。今日は、訴訟指揮の類型のどこに座るか、という位置づけだけです。3つめ、期日における当事者の訴訟行為を整理するものです。口頭弁論の指揮、148条。裁判長が指揮し、発言を許可したり、命令に従わない者の発言を禁止したりできます。4つめ、訴訟関係を明瞭にするものです。釈明権、149条。釈明処分、151条。この2つは、あとでまとめて対比します。

弁論の再開義務の板(いったん終結した弁論を再開するかどうかは裁判所の専権事項が原則/しかし裁量は絶対無制限ではなく手続的正義の要求する特段の事由があれば再開すべき義務に転じる) 図:弁論の再開義務の板

  • いったん終結した弁論を再開するかどうかは裁判所の専権事項が原則
  • しかし裁量は絶対無制限ではなく手続的正義の要求する特段の事由があれば再開すべき義務に転じる

ここで、153条の弁論の再開について、もう一歩深く見ます。ある判例が、この規定の見方を大きく動かしました。いったん終結した弁論を、再開するかどうかは、原則として裁判所の専権事項です。当事者は、権利として弁論の再開を請求することはできません。しかし、その裁量権も、絶対に無制限ではありません。ある事案で、口頭弁論が終結する前に当事者の一方が亡くなり、訴訟を引き継ぐ手続がとられないまま弁論が終結してしまいました。相手方が、亡くなった事実を知って弁論の再開を申し立てましたが、裁判所は再開せずに、そのまま判決を出してしまいました。

判例最判昭56・9・24 民集35巻6号1088頁〈百選39〉

最高裁判決(弁論終結前に当事者が死亡し、訴訟承継の手続がとられないまま判決が出された事件) 裁判所の裁量権も絶対無制限のものではなく、弁論を再開して当事者に更に攻撃防禦の方法を提出する機会を与えることが明らかに民事訴訟における手続的正義の要求するところであると認められるような特段の事由がある場合には、裁判所は弁論を再開すべきものであり、これをしないでそのまま判決をするのは違法であることを免れない

この判例は、弁論を再開して、当事者にさらに攻撃防御の方法を提出する機会を与えることが、明らかに民事訴訟における手続的正義の要求するところであると認められるような、特段の事由がある場合には、裁判所は弁論を再開すべきだ、と判断しました。それをせずにそのまま判決をするのは違法だ、としています。なぜ、裁量が義務にまで転じるのか。このまま判決が確定すれば、亡くなった当事者の側は、一度も攻撃防御の機会を与えられないまま、既判力を受けます。既判力というのは、確定した判決の判断を、もう争えなくする効力のことです。裁量を絶対視すると、手続保障がゼロの当事者が生まれてしまう。そこが決め手です。

訴訟指揮は原則として裁判所の裁量ですが、その裁量には限界があり、手続的正義の要求が明らかな場面では、裁量が義務に転じます。逆に言えば、義務になるのは手続的正義が明らかに要求する場面だけです。終結後に新しい主張を思いついた、有利な証拠が見つかった、という程度では再開義務は生じません。そこは裁量のままです。釈明も、原則は裁判所の裁量に委ねられていますが、それをしないと著しく不公平な結果になる場面では、義務に転じるという考え方でした。訴訟指揮のあちこちに、この「裁量が義務に転じる」という同じ骨格が埋め込まれています。

釈明権と釈明処分——動くのはどちらか

対比の板(釈明権149条=裁判長が問いを発し立証を促す・動くのは当事者/釈明処分151条=裁判所自ら出頭命令・文書提出・検証鑑定・調査嘱託をする・動くのは裁判所) 図:対比の板

  • 釈明権149条=裁判長が問いを発し立証を促す・動くのは当事者
  • 釈明処分151条=裁判所自ら出頭命令・文書提出・検証鑑定・調査嘱託をする・動くのは裁判所

ここで一度、前回までに出てきた道具を思い出してください。裁判官が当事者に「その主張は、どういう意味ですか」と問いかける権限がありました。あれは何条でしたか?149条の、釈明権です。今日はその149条と並べて、まだ名前だけしか出していなかった151条を片づけます。その前に、149条の中身を簡単に受け直します。裁判長は、口頭弁論の期日、または期日外で、訴訟関係を明瞭にするため、事実上・法律上の事項について問いを発し、立証を促すことができます。陪席裁判官も、裁判長に告げて同じことができます。陪席裁判官というのは、合議体で裁判長以外の裁判官のことです。当事者は、裁判長に発問を求めることもできます。これを求問権と呼びます。この149条が、釈明権です。ポイントは、裁判所が当事者に問いを投げかけて、当事者に動いてもらう、というところです。

これに対して、151条は違います。こちらを見てください。

条文民事訴訟法151条

民事訴訟法第151条1項(釈明処分) 裁判所は、訴訟関係を明瞭にするため、次に掲げる処分をすることができる。一 当事者本人又はその法定代理人に対し、口頭弁論の期日に出頭することを命ずること。二 口頭弁論の期日において、当事者のため事務を処理し、又は補助する者で裁判所が相当と認めるものに陳述をさせること。三 訴訟書類若しくは訴訟において引用した文書その他の物件で当事者の所持するもの又は訴訟においてその記録された情報の内容を引用した電磁的記録で当事者が利用する権限を有するものを提出させること。四 当事者又は第三者の提出した文書その他の物件を裁判所に留め置くこと。五 検証をし、又は鑑定を命ずること。六 調査を嘱託すること。

ここが、弁別の軸です。釈明権は、問いを発して、当事者に動いてもらう。釈明処分は、訴訟関係を明瞭にするために、裁判所が自ら処分をする。誰が動くか、これ1本で分けてください。さきほどのXさんの請求で考えます。Xさんの言い分が、貸したという趣旨なのか、立て替えたという趣旨なのか曖昧だったとします。裁判長が「どちらの趣旨ですか」と尋ねるのが釈明権。動くのはXさんです。

釈明処分は証拠調べの代用ではない板(151条の処分=訴訟関係を明瞭にするためのもの/得られた資料をそれ自体証拠として事実認定に使うことは原則として予定されていない) 図:釈明処分は証拠調べの代用ではない板

  • 151条の処分=訴訟関係を明瞭にするためのもの
  • 得られた資料をそれ自体証拠として事実認定に使うことは原則として予定されていない

なお、2項から4項には、電磁的記録の提出方法や、132条の13が適用されないこと、検証・鑑定・調査の嘱託には証拠調べの規定を準用することが定められていますが、骨組みとしては、今の六類型だけ押さえれば足ります。釈明処分で集めた資料をそのまま証拠として使えるか。ここも大事な注意点です。釈明処分で得られた資料は、あくまで訴訟関係を明瞭にするためのものであって、それ自体を証拠として事実認定に使うことは、原則として予定されていません。釈明処分は、証拠調べの代用ではないのです。

訴訟指揮はどの形で出るか板(事実行為=裁判長による口頭弁論の指揮/裁判=判決は口頭弁論を経て裁判所が言い渡す終局的判断・決定は口頭弁論を経ずに裁判所が・命令は裁判官個人が/訴訟指揮の多くは決定・命令) 図:訴訟指揮はどの形で出るか板

  • 事実行為=裁判長による口頭弁論の指揮
  • 裁判=判決は口頭弁論を経て裁判所が言い渡す終局的判断・決定は口頭弁論を経ずに裁判所が・命令は裁判官個人が
  • 訴訟指揮の多くは決定・命令

そして最後に、訴訟指揮そのものの形式にも触れておきます。訴訟指揮は、裁判長による口頭弁論の指揮のような事実行為として行われることもあれば、決定や命令という裁判の形で行われることもあります。決定は、以前、訴訟と非訟のところで見た、判決より軽い機動的な裁判の形でしたね。判決は、口頭弁論を経て、裁判所が言い渡す終局的な判断です。これに対して決定と命令は、口頭弁論を経ずに出せる、もっと簡易な裁判の形で、決定は裁判所が、命令は裁判官個人が行います。訴訟指揮の多くは、この決定や命令という形で出されます。ここでは、訴訟指揮がそのどちらの形を取りうるか、という点だけ確認しておいてください。

今日の地図(保存版)

欠席の3つの出口フロー板(欠席→A一方欠席・最初の期日=審理が進む/B一方欠席・続行期日=判決が出る/C双方欠席=事件が消える/C双方欠席=判決が出る) 図:欠席の3つの出口フロー板

  • 欠席→A一方欠席・最初の期日=審理が進む
  • B一方欠席・続行期日=判決が出る
  • C双方欠席=事件が消える
  • C双方欠席=判決が出る

今日は、当事者が動かなかったときに、手続がどうなるかを見てきました。冒頭の問い、答えが出ましたね。答弁書も出さずに欠席したYさんは、159条3項で擬制自白が成立する余地があって、その日のうちに結審、判決もありうる、ということでした。そして、同じ「来ない」でも、一方が来ないのか、双方とも来ないのかで、出口はまったく違いました。審理が進む、事件が消える、判決が出る。この3つでした。その裏側で動いていたのが、職権進行主義です。内容は当事者、進行は裁判所。この役割分担があるからこそ、当事者が動かなくても、手続は裁判所の側で前に進められます。

訴訟指揮権は、その具体的な道具だったんですね。期日の指定、弁論の制限や再開、釈明権と釈明処分。当事者が、動かなければ手続は止まるのか。今日の答えは、止まらない、でした。裁判所が進行を握っているからです。では、逆に、当事者の側には、この裁判所の進行に対して何ができるのでしょうか。裁判所の指揮が間違っていたら、黙って従うしかないのか。申立てをする権利、そして、手続の違反を見逃さずに指摘する権利があります。

参照条文

  • 民事訴訟法158条
  • 民事訴訟法159条3項
  • 民事訴訟法263条
  • 民事訴訟法243条1項
  • 民事訴訟法151条

民事訴訟法 全体ロードマップへ →